リーク試験方法及びリーク試験装置
【課題】リーク試験時間を短縮する。
【解決手段】リーク試験方法は,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態でマスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,マスタ容器とワーク容器とを大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行う。さらに,温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行する。そして,圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,温度補正計測モード工程に戻る。
【解決手段】リーク試験方法は,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態でマスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,マスタ容器とワーク容器とを大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行う。さらに,温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行する。そして,圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,温度補正計測モード工程に戻る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,リーク試験方法及びリーク試験装置に関し,特に,マスタ容器とワーク容器の圧力差(差圧)に基づいてワーク容器のリークの有無(気密状態)を検出するリーク試験方法及びリーク試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管や容器などの検査対象のワーク容器の気密性をチェックするためにリーク試験が行われる。リーク試験の原理は,ワーク容器の内部を,外部の圧力(通常は大気圧)よりも加圧または減圧した後,ワーク容器の内部圧力が変化するか否かを確認することである。ワーク容器の内部圧力が変化した場合は,ワーク容器にリークが発生していることを意味し,気密性に欠陥があることを意味する。
【0003】
このリーク試験方法において,ワーク容器の内部圧力の変化を単圧式センサで測定し,その圧力の変化に基づいてリーク有無の判断をすることが提案されている。例えば,特許文献1などである。このリーク試験方法では,ワーク容器の加圧または減圧後の内部圧力の変化が,リークにより変化したのか外気温との温度差による温度変化により変化したのかを区別するために,ワーク容器内部を外部と同じ大気圧状態にしてリークの発生をなくした状態で内部圧力の変化を測定して,温度変化による内部圧力の変化を測定しておき,加圧または減圧後のワーク容器の内部圧力の変化から大気圧状態での温度変化による内部圧力の変化を除くことで,温度変化の影響を排除してつまり温度補償してリーク試験を行う。
【0004】
一方,基準となるマスタ容器と検査対象のワーク容器との間の差圧を測定して,加圧または減圧後の差圧変化の有無によりリーク試験を行うことが提案されている。例えば,特許文献2や3である。マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差を測定する差圧式センサの場合,ワーク容器の内部圧力を測定する単圧式圧力センサよりも圧力の計測範囲を狭くすることができ,その分だけ圧力センサの分解能を高くして高精度に圧力変化を測定することができる。
【0005】
この差圧式のリーク試験においても,ワーク容器の温度変化に伴う内部圧力の変化の影響を,加圧または減圧後のマスタ容器とワーク容器間の差圧の変化から除去するために,マスタ容器とワーク容器を大気圧状態で閉塞し温度変化による差圧の変化を補正値として測定し,加圧または減圧状態での差圧の変化から前述の補正値を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3483253号公報
【特許文献2】特許第3411374号公報
【特許文献3】特許第3133275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の差圧式のリーク試験では,大気圧状態での差圧変化を測定する温度補正値計測工程と,加圧または減圧の試験圧力状態での差圧変化を測定する差圧変化計測工程とを行うことにより,温度変化の影響を除外している。
【0008】
しかしながら,大気圧状態での温度補正値計測工程と試験圧力状態での試験差圧変化計測工程とをワーク容器毎に繰り返すことは,試験工程に必要な時間を長くし,リーク試験コストの増大を招く。
【0009】
そこで,本発明の目的は,リーク試験工程の時間を短縮することができるリーク試験方法及びリーク試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
リーク試験方法の第1の側面によれば,
マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,前記マスタ容器とワーク容器とを前記大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,前記温度補正計測モード工程に戻る。
【発明の効果】
【0011】
第1の側面によれば,温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,試験差圧変化計測工程を行いその試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,リークなしの判断が継続する限りは圧力計測モード工程を繰り返し,リーク有りの判断がされた場合に温度補正計測モードに戻るようにしているので,少なくとも圧力計測モード工程では温度補正値計測工程を省略して試験時間を短縮し,一方で,圧力計測モード工程での誤検査を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態におけるリーク試験方法で使用される装置類の一例を示す図である。
【図2】試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。
【図3】試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。
【図4】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図5】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図6】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図7】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図8】本実施の形態における温度補正計測モードを示す図である。
【図9】本実施の形態における圧力計測モードを示す図である。
【図10】本実施の形態におけるリーク試験での温度補正計測モードS11と圧力計測モードS14の状態遷移図である。
【図11】図10によるリーク試験の一例を示す図である。
【図12】リーク試験で誤判定が発生する例を示す図である。
【図13】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作フローチャート図である。
【図14】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例1のフローチャート図である。
【図15】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例2のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は,本実施の形態におけるリーク試験方法で使用される装置類の一例を示す図である。リーク試験では,リーク試験対象のワーク容器WAと,ワーク容器と同じ形状または異なるが同等のサイズの基準容器となるマスタ容器MAとが,分岐配管3,2に接続器具(図示せず)を介してそれぞれ取り付けられる。分岐配管2,3にはそれぞれ開閉可能なバルブMV,WVが設けられるとともに,マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧を検出する差圧センサ4が設けられている。
【0014】
さらに,分岐配管2,3に接続された共通配管1には,試験圧力を与える圧力ポンプが接続可能であり,開閉可能なバルブPVと圧力レギュレータRGとが設けられている。また,分岐配管2,3には大気圧に開放するためのバルブAVが設けられている。
【0015】
そして,リーク試験装置10は,圧力センサ4と,バルブMV,WV,PV,AVと,圧力ポンプ5に接続され,内蔵するマイクロコンピュータからなる制御装置がリーク試験プログラムを実行して,バルブMV,WV,PV,AVと,圧力ポンプ5などのアクチュエータを適宜駆動し,圧力センサ4の検出値を取得し,ワーク容器WAのリーク試験を行う。
【0016】
図1において,マスタ容器MAとワーク容器WAとを大気圧状態で閉塞する大気圧調整手段は,マスタ容器側のバルブMVとワーク容器側のバルブWVと大気圧に開放するバルブAVとで構成される。一方,マスタ容器とワーク容器を大気圧以外の試験圧力で閉塞する試験圧力調整手段は,マスタ容器側及びワーク容器側のバルブMV,WVと,圧力ポンプ5と圧力レギュレータRGとバルブPVとで構成される。
【0017】
ワーク容器には,容器だけでなく配管など気体や液体を収容可能な体積を有する密閉構造のもので,リーク検査が必要なものが含まれる。また,圧力ポンプ5によりマスタ容器やワーク容器に加える試験圧力は,大気圧よりも加圧または減圧した圧力のいずれでもよい。ただし,以下の実施の形態の説明では,試験圧力として加圧を例にして説明する。
【0018】
[差圧式リーク試験の原理]
図2,図3は,試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。図2にケース1,2が示され,図3にケース3〜6が示されている。各ケースでは,縦方向が圧力値または差圧値,横方向が時間に対応し,マスタ容器Mの内部圧力の変化と,ワーク容器の内部圧力の変化と,それらの差圧の変化dPとが示されている。
【0019】
ケース1では,マスタ容器Mとワーク容器Wを試験圧力で閉塞した状態でいずれの内部圧力にも変化がない例である。この場合は差圧dPにも変化がない。したがって,ケース1ではワーク容器はリークなしと判断される。一方,ケース2では,マスタ容器Mもワーク容器Wも内部圧力が同じように増加した例である。このケース2は,例えばマスタ容器もワーク容器も外気温より温度が高く,試験中に両容器内の温度が上昇し,それによりマスタ容器とワーク容器の内部圧力が共に上昇した例であり,その結果差圧dPには変化はない。したがって,ケース2でもワーク容器はリークなしと判断される。ケース2において,例えばマスタ容器とワーク容器の温度が下降することで両者の内部圧力が同じ様に低下した場合も差圧dPには変化がなくワーク容器はリークなしと判断される。
【0020】
このように,試験圧力での内部圧力の変化に差圧の変化を監視することで,マスタ容器とワーク容器に同じように外乱が影響しても,それらの影響を相殺することができる。つまり,マスタ容器とワーク容器の間で全ての条件が同じであれば,温度の変化による圧力変化は差圧には反映されず,正しくワーク容器のリークの有無を検出できる。さらに,試験圧力が例えば100kPaと高圧であっても,差圧の測定レンジは小さいので,差圧の変化を高い解像度で測定することができる。
