説明

レジスト容器

【課題】従来のレジスト容器の構造は、レジストと空気が常に接触する構造であり、液中欠陥の原因となる。そこで、レジストと空気が接触しない構造レジストの容器を提供すること。
【解決手段】フレキシブルな材料からなる真空パックの内部にレジストを充填し、空気を遮蔽するようにしたことを特徴とするレジスト容器であって、前記フレキシブルな材料はレジストに反応する波長帯の光を遮光する材料で、アルミ、アルミナ等であることを特徴とするレジスト容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト、電子線レジストを収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)等の半導体デバイスの高集積化に伴い、100nm以下の微細パターンを有する半導体素子や、その原版となるフォトマスクを製造する必要がある。これらのパターンは、基板表面にフォトリソグラフィや電子線リソグラフィ技術によって形成されるため、基板表面上に欠陥の少ないレジスト膜を塗布する技術が要求される。(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
レジスト塗布には、スピンコーティング技術が用いられる。これは、スピンチャックに載置した基板の中央部にレジスト塗布装置を使用してレジスト液を滴下した後、スピンチャックを高速回転させ、遠心力でレジスト液を基板の中央部から周縁部に広げ、基板上の全面にレジスト膜を均一に塗布する方法である。
【0004】
レジスト塗布装置は、レジスト容器のレジストを一定量ずつ吐出するベローポンプと、チャックに固定した被塗布物の表面に前記レジストを滴下するノズルと、レジストの吐出が停止した場合に、ノズルの内部に吸引するサックバックとから構成される。レジスト瓶は、レジスト吐出用ポンプから接続されてくるチユーブとフィルタを介して接続する。
【0005】
レジスト瓶には、通常、ガロン瓶、又は、クォート瓶を使用する。このようなレジスト容器は、常に薬液の液面が空気と接触する構造となるため、薬液中に空気が溶け込み、微小な気泡(マイクロバブル) が発生したり、空気中の成分と化学反応を起こすことで、レジストが変質し、異物となる凝集物が発生する。したがって、レジストボトル開封直後より、経時変化でレジスト中の気泡や凝集物(以降、液中欠陥と呼ぶ)の数は増加する。この液中欠陥は、レジスト塗布工程においてコート欠陥の原因となり、これによって、フォトマスクや半導体製造工程等の微細加工分野におけるレジストパターン形成において、致命的な欠陥を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】フォトマスク技術、工業調査会(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のレジスト容器の構造は、レジストと空気が常に接触する構造であり、液中欠陥の原因となる。そこで、レジストと空気が接触しない構造のレジスト容器を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、フレキシブルな材料からなる真空パックの内部にレジストを充填し、空気を遮蔽するようにしたことを特徴とするレジスト容器としたものである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記フレキシブルな材料はレジストに反応する波長帯の光を遮光する材料であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト容器としたものである。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記フレキシブルな材料は、アルミ、アルミナ等であることを特徴とする請求項2に記載のレジスト容器としたものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記真空パックの内壁層がレジストに用いられる有機溶剤と化学反応を起こさない無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載のレジスト容器としたものである。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記無機材料は、アルミ、アルミナ、シリコン、シリカの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のレジスト容器としたものである。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、前記フレキシブルな材料は、レジスト残量を可視可能な半透明な材料からなることを特徴する請求項1に記載のレジスト容器としたものである。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、前記可視可能な半透明な材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(Ny)の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項6記載のレジスト容器としたものである。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、前記真空パックにレジスト吸い上げ用のキャップを設け、レジスト塗布装置のレジスト吐出用ポンプから接続されてくるチユーブを前記キヤツプに被さる形状のジヨイントによって前記キヤツプに接続させるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレジスト容器としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明におけるレジスト容器は、レジスト中に液中欠陥がないので、基板表面上に欠陥の少ないレジスト膜を塗布でき、良好なレジストパターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のレジスト容器の構造を模式的に説明する概略図
【図2】レジスト塗布装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のレジスト容器は、図1に示すように真空パック材100とレジスト吸い上げ用のキャップ101から構成され、レジストは真空パック材100の内部に充填される。
【0019】
図2はレジスト塗布装置の概略構造を示す図である。レジスト塗布装置は、レジスト容器200に収容されたレジストを一定量ずつ吐出するベローポンプ201と、チャック202に固定した被塗布物203の表面に前記レジストを滴下するノズル204と、レジストの吐出が停止した場合に、ノズルの内部に吸引するサックバック205とから構成されている。レジスト容器は、レジスト吐出用ポンプから接続されてくるチユーブとフィルタ206を介して接続される。
【0020】
以下、本発明の優位性を示す。
【実施例1】
【0021】
(レジストの液中欠陥測定)
本発明のレジスト容器及び比較用のレジスト瓶に充填させたポジ型化学増幅電子線レジスト(SEBP9012、信越化学工業製)に含まれる液中欠陥の個数を液中パーティクルカ
ウンター(リオン株式会社)にて測定した。レジスト瓶開封直後では両者ともに欠陥数はほぼ同数であるが、開封後から6日経過した場合、レジスト瓶の場合、欠陥数は開封直後と比較して約6倍に増加した。一方、本発明のレジスト容器の場合では、ほぼ変化はなかった(表1参照)。
つまり、本発明になるレジスト容器では、経時変化によるレジストの液中欠陥を抑えることができる。
【0022】
【表1】

