説明

リーン/リッチエージングに対する耐久性を有する窒素酸化物の還元のための小細孔分子篩担持銅触媒

触媒の使用方法は、触媒を化学処理中に少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。前記触媒は、銅と8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。前記化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を有する。前記触媒は、初期活性および前記還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を有する。前記最終活性は、200℃から500℃までの間の温度で前記初期活性の30%以内である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国予備特許出願第61/170,358号および第61/321,832号の優先権を主張し、前記2つの予備特許出願はすべて参照として本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、還元性雰囲気に露出した後、特に、高温に露出した後に変質しにくい小細孔分子篩担持銅触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
アンモニアまたは尿素のような窒素化合物によるNOの選択的触媒還元(selective catalytic reduction;SCR)は、火力発電所、ガスタービン、石炭燃焼発電所、化学処理産業での設備と精製ヒータおよびボイラー、炉、コークス炉、都市廃棄物処理設備と焼却炉のような固定産業分野の処理、およびディーゼル排ガスの処理のような車両分野を含む多くの分野で発展してきている。
【0004】
NHSCRシステムでは様々な化学反応が起きるが、これらすべては、NOを窒素に還元する好適な反応を示す。主な反応は、反応式(1)のとおりである。
4NO+4NH+O→4N+6HO (1)
【0005】
競争的に、酸素を含む非選択性反応は、2次排出物を生産するか、または無駄にアンモニアを消費することがある。このような非選択性反応としては、反応式(2)のようなアンモニアの完全酸化がある。
4NH+5O→4NO+6HO (2)
【0006】
また、反応式(3)のような副反応が起き、NOのような好ましくない物質が生成されることがある。
4NH+4NO+3O→4NO+6HO (3)
【0007】
NHを含むNOのSCRのための触媒は、例えば、アルミノケイ酸塩分子篩を含むことができる。尿素のようなアンモニア前駆体から得るか、それ自体でアンモニアを注入して得ることができる還元剤を有して、車両のディーゼルエンジンから出るNO排出物が調節できる。触媒活性を促進するために、遷移金属がアルミノケイ酸塩分子篩内に混合できる。最も一般的に、テストされた遷移金属分子篩は、Cu/ZSM−5、Cu/ベータ、Fe/ZSM−5およびFe/ベータであるが、これは、これらが相対的に広い温度活性帯域(temperature activity window)を有するからである。しかし、一般的に、Cu系分子篩触媒は、Fe系分子篩触媒よりも優れた低温NO還元活性を示す。
【0008】
使用時において、ZSM−5およびベータ分子篩は多くの欠点がある。これらは、酸度の損失をもたらす高温の水熱エージング時に、特に、Cu/ベータとCu/ZSM−5触媒の場合に、脱アルミニウム化に敏感である。ベータおよびZSM−5系触媒とも、相対的に低い温度で触媒に吸着する炭化水素の影響を受け、触媒システムの温度が上昇するにつれて触媒を熱的に損傷させる重大な発熱を生成し酸化する。この問題は、炭化水素の相当量が冷態始動時に触媒に吸着可能であり、ベータおよびZSM−5分子篩が炭化水素によってコークス化されやすい車両のディーゼル分野において特に重要である。
【0009】
一般的に、Cu系分子篩触媒は、熱的に耐久性がさらに低く、Fe系分子篩触媒よりも高い水準でNOを生産する。しかし、これらは、対応するFe分子篩触媒に比べて、使用時により少ないアンモニアを消費するという好ましい利点がある。
【0010】
WO2008/132452は、少なくとも1種の遷移金属を含むゼオライト触媒の存在下で窒素酸化物を窒素還元剤と接触させることにより、ガスの窒素酸化物を窒素に変換させる方法を開示しているが、ゼオライトは、8個の四面体原子の最大環サイズを含む小細孔ゼオライトであり、少なくとも1種の遷移金属は、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、IrおよびPtからなる群より選択される。
【0011】
WO2008/106518は、繊維マトリクスの壁流フィルタと、繊維マトリクス壁流フィルタ上のSCRとして疎水性チャバザイト(chabazite)分子篩の組み合わせを開示している。フィルタは、システム構成において改善された柔軟性を達成し、活性再生のために少ない燃料を消費する。このような活性再生は、リーン雰囲気条件への露出を含む。しかし、前記文献は、フィルタを還元条件に適用しようとするものではない。また、前記文献は、このような還元性雰囲気への露出後に触媒の耐久力を維持することについては開示も示唆もされていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、触媒の使用方法は、触媒を化学処理中に少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。前記触媒は、銅と8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。好ましくは、前記触媒は、銅促進小細孔分子篩、すなわち、銅を含む小細孔分子篩である。前記化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を有する。前記触媒は、初期活性および前記還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を有する。前記最終活性は、200℃から500℃までの間の温度で前記初期活性の30%以内である。