説明

リン酸鉄リチウム、その製造方法及び電極剤としてのそれの使用

本発明は式LiMPOの化合物の生成方法が記載されており、ここにおいてMは第1遷移系列からの少なくとも一つの金属を表しており、以下のステップ: a) 沈澱を形成するためそしてそれによる前駆体懸濁物を生成するための、少なくとも一つのLi源、少なくとも一つのM2+源及び少なくとも一つのPO3−源を含む前駆体混合物の生成; b) 前駆体懸濁物中の粒子のD90値が50μm未満となるまでの、前駆体混合物及び/又は前駆体懸濁物の分散又は粉砕処理;及び c) b)により、望ましくは熱水条件の下での反応により得られた前駆体懸濁物からのLiMPOの取得;からなる。この方法により取得可能は材料は特に有利な粒径分布及び電極に使用した場合の電気化学的特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はリン酸鉄リチウムの製造方法、この方法によって取得可能な非常に小さな粒径及び狭い粒径分布を有する材料、及び特に二次電池でのそれの使用に関する。
【0002】
合成リン酸鉄リチウム(LiFePO)をリチウムイオン電池の陰極材料代替物として使用することは、先行技術から既知である。これはA.K.Padhi,K.S.Nanjundaswamy,J.B.Goodenough,J.Electrochem.Soc.Vol.144(1977)に初めて記載され、例えば米国特許第5,910,382号明細書にも開示されている。
【0003】
リン酸鉄リチウムのようなリン酸を二次リチウム電池用正極として使用することは、国際公開第02/099913号パンフレットにも記載されており、この中で、等モルのLi,Fe3+及びPO3−水溶液から生成するため、固体混合物を生成するように水が蒸発され、その後純粋なリン酸Li及びFe前駆体を生成するために固体混合物を500℃以下の温度にて分解し、そして次に前駆体を800℃以下の温度にて減圧下にて反応させることによりLiFePO粉末が得られている。
【0004】
残りの焼結工程は、周知のように、先行技術から既知である。欠点として第一に開始化学物質(例えば、シュウ酸鉄)の高い材料費が挙げられる。焼結工程の間の保護ガスの消費もかなりの量であり、COのような毒性副産物も焼結の間に形成される。生成物の粒径分布はしばしば非常に広く、二峰性であることも見出されている。更なる製造工程が、例えば、国際公開第02/083555号パンフレット、欧州特許出願公開第1094523号明細書、米国特許出願公開第2003/0124423号明細書及びFranger et al.,Journal of Power Sources 119−121(2003),pp.252−257から知られている。
【0005】
特開2002−151082号公報にも、リン酸鉄リチウム、その製造方法及びそれを用いた二次電池が記載されている。リン酸鉄リチウムの製造方法は、少なくとも二価の鉄イオンとリン酸イオンとのモル比がおおよそ1:1となるようにリチウム化合物、二価の鉄化合物及びリン酸化合物を互いに混合し、極性溶媒及び不活性ガスを添加した密閉容器中にて少なくとも100℃からせいぜい200℃までの温度範囲にて反応させて混合物を作ることを特徴としている。この方法にて得られたリン酸鉄リチウムは続いて物理的に粉砕されることが可能である。
【0006】
有効なリン酸鉄リチウムは既に先行技術による方法を用いて調達可能であるが、それにもかかわらず従来の製造方法は非常に小さな粒径及び非常に狭い粒径分布を備えた崩れやすいリン酸鉄リチウムを取得することが不可能であるという欠点を備えている。
【0007】
従って、非常に小さな粒径及び非常に狭い粒径分布を備えたリン酸鉄リチウムの好適な製造方法に対する多数の要求があり、これは二次電池の電極材料への具体化が成功可能であり、これは非常に好ましい電気化学的性質を有している。
【0008】
従って、リン酸鉄リチウムの製造方法を提供することが本発明の目的であり、これは先行技術の欠点を回避し、特に充電式電池の電極にことのほか好適な材料を提供する。
【0009】
上記目的は請求項1に係る方法による本発明によって達成される。有利或いは望ましい改良は従属請求項に示される。
【0010】
本発明による方法はLiFePOを生成するだけでなく、一般式LiMPOの別の化合物を生成するために使用されることが可能であり、ここにおいてMは第1遷移系列からの少なくとも一つの金属を表す。一般的にMはFe,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Zr及びLaからなる群に属する金属の少なくとも一つから選択される。Mは特に望ましくはFe,Mn,Co及び/又はNiから選択される。しかしながら、望ましくはMは少なくともFeからなる。
【0011】
Mにとって化合物LiMPO中の二つ以上の遷移金属を意味することも可能であり、一例として、LiFePO中の鉄は上記群から選択される一つ以上の別の金属、例えばZnによって部分的に置換されても良い。LiFePOは特に望ましい。本発明による方法は望ましくはLiMPOを混じりけのない相の形態で生じさせる。
【0012】
従って、本発明によると最終生成物であるLiMPOの非常に狭い粒径分布及び非常に小さな粒径は、LiMPOの製造方法において少なくとも一つのLi源、少なくとも一つのM2+源及び少なくとも一つのPO3−源を含む懸濁物又は前駆体混合物の激しい分散又は粉砕(milling)処理によって獲得可能であることが驚くべきことに見出された。
【0013】
前駆体混合物の分散又は粉砕(milling)処理の本発明による使用は、激しい混合をもたらし、同時に、懸濁物中の粒子の凝集体の寸法の減少又は凝集体の除去をもたらす。これは従来の低速での撹拌によっては達成されない。
【0014】
当業者に好適であると思われ、そして激しい混合と同時に懸濁物中の粒子の凝集体の寸法の減少又は凝集体の除去を達成するために十分な剪断力又は乱流を発生させ、その結果50μm未満のD90値をもたらすあらゆる装置が、本発明による分散又は粉砕処理の実施のために使用可能である。望ましい装置は(ポンプロータを備えた、或いは備えていない)分散手段、ウルトラトラックス(Ultraturrax)、コロイドミル又はマントン−ゴーラン(Manton−Gaulin)ミルのような粉砕機、強力ミキサ、遠心分離ポンプ、直列ミキサ、注入ノズルのような混合ノズル又は超音波装置からなる。この種の装置それ自身は当業者に既知である。前駆懸濁物(上記参照)の平均粒径に対し所望の効果を得るために要される設定は、特別な種類の装置によるお決まりの試験を用いて決定可能である。
【0015】
多くの場合、本発明による分散又は粉砕処理の一環として、処理される混合物又は懸濁物の少なくとも5kW/m、とりわけ少なくとも7kW/mの度合いにて、前駆体懸濁物中へ力が導入される。この力の導入は特別な装置に対する既知の方法、例えばウルトラトラックス(Ultraturrax)撹拌器を用いた場合、式P=2・π・n・Mを用いて決定可能であり、ここにおいてMはトルクを表し、nは回転速度を表す。
【0016】
