説明

リードフレーム、樹脂付リードフレームおよびその製造方法、ならびに半導体装置の製造方法

【課題】リードフレームの一辺に沿って樹脂材料が回り込んだり、リードフレームと金型とのわずかな隙間に樹脂材料が流れ込んだりすることを防止することが可能な、LED素子搭載用リードフレームを提供する。
【解決手段】LED素子搭載用リードフレーム10は、枠体13と、枠体13内に設けられ、各々がLED素子21が搭載されるダイパッド25と、ダイパッド25に隣接するリード部26とを含む多数のパッケージ領域14とを備えている。枠体13の外周のうち、反射樹脂23用の樹脂材料23cを注入するランナー84に対応する領域17に、その断面が表面13eから裏面13fへ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面70が設けられている。傾斜面70により、反射樹脂23の成形時に、枠体13外周に樹脂材料23cが回り込んだり、リードフレーム10と下金型82との間の隙間に樹脂材料23cが流れ込んだりすることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム、樹脂付リードフレームおよびその製造方法、ならびに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)素子を光源として用いる照明装置が、各種家電、OA機器、車両機器の表示灯、一般照明、車載照明、およびディスプレイ等に用いられている。このような照明装置の中には、リードフレームにLED素子を搭載することにより作製された半導体装置を含むものがある。
【0003】
従来、LED素子用の半導体装置としては、放熱性等の観点から、SONタイプのもの(SONパッケージ)が開発されてきている。このようなSONパッケージにおいては、LED素子からの光を反射させるための反射樹脂が設けられている(例えば特許文献1参照)。このような反射樹脂をリードフレーム上に形成する場合、例えばトランスファ成形法を用いる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−156704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスファ成形法においては、硬化前の樹脂材料を加熱された成型金型に入れ、金型をクランプさせた後に、プランジャーを用いて樹脂材料をリードフレーム側に流し込む。この際、樹脂材料は、ランナー部を通ってリードフレームの表面上を辿り、金型の反射樹脂に対応するキャビティ部分に充填される。しかしながら、従来、リードフレームの一辺に沿って樹脂材料が回り込んでしまったり、リードフレームと金型とのわずかな隙間に樹脂材料が流れ込んでしまったりすることが生じている。この場合、ゲートブレイク時に不具合が生じたり、異物が発生することにより製品の清浄度が低下したりするおそれがある。また、回り込んだ樹脂がリードフレームの一辺に密着した場合、力が加わった際、反射樹脂がリードフレーム表面から剥離しやすくなるおそれがある。さらに、異物が発生することにより、金型をクリーニングする必要性が増したり、連続して成形することが難しくなったりする等の問題も引き起こす。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、リードフレームの一辺に沿って樹脂材料が回り込んでしまったり、リードフレームと金型とのわずかな隙間に樹脂材料が流れ込んでしまったりすることを防止することが可能な、リードフレーム、樹脂付リードフレームおよびその製造方法、ならびに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、LED素子搭載用リードフレームにおいて、枠体と、枠体内に設けられ、各々がLED素子が搭載されるダイパッドと、ダイパッドに隣接するリード部とを含む多数のパッケージ領域とを備え、枠体外周のうち、少なくとも反射樹脂用の樹脂材料を注入するランナーに対応する領域に、その断面が表面から裏面へ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面が設けられていることを特徴とするリードフレームである。
【0008】
本発明は、枠体外周のうち、ランナーに対応する領域が傾斜面となっておりその他の領域が垂直面となっていることを特徴とするリードフレームである。
【0009】
本発明は、枠体外周の長手方向の一辺全体が傾斜面となっていることを特徴とするリードフレームである。
【0010】
本発明は、枠体の外周に、ランナーに対応する領域を区画するとともに、枠体の他の部分と同一厚みをもつ土手部を設けたことを特徴とするリードフレームである。
【0011】
本発明は、枠体外周のうち、土手部に対して傾斜面の反対側に位置する領域にも追加の傾斜面が設けられていることを特徴とするリードフレームである。
【0012】
本発明は、樹脂付リードフレームにおいて、リードフレームと、リードフレームの各パッケージ領域周縁上に配置された反射樹脂とを備えたことを特徴とする樹脂付リードフレームである。
