説明

レジスト剥離液の回収方法

【課題】レジスト剥離液成分含有水から効率よくレジスト剥離液を回収することができるレジスト剥離液の回収方法を提供する。
【解決手段】レジスト剥離液含有水からレジスト剥離液を回収する方法において、レジスト剥離液含有水を疎水性ゼオライトよりなる吸着材4と接触させて、レジスト剥離液及び一部の水分を該吸着材に吸着させ、次いで、該吸着材から一部の水を脱着(第1脱着塔10における第1回脱着)させ、その後、該吸着材に対しレジスト剥離液の沸点よりも温度の高い過熱水蒸気を接触させて該吸着材から該レジスト剥離液を脱着(第2脱着塔20における第2回脱着)させ、この第2回脱着の脱着液を蒸留して該レジスト剥離液を分取して回収することを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の電子部品の製造工程で発生するレジスト剥離廃液を処理してレジスト剥離液を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の電子部品の製造工程では、フォトリソグラフィー工程を行うことがある。このフォトリソグラフィー工程は、基板上にネガ型又はポジ型のフォトレジストの比較を形成する被膜形成工程、パターンマスクを通して光等を照射する照射工程、現像液を用いて不要のフォトレジストを溶解・現像してレジストパターンを形成する溶解・現像工程、エッチング等の処理を行うエッチング工程、基板上のレジスト膜をレジスト剥離液を用いて剥離する剥離工程、及び基板を洗浄水(リンス水)で洗浄する洗浄工程を含んでいる。この剥離工程で使用されるレジスト剥離液は一般に、グリコール系溶剤(ブチルジグリコール等)などの有機溶媒、アルカノールアミン、少量の水(例えば0.5重量%以下)などから構成されている。
【0003】
剥離工程では、このレジスト剥離液が基板上に形成されたレジスト膜を溶解することにより、溶解レジストを含むレジスト剥離廃液が排出される。また、洗浄工程では、基板上に残留するレジスト剥離液を洗浄水でリンスすることにより、リンス廃水が排出される。
【0004】
この剥離工程で排出されるレジスト剥離廃液を再生処理する方法としては、特許文献1(特開2005−215627号公報)に開示された方法が知られている。この特許文献1では、レジスト剥離廃液を貯留槽から抜き出してナノフィルトレーション膜(NF膜)に通液し、溶解レジストを除去する。この溶解レジストが除去された透過液を、イオン交換樹脂と接触させて金属類及び/又はイオン性不純物を除去し、さらに水分除去剤(乾燥剤)及び/又は脱気膜と接触させて水分を除去することにより、レジスト剥離液を再生する。この再生されたレジスト剥離液は、レジスト剥離工程に再利用される。なお、NF膜を透過しなかった濃縮液は上記貯留槽に返送されて循環される。該貯留槽内のレジスト剥離廃液の性状が再生に適さなくなったときには、その一部又は全量を系外に排出すると共に、再生された透過液に対して新たなレジスト剥離液を補給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−215627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のレジスト剥離液の再生方法によると、レジスト剥離工程で排出された、水分量の少ないレジスト剥離廃液は再処理される。しかしながら、この特許文献1の方法は、洗浄工程で排出されたリンス水や、このリンス水とレジスト剥離工程で排出されたレジスト剥離廃液との混合液のような、水分を多量に含む廃水からのレジスト剥離液の再生には適さない。
【0007】
すなわち、特許文献1では、水分を乾燥イオン交換樹脂又はゼオライト等の水分除去剤を用いるか、又は脱気膜により除去する。この乾燥イオン交換樹脂やゼオライト等は、水分を多く含むリンス水等を接触させると、水分除去剤が早期に水で飽和してしまうため、水分除去剤を頻繁に取り替える必要が生じて効率が極めて悪い。なお、ゼオライトや乾燥イオン交換樹脂はイオン交換能を有しているため、レジスト剥離液成分含有水中の成分が電荷を持っている場合には該成分が該ゼオライト等に吸着してしまい、これらゼオライトや乾燥イオン交換樹脂を再生することができない。
【0008】