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、触媒の使用方法は、排ガス処理を含む化学処理中に窒素酸化物を含む少なくとも1種の反応物に触媒を露出させるステップを含む。前記触媒は、銅とCHA、LEV、ERIおよびDDRからなる骨格型コード(framework type code)の群より選択された8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。前記化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を有する。前記触媒は、初期活性および前記還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を有する。前記最終活性は、250℃から350℃までの間の温度で前記初期活性の10%以内である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明をより明確に理解できるように、下記の図面を参照する。
【図1】リーン水熱エージングとリーン/リッチサイクルエージング後の中細孔および大細孔分子篩担持銅触媒のNO転化を示すグラフである。
【図2】リーン水熱エージングとリーン/リッチサイクルエージング後のFe/分子篩触媒のNO転化を示すグラフである。
【図3】リーン水熱エージングとリーン/リッチサイクルエージング後の本発明の実施形態にかかる小細孔分子篩担持銅触媒およびこれと比較されるCu/ベータ触媒のNO転化を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態にかかる別のSCR触媒を備えるNACおよび組み合わされたNAC+SCRシステムと比較例のNO転化効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
リーン燃焼内燃機関の排ガス中のNOを処理する方法は、基礎物質(basic material)中のリーンガスからNOを貯蔵した後、基礎物質からのNOを放出し、これをリッチガスを用いて周期的に還元させるものである。基礎物質(例えば、アルカリ金属、アルカリ土金属、希土類)と、貴金属(例えば、白金)と、可能な還元触媒成分(例えば、ロジウム)の組み合わせは、典型的に、NO吸着触媒(NAC)、リーンNOトラップ(LNT)、またはNO貯蔵/還元触媒(NSRC)として言及される。ここで使用されるように、NO貯蔵/還元触媒、NOトラップ、およびNO吸着触媒(またはこれらの略語)は、入れ替えて使用可能である。
【0016】
特定の条件において、周期的にリッチな再生過程中に、NHは、NO吸着触媒によって生成できる。NO吸着触媒の下流にSCR触媒を加えることにより、システム全体のNOの還元効率が改善できる。組み合わされたシステムにおいて、SCR触媒は、リッチな再生過程中にNAC触媒から放出されたNHを貯蔵することができ、貯蔵されたNHを用いて、正常なリーン作動状態でNAC触媒によって消費するNOの一部または全部を選択的に還元する。ここで使用されるように、前記組み合わされたシステムは、例えば、NAC+SCRまたはLNT+SCRのように、各略語の組み合わせで示すことができる。
【0017】
組み合わされたNAC+SCRシステムは、SCR触媒成分に対する付加的な要件をさらに有する。すなわち、優れた活性および熱的安定性を有するほか、SCR触媒は、リーン/リッチ行程に対して安定的でなければならない。このようなリーン/リッチ行程は、一般的なNAC再生過程中に発生できるだけでなく、NAC脱硫酸化過程中にも発生することができる。NAC脱硫酸化過程中に、SCR触媒は、一般的なNO再生過程中の露出に比べてはるかに高い温度に露出することがある。そのため、NAC+SCRシステムに好適な優れたSCR触媒は、高温の還元性雰囲気に露出した後に変化しないことが必要である。ここでは、本発明がSCRの実施形態で特に強調して説明されているが、本発明は、還元性雰囲気に露出したときに活性を失うすべての触媒を含むことができる。
【0018】
触媒は、還元性雰囲気、特に、高温の還元性雰囲気に露出したときに不安定になることがある。例えば、銅触媒は、車両の排ガスまたは排ガス処理システムなどで生じやすい、繰り返された高温のリーン/リッチ行程中に不安定になる。還元性雰囲気は、リーン/リッチ行程のリッチステップで発生する。しかし、還元性雰囲気条件は、NO吸着触媒の再生または脱硫酸化および促進された煤煙フィルタなどの活性再生のための典型的な環境を含む多様な環境で発生することができる。したがって、ここで使用されるように、還元性雰囲気は、1より小さいラムダ値を有する排ガス(例えば、理論空然比より小さい空然比から駆動される)の純(net)還元である。対照的に、非還元性雰囲気は、例えば、1より大きいラムダ値(例えば、理論空然比より大きい空然比から駆動される)を有する純酸化である。
【0019】
特定の理論に縛られたくはないが、本発明を発見する前には、銅触媒は、還元性雰囲気に露出したときにその活性を失うため、分子篩担持銅触媒は、還元性雰囲気(特に、繰り返されるリーン/リッチサイクル行程で生じ得る還元性雰囲気)に露出したとき、安定性または活性を維持することはできないと考えられていた。このような活性の損失は、銅の移動、焼結および/または還元された銅の分散によるものと判断されたのである。驚きながら、本発明の発明者らは、小細孔分子篩担持銅触媒が中および大細孔分子篩担持銅触媒でないにもかかわらず、その触媒活性を維持することを発見した。小細孔分子篩は、銅の骨格からの離脱、焼結、損失、銅の分散を制限して、触媒の安定性および活性を改善することが考えられる。しかし、中および大細孔分子篩は、還元性雰囲気に露出したときに生じ得る銅の移動、焼結および/または還元された銅の分散により安定性および活性を維持することができない。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、触媒の使用方法は、化学処理中に触媒を少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。触媒は、銅と8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を有する。触媒は、初期活性および還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を有する。最終活性は、150℃から650℃までの間、好ましくは、200℃から500℃までの間の温度で初期活性の30%以内である。