【0021】
図3のケース3では,マスタ容器Mの内部圧力に変化はないがワーク容器Wの内部圧力が低下し,それにより差圧dPが上昇した例である。ワーク容器Mの内部圧力の低下は,試験圧力が加圧状態でありワーク容器にリークが発生した場合である。このように差圧dPが上昇した場合はリーク有りと判定され不良品(+NG)と判定される。
【0022】
一方,ケース4では,マスタ容器Mの内部圧力が低下しているがワーク容器Wの内部圧力は変化がなく,それにより差圧dPが下降した例である。マスタ容器の内部圧力のみが低下した原因は,例えば,マスタ容器の分岐配管2への装着が不完全でマスタ容器側にリークが発生した場合である。この場合も,適切に試験差圧変化計測を行うことができないので,不良品(−NG)と判定され,必要に応じて再試験が行われる。
【0023】
しかしながら,図3のケース5では,ケース3と同様に,マスタ容器Mの内部圧力に変化はないがワーク容器Wの内部圧力が低下して,それにより差圧dPが上昇した例である。ただし,ワーク容器の内部圧力の低下は,例えばワーク容器が溶接工程直後の高温状態であり,試験圧力での試験差圧変化計測工程では温度低下情況にあることが原因である。この場合もワーク容器の内部圧力が低下するので,差圧dPが上昇する。この場合は,差圧dPの上昇によりリーク有りと判定され不良品(+NG)と判定される。しかし,ワーク容器にリークは発生しておらず,不良品とする判定は誤判定である。
【0024】
図3のケース6では,ケース4とは異なり,マスタ容器Mの内部圧力は変化ないがワーク容器Wの内部圧力は上昇し,差圧dPが低下した例である。ただし,ワーク容器の内部圧力の上昇は,例えば,ワーク容器が配管に装着されているマスタ容器よりも低温雰囲気の場所から持ってこられたため,試験圧力での試験差圧変化計測工程では温度上昇情況にあることが原因である。この場合は,差圧dPが低下して,不良品(−NG)と判定される。しかし,ワーク容器にリークは発生しておらず,不良品とする判定は誤判定である。
【0025】
図3のケース3と5を区別するために,またケース4と6を区別するために,本実施の形態のリーク試験では,温度補正計測モードを実行して,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で差圧dPの変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,マスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧dPの変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,試験差圧値を温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。
【0026】
[温度補正計測モード]
以下,温度補正計測モードについて具体的に説明する。
【0027】
図4〜図7は,本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。各図において,横軸が時間を,縦軸がマスタ容器及びワーク容器内の圧力Pと,差圧dPとを示す。
【0028】
温度補正計測モードでは,マスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程S2と,その前後で若しくはその前後のいずれか一方で行う,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で差圧dPの変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程S1,S2とが行われる。試験差圧変化計測工程S2の前に行う温度補正値計測工程S1を前工程,後に行う温度補正値計測工程S3を後工程と称する。
【0029】
工程S1終了後工程S2開始前において,バルブMV,WV,PVが開かれ圧力ポンプ5が駆動されマスタ容器とワーク容器が共に例えば100kPaの試験圧力に加圧され,そのマスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVが閉じられ試験圧力での閉塞状態にされる。また,工程S1開始前と,工程S2終了後工程S3開始前とにおいて,大気圧バルブAVとマスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVとが開かれ,加圧側バルブPVが閉じられ,マスタ容器とワーク容器が大気圧状態にされ,その後マスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVとが閉じられて大気圧で閉塞状態にされる。
【0030】
さらに,温度補正計測モードでは,試験圧力での差圧変化である試験差圧値を,大気圧状態での差圧変化である温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。補正された試験差圧値(試験圧力での差圧変化)が,ゼロつまり基準値を超えていなければ,ワーク容器にリークによる圧力変化はなかったと見なして,リークなしで良品と判定される。逆に,補正された試験差圧値が基準値を超えている場合は,ワーク容器にリークが発生したかマスタ容器の装着など何らかの不具合が発生したとして不良品と判定される。
【0031】
図4の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロで変化していない。このことは,マスタ容器とワーク容器には温度変化の外乱はないことを意味している。同様に,試験差圧変化計測工程S2においても差圧dPはゼロで変化していない。したがって,この場合は,リーク試験中にマスタ容器もワーク容器も温度変化がなく,ワーク容器にリークが発生しておらず,良品(OK)と判定される。
【0032】
図5の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロ(DP1=DP3=0)で変化していない。つまり,マスタ容器とワーク容器には温度変化の外乱はない。しかし,試験差圧変化計測工程S2において,差圧dPは上昇(DP2>0)している。差圧dPの上昇は,前述した図3のケース3,5と同じである。しかし,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロで変化していないので,ケース5ではなくケース3であることが判明する。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1,DP3=0を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1,DP2−DP3)が上昇していることに基づいて,リーク有りで不良品(+NG)と判定する。
【0033】
図6の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPは共に上昇している(DP1=DP3>0)。例えば,ワーク容器の温度が上昇するなどの理由で差圧が上昇している。一方,試験差圧変化計測工程S2においても,差圧dPはDP2だけ上昇している。差圧の上昇量DP2は,前述した図3のケース3,5と同じである。ただし,この差圧dPの上昇DP2は,大気圧での差圧変化DP1,DP3と等しい。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1=DP3(=DP2)を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1,DP2−DP3)がゼロで基準値を超えていないことに基づいて,リークなしで良品(OK)と判定する。すなわち,ケース3ではなくケース5であることが判明する。
【0034】
図7の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPは上昇している(DP1=DP3>0)。例えば,ワーク容器の温度が上昇するなどの理由である。一方,試験差圧変化計測工程S2においても,差圧dPはDP2だけ上昇している。ただし,この差圧の上昇量DP2は,大気圧での差圧変化DP1,DP3よりも大きい。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1=DP3(<DP2)を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1>0,DP2−DP3>0)が依然としてゼロでなく,所定の基準値を超えていることに基づいて,リーク有りで不良品(+NG)と判定する。
【0035】
上記の図4〜7において,リーク試験中S1,S2,S3に,ワーク容器の温度上昇などにより差圧dPが低下するような場合も,同様にして,その温度変化による外乱の影響を除去してワーク容器のリークの有無を判定することができる。
【0036】
[温度補正演算]
前述のとおり,温度補正計測モードでは,試験圧力での差圧変化である試験差圧値DP2を,大気圧での差圧変化である温度補正値DP1またはDP3に基づいて補正し,補正された試験差圧値DP2−DP1(またはDP2−DP3)に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。ただし,大気圧状態と試験圧力状態とでは,マスタ容器やワーク容器内の気体の密度が異なる。そこで,本実施の形態では,この気体密度の違いも考慮して,大気圧状態での差圧変化量(試験差圧値)か,試験圧力状態での差圧変化量(温度補正値)かのいずれかを気体密度の違いに応じて補正して,試験差圧値から温度補正値を減算する。
【0037】
理想気体の状態方程式は,以下の通りである。
PV=ρRθ (1)
ここで,P:圧力(Pa),V:容器の容積(m3),ρ:空気の密度(Kg/m3),R:ガス定数(J/(Kg.K),θ:温度(K)である。この状態方程式(1)から圧力は,以下の通りである。
P=ρRθ/V
そして,試験圧力状態での差圧変化量(試験差圧値)をDP2=ρ2Rθ/V,大気圧状態での差圧変化量(温度補正値)をDP1=ρ1Rθ/Vとすれば,補正された差圧変化量(補正試験差圧値)は,以下の通りである。
DP2−DP1=ρ2Rθ/V−ρ1Rθ/V (2)
上記の式(2)から,試験圧力(例えば100kPa(G))での気体密度ρ2と,大気圧(0kPa(G),101.325kPa(Abs))での気体密度ρ1との比,ρ2/ρ1が大気圧状態の差圧変化量(温度補正値)に対する補正係数であり,1.986≒1.99である。従って,式(2)は次の通りである。
DP2−1.99×DP1=ρ2Rθ/V−1.99×ρ1Rθ/V (2A)
[温度補正値計測モードと圧力計測モード]
図8は,本実施の形態における温度補正計測モードを示す図である。図4〜図7と同様に,マスタ容器とワーク容器を試験圧力状態で差圧の変化(試験差圧値)を計測する試験差圧変化計測工程S2と,その前後に行う大気圧状態で差圧の変化(温度補正値)を計測する温度補正値計測工程S1,S3とを有する。温度補正値計測工程S1,S3は,いずれか一方のみを行っても良いが,2回行う場合はその平均値を温度補正値にしてもよい。
【0038】
図9は,本実施の形態における圧力計測モードを示す図である。圧力計測モードでは,温度補正値計測工程S1,S3を行わずに,試験差圧変化計測工程S2のみを行う。したがって,圧力計測モードは,温度補正値計測工程で差圧変化がゼロ,具体的には所定の基準値を超えないような場合に実施可能であり,試験差圧値を温度補正値で補正せず,試験差圧値が変化したか否か,つまり所定の基準値を超えたか否かに応じて,試験フェイル(不良品,+NG,−NG)か,試験パス(良品,OK)と判断する。そして,圧力計測モードにおいて試験フェイル(+NG,−NG)の場合は,温度変化による圧力変化の可能性があるので,再度温度補正計測モードを実行して温度補正した試験差圧値でリークの有無を判定する。