本発明の更なる望ましい実施の形態によると本発明による分散又は粉砕処理の内に前駆体懸濁物中へ導入されたエネルギーは、処理される混合物又は懸濁物の少なくとも5kWh/m、とりわけ少なくとも7kWh/mである。この場合、必須ではないが、力の導入のために上に示した値を満たすことも望ましい。
【0017】
驚くべきことに、本発明による生成の間の分散又は粉砕処理の代わりに完成品のLiMPOを粉砕することでは、たとえそれが同程度の粒径分布を得るために試みられたとしても、LiFePO粉末の相当する有利な性質をもたらさないということも見出された。
【0018】
本発明はこの理論的なメカニズムに限定されないが、本発明による分散又は粉砕処理で、混合された懸濁物の生成の間に最初に形成される特に巨大な結晶凝集体が防止され、或いは少なくともそれらが形成される程度が減少することが推測される。これらの結晶凝集体は中間生成物としてのLi及びM2+のリン酸塩にも(一つには)起因し得、これはそれらの濃度に依存して、より巨大な結晶片及び/又は凝集体の形成によって粘度上昇をもたらし得る。従って、本発明の特に望ましい実施の形態によると、高混合作用(又は剪断作用)が混合物又は懸濁物中での巨大な結晶又は結晶凝集体の形成を防止し、同時に、高核形成比率を実現するのに十分である装置を、前駆体混合物又は懸濁物の分散処理のために利用することは可能である。好適な装置の限定されない例については既に上述している。
【0019】
前記結晶凝集物又は結晶片はまた、可溶性Li源、可溶性M2+源及び(可溶性)PO3−源からの規定の前駆体生成物の沈殿で形成されることも可能である。本発明の以下の実施例において、例えばFe2+源の水溶液、特に硫酸鉄(II)7水和物FeSO・7HOの水溶液及び液体PO3−源、特に85%濃度のリン酸が最初の分量として要され、LiOH水溶液の新たな沈殿物、藍鉄鉱(Fe(PO水和物)の新たな沈殿物が水性Li源特にLiOH水溶液のゆっくりとした添加により形成される。これに関連して、最初の結晶形成の開始前から沈殿終了までずっと、巨大な結晶片又は結晶凝集体の形成の程度を減少させ防止することが分散又は粉砕処理にとって望ましい。その後の望ましい熱水処理の前に、均質な前駆体混合物又は懸濁物は、望ましくは藍鉄鉱(適切な場合Liイオンを含浸したもの)、リン酸リチウム及び/又は水酸化鉄を含む固形分と共に分散又は粉砕ユニットを利用して存在する。この(これらの)中間体生成物を分離する必要はない。熱水容器中に存在する間に(1ポット工程)前駆体混合物又は懸濁物を化合し及び/又は沈殿させると望ましい。
【0020】
従って、本発明による分散又は粉砕処理は、沈殿が非常に均一に起こり、おおよそ同じ寸法の多数の小さな結晶核からなる均一な混合物が形成されることを確実にする。これらの結晶核は次に、特にその後の熱水処理の間に、非常に狭い粒径分布を備えた最終製品LiMPOの一様に成長した結晶を形成するよう反応可能である。原理上は、本発明の関係において熱水処理に代替するものとして、適切な場合、母液が例えば濾過及び/又は遠心分離によって分離された後に、本発明による分散又は粉砕に続いて前駆体混合物から形成される沈殿物を乾燥及び適切な場合焼結することも可能である。しかしながら、熱水処理が望ましく、最適な結果をもたらす。
【0021】
所望の効果を得るために、本発明による分散又は粉砕処理を、従って、望ましくは前駆体混合物からの沈殿物の形成の間又は形成前に、巨大な結晶核又は凝集体の形成を防止するため及び/又はそのような核又は凝集体を粉砕し均質化するために、開始しても良い。50μm未満の懸濁物中の粒子のD90値に達することが意図である。前駆体懸濁物中の粒子のD90値は最大でも25μmが望ましく、特に最大でも20μm、更に望ましくは最大でも15μm、これらの値が完成生成物の優れた特性を提供することが解明されている。
【0022】
本発明のある実施の形態によると、本発明による分散又は粉砕処理はまた前駆体混合物からの沈殿物の形成の後に、但し、上述のD90値に達するという条件で、行われる。
【0023】
驚くべきことに、本発明による分散又は粉砕処理は望ましくはリン酸鉄リチウムを形成する最終反応前、特に熱水処理の終了前に行われるべきであり、最適な結果に到達するため、これは前駆体混合物の沈殿に続いて行われる。しかしながら、熱水処理の前及び処理の間の前駆体混合物の処理が、本発明による分散又は粉砕処理であると見なされる。
【0024】
本発明による方法の重要な利点の一つは、生成されたLiMPOの粒径分布を著しく再現可能な方法にて制御することが可能であることであり、その結果好ましい電気化学的性質も広範囲のばらつきがない状態で安定して維持されることも可能である。
【0025】
本発明において、Li源、M2+源及びPO3−源の選択に基本的には制約はない。当業者にとってよく知られた或いは好適であると思われる全ての出発材料を使用することが可能である。非常に広範囲のリチウム化合物、Mの二価の化合物及びリン酸化合物を合成原材料として好適に組み合わせることが可能である。Li及びMの化合物又は可溶性塩は及び液体又は溶解性PO源が望ましい。フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム又はリン酸リチウムを、とりわけ好適なリチウム化合物の限定されない例として列挙することが可能である。特にLiOHが望ましい。
【0026】
フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄(iron iodide)、硫酸鉄、リン酸鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄又は酢酸鉄のような鉄の有機塩を、この場合、例えばM=FeのMの二価の化合物の限定されない例としてとりわけ列挙することが可能である。特に硫酸鉄が望ましい。MがFe以外の金属を表す場合、対応する化合物を使用することが可能である。
【0027】
オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、テトラリン酸、リン酸水素又はリン酸二水素、例えばリン酸アンモニウム又は無水リン酸アンモニウム、リン酸リチウム又はリン酸鉄或いはそれらの所望の混合物を、とりわけリン酸化合物の限定されない例として言及することが可能である。特にリン酸が望ましい。
【0028】
その上、LiOHがLi源として使用され、リン酸がPO3−源として使用される場合、LiOHの添加によりリン酸を中和することが可能であり、その結果前駆体混合物中に沈殿が開始する。
【0029】
本発明によると、少なくとも一つのLi源、少なくとも一つのM2+源及び少なくとも一つのPO3−源を含む如何なる液体又は流体混合物も前駆体混合物と見なされる。
【0030】
本発明によると、沈殿物の少なくとも部分的な形成の後の如何なる液体又は流体前駆体混合物も前駆体懸濁物と見なされる。沈殿物はLiMPO又は中間生成物を含んでいても良い。
【0031】
