説明

レチノイドのマイクロエマルション、およびそれを含む医薬組成物

活性成分としてのレチノイド、およびリン脂質乳化剤を含有し、かつヒアルロン酸またはその塩を含有することもある、油中水(W/O)マイクロエマルションを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてのレチノイド、およびリン脂質乳化剤を含有し、かつヒアルロン酸またはその塩を含有することもある、油中水(W/O)マイクロエマルションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レチノイドは、ビタミンAの天然の誘導体、または合成による類似体である、一連の化合物として定義される。必須栄養素としてのビタミンAの役割は、早くも1913年に認識され、それ以来、非常に多くの研究がこの産物に関して実施されてきた。WolbachおよびHowe[J. Exp. Med., 42: 753, 1925]は、1925年に、ビタミンA欠乏によって惹起される上皮の組織化学的変化を初めて記載した。このことは、レチノールその他の天然の類似体の同定へと導いて、それらは、純粋に経験論的な根拠により、新生物性の形質転換の化学的予防剤として用いられ始めた。
【0003】
腫瘍学上の化学的予防におけるレチノイドの役割は、規則的なビタミンA摂取が、腫瘍、特に肺癌の発生率の低さと有意に相関することを立証する、様々な疫学的研究の刊行物[Ziegler, R.G. et al., Cancer Causes and Control, 7: 157-177, 1996;Krishnan, K. et al., Primary Care, 25: 361-382, 1998]によって裏付けられた。
【0004】
現在まで試験された4,000以上のレチノイドのうちいくつかのみが、その臨床的使用を許すのに充分に好都合な治療効果/毒性比を有するにすぎない。レチノイン酸に対する核レセプター(RARおよびRXRと呼ばれる、明確に区別される二つの種類に属する)の比較的最近の発見は、その作用機序の知見を著しく改善した。
【0005】
無数の臨床試験が、レチノイドで実施されていて、その多くは、新生物性形質転換の頻度が高いために前癌性病変として分類される、扁平苔癬および白板症のような皮膚疾患に対してなされたものである[Hong, W. et al., New Engl. J. Med., 315: 1501-1505, 1986;Lippman, S.M. et al., New Engl. J. Med., 328: 15-20, 1993]。
【0006】
現在、レチノイドの国際的に認められた臨床的使用は、急性前骨髄球性白血病、ならびに座瘡および乾癬のような過増殖性の要素を伴う皮膚疾患の処置に関連している。
【0007】
フェンレチニド(4−ヒドロキシフェニルレチンアミド)は、化学防御剤として開発された、半合成レチノイドである[Costa, A. et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 768: 148-162, 1995;Pienta, K.J. et al., Am. J. Clin. Oncol., 20: 36-39, 1997]。
【0008】
全trans−、13−cis−および9−cis−レチノイン酸のような他の天然レチノイドとは異なり、フェンレチニドは、薬理学的に役立つ血漿濃度の長期維持に干渉できるような、いかなる全身的異化作用も誘導しない。この特徴性は、この製品の低い毒性、および発癌作用に関連するいくつかの現象を阻害できるその能力と相まって、フェンレチニドを乳癌、前立腺癌および膀胱癌のような、新生物性障害における化学防御剤として開発するための、論理的根拠を与える。
【0009】
限られた数の被験者に対して実施された、他の第2期試験は、前立腺癌[Pienta, K.J. et al., Am. J. Clin. Oncol., 20: 36-39, 1997]、黒色腫[Modiano, M.R. et al., Invest. New Drugs, 8: 317-319, 1990]および骨髄異形成症候群[Garewal, H.S. et al., Leukemia Res., 13: 339-343, 1989]に罹患した患者に対するフェンレチニドの効果を評価している。しかし、これらの研究の結果は、かなり失望させるものであったのに対し、白板症または扁平苔癬(新生物性変性をしばしば提示する皮膚科病変)に罹患した患者に対して実施された化学防御剤の研究は、有望な結果を与えている[Tradati, N. et al., Canc. Letters, 76: 109-111, 1994]。
