説明

リン酸系分散剤、それを利用したペースト組成物及び分散方法

【課題】リン酸系分散剤、それを利用したペースト組成物及び分散方法を提供する。
【解決手段】化学式1の構造を有することを特徴とする、リン酸系分散剤を提供する。


前記化学式1において、B及びBは、それぞれ独立に親水部と疎水部とを含む鎖を表し、前記x及び前記yは、それぞれ独立に0または1の整数であるが、同時に1にはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸系分散剤、それを利用したペースト組成物及び金属粉末の分散方法に係り、具体的には、金属粉末の表面に容易に吸着されて凝集を防止することによって金属粉末の分散効率を改善できるリン酸系分散剤、それを利用したペースト組成物及び分散方法に関する。本発明はまた、積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi−Layer Ceramic Capacitor)にも関する。
【背景技術】
【0002】
MLCCは、複数の誘電体薄層及び複数の内部電極を積層した構造を有する。このような構造を有するMLCCは、小さな体積でも大容量を発揮するため、例えば、コンピュータ、移動通信機器のような多様な電子機器に広く使われている。
【0003】
前記MLCCを構成する内部電極の材料としては、従来、銀−パラジウム(Ag−Pd)合金が使われてきた。銀−パラジウム合金は、空気中でも焼結されることからMLCCの製造に適用されうるが、コストが高くて経済性が低下するという問題がある。これを解決してMLCCのコストを下げるために、1990年代後半に前記内部電極材料を低コストのニッケルに代替しようとする動きが発生した。これにより、MLCCの内部電極は、ニッケル電極に代替されるようになった。前記内部ニッケル電極は、ニッケル金属粉末を含む伝導性ペーストから形成される。
【0004】
前記ニッケル金属粉末は、多様な製造方法によって製造され、代表的には、気相法または液相法によって製造されうる。気相法は、ニッケル金属粉末の形状及び不純物の制御が比較的容易で広く使われているが、粒子の微細化及び量産の側面では不利である。これと違って、液相法は、量産に有利であり、初期投資費及び工程コストが低いという長所を有しているため多く使われている。このような液相法は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【0005】
しかし、このような液相法または気相法によりニッケル金属粉末を製造しても、これを使用して伝導性ペースト組成物を製造する際に、ペーストの粘度が過度に高まってしまい、多量のニッケル金属粉末を使用できないという問題がある。このために多様な種類の分散剤を使用して、前記ニッケル金属粉末をペースト内で分散させる方法が知られている。一般的に、分散剤の場合、金属粉末の表面に吸着して凝集を抑制することによって分散能を発揮する。吸着を容易にするためには、適切な作用基を有する分散剤を用いる。例えば、塩基性を有するニッケル金属粉末に対しては、酸性分散剤を使用して吸着させることによって、ニッケル金属粉末をペースト内で分散させてきた。しかし、十分な分散効率を得て前記ペースト組成物内でニッケル金属粉末の含量を増加させるためには、さらに優秀な分散能を有する分散剤が要求されているのが実状である。
【特許文献1】米国特許第4,539,041号明細書
【特許文献2】米国特許第6,120,576号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、金属表面に容易に吸着されて凝集を防止することによって金属粉末の分散効率を改善できるリン酸系分散剤を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記リン酸系分散剤を含む金属ペースト組成物を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、前記リン酸系分散剤を使用して金属粉末を効率的に分散させる分散方法を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、前記分散方法によって分散された金属粉末を内部電極として採用したMLCCを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、本発明は、下記化学式1のリン酸系分散剤を提供する:
【0011】
【化1】

【0012】
化学式1において、B及びBは、それぞれ独立に親水部と疎水部とを含む鎖を表し、x及びyは、それぞれ独立に0または1の整数であるが、同時に1にはならない。
【0013】
本発明の一具現例によれば、前記化学式1のリン酸系分散剤としては、下記化学式2または3のリン酸系分散剤が望ましい:
【0014】
【化2】