【0021】
触媒の使用方法は、化学処理中に触媒を少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。ここで使用されるように、化学処理は、銅を含む小細孔分子篩を含む触媒と、これに対する還元性条件を利用するすべての適切な化学処理を含む。代表的な化学処理としては、これに限定されるものではないが、窒素還元剤、リーンNO触媒、促進された煤煙フィルタ、またはNO吸着触媒または三元触媒(TWC:three−way catalyst)を含むもののうち少なくとも1種の組み合わせ、例えば、NAC+(下流)SCRまたはTWC+(下流)SCRを用いる選択的触媒還元のような排ガス処理がある。
【0022】
本発明の他の態様によれば、NAC+(下流)SCRまたはTWC+(下流)SCRを含み、SCR触媒は、ここで説明される銅促進小細孔ゼオライト篩を備えるシステムが提供される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、SCR促進された煤煙フィルタが提供され、SCR触媒は、ここで説明される銅促進小細孔ゼオライト篩を含む。
【0024】
触媒の使用方法は、触媒を少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。反応物は、前記化学処理で典型的に生じ得るすべての反応物を含むことができる。反応物は、アンモニアのような選択的触媒還元剤を含むことができる。選択的触媒還元は、(1)アンモニアまたは窒素還元剤、または(2)炭化水素還元剤(後者は、リーンNO触媒としても知られている)を使用することができる。他の還元剤は、窒素酸化物と酸素を含むことができる。
【0025】
触媒は、遷移金属、好ましくは、銅および8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。ここで使用されるように、「分子篩」は、気体または液体用吸着剤として使用可能な正確かつ均一なサイズの小細孔を含む準安定材料を意味するものと理解される。細孔を通過するほど十分に小さい分子は吸着するのに対し、それより大きい分子は吸着しない。分子篩骨格は、一般的に、国際ゼオライト協会によって認められる骨格型コードとして定義できる(http://www.iza−online.org/)。このような分子篩は、以下でより詳細に説明される。
【0026】
分子篩は、下記のような員環によって代表的に定義される。大細孔の環は12員環以上であり、中細孔の環は10員環であり、小細孔の環は8員環以下である。本発明における触媒は、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔の環である。
【0027】
ほとんどの触媒は、中細孔(ZSM−5のような10環)または大細孔(ベータのような12環)の分子篩に担持される。例えば、分子篩担持銅SCR触媒は、NOのみの条件下で広い温度帯域を示すことができる。しかし、このような触媒は、図1に示すように、繰り返されるリーン/リッチ高温エージングに対しては不安定である。図1は、水熱エージング条件とリーン/リッチエージング条件におけるCu/ベータ触媒(大細孔)とCu/ZSM−5触媒(中細孔)を示している。リーン/リッチエージング条件を示す点線によって確認されているように、このような形態の触媒は、繰り返される還元性条件に露出した場合には不適である。特に、このような触媒は、NAC+SCRの適用に不適である。
【0028】
分子篩担持鉄SCR触媒は、低温(例えば、<350℃)で分子篩担持銅触媒のように活性化されないが、図2に示すように、繰り返されるリーン/リッチ高温エージングに対して安定的である。図2は、水熱エージングおよびリーン/リッチエージング条件後のFe/フェリエライト、Fe/ZSM−5およびFe/ベータを示している。これによれば、分子篩担持鉄触媒は、例えば、NAC+SCRの適用で見られるような繰り返されるリーン/リッチエージングに対して優れた安定性による技術的選択性を有する。
【0029】
小細孔分子篩担持銅触媒が、改善されたNH−SCR活性および優れた熱的安定性を示すことが立証された。本発明の一態様によれば、このような形態の触媒は、繰り返されるリーン/リッチ高温エージングに耐える。図3は、一連の小細孔分子篩担持銅触媒(それぞれCu/SAPO−34、Cu/Nu−3、およびCu/SSZ−13)を、700℃/2時間の水熱エージングと、600℃/12時間の繰り返されたリーン/リッチエージング後に比較される大細孔触媒(Cu/ベータ)とそれぞれ比較したものである。図3から明らかなように、小細孔分子篩を有する触媒は、リーン/リッチエージングに対して非常に安定的である。特に、Cu/SAPO−34は、非常に優れた低温活性を示し、周期的なリーン/リッチエージング後の活性の低下が現れないことを示している。
【0030】
本発明の実施形態にかかる触媒は、高いNO転化において非常に広い温度帯域を示す。改善された転化効率の温度範囲は、約150℃〜650℃、より詳細には200℃〜500℃、さらに詳細には200℃〜450℃、特に約200℃〜400℃である。このような温度範囲において、還元性雰囲気に露出した後のみならず、還元性雰囲気および高温(例えば、850℃以上)に露出した後の転化効率は、55%より大きい値から100%まで、より好ましくは90%効率より大きく、さらに好ましくは95%効率より大きくてもよい。特に、組み合わされたNAC+SCRシステムは、NAC触媒単独またはFe/分子篩SCR触媒を使用するNAC+SCRシステムのいずれかと比較しても、高いNO転化においてはるかに広い温度帯域を示す。図4を参照する。例えば、約250℃と約300℃において、リーン/リッチエージングにおけるシステムに対するNO転化効率は、次のとおりである。