【0039】
図10は,本実施の形態におけるリーク試験での温度補正計測モードS11と圧力計測モードS14の状態遷移図である。図11は,そのリーク試験の一例を示す図である。図11を参照しながら図10のリーク試験について説明する。
【0040】
複数のワーク容器のリーク試験工程において,試験開始時S10では,温度補正計測モードS11でワーク容器のリーク試験を行う。つまり,図8に示したとおり,大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3と,試験圧力状態での試験差圧変化計測工程S2とを行い,試験圧力での差圧変化を温度補正値で補正する。この温度補正計測モードS11での大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化が発生してゼロでない場合,つまり差圧変化が所定の基準値を超える場合は(S12),温度変化による差圧変化が発生していて温度補正が必要であるので,次のワーク容器に対するリーク試験も,図8の温度補正計測モードS11で繰り返す。このS12の大気圧状態での差圧変化ありとは,前述の図6,7のような場合である。
【0041】
一方,温度補正計測モードでの大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化がゼロ,つまり所定の基準値を超えない場合は(S13),温度変化による差圧変化は発生していないと見なして,次のワーク容器に対するリーク試験からは,図9の圧力計測モードS14で行う。このS13の大気圧状態での差圧変化なしとは,前述の図4,5のような場合である。そして,圧力計測モードS14でのリーク試験結果が良品(OK)の判定であれば,その圧力測定モードS14でのリーク試験を繰り返して行う。圧力計測モードS14では大気圧状態で差圧変化を測定する温度補正値計測工程S1,S3を省略できるのでリーク試験時間を短縮できる。
【0042】
圧力計測モードS14では,大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3を省略し,試験圧力状態で差圧変化を測定する試験差圧変化計測工程S2で得た差圧変化の有無により,次の4つの状態を判定することができる。すなわち,第1に,試験圧力状態で差圧変化がなければ,温度変化の影響もないとの仮定により,ワーク容器は良品(OK)と判定される。第2〜第4に,試験圧力状態で差圧変化が生じた場合は,図5,6,7で説明したとおり,温度変化の影響はなくワーク容器にリークが発生した場合(図5の場合)と,ワーク容器にリークは生じていないが温度変化の影響が発生している場合(図6の場合)と,さらに,温度変化の影響が発生し且つワーク容器にリークが発生した場合(図7の場合)である。
【0043】
したがって,圧力計測モードS14において,良品(OK)判定が出ている間は(S15),上記の第1の状態であるので圧力計測モードS14を繰り返し実施する。しかし,不良品(+NG,−NG)判定が出た場合は(S16),上記の第2〜第4のいずれかであることを確認する必要があるので,そのワーク容器については温度補正計測モードS11で再度リーク試験を行う。温度補正計測モードS11によれば,図5,6,7の3つの状態を区別することができ,適切に良品と不良品を区別することができる。
【0044】
前述の通り,温度補正計測モードS11で大気圧状態での差圧変化があれば(S12),次のワーク容器についてもその温度補正計測モードS11を繰り返すが,大気圧状態での差圧変化がなければ(S13),圧力測定モードS14に移行する。
【0045】
図11に図10の状態遷移が適用された例が示されている。図11中の(1)温度補正計測モードで大気圧状態で差圧変化がゼロの場合には,(2)圧力計測モードに移行する。そして,図11(2)の圧力計測モードで,試験圧力状態で差圧変化が発生して不良品(+NG)の判定が出た場合は,図11(3A)(3B)の温度補正計測モードに移行する。(3A)は図6と同じであり,温度補正した試験圧力の差圧変化がゼロで良品(OK)と判定された例である。また,(3B)は図5,7と同じであり,温度補正した試験圧力での差圧変化がゼロではなく不良品(+NG)と判定された例である。
【0046】
上記の通り,本実施の形態におけるリーク試験では,大気圧状態での差圧変化がゼロの場合に温度補正値計測工程を省略する圧力計測モードS14に移行し,試験圧力状態での差圧変化がゼロで良品(OK)判定がされている間は,圧力計測モードS14を繰り返し実施する。これにより,リーク試験の誤判定をなくしつつ,リーク試験時間を短縮している。
【0047】
図12は,リーク試験で誤判定が発生する例を示す図である。図12(1)は温度補正計測モードで大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化DP1,DP3が発生している。しかし,この温度補正値計測工程での差圧変化DP1,DP3が同じ値を繰り返した場合は,温度変化が安定して繰り返されていると仮定して,温度補正値計測工程を省略する圧力測定モードに移行することが考えられる。図12(2)の圧力測定モードでは,温度補正値計測工程S1,S3が省略され,図12(1)の温度補正計測モードで求めた温度補正値DP1,DP3を利用して温度補正が行われる。図12(2)の例では(1)と同様の試験圧力状態で差圧変化DP2が発生し,(1)で求めた温度補正値DP1,PD3を減算することでDP2−DP1(またはDP3)=0が得られ,試験圧力状態でのリークによる差圧変化はなしと判定され,良品(OK)判定される。
【0048】
ところが,図12の(2)の圧力計測モードは,実は,図12の(2A)(2B)の2つの状態がありうる。すなわち,(2A)では(1)と同様にDP2=DP1,DP3であり,良品判定は正しい判定である。一方,(2B)では(1)と異なり大気圧状態で求めた温度補正値DP1,DP2が,ゼロまたは(1)のDP1,DP3より小さい場合である。この場合は,温度補正後の値DP2―DP1(またはDP3)>0となり,不良品(+NG)判定されるべきである。したがって,図12の(2)での良品(OK)判定は誤判定であることが理解できる。
【0049】
このように,単に温度補正値計測工程で検出した差圧変化DP1,DP3が安定して繰り返されていることを理由に,その工程を省略した圧力測定モードに移行すると,誤判定になる可能性があり好ましくない。
【0050】
それに対して,本実施の形態での図10,図11のリーク試験方法では,図12に示したような誤判定を招くことはない。つまり,本実施の形態によれば,誤判定を回避しつつリーク試験時間を短縮することができる。
【0051】
図1に示したリーク試験装置は,図10に示された状態遷移によりリーク試験を行う。図10の状態遷移は既に説明したとおりであるが,上記の説明に加えて,圧力計測モード工程S14を予め決めた回数であるn回繰り返した場合は,強制的に温度補正計測モードS11に移行し,改めて温度補正値計測工程をおこなって大気圧状態での差圧変化がゼロであることを確認する。または,圧力計測モード工程S14を繰り返している途中で,昼休みなど所定時間リーク試験を中断した場合も,温度補正計測モードS11に移行することが望ましい。時間の経過に伴い,温度変化による差圧変化が発生している蓋然性が高くなるからである。
【0052】
[リーク試験装置の動作]
図13は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作フローチャート図である。ここに示したリーク試験装置の試験動作では,温度補正計測モードにおいて,原則として前工程の温度補正値計測工程S1で求めた温度補正値を使って試験差圧変化計測工程で求めた試験差圧値を補正してリーク判定を行う。リーク判定が良品(OK)であれば,後工程の温度補正値計測工程S3は行わない。一方,リーク判定が不良(+NG,-NG)であれば,後工程の温度補正値計測工程S3を実施して前工程と後工程の温度補正値の平均値で試験差圧値を補正してリーク判定を行う。
【0053】
さらに,圧力計測モードでは,試験差圧変化計測工程S2で求めた試験差圧値によりリーク判定を行い,そのリーク判定が不良(+NG,-NG)であれば,温度補正値計測工程を行い,そこで求めた温度補正値を使って試験差圧値を補正して再度リーク判定を行う。つまり,圧力計測モードでの試験差圧変化計測工程S2とその次の温度補正値計測工程とにより温度補正計測モード工程を実施する。
【0054】
図13を参照して,リーク試験装置の動作について説明する。スタートボタンがオンされるとリーク試験が開始されて,変数N,Y,Zが初期値0にリセットされる(S20)。変数Nは圧力計測モードの連続回数,変数Yは後述する変形例で使用されるリトライ回数,変数Zは温度補正計測モード(Z=1)と圧力計測モード(Z=0)を示すフラグである。工程S21でも変数Z,Nが初期値0にリセットされる。
【0055】
そして,前工程の温度補正値計測工程S1を開始する(S22)。すなわち,一旦,図1に示したバルブMV,WVと減圧用バルブAVを開き,供給用バルブPVを閉じて,マスタ容器とワーク容器とを大気圧状態にし(S23),その後開いたバルブMV,WV,AVを閉じる(S24)。これで両容器は大気圧で閉塞される。そして,差圧センサが計測する差圧に変化がないか否かを判定する(S25)。差圧に変化があれば,温度補正計測モードに設定するためにフラグZをZ=1にする(S26)。差圧に変化がなければフラグZは初期値のZ=0であり圧力計測モードである。
【0056】
上記の大気圧状態での差圧に変化がなければ,圧力計測モード(Z=0)になり,回数NをN+1にする(S27)。そして,加圧状態での差圧計測(試験差圧計測工程S2)を開始する(S28)。つまり,バルブMV,WV,PVを開いて圧力ポンプ5から加圧する(S29)。この時,図1のワーク側配管3に取り付けられた単圧センサ(図示せず)の圧力値をフィードバックしてワーク容器内圧力が所望の圧力になるようにする。所望の圧力なると,バルブMV,WVを閉じて両容器を閉塞する(S30)。そして,この加圧状態での差圧の変化を測定し,Z=0の場合は(S31のNO),その差圧変化があるか否かでリークの有無を判定する(S34)。Z=1の場合は温度補正計測モードであるので,温度補正値を使って補正した差圧変化に基づいてリークの有無を判定する(S32)。
【0057】
今は,仮に圧力測定モード(Z=0)であるとする。したがって,加圧状態での差圧変化によりリーク判定を行い(S34),リークなしであれば,供給用バルブPVを閉じて(S35),バルブMV,WV,AVを開いてマスタ容器とワーク容器とを大気圧に解放する(S36)。そして,リーク試験装置は,合格ランプを点灯し(S37),ワーク交換指示を出力する(S38)。作業者がワーク容器を交換してスタートスイッチをオンにすると(S39),次のワーク容器に対するリーク試験が開始される。工程S40でのX=0,Y=0は後述する変形例に対するものである。また,工程S41では圧力計測モードの回数Nが所定値n(例えば10回)に達していないかを確認し,達していなければ、工程S42でZ=0の確認を経て,工程S27に戻る。
【0058】
次の,ワーク容器に対しても,工程S27からS31までと,S34からS38までの圧力計測モードを行い,リーク判定がリークなし(良品OK)である限りは,回数Nがn=10に達するまでか,途中で所定時間の試験中断が発生するまで(S55,S56でワーク容器交換の時間を計測する交換タイマがタイムオーバになるまで),その圧力計測モードを繰り返す。工程S56で回数Nが10回に達した場合や試験中断した場合は,工程S21に戻り,再度温度補正値計測工程S22を実行する。中断によるタイムオーバ後は,スタートスイッチがオンになると(S57),リーク試験は再開される。