【0010】
これらの症例では、患者は、局所的に処置されて、その結果は、病巣に到達したフェンレチニド濃度が、おそらく、in vitroで活性を有すると証明されたそれより高くはないにしても、同等であるというものであった。
【0011】
現在では、レチノイドの局所配合物は、主として、脂肪性の基剤またはゲルによるクリーム剤の形態で提示される。ドイツ国特許公開第19946184号公報(DE 19946184)は、連続的な水相、主として非晶質の粘性に富む油性相、および乳化剤の混合物を特徴とする、レチノイドのエマルションを記載している。僅かにのみ水溶性であり、非経口的、局所的または経口的経路によって投与することができる、活性成分のマイクロエマルションが、国際公開第99/56727号公報(WO 99/56727)、欧州特許出願公開第211258号公報(EP211258)および欧州特許出願公開第760237号公報(EP 760237)に記載されている。
【0012】
マイクロエマルション(少なくとも3種類の成分、たとえば油性相、水相および界面活性剤で構成される、巨視的に単相の分散系)の形態での、レチノイドの局所配合物は、入手不能である。それらの個々の構造を特徴付ける、マイクロエマルションの主な化学物理的特性は、透明性、等方性および熱力学的安定性である。これらの特徴の結果として、マイクロエマルションは、製薬業界にとって著しく興味深い。事実、
(a)マイクロエマルションの個々の微細構造は、異なる化学物理的特徴を有する分子を可溶化するのを可能にし;
(b)系の透明性は、活性成分が完全に可溶化されることを確認するのを可能にし;
(c)熱力学的安定性は、得られた系が長期間安定的であるため、大きな利点を必然的に有する。
【0013】
マイクロエマルションの局所的使用の更に一つの利点は、活性成分の角質層越しの浸透速度を増大できる可能性である。
【0014】
薬物放出は、慣用の配合物ではなく、ゲルマイクロエマルションを用いたとき、はるかに迅速であることが知られている[Martini, M. et al., J. Pharm. Belg., 39, 348-354, 1984;Ziegenmeyers, J. et al., Acta Pharm. Technol., 26, 273-275, 1980;Ziegenmeyers, J. et al., Deuxieme Congres International de Technologie Pharmaceutique 3, 235-238, 1980]。
【0015】
リン脂質は、マイクロエマルションを安定化するための乳化剤として用いられている:すなわち、有機溶媒中のホスファチジルコリン(50〜250mM)は、水を加えると一次元的成長を生じる、小さい逆ミセルを形成して、一つに絡まった、長い、柔軟な円筒状構造からなる、ある種の三次元的網目構造を形成するに至る[Luisi et al., Colloid Polym. Sci., 268, 356-374, 1990]。
【0016】
水の存在は、粘度の劇的な上昇を惹起して、ゲル化した透明な系の形成へと導いて、その粘度は、水相の含量に依存する。含水量は、結果的に、これらの個々のマイクロエマルションの形成における非常に重要な因子であって、水の濃度とレシチンのモル濃度との比で表される:
[W]/[lec]=[水のモル濃度]/[レシチンのモル濃度]
【0017】
各マイクロエマルションについての[W]/[lec]の最大値は、用いた有機相の種類、およびレシチン濃度に依存する。レシチンを基剤とするゲルマイクロエマルションの最高粘度は、通常、レシチン1分子あたり10未満の水の分子の添加後に、すなわち[W]/[lec]<10の値のときに得られる。
【0018】
ダイズホスファチジルコリンを基剤とするゲルマイクロエマルションは、マイクロエマルションに典型的な透明性、熱力学的安定性および等方性という特徴のすべてを保有する[Scartazzini, R. et al., J. Phys. Chem., 92, 829-833, 1988;Luisi et al., Colloid Polym. Sci., 268, 356-374, 1990;Lawrence et al., Advanced Drug Delivery Reviews, 45, 89-121, 2000]。