【0015】
化学式2または化学式3において、X及びXは、それぞれ同一または異なる親水部を表し、Y及びYは、それぞれ同一または異なる疎水部を表す。
【0016】
本発明の一具現例によれば、前記親水部としては、ヘテロアルキレン基、例えば、エチレンオキシド基が望ましく、前記疎水部としては、アルキルアリール基、またはアルキルビニル基が望ましい。
【0017】
本発明の一具現例によれば、前記親水部において、Xは、−(OCHCH)m−が望ましく、Xを含む場合、Xは−(CHCHO)−が望ましく、前記疎水部としては、CH−(CH−Ph−が望ましい(前記mは、5以上の整数であり、前記nは、4以上の整数であり、前記Phは、フェニル基を表す)。
【0018】
前記他の課題を達成するために本発明は、ニッケル金属粉末、有機バインダー、有機溶媒及び分散剤を含み、前記分散剤が上述のリン酸系分散剤である伝導性ペースト組成物を提供する。
【0019】
前記化学式1のリン酸系分散剤の含量は、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して0.001ないし1質量部であることが望ましい。
【0020】
前記さらに他の技術的課題を達成するために本発明は、上述のリン酸系分散剤を使用して、ニッケル金属粉末を分散させるステップを含むニッケル金属粉末の分散方法を提供する。
【0021】
前記さらに他の課題を達成するために本発明は、前記分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含む内部電極を備えるMLCCを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるリン酸系分散剤は、疎水部と親水部とを含む鎖を有することによって最適な分散効率を達成でき、このように、分散効率が改善されることによって、ニッケル金属粉末を含む伝導性ペースト組成物を製造するとき、ニッケル金属粉末の凝集を抑制できて、多量のニッケル金属粉末を前記ペースト組成物に使用できる。このように強化されたニッケル金属粉末の含量によって、MLCCの製造時、電気的特性及び機械的特性がさらに改善された内部ニッケル電極を製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0024】
ニッケル金属粉末の表面は、塩基性であり、酸性の分散剤を使用して分散度を改善することができる。本発明では、ニッケル金属粉末の表面とさらに吸着し易いような構造を有し、分散度がさらに改善されたリン酸系分散剤として、端部が親水部及び疎水部を含む鎖であるリン酸系分散剤を提供する。
【0025】
本発明によるリン酸系分散剤は、下記化学式1の一般式で表せる:
【0026】
【化3】

【0027】
式のうち、B及びBは、それぞれ独立に親水部と疎水部とを含む鎖を表し、x及びyは、それぞれ独立に0または1の整数であるが、同時に1にはならない。
【0028】
前述した化学式1のリン酸系分散剤は、リン酸(HPO)に存在するヒドロキシル基の水素原子を、親水部及び疎水部を含む鎖に置換させた形態を有する。このように、端部の親水性及び疎水性を適切に調節することによって、単純な構造の酸性分散剤と比較して、ニッケル金属粉末の表面に対する吸着能を改善して分散能を向上させることができる。
【0029】
リン酸に存在する一つのヒドロキシル基の水素原子が親水部及び疎水部を含む鎖に置換された例としては、下記化学式2に示すリン酸モノエステルが好ましく挙げられ、二つのヒドロキシ基の水素原子が何れも親水部及び疎水部を含む鎖に置換された例としては、下記化学式3のリン酸ジエステルが好ましく挙げられる:
【0030】
【化4】