【0031】
【表1】

【0032】
このような結果から明らかなように、NAC+Cu/小細孔分子篩触媒の使用は、転化効率を顕著に改善させる。このような改善は、最終的なNOの排気にある。したがって、約87%のNO転化(約13%のNOが残留する)から約97%のNO転化(約3%のNOが残留する)までの改善は、残留するNOの割合に基づいて、効率において433%改善されたものである。
【0033】
触媒は、初期活性および還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を含む。特定の実施形態において、触媒活性は、NO転化効率である。したがって、初期活性は、還元性雰囲気に露出しなかった触媒のNO転化効率であり、最終活性は、還元性雰囲気に露出した後の触媒のNO転化効率である。初期活性は、水熱条件においてベースラインエージングを含むことができる。水熱条件は、空気中の5%のHOにより、700℃で2時間エージングすることを含むことができる。
【0034】
化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を有する。還元性雰囲気は、リーン/リッチエージングサイクルにおいて、リッチ条件区間のようなすべての適切な還元性雰囲気を含むことができる。例えば、局所的な還元性雰囲気が促進された煤煙フィルタの再生中に発生することもできる。少なくとも1つの露出 区間は、還元性条件への繰り返された露出または還元性条件への長期間の露出を含むことができる。例えば、繰り返された露出は、600℃で12時間、周期的なリーン/リッチエージングを含むことができる。リーンサイクルは、15秒から数十分まで持続可能であり、リッチサイクルは、1秒未満から数分まで持続可能である。NAC−SCRシステムまたはTWC−SCRシステムにおいて、リッチサイクルは、例えば、1秒から60秒まで、1秒から15秒まで、または5秒から15秒まで持続可能である。コーティングされた煤煙フィルタ分野(例えば、SCR/DPF(ディーゼル特定フィルタ))において、リッチサイクルは、例えば、30秒から60分までの連続した露出、5分から30分までの連続した露出、または10分から30分までの連続した露出範囲を含むことができる。例えば、サイクルのリーン部分は、Nにおいて、200ppmのNO、10%のO、5%のHO、5%のCOへの露出を含むことができ、サイクルのリッチ部分は、Nにおいて、200ppmのNO、5000ppmのC、1.3%のH、4%のCO、1%のO、5%のHO、5%のCOへの露出を含むことができる。還元性雰囲気は、高温の還元性雰囲気であり得る。高温の還元性雰囲気は、約150℃から850℃までの温度、またはより詳細には約450℃から850℃までの温度で発生することができる。
【0035】
最終活性は、触媒作動温度で初期活性の約30%以内、好ましくは約10%以内、より好ましくは5%以内、さらに好ましくは3%以内である。触媒作動温度は、約150℃から約650℃までの間が好ましいが、より好ましくは約200℃から約500℃までの間である。触媒の活性が、好ましくは200℃から500℃までの範囲の温度内で測定されるが、化学処理の部分は、すべての温度、例えば、高温を含むさらに広い温度で作動することができる。例えば、触媒活性は、200℃から500℃までの温度範囲で、さらに、例えば、850℃を超える高温に露出した後も維持され続けるはずである。ここで使用されるように、最終活性が初期活性に対する割合で与えられたとき、それは、与えられた温度範囲にわたって平均割合で与えられるが、すなわち、最終活性が200℃から500℃までの間の温度で初期活性の30%以内であれば、この範囲でテストされたすべての温度で30%よりさらに低い必要がなく、これは、単にテストされた温度にわたって30%より平均的に低いものである。また、活性がこの分野の例においてNO転化として識別されるが、活性は、本技術分野において知られているように、化学処理による触媒活性の他の測定となり得る。触媒活性と最終活性に対する初期活性の割合を示すデータが、下記の表(図3参照)から明らかになる。負の数は、還元性条件に露出した後の活性が初期活性に比べて実質的に改善されたことを意味する(そのため、必ず初期活性の特定量の割合の「以内」にあるはずである)。
【0036】
Cu/Nu−3を用いた実施形態の場合、データは下記のとおりである。
【表2】

【0037】
したがって、リーン/リッチエージング%NO還元は、水熱エージング%NO還元の約6%以内であった。これにより、触媒は、安定的に維持され、約150℃から約650℃までの温度範囲において還元条件への繰り返された露出に優れた活性を有する。
【0038】
Cu/SSZ−13を用いた実施形態の場合、データは下記のとおりである。
【表3】

【0039】
したがって、リーン/リッチエージング%NO還元は、約200℃から約500℃までの温度範囲において、水熱エージング%NO還元の約30%以内であった。
【0040】
Cu/SAPO34を用いた実施形態の場合、データは下記のとおりである。
【表4】

【0041】
したがって、リーン/リッチエージング%NO還元は、約200℃から約500℃までの範囲において、水熱エージング%NO還元の約3%以内であり、約200℃から約560℃までの温度範囲では約10%以内であった。
【0042】
比較例として、Cu/ベータ(大細孔分子篩触媒)が比較される。
【表5】

【0043】
Cu/ベータ比較例は、リーン/リッチ周期エージング後の不十分な活性を示す。したがって、銅分子篩触媒に対する還元性雰囲気への露出は、不十分な安定性をもたらし、本発明を発見する前には活性が考えられていた。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、触媒の使用方法は、触媒を、排ガス処理を含む化学処理中に窒素酸化物を含む少なくとも1種の反応物に露出させるステップを含む。触媒は、銅とCHA、LEV、ERIおよびDDRからなる骨格型コードの群より選択される8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩を含む。化学処理は、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間を備える。触媒は、初期活性および還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの区間後の最終活性を含む。最終活性は、250℃から350℃までの間の温度で初期活性の10%以内である。好ましい実施形態では、触媒が250℃から350℃までの間の温度で初期活性の3%以内の最終活性を有する。