また、脱気膜を用いてリンス水等から水分を除去する場合、このリンス水中に多量に含まれる水分を水蒸気として脱気膜を透過させる必要があり、著しく非効率である。
【0009】
本発明は、レジスト剥離液含有水から効率よくレジスト剥離液を回収することができるレジスト剥離液の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のレジスト剥離液の回収方法は、レジスト剥離液含有水からレジスト剥離液を回収する方法において、レジスト剥離液含有水を疎水性ゼオライトよりなる吸着材と接触させて、レジスト剥離液及び一部の水分を該吸着材に吸着させ、次いで、該吸着材から一部の水を脱着(第1回脱着)させ、その後、該吸着材に対しレジスト剥離液の沸点よりも温度の高い過熱水蒸気を接触させて該吸着材から該レジスト剥離液を脱着(第2回脱着)させ、この第2回脱着の脱着液を蒸留して該レジスト剥離液を分取して回収することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1において、前記第1回脱着を、水の沸点よりも高温度かつレジスト剥離液の沸点よりも低温度の過熱水蒸気を前記吸着材に接触させることにより行うことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1又は2において、前記第1脱着処理及び第2脱着処理を非酸化性雰囲気中で行うことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記疎水性ゼオライトが粘土鉱物をバインダーとしたものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、第2回脱着により、吸着材から飽和吸着量の80〜90%の量のレジスト剥離液を脱着させることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記第1回脱着により、吸着した水の10〜90%を脱着させることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のレジスト剥離液の回収方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記蒸留により、水分を25〜30wt%含むレジスト剥離液を回収することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレジスト剥離液の回収方法では、レジスト剥離液含有水を吸着材と接触させてレジスト剥離液を吸着材に吸着させる。そして、この吸着材からまず一部の水を脱着(第1回脱着)させ、その後、レジスト剥離液を脱着(第2回脱着)させ、この第2回脱着液を蒸留し、レジスト剥離液を回収する。
【0018】
このように、吸着材からまず一部の水を脱着させた後、レジスト剥離液を脱着(第2回脱着)させるので、第2回脱着液中のレジスト剥離液濃度が高い。このレジスト剥離液濃度の高い液を蒸留することにより、濃度が高いレジスト剥離液を回収することができる。
【0019】
第1回脱着は、水の沸点よりも温度が高く、レジスト剥離液の沸点よりも温度が低い過熱水蒸気を吸着材と接触させることにより行うのが、簡便で好適である。つまり、ゼオライトに吸着している水分を飛ばすが、レジスト剥離液は脱着させない適切な温度の過熱水蒸気を吸着材と接触させる。この過熱水蒸気の温度は120〜200℃程度であるのが好ましい。また、この場合、0.1MPa(abs)以下の減圧雰囲気で脱着しても良い。
【0020】
この吸着材としては、疎水性ゼオライトを用いる。
【0021】
第2回脱着液の蒸留を、回収したレジスト剥離液の水分濃度が25〜30wt%となるように行うことにより、回収したレジスト剥離液が引火性を持たないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態に係るレジスト剥離液の再生装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、レジスト剥離液含有水を吸着材と接触させてレジスト剥離液を一部の水と共に吸着材に吸着させ、この吸着材から第1脱着処理、第2脱着処理及び蒸留処理によってレジスト剥離液を回収するものである。
