説明

レピータ

【課題】GPSの搭載なしで基地局及び無線端末と同期を確立し、通信を中継するレピータを提供する。
【解決手段】レピータは、基地局と通信するドナー部と、無線端末と通信するリモート部とからなる。ドナー部は、基地局からの信号を受信して、受信した信号中のプリアンブルを特定して、基地局との同期を図る。これにより、基地局とレピータ間での通信のフレームの先頭が決定される。基地局とドナー部との同期が確立するとリモート部は、無線端末との同期のための手順を開始する。リモート部は、ドナー部からフレームの先頭のタイミングの情報を受け付けて、同じタイミングをフレームの先頭と定めて、無線端末が同期を確立する際に参照するプリアンブルを発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局からの信号を無線端末に中継するレピータに関し、特に同期の確立の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と無線端末との通信において、いずれの基地局からの無線信号も受信しにくい位置にある無線端末との通信を実行するためにレピータを設置することがある。レピータは、基地局からの信号を無線端末に中継するものであり、通常、基地局から受信した信号を増幅して、無線端末に出力する。
【0003】
基地局からレピータ、そしてレピータから無線端末との間で、通信を実行するには、基地局−レピータ間、及び、レピータ−無線端末間での同期を確立する必要がある。
【0004】
基地局と無線端末で通信を実行する場合には、図8に示すように、通信を実行する。図8中、Txは送信を意味し、Rxは受信を意味する。ここにレピータを挟んで、レピータに基地局からの信号を中継させることを考える。
【0005】
ここで基地局と無線端末の間にレピータを置いてレピータに基地局と無線端末間の通信を中継させる場合に、WiMAXの通信規格では、干渉を抑え、通信品質の向上を図るため、図9に示すように、送受信のフレームの先頭(図9時刻T0、T2)が上位から下位、つまり、基地局から無線端末までの経路において、ダウンリンク(図9中のDL)のタイミングと、アップリンク(図9中のUL)のタイミングとがそれぞれ一致することが規定されている。このフレームの先頭のタイミングを通信機器間でそろえるように決定することを同期を確立するという。なお、1回分のULとDLとDLの前に付加される同期用の信号であるプリアンブルとを併せて1フレームとし、1フレームの長さは5msecとなる。
【0006】
同期の確立を実施する手法としては、特許文献1に挙げる技術を用いることが考えられる。特許文献1の技術によれば、基地局、レピータ、無線端末それぞれにGPS(Global Positioning System)を搭載し、GPSから出力される超高精度時刻情報であるクロック(1clk/sec)の立ち上がりと所定数(200フレーム)毎のフレームの先頭とが一致するように同期を確立することができる。
【0007】
また、非特許文献1には、WiMAXにおける同期の確立についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−197108号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】インプレス標準教科書シリーズ WiMAX教科書、庄納 崇編著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1の手法を用いるとGPSを基地局及びレピータに設置しなければならないため、膨大なコストがかかるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明においては、GPSを搭載せずに、それでいてWiMAXの通信規格に準拠した基地局、及び無線端末と同期を確立することができるレピータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、基地局と無線端末間の通信を中継するレピータであって、基地局と通信を実行するドナー部と、無線端末と通信を実行するリモート部と、前記ドナー部と前記リモート部とが通信を行うドナーリモート間通信部とを備え、前記ドナー部が、前記基地局から送信されたプリアンブルを受信することにより前記基地局との同期を確立し、プリアンブルを含むフレームの発信の指示および該発信のタイミングを、前記ドナーリモート間通信部を介し前記リモート部へ伝え、前記リモート部は、前記指示および前記タイミングに基づき前記無線端末に向けてプリアンブルを発信することにより、前記プリアンブルが発信されるタイミングに同期した前記無線端末が行う位置登録に関わる