【0045】
本発明の一実施形態において、触媒は、NAC(NO吸着触媒)と組み合わされ、NAC+SCRシステムでテストされる。図4は、NAC単独および別のSCR小細孔分子篩触媒(Cu/SAPO−34とCu/SSZ−13)を備えるNAC+SCRシステムと、比較例としてのFe/ベータ触媒のNO転化効率を比較する。Fe/分子篩SCRとNAC触媒の組み合わせが、NAC単独に比べてシステムのNO転化を改善する。しかし、銅を含む小細孔分子篩を備える他の2つのシステム、すなわち、Cu/SAPO−34またはCu/SSZ−13も、より改善されたNO除去効率を示すことが目立つ。これは、低温(200−350℃)で特に明確になる。このような結果は、小細孔分子篩担持銅触媒が、NAC+SCRシステムの性能をより改善できるという新しい能力が提供可能であることを示す。
【0046】
NAC+SCRの適用に加えて、小細孔分子篩担持銅担体は、高温の還元性雰囲気に露出可能な他の適用のための相当な性能の改善を提供する。例えば、小細孔分子篩担持銅触媒は、SCR/DPF(ディーゼル特定フィルタ)の活性再生時に発生する還元性雰囲気で使用可能である。小細孔分子篩担持銅触媒は、優れた熱的耐久性および還元性条件、例えば、排ガス処理システムで発生するリッチエージングに対して顕著な安定性を提供する。
【0047】
分子篩をその骨格型コードで定義することにより、「型材料(Type Material)」とすべての同形骨格材料を含む。(「型材料」は、骨格型を確立するために使用される第1種である)。表1には、本発明で使用するための実際の分子篩材料の範囲が示される。誤解を避けるために、他に指示がない限り、名称(例えば、「チャバザイト」)による分子篩を参照することは、それ自体でその分子篩材料(この例では天然産型材料のチャバザイト)であり、個別の分子篩が属することができる骨格型コード(例えば、他の同形骨格材料)によって明示される他の材料ではない。ここで、FTCの使用は、その型材料とFTCによって定義されるすべての同形骨格材料に関するものである。
【0048】
天然産(すなわち、ミネラル)チャバザイトのような分子篩型材料と同一の骨格型コード内における同形間の違いは、単なる任意ではなく、本発明の方法で交互に活性の差を引き出すことが可能な材料間の性質の違いを反映する。例えば、下記の表1から、「MeAPSO」と「MeAIPO」によって1種以上の金属でゼオタイプ(zeotype)が置換されることが分かる。適切な置換金属は、As、B、Be、Co、Fe、Ga、Ge、Li、Mg、Mn、ZnおよびZrのうちの1種以上を含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
特定の実施形態において、本発明にかかる使用のための小細孔分子篩触媒は、アルミノケイ酸塩分子篩、金属置換アルミノケイ酸塩分子篩およびリン酸アルミニウム分子篩からなる群より選択可能である。本発明で適用されるリン酸アルミニウム分子篩は、リン酸アルミニウム(AIPO)分子篩、金属置換(MeAIPO)分子篩、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)分子篩および金属置換シリコリン酸アルミニウム(MeAPSO)分子篩を含む。
【0050】
一実施形態において、小細孔分子篩は、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZONからなる骨格型コードの群より選択される。
【0051】
一実施形態において、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩は、CHA、LEV、ERIおよびDDRからなる骨格型コードの群より選択される。好ましい実施形態において、小細孔分子篩は、SAPO−34またはSSZ−13より選択されるCHA骨格型コードを含む。他の実施形態において、小細孔分子篩は、LEV骨格型コードNu−3を含む。さらに、小細孔分子篩は、AEI骨格型コードSAPO−18、ERI骨格型コードZSM−34、および/またはDDR骨格型コードシグマ−1を含むことができる。小細孔分子篩は、ともに成長または混合した相のAEI/CHA、AEI/SAVなどのような無秩序状態の分子篩を含むこともできる。
【0052】
本発明で適用される分子篩は、水熱安定性を改善するように処理されたものを含むことができる。水熱安定性を改善する具体的な方法は、
(i)蒸気処理および酸または錯化剤(例えば、EDTA(ethylenediaminetetracetic acid))を用いた酸抽出;酸および/または錯化剤処理;SiClの気体流処理(分子篩骨格内のAlをSiで置換)による脱アルミニウム過程と、
(ii)陽イオン交換過程−Laのような多原子価の陽イオンの使用と、
(iii)リン含有化合物の使用(例えば、米国特許第5,958,818号参照)とを含む。
【0053】
表1には、適切な小細孔分子篩の具体例を示す。
【表6】









【0054】
表2には、還元性条件への露出のために特に適用される小細孔分子篩を示す。
【表7】

【0055】
本発明で使用するための分子篩は、天然分子篩と合成分子篩を含むが、好ましくは、合成分子篩がシリカ−アルミナ比(SAR)、微結晶サイズ、微結晶形態および不純物の非存在(例えば、アルカリ土金属)においてさらに均一であるため、合成分子篩を含む。小細孔アルミノケイ酸塩分子篩は、2〜300、選択的に4〜200、好ましくは8〜150のシリカ−アルミナ比(SAR)を有することができる。もちろん、熱的安定性を向上させるにはより高いSAR比が好ましいが、遷移金属交換に否定的な影響を及ぼすことがある。
【0056】
