説明

レンズの染色方法および染色用レンズ保持具

【課題】レンズの厚み(体積)に係らず正確な染色上限位置までのレンズ面領域にハーフ
染色を施すことができるレンズの染色方法、および染色用レンズ保持具を提供する。
【解決手段】染色用レンズ保持具5は、プラスチックレンズLを保持する保持部50と、
保持部50に係合するフロート60とを備え、染色用レンズ保持具5に保持されたプラス
チックレンズLを、染色液S中に吊り下げて、プラスチックレンズLが保持された染色用
レンズ保持具5を、フロート60が染色液Sに浮く位置まで染色液S中に浸漬した後、染
色用レンズ保持具5を染色液S中から引上げて、プラスチックレンズLにハーフ染色を施
す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの染色方法、および染色用レンズ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性、加工性、染
色性などに優れ、しかも割れにくく安全性も高いため、眼鏡レンズ分野において急速に普
及し、その大部分を占めている。
プラスチック眼鏡レンズは、その優れた染色性から色彩変化に富むファッション性豊か
なレンズを得ることができる。特に、レンズ表面に連続的な濃度変化を付与したハーフ染
色レンズ(ぼかしレンズまたはグラデーションレンズとも呼ばれている)は、高いファッ
ション性を有する。また、プラスチック眼鏡レンズを染色する方法としては、レンズ表面
に染料被膜を形成した後、加熱処理して染料をレンズ内に拡散させて染色する技術や、レ
ンズを染料液に浸漬して染色する技術が知られている。
【0003】
例えば、レンズ保持具に表示された基準高さを示す表示線に、染色するプラスチックレ
ンズの垂直中心線を一致させ、表示線と染色液の液面とが予め所定の高さになるように設
定されたレンズ保持具を、染色液に浸漬して、レンズ表面に染色濃度が一定方向に連続的
に変化する染色を施す眼鏡用レンズの染色方法が提案されている(特許文献1、参照)。
また、こうした染色の際に用いられるレンズ保持具として、光学部品を確実に保持する
と共に、外径の異なる光学部品であっても一つの保持具で保持することができるなどを目
的に、光学部品を保持する光学部品押えのアーム部が、連続した凹凸形状で形成された光
学部品用保持具が提案されている(特許文献2、参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−9327号公報(10頁)
【特許文献2】特開2001−311914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される染色方法は、レンズ保持具に保持されたプラス
チックレンズを染色液に浸漬した際に、染色液の液面が上昇する。したがって、プラスチ
ックレンズを染色液の液面に対して所定の位置(高さ)まで浸漬した場合、レンズ厚み(
体積)によって染色される領域が異なると言う課題が存在する。なお、レンズの体積は、
レンズ外径の他に、レンズの球面度数や乱視度数などによって変化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例に係るレンズの染色方法は、染色用レンズ保持具に保持されたプラスチックレ
ンズを、染色液中に吊り下げてハーフ染色するレンズの染色方法であって、前記染色用レ
ンズ保持具は、前記プラスチックレンズを保持する保持部と、該保持部に係合するフロー
トと、を備え、前記プラスチックレンズが保持された前記染色用レンズ保持具を、前記フ
ロートが前記染色液に浮く位置まで前記染色液中に浸漬して、前記プラスチックレンズを
ハーフ染色することを特徴とする。
【0008】
これによれば、染色用レンズ保持具が、プラスチックレンズを保持する保持部と、保持
部に係合するフロートとを備え、プラスチックレンズが保持された染色用レンズ保持具を
染色液中に吊り下げて、フロートが染色液に浮く位置まで染色用レンズ保持具を染色液中
に浸漬して、プラスチックレンズを染色することにより、球面度数や乱視度数などよって
レンズ厚み(体積)の異なるプラスチックレンズであっても、レンズ体積に係らずレンズ
面領域にバラツキを抑えた正確な所定のハーフ染色を施すことができる。また、染色用レ
ンズ保持具のフロートが染色液に浮く位置まで浸漬するので、プラスチックレンズが染色
液に浸漬する位置を制御することなく、容易にハーフ染色を施すことができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例に係るレンズの染色方法において、前記染色用レンズ保持具の前記フロート
が前記染色液に浮く位置まで前記染色液中に浸漬した時、前記プラスチックレンズの染色
上限位置が前記染色液の液面となる位置まで浸漬されるのが好ましい。
【0010】
これによれば、染色用レンズ保持具の保持部に保持されたプラスチックレンズを、フロ
ートが染色液に浮く位置まで染色液中に浸漬した時、プラスチックレンズの染色上限位置