【0031】
前記X及びXは、それぞれ同一または異なる親水部を表し、前記Y及びYは、それぞれ同一または異なる疎水部を表す。
【0032】
前記化学式2または3のリン酸エステルは、酸性を帯びていて、塩基性であるニッケル金属粉末の表面に容易に吸着されて分散度を改善でき、中心に存在するリン(P)原子の隣に親水性作用基が位置し、親水性基によってリン原子とは分離されて疎水性作用基が位置するように分散剤の構造を制御することによって、ニッケル金属粉末に対する吸着能をさらに強化させて分散度の向上をさらに期待できる。
【0033】
本発明の一具現例によれば、前記化学式1ないし3で使われる親水部としては、ヘテロアルキレン基などが望ましい。前記ヘテロアルキレン基は、炭素数1ないし30の直鎖型または分枝型アルキル基の鎖内部に−O−、−N−、−S−などのヘテロ原子を含んでいる作用基であって、代表的な例としては、−(OCHCH−が挙げられる(前記mは、5以上の整数であって、7ないし15の範囲が望ましく、最も望ましくは、9である)。−(OCHCH−が親水部として使われる最端部の酸素は、疎水部と隣接するように配列されることがさらに望ましい。
【0034】
本発明の一具現例によれば、前記化学式1ないし3で使われる疎水部としては、アルキルアリール基、アルキルビニル基が望ましい。前記アルキルアリール基は、炭素数1ないし30の直鎖型または分枝型アルキル基がアリール基の一つ以上の水素原子と置換されている形態を表し、具体的にはCH−(CH−Ph−がさらに望ましく(式のうち、nは4以上の整数であり、Phはフェニル基を表す)、特に、ノニルフェニル基などがさらに望ましい。前記アルキルビニル基は、炭素数1ないし30の直鎖型または分枝型アルキル基がビニル基の一つ以上の水素原子と置換されている形態を表し、例えば、ノニルビニル基が望ましい。
【0035】
本発明による前記化学式1のリン酸系分散剤としては、下記化学式4または5の化合物が最も望ましい。
【0036】
【化5】