一般的に、前駆体混合物は溶媒、特に極性溶媒を含んでいる。言及され得る極性溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、シクロヘキサノン、2−メチルピロリドン(pyrollidone)、エチルメチルケトン、2−エトキシエタノール、プロピレンカルボネート、エチレンカルボネート、ジメチルカルボネート、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド又はそれらの混合物が挙げられる。水が望ましい溶媒である。水溶性溶液からのLiMPOの湿性沈殿物が、本発明において望ましいものであり、その結果行われることが可能である。従って、本発明によると、既知の出発材料又は溶液又は懸濁物から開始することが可能である、このことはLiMPOの生成に関する当業者に良く知られている。特に、溶液からの湿性沈殿物で有名な処方及び工程を本発明によって加えて提供される分散又は粉砕処理と共に使用することが可能である。前駆体混合物の製造の間又は少なくとも一つのLi源、少なくとも一つのM2+源及び/又は少なくとも一つのPO3−源の組合せの間に使用される温度は、望ましくはおおよそ20乃至80℃の間、特に25乃至60℃の間の範囲に位置するよう選択される。
【0032】
本発明による方法の望ましい実施の形態によると、前駆体混合物又は前駆体懸濁物の直接的な蒸発又は乾燥が存在しない。また、望ましい実施の形態によると、前駆体混合物又は前駆体懸濁物の焼結も存在しない、なぜならこれは得られた最終生成物の特性に悪影響を与える可能性があるからである。むしろ、驚くべきことに最良の結果は前駆体混合物又は前駆体懸濁物の熱水処理によって得られるということが見出され、その後十分に反応したLiFePOの乾燥及び適切な場合焼結が続く。
【0033】
本発明との関連で、前駆体混合物の熱水条件の下での変換という用語は、室温を越える温度及び1バールを越える蒸気圧での如何なる処理も意味すると理解される。熱水処理それ自体は既知で当業者に良く知られている方法で実施されることが可能である。100乃至250℃、特に100乃至180℃の間の温度及び1バール乃至40バール、特に1バール乃至10バールの蒸気圧を熱水条件に利用することが望ましい。可能性のある熱水処理の一つの例としては、特開2002−151082号公報に記載されており、開示の内容はこの点において参照することによりここに組み込まれる。この場合、ある実施の形態によると、前駆体混合物は密閉又は耐圧容器中にて反応される。反応は望ましくは不活性又は保護ガス雰囲気中にて行われる。好適な不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物が挙げられる。例えば、熱水処理は0.5乃至15時間、特に3乃至11時間の間実施され得る。単に限定されない例として、以下の特定の条件が選択され得る:50℃(前駆体混合物の温度)から160℃へ1.5時間の昇温時間、10時間の160℃での熱水処理、160℃から30℃への3時間の冷却。
【0034】
本発明の望ましい実施の形態によると、第一にM2+源及びPO3−源は水溶性媒体中にて、特に不活性ガス雰囲気下にて混合され、次に望ましくはもう一度不活性ガス雰囲気下にてLi源が添加される。遅くとも前駆体混合物の中和の増加に伴って沈殿が開始するとき、分散又は粉砕処理が次に開始した後に熱水条件の下での反応が続く。熱水処理の後、本発明の一つの実施の形態によると、例えば濾過及び/又は遠心分離による懸濁物からのLiMPOの分離が続く。その上、本発明の実施の形態によると、分離されたLiMPOは、塩負荷を減少させ除去するために、特に水で洗浄されることが可能である。特に保護ガス又は不活性雰囲気の下でのLiMPOの乾燥及び/又は焼結は、同様に熱水処理に続く。一般的に念入りな乾燥/再乾燥が最終生成物の電気化学的な質のために、要求される、なぜならば水分のわずかな痕跡でさえ、Li(蓄)電池における材料の電気化学的な使用の間に導電性塩LiPFが分解するといった問題を引き起こす可能性がある。焼結が状況に応じて実施され得る。
【0035】
LiMPOの乾燥はおおよそ50乃至750℃の広い温度範囲で実施されることが可能であり、乾燥温度はまた経済的考慮に依存する。LiMPOが炭素含有又は電子伝導物質或いはそれらの前駆体がない状態で生成されると(以下参照)、たいていの場合おおよそ50乃至350℃の間の乾燥、例えば3時間250℃で窒素5.0、真空又はフォーミング・ガスを用いると、十分である。
【0036】
炭素によるプレコートを生じさせるため、LiMPOの生成が炭素含有又は電子伝導物質或いはそれらの前駆体の存在した状態で実施されると(以下参照)、一般的に500又は700℃を超える温度での高温乾燥が選択される。特に焼結が実施され得、このような場合、例えば加熱は3時間おおよそ750℃にて窒素5.0を用いて実施される。炭素含有又は電子伝導物質の所望の導電性被膜が十分に高い温度でのみ得られる。本発明の望ましい実施の形態によると、前駆体混合物の成分は以下の二段燃焼率にて存在する。
a. 1モルFe2+:1モルPO3−:1モルLi(1:1:1)
b. 1モルFe2+:1モルPO3−:3モルLi(1:1:3)
c. a.及びb.の間のあらゆる混合比
【0037】
2+鉄イオンのPO3−に対する少なくともモル比はおおよそ1:1であることが望ましい。また、上記の二段燃焼率は経済率において望ましく、経済的理由においても望ましいが、絶対必要なわけではない。特に熱水工程においてLiMPOは優先的に最も熱力学的に安定な相として形成し、そしてその上、上述の比率からの逸脱は、場合によっては沈殿物又は形態学的な特徴に影響を与えるために意図的でさえある。一般的に、上記の二段燃焼率から20%、或いは少なくともおおよそ10%の逸脱を許容することでさえ可能である。
【0038】
熱水工程はまた、乾燥粉末プレミックス又は前駆体混合物から代案として実行できる焼結工程と比較して保護ガスの需要が大幅に減少することに関する利益を提供する。その上、粒子形態及び粒径分布が単なる焼結工程よりはるかに正確に制御可能であるということが驚くべきことに発見された。
【0039】
非常に巨大なLiFePOの粒子が、高充電/放電比率(高電荷/放電電流比率)にて、動力学的に制御された能力の制約をもたらし、これは蓄電池から取り出されることが可能である、すなわち、放電の間にリチウムイオンはもはやLiFePO/FePO境界層を十分迅速に通過して移動することが可能ではなく、その結果電極の比容量がかなり高い充電/放電比率にて低下する。しかしながら、高電荷/放電電流比率のときでさえ十分な比容量は、リン酸鉄リチウムの商業的利用に関して重要である。
【0040】
本発明者によって実施された試験はまた、同様に小さな粒径及び狭い粒径分布か或いは優れた電気化学的特性かの何れかを、単に再粉砕及び/又は本発明の分散又は粉砕処理なしで生成された完成LiMPOを選別することにより達成することが可能ではないことを示している。これはまた粉末前駆体混合物を単に直接焼結することにより生成されたLiMPOに関してもあてはまる。これは、本発明による分散又は粉砕処理によって生成される均一で小さな核の結晶化及び完成LiMPO生成物を生じさせるための反応の基盤の形成に起因するということが想定される。得られた微細で均一な粒径は、本発明による方法を用いて生成されたLiMPOの乾燥又は焼結についてでさえ、好ましい影響を有している。
【0041】
