説明

レドックス燃料電池システムおよび燃料電池車両

【課題】エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システム1を提供する。
【解決手段】アノードに供給された燃料ガスGfuと、カソードに供給されたカソード溶液Lcaとを用いて発電するレドックス燃料電池2と、カソードを通流後のカソード溶液Lcaを、酸化剤Goxで酸化させることで再生する再生塔12と、燃料ガスGfuを貯蔵する水素タンク4と、燃料ガスGfuを水素タンク4からアノードに供給する燃料ガス供給路6と、カソード溶液Lcaを再生塔12とカソードの間で循環させるカソード溶液循環路11と、酸化剤Goxを再生塔12に供給する酸化剤供給路14と、レドックス燃料電池2が発電した電力により駆動される駆動モータ15とを備えるレドックス燃料電池システム1であって、駆動モータ15がレドックス燃料電池2によらず回転して発電した回生電力は、レドックス燃料電池2に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックス燃料電池を備えたレドックス燃料電池システムと、それを搭載した燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックス燃料電池システムとしては、アノードに供給される水素ガスと、カソードに供給されるカソード溶液とを用いて発電するものが提案されている(特許文献1等参照)。カソード溶液は、カソードに供給され還元されるが、反応チャンバ(再生塔)において酸化剤によって再酸化されることで、カソードに循環供給されることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−541127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レドックス燃料電池システムを車載する場合には、車両の運動エネルギを、回生エネルギとして、レドックス燃料電池システムで回収できれば、燃料電池車両としてのエネルギ効率を向上できると考えられる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システムを提供し、さらに、これを搭載しエネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アノードに供給された燃料ガスと、カソードに供給された非揮発性のカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生する再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノードに供給する燃料ガス供給路と、
前記カソード溶液を前記再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記再生装置に供給する酸化剤供給路と、
前記レドックス燃料電池が発電した電力により駆動される駆動モータと
を備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記駆動モータが前記レドックス燃料電池によらず回転して発電した回生電力は、前記レドックス燃料電池に供給されることを特徴としている。
【0007】
これによれば、レドックス燃料電池システムに回生電力が供給されるので、アノードでは燃料ガス(水素)が再生(生成)され、カソードではカソード溶液が再生される。回生電力(回生エネルギ)が、再生された燃料ガスと再生されたカソード溶液として貯蔵することが可能になるので、レドックス燃料電池システムのエネルギ効率を向上させることができる。また、回生電力を蓄電するために用いられるレドックス燃料電池以外のバッテリ等については、小型化あるいは廃止することが可能となる。
【0008】
また、本発明では、前記アノードを通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノードに戻す燃料ガス循環路を備え、
前記回生電力が前記レドックス燃料電池に供給されることにより前記アノードで発生する前記燃料ガスが、前記燃料ガス循環路に貯蔵されることが好ましい。
【0009】
これによれば、再生した燃料ガスを排気することなく回収でき、レドックス燃料電池システムのエネルギ効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明では、前記燃料ガス循環路に、前記燃料ガスを貯蔵することができる燃料ガス貯蔵手段を備えることが好ましい。
