説明

レジンフラワーの製法

【課題】 美観に優れ、かつ保存性の高いレジンフラワーを容易に製作できるようにする。
【解決手段】 レジン型51に少量のレジン52を注入し、そこへドライフラワー30を置いて所定時間放置し、レジン52を硬化させることによってドライフラワー30を安定させ、さらにレジン52を1回または複数回にわたってレジン型51に注入し、レジンフラワーを製作する。レジン型51に必要量のレジン52を注入し終えた後、レジン型51全体を容器に収容して容器内の空気を強制的に減圧脱気し、当該容器を密封する脱気工程を行う。この脱気工程により、ドライフラワー30の隙間等に生じた気泡がレジン52の上面に浮いてくるので、レジン52内の気泡を容易に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物をレジンに埋封したレジンフラワーの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾品の一つとして、花等を樹脂に封入加工したものが知られている。これは一般にレジンフラワーと呼ばれ、レジン(樹脂)に乾燥した花や押し花を封入して、レジンを硬化させることによって作製される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−268801号公報
【0004】
特許文献1に開示された方法によれば、予め用意した枠に、接着剤を用いて押し花を接着し、そこへ合成樹脂液を注入して硬化させることにより、押し花を樹脂に埋封した装身具、装飾品を製作するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レジンフラワーには、保存性を高めるために押し花等の加工を施した花が用いられる。しかしながら、合成樹脂に埋封されているにも関わらず、レジンフラワーを美しい状態に保つことは極めて困難であり、数ヶ月程度の比較的短期間で、花が変色・褪色してしまうという問題があった。
さらに、レジンフラワーにおいて、レジンの中に気泡が生じてしまうことがある。この気泡は、レジンの注入時にレジンが泡立つことにより生じるほか、花弁の隙間等の狭い箇所にレジンが侵入しないため、一部の空気が残ってしまうことにより生じる。この気泡を従来の方法により完全に除去することは難しく、非常に注意深くレジンを注入してもなお、気泡がレジンの中に浮いた状態となってしまうことがあった。このため、レジンフラワーの特徴であるレジンの透明感が損なわれ、美観が損なわれるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、美観に優れ、かつ保存性の高いレジンフラワーを容易に製作できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を、型に収容し、当該型にレジンを注入する注入工程と、前記注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容し、当該容器内の空気を減圧脱気して当該容器を密封する脱気工程と、を含むことを特徴とするレジンフラワーの製法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を、乾燥剤とともに容器に密封して所定の期間放置する再脱水工程と、前記再脱水工程の後に前記容器から花材を取り出して型に収容し、当該型にレジンを注入する注入工程と、を含むことを特徴とするレジンフラワーの製法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のレジンフラワーの製法において、前記注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容し、当該容器内の空気を減圧脱気して当該容器を密封する脱気工程をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1または3記載のレジンフラワーの製法において、前記脱気工程で、前記注入工程によりレジンが注入された型を、通気口を有する保持容器内に収容した上、当該保持容器ごと前記容器に密封して脱気することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1、3または4記載のレジンフラワーの製法において、前記脱気工程において用いる前記容器が、気体を遮断可能な可撓性のフィルムにより構成される袋であることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のレジンフラワーの製法において、前記花材を製作するための前記脱水加工が、粒状体の中に前記生の植物を埋めて、乾燥剤とともに前記粒状体および前記生の植物を密封する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のレジンフラワーの製法において、前記脱水加工において、前記粒状体と、前記生の植物と、前記乾燥剤とを脱水加工用容器内に収容し、当該脱水加工用容器内の空気を減圧脱気して前記脱水加工用容器を密封することを特徴とする。
【0014】
なお、花材とは、生の植物すなわち花または草木を適宜切り出したものを用い、その水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作されたものであって、花及び草木の形状、種類、サイズ等は任意である。また、乾燥剤としては、例えば、塩化カルシウム、酸化カルシウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、及びこれらの水和物、無水硫酸マグネシウム、シリカゲル等が挙げられるが、水と化学的に反応し或いは水分を物理的に吸着保持することによって周辺雰囲気中の水分を減少させる効果を奏するものであれば良い。また、粒状体としては、例えば、砂、焼き砂、金属粒、ガラス粒、セラミックスを粒状に形成したもの、及び、合成樹脂を粒状に形成したもの等が挙げられるが、花材に吸着または粘着せず、除去が容易で、除去時に花材に損傷を生じないものであれば良い。また、所定の期間とは、数分、数時間、数日乃至数週間であり、周囲の温度条件等により適宜決定すれば良い。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、注入工程において、生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を型に収容して当該型にレジンを注入し、脱気工程において、注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容して当該容器内の空気を減圧脱気し、当該容器を密封するので、レジン注入後にレジンの内部に存在する気泡を、レジンの表面に浮き上がらせることができる。レジンの表面に浮いた気泡は、棒状部材で突く等の簡単な作業によって容易に除去できる。これにより、花材の表面や花弁の隙間等に生じた細かな気泡や、レジン注入時にレジンが泡立つことにより生じた気泡を、簡単かつ確実に除去することができるので、美観に優れたレジンフラワーを製作できる。また、花材の表面や花弁の隙間等に生じた気泡を除去することで花材の劣化を防止できる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、再脱水工程において、生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を乾燥剤とともに容器に密封して所定の期間放置し、注入工程において、再脱水工程の後に容器から花材を取り出して型に収容して当該型にレジンを注入するので、レジンに埋封する花材に含まれる水分に起因して発生する花剤の劣化を確実に防止し、極めて保存性の高いレジンフラワーを製作できる。