従って、本発明の更なる態様は上記の方法により取得可能なLiMPOに関する。この材料は望ましくは粒子のD90値が最大で25μm、特に最大で20μm、特に望ましくは最大で15μmである。平均粒径(D50値)は0.8μm未満、望ましくは0.7μm未満、特に0.6μm未満、特に望ましくは0.5μm未満である。粒径分布は望ましくは少なくとも実質的には正規分布(monomodal)である。一つの実施の形態によると、D10値は0.35μm未満、望ましくは0.40μm未満であるが、狭い粒径分布でより高くても良く、D90値に依存する。D90値は望ましくは3.0μm未満、望ましくは2.5μm未満、特に2.0μm未満である。
【0042】
本発明によるLiMPOの粒径分布は、既に上述したように、望ましくは非常に狭く;特に望ましい実施の形態によると、D90値及びD10値の間の差異はわずか2μm、望ましくはわずか1.5μm、特にわずか1μm、特に望ましくはわずか0.5μmである。
【0043】
驚くべきことに、本発明によるLiMPOの上述の利点はまた、電極材料の生成の間に、例えば炭素含有材料のような更なる成分によるその後の加工の間に特別な利点も提供するということが明らかになった。例えば、本発明によるLiMPOは明らかに、ここに規定されるようなその特定の粒径分布によって、より好ましくそして容易に電極材料を形成する加工を可能とし、例えば炭素含有導電性材料と特に密接に一体化することを可能とする。その結果として、本発明の更にもう一つの態様はここに規定されるようなLiMPO含有組成物、特に電極材料に関する。
【0044】
本発明の更なる態様は、上記規定されたようなLiMPO材料のリチウム蓄電池又は二次(再充電可能な)Li電池における電極材料としての使用に関する。完成LiMPO生成物の一次粒子(=結晶)にとってSEM画像における形態及び寸法に関して実質的に均一であることが望ましい。それに反して、本発明のよる方法を使用して生成されないLiMPOは、不均一な寸法又は不均一な結晶形態の一次粒子を有している。
【0045】
本発明の望ましい実施の形態によると、前駆体混合物の生成又は沈澱及び/又は熱水条件の下での反応は、更なる成分、特に電子伝導物質の存在下において行われる。これは望ましくは炭素のような炭素含有固形物であって良く、特に導電性炭素又は炭素繊維であると良い。電子伝導物質又は炭素含有固体物の前駆体を使用することも可能であり、この前駆体はLiMPOの乾燥又は焼結の間に炭素粒子へ変換され、例としては糖化合物である。好適な有機化合物の更なる実施例については国際公開第02/083555号パンフレットに言及されており、開示の内容はこの点において参照することによりここに組み込まれる。均一分布は完成LiMPO生成物に含まれる炭素粒子にとって望ましい。本発明による特に望ましい実施の形態によると、使用される炭素含有固形物は前駆体混合物の反応において結晶核として採用される。
【0046】
しかしながら、原理上当業者に良く知られた如何なる工程も炭素又は炭素含有導電性材料を導入するため及び/又は更なる成分を混合するために望ましい。完成LiMPOの少なくとも一つの炭素含有固形物例えば導電性炭素での強烈な混合又は粉砕も可能である。更に可能な工程としては、水性又は非水性懸濁物中でLiMPOの粒子の表面に炭素粒子を取り込むことや、LiMPO粉末及び炭素前駆体材料の混合物の熱分解(pyrolosis)が挙げられる。この方法にて得られた炭素含有LiMPOは、例えば一般的にLiMPOに基づき炭素を10重量%まで、望ましくは5重量%まで、特に望ましくは2.5重量%まで含有する。
【0047】
少なくとも一つの炭素前駆体材料、望ましくは糖又はセルロースのような糖質特に望ましくはラクトースが本発明によるLiMPO粉末に例えば練り込みによって混合される熱分解(pyrolysis)工程は、補助剤として水を添加することが可能であり、技術用語として望ましい。ある実施の形態によると、これは技術用語において望ましいが、炭素前駆体材料が今までのところ未乾燥の湿性LiMPO濾過ケーキへ添加される。続いて、本発明によるLiMPO粉末の混合物及び炭素前駆体材料が保護ガス、空気又は真空の下で望ましくは50℃乃至200℃の温度にて乾燥され、保護ガス、例えば窒素5.0又はアルゴンの下で例えば500℃及び1000℃の間、望ましくは700℃及び800℃の間の温度まで加熱され、その操作の間に炭素前駆体材料は熱分解され炭素を形成する。これは望ましくは粉砕又は凝集体の除去処理がその後に続く。
【0048】
本発明の更なる望ましい実施の形態によると、使用されるLiMPOのBET表面積は、DIN66131(多点測定)によると、おおよそ3.5m/g以上、特に4m/g以上、特に望ましくは5m/g以上、10m/g以上又は15m/g以上でさえある。
【0049】
炭素でプレコートすることによるLiFePOの特性の改良もまたRavet等、要約書No.127,196th ECS−Meeting,Honolulu,H1,10月17−22日(1999)に記載されている。
【0050】
炭素含有量もまた電池電極を形成するLiMPO粉末の加工特性を表面特性を変化させることにより改良し、及び/又は電池電極中の電気的接続を改良する。
【0051】
別の方法として、電子伝導性の顕著な改良はMg2+、Al3+、Ti4+、Zr4+、Nb5+、W6+(S.Y.Chung,J.T.Bloking,Y.M.Chiang,Nature,Vol.1,2002年10月,123)で標的ドープ(targeted doping)することにより可能であるはずである。
【0052】
本発明による更なる態様は、本発明による(状況に応じて炭素含有)LiMPOを含有するLi二次電池又はLi蓄電池に関する。二次電池(リチウムイオン二次電池)自体はこの場合、例えば以下に列挙され特開2002−151082号公報に記載された既知の方法自体で生成されることが可能である。この場合、上述のように得られた本発明のリン酸鉄リチウムは、二次電池の正極用の材料の少なくとも一部として使用される。この場合、まず第一に、本発明のリン酸鉄リチウムは必要とあらば、二次電池の正極の標準的な製造方法によって導電性添加物及び結合剤と混合される。二次電池は次にこの正極と、陰極に通例使用される材料、例えば金属リチウム又は層状炭素化合物、例えば黒鉛とから製造され、そしてまた通例使用されているような非水性電解質溶液、例えばプロピレンカーボネート又はエチレンカーボネート等から製造され、これはLiBF又はLiBFのようなリチウム塩が溶解されており、主成分として生成される。
【0053】
粒径分布の測定
前駆体懸濁物及び生成されたLiMPOの粒径分布を市販の装置を用いて光散乱法の原理で測定する。当業者はこの方法を良く知っており、この点において特開2002−151082号公報及び国際公開第02/083555号パンフレットに示された開示について申し述べ、これは参照することによりここに組み込まれる。本件の場合、レーザー回折測定器具(Mastersizer S,Malvern Instruments GmbH,ヘーレンベルク,独国)及び製造元のソフトウェア(バージョン2.19)を用いて測定ユニットとしてMalvern少量試料分散ユニット,DIF2002で粒径分布を測定した。以下の測定条件を選択した:圧縮範囲;活性幅長2.4mm;測定範囲:300RF;0.05乃至900μm。標本調製及び測定を製造元の使用説明書に従って実施した。