【0011】
これによれば、回生により再生された燃料ガスが多い場合にも回収できる。
【0012】
また、本発明では、前記駆動モータに接続された蓄電手段を備え、
前記アノードと前記カソードの間の電圧が上昇して前記所定電圧に達した場合は、前記回生電力を前記蓄電手段に供給することが好ましい。
【0013】
これによれば、回生電力が大きくアノードとカソードの間の電圧が上昇しても、回生電力を蓄電手段に供給することで、その電圧の上昇を抑制することができ、カソード溶液中の水が電気分解されるのを防ぐことができる。水が電気分解されると、カソード溶液中に酸素が発生し、プロトン交換膜(PEM)を劣化させる。水の電気分解は、所定電圧以上である場合に生じるので、所定電圧に達した場合には、回生電力を蓄電手段に供給することで、エネルギ効率を高く維持したまま、水の電気分解を抑制することができる。
【0014】
また、本発明では、前記燃料ガス供給路に設けられ、前記燃料ガスタンクから前記アノードへの前記燃料ガスの供給を遮断する遮断弁と、
前記燃料ガス循環路に設けられ、前記燃料ガス循環路内の圧力を検知する圧力検知手段とを備え、
前記回生電力が前記レドックス燃料電池に供給開始された後又は前記回生電力の供給後に、前記遮断弁を閉じて、前記燃料ガスタンクから前記アノードへの前記燃料ガスの供給を遮断し、前記燃料ガス循環路に貯蔵された前記燃料ガスを用いて発電し、前記燃料ガス循環路内の圧力を下げ、
前記燃料ガス循環路内の圧力が所定圧力まで下がると、前記遮断弁を開いて前記燃料ガスタンクから前記アノードへ供給される前記燃料ガスを用いて発電することが好ましい。
【0015】
これによれば、優先的に再生された燃料ガスが用いられるので、次の回生の際までに、燃料ガス循環路内を空けておくことができる。次の回生の際に発生した回生電力も、燃料ガスに変換して、燃料ガス循環路内に貯蔵することができ、レドックス燃料電池システムのエネルギ効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、前記酸化剤供給路を介して前記再生装置に供給される前記酸化剤を昇圧する酸化剤昇圧手段を備え、
前記アノードと前記カソードの間の電圧が所定電圧以上である場合に、前記回生電力を前記酸化剤昇圧手段に供給し、前記酸化剤を昇圧することが好ましい。
【0017】
これによれば、酸化剤が昇圧されると、その酸化剤は再生装置に供給され、再生装置に供給された酸化剤は、カソード溶液を再生する。回生電力(回生エネルギ)が、再生されたカソード溶液として貯蔵されることになるので、レドックス燃料電池システムのエネルギ効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明は、本発明に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両であることを特徴としている。
【0019】
これによれば、エネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システムを提供することができ、さらに、これを搭載しエネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレドックス燃料電池システムの発電のメカニズムを説明するための図である。
【図3】レドックス燃料電池の発電充電特性を示すグラフである。
【図4】レドックス燃料電池システムの通常の発電時(圧力P≦所定圧力)の状態を示す構成図である。
【図5】レドックス燃料電池システムの回生(充電)時(電圧V<所定電圧)の状態を示す構成図である。
【図6】レドックス燃料電池システムの回生(充電)時(電圧V≧所定電圧)の状態を示す構成図である。
【図7】レドックス燃料電池システムの回生後の発電時(圧力P>所定圧力)の状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の実施形態に係るレドックス燃料電池システムは、燃料電池車両(自動車)に搭載されることを想定しているが、船舶や、自動二輪車、定置用発電装置などに搭載されてもよいのはもちろんである。
【0023】