情報を、前記ドナーリモート間通信部を介し、前記ドナー部が通信を実行する前記基地局へ伝達することにより、前記無線端末の位置登録を前記基地局へ行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述のような構成によって、レピータは、GPSを備えずとも基地局と同期を確立し、また、WiMAXの通信規格に反することなくプリアンブル信号を発信して、当該プリアンブル信号が無線端末で受信されることにより、無線端末との同期も確立し、通信を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】通信システムのシステム構成図である。
【図2】基地局の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図3】レピータの機能構成を示した機能ブロック図である。
【図4】無線端末の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図5】基地局とレピータのドナー部間の同期確立のシーケンスを示したフローチャートである。
【図6】同期確立時のレピータの動作を示したフローチャートである。
【図7】レピータのリモート部と無線端末間の同期確立のシーケンスを示したフローチャートである。
【図8】基地局と無線端末とが通信することを示す図である。
【図9】基地局と、レピータと、無線端末との通信を示す図である。
【図10】レピータのドナー部とリモート部とを離して配置する場合の配置例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるレピータについて図面を用いて説明する。
<実施の形態>
<構成>
図1は、本発明に係るレピータが含まれる通信システムのシステム構成を示したシステム構成図である。
【0016】
図1を見れば分かるように、通信システムは、基地局100と、中継器(以下「レピータ」という)200と、無線端末300とを含んで構成される。当該通信システムはWiMAX(IEEE802.16)の通信規格に従って通信を実行する。なお、本システム図では、それぞれ1台ずつしか示していないが、実際には通信システムにはより多くの基地局、レピータ、無線端末が含まれる。
【0017】
基地局は、レピータに信号を送信し、レピータは当該信号を中継して無線端末に送信する。また、無線端末はレピータに信号を送信し、レピータは当該信号を中継して基地局に信号を送信する。これにより、無線端末は、他の無線端末との通信が実行できる。
【0018】
当該通信の実行には、基地局とレピータ間、及び、レピータと無線端末間での同期の確立が必須である。本実施の形態では、当該同期の確立にあたり、GPSを用いずに確立する手法を示す。なお、本実施の形態においては、同期の確立の仕方についてを詳細に説明し、通信については、WiMAXの規格に従った通信を実行するものとして説明を割愛する。
【0019】
図2は、基地局100の機能構成を示した機能ブロック図である。図2に示すように基地局100は、上位通信部110と、制御部120と、下位通信部130と、記憶部140とを含んで構成される。
【0020】
上位通信部110は、電話網と接続しており(図示せず)他の基地局と通信を実行する機能を有する。
【0021】
制御部120は、基地局100の各部を制御する機能を有する。
【0022】
下位通信部130は、アンテナ131を含み、無線端末及びレピータと通信を実行する機能を有する。下位通信部130は、アンテナ131を介して、レピータ及び無線端末との同期を確立するために毎フレームごとにプリアンブル及びダウンリンク方向の通信に必要な周波数等の情報を含むDL−MAPと、アップリンク方向の通信に必要な周波数等の情報を含むUL−MAPとを含ませて発信している。
【0023】
記憶部140は、基地局100が動作上必要とするプログラムやデータを記憶する機能を有し、ネイバーリスト141を記憶している。ネイバーリスト141は、基地局100が同期を確立している無線端末あるいはレピータが他の基地局にハンドオーバーを実行する際にハンドオーバー先の候補として参照する基地局ならびにレピータの情報を示す情報である。
【0024】
以上が基地局100の説明である。
【0025】
次にレピータ200について説明する。
【0026】
図3は、レピータ200の機能構成を示した機能ブロック図である。図3に示すように、レピータ200は、ドナー部210とリモート部220とを含んで構成される。ドナー部210は、基地局100と通信を実行する機能を有する。リモート部220は、無線端末300と通信を実行する機能を有する。ドナー部210とリモート部220とは同一のクロックが供給されて動作している。