が染色液の液面となる位置まで浸漬されることにより、球面度数や乱視度数などによって
レンズ厚み(体積)の異なるプラスチックレンズであっても、レンズ体積に係らずバラツ
キを抑えた正確な染色上限位置までのレンズ面領域に所定のハーフ染色を施すことができ
る。また、プラスチックレンズが染色液に浸漬する位置を制御することなく、容易にハー
フ染色を施すことができる。
【0011】
[適用例3]
本適用例に係る染色用レンズ保持具は、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてハ
ーフ染色するのに用いる染色用レンズ保持具であって、前記プラスチックレンズの周縁部
を保持する保持部と、前記保持部に係合するフロートと、を備え、前記フロートが前記染
色液に浮く位置まで前記染色液中に吊り下げて用いることを特徴とする。
【0012】
これによれば、プラスチックレンズを染色液に浸漬してハーフ染色するのに用いるレン
ズ保持具が、プラスチックレンズの周縁部を保持する保持部と、保持部に係合するフロー
トとを備え、フロートが染色液に浮く位置まで染色液中に吊り下げて用いることにより、
染色液中に染色するプラスチックレンズを染色上限位置まで正確に浸漬することができる
。よって、球面度数や乱視度数などによってレンズ厚み(体積)の異なるプラスチックレ
ンズであっても、レンズ体積に係らずバラツキを抑えた正確な染色上限位置までのレンズ
面領域に所定のハーフ染色を行うことが可能なレンズ保持具が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態におけるレンズの染色
方法、および染色用レンズ保持具は、光学用プラスチックレンズであれば限定されずに適
用することができるが、プラスチック眼鏡レンズに好適に用いることができる。
【0014】
先ず、プラスチックレンズをハーフ染色するレンズ染色装置の構成を説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るレンズ染色装置の概構成を示す模式図であり、染色用
レンズ保持具に保持されたプラスチックレンズがレンズ染色装置にセットされた態様で示
す。図1(b)は、レンズ染色装置にセットされた染色用レンズ保持具を、図1(a)中
に矢印Aで示す方向から矢視した部分側面図である。
【0015】
図1(a)において、レンズ染色装置(以後、染色装置と表す)100は、染色槽1と
、上下移動装置2と、制御部3と、入力部4とを備えている。
この染色装置100は、染色槽1内に貯留された染色液SにプラスチックレンズLを浸
漬する時間を変化させると共に、その浸漬位置を変化させることにより、プラスチックレ
ンズLの表面に連続的な染色濃度勾配を付与することができる。
【0016】
染色槽1は、プラスチックレンズLをハーフ染色する染色液Sを貯留する槽であり、予
め染色槽1内に染色液Sが貯留されている。染色槽1の形状は、限定されないが、用いる
染色液Sの貯留効率などを考慮すると、開口形状が円形の円筒形が好ましい。なお、以後
において、プラスチックレンズLをレンズL、ハーフ染色を染色と表す場合がある。
【0017】
染色液Sは、純水などの溶媒中に、分散染料、分散染料のレンズL内部への含浸を促進
させるキャリア剤、分散染料に対する分散剤としての界面活性剤などを添加して攪拌した
分散・溶解液である。また、染色液Sは、染料濃度を染色するレンズLの染色程度に対応
して0.1重量%〜5重量%に適宜調整し、70℃〜100℃の液温で用いられる。
【0018】
上下移動装置2は、筐体21上に、モーター22と、タイミングプーリ23,24と、
タイミングベルト25と、スライドガイド26と、スライドガイドレール27とが配設さ
れている。また、スライドガイド26には、取付け具28と、支持具29と、フック30
が取付けられている。
【0019】
モーター22は、例えばサーボモーターであり、筐体21に回動可能に固定されている
。また、モーター22の回転軸には、モーターとタイミングプーリ23とを接続または離
脱(接/離)するためのクラッチ機構部(図示せず)が配設されている。このモーター2
2は、後述する制御部3から出力される回転制御信号により回動(正逆回転)すると共に
、制御部3から出力される接/離信号により、クラッチ機構部を作動してタイミングプー
リ23との接続または離脱を行う。
【0020】
タイミングプーリ23は、モーター22の回転軸とクラッチ機構部を介して係合してい
る。一方、タイミングプーリ24は、タイミングプーリ23の鉛直方向の下方に所定距離
はなれた位置の筐体21上に、回転可能に軸着されている。
【0021】
タイミングプーリ23とタイミングプーリ24との間には、タイミングベルト25がベ
ルト掛けされている。
タイミングベルト25には、ベルト上にスライドガイド26が固着されている。このタ
イミングベルト25は、モーター22の回転軸に配設されたクラッチの伝達状態において