【0019】
ホスファチジルコリンは、天然の界面活性剤であり、非常に生体適合性に富む[Dreher et al., Skin Pharmacology, 9, 124-129, 1996]。
【0020】
ヒアルロン酸(HA)は、D−グルクロン酸およびN−アシル−D−グルコサミンの交互残基で構成されるヘテロ多糖類である。それは、それが得られる入手源、および用いた調製方法に応じて50,000〜13x106Daにわたる分子量を有する直鎖重合体である。自然界では、細胞周辺のゲル中に、脊椎動物の結合組織の細胞間質(その主要成分の一つである)中に、ならびに滑液(関節液)、硝子体液および臍帯中に見出される。
【0021】
HAは、生体中では、皮膚、腱、筋および軟骨のような多くの組織の細胞のための機械的支持体として、重要な役割を果たしている。
【0022】
それは、細胞外基質の主要な成分であり、組織の湿潤化、ならびに細胞の潤滑、移動および分化のような、その他の機能も実行する。
【0023】
その生体接着および粘膜接着という特性、ならびにその組織適合性という特徴に照らして、ヒアルロン酸およびその塩、特に、適切に分画かつ/または誘導体化されていることもあるナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩は、薬物の放出、および外科補助装置、インプラント、プロテーゼなどの製造のためのシステムとして提唱されている。
【0024】
発明の開示
ここに、レチノイドは、好都合にも、リン脂質乳化剤、特に、ヒアルロン酸またはその塩および画分が添加されていることもある、ダイズホスファチジルコリンおよびダイズレシチンを用いて、油中水(W/O)マイクロエマルション中に配合できることが見出された。
【0025】
本発明のマイクロエマルションは、慣用の配合物より優れた生物学的利用能を与える。
【0026】
この油性相は、好ましくは、C10〜C22脂肪酸のアルキルエステルで構成される。
【0027】
パルミチン酸イソプロピルは、特に好適である。
【0028】
本発明によるマイクロエマルションに好都合にも配合することができるレチノイドは、イソトレチノイン(13−cis−レチノイン酸)、タザロテン、および特にフェンレチニドを包含する。
【0029】
マイクロエマルションへの、塩形成していることもあるヒアルロン酸(HA)、および特にヒアルロン酸ナトリウムまたはHA誘導体の添加は、活性成分の生物学的利用能を更に増大させることも、驚異的にも見出された。
【0030】
本発明に用いられるHAは、いかなる入手源、たとえばニワトリの鶏冠からの抽出[欧州特許出願公開第0138572号公報(EP 0138572)]、発酵[欧州特許第出願公開第0716688号公報(EP 0716688)]または技術的手段[イタリー国特許出願第94A000042号公報(PD94A000042)]に由来してもよく、400〜3x106Da、特に400〜1x106Da、はるかに特別には400〜200,000Daの分子量を有する。
【0031】
用いることができるHA誘導体を、下記に列挙する:
(1)50〜730KDa[欧州特許出願公開第0138572号公報(EP 0138572)]の分子量、または高い分子量(750〜1,230KDa[欧州特許出願公開第535200号公報(EP 535200)])を有する、有機および/もしくは無機塩基と塩形成したHA;
(2)Hyaff:脂肪族、芳香脂肪族、脂環式、芳香族、環および複素環系列のアルコールとの、用いたアルコールの種類および鎖長に応じて変動し得るエステル化百分率でのHAエステル[欧州特許出願公開第216453号公報(EP 216453)];
(3)Hyadd:脂肪族、芳香脂肪族、脂環式、芳香族、環および複素環系列のアミンとのHAアミド[欧州特許出願公開第1095064号公報(EP 1095064)];
(4)第4度までの硫酸化度を有する、O−硫酸化されたHA誘導体[欧州特許出願公開第0702699号公報(EP 0702699)];
(5)ACP:HAのインナーエステル[欧州特許出願公開第0341745号公報(EP 0341745)]。