【0037】
前述したような本発明による前記化学式1のリン酸系分散剤は、次のような反応式1によって製造できる。
【0038】
【化6】

【0039】
前記Bは、親水部及び疎水部を含む鎖を表し、Xは、前記ハロゲン原子を表す。
【0040】
前記反応式のように、BOHを過量のジメチルハロリン酸塩、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)および塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で反応させてBを前記リン酸塩に結合させた後、メタノール内でBrSi(CHと共に還流させるか、または水酸化ナトリウム水溶液で還流させることによって、前記メトキシ基からメチル基を脱保護させることによって、所望のリン酸モノエステルを製造できる。
【0041】
リン酸ジエステルの場合には、前記のような工程をもう一度行うことによって(前記反応式1の右下に示す反応)、水素原子を親水部及び疎水部を含む鎖に置換させることができる。
【0042】
前述したような本発明によるリン酸系分散剤は、ニッケル金属粉末の分散能を改善してこれら粒子の凝集を抑制できて伝導性ペースト組成物に有用である。本発明による伝導性ペースト組成物は、ニッケル金属粉末、有機バインダー、及び有機溶媒を含み、ここに、前記化学式1のリン酸系分散剤が添加される。前記化学式1のリン酸系分散剤は、前述したように、疎水部及び親水部を含む鎖をその構造内に含む。
【0043】
本発明による伝導性ペースト組成物は、MLCCのニッケル内部電極を使用するために、従来に知られている成分をそのまま使用できる。但し、分散剤として本発明による前記化学式1のリン酸系分散剤を使用する。
【0044】
前記ペースト組成物で使われるニッケル金属粉末は、公知の多様な方法で製造でき、液相法あるいは気相法の何れも可能である。その粉末のサイズにおいても制限はない。前記伝導性ペースト組成物への使用に適切な有機バインダーとしては、例えば、エチルセルロースが使われ、前記有機溶媒としては、テルピネオール、ジヒドロキシテルピネオール(DHT:Dihydroxy Terpineol)、1−オクタノールケロセンなどを使用できる。
【0045】
本発明による伝導性ペースト組成物において、前記ニッケル金属粉末の含量は、30ないし80質量%、前記有機バインダーの含量は、0.5ないし20質量%、前記有機溶媒の含量は、10ないし50質量%であることが好ましい。ここに、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して本発明による前記リン酸系分散剤が約0.001ないし1.0質量部の割合で添加されることが好ましい。前記リン酸系分散剤の含量が0.001質量部未満ならば、十分に分散させられないおそれがあり、1.0質量部を超過する場合には、過剰の分散剤がペーストの粘度を上昇させるおそれがある。その他の物質の含量関係において、伝導性ペースト組成物の総質量に対して前記有機バインダーの含量が1質量%未満ならば、バインダーとしての役割が不十分になるおそれがあり、10質量%を超過すれば、粘度が高まるおそれがある。伝導性ペースト組成物の総質量に対して前記有機溶媒の含量が20質量%未満ならば、粘度が高まり、60質量%を超過すれば、伝導性が低下する恐れがある。
【0046】
しかし、このような組成は、望ましい一範囲に過ぎず、使用しようとする用途によって多様な組成を有しうる。特に、本発明によるリン酸系分散剤を使用する場合、分散効率が改善されて粘度の大きな増加なしに、さらに多くの含量のニッケル金属粉末を使用できるという長所がある。
【0047】
また、本発明による伝導性ペースト組成物は、例えば、可塑剤、増粘防止剤、その他の分散剤などの添加剤をさらに含みうる。本発明の伝導性ペーストを製造する方法は、公知の多様な方法が使われうる。
【0048】
本発明のさらに他の態様として、前記リン酸系分散剤を使用してニッケル金属粉末を分散させる分散方法を提供する。このような分散方法は、ニッケル金属粉末を有機バインダーと共に有機溶媒内で分散させる際に、前述したような本発明によるリン酸系分散剤を使用することによって達成されうる。このような方法によれば、ニッケル金属粉末の凝集が最大限抑制されるので、粘度の向上なしに多量のニッケル金属粉末を使用できるという長所を有することは、前述した通りである。
【0049】
分散方法として、例えば、ニッケル金属粉末を有機溶媒に添加するステップと、本発明のリン酸系分散剤を加えて攪拌するステップとを含む方法が挙げられる。
【0050】
本発明のさらに他の態様であって、本発明は、ニッケル内部電極を備えるMLCCにおいて、前記ニッケル内部電極が前述した分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含む。ニッケル内部電極は、電極の特性上、緻密な構造の電極の電気性特性や機械的特性を向上させようとすると、可能な限り多量のニッケル金属粉末を使用する必要がある。本発明によるリン酸系分散剤を使用する分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含むニッケル内部電極は、従来とは違って、さらに多くのニッケル金属粉末が同じ含量の有機溶媒及び有機バインダーを含むペーストに粘度の上昇なしに含まれており、その結果、前記ペーストを塗布した後、焼成によって得られるニッケル内部電極の品質も改善される。すなわち、電極を形成したニッケル金属粉末の充填度が高まるにつれて電極の断絶や、電気的抵抗値の減少などを抑制でき、外部の衝撃による破損も防止できて望ましい。
【0051】
本発明によるMLCCの一具現例を図4に示した。図4のMLCCは、内部電極10及び誘電層20からなる積層体30及び端子電極40で構成される。前記内部電極10は、何れか一側の端子電極に接触させるために、その先端部が積層体30の一側面に露出されるように形成される。
【0052】
本発明のMLCCを製造する方法の一例は、次の通りである。誘電材料を含む誘電層形成用ペーストと本発明による伝導性ペーストとを交互に印刷する。このようにして得られた積層物を焼成する。焼成された積層体30の断面に露出された内部電極10の先端部と電気的及び機械的に接合されるように伝導性ペーストを積層体30の断面に塗布した後さらに焼成することによって、端子電極40が形成される。
【0053】
本発明によるMLCCは、図4の具現例に限定されず、多様な形状、寸法、積層数、回路構成を有しうる。
【実施例】
【0054】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明の技術的思想が下記の実施例に制限されることではない。
【0055】
(実施例1)
下記の反応式2のような工程を経て下記化学式4のリン酸系分散剤を製造した。
【0056】
【化7】