従来から、レジンフラワーは紫外線の照射および高温により劣化することが指摘されていたが、発明者は、レジンフラワーに用いる花材に含まれる水分量が多く、レジン中の花材が所定のレベルを超えた湿度の下におかれた場合に、花材の劣化が起こることを見いだした。本発明によれば、レジン中に花材を埋封する前の段階で再脱水工程を実行し、花材に含まれる水分を確実に除去することにより、レジン中の花材が低湿環境におかれるようにすることができる。これにより、紫外線及び高温を避けることができれば、半永久的に劣化しないレジンフラワーを製作することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、脱気工程において、注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容し、当該容器内の空気を減圧脱気して当該容器を密封するので、レジン注入後にレジンの内部に存在する気泡を、レジンの表面に浮き上がらせることができる。レジンの表面に浮いた気泡は、棒状部材で突く等の簡単な作業によって容易に除去できる。これにより、花材の表面や花弁の隙間等に生じた細かな気泡や、レジン注入時にレジンが泡立つことにより生じた気泡を、簡単かつ確実に除去することができるので、美観に優れたレジンフラワーを製作できる。また、花材の表面や花弁の隙間等に生じた気泡を除去することで、花材の劣化をより確実に防止できる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、脱気工程において、注入工程によりレジンが注入された型を、通気口を有する保持容器内に収容した上、当該保持容器ごと容器に密封して脱気するので、型の上端付近までレジンで満たされている場合であっても、レジンが容器に接触しない。また、本発明によれば、保持容器によって型が安定した状態に保たれるので、レジンが意図しない方向に流動してしまうといった事態を避けることができる。このように、完全に硬化する前のレジンを確実に保護することにより、美観に優れ、保存性が高いレジンフラワーを、より簡単に製作することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、脱気工程において用いる容器が、気体を遮断可能な可撓性のフィルムにより構成される袋であるので、型がどのような形状であっても問題なく脱気工程の作業を行うことができる。また、脱気工程を、極めて単純かつ安価な道具を用いて容易に行うことができるという利点がある。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、花材を製作するための脱水加工が、粒状体の中に生の植物を埋めて、乾燥剤とともに粒状体および生の植物を密封する工程を含むので、脱水加工において、生の植物に含まれる水分を、植物の変色や褪色が生じない程度の短時間で確実に除去し或いは減少させることができる。また、脱水加工において、植物の各部(花弁やがく等)は粒状体の重みにより押圧され、生の状態における形状及びサイズを保つように支持されているので、脱水の過程において皺を生じない上、縮みが効果的に抑制される。また、植物には、花弁と花弁の間や花弁とがくの間など、狭い隙間が存在するが、これらの隙間に粒状体が入り込むので、植物の複数の部分が互いに密着してしまうことがなく、これらの隙間における通気性が保たれる。従って、植物の形を崩すことなく、植物に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。さらに、細部にわたって粒状体によって植物を押圧し、支持することができるので、皺や縮みを確実に抑制できる。また、この脱水加工において用いる乾燥剤及び粒状体の各材料は格別高価なものでは無く、安全性の面で取り扱いに注意を要するものも無い。すなわち、手軽に取り扱うことが可能な材料により、植物を乾燥する際に生じる皺や縮み、変色、褪色といった美観上の問題を全て解決し、極めて美しい状態で植物の水分を除去し或いは減少させることができる。
そして、上記脱水加工により製作された花材を用いてレジンフラワーを製作することにより、極めて美しい状態の花材をレジンに埋封した、美観に優れたレジンフラワーを製作できる。さらに、このレジンフラワーは、花材に含まれる水分が極めて少ないことから、非常に保存性が高いという利点を有する。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、脱水加工において、粒状体と、生の植物と、乾燥剤とを脱水加工用容器内に収容し、当該脱水加工用容器内の空気を減圧脱気して脱水加工用容器を密封するので、減圧脱気により空気に含まれる水分が除去されるため、迅速かつ効率よく植物の水分を除去し或いは減少させることができる。また、減圧脱気によって、脱水加工容器内部の粒状体及び植物は、大気圧によって押圧されることとなる。このため、粒状体に埋められた植物が粒状体の重量を超える力で押圧されるので、植物の皺や縮みを、より確実に抑制できる。また、植物が減圧環境下におかれることで、植物に含まれる水分が外へ放出されやすくなるので、短時間で植物を乾燥させることができる。さらに、減圧脱気によって植物に触れる酸素が極めて少量になるため、植物の酸化が強く抑制される。これにより、植物の変色や褪色を確実に防止できる。そして、この脱水加工により製作された花材を用いてレジンフラワーを製作することで、極めて美しく、保存性の高いレジンフラワーを容易に製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1及び図2は、第1の実施の形態を説明するための図であり、図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る各工程を示す。
第1の実施の形態は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示すものである。
【0023】
第1の実施の形態においては、容器11、シート状乾燥剤21、砂22、カバー23及び密封用袋24を用いる。
【0024】
容器11は、上面が開口した直方体形状の容器であり、第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法で用いる砂22等の重量、及び、後述する減圧脱気を行う際に加わる圧力に耐え、破壊や変形を生じない程度の強度を有する。
シート状乾燥剤21は、乾燥機能を有するシートであり、例えば、各種乾燥剤を紙や布に付着させたもの、或いは、各種乾燥剤をシート状に加工したものである。
砂22は、所定の密度及び粒径を有する砂である。
カバー23は、砂22の表面を覆うことにより砂22を容器11の外へ流出させないためのカバーであり、所定の通気性を有する。従って、カバー23は、砂22の粒径に比して細かい孔(目)が形成されていると好ましい。
【0025】
密封用袋24は、気密性を有する合成樹脂製の袋である。密封用袋24は、後述するように密封する必要があるので、熱により溶着可能なものや、密封をするためのファスナー等が形成されたものが好ましい。
【0026】
図1及び図2を参照して、具体的な手順について説明する。
図1(a)に示すように、まず第1工程として、容器11内の底部にシート状乾燥剤21を敷き、次に第2工程として、少量の砂22を入れる。
第2工程において容器11に入れる砂22は、生花3の下端を埋めて生花3を安定させるためのものであり、その量は特に限定されないが、第2工程で入れる砂22の量が多すぎると、生花3が容器11の上端からはみ出してしまい、砂22の量が少なすぎると、生花3を安定させることができないので、容器11のサイズ及び生花3のサイズを勘案して決めることが望ましい。
【0027】
続いて、図1(b)及び図1(c)に示すように、第3工程として、砂22の上に生花3を置く。ここで、生花3の下端を砂22に埋めて生花3を安定させると良い。なお、生花3の位置は、生花3が容器11の内面に接しないように、容器11のほぼ中央にすると良い。
【0028】
ここで、図1(d)に示すように、第4工程として、生花3が完全に埋まるまで砂22を容器11に入れる。第4工程においては、生花3の狭い隙間、例えば花弁と花弁の間、花弁とがく片の間にも砂22が入り込み、生花3の周囲が完全に砂22に埋まるようにすることが好ましい。また、生花3の上端まで完全に砂22に埋まり、砂22の投入が完了した後、砂22の上面を平らにならす作業を行うと、さらに好ましい。
【0029】
その後、第5工程において、図2(a)に示すように、砂22の上面にシート状乾燥剤21を置く。さらに、図2(b)に示すように、第6工程において、容器11の上部を覆うようにカバー23をかぶせて容器11に固定する。第6工程においては、容器11内の砂22が外側にこぼれ出ないように、例えば容器11の側面をカバー23ごと紐や輪ゴムにより縛って固定すると良い。
そして、第7工程において、容器11及びカバー23の全体を密封用袋24に入れ、密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して、減圧された状態で密封用袋24を密封する。密封用袋24内の空気を減圧脱気する際には、真空ポンプや排気ポンプ等を用いると良い。また、密封用袋24を密封する方法としては、例えば、密封用袋24の開口端を加熱して溶着する方法や、密封用袋24の開口部に予めファスナー部を設け、減圧された状態でファスナーを閉じる方法が挙げられる。