【0032】
ヒアラスチン(Hyalastine)として知られる画分、すなわち50〜200kDaの分子量を有するヒアルロン酸の画分が好ましい。
【0033】
ヒアルロン酸およびその塩は、増粘剤として作用し、安定性および生物学的利用能に関して改善された特徴性を保証する。
【0034】
本発明によるマイクロエマルションは、α−トコフェロール、アルキルパラベンおよびその他の賦形剤のような、慣用される抗酸化剤および防腐剤を含有してもよい。
【0035】
活性成分の重量百分率は、0.01〜0.5%、好ましくは0.05〜0.15%にわたることができる一方、レシチンまたはホスファチジルコリンの重量百分率は、代表的には、約10〜約15%である。水相は、代表的には、マイクロエマルションの、約0.5〜2重量%を構成する。ヒアルロン酸ナトリウムは、増粘剤として、0.001〜0.01重量%の百分率で加えることができる。
【0036】
本発明によるマイクロエマルションは、油性相中のリン脂質乳化剤の溶液を同じ油性相中のレチノイド溶液に加えること、ならびにその後、ヒアルロン酸、その塩もしくは誘導体、防腐剤、EDTAおよびその他の成分を含有することもある、水溶液を加えることを含む方法によって製造することができる。
【0037】
実施例1〜3
フェンレチニドのマイクロエマルション
製造法
α−トコフェロールを、少量のパルミチン酸イソプロピル(IPP)に可溶化した。ダイズホスファチジルコリンを、残量のパルミチン酸イソプロピルに、70℃で撹拌しつつ可溶化して、清澄で透明な溶液を得た。
【0038】
次いで、プロピルパラベンを加え、可溶化が完了するまで撹拌を継続した。
【0039】
溶液を冷却し、パルミチン酸イソプロピル中のα−トコフェロールの溶液を加え、得られた溶液を、穏やかに撹拌しつつ混合した。
【0040】
得られた溶液に、活性成分を可溶化した。
【0041】
メチルパラベンを純水に80℃で可溶化して、水相を調製した。溶液を室温まで冷却し、EDTA四ナトリウムおよびヒアルロン酸ナトリウム塩を、撹拌しつつ可溶化した。
【0042】
水溶液をパルミチン酸イソプロピルの油性溶液に加え、当初は濁っていた得られた系を、達成された粘度を有する、清澄で透明なエマルションが得られるまで、撹拌下に保った。
【0043】
定性的および定量的な組成
上記の方法によって得られたマイクロエマルションの組成物は、ヒアルロン酸ナトリウムを含有するか否かに応じて異なる[W]/[lec]比を有しており、それを下記に報告する:
【0044】
実施例1−IPP2Hyal([W]/[lec]:2)
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2−IPP3CHyal([W]/[lec]:3)
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3−IPP3C’Hyal([W]/[lec]:3)
【0049】
【表3】

【0050】
実施例4
流動学的特徴性
製造されたゲルマイクロエマルションを特徴付けるために、動的粘度の測定を実施した;特に、粘度測定は、剪断速度値を増大させながら適用することによって実施して、それから、毎秒70の剪断率での粘度値を外挿した(測定は25℃で実施した)。
【0051】
図1は、0.05重量%という活性成分(フェンレチニド)濃度における、パルミチン酸イソプロピル(IPP)を基剤とするゲルマイクロエマルションの、含水量([W]/[lec]=1、2および3)に依存する粘度の傾向を示す。
【0052】
IPP1([W]/[lec]=1)およびIPP2([W]/[lec]=2)のゲルマイクロエマルションの粘度は、あまりにも低いと思われるが、IPP3のゲルマイクロエマルション(3という[W]/[lec]比で表される含水量を有するもの)は、局所的適用について優れた粘度および稠度特徴性を有すると見なされる。
【0053】
図2は、同じ比[W]/[lec](=3)、および薬物フェンレチニドとしての濃度(0.05%)を有するが、異なる定性/定量的組成を有し、意図される使用に理想的であると思われる粘度および稠度の特徴性を得るために、ヒアルロン酸ナトリウム塩(ヒアラスチン画分)を増粘剤として含有する、パルミチン酸イソプロピル(IPP)を基剤とするゲルマイクロエマルションの粘度傾向を示す。
【0054】