【0054】
D90値は測定試料中の粒子の90%がこの値より小さい又は同じ粒子直径を有している値を示している。従って、D50値及びD10値は測定試料中の粒子の50%及び10%がこれらの値より小さい又は同じ粒子直径を有している値を示している。
【0055】
本発明の特に望ましい実施の形態の一つによると、D10値、D50値、D90値及びD90及びD10値の間の差異について本記載中に引用された値は全ての体積における個別の粒子の体積による比率に基づく。本発明のこの実施の形態によると、ここに開示されたD10、D50及びD90値は、測定試料中の粒子のそれぞれ10体積%、50体積%及び90体積%が示された値より小さい又は同じ粒子直径を有する値を示している。本発明によると、これらの値が維持される場合、特に有利な材料が提供され、比較的粗い粒子(比較的大きな体積比率)の加工特性及び電気化学的製品特性に対する悪影響が避けられる。D10値、D50値、D90値及びD90及びD10値の間の差異について本記載中に示された値にとって、粒子のパーセント及び体積パーセントの両者に基づくことが特に望ましい。
【0056】
組成物(例えば、電極材料)の場合、LiMPO含有の更なる成分に加えて、特に炭素含有組成物の場合、LiMPO粒子は付加的な(例えば炭素含有)材料が加わって巨大な凝集体を形成する可能性があるので、上記光散乱法は誤解を招く恐れのある結果をもたらす可能性がある。しかしながら、この種の組成物におけるLiMPOの粒径分布はSEM画像に基づいて以下の方法で測定されることが可能である:
少量の粉末試料をアセトン中に懸濁し、超音波を10分間使用して分散させる。その直後に、懸濁物を数滴走査型電子顕微鏡(SEM)の標本スライド上へ塗布する。懸濁物の固体物濃度及び水滴の数は、粉末粒子が互いに覆いかぶさらないよう粉末粒子の実質的に単一の層がスライド上に形成されるほどである。水滴は、粒子が沈澱作用で寸法に従って分離する前にすばやく塗布されるべきである。空気中で乾燥させた後、標本をSEMの測定チャンバ中へ移送する。本実施例において、SEMはLEO1530装置であり、これは電界放出電極にて1.5kVの励起電圧及び4mmの標本間隔で操作される。20000の拡大率の少なくとも20の無作為抜粋拡大が標本に要される。これらは各々DIN A4シート上に組み込まれた拡大定規と共に印刷される。できれば、粉末粒子が炭素含有材料とともに形成される少なくとも10の支障なく観察可能なLiMPO粒子から少なくとも20のシートの各々にて無作為に選択され、LiMPO粒子の境界が固形物のないことによって規定され、成長した架橋を導く。しかしながら、炭素材料によって形成された架橋は、粒子の境界に属すると見なされる。これらの選択されたLiMPO粒子の各々について、各々の場合の投影図中での最長及び最短軸が定規を用いて測定され、縮尺比率に基づいて真の粒子直径に換算される。次に、光散乱測定を用いた場合も同じようにLiMPO粒子が寸法階級に分けられる。関連したLiMPO粒子の数が寸法階級に抗してプロットされる場合、その結果は、粒子の数に基づく微分粒径分布(differential particle size distribution)である。粒子数が小さな寸法階級から大きな寸法階級まで累積的に加えられると、累積粒径分布が得られ、なおこれからD10、D50及びD90値が寸法軸に直接的に示されることが可能である。
【0057】
記載の方法はまたLiMPO含有電池電極にも適用される。しかしながら、この場合、粉末試料よりもむしろ新たに切断又は分割した電極の表面が標本スライドへ固定され、SEMの下で調べられる。
【0058】
本発明は以下に示される非限定的実施例に基づいてより詳細にここに説明される。
【実施例】
【0059】
実施例1:熱水処理を含む本発明による方法を用いたLiFePOの生成
反応方程式
FeSO・7HO+HPO+3LiOH・HO→LiFePO+LiSO+11H
【0060】
完成生成物としてのLiFePOを室温にて空気中で酸化しないよう保存することが可能である。
【0061】
上記の反応方程式によってLiFePOを製造すると、注目すべきことにLiFeIIPOがFeII前駆体水溶液から沈殿する。従って、反応及び乾燥/焼結は、Fe又はFePOのような副産物の更なる形成を伴うFeIIIの形成するFeIIの部分的酸化を避けるために保護ガス又は真空の下で実施する。
【0062】
前駆体混合物の生成及び沈殿
417.04gのFeSO・7HOをおおよそ1リットルの蒸留水に溶解し、172.74gの85%濃度のリン酸を撹拌しながらゆっくり添加する。次に一回分として蒸留水を1.5リットルまで注ぎ足す。酸性溶液を撹拌速度400rpmの実験用オートクレーブ(容積:1ガロン)に収容し、おおよそ6−7バールの窒素を注液管(immersion pipe)を経由してオートクレーブへ注ぎ、そして次に安全弁を経由してこの圧力を再び開放する。この処置を二回繰り返す。
【0063】
188.82gの水酸化リチウムLiOH・HOを1リットルの蒸留水に溶解する。
【0064】
分散手段(IKA,ULTPATURRAX(登録商標) 分散チャンバDK25.11を備えたUTL 25 Basic Inline)を、本発明によって分散又は粉砕処理を実施するために、オートクレーブへ安全弁及び底部排出管の間に接続する。分散手段のポンプ方向は底部排出管−分散手段−安全弁である。分散手段を製品説明書に従って中出力(13500rpm)にて開始する。
【0065】
次に、調製されたLiOH溶液を著名な膜ポンプを用いて注液管(immersion pipe)を経由してオートクレーブ中へポンプ注入し(100%置換、180ストローク/分;ポンプの最高パワーに相当)その後におおよそ500乃至600mlの蒸留水でリンスする。操作はおおよそ20分続き、その間に形成された懸濁物の温度はおおよそ35℃まで上昇する。このポンプ注入及びリンスの後、オートクレーブ中の懸濁物を50℃まで加熱する。水酸化リチウムの添加の後、緑茶色の沈殿物が形成される。
【0066】
分散手段はLiOHの添加を開始する前に開始されるが、(LiOH溶液を50℃にてポンプ注入した後に)形成された高い粘度の懸濁物の激しい混合又は粉砕のために、おおよそ合計1時間の間使用される。粒径はこのときD90=13.2μmであった。体積ベースでD90値が同じであった。
【0067】
以下の処置は前駆体懸濁物中の粒径を測定するために使用されることが可能である:先に示した方法に関して、粒径(分布)を決定するための実施例としては、20乃至40mgの懸濁物を15mlの水に懸濁させ、超音波フィンガ(ultrasound finger)を用いて5分間分散させる(定格出力25ワット、60%出力)。これは、測定ユニットにおける迅速な測定がその後に続く。試料の量の正確な設定は、測定ユニットの指示を用いて個別基準で確認されることが可能である(緑測定範囲)。
【0068】