【実施例2】
【0023】
(レジスト膜の欠陥測定)
本発明のレジスト容器及び比較用のレジスト瓶に充填させたポジ型化学増幅電子線レジスト(SEBP9012、信越化学工業製)を各々、レジスト塗布装置へ接続し、MoSiバイナリーマスク用ブランク(W0G、信越化学工業製)を用い、膜厚1500Aでスピンコートし、PAB(Post Applied Bake:塗布後ベーク)130度600秒により、レジスト膜を形成した。
【0024】
本発明のレジスト容器及び比較用のレジスト瓶の場合でのレジスト膜の欠陥をM2350(レーザーテック)にて、調べたところ、レジスト瓶開封直後では、欠陥検出数はほぼ同数であるが、開封後から6日経過した場合、レジスト瓶の場合では、欠陥検出数は、開封直後と比較して約2倍に増加した。一方、本発明になるレジスト容器の場合では、ほぼ変わらなかった(表2参照)。つまり、本発明における容器では、経時変化によるレジストの液中欠陥を抑えることができる。
【0025】
【表2】

【0026】
また、本発明のレジスト容器及び比較用のレジスト瓶ボトルの場合で、開封直後と開封後3ヶ月でのレジストの感度変動を調べたところ、レジスト瓶ボトルの場合では、3nmの寸法変動(1um,ライン&スペース)が見られたのに対して、本発明のレジスト容器では、寸法変動は見られなかった。
【0027】
本発明のレジスト容器にすることで、レジストの感度変動を抑えることができる。つまり、レジストの劣化を抑えることで、レジストの消費期限を延すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、半導体デバイスやフォトマスクのレジストパターン形成のためのレジスト以外に、保護膜材料、カラーフィルタ用レジスト、導電材料などの塗布材料の収容に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100・・・真空パック材
101・・・レジスト吸い上げ用キャップ
102・・・レジスト
200・・・レジスト容器
201・・・ベローポンプ
202・・・チャック
203・・・被塗布物
204・・・ノズル
205・・・サックバック
206・・・フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな材料からなる真空パックの内部にレジストを充填し、空気を遮蔽するようにしたことを特徴とするレジスト容器。
【請求項2】
前記フレキシブルな材料はレジストに反応する波長帯の光を遮光する材料であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト容器。
【請求項3】
前記フレキシブルな材料は、アルミ、アルミナ等であることを特徴とする請求項2に記載のレジスト容器。
【請求項4】
前記真空パックの内壁層がレジストに用いられる有機溶剤と化学反応を起こさない無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載のレジスト容器。
【請求項5】
前記無機材料は、アルミ、アルミナ、シリコン、シリカの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のレジスト容器。
【請求項6】
前記フレキシブルな材料は、レジスト残量を可視可能な半透明な材料からなることを特徴する請求項1に記載のレジスト容器。
【請求項7】
前記可視可能な半透明な材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(Ny)の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項6記載のレジスト容器。
【請求項8】
前記真空パックにレジスト吸い上げ用のキャップを設け、レジスト塗布装置のレジスト吐出用ポンプから接続されてくるチユーブを前記キヤツプに被さる形状のジヨイントによって前記キヤツプに接続させるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレジスト容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−77121(P2011−77121A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224501(P2009−224501)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】