【0025】
このレジスト剥離液含有水としては、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の電子部品の製造におけるフォトリソグラフィー工程中の洗浄工程(リンス工程)で排出されるリンス水や、このリンス水と剥離工程で排出されるレジスト剥離廃液との混合廃液などが例示される。この剥離工程で使用されるレジスト剥離液としては、アルカノールアミンと有機溶媒を主成分とするものが例示される。アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール等を挙げることができる。有機溶媒は上記アルカノールアミンとは異なる有機溶媒であり、その具体例としては、ブチルグリコール等のグリコール系溶剤の他、ジメチルスルホキシド系原液、N−メチルピロリドン系原液、グリコールエーテル系原液などを挙げることができる。また、腐食防止剤、キレート剤、有機酸などの添加剤がレジスト剥離液に混合されていてもよい。このレジスト剥離液含有水中の水分濃度は、通常、60〜0.01重量%特に30〜0.1重量%である。また、このレジスト剥離液含有水中のレジスト剥離液濃度は、通常、40〜99.99重量%特に70〜99.9重量%であり、このレジスト剥離成分含有水中のアルカノールアミン濃度は、通常、5〜90重量%特に10〜70重量%であり、このレジスト剥離液含有水中の有機溶媒濃度は、通常、10〜90重量%特に30〜70重量%である。
【0026】
吸着材としては、疎水性ゼオライトを用いる。吸着材の形状としては特に限定はないが、被処理液との接触効率及び圧力損失を考慮して、円柱状又は球状に成形されたものが好適である。ゼオライトは、Si/Al比が100以上たとえば100〜10000程度のものが好ましい。
【0027】
ゼオライト粒子としては、アルミナをバインダーとしたものよりも粘土鉱物をバインダーとしたものの方が好ましい。粘土鉱物としてはベントナイトなどが例示される。ゼオライト粒子中のバインダーの含有量は25〜80wt%程度が好ましい。
【0028】
レジスト剥離液含有水と吸着材とを接触させるには、吸着材の充填塔に下向流にてレジスト剥離液含有水を通水し、上部から吸着材を補充しながら充填床下部から飽和吸着となった吸着材を引き抜くのが好ましい。
【0029】
引き抜いた吸着材を第1脱着処理する場合、水の沸点よりも高温度の水蒸気を接触させるのが好ましいが、輻射等によって加温してもよい。
【0030】
なお、第1脱着処理や後述の第2脱着処理に対し、レジスト剥離液成分が変質したり他の物質が混入しないように留意する必要がある。特に、レジスト剥離液以外の有機溶媒や無機成分(酸・アルカリ)といった成分が混入しないようにしておく。また、ゼオライトの特にAl部分が有する触媒能により、酸素存在下では吸着成分の劣化が進みやすい。水分が過剰にゼオライトの周りにある状態では、空気中の酸素が水分に溶け込むためにその酸素由来で吸着成分が劣化する可能性がある。そのため、脱着処理に際しては空気や酸素が脱着塔などに入り込まないように留意するのが好ましい。
【0031】
第1脱着処理では、吸着材に吸着した水分の10wt%以上、例えば10〜90wt%程度を脱着させるのが好ましい。
【0032】
第1脱着処理後の第2脱着処理においては、飽和吸着したレジスト剥離液をすべて(100wt%)脱着させるのではなく、80〜90wt%程度脱着させることが好ましい。
【0033】
吸着材に吸着したBDG(ブチルジグリコール)量が多いほど、供給する過熱水蒸気あたりのBDG脱着量は多くなる(これを脱着効率という)ため、吸着材に残存しているBDGが約20%以下になると脱着効率は著しく悪くなる。そのため、飽和吸着したBDG(ブチルジグリコール)成分などを100%脱着させずに80〜90%ほど脱着した時点で第2脱着処理を終了することにより、次の吸着サイクルでの吸着量は低下するものの脱着効率を上げることができる。
【0034】
第2脱着処理では、脱着塔内に、レジスト剥離液の沸点よりも高温の過熱水蒸気を導入することにより行う。
【0035】
なお、BDGの沸点は230℃であるが、吸着エネルギーを十分に超えた状態での脱着が好ましく、300〜400℃程度の過熱水蒸気の供給を行うのが好ましい。