【0030】
以上の第1〜第7工程が完了した状態を、図2(c)に示す。この状態で、数時間から数日乃至数週間放置することにより、生花3に含まれる水分が除去され或いは減少する。その後、密封用袋24を開封し、砂22の中から生花3を取り出すことにより、ドライフラワーを得ることができる。なお、砂22は、通気性を確保しながら生花3の花弁等を押圧しながら支持するものであって、生花3の水分を直接生花3の表面から吸収するものではない。従って、砂22が生花3に強固に付着してしまうことは無く、生花3の花弁の隙間等に入り込んだ砂22は、例えば、生花3を逆さにして振り落とす、筆で払い落とす等の作業により容易に除去できる。
【0031】
なお、上記第7工程が完了した後に放置する間、密封用袋24を開封して、砂22が湿気を含んでいるか否かにより生花3の脱水(乾燥)の度合いを調べても良い。ここで生花3の脱水が不十分であった場合は、新たなシート状乾燥剤21を追加したり、シート状乾燥剤21を新しいものに交換したりしても良い。この場合、上記作業の完了後に再び密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して密封用袋24を密封して、さらに数時間から数日乃至数週間放置すれば良い。
【0032】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させてドライフラワーを製作するにあたって、生花3を砂22に埋めた状態で、生花3に含まれる水分をシート状乾燥剤21により吸収することで、生花3を素早く脱水し、乾燥させることができる。このため、生花3の変色や褪色が生じない程度の短時間でドライフラワーにすることができる。また、脱水中、生花3の各部(花弁やがく等)は砂22の重みにより押圧され、脱水前の形状及びサイズを保つように支持されているので、脱水の過程において皺を生じない上、縮みが効果的に抑制される。
また、生花3には、花弁と花弁の間や花弁とがくの間など、狭い隙間が存在するが、これらの隙間に砂22が入り込むので、生花3の複数の部分が互いに密着してしまうことがなく、これらの隙間における通気性が保たれる。従って、生花3の形を崩すことなく、生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。さらに、細部にわたって砂22によって生花3を押圧し、支持することができるので、皺や縮みを確実に抑制できる。
また、砂22自体に、生花3の水分を吸着除去する機能は殆どない。このため、砂22が生花3の花弁等に強固に付着することは無く、生花3から砂22を取り除くことは極めて容易である。従って、花弁が薄く破れやすい花であっても、何ら問題なく加工できる。さらに、砂22の粒径が小さければ、小さな花における非常に狭い隙間にも砂22を入れることができる。粒径の小さな砂22を調達することは至極容易であるから、小さな花であっても何ら問題なく加工できる。
【0033】
また、第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法においては、容器11及びカバー23の全体を密封用袋24に入れて減圧脱気して、密封用袋24を密封する。これにより、密封用袋24内の空気に含まれる水分が除去されるため、シート状乾燥剤21は、ほぼ生花3の水分のみを吸収すれば良い。このため、生花3に含まれる水分を迅速かつ効率よく除去し或いは減少させることができる。また、減圧脱気によって、密封用袋24と、その内部の砂22及び生花3は、大気圧によって押圧されることとなる。このため、砂22に埋められた生花3が、砂22の重量以上の力で強く押圧されるので、生花3の皺や縮みを、より確実に抑制できる。また、生花3が減圧環境下におかれることで、生花3に含まれる水分が外へ放出されやすくなるので、短時間で生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。さらに、密封用袋24内の空気を脱気することによって生花3に触れる酸素が極めて少量になるため、生花3の酸化が強く抑制される。これにより、生花3の変色や褪色を確実に防止できる。
【0034】
そして、第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法は、容器11、シート状乾燥剤21、砂22、カバー23、及び密封用袋24の各材料を用いる。これら各材料の中に格別高価なものは無く、安全性の面で取り扱いに注意を要するものも無い。
すなわち、本発明を適用した第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、手軽に取り扱うことが可能な材料により、皺や縮み、変色、褪色といった美観上の問題を全て解決し、極めて美しいドライフラワーを作ることができる。また、小さな花や花弁が薄く壊れやすい花であっても、簡単にドライフラワーにすることができる。
【0035】
なお、上記第1の実施の形態において、容器11を小型のものとして、複数の容器を用いることも可能である。すなわち、小型の容器を複数並べ、これら複数の円筒形状の容器全体を一つの密封用袋24に入れ、密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して、密封用袋24を密封するようにしても良い。この場合、上記第7工程における減圧脱気及び密封の作業を一回行うだけで複数の花を加工できるので、特に、多数の花を加工する場合に適している。なお、図1及び図2に示す容器11の形状は直方体であるが、例えば、広口ビン等を用いれば、簡単に多くの容器を用意することができ、便利である。
【0036】
また、上記第1の実施の形態において、容器11を大型のものとして、一つの容器11に複数の生花3を入れて加工するようにしても良い。この場合、生花3の数が異なることを除いて、上記第1工程〜第7工程における作業は全く同様に行うことができ、多数の花を加工する場合に適している。この場合、容器11のサイズは、加工したい花のサイズ及び一度に加工したい花の数に応じて、適宜決定すれば良い。
【0037】
また、上記第1の実施の形態において、長い茎を残して切られた生花3等を加工する場合、大型の容器11を用い、容器11に複数の生花3を並べて配置し、上記第1〜第7工程の作業を行って加工すれば良い。さらに、容器11に代えて深底の円筒形状の容器を用い、当該容器に、全体として細長い形状を有する1本の生花3を収容して、上記第1工程〜第7工程を実行することも可能であるし、当該容器に、複数の生花3を高さ方向に配置して上記第1工程〜第7工程を実行することも可能である。
【0038】
なお、一つの容器内に複数の生花を入れて加工する場合、生花と生花が互いに触れないようにすると、より良好な仕上がりが期待できる。
【0039】
[第2の実施の形態]
図3及び図4は、第2の実施の形態を説明するための図であり、図3(a)〜(c)及び図4(a)〜(c)は、第2の実施の形態に係る植物の脱水加工方法における各工程を示す。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した加工方法の別の例を示す。なお、第2の実施の形態及び後述する変形例において、上記第1の実施の形態及びその変形例と同様に構成される各部については、同符号を付して説明を省略する。
【0040】
第2の実施の形態においては、シート状乾燥剤21及び砂22に加え、容器13を用いる。容器13は、ガラスまたは合成樹脂製の広口びんである。容器13の上端面は開口しており、この開口部は蓋14により密封される。つまり、容器13は、蓋14によって気密性を保つことが可能である。
【0041】
図3及び図4を参照して、具体的な手順について説明する。
図3(a)に示すように、まず第1工程として、容器13の内寸に合わせて長方形に切断したシート状乾燥剤21を丸めたものを、容器13の内側面に沿うように配置する。なお、容器13の内側面のシート状乾燥剤21に加えて、容器13の底面に円形のシート状乾燥剤21を置いても良い。
【0042】
続いて、上記第1の実施の形態と同様に第2工程及び第3工程の作業を行う。すなわち、第2工程として砂22を入れ、次に、図3(b)及び図3(c)に示すように、第3工程として砂22の上に生花3を置く。なお、第2工程において容器13に入れる砂22の量は、第1の実施の形態よりも多い方が好ましい。
【0043】
ここで、図3(c)及び図4(a)に示すように、第4工程として、生花3が完全に埋まるまで砂22を容器11に入れる。第4工程においては、生花3の狭い隙間、例えば花弁と花弁の間、花弁とがく片の間にも砂22が入り込み、生花3の周囲が完全に砂22に埋まるようにすることが好ましい。また、砂22を、生花3が上端まで完全に砂22に埋まり、さらに容器13の開口部まで砂22が達するまで入れると、容器13内における空間が減少し、生花3の酸化の原因となる酸素が少なくなるので、より好ましい。