【0013】
本発明は、樹脂付リードフレームの製造方法において、リードフレームを準備する工程と、リードフレームを金型内に配置し、リードフレームの枠体の傾斜面側から反射樹脂用の樹脂材料を注入することにより、リードフレームの各パッケージ領域周縁上に反射樹脂を設ける工程とを備えたことを特徴とする樹脂付リードフレームの製造方法である。
【0014】
本発明は、反射樹脂は、トランスファ成形法によって設けられることを特徴とする樹脂付リードフレームの製造方法である。
【0015】
本発明は、半導体装置の製造方法において、樹脂付リードフレームの製造方法により、樹脂付リードフレームを作製する工程と、樹脂付リードフレームの各反射樹脂内であって各ダイパッド上にLED素子を搭載する工程と、LED素子と各リード部とを導電部により接続する工程と、樹脂付リードフレームの各反射樹脂内に封止樹脂を充填する工程と、反射樹脂およびリードフレームを切断することにより、反射樹脂およびリードフレームをLED素子毎に分離する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、枠体外周のうち、少なくとも反射樹脂用の樹脂材料を注入するランナーに対応する領域に、その断面が表面から裏面へ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面が設けられている。これにより、反射樹脂の成形時に、枠体の一辺に沿って樹脂材料が回り込んでしまったり、リードフレームの裏面と下金型との間のわずかな隙間に樹脂材料が流れ込んでしまったりすることを防止することができる。また、ゲートブレイク時にリードフレームの外周に樹脂が残ったり、異物が発生したりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態によるリードフレームを示す全体平面図。
【図2】本発明の一実施の形態によるリードフレームを示す部分拡大平面図(図1のII部拡大図)。
【図3】本発明の一実施の形態によるリードフレームを示す断面図(図2のIII−III線断面図)。
【図4】本発明の一実施の形態によるリードフレームを示す断面図(図2のIV−IV線断面図)。
【図5】本発明の一実施の形態によるリードフレームの傾斜面を示す拡大斜視図。
【図6】本発明の一実施の形態によるリードフレームの各種傾斜面を示す拡大断面図。
【図7】本発明の一実施の形態によるリードフレームにより作製された半導体装置を示す断面図(図8のVII−VII線断面図)。
【図8】本発明の一実施の形態によるリードフレームにより作製された半導体装置を示す平面図。
【図9】本発明の一実施の形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【図10】本発明の一実施の形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【図11】本発明の一実施の形態による樹脂付リードフレームの製造方法を示す断面図。
【図12】トランスファ成形法を用いて樹脂付リードフレームを作製している状態を示す概略平面図。
【図13】ゲートブレイク時の作用を示す断面図。
【図14】本発明の一実施の形態による半導体装置の製造方法を示す図。
【図15】リードフレームの変形例(変形例1)を示す平面図。
【図16】リードフレームの変形例(変形例1)を示す部分拡大平面図。
【図17】リードフレームの変形例(変形例2)を示す平面図。
【図18】リードフレームの変形例(変形例2)を示す部分拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図14を参照して説明する。
【0019】
リードフレームの構成
まず、図1乃至図6により、本実施の形態によるLED素子搭載用リードフレームの概略について説明する。図1乃至図6は、本実施の形態によるリードフレームを示す図である。
【0020】
図1に示すリードフレーム10は、LED素子21を搭載した半導体装置20(図7および図8)を作製する際に用いられるものである。このようなリードフレーム10は、矩形状の外形を有する枠体13と、枠体13内に多列および多段に(マトリックス状に)配置された、多数のパッケージ領域14とを備えている。
【0021】
図2に示すように、複数のパッケージ領域14は、各々LED素子21が搭載されるダイパッド25と、ダイパッド25に隣接するリード部26とを含んでいる。
【0022】
一つのパッケージ領域14内のダイパッド25とリード部26との間には、隙間が形成されており、ダイシングされた後(図14(e))、ダイパッド25とリード部26とは互いに電気的に絶縁されるようになっている。なお、各パッケージ領域14は、それぞれ個々の半導体装置20に対応する領域である。また、図2において、各パッケージ領域14を二点鎖線で示している。
【0023】