分散手段の使用は、激しい混合及び沈殿した粘性予備混合物の凝集体の除去をもたらす。前駆体懸濁物の懸濁及び結晶化が起こる間、分散手段における事前粉砕又は激しい混合は、おおよそ同じ寸法の多数の小さな結晶核の均一な混合物を生成する。これらの結晶核は続いて起こる熱水処理(以下参照)の間、非常に狭い粒径分布を備えた最終生成物LiFePOの非常に均一に成長した結晶を形成するよう結晶化する。分散処理を用いた出力及びエネルギーの導入は、処理された前駆体混合物/懸濁物あたり各々7kW/m以上又は7kWh/m以上に達した。
【0069】
熱水処理:
いずれの場合にも、新たに調製した懸濁物は実験用オートクレーブ中にて熱水処理される。懸濁物の加熱前に、熱水工程前に存在する空気をオートクレーブから除去するため、オートクレーブは窒素でパージされる。LiFePOはおおよそ100乃至120℃の熱水温度を越えて形成される。材料は熱水工程の後、サイツフィルタを用いて濾過され洗浄される。詳細には:
分散手段のスイッチをオフにして電源を切った後に、一回分を1.5時間にわたって160℃まで加熱し、そして熱水処理を160℃にて10時間実施する。これは3時間にわたる30℃までの冷却がその後に続く。
【0070】
次に、LiFePOは明らかな酸化のないよう例えば穏やかな温度(40℃)にて乾燥キャビネットにて空気中で乾燥させることが可能である。
【0071】
しかしながら、上記のようにして得られた材料にとって以下のように更に加工されることも可能である。
【0072】
リン酸鉄リチウムLiFePOの濾過
熱水処理の後、冷却された懸濁物(最高30℃)を窒素雰囲気の下でオートクレーブの底部排出管を経由させて圧力フィルタ(サイツフィルタとして知られているもの)中へポンプ注入する。この工程において、著名な膜ポンプを、圧力が5バールを越えないように設定する。続いて洗浄水の伝導性が200μS/cm以下に落下するまで濾過ケーキを蒸留水で洗浄する。
【0073】
リン酸鉄リチウムLiFePOの乾燥及び凝集体の除去
濾過ケーキを、5%以下の残含水率まで70℃にて真空乾燥キャビネット中にて一晩事前乾燥し、次に保護ガスオーブン(Linn KS 80−S)中にて200リットル/時間のフォーミングガス(90%N/10%H)流の下で250℃にて更に乾燥させ、<0.5%の残含水率となるようにした。次に、0.08mmスクリーンを備えた実験用回転粉砕機(Fritsch Pulverisette 14)中でLiFePOに対して凝集体の除去を行う。
【0074】
(上記のような熱水処理、乾燥及び凝集体の除去後の分散手段処理で)得られた完成LiFePOの典型的な粒径分布結果が図1に見出される。本発明による生成物中に混乱を引き起こすような大きな粒子がなく都合の良い粒径分布であることを明らかにするため、体積ベースデータを図示する。粒子フラクション(%)に基づく値は以下のとおりである:D50値は0.5μm未満;D10値は0.35μm未満;D90値は2.0μm未満;D90値及びD10値の間の差異は1.5μm未満。
【0075】
以下の処置は粉体試料中の粒径を測定するために使用されることが可能で:粒径(分布)の測定に関する前記実施例に記載された方法に関し、20乃至40mgの粉末試料を15mlの水中に懸濁させ、超音波フィンガ(ultrasound finger)を用いて5分間分散させる(定格出力25ワット、60%出力)。これは、測定ユニットにおける迅速な測定がその後に続く。試料の量の正確な設定は、測定ユニットの指示を用いて個別基準で確認されることが可能である(緑測定範囲)。
【0076】
実施例2:分散手段処理なしでのLiFePOの生成(比較例)
比較の目的のため、実施例1に記載されているのと同じであるが本発明による分散手段を使用することのない合成方法を用いてLiFePOを生成した。その他は同質の反応条件の下で、成長した凝集物構造の比率が高い非常に広い粒径分布が得られた。分散手段を用いていないので、LiOH溶液を添加した後(粒子の数又は体積による比率に基づく)D90値は200μm以上であった。完成LiFePOのかなり粗い粒径分布を図2に図示する(熱水処理、乾燥及び凝集体の除去後、LiFePOが同様に混じりけのない相の形態であるにもかかわらず)。混乱を引き起こすような大きな粒子の存在を明らかにするため、体積ベースのデータを示す。粒子の比率を示すと、粒子の比率(%)に基づくD50値は0.8μmを超えていた。
【0077】
米国特許出願公開第2003/0124423号明細書の第10頁第0015号段落によって調製されたLiFePOは、乳棒を用いて激しく粉砕したにもかかわらず本発明による生成物の粒径分布を達成することは同様にできなかった;0.8μm未満のD50値又は2μm若しくはそれ以下のD90及びD10値の間の差異を実現することは不可能であった。
【0078】
実施例3:熱水処理を含む本発明による方法を用いたLiFePOの生成
分散手段(IKA,ULTRATURRAX(登録商標) 分散チャンバDK25.11を備えたUTL 25 Basic Inline)が最高パワーレベルで操作された以外実施例1に記載されているのと同じ合成方法を用いてLiFePOを生成した。分散処理を用いた出力及びエネルギーの導入は、処理された前駆体混合物/懸濁物あたり各々10kW/m以上又は10kWh/m以上であった。分散手段処理の後の懸濁物の粒径はD90=10.8μmであった。体積ベースのD90値はこれよりわずかに低かった。
【0079】
熱水処理、濾過、乾燥及び凝集物の除去を、実施例1に記載のとおり実施した。この場合完成LiFePOについて結果として生じる典型的な粒径分布が図3から見出されることが可能である。本発明による生成物中に混乱を引き起こすような大きな粒子がなく都合の良い粒径分布であることを明らかにするため、体積ベースのデータを図示する。粒子の比率(%)に基づく値は以下のとおりである。D50値は0.5μm未満;D10値は0.35μm未満;D90値は2.0μm未満;D90値及びD10値の間の差異は1.0μm未満。
【0080】
電気化学的試験において、分散手段を用いて生成された本発明によるLiFePOは、分散手段を使用することなく生成された比較材料と比較して、そしてまた先行技術による純粋な焼結工程によって生成された材料と比較して最も好ましい特性、特に高充電/放電比率を有していた。
【0081】
実施例4:熱水処理を含む本発明による方法を用いたLiFePOの生成
21.894kgのFeSO・7HOを42リットルの脱イオン水に溶解し、9.080kgの85%濃度のリン酸を撹拌しながらゆっくり添加する。酸性溶液をアンカー撹拌器を備えたエナメル2001オートクレーブに初充填として収容し、45rpmで撹拌する。オートクレーブを密閉する前にオートクレーブのヘッドスペースを窒素でパージする。おおよそ5kWの消費電力及び平均7000 1/hの規則正しい生産能力を備えた遠心力ポンプを用いて酸性溶液を沈殿させる。溶液をオートクレーブの底部排出管を経由して除去し、上部フランジを経由してフィードバックする。10.289kgのLiOH・HOを62リットルの脱イオン水に溶解する。このアルカリ性溶液をモノポンプ及び注入ノズルを経由して遠心力ポンプの送出側で循環する酸性溶液へ供給する。この操作は15分間続き、その間に循環溶液の温度は18.3℃から42.1℃まで上昇する。形成された懸濁物を遠心力ポンプを用いて更に45分間循環させ、アンカー撹拌器を用いて45rpmで撹拌する、その工程の間に温度を更に51.1℃まで昇温させる。本発明によると、操作全体にわたって、高レベルの乱流を備えた遠心力ポンプにより、微細粒子懸濁物が形成されることを確実にし、実施例1で達成されるようなものに匹敵する粒径分布を達成することが可能であった。分散処理を経由した出力及びエネルギーの導入は、処理された前駆体混合物/懸濁物あたり各々7kW/m以上又は7kWh/m以上であった。