【0044】
続く第5工程においては、容器13に蓋14を取り付けて、シート状乾燥剤21、砂22及び生花3を密封する。
【0045】
以上の第1〜第5工程が完了した状態を、図4(b)に示す。この状態で、図4(c)に示すように容器13を上下逆さまにして、数時間から数日乃至数週間放置することにより、生花3に含まれる水分が除去され或いは減少する。脱水完了後、蓋14を開けて砂22の中から生花3を取り出すことにより、ドライフラワーを得ることができる。
【0046】
なお、上記第5工程が完了し、数時間から数日乃至数週間放置する間に、蓋14を開けて、砂22が湿気を含んでいるか否かにより生花3の脱水の度合いを調べても良いし、新たなシート状乾燥剤21を追加したり、シート状乾燥剤21を新しいものに交換したりすることも可能である。この場合、上記作業の完了後に再び蓋14を閉めて、数時間から数日乃至数週間放置すれば良い。
【0047】
以上のように、第2の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
すなわち、生花3の変色や褪色が生じない程度の短時間でドライフラワーにすることができ、脱水中、生花3の各部が砂22の重みにより押圧されるので、脱水の過程において皺を生じない上、縮みが効果的に抑制される。また、生花3の隙間に砂22が入り込むことで、生花3の形を崩すことなく生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができ、皺や縮みを確実に抑制できる。また、砂22が生花3の花弁等に強固に付着することがないので、花弁が薄く破れやすい花であっても何ら問題なく加工できる。また、小さな花であっても、何ら問題なく加工し、ドライフラワーにすることができる。
【0048】
また、第2の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、第1〜第5工程の作業が完了した後、容器13を上下逆さまにするので、生花3が下向きになり、第2工程において入れた分の砂22によって生花3が下向きに押圧される。これにより、特に花弁のような広い面積を有する部分に対し、砂22による押圧力が加わるので、生花3における皺の発生を抑制できる。
【0049】
さらに、第2の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、容器13に、シート状乾燥剤21と、砂22と生花3とを入れて蓋14を閉め、上下逆さまにして放置するだけで良い。特段に高価な材料や安全性の面で取り扱いに注意を要する材料を用いることなく、極めて簡単な作業により、極めて美しいドライフラワーを手軽に作ることができる。
【0050】
なお、上記第2の実施の形態においては、生花3の高さに合わせたサイズの広口びんの容器13を用いる構成としたが、容器13に代えて、深底の円筒形状の容器を用いても良い。すなわち、生花3の高さに比べて非常に深い容器を用いて、当該容器の底に近い位置に生花3を配置し、砂22を容器の開口端付近まで入れることにより、生花3の上に多量の砂22が乗るようにしても良い。この場合、生花3の上方に位置する砂22の重量が生花3に加わるので、容器を上下逆さまにしなくても、生花3に対して十分な圧力が加わり、皺の発生を抑制できる。
さらに、深底の容器を用いる場合に、容器の中に多量の砂22を入れてから上部に生花3を配置し、容器の蓋を閉めて容器を上下逆さまにしても良い。この場合、砂22の重量が生花3に加わることで、生花3に対して十分な圧力が加わり、皺を抑制できる。
【0051】
また、容器内に生花3を配置し、生花3の上に砂22を入れた上、砂22の上におもりを載せても良い。おもりとしては、岩石や陶磁器、金属、合成樹脂等からなる所定の重量を有する塊を用いることができる。この場合、生花3の上方に位置する砂22の重量に加え、おもりの重量が生花3に加わるので、容器を上下逆さまにしなくとも、生花3に対して十分な圧力が加わり、皺の発生を抑制できる。
さらに、容器に砂22を入れる前におもりを容器の底に入れ、その後、砂22を容器の上部まで入れてから、生花3を配置しても良い。この場合、容器の蓋を閉めた後に容器を上下逆さまにすると、砂22の重量とおもりの重量とが生花3に加わるので、生花3に対して十分な圧力が加わり、皺を抑制できる。
【0052】
また、上記第2の実施の形態において、容器13にシート状乾燥剤21、砂22及び生花3が入った状態で、容器13の全体を密封用の袋に入れて袋を密封し、その上から、おもりを載せても良い。すなわち、蓋14を閉めて密封する代わりに密封用の袋によってシート状乾燥剤21、砂22及び生花3を密封し、さらに、密封用の袋の上に、砂22の上に位置するようおもりを載せ、圧力を加える。この場合、蓋14が必要ないので、蓋が無い容器を容器13として用いることができる。また、容器のサイズに余裕がなく、生花3の上または下に十分な量の砂22を入れることができない場合であっても、おもりによって生花3に十分な圧力を加えることができる。このため、砂22及び生花3を確実に保持可能であり、かつ、上面が開口していれば、どのような容器を用いても良いので、生花3のサイズに合わせて容器を選ぶことができる。
【0053】
さらに、容器13として、生花3のサイズに比べて大きな底面積を有する直方体の容器を用い、この容器に複数の生花3を並べて入れ、同時に複数の花を加工しても良い。この場合、複数の生花3を同時に加工できるので、多数のドライフラワーを製作する場合に好適である。なお、生花3に対してより強い圧力を加えて皺を確実に抑制したい場合は、砂22の上面におもりを載せても良い。
【0054】
また、上記第2の実施の形態において、砂22の上面と蓋14との間に、クッション材を入れても良い。ここで、クッション材としては、押圧力により弾性変形して復元力を発揮する弾性体、例えば、ウレタン、シリコンゴム、合成ゴム等を用いることができる。
クッション材を用いる場合、容器13の上面付近まで砂22を入れる際に、砂22の上面と蓋14との間隔がクッション材の高さよりも小さくなるようにすると、蓋14を閉めることによってクッション材が砂22と蓋14とに挟まれて弾性変形し、砂22に対して、クッション材の復元力による圧力が加わる。すなわち、蓋を閉めることが可能な容器を用いる場合に、生花3に対して砂22の重量を超える圧力を加えることができるので、生花3に対して簡単に強い圧力を加え、生花3における皺の発生を抑えることができる。
【0055】
[第3の実施の形態]
図5及び図6は、第3の実施の形態を説明するための図であり、図5(a)〜(c)及び図6(a)〜(b)は、第3の実施の形態に係る植物の脱水加工方法における各工程を示す。
第3の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した加工方法の別の例を示す。なお、第3の実施の形態及び後述する変形例において、上記第1の実施の形態及びその変形例と同様に構成される各部については、同符号を付して説明を省略する。
【0056】
第3の実施の形態に係る植物の脱水加工方法は、第1の実施の形態に係る植物の脱水加工方法を応用し、生花3を平面的に押圧することにより、押し花の趣のあるドライフラワーを製作するものである。
第3の実施の形態に係る植物の脱水加工方法においては、薄型の直方体状の容器12と、シート状乾燥剤21と、砂22と、密封用袋24とを用い、さらに、生花3を押圧するための押さえ網25を用いる。押さえ網25は、合成樹脂製または金属製の平板状の網であり、目の大きさは砂22の粒径よりも大きい。
【0057】
以下、図5及び図6を参照して、具体的な手順について説明する。
図5(a)に示すように、まず第1工程として、容器12内の底部にシート状乾燥剤21を敷き、次に第2工程として、少量の砂22を入れる。
【0058】
続いて、図5(b)に示すように、第3工程として、砂22の上に生花3を置き、生花3の上に押さえ網25を載せて、生花3を押圧する。
【0059】
ここで、図5(c)に示すように、第4工程として、生花3を押さえ網25により押圧した状態で、生花3が完全に埋まるまで砂22を容器12に入れる。
この第4工程においては、生花3を、押さえ網25を介して押圧しつつ、生花3の形状を整えると、より良好な仕上がりが期待できる。また、押さえ網25のサイズが、生花3の被押圧面を全て覆うことが可能なサイズであれば、より良好な仕上がりが期待でき、好ましい。