図1に、本発明の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。燃料電池車両100では、車輪を駆動させる駆動モータ(MOT)15が、パワーディストリビューションユニット(PDU)16を介して、レドックス燃料電池2(レドックス燃料電池システム1)に接続している。MOT15は、レドックス燃料電池2が発電し供給する電力で、駆動(回動)し、車輪を回動させることで、燃料電池車両100を走行させることができる。
【0024】
レドックス燃料電池システム1は、主として、レドックス燃料電池2と、水素タンク(燃料ガスタンク)4と、燃料ガス供給路6と、燃料ガス循環路7と、カソード溶液循環路11と、再生塔(再生装置)12と、酸化剤供給路14と、エアポンプ(A/P:補機、酸化剤昇圧手段)21と、制御部3とを有している。
【0025】
レドックス燃料電池2は、アノード2d(図2参照)に供給された燃料ガスGfu(例えば、水素ガス)と、カソード2b(図2参照)に供給された非揮発性のカソード溶液Lcaとを用いて発電する。カソード溶液Lcaとしては、例えば、バナジウム(V)を希硫酸に溶解させた電解液(バナジウム溶液)や、N−ドナーリガンドの溶液(特表2009-544132号公報参照)や、変性フェロセン溶液(特表2009-544131号公報参照)等を用いることができる。電圧検知手段2fは、レドックス燃料電池2のアノード2d(図2参照)とカソード2b(図2参照)の間の電圧Vを検知する。
【0026】
水素タンク4には、燃料ガス(水素)Gfuが、高圧に圧縮されて貯蔵されている。
【0027】
燃料ガス供給路6は、水素タンク4から、高圧の燃料ガス(水素)Gfuを減圧して、レドックス燃料電池2のアノード2d(図2参照)に供給する。燃料ガス供給路6には、水素タンク4からの燃料ガス(水素)Gfuの供給を遮断する遮断弁5が設けられている。
【0028】
燃料ガス循環路7は、レドックス燃料電池2のアノード2d(図2参照)を通流後の燃料ガス(水素)Gfuを、循環させ、燃料ガス供給路6の遮断弁5よりレドックス燃料電池2の側に、すなわち、レドックス燃料電池2のアノード2dに、戻している。燃料ガス循環路7には、レドックス燃料電池2で再生された燃料ガス(水素)Gfuをいったん貯蔵する燃料ガス貯蔵手段としてのバッファタンク8又は配管が設けられている。また、燃料ガス循環路7には、燃料ガス循環路7内の圧力Pを検知する圧力検知手段7aと、燃料ガス循環路7内の燃料ガス(水素)Gfuを圧送し循環させる循環ポンプ9とが設けられている。循環ポンプ9は、MOT15に並列に接続されている。詳細には、循環ポンプ9に接続するPDU9aは、MOT15に接続するPDU16に並列に接続されている。なお、循環ポンプ9の換わりにエジェクタ(エゼクタ)を用いてもよい。これによれば、燃料ガス循環路7内から燃料ガス供給路6へ燃料ガス(水素)Gfuを吸引でき、燃料ガス循環路7内の燃料ガス(水素)Gfuを循環させることができる。
【0029】
カソード溶液循環路11は、カソード溶液Lcaを、再生塔12とレドックス燃料電池2のカソード2b(図2参照)の間で循環させる。カソード溶液循環路11には、レドックス燃料電池2のカソード2b(図2参照)を通流後の還元されたカソード溶液Lcaを、酸化剤Gox(例えば、酸素や空気)で酸化させることで再生する再生塔12が設けられている。また、カソード溶液循環路11には、カソード溶液循環路11内のカソード溶液Lcaを圧送し循環させる循環ポンプ13が設けられている。循環ポンプ13は、MOT15に並列に接続されている。詳細には、循環ポンプ13に接続するPDU13aは、MOT15に接続するPDU16に並列に接続されている。なお、図1において、カソード溶液循環路11は太い破線で示されている。図4〜図7でも同様に示している。
【0030】
酸化剤供給路14は、エアポンプ(A/P(エアコンプレッサ):補機、酸化剤昇圧手段)21で大気吸入した酸化剤Goxを、再生塔12に供給する。酸化剤Goxは、再生塔12内において、カソード溶液Lcaに噴射され吹き込まれ、カソード溶液Lcaを酸化する。そして、酸化剤Goxは、再生塔12から、排気路24を経由して大気中に排出される。エアポンプ21は、酸化剤Goxを、大気から吸入して、圧縮・昇圧し、酸化剤供給路14を介して、再生塔12へ圧送する。エアポンプ21は、MOT15に並列に接続されている。詳細には、エアポンプ21に接続するエアポンプパワーディストリビューションユニット(A/P PDU)22は、MOT15に接続するPDU16に並列に接続されている。
【0031】