【0027】
ドナー部210は、第1通信部211と、起動制御部214とを含んで構成される。
【0028】
第1通信部211は、アンテナ212と第1同期確立部213とを含んで構成される。第1通信部211は、アンテナ212を介して基地局と通信する機能を有する。第1通信部211は、アンテナ212を介して基地局から受信した信号をリモート部220に伝達する機能を有する。また、リモート部220から伝達された信号をアンテナ212を介して基地局に送信する機能を有する。
【0029】
第1同期確立部213は、プリアンブルの参照信号を保持し、基地局との同期が確立していない状態において第1通信部で受信した信号の中から保持している参照信号と一致する信号を検出してプリアンブルを特定し、プリアンブルに後続するMAP情報(ダウンリンクの周波数帯域や、下りバーストの割当、アップリンクの周波数帯域や、上りバーストの割当等の情報を含む)に基づいて、基地局との同期を確立する機能を有する。
【0030】
起動制御部214は、第1同期確立部213が基地局と同期を確立し、基地局からプリアンブルが到来するタイミングとその周期を自己の動作クロックにおけるタイミングと周期に換算し、そのタイミングと周期を第2同期確立部223に通知し、同期に必要なプリアンブルを含むフレームの発信を指示する。
【0031】
リモート部220は、第2通信部221を含んで構成される。
【0032】
第2通信部221は、アンテナ222と第2同期確立部223とを含んで構成される。第2通信部221は、アンテナ222を介して、リモート部に接続されている無線端末と通信を実行する機能を有する。第2通信部221は、第1通信部211から伝達された信号を、アンテナ222を介して指定される無線端末に送信する機能を有する。また、アンテナ222を介して受信した信号を第1通信部211に伝達する機能を有する。
【0033】
第2同期確立部223は、起動制御部214から指示されたタイミングと同じタイミングでプリアンブルが発信されるように、第2通信部221が、各フレームごとに含ませるプリアンブルならびにMAP情報を生成し、生成された情報を含んだ信号を起動制御部214から通知されたタイミングで第2通信部221が発信する。当該プリアンブルならびにMAP情報が無線端末で受信されることにより、同期の諸手順が開始され、第2同期確立部223は、必要に応じて無線端末とネゴシエーションを行って同期を確立する。
【0034】
以上がレピータ200の説明である。
【0035】
ここから、無線端末300の機能構成について説明する。図4は、無線端末300の機能構成を示した機能ブロック図である。
【0036】
図4に示すように無線端末300は、通信部310と、表示部320と、音声処理部330と、操作部340と、記憶部350と、制御部360とを含んで構成される。
【0037】
通信部310は、アンテナ311から受け取った受信信号を受話音声信号及び受信データ信号に復調し、復調した受話音声信号や、受信データ信号を制御部360に出力する機能を有する。また、通信部310は、音声処理部330でA/D変換された送話音声信号、及び制御部360から与えられる電子メールなどの送信データ信号を変調し、通信用アンテナ311から出力する機能を有する。また、通信部310は、基地局もしくはレピータからの信号を受信し、基地局もしくはレピータと同期を確立する機能を有する。
【0038】
表示部320は、LCD(Liquid Crystal Display)などによって実現されるディスプレイを含み、制御部360の指示による画像をディスプレイに表示する機能を有する。
【0039】
音声処理部330は、通信部310から出力された受話音声信号をD/A変換してスピーカ332に出力する機能と、マイク331から取得した送話音声信号をA/D変換し、変換された信号を制御部360に出力する機能を有する。
【0040】
操作部340は、テンキー群、オンフックキー、オフフックキー、方向キー、決定キー、メールキー、サイドキーなどを含み、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作内容を制御部360に出力する機能を有する。
【0041】
記憶部350は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含んで構成され、小型ハードディスクや不揮発性メモリなどによって実現される。記憶部350は、無線端末300の動作上必要な各種データやプログラムの他、音楽データや画像データなどを記憶する機能を有する。記憶部350は、同期を確立した基地局もしくはレピータから受信したネイバーリストを記憶している。ネイバーリストは、無線端末300がハンドオーバーを実行する際に、通信部310により参照される。