【0082】
外観のスイッチをオフにして電源を切った後に、オートクレーブを耐圧方法にて密閉し、90rpmにて連続的に撹拌しながら1.5時間にわたって160℃へ加熱し、続いて10時間の間この温度を維持する。それから3時間かけて20℃まで冷却し、実施例1と同じように完成LiFePOの懸濁物がサイツフィルタにて濾過される。濾過物のpHは7.5である。次に、濾過物が480μS未満の導電性を有するまで脱イオン水で洗浄する。白っぽい灰色の固体濾過ケーキは、流動性を有する傾向にあるが、70℃にて真空乾燥キャビネット中にて<100mバールにて一晩乾燥させ、0.08mmスクリーンを備えた実験用回転粉砕機(Fritsch Pulverisette 14)中で凝集体の除去を行う。それから、粒径分布は実施例1にて示されるものと同じ範囲で得られた。
【0083】
実施例5:本発明による方法を用いて生成された材料の炭化
実施例1乃至4由来の1kgの乾燥LiFePO粉末を、112gのラクトース一水和物及び330gの脱イオン水と密に混合し、<5%の残含水率を示すように<100mバール及び70℃にて真空乾燥キャビネット中にて一晩乾燥させる。硬く、もろく乾燥した生成物を手で破壊し、1mmのディスク間隔を備えたディスク粉砕機(Fritsch Pulverisette 13)中で粗く粉砕し、次に保護ガスチャンバオーブン(Linn KS 80−S)中のステンレス製のるつぼ中へ移送する。後者を200 リットル/hの窒素流の下で3時間にわたって750℃まで加熱し、この温度を5時間保持し、次におおよそ36時間にわたって室温まで冷却する。0.08mmスクリーンを備えた実験用回転粉砕機(Fritsch Pulverisette 14)中で、炭素含有生成物は凝集体の除去が行われる。
【0084】
炭素含有材料に関する前記実施例のような粒径分布のSEM分析が以下の値を示した:D50値は0.6μm未満;D90値及びD10値の間の差異は1.5μm未満。
【0085】
例えばAnderson et al.,Electrochem.And Solid State Letters 3(2)(2000),第66−68頁に開示のような薄膜電極の電気化学的試験において、本発明による炭素含有材料(実施例1、3及び4の生成物を発端とする)は、分散手段を使用することなく生成された比較材料や、そしてまた先行技術による純粋な焼結工程によって生成された材料と比較して最も好ましい特性、特に高充電/放電比率を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1に従って本発明により生成されたLiMPOの粒径分布(体積ベース)を示している。
【図2】実施例2に従って本発明により生成されていないLiMPOの粒径分布(体積ベース)を示している。
【図3】実施例3に従って本発明により生成されたLiMPOの粒径分布(体積ベース)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式LiMPOの化合物の製造方法であって、Mは第1遷移系列からの少なくとも一つの金属を表し、以下のステップ:
a. 沈澱を形成するためそしてそれによる前駆体懸濁物を生成するための、少なくとも一つのLi源、少なくとも一つのM2+源及び少なくとも一つのPO3−源を含む前駆体混合物の生成;
b. 前駆体懸濁物中の粒子のD90値が50μm未満となるまでの、前駆体混合物及び/又は前駆体懸濁物の分散又は粉砕処理;
c. b)により、望ましくは熱水条件の下での反応により得られた前駆体懸濁物からのLiMPOの取得;
からなる式LiMPOの化合物の製造方法。
【請求項2】
懸濁物中の粒子のD90値が最大で25μm、特に最大で20μm、特に望ましくは最大で15μmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
Mが少なくともFeからなるか、又はFeを表すことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
MがFe,Mn,Co及び/又はNiからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
LiMPOが混じりけのない相の形態で得られることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
分散又は粉砕処理が前駆体混合物の沈殿中又は前に使用され、沈殿が完了するまで続くことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
高レベルの結晶核を確実にするためそして巨大な結晶及び結晶凝集体の形成を防止するために、分散処理が前駆体混合物の沈殿前に使用されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前駆体混合物又は懸濁物の熱水条件の下での反応前に蒸発が起こらないことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前駆体混合物又は懸濁物の熱水条件の下での反応前に焼結を行わないことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
LiMPOが熱水条件の下での反応に続いて乾燥されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前駆体混合物若しくは懸濁物の生成又は熱水条件の下での転換が少なくとも一つの更なる成分、特に炭素含有若しくは電子伝導物質又は電子伝導物質の前駆体の存在において行われることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
電子伝導物質が炭素、特に導電性炭素又は炭素繊維であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
電子伝導物質の前駆体が炭素含有物質、特に糖化合物であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
使用されるリチウム源がLiOH又はLiCOであることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
使用されるFe2+源がFe2+塩、特にFeSO、FeCl、FeNO、Fe(PO又は鉄の有機塩であることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
使用されるPO3−源がリン酸、金属リン酸塩、リン酸水素又はリン酸二水素であることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