レドックス燃料電池2のアノード2d(図2参照)とカソード2b(図2参照)とには、PDU16を介して、MOT15が接続され、また、A/P PDU22を介して、エアポンプ21が接続され、さらに、PDU13aを介して、循環ポンプ13が接続され、さらに、PDU9aを介して、循環ポンプ9が接続している。
【0032】
図2に、本発明の実施形態のレドックス燃料電池システム1における、特に、レドックス燃料電池2と再生塔12における、発電のメカニズムを説明するための図を示す。燃料ガスGfuは、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eを通流することで、アノード側流路2eに面しているアノード2dに到達することができる。アノード2dとカソード2bの間には、プロトン交換膜(PEM)2cが設けられている。カソード溶液Lcaは、レドックス燃料電池2のカソード側流路2aを通流することで、カソード側流路2aに面しているカソード2bに到達することができる。レドックス燃料電池2では、アノード2dとカソード2bとでプロトン交換膜(PEM)2cを挟持してなる単セルを複数積層すれば、所望の電圧に高めて取り出すことができる。
【0033】
レドックス燃料電池2のアノード側流路2eに、燃料ガス(水素)Gfuが通流すると、アノード2dに燃料ガス(水素)Gfuが供給される。アノード2dにおいては、燃料ガス(水素H)Gfuから、水素イオン(H)と電子(e)が生成される(H→2H+2e)。電子(e)は、アノード2dから、負荷となるPDU16等およびMOT15等が接続された配線を経由して、カソード2bへ移動する。この電子(e)の移動が、いわゆる、発電(現象)となる。水素イオン(H)は、アノード2dから、プロトン交換膜(PEM)2cを経由して、カソード2bへ移動する。プロトン交換膜(PEM)2cでは、水素イオン(H)が、アノード2d側からカソード2b側へ通過する。
【0034】
レドックス燃料電池2のカソード側流路2aに、カソード溶液Lcaが通流すると、カソード2bにカソード溶液Lcaが供給される。カソード2bには、カソード溶液Lcaから二酸化バナジウムイオン(VO)が供給され、プロトン交換膜(PEM)2cから水素イオン(H)が供給され、配線から電子(e)が供給される。これらにより、カソード2bにおいて、二酸化バナジウムイオン(VO)と、水素イオン(H)と、電子(e)とから、酸化バナジウムイオン(VO2+)と、水(HO)とが生成される(VO+2H+e→VO2++HO)。
【0035】
カソード2bで生成した酸化バナジウムイオン(VO2+)と水(HO)は、カソード側流路2aを通流するカソード溶液Lcaに溶解等して含まれて、カソード溶液Lcaと共に再生塔12に流れ込む。また、再生塔12には、酸化剤(空気、酸素O)Goxが供給されている。酸化剤(空気、酸素O)Goxは、カソード溶液Lca中に吹き込まれている。これらにより、再生塔12において、酸化バナジウムイオン(VO2+)と、酸素(O)とから、二酸化バナジウムイオン(VO)が生成(再生)される(VO2++(1/2)O→VO)。再生した二酸化バナジウムイオン(VO)は、レドックス燃料電池2と再生塔12の間を循環するカソード溶液Lcaと共に、再び、レドックス燃料電池2のカソード側流路2a(カソード2b)に供給される。再生塔12における化学反応と、カソード2bにおける化学反応と、アノード2dにおける化学反応とを合わせたトータル反応は、酸素(O)と水素(H)とから、水(HO)が生成される反応となっている((1/2)O+H→HO)。また、カソード溶液Lca中の水(HO)は、吹き込まれた酸化剤(空気、酸素O)Gox中に溶け込み、酸化剤(空気、酸素O)Goxと共に、大気中に、排気路24を経由して放出される。
【0036】
図3に、レドックス燃料電池2の発電充電特性のグラフを示す。グラフの横軸は、レドックス燃料電池2のカソード2bからアノード2dへと負荷(MOT15)を経由して流れる電流、すなわち、レドックス燃料電池2の発電電流等を示している。横軸(電流)の0(ゼロ)は、電流が流れていない状態を示している。この0(ゼロ)状態の右側は、発電領域になっている。発電領域では、レドックス燃料電池2が発電している状態にあり、レドックス燃料電池2から電力が出力される。0(ゼロ)状態の左側は、充電領域になっている。充電領域では、レドックス燃料電池2が充電している状態にあり、回生電力(回生エネルギ)をレドックス燃料電池2に蓄電することができる。
【0037】