【0042】
制御部360は、例えばCPU(Central Processing Unit)などにより実現され、無線端末300の各部を制御する機能を有する。
【0043】
以上が無線端末300の説明である。
<データ>
ここから、同期に必要な各種データについて説明する。
【0044】
図5は、基地局とレピータ間でやり取りする信号のフレーム構成の一例を示した概念図である。WiMAXでは、フレーム長は5msecになることが規定されている。
【0045】
図5に示すように、フレームは、下りサブフレームと上りサブフレームとを含んで構成される。下りサブフレームと上りサブフレームとの間には、それぞれ、TTG(Transmit Transition Gap)、RTG(Receive Transition Gap)という送受信の切替処理を行うためのガード時間が設けられる。フレームが連続する形式で基地局−レピータ間、レピータ−無線端末間の通信が実行される。
【0046】
下りサブフレームは、プリアンブルと、FCH(Frame Control Header)と、DL−MAP(Down Link - MAP)と、UL−MAP(Up Link - MAP)と、下りバーストとを含んで構成される。
【0047】
プリアンブルは、同期確立のためにフレームの先頭を下位の装置、即ち基地局からみてレピータあるいは無線端末、レピータからみて無線端末にフレームの先頭を認識させるための信号である。
【0048】
FCHは、後続するDL−MAPのデータ構造を示すデータである。
【0049】
DL−MAPは、レピータあるいは無線端末が下り方向の同期を確立するために必要とするデータである。
【0050】
UL−MAPは、レピータあるいは無線端末が上り方向の同期を確立するために必要とするデータである。
【0051】
下りバーストは、基地局がレピータあるいは無線端末に送信する実際のデータである。ここでいう実際のデータとは、例えば、通話音声データや、MCBCSの配信データなどがある。また、DL−MAPや、UL−MAPに含まれなかった拡張通信制御情報などが含まれることもある。
【0052】
TTGは、基地局、レピータ、無線端末において、データの通信方向つまりダウンリンクからアップリンクへの切替処理のためのガード時間である。
【0053】
上りサブフレームは、レンジング領域と、CQICH(Channel Quality Information Channel)領域と、ACK(Acknowledgement)領域と、上りバーストとを含んで構成される。
【0054】
レンジング領域は、帯域要求やレンジングを行う信号を送信するための領域である。帯域要求とは、無線端末がデータを基地局に送信するためのデータ領域の割当を要求する処理である。また、レンジングとは、基地局とレピータあるいは無線端末との間で時間と周波数の同期を確保するための処理である。
【0055】
CQICH領域は、受信側におけるチャネル品質情報を送信するための領域である。
【0056】
ACK領域は、ハイブリッド自動再送要求に対するACK/NAKのフィードバックを行うためのACKCH(ACK Channel)に使用される領域である。
【0057】
上りバーストは、無線端末から、レピータあるいは基地局に送信する実際のデータである。
【0058】
RTGは、基地局、レピータ、無線端末において、データの通信方向つまりアップリンクからダウンリンクへの切替処理のためのガード時間である。
【0059】
以上がフレームの説明である。
<動作>
ここから、本実施の形態における同期確立のための動作について説明する。
【0060】
まず、同期の確立の一連の流れについて、図6のタイミングチャートに基づいて説明する。
【0061】
まず、基地局100は、プリアンブル信号やDL−MAP、UL−MAPを含む信号を毎フレームに含ませて発信している。当該プリアンブル信号を受けて、レピータのドナー部210は、基地局との同期を図る。
【0062】
ドナー部210と基地局100との間での同期が確立する(ステップS601)と、ドナー部210は、基地局100からプリアンブルを受信する予定のタイミングを、プリアンブルを含むフレームの開始タイミングとしてリモート部220に通知する(ステップS602)。
【0063】
リモート部220は、ドナー部210からフレームのタイミングを通知されると、通知されたタイミングと同じタイミングでプリアンブル信号やDL−MAP、UL−MAPを含む信号を毎フレームに含ませて発信する(ステップS603)。
【0064】
無線端末300は、リモート部220が発信するプリアンブル信号を受けて(ステップS604)、リモート部220との同期を確立する(ステップ605)。