【0059】
圧力計測モードから温度補正計測モードに遷移するもう一つの条件は,工程S34でのリーク判定でリークあり(+NG,-NG)(S43)となったときである。この場合は,温度補正値計測工程(S44)を開始し,バルブMV,WV,AVを開きバルブPVを閉じてマスタ容器とワーク容器を大気圧に解放し(S45),その後バルブMV,WV,AVを閉じて閉塞状態にする(S46)。そして,大気圧状態での差圧の変化を温度補正値として検出し,Z=0であるので工程S47ではNOに分岐し,今回の温度補正値を使って試験圧力状態での差圧変化を補正して,リークの有無を判定する(S52)。ここでリークあり(不良品)と判定されたら,リーク試験装置は不良ランプを点灯し(S49),供給用バルブPVを閉じ,他のバルブMV,WV,AVを開いて(S50),マスタ容器とワーク容器を大気圧に解放し,ワーク交換指示を出力する(S38)。なお,工程S51でZ=1にして温度補正計測モードに変更する。
【0060】
次に,温度補正計測モード(Z=0)での試験動作について説明する。前工程の温度補正値計測工程S22-S25を行い,試験差圧変化計測工程S28-S30を行い,温度補正値を使って補正した加圧状態での差圧変化に基づいてリーク判定を行う(S32)。リークなしであれば(S32のYES),合格ランプを点灯し(S37),ワーク交換を指示する(S38)。
【0061】
リークありであれば(S32のNO),後工程の温度補正値計測工程S44-S46を行い,前工程と後工程での温度補正値の平均値で補正した加圧状態での差圧変化に基づいてリーク判定を行う(S48)。判定がリークあり(不良品)であれば,不良ランプを点灯し(S49),マスタ容器とワーク容器を大気圧状態に解放する(S50)。判定がリークなし(良品)であれば,マスタ容器とワーク容器を大気圧状態に解放し(S53),合格ランプを点灯する(S54)。そして,ワーク交換を指示して(S38),ワーク容器交換後のスタートスイッチオンを待つ(S39)。
【0062】
[リーク試験装置の動作の変形例1]
図14は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例1のフローチャート図である。このリーク試験装置の動作では,工程S60-S67が図13に追加されている。この工程S60-S67では,加圧計測モード中にリーク判定でリーク有り(不良+NG,-NG)となった場合(S34でNO),即座に温度補正計測モードに遷移するのではなく,所定回数yを繰り返し回数の上限として圧力計測モードを繰り返し,リークなしと判定されないか確認する。すなわち,大気圧への解放(S63,S64)後,試験圧力への加圧(S28-S30)と加圧状態での差圧変化に基づくリーク判定(S32)とからなる試験差圧変化計測工程を,繰り返し回数Y=yを上限として,リークなし(良品OK)になるまで繰り返す。ただし,所定回数yまでの繰り返し中に,回数Xが所定回数x(x<y)に達すると(S65のYES),冷却ファンをオンにし(S66),冷却ファンでマスタ容器とワーク容器とを冷却しながら,試験差圧変化計測工程(S28-S30,S32)を,繰り返し回数Y=yを上限として,リークなし(良品OK)の判定まで繰り返す。そして,そのワークの試験が終了すると冷却ファンをオフにする(S67)。
【0063】
すなわち,工程S34で加圧計測モード中にリーク有りの判定になると,繰り返し回数Yをインクリメントしながら(S43),上限値Y=yに達するまで(S60のNO),工程S61-S64で大気圧に解放させてから,試験差圧変化計測工程(S28-S30,S32)を繰り返す。そして,繰り返し回数Xが所定回数xに達すると,冷却ファンをオンにして(S66),再度上限値Y=yに達するまで繰り返す。
【0064】
加圧計測モードにおいて,リーク有りの判定になっても,試験差圧変化計測工程を繰り返すうちにリークなしと判定されることがある。その理由は,例えばワーク容器の装着がゴミなどにより不完全な場合などがある。一方,試験差圧変化計測工程を繰り返すと,マスタ容器とワーク容器とへの加圧注入が繰り返されて加熱され,ワーク容器が良品であるにもかかわらず,マスタ容器とワーク容器とで加熱状態での圧力変動の挙動が異なり差圧変化が検出されてリーク有りと誤判定されることがある。そこで,圧力計測モードによる試験差圧変化計測工程を繰り返す場合は,所定回数加圧注入を行った後は,マスタ容器とワーク容器を冷却しながら繰り返すことが有効である。変形例1では,その冷却を冷却ファンによる空冷で行っている。
【0065】
[リーク試験装置の動作の変形例2]
図15は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例2のフローチャート図である。このリーク試験装置では,図14の冷却ファンによる空冷工程に代えて,マスタ容器とワーク容器に圧力ポンプから加圧しながら大気圧に加圧空気をパージするパージ工程を行って冷却する方法を実施する。
【0066】
即ち,図1において,マスタ側分岐配管2とワーク側分岐配管3に大気圧につなげるパージ用バルブが設けられる。または,マスタ容器とワーク容器の形状が許す場合は,マスタ容器とワーク容器の分岐配管2,3とは反対側にパージ用バルブを取り付けるようにしても良い。
【0067】
そして,圧力計測モード中にリーク有りと判定された後,回数yを上限にして圧力計測モードの試験差圧変化計測工程を繰り返す時,繰り返し回数Xが所定回数yに達した時に(S65のYES),工程S70-S74を実施する。つまり,減圧用バルブAVを閉じて,パージ用バルブを開き,供給用バルブPVを開いて(S70),圧力ポンプから加圧空気を注入して低温空気をマスタ容器とワーク容器内に注入しながら大気圧に逃がす低温空気の循環を行うパージ冷却を開始する(S71)。この低温空気によるパージ冷却を所定時間行ってから(S72),パージ用バルブを閉じる(S74)。この時,繰り返し回数XをX=0にリセットする。これにより,繰り返し回数Yが上限値yに達するまで,回数Xが所定の回数x(x<y)に達するたびに,この低温空気によるパージ冷却を実施する。
【0068】
上記のような低温空気によるパージを行うことにより,冷却ファンによる空冷よりもより効果的にマスタ容器とワーク容器の温度を低下させることができる。それ以外の動作は,図13,14と同じである。
【0069】
以上,本実施の形態によれば,温度補正計測モード中に温度補正値計測工程での差圧変化がゼロ,つまり基準値より小さい場合は,圧力計測モードに移行して温度補正値計測工程を省略するので,リーク試験時間を短縮することができる。
【0070】
また,圧力計測モードに遷移した後,リーク判定がリークありとなった場合は,温度補正計測モードに戻して温度補正値により補正してリーク判定を行うので,誤判定を防止できる。
【0071】
さらに,圧力計測モードでリークありの判定となっても,所定回数を上限にして圧力計測モードを繰り返してリークなしの判定を得ることができる場合は,温度補正計測モードに遷移することなく圧力計測モードを継続することができ,リーク試験の工数を削減することができる。
【符号の説明】
【0072】
MA:マスタ容器 WA:ワーク容器
4:差圧センサ 5:圧力ポンプ
10:リーク試験装置 S11:温度補正計測モード
S14:圧力計測モード
【技術分野】
【0001】
本発明は,リーク試験方法及びリーク試験装置に関し,特に,マスタ容器とワーク容器の圧力差(差圧)に基づいてワーク容器のリークの有無(気密状態)を検出するリーク試験方法及びリーク試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管や容器などの検査対象のワーク容器の気密性をチェックするためにリーク試験が行われる。リーク試験の原理は,ワーク容器の内部を,外部の圧力(通常は大気圧)よりも加圧または減圧した後,ワーク容器の内部圧力が変化するか否かを確認することである。ワーク容器の内部圧力が変化した場合は,ワーク容器にリークが発生していることを意味し,気密性に欠陥があることを意味する。
【0003】
このリーク試験方法において,ワーク容器の内部圧力の変化を単圧式センサで測定し,その圧力の変化に基づいてリーク有無の判断をすることが提案されている。例えば,特許文献1などである。このリーク試験方法では,ワーク容器の加圧または減圧後の内部圧力の変化が,リークにより変化したのか外気温との温度差による温度変化により変化したのかを区別するために,ワーク容器内部を外部と同じ大気圧状態にしてリークの発生をなくした状態で内部圧力の変化を測定して,温度変化による内部圧力の変化を測定しておき,加圧または減圧後のワーク容器の内部圧力の変化から大気圧状態での温度変化による内部圧力の変化を除くことで,温度変化の影響を排除してつまり温度補償してリーク試験を行う。
【0004】
一方,基準となるマスタ容器と検査対象のワーク容器との間の差圧を測定して,加圧または減圧後の差圧変化の有無によりリーク試験を行うことが提案されている。例えば,特許文献2や3である。マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差を測定する差圧式センサの場合,ワーク容器の内部圧力を測定する単圧式圧力センサよりも圧力の計測範囲を狭くすることができ,その分だけ圧力センサの分解能を高くして高精度に圧力変化を測定することができる。
【0005】
この差圧式のリーク試験においても,ワーク容器の温度変化に伴う内部圧力の変化の影響を,加圧または減圧後のマスタ容器とワーク容器間の差圧の変化から除去するために,マスタ容器とワーク容器を大気圧状態で閉塞し温度変化による差圧の変化を補正値として測定し,加圧または減圧状態での差圧の変化から前述の補正値を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3483253号公報
【特許文献2】特許第3411374号公報
【特許文献3】特許第3133275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の差圧式のリーク試験では,大気圧状態での差圧変化を測定する温度補正値計測工程と,加圧または減圧の試験圧力状態での差圧変化を測定する差圧変化計測工程とを行うことにより,温度変化の影響を除外している。
【0008】
しかしながら,大気圧状態での温度補正値計測工程と試験圧力状態での試験差圧変化計測工程とをワーク容器毎に繰り返すことは,試験工程に必要な時間を長くし,リーク試験コストの増大を招く。
【0009】
そこで,本発明の目的は,リーク試験工程の時間を短縮することができるリーク試験方法及びリーク試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
リーク試験方法の第1の側面によれば,
マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,前記マスタ容器とワーク容器とを前記大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,前記温度補正計測モード工程に戻る。
【発明の効果】
【0011】