少なくとも1種の反応物は、5,000hr−1〜500,000hr−1、選択的には10,000hr−1〜200,000hr−1のガス毎時空間速度で触媒と接触することができる。
【0057】
本発明で使用するための小細孔分子篩は、3次元、すなわち、すべての3つの結晶次元で互いに連結される細孔であるか、2次元で形成できる。一実施形態において、本発明で使用するための小細孔分子篩は、3次元を有する分子篩からなる。他の実施形態において、本発明で使用するための小細孔分子篩は、2次元を有する分子篩からなる。
【0058】
特定の実施形態において、小細孔分子篩は、ABC−6、AEI/CHA、AEI/SAV、AEN/UEI、AFS/BPH、BEC/ISV、ベータ、ファジャサイト(fuajasite)、ITE/RTH、KFI/SAV、ロブダライト(lovdarite)、モンテソンマイト(montesommaite)、MTT/TON、ペンタシル(pentasil)、SBS/SBT、SSF/STF、SSZ−33およびZSM−48からなる群より選択される無秩序状態の骨格で構成される。好ましい実施形態において、1種以上の小細孔分子篩は、SAPO−34、AIPO−34、SAPO−47、ZYT−6、CAL−1、SAPO−40、SSZ−62またはSSZ−13より選択されるCHA骨格型コード、および/またはAIPO−18、SAPO−18、SIZ−8またはSSZ−39より選択されるAEI骨格型コードを含むことができる。一実施形態において、混合相の混合物は、AEI/CHA−混合相混合物である。分子篩において、各骨格型の比は、特に限定されない。例えば、AEI/CHAの比は、約5/95〜約95/5、好ましくは約60/40〜40/60の範囲であり得る。AEI/CHAのような無秩序状態の分子篩は、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、Ptおよびそれらの混合物、好ましくは、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Rh、Pd、Ptおよびそれらの混合物、より好ましくは、Feおよび/またはCu、最も好ましくは、銅のような1種以上の遷移金属用担体として使用可能である。
【0059】
分子篩に含むことができる全体の銅金属は、触媒の全重量に基づいて0.01〜20重量%であり得る。一実施形態において、分子篩に含むことができる全体の銅は、0.1〜10重量%であり得る。特定の実施形態において、分子篩に含むことができる全体の銅は、0.5〜5重量%であり得る。銅は、適当な方法によって分子篩に含むことができる。例えば、初期湿潤または交換工程のような方法によって分子篩が合成された後に加えられるか、分子篩の合成中に加えられる。
【0060】
本発明で使用するための好ましい2次元小細孔分子篩は、Cu/Nu−3のようなCU/LEVからなり、本発明で使用するための好ましい銅含有3次元小細孔分子篩/リン酸アルミニウム分子篩は、Cu/SAPO−34またはCu/SSZ−13のようなCu/CHAを含む。
【0061】
本発明で使用するための分子篩触媒は、適切な基材モノリス上にコーティングされるか、抽出型触媒として形成されるか、好ましくは触媒のコーティングで使用される。一実施形態において、分子篩触媒は、フロースルー(flow−through)モノリス基材(すなわち、全体的に軸方向に沿って延びる小さく平行な多くの通路を備えるハニコムモノリス触媒)または壁流フィルタなどのようなフィルタモノリス基材上にコーティングされる。本発明で使用するための分子篩触媒は、例えば、ウォッシュコート(washcoat)成分として金属またはセラミックフロースルーモノリス基材のような適切なモノリス基材上に、または壁流フィルタまたは焼結された金属または部分フィルタのようなフィルタ環基材上にコーティングできる(これは、WO01/80970またはEP1057519に開示されているとおりであり、後者の文献は、煤煙の流れを遅延させる螺旋状の流路を有する基材を説明している)。あるいは、本発明で使用するための分子篩は、基材上に直接合成できる。あるいは、本発明にかかる分子篩触媒は、抽出型フロースルー触媒によって形成できる。
【0062】
抽出型基材モノリスを製造するためのモノリス基材にコーティングするために本発明で使用するための分子篩を含むウォッシュコート混合物は、アルミナ、シリカ、(非分子篩)シリカ−アルミナ、天然粘土、TiO、ZrOおよびSnOからなる群より選択されるバインダーを含むことができる。
【0063】
一実施形態において、少なくとも1種の反応物(例えば、窒素酸化物)は、少なくとも100℃の温度にて還元剤で還元される。他の実施形態において、少なくとも1種の反応物は、約150℃〜750℃の温度にて還元剤で還元される。特定の実施形態において、温度範囲は、170℃〜550℃、好ましくは175℃〜400℃である。
【0064】
窒素酸化物を含む反応物の場合、窒素酸化物の還元は、酸素の存在下で行われてもよく、酸素の非存在下で行われてもよい。窒素還元剤の原料は、アンモニムそのもの、ヒドラジンまたはすべての適切なアンモニア前駆体(尿素((NHCO)のような)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはギ酸アンモニウムであり得る。
【0065】
本方法は、内燃機関(移動型または静止型)、ガスタービンおよび石炭または石油燃焼発電所のような燃焼工程から発生するガスに対して行うことができる。本方法は、精製などの産業工程、精製ヒータおよびボイラー、炉、化学処理産業、コークス炉、都市廃棄物処理設備および焼却炉、コーヒー焙煎設備などからのガスの処理に使用できる。
【0066】
特定の実施形態において、本方法は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンのようなリーン/リッチ周期を有する車両の内燃機関または液化石油ガス(LPG)または天然ガスから動力を得るエンジンからの排ガスを処理するのに使用される。
【0067】