グラフの縦軸は、レドックス燃料電池2のカソード2bとアノード2dの間の電圧Vを示している。この電圧Vは、電圧検知手段2fによって検知することができる。発電時には(電流が発電領域にある場合には)、電流が大きくなる(0(ゼロ)状態から離れる)程、電圧Vが小さくなる傾向にある。充電時には(電流が充電領域にある場合には)、電流が大きくなる(0(ゼロ)状態から離れる)程、電圧Vが大きくなる傾向にある。そして、充電時において、電圧Vが所定電圧以上になると、酸化バナジウムイオン(VO2+)や二酸化バナジウムイオン(VO)等を溶解している溶媒である水の電気分解が生じる。水が電気分解されると、カソード溶液Lca中に酸素が発生し、プロトン交換膜(PEM)2cを劣化させるので、本実施形態では、充電は、電圧Vが所定電圧未満の範囲で実施される。
【0038】
図4に、レドックス燃料電池システム1の通常の発電時(圧力P≦所定圧力)の状態を示す。
【0039】
通常の発電時には、制御部3によって、遮断弁5は、開弁されている。これにより、レドックス燃料電池2に燃料ガス(水素)Gfuが供給され発電している。なお、制御部3は、燃料電池車両100に設けられたアクセルペダル(図示省略)やブレーキペダル(図示省略)が、運転者によって踏み込まれているか否かを判定することで、現在が、発電時か、充電(回生)時かを判定することができる。例えば、ブレーキペダル(図示省略)が、運転者によって踏み込まれている場合は、現在が充電(回生)時であると判定し、アクセルペダル(図示省略)が、運転者によって踏み込まれている場合は、現在が発電時であると判定する。すなわち、現在が発電時であることは、制御部3によって判定することができる。
【0040】
なお、制御部3は、充電(回生)時のMOT15による目標回生発電量を、ブレーキペダルの踏み込み量と燃料電池車両100の車速とに基づいて算出する要求制動トルクに見合うように設定する。制御部3は、その目標発電量を満足するように、PDU16をオン・オフ制御する。充電(回生)時に、インバータであるPDU16をオン制御(スイッチング制御)すると、発電機としてのMOT15が、負荷としてのレドックス燃料電池2に接続され、回生電力が蓄電される一方で燃料電池車両100には制動力が作用する。PDU16をオフ制御すれば、燃料電池車両100に制動力は作用しない。制御部3は、PDU16に対するオン制御の時間とオフ制御の時間の比率を制御(オン・オフ制御)することで、MOT15による目標回生発電量を満足させることができる。回生発電した電力は、レドックス燃料電池2に供給される。
【0041】
また、制御部3は、発電時のレドックス燃料電池2による目標発電量を、アクセルペダルの踏み込み量と燃料電池車両100の車速などに基づいて算出する要求駆動トルクに見合うように設定するMOT15の要求電力と、エアポンプ21等の補機の要求電力との和の電力に基づいて設定する。制御部3は、その目標発電量を満足するように、PDU16、9a、13aとA/P PDU22をオン・オフ制御する。発電時に、PDU16、9a、13aとA/P PDU22をオン制御すると、レドックス燃料電池2が、負荷としてのMOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13に接続され、MOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13が駆動する。PDU16、9a、13aとA/P PDU22をオフ制御すれば、MOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13は駆動しない。制御部3は、PDU16、9a、13aとA/P PDU22に対するオン制御の時間とオフ制御の時間の比率を制御(オン・オフ制御)することで、レドックス燃料電池2による目標発電量を満足させることができる。
【0042】
図4に示すように、通常の発電時には、制御部3によって、PDU16、9a、13aとA/P PDU22に対するオン・オフ制御が実施され、レドックス燃料電池2が発電した電力が、MOT15と循環ポンプ13とエアポンプ21と循環ポンプ9に供給され、レドックス燃料電池2が発電した電力で、MOT15と循環ポンプ13とエアポンプ21と循環ポンプ9が駆動する。MOT15の駆動で燃料電池車両100が走行する。循環ポンプ13の駆動で、カソード溶液Lcaが循環し、エアポンプ21の駆動で、酸化剤Goxが再生塔12に供給され、カソード溶液Lcaが再生され、循環ポンプ9の駆動で、燃料ガス(水素)Gfuが循環しながらレドックス燃料電池2に供給されるので、レドックス燃料電池2の発電が維持される。