図3は、フェンレチニド濃度によれば原型IPP3C’として分類されるマイクロエマルション(4HPR)の粘度傾向を示すものであって、フェンレチニドの用量が増大するにつれて、やや劣る粘度および稠度の特徴性が観察される。
【0055】
実施例5
フェンレチニドの拡散動態
本発明によるマイクロエマルション中のフェンレチニドの拡散または浸透(膜越しの)動態を、慣用の配合物、たとえば、イタリア国薬局方(F.U.)最新版に記載された「セトマクロゴル(cetomacrogol)を含有する軟膏基剤」および「セトマクロゴルを含有する脂肪性クリーム基剤」と比較するために、in vitro研究を実施した。
【0056】
セルロース膜に関連する「フランツ(Franz)拡散セル」を用いて、異なる配合物中のフェンレチニドの拡散動態を調べた。
【0057】
セルは、一方が他方の上にある二つのガラス区画からなった。セルの内径は、1cmであった(0.78cm2の面積に等しい)。
【0058】
フェンレチニドを含有する配合物を、上部区画に入れ、底部区画を、メタノールで構成される受容体相で満たし、セルの底部に適合させた磁気「追従」(magnetic follower)を用いて、定常的な撹拌下に保った。
【0059】
予め受容体相で湿らせた膜を、2区画の間に置いた。気泡の形成を避けるよう注意しつつ、セルの2区画を組み立てた。実験は、すべて、おなじ条件下で、すなわち、遮光し、25℃の温度で、底部区画を32℃に定温維持しつつ、4セルを並行して用いて、実施した。
【0060】
柔軟なテフロン管を有する注射筒を用いて、予め設定した間隔(30分〜8時間)で、受容体相のサンプルを採取し:次いで、各サンプルを、等量の受容体相と置き換えた。
【0061】
サンプルは、逆相HPLCクロマトグラフィーを用いて、そのフェンレチニド含量について分析した。面積単位あたりでの放出されたフェンレチニドの総量(μg/cm2)を、クロマトグラフィー分析の結果から算出した。
【0062】
試験は、各配合物について四重に繰り返した。次いで、平均値を算出し、時で表した時間の関数としてグラフに示した。
【0063】
線形回帰分析の計算により、試験点を外挿して、「y=mx+q」形式の直線を得た。直線の勾配を表す、角度係数mは、試験流「Js」に相当する。
【0064】
Js=CxJn(式中、Cは、mg/mlで表した薬物の濃度である)であることが知られている。
【0065】
分析されたすべての配合物中のフェンレチニド濃度は、1mg/mlであったことから、「Js」は「Jn」に等しい。「Jn」は、拡散係数、すなわち、薬物が膜を介して浸透する流速を表す。
【0066】
図4は、ゲルマイクロエマルションIPP3CおよびIPP3C’(ヒアルロン酸ナトリウム塩なし、ヒアラスチン画分)中のフェンレチニドの拡散または浸透動態(吸収速度)を、慣用の配合物(「セトマクロゴルを含有する軟膏基剤」および「セトマクロゴルを含有する脂肪性クリーム基剤」)中のフェンレチニドとの比較によって示し;得られた直線の角度係数は、拡散係数「Jn」の値を表す。
【0067】
図5は、ヒアルロン酸ナトリウム塩を含有する同じゲルマイクロエマルション(ヒアラスチン画分)中のフェンレチニドの拡散または浸透動態(吸収速度)を、慣用の配合物(「セトマクロゴルを含有する軟膏基剤」および「セトマクロゴルを含有する脂肪性クリーム基剤」)中のフェンレチニドとの比較によって示す。
【0068】
図6は、ヒアルロン酸ナトリウム塩(ヒアラスチン画分)ありまたはなしでの、ゲルマイクロエマルションIPP3CおよびIPP3C’中のフェンレチニドの拡散または浸透動態(吸収速度)を示す。
【0069】
ヒアルロン酸ナトリウム塩(ヒアラスチン画分)の不在または存在下でのゲルマイクロエマルションのタイプIPP3([W]/[lec]=3)中、および慣用の配合物中で実施した、フェンレチニドの拡散(もしくは浸透、または吸収)係数「Jn」を、下表中に整理して示す:
【0070】
【表4】

【0071】
得られた試験結果から、下記の結論を引き出すことができる:
【0072】
・リン脂質(ダイズホスファチジルコリン)を基剤とするゲルマイクロエマルションとして運ばれるフェンレチニドの拡散または浸透の動態(吸収速度)は、慣用の配合物(W/Oクリーム剤または軟膏)中で運ばれるときの薬物のそれより、顕著に大きい;すなわち、ゲルマイクロエマルションとして運ばれるフェンレチニドの拡散係数「Jn」は、軟膏および/またはW/Oクリーム剤で得られたそれより、顕著に大きい(前者より約79倍、後者より約24倍高い)。