第1の側面によれば,温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,試験差圧変化計測工程を行いその試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,リークなしの判断が継続する限りは圧力計測モード工程を繰り返し,リーク有りの判断がされた場合に温度補正計測モードに戻るようにしているので,少なくとも圧力計測モード工程では温度補正値計測工程を省略して試験時間を短縮し,一方で,圧力計測モード工程での誤検査を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態におけるリーク試験方法で使用される装置類の一例を示す図である。
【図2】試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。
【図3】試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。
【図4】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図5】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図6】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図7】本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。
【図8】本実施の形態における温度補正計測モードを示す図である。
【図9】本実施の形態における圧力計測モードを示す図である。
【図10】本実施の形態におけるリーク試験での温度補正計測モードS11と圧力計測モードS14の状態遷移図である。
【図11】図10によるリーク試験の一例を示す図である。
【図12】リーク試験で誤判定が発生する例を示す図である。
【図13】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作フローチャート図である。
【図14】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例1のフローチャート図である。
【図15】本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例2のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は,本実施の形態におけるリーク試験方法で使用される装置類の一例を示す図である。リーク試験では,リーク試験対象のワーク容器WAと,ワーク容器と同じ形状または異なるが同等のサイズの基準容器となるマスタ容器MAとが,分岐配管3,2に接続器具(図示せず)を介してそれぞれ取り付けられる。分岐配管2,3にはそれぞれ開閉可能なバルブMV,WVが設けられるとともに,マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧を検出する差圧センサ4が設けられている。
【0014】
さらに,分岐配管2,3に接続された共通配管1には,試験圧力を与える圧力ポンプが接続可能であり,開閉可能なバルブPVと圧力レギュレータRGとが設けられている。また,分岐配管2,3には大気圧に開放するためのバルブAVが設けられている。
【0015】
そして,リーク試験装置10は,圧力センサ4と,バルブMV,WV,PV,AVと,圧力ポンプ5に接続され,内蔵するマイクロコンピュータからなる制御装置がリーク試験プログラムを実行して,バルブMV,WV,PV,AVと,圧力ポンプ5などのアクチュエータを適宜駆動し,圧力センサ4の検出値を取得し,ワーク容器WAのリーク試験を行う。
【0016】
図1において,マスタ容器MAとワーク容器WAとを大気圧状態で閉塞する大気圧調整手段は,マスタ容器側のバルブMVとワーク容器側のバルブWVと大気圧に開放するバルブAVとで構成される。一方,マスタ容器とワーク容器を大気圧以外の試験圧力で閉塞する試験圧力調整手段は,マスタ容器側及びワーク容器側のバルブMV,WVと,圧力ポンプ5と圧力レギュレータRGとバルブPVとで構成される。
【0017】
ワーク容器には,容器だけでなく配管など気体や液体を収容可能な体積を有する密閉構造のもので,リーク検査が必要なものが含まれる。また,圧力ポンプ5によりマスタ容器やワーク容器に加える試験圧力は,大気圧よりも加圧または減圧した圧力のいずれでもよい。ただし,以下の実施の形態の説明では,試験圧力として加圧を例にして説明する。
【0018】
[差圧式リーク試験の原理]
図2,図3は,試験差圧変化計測工程でのマスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化例を示す図である。図2にケース1,2が示され,図3にケース3〜6が示されている。各ケースでは,縦方向が圧力値または差圧値,横方向が時間に対応し,マスタ容器Mの内部圧力の変化と,ワーク容器の内部圧力の変化と,それらの差圧の変化dPとが示されている。
【0019】
ケース1では,マスタ容器Mとワーク容器Wを試験圧力で閉塞した状態でいずれの内部圧力にも変化がない例である。この場合は差圧dPにも変化がない。したがって,ケース1ではワーク容器はリークなしと判断される。一方,ケース2では,マスタ容器Mもワーク容器Wも内部圧力が同じように増加した例である。このケース2は,例えばマスタ容器もワーク容器も外気温より温度が高く,試験中に両容器内の温度が上昇し,それによりマスタ容器とワーク容器の内部圧力が共に上昇した例であり,その結果差圧dPには変化はない。したがって,ケース2でもワーク容器はリークなしと判断される。ケース2において,例えばマスタ容器とワーク容器の温度が下降することで両者の内部圧力が同じ様に低下した場合も差圧dPには変化がなくワーク容器はリークなしと判断される。
【0020】
このように,試験圧力での内部圧力の変化に差圧の変化を監視することで,マスタ容器とワーク容器に同じように外乱が影響しても,それらの影響を相殺することができる。つまり,マスタ容器とワーク容器の間で全ての条件が同じであれば,温度の変化による圧力変化は差圧には反映されず,正しくワーク容器のリークの有無を検出できる。さらに,試験圧力が例えば100kPaと高圧であっても,差圧の測定レンジは小さいので,差圧の変化を高い解像度で測定することができる。
【0021】
図3のケース3では,マスタ容器Mの内部圧力に変化はないがワーク容器Wの内部圧力が低下し,それにより差圧dPが上昇した例である。ワーク容器Mの内部圧力の低下は,試験圧力が加圧状態でありワーク容器にリークが発生した場合である。このように差圧dPが上昇した場合はリーク有りと判定され不良品(+NG)と判定される。
【0022】
一方,ケース4では,マスタ容器Mの内部圧力が低下しているがワーク容器Wの内部圧力は変化がなく,それにより差圧dPが下降した例である。マスタ容器の内部圧力のみが低下した原因は,例えば,マスタ容器の分岐配管2への装着が不完全でマスタ容器側にリークが発生した場合である。この場合も,適切に試験差圧変化計測を行うことができないので,不良品(−NG)と判定され,必要に応じて再試験が行われる。
【0023】
しかしながら,図3のケース5では,ケース3と同様に,マスタ容器Mの内部圧力に変化はないがワーク容器Wの内部圧力が低下して,それにより差圧dPが上昇した例である。ただし,ワーク容器の内部圧力の低下は,例えばワーク容器が溶接工程直後の高温状態であり,試験圧力での試験差圧変化計測工程では温度低下情況にあることが原因である。この場合もワーク容器の内部圧力が低下するので,差圧dPが上昇する。この場合は,差圧dPの上昇によりリーク有りと判定され不良品(+NG)と判定される。しかし,ワーク容器にリークは発生しておらず,不良品とする判定は誤判定である。
【0024】
図3のケース6では,ケース4とは異なり,マスタ容器Mの内部圧力は変化ないがワーク容器Wの内部圧力は上昇し,差圧dPが低下した例である。ただし,ワーク容器の内部圧力の上昇は,例えば,ワーク容器が配管に装着されているマスタ容器よりも低温雰囲気の場所から持ってこられたため,試験圧力での試験差圧変化計測工程では温度上昇情況にあることが原因である。この場合は,差圧dPが低下して,不良品(−NG)と判定される。しかし,ワーク容器にリークは発生しておらず,不良品とする判定は誤判定である。
【0025】
図3のケース3と5を区別するために,またケース4と6を区別するために,本実施の形態のリーク試験では,温度補正計測モードを実行して,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で差圧dPの変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,マスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧dPの変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,試験差圧値を温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。
【0026】
[温度補正計測モード]
以下,温度補正計測モードについて具体的に説明する。
【0027】
図4〜図7は,本実施の形態における差圧式のリーク試験での温度補正計測モードの例を示す図である。各図において,横軸が時間を,縦軸がマスタ容器及びワーク容器内の圧力Pと,差圧dPとを示す。
【0028】
温度補正計測モードでは,マスタ容器とワーク容器とを試験圧力で閉塞した状態で差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程S2と,その前後で若しくはその前後のいずれか一方で行う,マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で差圧dPの変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程S1,S2とが行われる。試験差圧変化計測工程S2の前に行う温度補正値計測工程S1を前工程,後に行う温度補正値計測工程S3を後工程と称する。
【0029】
工程S1終了後工程S2開始前において,バルブMV,WV,PVが開かれ圧力ポンプ5が駆動されマスタ容器とワーク容器が共に例えば100kPaの試験圧力に加圧され,そのマスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVが閉じられ試験圧力での閉塞状態にされる。また,工程S1開始前と,工程S2終了後工程S3開始前とにおいて,大気圧バルブAVとマスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVとが開かれ,加圧側バルブPVが閉じられ,マスタ容器とワーク容器が大気圧状態にされ,その後マスタ容器側バルブMVとワーク容器側バルブWVとが閉じられて大気圧で閉塞状態にされる。
【0030】
さらに,温度補正計測モードでは,試験圧力での差圧変化である試験差圧値を,大気圧状態での差圧変化である温度補正値に基づいて補正し,補正された試験差圧値に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。補正された試験差圧値(試験圧力での差圧変化)が,ゼロつまり基準値を超えていなければ,ワーク容器にリークによる圧力変化はなかったと見なして,リークなしで良品と判定される。逆に,補正された試験差圧値が基準値を超えている場合は,ワーク容器にリークが発生したかマスタ容器の装着など何らかの不具合が発生したとして不良品と判定される。
【0031】
図4の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロで変化していない。このことは,マスタ容器とワーク容器には温度変化の外乱はないことを意味している。同様に,試験差圧変化計測工程S2においても差圧dPはゼロで変化していない。したがって,この場合は,リーク試験中にマスタ容器もワーク容器も温度変化がなく,ワーク容器にリークが発生しておらず,良品(OK)と判定される。