【0043】
図5に、レドックス燃料電池システム1の回生(充電)時(電圧V<所定電圧)の状態を示す。前記したように、現在が回生(充電)時であることは、制御部3によって判定することができる。また、制御部3は、図3に示した所定電圧を予め記憶しておき、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが、所定電圧以上か否かを判定する。具体的には、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが、所定電圧以上でない(未満の)場合(電圧V<所定電圧)は、図5に示す状態になるように、制御部3が制御する。電圧検知手段2fで検知される電圧Vが、上昇して所定電圧に達し、所定電圧以上である場合(電圧V≧所定電圧)は、後記する図6に示す状態にして、回生電力の一部をレドックス燃料電池2に蓄電することなくエアポンプ21等で消費し、電圧Vを所定電圧未満に降下させるような制御を、制御部3が実施する。
【0044】
図5に示すように、回生(充電)時であって、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが所定電圧以上でない(未満の)場合には、制御部3によって、遮断弁5は、閉弁される。これにより、レドックス燃料電池2に水素タンク4から燃料ガス(水素)Gfuは供給されない。また、回生(充電)によって、レドックス燃料電池2で発生した燃料ガス(水素)Gfuは、水素タンク4に戻らない。
【0045】
また、回生により、MOT15で発電された回生電力は、制御部3がPDU16をオン・オフ制御することにより、レドックス燃料電池2に供給され、MOT15が発電した回生電力を、レドックス燃料電池2に充電する。この充電により、レドックス燃料電池2のアノード2dでは、燃料ガス(水素)が再生(生成)され、レドックス燃料電池2のカソード2bでは、カソード溶液Lcaが再生される。
【0046】
このカソード溶液Lcaの再生は、レドックス燃料電池2での再生であり、再生塔12で再生されているわけではない。このため、A/P PDU22は、制御部3によって、オフ制御され、エアポンプ21が停止され、酸化剤Goxは再生塔12に供給されない。なお、カソード溶液Lcaの全体を再生するために、制御部3によって、PDU13aはオン・オフ制御され、循環ポンプ13は駆動して、カソード溶液Lcaを循環させている。
【0047】
レドックス燃料電池2のアノード2dで再生(生成)された燃料ガス(水素)は、燃料ガス循環路7とバッファタンク8や配管(燃料ガス貯蔵手段)に貯蔵される。燃料ガス循環路7とバッファタンク8や配管(燃料ガス貯蔵手段)内の圧力Pは、上昇する。圧力Pは、圧力検知手段7aで検知することができる。なお、PDU9aは、制御部3によって、オフ制御され、循環ポンプ9は停止されている。
【0048】
図6に、レドックス燃料電池システム1の回生(充電)時(電圧V≧所定電圧)の状態を示す。前記したように、現在が回生(充電)時であることは、制御部3によって判定することができ、現在、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが、所定電圧以上である(電圧Vが上昇して所定電圧に達している)こと(電圧V≧所定電圧)も、制御部3によって判定することができる。
【0049】
図6に示すように、回生(充電)時であって、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが所定電圧以上である(電圧Vが上昇して所定電圧に達している)場合(電圧V≧所定電圧)には、制御部3によって、遮断弁5は、閉弁される。また、A/P PDU22は、制御部3によって、オン・オフ制御され、エアポンプ21が駆動され、酸化剤Goxは昇圧され再生塔12に供給される。再生塔12で、カソード溶液Lcaが再生される。そして、カソード溶液Lcaの全体を再生するために、制御部3によって、PDU13aはオン・オフ制御され、循環ポンプ13は駆動して、カソード溶液Lcaを循環させる。回生電力の一部をレドックス燃料電池2に蓄電することなくエアポンプ21と循環ポンプ13で消費することで、電圧Vを所定電圧未満に降下させることができる。これにより、レドックス燃料電池2で、水が電気分解されることはない。また、回生電力(回生エネルギ)が、再生されたカソード溶液として貯蔵されることになるので、レドックス燃料電池システムのエネルギ効率を向上させることができる。なお、PDU9aは、制御部3によって、オフ制御され、循環ポンプ9は停止されているが、電圧Vを所定電圧未満に降下していない場合には、制御部3はPDU9aをオン・オフ制御して循環ポンプ9を駆動し、回生電力を更に消費してもよい。