窒素酸化物を含む反応物の場合、窒素還元剤は、分子篩触媒が100℃以上、150℃以上、または175℃以上で所望の効率以上にNO還元を促進できると決定されたときにのみ、排ガス流中で計測できる。制御手段による決定は、排ガス温度、触媒床温度、加速器の位置、システムでの排ガスの質量流(mass flow)、マニホルド真空、点火タイミング、エンジン速度、排ガスのラムダ値、エンジンに注入された燃料の量、排ガスの再循環(EGR)値の位置およびこれによるEGRの量およびブースト圧からなる群より選択されるエンジンの状態を示す1つ以上の適切なセンサの入力を用いて実施できる。
【0068】
計測は、直接(適切なNOセンサを使用)または間接的に決定される排ガス中の窒素酸化物の量によって制御できるが、間接的には関連ルックアップテーブルまたは排ガスの予想されるNOの量とともに、エンジンの状態を示す1つ以上の前記入力に関連づけられる制御手段に記憶されたマップを用いて決定される。
【0069】
ここで引用されたすべての特許および参照文献の全体内容は、ここに参照として援用される。
【実施例】
【0070】
ここでは、本発明が特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明は、これに限定されるものではない。むしろ、請求項の権利範囲内で本発明を逸脱しない範囲で様々な形態で変形可能である。
【0071】
1.定常状態SCR評価
定常状態選択的触媒還元(SCR)活性テストは、長さ24インチの石英反応器で行われ、長さ12インチの2つのチューブの炉ユニットによって均一に加熱された。実験は、直径1インチ×長さ1インチの触媒寸法を用いる300hr−1のガス毎時空間速度で行われる。反応器に直接連結されたすべてのガスラインは、ガスライン上にガス種の吸着を防止するために、加熱テープによって130℃に維持された。水蒸気は、70℃に一定に維持された水爆弾によって提供された。
【0072】
触媒床に達する前に、供給ガスは、非活性蓄熱体(inert thermal mass)を介して反応器内で上流で加熱および混合される。気体流の温度は、触媒の入口、触媒床の中間およびk型サーモカップルの出口で測定される。反応供給ガスは、1.25s−1のサンプリングレートで触媒床の下流からFTIRによって分析された。入口供給ガスの構成は、反応器の上流に位置するバイパスバルブからのサンプ環によって決定される。
【0073】
定常状態SCR実験は、4.5%のHOを含む空気の存在下で、700℃で2時間水熱エージングされた触媒サンプルに対して初期に行われた。すべての定常状態実験は、1のアンモニア−NO比(ANR)を有する350ppmのNOを含むNOとNHの供給ガスを用いて行われた。供給ガス構成の残りは、14%のO、4.6%のHO、5%のCO、バランスNからなる。定常状態NO転化は、150℃、200℃、250℃、350℃、450℃、550℃および650℃の触媒床の温度で決定される。
【0074】
次に、触媒は、12時間、600℃でリーン−リッチ周期の条件下でエージングされた。サイクルのリーン部分は、30,000h−1の空間速度で、5秒間、Nにおいて、200ppmのNO、10%のO、5%のHO、5%のCOに露出してなる。サイクルのリッチ部分は、15秒間、Nにおいて、200ppmのNO、5000ppmのC、1.3%のH、4%のCO、1%のO、5%のHO、5%のCOに露出してなる。エージング後に、定常状態SCR実験が前記のように行われた。
【0075】
図3には、本発明にかかる実施形態と比較例に対するNO転化効率を示している。本発明の実施形態にかかる小細孔分子篩であるCu/SAPO−34、Cu/Nu−3およびCu−SSZ−13に、上述した水熱エージング処理およびリーン/リッチエージング処理を経た後の様子がそれぞれ示されている。大細孔分子篩である比較例としてのCu/ベータも、水熱エージングとリーン/リッチエージング後の様子が示されている。これより明らかなように、小細孔分子篩触媒は、200〜500℃の温度帯域で特に顕著なNO転化効率を示す。
【0076】
2.NAC+SCR実験
NO吸着触媒(NAC)とSCRコアーは、初期に4.5%のHOの空気ガス混合中において、750℃で16時間エージングされた。次に、サンプルは、SCR触媒の全面に直接設けられたNAC触媒を備える、上述した同一の反応器に設けられる。触媒は、上述したリーン−リッチエージング条件(リーン5秒/リッチ15秒)下で、600℃にて12時間エージングされた。
【0077】
次に、触媒は、リーン/リッチサイクル(リーン60秒/リッチ5秒、同一のガス構成)下で、450℃にて冷却された。450℃で、25のリーン/リッチサイクルが完成(リーン60秒/リッチ5秒)し、最後の5サイクルは、触媒の平均サイクルを決定するために使用された。25回目のサイクル後に、触媒は、5分間、リーンガス組成物下で維持された。次に、触媒は、言及されたサイクル過程に続いて、400℃、350℃、300℃、250℃、200℃および175℃で評価された。
【0078】
図4には、本発明の実施形態と2つの比較例に対するNO転化効率を示している。本発明の実施形態にかかる小細孔分子篩触媒であるNAC+Cu/SAPO−34およびNAC+Cu/SSZ−13に、上述したリーン/リッチエージング処理を経た後の様子が示されている。大細孔分子篩触媒であるNAC単独およびNAC+Fe/ベータを示す比較例も、リーン/リッチエージング後の様子が示されている。これより明らかなように、小細孔分子篩触媒は、250℃〜450℃の温度帯域で特にNAC単独またはNAC+Fe/ベータより向上したNO転化効率を示す。
【0079】
ここでは、本発明の好ましい実施形態を示して説明したが、このような実施形態は例示として提供されたものであることを理解することができる。当業者であれば、本発明の思想を逸脱しない範囲内でここに開示された構成を多様に変形および代替することができる。したがって、添付した請求の範囲は、本発明の思想と範囲内でこのような変形をすべて含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の使用方法であって、
触媒を化学処理中に少なくとも1種の反応物に露出させることを含んでなるものであり、
前記触媒が、銅と小細孔分子篩を含んでなり、
前記化学処理が、少なくとも1つの還元性雰囲気への露出区間を含んでなり、