なお、本明細書において、図2に示すように、各パッケージ領域14内のリード部26とダイパッド25とを左右に並べて配置した場合の横方向がX方向に対応し、縦方向がY方向に対応する。またこの場合、Y方向プラス側、Y方向マイナス側を、それぞれ上方、下方といい、X方向プラス側、X方向マイナス側を、それぞれ右方、左方という。
【0024】
図2に示すように、各パッケージ領域14内のリード部26は、その上方および下方に隣接する他のパッケージ領域14内のリード部26と、それぞれリード連結部52によって連結されている。さらに、各パッケージ領域14内のダイパッド25は、その上方および下方に隣接する他のパッケージ領域14内のダイパッド25と、それぞれダイパッド連結部53により連結されている。これら各リード連結部52および各ダイパッド連結部53は、Y方向に平行に配置されている。
【0025】
さらに、各パッケージ領域14内のダイパッド25は、その右方に隣接する他のパッケージ領域14内のリード部26と、パッケージ領域連結部54により連結されている。さらにまた、各パッケージ領域14内のリード部26は、その左方に隣接する他のパッケージ領域14内のダイパッド25と、パッケージ領域連結部54により連結されている。各パッケージ領域連結部54は、X方向に平行に配置されている。
【0026】
なお、最も外周に位置するパッケージ領域14内のリード部26およびダイパッド25は、リード連結部52、ダイパッド連結部53、およびパッケージ領域連結部54のうちの1つまたは複数によって、枠体13に連結されている。
【0027】
一方、図3および図4の断面図に示すように、リードフレーム10は、リードフレーム本体11と、リードフレーム本体11上に形成されためっき層12とからなっている。
【0028】
このうちリードフレーム本体11は金属板からなっている。リードフレーム本体11を構成する金属板の材料としては、例えば銅、銅合金、42合金(Ni42%のFe合金)等を挙げることができる。このリードフレーム本体11の厚みは、半導体装置の構成にもよるが、0.05mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0029】
また、めっき層12は、リードフレーム本体11の表面および裏面を含む全面に設けられている。表面側のめっき層12は、LED素子21からの光を反射するための反射層として機能する。他方、裏面側のめっき層12は、はんだとの密着性を高める役割を果たす。このめっき層12は、例えば銀(Ag)の電解めっき層からなっている。めっき層12は、その厚みが極薄く形成されており、具体的には0.005μm〜0.2μmとされることが好ましい。なお、めっき層12は、必ずしもリードフレーム本体11の表面および裏面の全体に設ける必要はなく、リードフレーム本体11の表面および裏面のうち、一部のみに設けても良い。
【0030】
また、ダイパッド25の裏面に、第1のアウターリード部27が形成され、リード部26の底面に、第2のアウターリード部28が形成されている。第1のアウターリード部27および第2のアウターリード部28は、それぞれ半導体装置20と外部の配線基板とを接続する際に用いられる。
【0031】
さらにリードフレーム10の表面には、リードフレーム10と反射樹脂23(後述)との密着性を高めるための溝18が形成されている。ここで、リードフレーム10の表面とは、例えばLED素子搭載面であり、反射樹脂23が形成される面をいう。なお、図2においては、溝18の表示を省略している。
【0032】
再度図1および図2を参照すると、枠体13は、4つの辺13a〜13d(長辺13a、13cおよび短辺13b、13d)を有している。また、枠体13の内部には、長辺13a、13cを連結する補強片19がY方向に3本配置されており、各補強片19にはパッケージ領域14が設けられていない。
【0033】
枠体13の外周には、リードフレーム10に反射樹脂23を設ける際、後述するトランスファ成形機80の各ランナー84(図11および図12参照)が配置される領域17が存在する(以下、ランナー84に対応する領域17ともいう)。本実施の形態において、枠体13の外周のうち、各ランナー84に対応する領域17には、それぞれ傾斜面70が設けられている。この場合、各傾斜面70は、枠体13の外周のうち各ランナー84に対応する領域17に設けられている。
【0034】
図4および図5に示すように、枠体13は、後述する反射樹脂23を設ける側の面である表面13eと、表面13eの反対側に位置する裏面13fとを有している。そして上述した傾斜面70は、その断面が枠体13の表面13eから裏面13fへかつ外方へ向かって徐々に降下する形状からなっている。また、傾斜面70は、枠体13の厚み方向全体にわたって形成されている。なお、傾斜面70の両側には、傾斜面70から表面13e側に向けて延びる側壁71が設けられており、枠体13のうち傾斜面70の両側の部分は、枠体13の他の部分と同一の厚みをもっている。また、枠体13の外周のうち傾斜面70を除く領域は、枠体13の表面13eに対して垂直な垂直面74となっている。側壁71は、傾斜面70に樹脂が流れ込む際に傾斜面70の端部が最も薄いため破損防止となっている。