【0057】
前記反応で、ジメチルクロロリン酸塩は、前記出発物質に対して5当量程度の過量で加え、前記1段階工程である結合工程での収率は、約99%であり、2段階工程である脱保護工程での収率は、約80%であった。
【0058】
最終目的物及び出発物質のNMR結果を図1に示した。図1の結果から分かるように、出発物質に存在してない3.8ppmでリン酸塩のメトキシピークが最終物質である化学式4の化合物で観察されたことから、出発物質のヒドロキシル基(−OH)がリン酸基に変換されて化学式4の最終生成物が得られたと確認された。
【0059】
(実施例2)
ニッケル金属粉末(平均粒径:0.5μm、購入先:SHOEI,Japan、製品名:Ni−670)27.93gをEC(エチルセルロース)とDHT(ジヒドロキシテルピネオール)とが1:10の質量比で混合された有機溶液18.68gに加えて混合液を形成した後、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して約1質量部の前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤を配合した。次いで、攪拌器によって攪拌して、前記ニッケル金属粉末を分散させて伝導性ペースト組成物を製造した。
【0060】
(実施例3)
ニッケル金属粉末(平均粒径:0.5μm、購入先:SHOEI,Japan、製品名:Ni−670)27.93gをECとDHTとが1:10の質量比で混合された有機溶液18.68gに加えて混合液を形成した後、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して下記表1に示すように、分散剤を0.5質量部、1質量部、1.5質量部、2質量部、または3質量部含むように前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤を配合した。次いで、攪拌器によって攪拌して、前記ニッケル金属粉末を分散させて、分散剤の含量が異なる5種の伝導性ペースト組成物を製造した。
【0061】
【表1】

【0062】
(比較例1)
前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤の代りに、CH(CHCHCH=CHCH(CHCHOH(オレイルアルコール)を使用したことを除いては、前記実施例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0063】
(比較例2)
前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤の代りに、CH(CHCHCH=CHCH(CHCHNH(オレイルアミン)を使用したことを除いては、前記実施例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0064】
(比較例3)
前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤の代りに、CH(CHCHCH=CHCH(CHCHCOH(オレイン酸)を使用したことを除いては、前記実施例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0065】
(比較例4)
前記化学式4のリン酸モノエステル分散剤の代りに、オレオイルサルコシンを使用したことを除いては、前記実施例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0066】
(実験例1)
前記実施例3で得られた分散剤含量別の分散液に対して、分散剤の分散性を評価するために粘度を測定して図2に示した。粘度計は、ブルックフィールド社のモデルRVIIを使用した。使用したスピンドルは、シリンダ型14番であった。温度は、25℃であった。
【0067】
図2の結果から分かるように、本発明によるリン酸系分散剤は、ニッケル金属粉末100質量部に対して約1.0質量部以下の範囲で十分な分散性を発揮していることが分かり、それよりさらに高い含量が加えられる場合には、分散性が向上する程度があまり大きくないということが分かる。
【0068】
(実験例2)
従来の分散剤との比較のために、前記実施例2、及び比較例1ないし4で得られた分散液に対して、分散剤の分散性を評価するために粘度を測定して図3に示した。使用した粘度系は、ブルークフィールド社のモデルRVIIを使用した。使用したスピンドルは、シリンダ型14番であった。温度は、25℃であった。
【0069】
前記図3に示したように、本発明による前記化学式4のリン酸モノエステルを使用した実施例2の分散液の場合、分散性が最も優秀であるということが分かる。
【0070】
一般的に、粘度が低下すれば、ニッケル金属粉末のパッケージングファクタが増加し、ニッケル電極の膜密度が上昇して伝導度が良好になり、MLCC部品の性能が向上する。分散剤を全く添加していない場合や、前述した従来の分散剤と比較して、本発明による分散剤を添加した場合、ニッケル金属粉末の添加量を増加させられるため、ニッケル電極の膜密度が改善されてさらに優秀な電極状態を有するMLCC部品を提供できる。
【0071】
本発明は、図面に示された実施形態を参考として説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、コンピュータ、移動通信機器のような多様な電子機器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1で製造した化学式4のリン酸モノエステル分散剤及び出発物質のNMR結果を示すグラフである。
【図2】本発明による実施例3による分散剤含量別の、導電性ペースト組成物の粘度測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明による実施例2、及び比較例1ないし4の導電性ペースト組成物の粘度測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明による積層セラミックコンデンサの一具現例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0074】
10 内部電極、
20 誘電層、
30 積層体、
40 端子電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の構造を有することを特徴とするリン酸系分散剤:
【化1】