【0032】
図5の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロ(DP1=DP3=0)で変化していない。つまり,マスタ容器とワーク容器には温度変化の外乱はない。しかし,試験差圧変化計測工程S2において,差圧dPは上昇(DP2>0)している。差圧dPの上昇は,前述した図3のケース3,5と同じである。しかし,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPはゼロで変化していないので,ケース5ではなくケース3であることが判明する。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1,DP3=0を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1,DP2−DP3)が上昇していることに基づいて,リーク有りで不良品(+NG)と判定する。
【0033】
図6の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPは共に上昇している(DP1=DP3>0)。例えば,ワーク容器の温度が上昇するなどの理由で差圧が上昇している。一方,試験差圧変化計測工程S2においても,差圧dPはDP2だけ上昇している。差圧の上昇量DP2は,前述した図3のケース3,5と同じである。ただし,この差圧dPの上昇DP2は,大気圧での差圧変化DP1,DP3と等しい。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1=DP3(=DP2)を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1,DP2−DP3)がゼロで基準値を超えていないことに基づいて,リークなしで良品(OK)と判定する。すなわち,ケース3ではなくケース5であることが判明する。
【0034】
図7の例では,温度補正値計測工程S1,S3において差圧dPは上昇している(DP1=DP3>0)。例えば,ワーク容器の温度が上昇するなどの理由である。一方,試験差圧変化計測工程S2においても,差圧dPはDP2だけ上昇している。ただし,この差圧の上昇量DP2は,大気圧での差圧変化DP1,DP3よりも大きい。リーク試験装置は,試験差圧変化計測工程S2での差圧の変化量DP2から,温度補正値計測工程S1またはS3での差圧の変化量DP1=DP3(<DP2)を除去して補正し,補正した差圧の変化量(DP2−DP1>0,DP2−DP3>0)が依然としてゼロでなく,所定の基準値を超えていることに基づいて,リーク有りで不良品(+NG)と判定する。
【0035】
上記の図4〜7において,リーク試験中S1,S2,S3に,ワーク容器の温度上昇などにより差圧dPが低下するような場合も,同様にして,その温度変化による外乱の影響を除去してワーク容器のリークの有無を判定することができる。
【0036】
[温度補正演算]
前述のとおり,温度補正計測モードでは,試験圧力での差圧変化である試験差圧値DP2を,大気圧での差圧変化である温度補正値DP1またはDP3に基づいて補正し,補正された試験差圧値DP2−DP1(またはDP2−DP3)に基づいてワーク容器のリークの有無を判断する。ただし,大気圧状態と試験圧力状態とでは,マスタ容器やワーク容器内の気体の密度が異なる。そこで,本実施の形態では,この気体密度の違いも考慮して,大気圧状態での差圧変化量(試験差圧値)か,試験圧力状態での差圧変化量(温度補正値)かのいずれかを気体密度の違いに応じて補正して,試験差圧値から温度補正値を減算する。
【0037】
理想気体の状態方程式は,以下の通りである。
PV=ρRθ (1)
ここで,P:圧力(Pa),V:容器の容積(m3),ρ:空気の密度(Kg/m3),R:ガス定数(J/(Kg.K),θ:温度(K)である。この状態方程式(1)から圧力は,以下の通りである。
P=ρRθ/V
そして,試験圧力状態での差圧変化量(試験差圧値)をDP2=ρ2Rθ/V,大気圧状態での差圧変化量(温度補正値)をDP1=ρ1Rθ/Vとすれば,補正された差圧変化量(補正試験差圧値)は,以下の通りである。
DP2−DP1=ρ2Rθ/V−ρ1Rθ/V (2)
上記の式(2)から,試験圧力(例えば100kPa(G))での気体密度ρ2と,大気圧(0kPa(G),101.325kPa(Abs))での気体密度ρ1との比,ρ2/ρ1が大気圧状態の差圧変化量(温度補正値)に対する補正係数であり,1.986≒1.99である。従って,式(2)は次の通りである。
DP2−1.99×DP1=ρ2Rθ/V−1.99×ρ1Rθ/V (2A)
[温度補正値計測モードと圧力計測モード]
図8は,本実施の形態における温度補正計測モードを示す図である。図4〜図7と同様に,マスタ容器とワーク容器を試験圧力状態で差圧の変化(試験差圧値)を計測する試験差圧変化計測工程S2と,その前後に行う大気圧状態で差圧の変化(温度補正値)を計測する温度補正値計測工程S1,S3とを有する。温度補正値計測工程S1,S3は,いずれか一方のみを行っても良いが,2回行う場合はその平均値を温度補正値にしてもよい。
【0038】
図9は,本実施の形態における圧力計測モードを示す図である。圧力計測モードでは,温度補正値計測工程S1,S3を行わずに,試験差圧変化計測工程S2のみを行う。したがって,圧力計測モードは,温度補正値計測工程で差圧変化がゼロ,具体的には所定の基準値を超えないような場合に実施可能であり,試験差圧値を温度補正値で補正せず,試験差圧値が変化したか否か,つまり所定の基準値を超えたか否かに応じて,試験フェイル(不良品,+NG,−NG)か,試験パス(良品,OK)と判断する。そして,圧力計測モードにおいて試験フェイル(+NG,−NG)の場合は,温度変化による圧力変化の可能性があるので,再度温度補正計測モードを実行して温度補正した試験差圧値でリークの有無を判定する。
【0039】
図10は,本実施の形態におけるリーク試験での温度補正計測モードS11と圧力計測モードS14の状態遷移図である。図11は,そのリーク試験の一例を示す図である。図11を参照しながら図10のリーク試験について説明する。
【0040】
複数のワーク容器のリーク試験工程において,試験開始時S10では,温度補正計測モードS11でワーク容器のリーク試験を行う。つまり,図8に示したとおり,大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3と,試験圧力状態での試験差圧変化計測工程S2とを行い,試験圧力での差圧変化を温度補正値で補正する。この温度補正計測モードS11での大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化が発生してゼロでない場合,つまり差圧変化が所定の基準値を超える場合は(S12),温度変化による差圧変化が発生していて温度補正が必要であるので,次のワーク容器に対するリーク試験も,図8の温度補正計測モードS11で繰り返す。このS12の大気圧状態での差圧変化ありとは,前述の図6,7のような場合である。
【0041】
一方,温度補正計測モードでの大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化がゼロ,つまり所定の基準値を超えない場合は(S13),温度変化による差圧変化は発生していないと見なして,次のワーク容器に対するリーク試験からは,図9の圧力計測モードS14で行う。このS13の大気圧状態での差圧変化なしとは,前述の図4,5のような場合である。そして,圧力計測モードS14でのリーク試験結果が良品(OK)の判定であれば,その圧力測定モードS14でのリーク試験を繰り返して行う。圧力計測モードS14では大気圧状態で差圧変化を測定する温度補正値計測工程S1,S3を省略できるのでリーク試験時間を短縮できる。
【0042】
圧力計測モードS14では,大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3を省略し,試験圧力状態で差圧変化を測定する試験差圧変化計測工程S2で得た差圧変化の有無により,次の4つの状態を判定することができる。すなわち,第1に,試験圧力状態で差圧変化がなければ,温度変化の影響もないとの仮定により,ワーク容器は良品(OK)と判定される。第2〜第4に,試験圧力状態で差圧変化が生じた場合は,図5,6,7で説明したとおり,温度変化の影響はなくワーク容器にリークが発生した場合(図5の場合)と,ワーク容器にリークは生じていないが温度変化の影響が発生している場合(図6の場合)と,さらに,温度変化の影響が発生し且つワーク容器にリークが発生した場合(図7の場合)である。
【0043】
したがって,圧力計測モードS14において,良品(OK)判定が出ている間は(S15),上記の第1の状態であるので圧力計測モードS14を繰り返し実施する。しかし,不良品(+NG,−NG)判定が出た場合は(S16),上記の第2〜第4のいずれかであることを確認する必要があるので,そのワーク容器については温度補正計測モードS11で再度リーク試験を行う。温度補正計測モードS11によれば,図5,6,7の3つの状態を区別することができ,適切に良品と不良品を区別することができる。
【0044】
前述の通り,温度補正計測モードS11で大気圧状態での差圧変化があれば(S12),次のワーク容器についてもその温度補正計測モードS11を繰り返すが,大気圧状態での差圧変化がなければ(S13),圧力測定モードS14に移行する。
【0045】
図11に図10の状態遷移が適用された例が示されている。図11中の(1)温度補正計測モードで大気圧状態で差圧変化がゼロの場合には,(2)圧力計測モードに移行する。そして,図11(2)の圧力計測モードで,試験圧力状態で差圧変化が発生して不良品(+NG)の判定が出た場合は,図11(3A)(3B)の温度補正計測モードに移行する。(3A)は図6と同じであり,温度補正した試験圧力の差圧変化がゼロで良品(OK)と判定された例である。また,(3B)は図5,7と同じであり,温度補正した試験圧力での差圧変化がゼロではなく不良品(+NG)と判定された例である。
【0046】
上記の通り,本実施の形態におけるリーク試験では,大気圧状態での差圧変化がゼロの場合に温度補正値計測工程を省略する圧力計測モードS14に移行し,試験圧力状態での差圧変化がゼロで良品(OK)判定がされている間は,圧力計測モードS14を繰り返し実施する。これにより,リーク試験の誤判定をなくしつつ,リーク試験時間を短縮している。
【0047】
図12は,リーク試験で誤判定が発生する例を示す図である。図12(1)は温度補正計測モードで大気圧状態での温度補正値計測工程S1,S3で差圧変化DP1,DP3が発生している。しかし,この温度補正値計測工程での差圧変化DP1,DP3が同じ値を繰り返した場合は,温度変化が安定して繰り返されていると仮定して,温度補正値計測工程を省略する圧力測定モードに移行することが考えられる。図12(2)の圧力測定モードでは,温度補正値計測工程S1,S3が省略され,図12(1)の温度補正計測モードで求めた温度補正値DP1,DP3を利用して温度補正が行われる。図12(2)の例では(1)と同様の試験圧力状態で差圧変化DP2が発生し,(1)で求めた温度補正値DP1,PD3を減算することでDP2−DP1(またはDP3)=0が得られ,試験圧力状態でのリークによる差圧変化はなしと判定され,良品(OK)判定される。
【0048】