【0035】
なお、傾斜面70の断面形状は、図6(a)に示すように、枠体13の内方に向けて湾曲する2つの曲線を上下に連結したような形状からなっているが、これに限られるものではない。傾斜面70の断面形状は、図6(b)に示すように、枠体13の内方に向けて湾曲する1つの曲線形状からなっていてもよい。あるいは、傾斜面70の断面形状は、図6(c)に示すように、枠体13の表面13eから裏面13fへ延びる略直線形状からなっていてもよい。
【0036】
ゲートブレイクの際には樹脂の弾性のため、わずかなしなりが生じる(図示せず)。
【0037】
図6(a)に示す形態では、傾斜面70の途中にある突起部を境に、樹脂がしなりながら、最も剥離されやすい外側部分が最初に剥離され、次いで内側からランナー部(後述するゲートランナー樹脂23dのうちランナー84に対応する部分)全体が剥離される。このため、外側部分が剥離されている時点では、製品部分(反射樹脂23)への応力負荷がかかりにくい状態が保持され、内側からランナー部全体が剥離した際に、ゲート部(後述するゲートランナー樹脂23dのうちゲート85に対応する部分)へ急激な応力がかかり、ゲート部での樹脂破壊を確実なものとすることができる。
【0038】
図6(b)に示す形態においては、傾斜面70の最初に剥離される外側部分の傾斜が最も大きくなっているため、剥離しやすいことに加え、特に裏面への樹脂の流れ込みを防ぎやすい。
【0039】
図6(c)に示す形態においては、傾斜面70の面積が小さいため、樹脂と端面の接触が少ないため、ゲートブレイク時に応力が集中し、樹脂が残りにくい。
【0040】
半導体装置の構成
次に、図7および図8により、図1乃至図6に示すリードフレーム10を用いて作製された半導体装置の一実施の形態について説明する。図7および図8は、それぞれ半導体装置(SONタイプ)を示す断面図および平面図である。
【0041】
図7および図8に示すように、半導体装置20は、(個片化された)リードフレーム10と、リードフレーム10のダイパッド25に載置されたLED素子21と、LED素子21とリードフレーム10のリード部26とを電気的に接続するボンディングワイヤ(導電部)22とを備えている。
【0042】
また、LED素子21を取り囲むように、凹部23aを有する反射樹脂23が設けられている。この反射樹脂23は、リードフレーム10と一体化されている。さらに、LED素子21とボンディングワイヤ22とは、透光性の封止樹脂24によって封止されている。この封止樹脂24は、反射樹脂23の凹部23a内に充填されている。
【0043】
以下、このような半導体装置20を構成する各構成部材について、順次説明する。
【0044】
LED素子21は、発光層として例えばGaP、GaAs、GaAlAs、GaAsP、AlInGaP、またはInGaN等の化合物半導体単結晶からなる材料を適宜選ぶことにより、紫外光から赤外光に渡る発光波長を選択することができる。このようなLED素子21としては、従来一般に用いられているものを使用することができる。
【0045】
またLED素子21は、はんだまたはダイボンディングペーストにより、反射樹脂23の凹部23a内においてダイパッド25上に固定実装されている。なお、ダイボンディングペーストを用いる場合、耐光性のあるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂からなるダイボンディングペーストを選択することが可能である。
【0046】
ボンディングワイヤ22は、例えば金等の導電性の良い材料からなり、その一端がLED素子21の端子部21aに接続されるとともに、その他端がリード部26上に接続されている。
【0047】
反射樹脂23は、例えばリードフレーム10上に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を例えばトランスファ成形または射出成形することにより形成されたものである。反射樹脂23の形状は、トランスファ成形または射出成形に使用する金型の設計により、様々に実現することが可能である。例えば、反射樹脂23の全体形状を、図7および図8に示すように直方体としても良く、あるいは円筒形または錐形等の形状とすることも可能である。また凹部23aの底面は、矩形、円形、楕円形または多角形等とすることができる。凹部23aの側壁の断面形状は、図7のように直線から構成されていても良いし、あるいは曲線から構成されていてもよい。
【0048】
反射樹脂23に使用される熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂については、特に耐熱性、耐候性および機械的強度の優れたものを選ぶことが望ましい。熱可塑性樹脂の種類としては、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルサルホン、ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド等、熱硬化性樹脂の種類としてはシリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびポリウレタン等、を使用することができる。さらにまた、これらの樹脂中に光反射剤として、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素のうちいずれかを添加することによって、凹部23aの底面及び側面において、発光素子からの光の反射率を増大させ、半導体装置20全体の光取り出し効率を増大させることが可能となる。