【0036】
脱着後の吸着材は高温度になっているので、再利用するのに先立って、冷却操作を施すのが好ましい。冷却には段階的に蒸気を用いての冷却が好適であり、吸着材と熱交換した後の蒸気は脱着工程で使用してもよい。
【0037】
吸着材から脱着させた第2回脱着液を蒸留塔に導入し、レジスト剥離液を水など低沸点成分を分離し、回収する。
【0038】
蒸留塔で分離した水分は、不純物である低分子有機物と高分子有機物を含有している。低分子有機物のアルコール類(メタノール、エタノールなど)やアルデヒド類、カルボン酸の有機酸類は水分と共に蒸留塔塔頂から一部を引き抜いて、生物処理・触媒処理などの分解無害化処理を行った後、放流するのが好ましい。
【0039】
なお、脱着処理時に、ゼオライト等の吸着材の触媒作用などによって重合して生じた高分子有機物については、レジスト剥離液中の成分よりも沸点が高いために、蒸留塔のボトムから引き抜いて産業廃棄物処理するのが好ましい。塔内で液が過度に濃縮されると、蒸留塔内で高分子有機物が固着する可能性があるため、塔内液の濃縮は高分子有機物が固着しない程度の水分含有量となるようにするのが好ましい。
【0040】
レジスト剥離液は、蒸留塔の上下方向の途中から引き抜くのが好ましい。引き抜いたレジスト剥離液成分は、引火点を持たないように水分制御しておくのが好ましい。例えば、BDGならば水分25〜30%が好適であり、モノエタノールアミンの場合は水分30%程度が好適である。
【0041】
脱着時の過熱水蒸気の供給量は、少なければ少ないほど良い。
【0042】
回収したレジスト剥離液は、実際に使用されるレジスト剥離液組成になるように濃度調整する必要がある。その際、バージンのレジスト剥離液を混合しても良く、回収品だけで調整してもかまわない。ただし、レジスト剥離液には有機溶媒100%で構成されている場合と水分が混ざっている場合があるため、回収液が引火点を持たない濃度領域までしか濃縮していない場合は、再度濃縮の必要がある。その際はエバポレーターでも蒸留塔でも防爆設備内での濃縮が必要となる。
【0043】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。図1は実施の形態に係るレジスト剥離液の回収方法を示すフロー図である。
【0044】
原水が原水槽(図示略)から原水供給ライン1を介して吸着塔2に供給され、処理水抜出ライン3から抜き出される。
【0045】
吸着塔2内の上部には、吸着材フィーダー5から吸着材4が連続的又は間欠的に供給され、吸着材4の充填床が形成されている。この充填床の下部から吸着材4が取り出され、移送手段6によって移送され、第1脱着塔10の上部に供給され、吸着材4の充填床が形成される。なお、移送手段としては、吸着材の摩耗を防止するためにベルトコンベア等が好適であるが、これに限定されない。
【0046】
この第1脱着塔10には、蒸発缶13からの水蒸気が過熱器16によって過熱され、過熱水蒸気となってライン17より塔底に供給される。この過熱水蒸気の温度は、水の沸点よりも高く、レジスト剥離液の沸点よりも低いものとなっている。このため、脱着塔10内に導入された吸着材4から水が脱着(蒸発)し、第1脱着処理が行われる。水蒸気は、第1脱着塔10の塔頂からライン11を介して抜き出され、圧縮機12を経て蒸発缶13の熱交換管13aに流通され、凝縮水となって凝縮水槽14に導入される。凝縮しなかった水蒸気は凝縮水槽14から蒸発缶13に送られ、蒸発缶13内において発生した水蒸気と共に過熱器16へ送られる。凝縮水槽14内の凝縮水の一部は、ポンプ15によって蒸発缶13に送られ、残部はポンプ18によって前記原水槽(図示略)に返送される。
【0047】
第1脱着塔10内の吸着材充填床の下部から、第1脱着処理された吸着材4が取り出され、コンベア等の適宜の移送手段19によって移送され、第2脱着塔20の上部に供給され、吸着材4の充填床が形成される。
【0048】
第1脱着塔10から第2脱着塔20への吸着材4の移送は連続的又は間欠的に行われており、第2脱着塔20内において第2脱着処理された吸着材4は、第2脱着塔20の充填床の下部から連続的又は間欠的に取り出される。
【0049】