【0073】
・驚異的にも、リン脂質(ダイズホスファチジルコリン)を基剤とするゲルマイクロエマルションとして運ばれるフェンレチニドの拡散または浸透動態(吸収速度)は、配合物中のヒアルロン酸ナトリウム塩(ヒアラスチン画分)の存在によって顕著に増加して、そのため、それは、経皮吸収を促進する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ゲルマイクロエマルションの粘度の傾向を示すグラフである。
【図2】ゲルマイクロエマルションの粘度の傾向を示すグラフである。
【図3】ゲルマイクロエマルションの粘度の傾向を示すグラフである。
【図4】ゲルマイクロエマルション中のフェンレチニドの拡散または浸透動態を示すグラフである。
【図5】ゲルマイクロエマルション中のフェンレチニドの拡散または浸透動態を示すグラフである。
【図6】ゲルマイクロエマルション中のフェンレチニドの拡散または浸透動態を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてレチノイドおよびリン脂質乳化剤を含有する、油中水(W/O)マイクロエマルション。
【請求項2】
リン脂質乳化剤がダイズホスファチジルコリンおよびダイズレシチンから選ばれる、請求項1記載のマイクロエマルション。
【請求項3】
油性相がC10〜C22脂肪酸のアルキルエステルからなる、請求項1または2記載のマイクロエマルション。
【請求項4】
油性相がパルミチン酸イソプロピルからなる、請求項3記載のマイクロエマルション。
【請求項5】
レチノイドがイソトレチノイン(13−cis−レチノイン酸)、タザロテンおよびフェンレチニドから選ばれる、請求項1〜4のうち一項以上に記載のマイクロエマルション。
【請求項6】
レチノイドがフェンレチニドである、請求項5記載のマイクロエマルション。
【請求項7】
ヒアルロン酸ナトリウムも含有する、請求項1〜6のうち一項以上に記載のマイクロエマルション。
【請求項8】
・50〜730KDaの分子量、または高い分子量(750〜1,230KDa)を有する有機および/もしくは無機塩基と塩を形成したHA;
・HAと、脂肪族、芳香脂肪族、脂環式、芳香族、環および複素環系列のアルコールとのエステル;
・HAと、脂肪族、芳香脂肪族、脂環式、芳香族、環および複素環系列のアミンとのアミド;
・HAの、第4度までの硫酸化度を有する、O−硫酸化された誘導体;
・HAのインナーエステル
から選ばれるヒアルロン酸の誘導体を含有する、請求項1〜7のうち一項以上に記載のマイクロエマルション。
【請求項9】
抗酸化剤および防腐剤も含有する、請求項1〜8のうち一項以上に記載のマイクロエマルション。
【請求項10】
α−トコフェロールおよびパラベンを含有する、請求項9記載のマイクロエマルション。
【請求項11】
請求項1〜10に記載されたマイクロエマルションを含む医薬組成物。
【請求項12】
化学防御活性を有する医薬製品を製造するための、請求項1〜10に記載されたマイクロエマルションの使用。
【請求項13】
請求項1〜10に記載のマイクロエマルションを製造する方法であって、油性相中のリン脂質乳化剤の溶液を同じ油性相中のレチノイド溶液に加えるか、またはその後、ヒアルロン酸、その塩もしくは誘導体、防腐剤、EDTAおよびその他の成分を含有することもある水溶液を加える工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−508339(P2007−508339A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534647(P2006−534647)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011236
【国際公開番号】WO2005/039532
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591057175)フィディーア・ファルマチェウティチ・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】FIDIA FARMACEUTICI S.p.A.
【Fターム(参考)】