【0060】
その後、第5工程において、図6(a)に示すように、砂22の上面にシート状乾燥剤21を置き、容器12を叩く。この第5工程において用いるシート状乾燥剤21は、容器12の内寸に合わせて形成され、砂22の上面を覆うことが可能であれば、より好ましい。
また、第5工程において容器12を叩く作業は、砂22の上面を平らにならすことで、砂22の上のシート状乾燥剤21を安定させ、さらに、押さえ網25の網目の中にも十分に砂22が行き渡るようにする効果がある。
【0061】
その後、第6工程において、容器12の全体を密封用袋24に入れ、密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して、減圧された状態で密封用袋24を密封する。密封用袋24内の空気を減圧脱気する際には、真空ポンプや排気ポンプ等を用いると良い。また、密封用袋24を密封する方法としては、例えば、密封用袋24の開口端を加熱して溶着する方法や、密封用袋24の開口部に予めファスナー部を設け、減圧された状態でファスナーを閉じる方法が挙げられる。
【0062】
以上の第1〜第6工程が完了した状態を、図6(b)に示す。この状態で、数時間から数日乃至数週間放置することにより、生花3に含まれる水分が除去され或いは減少する。この脱水が完了した後、密封用袋24を開封し、砂22の中から生花3を取り出すことにより、ドライフラワーを得ることができる。ここで得られるドライフラワーは、押さえ網25を介して押圧されたものであるから、押し花のような趣を有する。
【0063】
なお、上記第6工程が完了し、数時間から数日乃至数週間放置する間に、密封用袋24を開封して、砂22が湿気を含んでいるか否かにより生花3の脱水の度合いを調べても良いし、新たなシート状乾燥剤21を追加したり、シート状乾燥剤21を新しいものに交換したりすることも可能である。この場合、上記作業の完了後に再び密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して密封用袋24を密封して、数時間から数日乃至数週間放置すれば良い。
【0064】
以上のように、第3の実施の形態に係る植物の脱水加工方法によれば、生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させてドライフラワーを製作するにあたって、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
すなわち、生花3の変色や褪色が生じない程度の短時間でドライフラワーにすることができ、脱水中、生花3の各部が砂22の重みにより押圧されるので、脱水の過程において皺を生じない上、縮みが効果的に抑制される。また、生花3の隙間に砂22が入り込むことで、生花3の形を崩すことなく生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができ、皺や縮みを確実に抑制できる。また、砂22が生花3の花弁等に強固に付着することがないので、花弁が薄く破れやすい花であっても何ら問題なく加工できる。また、小さな花であっても何ら問題なく加工できる。
【0065】
さらに、第3の実施の形態に係る植物の脱水加工方法においては、容器12の全体を密封用袋24に入れて減圧脱気し、密封用袋24を密封する。これにより、迅速かつ効率よく、生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。また、減圧脱気によって、密封用袋24が大気圧により押圧され、生花3が砂22によって強く押圧されるので、生花3の皺や縮みを確実に抑制できる。また、生花3が減圧環境下におかれることで生花3に含まれる水分が外へ放出されやすくなり、短時間で生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。さらに、生花3に触れる酸素が極めて少量になるので、生花3の酸化が強く抑制され、生花3の変色や褪色を確実に防止できる。
【0066】
その上、密封用袋24内の空気を減圧脱気して密封用袋24を密封することにより、押さえ網25を介して、生花3に対する平面的な押圧力が継続して加わることとなる。これにより、生花3に対して、全体を平面的に、かつ継続して押圧する力が加わるため、生花3の花弁等を押しつぶして破壊することなく、生花3を平面的な形状に加工できる。これにより、従来のドライフラワーの製作方法及び従来の押し花の製作方法によっても得られない、独特の趣を有する、優れた美観を有するドライフラワーを製作できる。
【0067】
なお、上記第1〜第3の実施の形態において、容器11,12,13を構成する材料としては、例えば、アクリルやポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂、木材、紙、アルミニウムやステンレス等の金属、ガラス等が挙げられるが、強度の面で不足が無ければ、任意の材料を用いることができる。蓋14についても同様である。また、容器11,12,13のサイズは、加工しようとする花のサイズや、一度に加工しようとする花の数等に応じて任意に決定して良い。さらに、容器11,12,13の形状は、直方体や円筒形状等の強固な面を有する形状に限定されず、生花3、シート状乾燥剤21及び必要な量の砂22を入れた状態において一定の形状を保つことが可能であれば良い。従って、例えば、可撓性のフィルムを略円筒形状や略直方体形状又は略球形状に成形した袋であっても良い。この場合、上記袋を密封可能なものとすれば、容器11,12,13としての機能と、密封用袋24の機能とを兼ね備えるものとすることができる。さらに、蓋14は、組み合わされる容器13のサイズに適合するものであれば良く、蓋14を容器13に固定する方法についても任意である。
【0068】
また、上記第1〜第3の実施の形態においては生花3を加工する場合について説明したが、当然のことながら、本発明は、花だけでなく生の植物全般に適用することが可能である。従って、生花3のような切り花や、茎を長く残して切った生花3だけでなく、葉や、葉と茎のみを加工することも可能である。
【0069】
また、シート状乾燥剤21に用いる乾燥剤は任意であって、例えば、化学的に水分子と結合又は反応しようとする性質を有するものや、物理的に水分子を吸着しようとする性質を有するものを用いることができ、具体的には、塩化カルシウム、酸化カルシウム(生石灰)、塩化リチウム、塩化マグネシウム、これらの化合物の水和物(例えば、塩化マグネシウム二水和物等)、無水硫酸マグネシウム、シリカゲル等を用いることが可能である。
【0070】
さらに、容器内においてシート状乾燥剤21を配置する場所は、容器の底面や側面、砂22の上面等に限定されない。上述のように砂22が通気性を有するので、シート状乾燥剤21は、生花3とともに密封されている限りにおいて、生花3から離れていても生花3に含まれる水分を吸収することが可能である。従って、シート状乾燥剤21は任意の場所に配置することができる。
さらに、密封用袋24を用いてシート状乾燥剤21を生花3や砂22とともに密封する場合には、容器の外側に配置したシート状乾燥剤21を容器とともに密封用袋24に入れ、密封用袋24を密封しても良い。
【0071】
また、上記第1〜第3の実施の形態において、生花3とともに密封するシート状乾燥剤21の数量は任意であるが、生花3に含まれる水分を十分に吸収できることが望ましい。従って、生花3に含まれる全水分量の2倍乃至3倍の水分を吸収できる量のシート状乾燥剤21を生花3とともに密封すれば、確実に生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させることができる。なお、一般に、花に含まれる水分は花全体の重量の70%程度を占めるといわれているので、花の重量の1.4倍〜2.1倍程度に相当する水分を吸収できるだけのシート状乾燥剤21を花とともに密封すれば十分であるといえる。
【0072】
また、上記の各実施の形態においてはシート状乾燥剤21を用いたが、本発明はこれに限定されず、他の形状の乾燥剤を用いることも可能である。ここで、他の形状の乾燥剤とは、例えば、シート状乾燥剤21に用いる上記の各種乾燥剤を、例えば粒状に形成して、通気性を有する外装(袋等)に封入したもの等である。
【0073】