【0050】
また、図6に示すように、MOT15に、バッテリ(BATT:蓄電手段、キャパシタを含む)18を接続しておくことが好ましい。詳細には、バッテリ18に接続するVCU(電圧制御ユニット)19は、MOT15に接続するPDU16に並列に接続されている。
【0051】
充電(回生)時に、制御部3がVCU19をオン制御すると、発電機としてのMOT15が、バッテリ18に接続され、回生電力がバッテリ18に蓄電される。そして、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが降下する。制御部3がVCU19をオフ制御すれば、MOT15にバッテリ18は接続されず、回生電力はバッテリ18に蓄電されない。そして、電圧検知手段2fで検知される電圧Vが上昇する。制御部3は、VCU19に対するオン制御の時間とオフ制御の時間の比率を制御(オン・オフ制御)することで、電圧Vの上昇と降下を制御することができる。そして、電圧Vを所定電圧未満に降下させることができれば、レドックス燃料電池2で、水が電気分解されることはない。
【0052】
発電時に、制御部3がVCU19をオン制御すると、バッテリ18が、負荷としてのMOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13に接続され、MOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13が駆動する。バッテリ18に蓄電された電力が消費されることで、次の充電(回生)時にも、蓄電が可能になる。制御部3がVCU19をオフ制御すれば、MOT15、エアポンプ21、循環ポンプ9、13は、レドックス燃料電池2が発電した電力で駆動する。制御部3は、発電時の初期に、VCU19に対するオン制御を実施すし、その後、オフ制御を実施することで、バッテリ18に、次の充電(回生)時にも、確実に、蓄電することができる。
【0053】
図7に、レドックス燃料電池システム1の回生後の発電時(発電時初期:圧力P>所定圧力)の状態を示す。前記したように、現在が発電時であることは、制御部3によって判定することができる。また、制御部3は、所定圧力を予め記憶しておき、圧力検知手段7aで検知される圧力Pが、所定圧力より大きいか否かを判定する。所定圧力は、通常の発電時には上昇することがない下限値に設定される。ただ、回生後の発電時には、再生された燃料ガス(水素)Gfuによって、圧力Pが所定圧力より大きくなっている(圧力P>所定圧力)。そこで、制御部3は、現在が発電時であり、かつ、圧力Pが所定圧力より大きくなっている(圧力P>所定圧力)場合には、遮断弁5を閉じて、水素タンク4からレドックス燃料電池2への燃料ガス(水素)Gfuの供給を遮断したまま、燃料ガス循環路7やバッファタンク8等に貯蔵された燃料ガス(水素)Gfuをレドックス燃料電池2へ供給(循環)して発電する。燃料ガス循環路7等に貯蔵されていた燃料ガス(水素)Gfuが消費されるので、圧力Pが降下する。
【0054】
制御部3は、現在、圧力検知手段7aが検知している圧力Pを取得し、圧力Pが、所定圧力より大きいか否かを判定する。圧力Pが所定圧力より大きい場合(圧力P>所定圧力)は、まだ、燃料ガス循環路7等に燃料ガス(水素)Gfuが貯蔵されているとして、遮断弁5の閉弁を続行する。圧力Pが所定圧力以下の場合(圧力P≦所定圧力)は、もう、燃料ガス循環路7等に燃料ガス(水素)Gfuが貯蔵されていないとして、図4に示すように、遮断弁5を開弁する。遮断弁5を開弁することで、図4に示したような通常の発電に移行することができる。水素タンク4内の燃料ガス(水素)Gfuより優先的に、燃料ガス循環路7等に貯蔵された再生燃料ガスを消費するので、次の回生の際までに、燃料ガス循環路7内を空けておくことができ、次の回生の際に発生した回生電力も、燃料ガスGfuに変換して、燃料ガス循環路7内に貯蔵することができる。そして、レドックス燃料電池システム1のエネルギ効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 レドックス燃料電池システム