ところが,図12の(2)の圧力計測モードは,実は,図12の(2A)(2B)の2つの状態がありうる。すなわち,(2A)では(1)と同様にDP2=DP1,DP3であり,良品判定は正しい判定である。一方,(2B)では(1)と異なり大気圧状態で求めた温度補正値DP1,DP2が,ゼロまたは(1)のDP1,DP3より小さい場合である。この場合は,温度補正後の値DP2―DP1(またはDP3)>0となり,不良品(+NG)判定されるべきである。したがって,図12の(2)での良品(OK)判定は誤判定であることが理解できる。
【0049】
このように,単に温度補正値計測工程で検出した差圧変化DP1,DP3が安定して繰り返されていることを理由に,その工程を省略した圧力測定モードに移行すると,誤判定になる可能性があり好ましくない。
【0050】
それに対して,本実施の形態での図10,図11のリーク試験方法では,図12に示したような誤判定を招くことはない。つまり,本実施の形態によれば,誤判定を回避しつつリーク試験時間を短縮することができる。
【0051】
図1に示したリーク試験装置は,図10に示された状態遷移によりリーク試験を行う。図10の状態遷移は既に説明したとおりであるが,上記の説明に加えて,圧力計測モード工程S14を予め決めた回数であるn回繰り返した場合は,強制的に温度補正計測モードS11に移行し,改めて温度補正値計測工程をおこなって大気圧状態での差圧変化がゼロであることを確認する。または,圧力計測モード工程S14を繰り返している途中で,昼休みなど所定時間リーク試験を中断した場合も,温度補正計測モードS11に移行することが望ましい。時間の経過に伴い,温度変化による差圧変化が発生している蓋然性が高くなるからである。
【0052】
[リーク試験装置の動作]
図13は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作フローチャート図である。ここに示したリーク試験装置の試験動作では,温度補正計測モードにおいて,原則として前工程の温度補正値計測工程S1で求めた温度補正値を使って試験差圧変化計測工程で求めた試験差圧値を補正してリーク判定を行う。リーク判定が良品(OK)であれば,後工程の温度補正値計測工程S3は行わない。一方,リーク判定が不良(+NG,-NG)であれば,後工程の温度補正値計測工程S3を実施して前工程と後工程の温度補正値の平均値で試験差圧値を補正してリーク判定を行う。
【0053】
さらに,圧力計測モードでは,試験差圧変化計測工程S2で求めた試験差圧値によりリーク判定を行い,そのリーク判定が不良(+NG,-NG)であれば,温度補正値計測工程を行い,そこで求めた温度補正値を使って試験差圧値を補正して再度リーク判定を行う。つまり,圧力計測モードでの試験差圧変化計測工程S2とその次の温度補正値計測工程とにより温度補正計測モード工程を実施する。
【0054】
図13を参照して,リーク試験装置の動作について説明する。スタートボタンがオンされるとリーク試験が開始されて,変数N,Y,Zが初期値0にリセットされる(S20)。変数Nは圧力計測モードの連続回数,変数Yは後述する変形例で使用されるリトライ回数,変数Zは温度補正計測モード(Z=1)と圧力計測モード(Z=0)を示すフラグである。工程S21でも変数Z,Nが初期値0にリセットされる。
【0055】
そして,前工程の温度補正値計測工程S1を開始する(S22)。すなわち,一旦,図1に示したバルブMV,WVと減圧用バルブAVを開き,供給用バルブPVを閉じて,マスタ容器とワーク容器とを大気圧状態にし(S23),その後開いたバルブMV,WV,AVを閉じる(S24)。これで両容器は大気圧で閉塞される。そして,差圧センサが計測する差圧に変化がないか否かを判定する(S25)。差圧に変化があれば,温度補正計測モードに設定するためにフラグZをZ=1にする(S26)。差圧に変化がなければフラグZは初期値のZ=0であり圧力計測モードである。
【0056】
上記の大気圧状態での差圧に変化がなければ,圧力計測モード(Z=0)になり,回数NをN+1にする(S27)。そして,加圧状態での差圧計測(試験差圧計測工程S2)を開始する(S28)。つまり,バルブMV,WV,PVを開いて圧力ポンプ5から加圧する(S29)。この時,図1のワーク側配管3に取り付けられた単圧センサ(図示せず)の圧力値をフィードバックしてワーク容器内圧力が所望の圧力になるようにする。所望の圧力なると,バルブMV,WVを閉じて両容器を閉塞する(S30)。そして,この加圧状態での差圧の変化を測定し,Z=0の場合は(S31のNO),その差圧変化があるか否かでリークの有無を判定する(S34)。Z=1の場合は温度補正計測モードであるので,温度補正値を使って補正した差圧変化に基づいてリークの有無を判定する(S32)。
【0057】
今は,仮に圧力測定モード(Z=0)であるとする。したがって,加圧状態での差圧変化によりリーク判定を行い(S34),リークなしであれば,供給用バルブPVを閉じて(S35),バルブMV,WV,AVを開いてマスタ容器とワーク容器とを大気圧に解放する(S36)。そして,リーク試験装置は,合格ランプを点灯し(S37),ワーク交換指示を出力する(S38)。作業者がワーク容器を交換してスタートスイッチをオンにすると(S39),次のワーク容器に対するリーク試験が開始される。工程S40でのX=0,Y=0は後述する変形例に対するものである。また,工程S41では圧力計測モードの回数Nが所定値n(例えば10回)に達していないかを確認し,達していなければ、工程S42でZ=0の確認を経て,工程S27に戻る。
【0058】
次の,ワーク容器に対しても,工程S27からS31までと,S34からS38までの圧力計測モードを行い,リーク判定がリークなし(良品OK)である限りは,回数Nがn=10に達するまでか,途中で所定時間の試験中断が発生するまで(S55,S56でワーク容器交換の時間を計測する交換タイマがタイムオーバになるまで),その圧力計測モードを繰り返す。工程S56で回数Nが10回に達した場合や試験中断した場合は,工程S21に戻り,再度温度補正値計測工程S22を実行する。中断によるタイムオーバ後は,スタートスイッチがオンになると(S57),リーク試験は再開される。
【0059】
圧力計測モードから温度補正計測モードに遷移するもう一つの条件は,工程S34でのリーク判定でリークあり(+NG,-NG)(S43)となったときである。この場合は,温度補正値計測工程(S44)を開始し,バルブMV,WV,AVを開きバルブPVを閉じてマスタ容器とワーク容器を大気圧に解放し(S45),その後バルブMV,WV,AVを閉じて閉塞状態にする(S46)。そして,大気圧状態での差圧の変化を温度補正値として検出し,Z=0であるので工程S47ではNOに分岐し,今回の温度補正値を使って試験圧力状態での差圧変化を補正して,リークの有無を判定する(S52)。ここでリークあり(不良品)と判定されたら,リーク試験装置は不良ランプを点灯し(S49),供給用バルブPVを閉じ,他のバルブMV,WV,AVを開いて(S50),マスタ容器とワーク容器を大気圧に解放し,ワーク交換指示を出力する(S38)。なお,工程S51でZ=1にして温度補正計測モードに変更する。
【0060】
次に,温度補正計測モード(Z=0)での試験動作について説明する。前工程の温度補正値計測工程S22-S25を行い,試験差圧変化計測工程S28-S30を行い,温度補正値を使って補正した加圧状態での差圧変化に基づいてリーク判定を行う(S32)。リークなしであれば(S32のYES),合格ランプを点灯し(S37),ワーク交換を指示する(S38)。
【0061】
リークありであれば(S32のNO),後工程の温度補正値計測工程S44-S46を行い,前工程と後工程での温度補正値の平均値で補正した加圧状態での差圧変化に基づいてリーク判定を行う(S48)。判定がリークあり(不良品)であれば,不良ランプを点灯し(S49),マスタ容器とワーク容器を大気圧状態に解放する(S50)。判定がリークなし(良品)であれば,マスタ容器とワーク容器を大気圧状態に解放し(S53),合格ランプを点灯する(S54)。そして,ワーク交換を指示して(S38),ワーク容器交換後のスタートスイッチオンを待つ(S39)。
【0062】
[リーク試験装置の動作の変形例1]
図14は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例1のフローチャート図である。このリーク試験装置の動作では,工程S60-S67が図13に追加されている。この工程S60-S67では,加圧計測モード中にリーク判定でリーク有り(不良+NG,-NG)となった場合(S34でNO),即座に温度補正計測モードに遷移するのではなく,所定回数yを繰り返し回数の上限として圧力計測モードを繰り返し,リークなしと判定されないか確認する。すなわち,大気圧への解放(S63,S64)後,試験圧力への加圧(S28-S30)と加圧状態での差圧変化に基づくリーク判定(S32)とからなる試験差圧変化計測工程を,繰り返し回数Y=yを上限として,リークなし(良品OK)になるまで繰り返す。ただし,所定回数yまでの繰り返し中に,回数Xが所定回数x(x<y)に達すると(S65のYES),冷却ファンをオンにし(S66),冷却ファンでマスタ容器とワーク容器とを冷却しながら,試験差圧変化計測工程(S28-S30,S32)を,繰り返し回数Y=yを上限として,リークなし(良品OK)の判定まで繰り返す。そして,そのワークの試験が終了すると冷却ファンをオフにする(S67)。
【0063】
すなわち,工程S34で加圧計測モード中にリーク有りの判定になると,繰り返し回数Yをインクリメントしながら(S43),上限値Y=yに達するまで(S60のNO),工程S61-S64で大気圧に解放させてから,試験差圧変化計測工程(S28-S30,S32)を繰り返す。そして,繰り返し回数Xが所定回数xに達すると,冷却ファンをオンにして(S66),再度上限値Y=yに達するまで繰り返す。
【0064】
加圧計測モードにおいて,リーク有りの判定になっても,試験差圧変化計測工程を繰り返すうちにリークなしと判定されることがある。その理由は,例えばワーク容器の装着がゴミなどにより不完全な場合などがある。一方,試験差圧変化計測工程を繰り返すと,マスタ容器とワーク容器とへの加圧注入が繰り返されて加熱され,ワーク容器が良品であるにもかかわらず,マスタ容器とワーク容器とで加熱状態での圧力変動の挙動が異なり差圧変化が検出されてリーク有りと誤判定されることがある。そこで,圧力計測モードによる試験差圧変化計測工程を繰り返す場合は,所定回数加圧注入を行った後は,マスタ容器とワーク容器を冷却しながら繰り返すことが有効である。変形例1では,その冷却を冷却ファンによる空冷で行っている。
【0065】
[リーク試験装置の動作の変形例2]
図15は,本実施の形態におけるリーク試験装置の動作の変形例2のフローチャート図である。このリーク試験装置では,図14の冷却ファンによる空冷工程に代えて,マスタ容器とワーク容器に圧力ポンプから加圧しながら大気圧に加圧空気をパージするパージ工程を行って冷却する方法を実施する。
【0066】
即ち,図1において,マスタ側分岐配管2とワーク側分岐配管3に大気圧につなげるパージ用バルブが設けられる。または,マスタ容器とワーク容器の形状が許す場合は,マスタ容器とワーク容器の分岐配管2,3とは反対側にパージ用バルブを取り付けるようにしても良い。
【0067】
そして,圧力計測モード中にリーク有りと判定された後,回数yを上限にして圧力計測モードの試験差圧変化計測工程を繰り返す時,繰り返し回数Xが所定回数yに達した時に(S65のYES),工程S70-S74を実施する。つまり,減圧用バルブAVを閉じて,パージ用バルブを開き,供給用バルブPVを開いて(S70),圧力ポンプから加圧空気を注入して低温空気をマスタ容器とワーク容器内に注入しながら大気圧に逃がす低温空気の循環を行うパージ冷却を開始する(S71)。この低温空気によるパージ冷却を所定時間行ってから(S72),パージ用バルブを閉じる(S74)。この時,繰り返し回数XをX=0にリセットする。これにより,繰り返し回数Yが上限値yに達するまで,回数Xが所定の回数x(x<y)に達するたびに,この低温空気によるパージ冷却を実施する。