また、上記の各実施の形態において、砂22は、上記のように脱水中の生花3を押圧することで花弁や葉の縮み及び皺の発生を抑制する効果があり、かつ、生花3の水分をシート状乾燥剤21によって吸収するための通気性を有するものであれば良いので、生花3に対して重力による押圧力を効果的に加えることが可能な程度の密度、及び、所定の粒径を有するものであれば良い。また、生花3に吸着または粘着せず、除去が容易で、除去時に生花3に損傷を生じないものであれば良い。従って、砂22の材料、すなわち砂22に含まれる鉱物の種類等は特に限定されず、砂に代えて、金属粒、ガラス粒、セラミックスや合成樹脂を粒状に加工した粒状体等を用いることも可能である。なお、砂22に代えて、生花3の水分を吸収して生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させるもの(すなわち、乾燥剤)の粒を用いた場合、これらの粒が生花3の表面に強固に付着する可能性がある。従って、砂22を代替するものとしては、乾燥剤として機能するほどの水分吸収力を持たないものが好適である。
また、砂22の粒径は、花弁や葉の表面に肉眼で確認できるような跡が残りにくいという点で、0.5mm(ミリメートル)以下であれば、好ましい。さらに、十分な通気性を確保することができ、かつ、生花3が一般的な装飾用・観賞用の花である場合に花弁の隙間などの狭い隙間に入り込むことができるという点で、砂22の粒径が0.1以上0.3mm以下の範囲内であると、より好ましい。
なお、上記第1〜第3の実施の形態としての花の加工方法は生花3に含まれる水分を除去し或いは減少させるための方法であるから、砂22としては、予め加熱により水分が除去された砂(いわゆる焼き砂)を用いると、より好ましい。
【0074】
また、カバー23を構成する材料としては、紙、布、不織布等を用いることが可能であるが、合成繊維等の繊維からなる極めて目の細かい網を用いることも可能であるし、合成樹脂製のフィルムを用いても良い。
【0075】
[第4の実施の形態]
続いて、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態では、上記第1〜第3の実施の形態において説明した方法により製作されたドライフラワーを用いて、レジンフラワーを製作するためのレジンフラワーの製法について説明する。
【0076】
図7〜図9の各図は第4の実施の形態を説明するための図であって、図7(a)〜(c)は、レジンフラワーの製法における再脱水工程の一形態例を示し、図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(c)に示す再脱水工程を経たドライフラワーを用いてレジンフラワーを製作する埋封工程の一形態例を示し、図9(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)に示す埋封工程において製作されたレジンフラワーの泡を除去する脱気工程の一形態例を示す。なお、第4の実施の形態において、上記第1〜第3の実施の形態と同様に構成される各部については、同符号を付して説明を省略する。
【0077】
なお、以下に説明する再脱水工程において用いるドライフラワー30は、上記第1〜第3の実施の形態において説明した植物の脱水加工方法によって製作されたものであるが、他の方法により製作されたドライフラワーを用いることも、勿論可能である。
すなわち、一般にプリザーブドフラワーと呼ばれるものや、アルコール系の液体を用いて生花を脱水加工したもの、シリカゲルの中に生花を埋める方法によって生花を脱水加工したもの、その他の方法によって生花に含まれる水分を除去し或いは減少させたもの等をドライフラワー30として用いることが可能であり、脱水加工とともに、花に着色を施したものをドライフラワー30として用いることも可能である。
【0078】
再脱水工程においては、図7(a)に示すように、略箱形の外箱42と、外箱42に比べて十分に小さい複数の内容器41とを用いる。
内容器41は、ドライフラワー30を十分に収容可能なサイズおよび形状を有していれば良く、ここでは略円筒形の容器として説明する。内容器41は、ドライフラワー30等を収容した場合に変形せず、かつ、後述するように内容器41の上にシート状乾燥剤21を載せた状態で座屈しない程度の強度を有するものであれば良く、また、底があっても無くても良いので、例えば、ドライフラワー30を収容可能な内径を有する紙筒等を用いることができる。
【0079】
また、外箱42は、底を有する箱であって、後述するように外箱蓋43を固定することによって密封され、気密性を保つことが可能なものであれば良く、例えば、アクリルやポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂、木材、紙、アルミニウムやステンレス等の金属、ガラス等、任意の材料を用いることができる。
【0080】
再脱水工程においては、まず、図7(a)に示すように、外箱42の中に複数の内容器41を並べ、各内容器41の中にドライフラワー30を納める。ここで、適量の綿40をドライフラワー30の下に入れると、内容器41内でドライフラワー30が安定し、ドライフラワー30の変形や破損を防止できるという効果がある。
【0081】
続いて、図7(b)に示すように、内容器41の上にシート状乾燥剤21を置く。シート状乾燥剤21は、上記第1〜第3の実施の形態において用いたものと同様である。
その後、図7(c)に示すように、外箱42に外箱蓋43をかぶせて、外箱42の内部を密封する。これにより、外箱42内において、ドライフラワー30はシート状乾燥剤21とともに密封され、気密状態が保たれる。図7(c)に示す状態で数時間から数日乃至数週間(例えば、3〜5日)放置することにより、ドライフラワー30が含む水分を効果的に除去することができる。なお、放置する時間は外箱42周囲の温度等によって適宜定めれば良い。
【0082】
以上の再脱水工程に係る効果について、説明する。
一般に、生花を脱水加工してドライフラワーにすると保存性が高まることが知られている。しかし、保存性が高まるというのは、生花の水分を除去し或いは減少させることで腐敗しにくくなるということであって、ドライフラワーであっても、変色や褪色が生じて劣化することが知られている。そして、ドライフラワーの劣化の主な原因は、空気中の酸素による酸化、高温、及び、紫外線であるとされていた。
【0083】
上述したように、レジンフラワーは、脱水加工等を施した花すなわちドライフラワーをレジンの中に埋封したものであり、レジンの中の花は外気から遮断された環境下にあるから、少なくとも空気中の酸素による酸化は進行せず、紫外線を浴びる場所や高温となる場所に放置しない限り劣化しないものと考えられた。ところが、現実には、紫外線や高温を避けたにもかかわらず、製作後数ヶ月でレジンフラワーが劣化する例が数多くあり、その原因は長く不明なままであった。
【0084】
発明者は、ドライフラワー及びレジンフラワーの劣化を防止するための研究を重ねるうち、加工された花の脱水が不十分であったり、加工後に再び水分を吸収してしまったりして、水分量があるレベルを超えると、ドライフラワーの劣化が進行するとの知見を得た。
【0085】
発明者が行った典型的な試験においては、脱水加工した3種類のドライフラワー(カワラナデシコ、ヤマトリカブト、リンドウ)を、乾燥剤とともに密封容器に封入して放置した。放置場所としては、強い紫外線にさらされることなく、かつ、室温の変化が少ない場所を選んだ。
この試験によれば、放置開始からほぼ3年を経過してもドライフラワーの色および形状が変化せず、極めて良好な保存状態を保つことができた。そこで、この試験における密封容器内の湿度を、同様の環境を再現することによって測定したところ、概ね18〜20%であった。
【0086】
また、発明者は、各種の方法により製作されたドライフラワーがどの程度の水分を含有しているかを知るため、ドライフラワーを乾燥剤とともに密封容器に収容して、その容器内の湿度を計測した。その結果、湿度はおおむね25%であった。
【0087】
以上の試験により、次のことが明らかになった。
極めて良好な状態でドライフラワーを保存できたケースでは、ドライフラワーの周辺雰囲気の湿度は概ね18〜20%であった。これに対し、各種の方法により製作されたドライフラワーの周辺雰囲気の湿度は、概ね25%程度である。また、ドライフラワーを用いて製作したレジンフラワーの多くは、紫外線及び高温の影響を避けたにも関わらず劣化することが多い。
従って、ドライフラワーを良好な状態で保存するためには、ドライフラワーの周辺雰囲気の湿度を概ね18〜20%に保つと良く、湿度が25%程度になってしまうと劣化する可能性が高いと結論づけることができる。
【0088】
以上の結果及び結論をまとめると、(1)強い紫外線を浴びることがなく、(2)高温にならず、(3)湿度が18〜20%またはそれ以下に保たれる、という3つの条件を満たす環境下でドライフラワーを保存すれば、劣化を確実に防止できるといえる。このうち、(3)の条件は、従来は知られていなかった極めて重要な発見である。