前記触媒が、前記還元性雰囲気へ露出する前における初期活性、及び前記少なくとも1つの還元性雰囲気への露出区間後における最終活性を含んでなり、
前記最終活性が、150℃から650℃までの間の温度で前記初期活性の30%以内であることを特徴とする、触媒の使用方法。
【請求項2】
銅と小細孔分子篩を含む前記触媒を還元性雰囲気に露出させ、
前記触媒を非還元性雰囲気で少なくとも1種の反応物と接触させることを含んでなり、
前記接触させることが、前記露出させることの後に行われてなり、
前記触媒が、前記還元性雰囲気へ露出する前における初期活性、及び前記少なくとも1つの還元性雰囲気への露出区間後における最終活性を含んでなり、
前記最終活性が、150℃から650℃までの間の温度で前記初期活性の30%以内であることを特徴とする、触媒の使用方法。
【請求項3】
前記最終活性が、200℃から500℃までの間の温度で前記初期活性の5%以内であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項4】
前記最終活性が、250℃から350℃までの間の温度で前記初期活性の3%以内であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の反応物が、窒素酸化物と選択的触媒還元剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項6】
前記選択的触媒還元剤が、アンモニアを含むことを特徴とする、請求項5に記載の触媒の使用方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の還元剤が、酸素をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の触媒の使用方法。
【請求項8】
前記小細孔分子篩が、アルミノケイ酸塩分子篩、金属置換アルミノケイ酸塩分子篩、およびリン酸アルミニウム分子篩からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項9】
前記小細孔分子篩が、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZONからなる骨格型コードの群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項10】
8個の四面体原子の最大環サイズを有する前記小細孔分子篩が、CHA、LEV、ERIおよびDDRからなる骨格型コードの群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項11】
前記小細孔分子篩が、CHA骨格型コードSAPO−34を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項12】
前記小細孔分子篩が、CHA骨格型コードSSZ−13、LEV骨格型コードNu−3、AEI骨格型コードSAPO−18、ERI骨格型コードZSM−34、DDR骨格型コードシグマ−1、およびそれらの混合からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項13】
還元性雰囲気に露出する前記少なくとも1つの露出区間が、高温の還元性雰囲気に繰り返し露出することを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項14】
前記高温の還元性雰囲気が、約150℃〜850℃の温度で発生することを特徴とする、請求項13に記載の触媒の使用方法。
【請求項15】
還元性雰囲気に露出する前記少なくとも1つの露出区間が、排ガス処理システムでリーン/リッチエージングサイクル中に発生することを特徴とする請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項16】
前記リーン/リッチエージングサイクルが、繰り返し発生することを特徴とする請求項15に記載の触媒の使用方法。
【請求項17】
前記化学処理が、内燃機関の排ガスに含まれているNOの選択的触媒還元であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項18】
前記化学処理が、促進された煤煙フィルタの再生であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項19】
前記化学処理が、リーンNOトラップおよび選択的触媒還元であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。
【請求項20】
触媒の使用方法であって、
排ガス処理を含む化学処理中に窒素酸化物を含む少なくとも1種の反応物に触媒を露出させることを含んでなるものであり、
前記触媒が、銅とCHA、LEV、ERIおよびDDRからなる骨格型コードの群より選択された8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩骨格を含んでなり、
前記化学処理が、還元性雰囲気に露出する少なくとも1つの露出区間を含んでなるものであり、
前記触媒が、前記還元性雰囲気に露出する前記少なくとも1つの露出区間後の最終活性を含んでなり、
前記最終活性は、250℃から350℃までの間の温度で前記初期活性の10%以内であることを特徴とする、触媒の使用方法。
【請求項21】
前記最終活性が、250℃から350℃までの間の温度で前記初期活性の3%以内であることを特徴とする、請求項20に記載の触媒の使用方法。
【請求項22】
前記活性が、NO転化であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−523958(P2012−523958A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505997(P2012−505997)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/031617
【国際公開番号】WO2010/121257
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】