【0065】
基地局とレピータ間の同期が確立し、レピータと無線端末との間の同期が確立することで、無線端末はレピータ及び基地局を介して他の無線端末との通信が実行できるようになる。
【0066】
次にレピータにおける同期の確立における動作を図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0067】
ドナー部210の第1通信部211は、各周波数をスキャニングして、基地局からの信号を受信する。第1同期確立部213は、基地局から受信した信号のプリアンブルを、保持している参照信号と比較することで特定し、フレームの長さが固定長(5msec)であることから、次のフレームの開始タイミングが特定でき、連続するフレームの開始タイミングを認識して、同期を確立する(ステップ701)。同期が確立すると、下りバーストの構成や上りバーストの構成をDL−MAPや、UL−MAPから特定し、その後、基地局とネゴシエーションを実行しながら、ネットワークエントリの諸手順を実行する。ネットワークエントリの諸手順の詳細については、例えば、上記非特許文献1に記載されている。
【0068】
ドナー部210の起動制御部214は、自己の動作クロックにおいて、第1同期確立部213が基地局と同期を確立し、プリアンブルを受信するタイミングとその周期を検出する。そして、検出したタイミングと周期をリモート部に伝達する(ステップS702)。具体的には、起動制御部214は、自己の動作クロックのうちプリアンブルを受信する予定のタイミング以外ではクロックをマスクしたパルス信号を出力する。
【0069】
リモート部220は、ドナー部210と同一のクロック信号発生器からクロックの供給を受けて動作しており、当該クロックにおいて、起動制御部214から通知されたタイミングと周期でプリアンブルを発信する(ステップS703)。これにより、リモート部220は、ドナー部210が基地局100からプリアンブルを受信しているタイミングと同じタイミングで無線端末300においてプリアンブルが受信されるようにプリアンブルを含むフレームを発信することができる。具体的には、起動制御部214から出力されたパルス信号と、自己の動作クロックとが一致するタイミングでプリアンブルを出力する。
【0070】
これにより、図9に示したように、基地局−レピータ間、レピータ−無線端末間においてフレームのタイミングを統一して通信ができるようになる。なお、基地局から無線端末に信号を送信する際に、基地局がレピータのリモート部に時刻T0−T1間において送信した信号は、それ以降のフレームのダウンリンク、例えば、時刻T2−T3間においてレピータから無線端末に向けて送信される。また、逆に無線端末から基地局に信号を送信する場合にも、無線端末がレピータに時刻T1−T2間において送信した信号は、それ以降のフレームのアップリンク、例えば時刻T3−T4においてレピータのドナー部から基地局に送信される。
【0071】
以上に説明してきたように、本実施の形態においては、WiMAXの通信規格に従った通信を実行できるように、基地局−レピータ間、レピータ−無線端末間での同期をGPSを搭載することなしに実現できる。GPSを搭載していないことで、回路規模を小さくすることや、製作コストを低減することができる。
【0072】
<補足>
上記実施形態において、本発明の実施の手法について説明してきたが、本発明の実施形態がこれに限られないことは勿論である。以下、上記実施形態以外に本発明の思想として含まれる各種の変形例について説明する。
(1)上記実施の形態においては、レピータをドナー部210とリモート部220が一体となり、一筐体内に収まるものを示した。しかしながら、レピータのドナー部210とリモート部220とを同一筐体内に収める必要はなく、例えば、図10に示すようにドナー部210とリモート部220とを分離して設置してもよい。図10は、屋内にレピータを設置する場合の一例を示した図である。図10によれば、ドナー部210を屋外に近くなるように設置することで基地局との通信を実行しやすくするとともに、リモート部220を屋内に設置することで屋内にある無線端末との通信を実行しやすくすることができる。また、ドナー部210とリモート部220とを離して設置することで、ドナー部210の送受信する信号と、リモート部220の送受信する信号とが互いへの干渉となることをなるべく防ぐことができる。
【0073】