2 レドックス燃料電池
2a カソード側流路
2b カソード
2c プロトン交換膜(PEM)
2d アノード
2e アノード側流路
2f 電圧検知手段
3 制御部
4 水素タンク(燃料ガスタンク)
5 遮断弁
6 燃料ガス供給路
7 燃料ガス循環路
7a 圧力検知手段
8 バッファタンク又は配管(燃料ガス貯蔵手段)
9 循環ポンプ
9a PDU
11 カソード溶液循環路
12 再生塔(再生装置)
13 循環ポンプ
13a PDU
14 酸化剤供給路
15 MOT((車両)駆動モータ)
16 PDU
18 バッテリ(蓄電手段、キャパシタを含む)
19 VCU
21 A/P(エアポンプ(エアコンプレッサ):補機、酸化剤昇圧手段)
22 A/P PDU
24 排気路
100 燃料電池車両
Gfu 燃料ガス(水素)
Gox 酸化剤(酸素、空気)
Lca カソード溶液
n1、n2 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードに供給された燃料ガスと、カソードに供給された非揮発性のカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生する再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノードに供給する燃料ガス供給路と、
前記カソード溶液を前記再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記再生装置に供給する酸化剤供給路と、
前記レドックス燃料電池が発電した電力により駆動される駆動モータと
を備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記駆動モータが前記レドックス燃料電池によらず回転して発電した回生電力は、前記レドックス燃料電池に供給されることを特徴とするレドックス燃料電池システム。
【請求項2】
前記アノードを通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノードに戻す燃料ガス循環路を備え、
前記回生電力が前記レドックス燃料電池に供給されることにより前記アノードで発生する前記燃料ガスが、前記燃料ガス循環路に貯蔵されることを特徴とする請求項1に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガス循環路に、前記燃料ガスを貯蔵することができる燃料ガス貯蔵手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項4】
前記駆動モータに接続された蓄電手段を備え、
前記アノードと前記カソードの間の電圧が上昇して前記所定電圧に達した場合は、前記回生電力を前記蓄電手段に供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料ガス供給路に設けられ、前記燃料ガスタンクから前記アノードへの前記燃料ガスの供給を遮断する遮断弁と、
前記燃料ガス循環路に設けられ、前記燃料ガス循環路内の圧力を検知する圧力検知手段とを備え、
前記回生電力が前記レドックス燃料電池に供給開始された後又は前記回生電力の供給後に、前記遮断弁を閉じて、前記燃料ガスタンクから前記アノードへの前記燃料ガスの供給を遮断し、前記燃料ガス循環路に貯蔵された前記燃料ガスを用いて発電し、前記燃料ガス循環路内の圧力を下げ、
前記燃料ガス循環路内の圧力が所定圧力まで下がると、前記遮断弁を開いて前記燃料ガスタンクから前記アノードへ供給される前記燃料ガスを用いて発電することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項6】
前記酸化剤供給路を介して前記再生装置に供給される前記酸化剤を昇圧する酸化剤昇圧手段を備え、
前記アノードと前記カソードの間の電圧が所定電圧以上である場合に、前記回生電力を前記酸化剤昇圧手段に供給し、前記酸化剤を昇圧することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−226974(P2012−226974A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93609(P2011−93609)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】