【0049】
封止樹脂24としては、光の取り出し効率を向上させるために、半導体装置20の発光波長において光透過率が高く、また屈折率が高い材料を選択するのが望ましい。したがって耐熱性、耐候性、及び機械的強度が高い特性を満たす樹脂として、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂を選択することが可能である。特に、LED素子21として高輝度LEDを用いる場合、封止樹脂24が強い光にさらされるため、封止樹脂24は高い耐候性を有するシリコーン樹脂からなることが好ましい。
【0050】
なお、リードフレーム10の構成については、図1乃至図6を用いて既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
LED素子搭載用リードフレームの製造方法
次に、図1乃至図6に示すリードフレーム10の製造方法について、図9(a)−(f)および図10(a)−(f)を用いて説明する。なお、図9(a)−(f)は、それぞれ図3に示す断面に対応し、図10(a)−(f)は、それぞれ図4に示す断面に対応している。
【0052】
まず図9(a)および図10(a)に示すように、平板状の金属基板31を準備する。この金属基板31としては、上述のように銅、銅合金、42合金(Ni42%のFe合金)等からなる金属基板を使用することができる。なお金属基板31は、その両面に対して脱脂等を行い、洗浄処理を施したものを使用することが好ましい。
【0053】
次に、金属基板31の表裏全体にそれぞれ感光性レジスト32a、33aを塗布し、これを乾燥する(図9(b)および図10(b))。なお感光性レジスト32a、33aとしては、従来公知のものを使用することができる。
【0054】
続いて、この金属基板31に対してフォトマスクを介して露光し、現像することにより、所望の開口部32b、33bを有するエッチング用レジスト層32、33を形成する(図9(c)および図10(c))。
【0055】
次に、エッチング用レジスト層32、33を耐腐蝕膜として金属基板31に腐蝕液でエッチングを施す(図9(d)および図10(d))。腐蝕液は、使用する金属基板31の材質に応じて適宜選択することができる。例えば、金属基板31として銅を用いる場合、通常、塩化第二鉄水溶液を使用し、金属基板31の両面からスプレーエッチングにて行うことができる。このとき、枠体13の外周領域におけるエッチング用レジスト層32、33のパターン形状等を適宜調整することにより、枠体13の外周のうちランナー84に対応する領域17に、その断面が表面から裏面へ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面70が形成される(図10(d))。
【0056】
次いで、エッチング用レジスト層32、33を剥離して除去することにより、枠体13と、複数のダイパッド25と、複数のリード部26とを含むリードフレーム本体11が得られる(図9(e)および図10(e))。
【0057】
次に、リードフレーム本体11の表面および裏面に電解めっきを施すことにより、リードフレーム本体11上に金属(例えば銀)を析出させて、リードフレーム本体11の表面および裏面を含む全面にめっき層12を形成する(図9(f)および図10(f))。
【0058】
この間、具体的には、例えば電解脱脂工程、酸洗工程、化学研磨工程、銅ストライク工程、水洗工程、中性脱脂工程、シアン洗工程、および銀めっき工程を順次経ることにより、リードフレーム本体11にめっき層12を形成する。この場合、銀めっき工程で用いられる電解めっき用のめっき液としては、例えばシアン化銀を主成分とした銀めっき液を挙げることができる。実際の工程では、各工程間で必要に応じ適宜水洗工程を加える。また、上記工程の途中でパターニング工程を介在させることにより、リードフレーム本体11の一部のみにめっき層12を形成しても良い。
【0059】
このようにして、図1乃至図6に示すリードフレーム10が得られる(図9(f)および図10(f))。
【0060】
半導体装置の製造方法
次に、図7および図8に示す半導体装置20の製造方法について、図11乃至図14を用いて説明する。
【0061】
はじめに、図11(a)−(i)により、トランスファ成形法を用いてリードフレーム10の各パッケージ領域14周縁上に反射樹脂23を設け、樹脂付リードフレーム30を作製する方法について説明する。
【0062】