【0089】
さて、レジンフラワーについて言えば、上記(1)及び(2)の条件は、主にレジンフラワーを置く場所に関わるものであるから、レジンフラワーを製作または購入した人が置き場所に注意すれば良い。しかしながら、(3)の条件は、ドライフラワーの周辺すなわちレジンフラワー内部に関わるものであり、レジンフラワー作成時に何らかの工夫を施す必要がある。
【0090】
そこで、発明者は、レジンフラワーを製作する作業を行う前の段階として、既に脱水加工されたドライフラワーから、さらに水分を除去する再脱水工程を実行することにより、保存性に優れたレジンフラワーを製作するとの技術的思想を創作するに至った。
この再脱水工程の詳細は、図7(a)〜(c)を参照して上記に説明した通りである。
【0091】
再脱水工程を実行することにより、レジンフラワーの製作時点においてドライフラワーに含まれる水分量を大幅に減少させ、レジンフラワー内部における環境を改善することができるので、ドライフラワーの劣化を防止し、保存性を高めることができる。すなわち、紫外線及び高温を避けることが可能な環境下であれば、半永久的に劣化しないレジンフラワーを製作することができる。
【0092】
また、図7(a)〜(c)に示す再脱水工程は、非常に手軽な方法であり、レジンフラワー製作時の作業負担を増すことなく、容易に実行可能であるという利点がある。
【0093】
さらに、図7(a)〜(c)に示す再脱水工程を行った後、シート状乾燥剤21を新しいものに交換して、再び実行するようにしても良い。この場合、再脱水工程を2回実行することによって、ドライフラワー30の含有水分量をより確実に減少させることができるので、このドライフラワーを用いてレジンフラワーを製作すれば、非常に劣化しにくい、保存性の高いレジンフラワーを得ることができる。なお、再脱水工程の実行回数に制限はなく、シート状乾燥剤21を交換しながら、3回またはそれ以上繰り返すことも勿論可能である。
【0094】
次に、図8(a)〜(c)を参照して、ドライフラワーをレジンに埋封する埋封工程について説明する。以下に説明する埋封工程においては、図7(a)〜(c)に示す再脱水工程を経たドライフラワー30を用いる。
【0095】
埋封工程においては、図8(a)に示すように、レジン型51にドライフラワー30を収め、レジン52を流し込むことによってドライフラワー30をレジン52内に埋封する。レジン型51は、レジン52を流し込む型としての機能を果たすとともに、製作されるレジンフラワーの一部ともなる部材である。従って、レジン型51は、レジン52を流し込んだ状態で変形しない程度の強度を有し、レジン52と化学的に反応しないもの、すなわちレジン52を変質させず、レジン52と接触して変質しないものが望ましく、その上で美観上の要求を満たすものが用いられる。レジン型51の材料としては、金属、陶磁器、ガラス、アクリル等の各種合成樹脂を用いることが可能であるが、ガラスや透明な合成樹脂を用いると、レジンフラワーの透明感を生かすことができるので、好ましい。
レジン52は、エポキシレジン、ポリエステルレジン、ポリウレタンレジン、シリコーン樹脂等の合成樹脂であって、純粋な化合物であるか混合物であるかを問わない。レジン52は、図8(a)〜(c)に示す埋封工程を実行する前には流動性を有し、その後、種々の条件により硬化(固化)する性状を有するものであれば良い。
【0096】
埋封工程においては、まず、図8(a)に示すように、レジン型51にレジン52を少量入れ、レジン52が硬化する前にドライフラワー30をレジン型51内に置く。ドライフラワー30の位置は、製作しようとするレジンフラワーの完成時の位置に合わせる。なお、レジン52が、ドライフラワー30を支持するに十分な固さに硬化するまでドライフラワー30を適宜支持固定できるよう、支持具(図示略)を取り付けても良い。
【0097】
レジン型51にドライフラワー30を入れた後、図8(b)に示すように、レジン型51を乾燥容器44に入れ、乾燥容器44内にシート状乾燥剤21を入れる。
乾燥容器44は、レジン型51を収容可能な内容積と、十分なサイズの開口部とを有する容器であり、乾燥容器蓋45によって密封され、気密性を保つことが可能なものであれば良い。乾燥容器44及び乾燥容器蓋45を構成する材料としては、例えば、アクリルやポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂、木材、紙、アルミニウムやステンレス等の金属、ガラス等、任意の材料を用いることができるが、乾燥容器44に収容されたレジン型51の様子が見えるよう透明なものを用いると便利である。また、乾燥容器44のサイズが、乾燥容器44内においてある程度の作業を行えるような大きなものであれば、作業性が向上するので、好ましい。
また、図8(b)に示す状態において、シート状乾燥剤21は、レジン型51に蓋をするように置いても良いし、レジン型51の側方に置いても良い。
【0098】
そして、乾燥容器44にレジン型51及びシート状乾燥剤21を収容した後、乾燥容器蓋45を固定し、乾燥容器44内を密封する。
【0099】
図8(b)に示す状態で、ドライフラワー30が動かない程度にレジン52が硬化した後、レジン型51内に、所望の量のレジン52を注入する作業を行う。この注入作業においては、必要な時だけ乾燥容器蓋45を開けてシート状乾燥剤21を除いてレジン52を注入し、注入が完了したら速やかにシート状乾燥剤21を入れて乾燥容器蓋45を閉めるようにすると、ドライフラワー30の吸湿を防止できる。
【0100】
なお、レジン52は、1回で注入しても複数回に分けて注入しても良いが、レジン52の総量が極めて少ない場合を除き、複数回に分けて注入する方が好ましい。これは、硬化時に発熱するタイプのレジン52を用いた場合には、レジン52の過熱を防止でき、硬化時に収縮するタイプのレジンを用いた場合には、収縮による歪みや気泡の発生を防止できるという利点があるからである。レジン52を複数回に分けて注入する場合は、先に注入した分のレジン52がある程度硬化または安定してから、残りのレジン52を注入する。
【0101】
レジン52の注入が完了したら、図8(c)に示すように、乾燥容器44にシート状乾燥剤21を入れずに乾燥容器蓋45を閉めて、レジン52が完全に硬化するまで放置する。これにより、極めて保存性の高いレジンフラワーを製作できる。
【0102】
次に、図8(a)〜(c)に示す埋封工程を経たレジンフラワーについて、レジン52中の気泡を除去するための脱気工程について、図9(a)〜(c)を参照して説明する。
なお、図9に示すレジンフラワー50は、図8(a)〜(c)に示す埋封工程におけるレジン52の注入が完了したレジンフラワーである。脱気工程は、レジン型51に必要量のレジン52を全て注入した後であって、かつ、レジン52が完全に硬化していない状態(多少の流動性を有する状態)で行われる。
【0103】
図9(a)に示すように、脱気工程においては、脱気用容器46及び脱気用蓋47からなる容器を用いる。脱気用容器46は、レジンフラワー50を十分に収容可能な容器であり、後述する強制的な減圧脱気の際に、変形しない程度の強度があれば良い。具体的には、例えば、アクリルやポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂、木材、紙、アルミニウムやステンレス等の金属、ガラス等、任意の材料を用いることができる。なお、脱気用容器46として透明なものを用いると、収容されたレジンフラワー50の様子が見えるので便利である。
脱気用蓋47は、脱気用容器46に固定可能な蓋であって、その材料は脱気用容器46と同様である。脱気用蓋47には、1または複数の孔47aが穿設されている。孔47aは全て貫通孔であり、脱気用容器46に脱気用蓋47を固定した場合、孔47aにより脱気用容器46内の空気を外へ排出できる。
【0104】
図9に示す脱気工程は、まず、図9(b)に示すように、脱気用容器46内にレジンフラワー50を収容して脱気用蓋47を閉める。
続いて、レジンフラワー50を収容した脱気用容器46及び脱気用蓋47を、図9(c)に示すように密封用袋24に収容する。
そして、密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気して、密封用袋24を密封する。密封用袋24内の空気を減圧脱気する際には、上記第1の実施の形態における第7工程と同様に、真空ポンプや排気ポンプ等を用いると良い。また、密封用袋24を密封する方法としては、例えば、密封用袋24の開口端を加熱して溶着する方法や、密封用袋24の開口部に予めファスナー部を設け、減圧された状態でファスナーを閉じる方法が挙げられる。