前記化学式1において、B及びBは、それぞれ独立に親水部と疎水部とを含む鎖を表し、
前記x及び前記yは、それぞれ独立に0または1の整数であるが、同時に1にはならない。
【請求項2】
前記化学式1のリン酸系分散剤は、化学式2または化学式3の構造を有することを特徴とする請求項1に記載のリン酸系分散剤:
【化2】

前記化学式2または化学式3において、
及びXは、それぞれ同一または異なる親水部を表し、
及びYは、それぞれ同一または異なる疎水部を表す。
【請求項3】
前記親水部は、ヘテロアルキレン基であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸系分散剤。
【請求項4】
前記疎水部は、アルキルアリール基またはアルキルビニル基であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸系分散剤。
【請求項5】
前記親水部において、
前記Xは−(OCHCH−であり、
前記Xを含む場合、前記Xは−(CHCHO)−であり、
前記mは、5以上の整数を表すことを特徴とする請求項2に記載のリン酸系分散剤。
【請求項6】
前記疎水部は、CH−(CH−Ph−であり、
前記nは、4以上の整数であり、
前記Phは、フェニル基を表すことを特徴とする請求項2に記載のリン酸系分散剤。
【請求項7】
化学式1の化合物:
【化3】

前記化学式1において、B及びBは、それぞれ独立に親水部と疎水部とを含む鎖を表し、
前記x及び前記yは、それぞれ独立に0または1の整数であるが、同時に1にはならない。
【請求項8】
前記化学式1の化合物は、化学式2または化学式3の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の化合物:
【化4】

前記X及び前記Xは、それぞれ同一または異なり、ヘテロアルキレン基であり、
前記Y及び前記Yは、それぞれ同一または異なり、アルキルアリール基、またはアルキルビニル基であることを特徴とする化合物。
【請求項9】
前記Xが−(OCHCH−であり、
前記Xを含む場合、前記Xが−(CHCHO)−であり、
前記mは、5以上の整数であり、
前記YがCH−(CH−Ph−であり、
前記Yを含む場合、前記YがCH−(CH−Ph−であり、
前記nは、4以上の整数であり、
前記Phは、フェニル基であることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
ニッケル金属粉末、有機バインダー、有機溶媒及び分散剤を含み、
前記分散剤は、請求項1ないし6のうち何れか1項に記載のリン酸系分散剤であることを特徴とする伝導性ペースト組成物。
【請求項11】
前記リン酸系分散剤の含量は、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して0.001ないし1質量部であることを特徴とする請求項10に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項12】
前記請求項1ないし6のうち何れか1項に記載のリン酸系分散剤を使用してニッケル金属粉末を分散させるステップを含むことを特徴とするニッケル金属粉末の分散方法。
【請求項13】
請求項12に記載の分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含む内部電極を備えることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−21475(P2007−21475A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380100(P2005−380100)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】