この第2脱着塔20には、蒸発缶33からの水蒸気が過熱器36によって過熱され、過熱水蒸気となってライン37より下部に供給される。この過熱水蒸気の温度は、レジスト剥離液の沸点よりも高いものとなっている。このため、脱着塔20内に導入された吸着材4からレジスト剥離液及び残余の水が脱着(蒸発)し、第2脱着処理が行われる。
【0050】
第2脱着塔20内における第2脱着処理により脱着した脱着ガス及び脱着液並びに水蒸気は、塔頂のライン39を介して蒸留塔40の棚段の下側に導入される。低沸点の水は、水蒸気となって蒸留塔40の塔頂に到る。そして、蒸留塔40の塔頂からの水蒸気は、ライン31を介して抜き出され、圧縮機32を経て蒸発缶33の熱交換管33aに流通され、凝縮水となって凝縮水槽34に導入される。凝縮しなかった水蒸気は凝縮水槽34から蒸発缶33に送られ、蒸発缶33内において発生した水蒸気と共に過熱器36へ送られる。凝縮水槽34内の凝縮水の一部は、ポンプ35によって蒸発缶33に送られ、残部はポンプ38によって蒸留塔40の棚段の上側に還流される。
【0051】
第2脱着塔20から蒸留塔40に導入された脱着液中の高沸点成分であるレジスト剥離液は、一部の水と共に塔下部に溜る。この塔下部にはリボイラ46が往ライン45及び復ライン47を介して接続されている。
【0052】
レジスト剥離液及び水、重質分を含む塔底液は回収液としてライン50、弁51を介して塔下部の取出ライン41からポンプ42、弁43、冷却用熱交換器44を介して回収液として取り出される。なお、この弁43は、塔底液のレベルセンサ52の検出液位が所定レベルとなるように開度制御される。また、前記リボイラ46へのスチール供給弁48は、温度センサ52で検出される塔底液の温度が所定範囲となるように開度制御される。回収液は再度、精製のため分留をかけることを考慮して冷却しない場合もある。
【0053】
この蒸留塔40内における蒸留は、レジスト剥離液成分の種類に応じて、減圧下又は常圧下で実施される。この蒸留は、経済性の面からは常圧蒸留が好ましいが、レジスト剥離液成分が高沸点物質である場合には減圧蒸留の方が経済性及び蒸留効率の面から好ましい場合もある。
【0054】
蒸留温度はレジスト剥離液成分の種類及び濃度に応じて調整する必要があるため一概には決められないが、100〜200℃特に120〜150℃が好ましい。
【0055】
上記蒸留塔40から抜き出される回収液(レジスト剥離液)中の水分濃度は30重量%以下特に25〜30重量%であるのが好ましい。
【0056】
上記蒸留工程によると、脱離工程で使用した過熱水蒸気の熱を蒸留操作に利用するため、過熱水蒸気の余剰の熱を蒸留操作で有効利用することができて経済的である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、原水(レジスト剥離液成分含有水)として、LCD(液晶ディスプレイ)製造工程から排出されたレジスト剥離液排水を用いた。この原水は、BDG(ブチルジグリコール)が0.3重量%、MEA(モノエタノールアミン)が0.03重量%であり、残りはほぼ総て水分である。また、本実施例及び比較例において、BDGは液体クロマトグラフィーにより定量し、MEAは全窒素計により定量し、水分はカールフィッシャー水分計を用いて定量した。
【0058】
[実施例1]
図1のレジスト剥離液の回収装置を用いて試験を行った。吸着塔2としては、直径21mm、高さ500mmのSUS316製の円筒カラムを用い、この円筒カラム内に、φ1mm、長さ3mmの円柱形ペレット状に成型した疎水性ゼオライト(東ソー社製ZSM−5。粘土鉱物をバインダーとしたもの。バインダー含有量50wt%)80gを充填した。
【0059】
<吸着工程>
この吸着塔2に対して、原水をSV0.5h−1で下向流にて通水した。原水及び吸着塔2から流出した処理水について、上記BDG、MEA及び水分を定量し、これら原水と処理水の性状が同じになった時点(通水開始から40時間を経過した時点)で、吸着材が飽和したと判断し、吸着材を少しずつ連続的に取り出し第1脱着塔10に供給した。吸着材の取り出し速度は2g/hrとし、これと同量の吸着材を吸着塔2に供給した。
【0060】
<脱着>