水が前駆体混合物中の溶媒として使用されることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
Li源、M2+源が水溶液の形態で使用され、PO3−源が液体または水溶液の形態で使用されることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前駆体懸濁物中に形成された沈殿がLiMPOの前駆体の少なくとも一つ、特に藍鉄鉱からなり、LiMPOを形成する反応が次に望ましくは熱水条件の下で行われることを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
100及び250℃の間、特に100乃至180℃の温度、及び1バール乃至40バールの圧力、特に1バール乃至10バールの蒸気圧が熱水条件の下で使用されることを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前駆体混合物の成分が以下の二段燃焼率にて存在する:
a. 1モルFe2+:1モルPO3−:1モルLi(1:1:1)
b. 1モルFe2+:1モルPO3−:3モルLi(1:1:3)
c. a.及びb.の間のあらゆる混合比
ことを特徴とする請求項1乃至20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前駆体混合物又は懸濁物の熱水条件の下での結合又は反応が不活性ガス雰囲気の下で、望ましくは同じ容器中で行われることを特徴とする請求項1乃至21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
第一に水溶性媒体中にてM2+源及びPO3−源が混合され、特に不活性ガス雰囲気下にて混合され、次に望ましくはもう一度保護ガス又は不活性ガス雰囲気下にてLi源が添加され、そして次に熱水条件の下で反応が実施されることを特徴とする請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
分散又は粉砕処理が(ポンプロータを備えた、或いは備えていない)分散手段、ウルトラトラックス(Ultraturrax)、コロイドミル又はマントン−ゴーラン(Manton−Gaulin)ミルのような粉砕機、強力ミキサ、遠心分離ポンプ、直列ミキサ、注入ノズルのような混合ノズル又は超音波装置での処理であることを特徴とする請求項1乃至23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
撹拌メカニズム又は同様のもの、特にウルトラトラックス(Ultraturrax)撹拌が請求項1bによる高剪断処理に利用され、力の導入が式P=2πnMによって計算され、ここにおいてMはトルクを表し、nは回転速度を表し、少なくとも5kW/m、とりわけ少なくとも7kW/mであることを特徴とする請求項1乃至24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項11又は12による更なる成分が前駆体混合物の沈澱又は反応において結晶核として使用されることを特徴とする請求項1乃至25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか1項に記載の方法により取得可能なLiMPO、特にLiFePO
【請求項28】
平均粒径(D50値)が0.8μm未満、望ましくは0.7μm未満、特に0.6μm未満、特に望ましくは0.5μm未満であることを特徴とする特に請求項27記載のLiMPO
【請求項29】
粒子のD10値が0.4μm未満、望ましくは0.35μm未満、そしてまた望ましくはD90値が3.0μm未満、特に望ましくは2.5μm未満、最も望ましくは2.0μm未満であることを特徴とする請求項27又は28記載のLiMPO
【請求項30】
粒子のD90値及びD10値の間の違いがわずか2μm、望ましくはわずか1.5μm、特にわずか1μm、特に望ましくはわずか0.5μmであることを特徴とする請求項27乃至29の何れか一項に記載のLiMPO
【請求項31】
BET表面積が3.5m/g以上、特に4m/g以上、特に望ましくは5m/g以上、更に望ましくは10m/g以上、最も望ましくは15m/g以上であることを特徴とする請求項27乃至30の何れか一項に記載のLiMPO
【請求項32】
請求項27乃至31の何れか一項に記載のLiMPOを含む組成物、特に電極材料。
【請求項33】
少なくとも一つの更なる成分、特に炭素含有若しくは電子伝導物質又は電子伝導物質の前駆体、特に望ましくは炭素、導電性炭素又は炭素繊維も含む請求項32記載の組成物。
【請求項34】
組成物、特に請求項32又は33に記載の電極材料を含む二次電池。
【請求項35】
請求項27乃至31の何れか一項に記載のLiMPOの電極材料としての使用。
【請求項36】
LiMPOが、熱水処理の後、特に濾過及び/又は遠心分離によって分離され、適切な場合乾燥及び適切な場合凝集体の除去がなされることを特徴とする請求項1乃至26の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
LiMPOが熱分解工程における熱水処理から得られ、少なくとも一つの炭素前駆体材料、望ましくは糖又はセルロースのような糖質及び特に望ましくはラクトースがLiMPOと例えば練り込みにより混合され、補助剤として水を添加することが可能であることを特徴とする請求項1乃至26の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
炭素前駆体材料が、熱水合成の後分離により得られた湿性LiMPO濾過ケーキへ添加され、LiMPOの混合物及び炭素前駆体材料が、500℃及び1000℃の間、望ましくは700℃及び800℃の間の温度まで加熱されて乾燥され、その操作の間に炭素前駆体材料が熱分解され炭素を形成することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
熱分解の後に粉砕又は凝集体の除去処理が続くことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
乾燥が望ましくは保護ガス、空気又は真空の下で望ましくは50℃乃至200℃の温度にて実施され、熱分解が保護ガスの下で実施されることを特徴とする請求項38又は39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−511458(P2007−511458A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538815(P2006−538815)
【出願日】平成16年11月14日(2004.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012911
【国際公開番号】WO2005/051840
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【Fターム(参考)】