まず、図11(a)に示すように、上金型81と下金型82とを有するトランスファ成形機80を準備する。上金型81と下金型82にはそれぞれ図示しないヒーターが埋設されており、各ヒーターを用いて上金型81と下金型82とを予め加熱しておく。
【0063】
なお、図11(a)において、上金型81は、反射樹脂23に対応する成形空間83と、反射樹脂23用の樹脂材料23cを注入する流路となるランナー84とを有している。成形空間83とランナー84との間には、樹脂材料23cを成形空間83へ流し込む入り口となるゲート85が設けられており、このゲート85を介して、成形空間83とランナー84とが連通している。なお、ゲート85の断面積はランナー84の断面積より狭くなっている。さらにランナー84には、供給される樹脂材料23cのボリュームばらつきを吸収するカル部86が連通している。一方、下金型82にはポット部87が上下に貫通形成されており、ポット部87内には、樹脂材料23cを圧送するプランジャー88が昇降自在に設けられている。
【0064】
続いて、上述したリードフレーム10を、トランスファ成形機80の上金型81と下金型82との間の所定位置に配置する(図11(b))。また、ポット部87内のプランジャー88上には、タブレット状または塊状の樹脂材料23cがセットされる。このとき、図12に示すように、トランスファ成形機80の各ランナー84は、枠体13の各傾斜面70上にくるように配置される。
【0065】
次に、上金型81および下金型82の一方または両方を移動し、上金型81および下金型82を閉じて型締めするとともに、プランジャー88を介してタブレット状または塊状の樹脂材料23cを予備加熱する(図11(c))。
【0066】
樹脂材料23cが加熱されて溶融した後、プランジャー88を上昇させる。これにより、溶融した樹脂材料23cが、ランナー84およびゲート85を通過して、リードフレーム10の傾斜面70側から成形空間83に向けて注入される(図11(d))。
【0067】
本実施の形態においては、上述したように、枠体13外周のうちランナー84に対応する領域17には、傾斜面70が設けられている。また、傾斜面70の両側には、傾斜面70から表面13e側に延びる側壁71が設けられている。これにより、ランナー84からの溶融した樹脂材料23cが、枠体13の辺13aに沿って(例えば図12の矢印方向に)回り込んでしまうことがない。さらに、樹脂材料23cが、傾斜面70に沿って枠体13の裏面13f側から表面13e側へ円滑に流し込まれるので、樹脂材料23cの進行が枠体13の辺13aによって妨げられることがなく、樹脂材料23cが枠体13の裏面13fと下金型82と間のわずかな隙間に流れ込むことを防止することができる。
【0068】
このようにして、樹脂材料23cがゲート85を介して成形空間83内の全域に拡がった後、上金型81および下金型82によって成形空間83内の圧力を一定時間保持し、樹脂材料23cを硬化させる(図11(e))。このようにして、リードフレーム10上に反射樹脂23が形成される。
【0069】
次いで、上金型81および下金型82の一方または両方を移動し、上金型81および下金型82を型開きすることにより、反射樹脂23が形成されたリードフレーム10が取り出される(図11(f)−(g))。このとき、イジェクターピン89が上金型81から下方に突き出すことにより(図11(f))、上金型81から反射樹脂23を確実に取り外すことができる。なお、図11(f)−(g)に示すように、リードフレーム10および反射樹脂23には、ランナー84およびカル部86内に残留して硬化されたゲートランナー樹脂23dが連結されている。
【0070】
続いて、ゲートランナー樹脂23dをリードフレーム10および反射樹脂23に対して折り曲げることにより、ゲートランナー樹脂23dがリードフレーム10および反射樹脂23から取り除かれる(ゲートブレイクという)(図11(g))。このとき、図13(a)に示すように、枠体13の外周に傾斜面70が設けられていることにより、ゲートランナー樹脂23dが枠体13の外周に引掛ることがなく、ゲートランナー樹脂23dをスムーズに取り除くことができる。他方、比較例として図13(b)に示すように、このような傾斜面70を設けなかった場合、ゲートブレイク時にゲートランナー樹脂23dが枠体13の外周に引っ掛かったり、ゲートランナー樹脂23dの一部が異物23eとなって枠体13に残存したりするおそれがある。
【0071】
なお、ゲートブレイクの後、反射樹脂23を再加熱することによりさらに硬化させるポストキュア工程や、反射樹脂23のバリを取り除くバリ取り工程が設けられていても良い。
【0072】
このようにして、反射樹脂23とリードフレーム10とが一体に形成された樹脂付リードフレーム30が得られる(図11(i))。本実施の形態において、リードフレーム10と、リードフレーム10の各パッケージ領域14の周縁上に配置された反射樹脂23とを備えた樹脂付リードフレーム30も提供する。
【0073】