【0105】
この脱気工程において、密封用袋24内の空気を減圧脱気することにより、脱気用容器46及び脱気用蓋47内が減圧脱気され、レジンフラワー50に生じる気泡を効果的に除去することができる。
【0106】
すなわち、図8に示す埋封工程で、レジン型51にレジン52を注入する段階では、ドライフラワー30の花弁やがくの隙間等、細かい隙間には、レジン52が完全に浸透しきれず、一部に空気が残ってしまうことがある。また、ドライフラワー30の花弁の表面等に、微量の空気が泡となって吸着してしまい、レジン52の上面まで浮いてこないことがある。このような場合、従来の方法では空気を除去することができず、レジンフラワーの中に気泡が残存してしまい、美観を損なうという問題があった。
そこで、図9の脱気工程において密封用袋24内の空気を強制的に減圧脱気すると、減圧環境下のレジンフラワー50において、レジン52内に存在する気泡がレジン52の表面まで浮き上がる。これは、レジン52に加わる気圧が低減することで、ドライフラワー30の隙間や表面に残存する気泡が膨張し、浮き上がりやすくなるためだと考えられる。
【0107】
そして、密封用袋24を密封した状態でしばらく(例えば、数分〜数時間)放置し、レジン52内部の気泡が表面(上面)に十分浮き上がってきたところで、竹串や針等の棒状部材によって気泡をつついて破壊すれば、気泡を除去できる。これにより、美観に優れたレジンフラワー50が得られる。また、ドライフラワー30に付着した気泡には微量の酸素や水分が含まれ、ドライフラワー30の劣化の原因ともなるので、脱気工程において気泡を除去することにより、極めて保存性の高いレジンフラワー50が得られる。
なお、レジン52の表面に浮き上がった気泡を破壊して除去するタイミングは、レジン52が完全に硬化する前であることが好ましく、レジン52が十分な流動性を保っていれば、気泡を破壊した痕跡が全く残らないので、より好ましい。
【0108】
また、図9に示す脱気工程においては可撓性の密封用袋24を用いるので、レジン型51や脱気用容器46が如何なる形状であっても対応可能であるという利点がある。さらに、脱気工程で用いる脱気用蓋47、脱気用容器46及び密封用袋24は、いずれも非常に単純な構成からなる安価な部材であるから、上記脱気工程は容易に実現可能である。
【0109】
なお、上記第4の実施の形態においては、レジンフラワー50を脱気用容器46に収容し、さらに脱気用容器46を密封用袋24に収容して密封する構成について説明したが、例えば、レジンフラワー50を直接密封用袋24に収容して密封用袋24を密封するようにしても良い。この場合、レジン52の表面が密封用袋24の内面に接触せず、かつ、密封用袋24内の空気を減圧脱気する際に、レジン52が流動しないようにレジンフラワー50を適宜保持することができれば、問題なく上記脱気工程を行うことができる。
但し、レジンフラワー50の上端近傍までレジン52が注入されている場合等、レジン52の表面が密封用袋24の内面に接触したり、密封用袋24内の空気を減圧脱気する際にレジン52が流動したりする可能性がある場合は、図9(a)〜(c)に示すように、レジンフラワー50を脱気用容器46に収容した上で密封用袋24内に密封すると、レジン52の流動や密封用袋24内面への接触を気にすることなく作業を行うことができるので、好ましい。
【0110】
また、上記第4の実施の形態においては、レジン型51に一つのドライフラワー30のみを収容してレジン52に埋封する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のドライフラワー30をレジン52に埋封するようにしても良いし、ドライフラワー30とともに、植物または植物以外の部材を装飾目的で埋封することも勿論可能である。
【0111】
この他、上記第1〜第4の実施の形態における細部構成については、本発明の趣旨を損なうことのない範囲において、適宜変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1の実施の形態を説明するための図であり、(a)〜(d)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図2】第1の実施の形態を説明するための図であり、(a)〜(c)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図3】第2の実施の形態を説明するための図であり、(a)〜(c)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図4】第2の実施の形態を説明するための図であり、(a)〜(c)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図5】第3の実施の形態を説明するための図であり、(a)〜(c)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図6】第3の実施の形態を説明するための図であり、(a)及び(b)は、生花の水分を除去する脱水加工方法の一形態例を示す。
【図7】第4の実施の形態における花の加工方法を説明するための図であり、(a)〜(c)はレジンフラワーの製法における再脱水工程の一形態例を示す。
【図8】第4の実施の形態における花の加工方法を説明するための図であり、(a)〜(c)はレジンフラワーの製法における埋封工程の一形態例を示す。
【図9】第4の実施の形態における花の加工方法を説明するための図であり、(a)〜(c)はレジンフラワーの製法における脱気工程の一形態例を示す。
【符号の説明】
【0113】
11,12,13 容器
14 蓋
21 シート状乾燥剤
22 砂
23 カバー
24 密封用袋
25 押さえ網
40 綿
41 内容器
42 外箱
43 外箱蓋
44 乾燥容器
45 乾燥容器蓋
46 脱気用容器
47 脱気用蓋
50 レジンフラワー
51 レジン型
52 レジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を、型に収容し、当該型にレジンを注入する注入工程と、
前記注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容し、当該容器内の空気を減圧脱気して当該容器を密封する脱気工程と、
を含むことを特徴とするレジンフラワーの製法。
【請求項2】
生の植物の水分を除去し或いは減少させる脱水加工によって製作された花材を、乾燥剤とともに容器に密封して所定の期間放置する再脱水工程と、
前記再脱水工程の後に前記容器から花材を取り出して型に収容し、当該型にレジンを注入する注入工程と、
を含むことを特徴とするレジンフラワーの製法。
【請求項3】
前記注入工程によりレジンが注入された型を容器に収容し、当該容器内の空気を減圧脱気して当該容器を密封する脱気工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載のレジンフラワーの製法。
【請求項4】
前記脱気工程において、前記注入工程によりレジンが注入された型を、通気口を有する保持容器内に収容した上、当該保持容器ごと前記容器に密封して脱気することを特徴とする請求項1または3記載のレジンフラワーの製法。
【請求項5】
前記脱気工程において用いる前記容器は、気体を遮断可能な可撓性のフィルムにより構成される袋であることを特徴とする請求項1、3または4記載のレジンフラワーの製法。
【請求項6】
前記花材を製作するための前記脱水加工が、粒状体の中に前記生の植物を埋めて、乾燥剤とともに前記粒状体および前記生の植物を密封する工程を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレジンフラワーの製法。
【請求項7】
前記脱水加工において、前記粒状体と、前記生の植物と、前記乾燥剤とを脱水加工用容器内に収容し、当該脱水加工用容器内の空気を減圧脱気して前記脱水加工用容器を密封することを特徴とする請求項6記載のレジンフラワーの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−16315(P2006−16315A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193491(P2004−193491)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(502037258)株式会社コロネット (6)
【Fターム(参考)】