第1脱着塔10は、内径20mm、高さ700mmのSUS316製である。高さ500mmの吸着材充填床が第1脱着塔10内に形成された後、120℃の過熱水蒸気を5g/minで上向流にて供給し、第1脱着処理を行った。この第1脱着処理により、吸着した水分の75wt%を脱着した。
【0061】
第1脱着塔10の下部から吸着材を上記取り出し速度と同速度で取り出し、第2脱着塔20に供給した。第2脱着塔20のカラムは第1脱着塔10と同じであり、380℃の過熱水蒸気を1g/minで下向流にて供給し、飽和吸着量の85wt%のBDG及びMEAを脱着した。
【0062】
<蒸留>
塔底から流出する脱着液、脱着ガス及び水蒸気を蒸留塔40に導入し、蒸留した。蒸留塔40内は140℃に維持した。その後、ライン41から回収された回収液(水分量30wt%)の性状を定量した。その結果を表1に示す。
【0063】
[実施例2、比較例1,2]
吸着材を次の通りとした他は実施例1と同様にして回収処理を行った。結果を表1に示す。バインダー含有量は実施例1と同一である。
【0064】
実施例2:ZSM−5(東ソー社製。アルミナバインダー)
比較例1:モルデナイト(東ソー社製。粘土鉱物バインダー)
比較例2:モルデナイト(東ソー社製。アルミナバインダー)
【0065】
[比較例3]
第1脱着処理を省略し、吸着塔2からの吸着材をそのまま第2脱着塔20に導入したこと以外は実施例1と同様にして回収処理を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例4]
第2脱着処理を空気中105℃にて行ったこと以外は実施例1と同様にして回収処理を行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
上記実施例及び比較例から明らかな通り、本発明方法によりレジスト剥離液を効率よく回収することができる。また、吸着材としては粘土鉱物をバインダーとしたゼオライトが好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト剥離液含有水からレジスト剥離液を回収する方法において、
レジスト剥離液含有水を疎水性ゼオライトよりなる吸着材と接触させて、レジスト剥離液及び一部の水分を該吸着材に吸着させ、
次いで、該吸着材から一部の水を脱着(第1回脱着)させ、
その後、該吸着材に対しレジスト剥離液の沸点よりも温度の高い過熱水蒸気を接触させて該吸着材から該レジスト剥離液を脱着(第2回脱着)させ、
この第2回脱着の脱着液を蒸留して該レジスト剥離液を分取して回収する
ことを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1回脱着を、水の沸点よりも高温度かつレジスト剥離液の沸点よりも低温度の過熱水蒸気を前記吸着材に接触させることにより行うことを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第1脱着処理及び第2脱着処理を非酸化性雰囲気中で行うことを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記疎水性ゼオライトが粘土鉱物をバインダーとしたものであることを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、第2回脱着により、吸着材から飽和吸着量の80〜90%の量のレジスト剥離液を脱着させることを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記第1回脱着により、吸着した水の10〜90%を脱着させることを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記蒸留により、水分を25〜30wt%含むレジスト剥離液を回収することを特徴とするレジスト剥離液の回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−212029(P2012−212029A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77688(P2011−77688)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】