なお、リードフレーム10上に反射樹脂23を設ける方法としては、上述したトランスファ成形法に限らず、射出成形法、液体射出成型法等を用いても良い。この場合、リードフレーム10を図示しない射出成型機の金型内に配置し、リードフレーム10の枠体13の傾斜面70側から反射樹脂23用の樹脂材料23cを注入することにより、リードフレーム10の各パッケージ領域14の周縁上に反射樹脂23を設けることができる。この場合においても、反射樹脂23の成形時に、枠体13の一辺13aに沿って樹脂材料23cが回り込んだり、リードフレーム10と金型との間のわずかな隙間に樹脂材料23cが流れ込んだりすることを防止することができる。なお、反射樹脂23を設ける方法として液体射出成形法を用いた場合、注入する反射樹脂23用の樹脂材料が液体であるため、流動しやすいことから、とりわけ上述した効果を顕著に得ることができる。
【0074】
次に、このようにして得られた樹脂付リードフレーム30を用いて半導体装置20を製造する方法について、図14(a)−(f)を用いて説明する。
【0075】
まず、例えば上述した工程により(図11(a)−(i))、リードフレーム10と反射樹脂23とを備えた樹脂付リードフレーム30を作製する(図14(a))
【0076】
次に、樹脂付リードフレーム30の各反射樹脂23内であって、リードフレーム10のダイパッド25上にLED素子21を搭載する。この場合、はんだまたはダイボンディングペーストを用いて、LED素子21をダイパッド25上に載置して固定する(ダイアタッチ工程)(図14(b))。
【0077】
次に、LED素子21の端子部21aと、リード部26表面とを、ボンディングワイヤ22によって互いに電気的に接続する(ワイヤボンディング工程)(図14(c))。
【0078】
その後、反射樹脂23の凹部23a内に封止樹脂24を充填し、封止樹脂24によりLED素子21とボンディングワイヤ22とを封止する(図14(d))。
【0079】
次に、反射樹脂23およびリードフレーム10のうち各パッケージ領域14間に位置する部分を切断することにより、反射樹脂23およびリードフレーム10をLED素子21毎に分離する(ダイシング工程)(図14(e))。この際、まずリードフレーム10をダイシングテープ37上に載置して固定し、その後、例えばダイヤモンド砥石等からなるブレード38によって、各LED素子21間の反射樹脂23、ならびにリードフレーム10のリード連結部52、ダイパッド連結部53およびパッケージ領域連結部54を切断する。
【0080】
このようにして、図7および図8に示す半導体装置20を得ることができる(図14(f))。
【0081】
以上説明したように本実施の形態によれば、枠体13の外周のうち、ランナー84に対応する領域17に、その断面が表面13eから裏面13fへ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面70が設けられている。このことにより、反射樹脂23の成形時(図11(d)−(e))に、枠体13の一辺13aに沿って樹脂材料23cが回り込んでしまったり、リードフレーム10と下金型82との間のわずかな隙間に樹脂材料23cが流れ込んでしまったりすることを防止することができる。また、ゲートブレイク時(図11(h))に、リードフレーム10に樹脂が残ったり、異物が発生したりすることを防止することができる。したがって、トランスファ成形機80の上金型81や下金型82をクリーニングする必要性が減少し、反射樹脂23を連続して成形することが容易となる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、傾斜面70は、リードフレーム10の製造工程(図9(d)および図10(d))において、枠体13、ダイパッド25およびリード部26とともにエッチングにより一度に形成されるので、傾斜面70を形成するための追加のコストが新たに発生することもない。
【0083】
リードフレームの変形例
次に、本実施の形態によるリードフレームの各種変形例(変形例1〜変形例2)について、図15乃至図18を参照して説明する。図15乃至図18において、図1乃至図14に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0084】
変形例1
図15および図16は、本実施の形態の一変形例(変形例1)によるリードフレーム10Aを示す図である。このうち図15は、リードフレーム10Aを示す平面図(図1に対応する図)であり、図16は、リードフレーム10Aを示す部分拡大平面図(図2に対応する図)である。
【0085】
図15および図16に示すリードフレーム10Aにおいて、図1乃至図14に示す実施の形態と異なり、傾斜面70は、枠体13の外周のうち、ランナー84に対応する領域17だけでなく、枠体13の一辺13a全体に形成されている。
【0086】
このように、枠体13の長手方向の一辺13a全体が傾斜面70となっていることにより、ランナー84の位置が辺13aに沿ってX方向にずれた場合であっても、反射樹脂23の成形時に、リードフレーム10と下金型82との間のわずかな隙間に樹脂材料23cが流れ込むことや、ゲートブレイク時にリードフレーム10に樹脂が残ることを防止することができる。