ドナー部210とリモート部220間の通信は、例えば通信規格IEEE802.3に従って通信する。ここでの通信は通信遅延がないことが望ましい。しかし、ドナー部210−リモート部220間の通信の遅延がある場合には、その遅延時間を考慮した制御を実行する必要がある。特に、同期を確立する際において、ドナー部210が基地局と同期を確立しプリアンブルを発信すべきタイミングを通知する場合、リモート部220は、通知されたタイミングから遅延時間を引いてプリアンブルを発信しなければならない。
(2)上記実施の形態においては、無線端末と基地局との同期について説明し、レピータと無線端末の場合については、同様であるとして、説明しなかったが、図6におけるフローチャートのうち、位置登録については、無線端末は、レピータに位置登録するのではなく、無線端末が同期を図ろうとしているレピータが通信している基地局に位置登録を行うこととなる。
(3)上記実施の形態においては、基地局と無線端末の間には1台のレピータを挟むこととしたが、複数台のレピータを挟んでもよい。
(4)上記実施の形態においては、第1同期確立部211もしくは通信部310は、予めプリアンブルを特定するための参照信号を保持し、当該参照信号と一致する信号を検出してプリアンブルと特定することを示した。しかし、参照信号を用いずとも、以下の手法によってプリアンブルを特定することも可能である。
【0074】
即ち、同内容のデータを例えば10シンボル分連続させたものをプリアンブルとし、受信側は受信した信号と、当該受信した信号を1シンボル分だけ遅延させた信号とを比較する。すると、9シンボル分一致する部分が検出されるので、その9シンボルとその1つ前のシンボルとを含めた部分をプリアンブルとして特定する。この手法によってもプリアンブルを特定することが可能である。
(5)上述の実施形態で示した同期に係る動作、レピータにおけるプリアンブルの発信タイミングの通知処理等をレピータ等のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるためのプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布させることもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより、実施形態で示したような各種機能が実現されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るレピータは、GPSなしで基地局及び無線端末と同期を確立し通信を中継する中継器として活用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 基地局
110 上位通信部
120 制御部
130 下位通信部
131 アンテナ
140 記憶部
141 ネイバーリスト
200 レピータ
210 ドナー部
211 第1通信部
212 アンテナ
213 第1同期確立部
214 起動制御部
220 リモート部
221 第2通信部
222 アンテナ
223 第2同期確立部
300 無線端末
310 通信部
311 アンテナ
320 表示部
330 音声処理部
331 マイク
332 スピーカ
340 操作部
350 記憶部
351 ネイバーリスト
360 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と無線端末間の通信を中継するレピータであって、
基地局と通信を実行するドナー部と、
無線端末と通信を実行するリモート部と、
前記ドナー部と前記リモート部とが通信を行うドナーリモート間通信部とを備え、
前記ドナー部が、前記基地局から送信されたプリアンブルを受信することにより前記基地局との同期を確立し、プリアンブルを含むフレームの発信の指示および該発信のタイミングを、前記ドナーリモート間通信部を介し前記リモート部へ伝え、
前記リモート部は、前記指示および前記タイミングに基づき前記無線端末に向けてプリアンブルを発信することにより、
前記プリアンブルが発信されるタイミングに同期した前記無線端末が行う位置登録に関わる情報を、前記ドナーリモート間通信部を介し、前記ドナー部が通信を実行する前記基地局へ伝達することにより、前記無線端末の位置登録を前記基地局へ行うことを特徴とするレピータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182475(P2011−182475A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138160(P2011−138160)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【分割の表示】特願2010−38278(P2010−38278)の分割
【原出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】