【0068】
上記のような低温空気によるパージを行うことにより,冷却ファンによる空冷よりもより効果的にマスタ容器とワーク容器の温度を低下させることができる。それ以外の動作は,図13,14と同じである。
【0069】
以上,本実施の形態によれば,温度補正計測モード中に温度補正値計測工程での差圧変化がゼロ,つまり基準値より小さい場合は,圧力計測モードに移行して温度補正値計測工程を省略するので,リーク試験時間を短縮することができる。
【0070】
また,圧力計測モードに遷移した後,リーク判定がリークありとなった場合は,温度補正計測モードに戻して温度補正値により補正してリーク判定を行うので,誤判定を防止できる。
【0071】
さらに,圧力計測モードでリークありの判定となっても,所定回数を上限にして圧力計測モードを繰り返してリークなしの判定を得ることができる場合は,温度補正計測モードに遷移することなく圧力計測モードを継続することができ,リーク試験の工数を削減することができる。
【符号の説明】
【0072】
MA:マスタ容器 WA:ワーク容器
4:差圧センサ 5:圧力ポンプ
10:リーク試験装置 S11:温度補正計測モード
S14:圧力計測モード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,前記マスタ容器とワーク容器とを前記大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験方法。
【請求項2】
請求項1において,
前記圧力計測モード工程では,前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えた場合に前記リーク有りと判断するリーク試験方法。
【請求項3】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程での前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えない場合に,前記圧力計測モード工程を繰り返すリーク試験方法。
【請求項4】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程を第1の所定回数繰り返した場合に,または前記圧力計測モード工程後所定時間を経過した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験方法。
【請求項5】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程で前記ワーク容器のリーク有りと判断された場合に,第2の所定回数を上限にして当該圧力計測モード工程を繰り返した後に,前記温度補正計測モード工程に戻り,前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中にリークなしと判断された場合には,次のワーク容器に対しても圧力計測モード工程を行うリーク試験方法。
【請求項6】
請求項5において,
前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中に,前記マスタ容器とワーク容器とを冷却ファンによる冷却または低温空気の流入と流出による冷却のいずれかを行うリーク試験方法。
【請求項7】
マスタ容器とワーク容器を大気圧状態で閉塞する大気圧調整手段と,前記マスタ容器とワーク容器を前記大気圧以外の試験圧力で閉塞する試験圧力調整手段と,前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧を計測する差圧センサとに接続されるリーク試験装置において,
前記大気圧調整手段により前記マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記差圧センサが検知する差圧の変化を温度補正値として取得する温度補正値計測工程と,前記試験圧力調整手段により前記マスタ容器とワーク容器とを前記試験圧力で閉塞した状態で前記差圧センサが検知する差圧の変化を試験差圧値として取得する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験装置。
【請求項8】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程での前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えない場合に,前記圧力計測モード工程を繰り返すリーク試験装置。
【請求項9】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程を所定回数繰り返した場合に,または前記圧力計測モード工程後所定時間を経過した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験装置。
【請求項10】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程で前記ワーク容器のリーク有りと判断された場合に,第2の所定回数を上限にして当該圧力計測モード工程を繰り返した後に,前記温度補正計測モード工程に戻り,前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中にリークなしと判断された場合には,次のワーク容器に対しても圧力計測モード工程を行うリーク試験装置。
【請求項11】
請求項10において,
前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中に,前記マスタ容器とワーク容器とを冷却ファンによる冷却または低温空気の流入と流出による冷却のいずれかを行うリーク試験装置。
【請求項1】
マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧の変化を温度補正値として計測する温度補正値計測工程と,前記マスタ容器とワーク容器とを前記大気圧以外の試験圧力で閉塞した状態で前記差圧の変化を試験差圧値として計測する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断された場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験方法。
【請求項2】
請求項1において,
前記圧力計測モード工程では,前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えた場合に前記リーク有りと判断するリーク試験方法。
【請求項3】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程での前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えない場合に,前記圧力計測モード工程を繰り返すリーク試験方法。
【請求項4】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程を第1の所定回数繰り返した場合に,または前記圧力計測モード工程後所定時間を経過した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験方法。
【請求項5】
請求項1または2において,
前記圧力計測モード工程で前記ワーク容器のリーク有りと判断された場合に,第2の所定回数を上限にして当該圧力計測モード工程を繰り返した後に,前記温度補正計測モード工程に戻り,前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中にリークなしと判断された場合には,次のワーク容器に対しても圧力計測モード工程を行うリーク試験方法。
【請求項6】
請求項5において,
前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中に,前記マスタ容器とワーク容器とを冷却ファンによる冷却または低温空気の流入と流出による冷却のいずれかを行うリーク試験方法。
【請求項7】
マスタ容器とワーク容器を大気圧状態で閉塞する大気圧調整手段と,前記マスタ容器とワーク容器を前記大気圧以外の試験圧力で閉塞する試験圧力調整手段と,前記マスタ容器とワーク容器の内部圧力の差圧を計測する差圧センサとに接続されるリーク試験装置において,
前記大気圧調整手段により前記マスタ容器とワーク容器とを大気圧で閉塞した状態で前記差圧センサが検知する差圧の変化を温度補正値として取得する温度補正値計測工程と,前記試験圧力調整手段により前記マスタ容器とワーク容器とを前記試験圧力で閉塞した状態で前記差圧センサが検知する差圧の変化を試験差圧値として取得する試験差圧変化計測工程とを行い,前記試験差圧値を前記温度補正値に基づいて補正し,前記補正された試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する温度補正計測モード工程を行い,
前記温度補正計測モード工程での温度補正値計測工程で計測した差圧の変化が第1の基準値を超えない場合に,前記試験差圧変化計測工程を行い当該試験差圧変化計測工程で計測した試験差圧値に基づいて前記ワーク容器のリークの有無を判断する圧力計測モード工程に移行し,
前記圧力計測モード工程でリーク有りと判断した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験装置。
【請求項8】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程での前記試験差圧値の差圧の変化が第2の基準値を超えない場合に,前記圧力計測モード工程を繰り返すリーク試験装置。
【請求項9】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程を所定回数繰り返した場合に,または前記圧力計測モード工程後所定時間を経過した場合に,前記温度補正計測モード工程に戻るリーク試験装置。
【請求項10】
請求項7において,
前記圧力計測モード工程で前記ワーク容器のリーク有りと判断された場合に,第2の所定回数を上限にして当該圧力計測モード工程を繰り返した後に,前記温度補正計測モード工程に戻り,前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中にリークなしと判断された場合には,次のワーク容器に対しても圧力計測モード工程を行うリーク試験装置。
【請求項11】
請求項10において,
前記第2の所定回数を上限とする圧力計測モード工程の繰り返し中に,前記マスタ容器とワーク容器とを冷却ファンによる冷却または低温空気の流入と流出による冷却のいずれかを行うリーク試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−24634(P2013−24634A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157805(P2011−157805)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(505186614)株式会社エイムテック (6)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(505186614)株式会社エイムテック (6)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】
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