【0087】
変形例2
図17および図18は、本実施の形態の一変形例(変形例2)によるリードフレーム10Bを示す図である。このうち図17は、リードフレーム10Bを示す平面図(図1に対応する図)であり、図18は、リードフレーム10Bを示す部分拡大平面図(図2に対応する図)である。
【0088】
図17および図18に示すリードフレーム10Bにおいて、枠体13の外周に、ランナー84に対応する領域17を区画するとともに、枠体13の他の部分と同一厚みをもつ土手部72が設けられている。すなわち土手部72は、傾斜面70の両側に沿って立設されている。さらに、枠体13外周のうち、土手部72の外側、すなわち土手部72に対して傾斜面70の反対側に位置する領域にも傾斜面(追加の傾斜面)73が設けられている。この場合、傾斜面73は、枠体13の一辺13aのうち、土手部72以外の領域全てに設けられている。また、傾斜面73は、傾斜面70と略同一の断面形状を有しており、表面13eから裏面13fへ外方へ向かって徐々に降下する断面形状となっている。
【0089】
この場合であっても、図1乃至図14に示す実施の形態と同様、土手部72によって枠体13の一辺13aに沿って樹脂材料23cが回り込むことを防止することができる。このほか、上述した図1乃至図14に示す実施の形態の効果と略同様の効果を得ることもできる。
【符号の説明】
【0090】
10、10A、10B リードフレーム
11 リードフレーム本体
12 めっき層
13 枠体
14 パッケージ領域
17 ランナーに対応する領域
20 半導体装置
21 LED素子
22 ボンディングワイヤ(導電部)
23 反射樹脂
24 封止樹脂
25 ダイパッド
26 リード部
27 第1のアウターリード部
28 第2のアウターリード部
30 樹脂付リードフレーム
52 リード連結部
53 ダイパッド連結部
54 パッケージ領域連結部
70 傾斜面
71 側壁
72 土手部
73 追加の傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子搭載用リードフレームにおいて、
枠体と、
枠体内に設けられ、各々がLED素子が搭載されるダイパッドと、ダイパッドに隣接するリード部とを含む多数のパッケージ領域とを備え、
枠体外周のうち、少なくとも反射樹脂用の樹脂材料を注入するランナーに対応する領域に、その断面が表面から裏面へ外方へ向かって徐々に降下する傾斜面が設けられていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
枠体外周のうち、ランナーに対応する領域が傾斜面となっておりその他の領域が垂直面となっていることを特徴とする請求項1記載のリードフレーム。
【請求項3】
枠体外周の長手方向の一辺全体が傾斜面となっていることを特徴とする請求項1記載のリードフレーム。
【請求項4】
枠体の外周に、ランナーに対応する領域を区画するとともに、枠体の他の部分と同一厚みをもつ土手部を設けたことを特徴とする請求項1記載のリードフレーム。
【請求項5】
枠体外周のうち、土手部に対して傾斜面の反対側に位置する領域にも追加の傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項4記載のリードフレーム。
【請求項6】
樹脂付リードフレームにおいて、
請求項1乃至5のいずれか一項記載のリードフレームと、
リードフレームの各パッケージ領域周縁上に配置された反射樹脂とを備えたことを特徴とする樹脂付リードフレーム。
【請求項7】
樹脂付リードフレームの製造方法において、
請求項1乃至5のいずれか一項記載のリードフレームを準備する工程と、
リードフレームを金型内に配置し、リードフレームの枠体の傾斜面側から反射樹脂用の樹脂材料を注入することにより、リードフレームの各パッケージ領域周縁上に反射樹脂を設ける工程とを備えたことを特徴とする樹脂付リードフレームの製造方法。
【請求項8】
反射樹脂は、トランスファ成形法によって設けられることを特徴とする請求項7記載の樹脂付リードフレームの製造方法。
【請求項9】
半導体装置の製造方法において、
請求項7または8記載の樹脂付リードフレームの製造方法により、樹脂付リードフレームを作製する工程と、
樹脂付リードフレームの各反射樹脂内であって各ダイパッド上にLED素子を搭載する工程と、
LED素子と各リード部とを導電部により接続する工程と、
樹脂付リードフレームの各反射樹脂内に封止樹脂を充填する工程と、
反射樹脂およびリードフレームを切断することにより、反射樹脂およびリードフレームをLED素子毎に分離する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−115115(P2013−115115A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257662(P2011−257662)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】