、モーター22が回動(回転)することによってタイミングプーリ23,24上を鉛直方
向に往復動(上下移動)する。
【0022】
スライドガイドレール27は、タイミングベルト25(タイミングプーリ23およびタ
イミングプーリ24)と、略平行に並置した位置に固定されている。
このスライドガイドレール27上には、タイミングベルト25に固着されたスライドガ
イド26が載置されている。スライドガイド26は、モーター22の回動によるタイミン
グベルト25の上下移動に同期して、スライドガイドレール27上を鉛直方向に往復スラ
イド(上下移動)する。なお、モーター22の回転は、例えば正回転(紙面における右回
転)することによってスライドガイド26が上昇し、逆回転(紙面における左回転)する
ことによってスライドガイド26が下降がする。
【0023】
また、スライドガイドレール27の両端部には、スライドガイド26の移動範囲を規制
するストッパーST1,ST2を備えている。このストッパーST1,ST2は、タイミ
ングプーリ23とタイミングプーリ24の回転軸間の内側の所定の位置にそれぞれ取り付
けられて、スライドガイド26の上下移動の範囲を制限することにより、モーター22の
暴走、および染色用レンズ保持具5(レンズL)の落下を防止する。
【0024】
取付け具28は、スライドガイド26の本体から、スライドガイドレール27(タイミ
ングベルト25)に対して略直角方向に延伸するアームの先端に取り付けられている。
取付け具28には、スライドガイドレール27(すなわち、タイミングベルト25)と
略平行に垂直方向の下方に延伸する棒状の支持具29が取付けられている。
支持具29の下端部には、染色するレンズLを保持する染色用レンズ保持具5をセット
するためのフック30が、支持具29に沿って固着されている。
【0025】
図1(b)および図1(a)に示すように、このフック30には、支持具29に略直交
する方向に延伸する丸棒より成る保持具固定軸6に取付け固定された2つの染色用レンズ
保持具(以後、レンズ保持具と表す)5が、保持具固定軸6を介して吊り下げられている
。なお、レンズ保持具5が取付け固定された保持具固定軸6は、フック30上に支持具2
9に対して略直交する水平姿勢で、しかも取外し可能に吊り下げられている。
【0026】
フック30に吊り下げられた2つのレンズ保持具5には、染色するレンズLが保持され
ている。
レンズLは、テープモールド法などを用いて、重合性組成物を硬化して製造された透明
プラスチック樹脂より成るプラスチック眼鏡レンズである。また、レンズLは、眼鏡フレ
ームの内周縁の形状に合わせる玉型加工(縁摺り加工)などが施される以前のレンズであ
り、外径が65〜80mm程度の円形形状を成しており、レンズLの一方または両方のレ
ンズ面に、所定の球面、回転対称非球面、トーリック面、累進面、あるいはこれらを合成
した曲面などの形状が形成されている。
【0027】
2つのレンズ保持具5に保持されたレンズLは、眼鏡の左右レンズとして用いられる一
対のレンズであり、同時に染色される。また、2つのレンズ保持具5に保持されたレンズ
Lは、染色上限位置B(レンズL中に二点鎖線で示す)まで染色液S中に浸漬した後、染
色上限位置Bから下方の外縁方向に向う表面領域に染色が施される。
【0028】
なお、染色されるレンズLは、重合性組成物を硬化した透明プラスチック樹脂であれば
限定されない。例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39
)、ポリウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネー
ト樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0029】
レンズLを保持した2つのレンズ保持具5は、レンズLを保持する保持部50と、保持
部50に取付けられたフロート60とを具備した同一構造の保持具である。
2つのレンズ保持具5は、後述するアーム固定板54が保持具固定軸6と直交する方向
に互いに略平行になるように、且つレンズ保持具5に保持されたレンズLの取付け・取り
外し方向が、それぞれ保持具固定軸6の両端側と成るようにして保持具固定軸6に取付け
固定されている。したがって、保持具固定軸6の軸方向視、2つのレンズ保持具5が略重
なるように保持具固定軸6に取付け固定されている。なお、レンズ保持具5の具体的な構
成については後述する。
【0030】
フック30にセットして吊り下げられた2つのレンズ保持具5の鉛直方向の下方、すな
わち上下移動装置2の支持具29が延伸する鉛直方向の下方に、染色液Sを貯留する染色
槽1が位置するように配設されている。
このように上下移動装置2のフック30にセットして吊り下げられた2つのレンズ保持
具5(レンズL)は、上下移動装置2が鉛直方向に上下移動することによって、染色液S
の液面から離間した位置(スタート位置)と染色槽1内に貯留された染色液Sの所定の液
中位置(図1中に二点鎖線で示す)との間を上下移動(下降および上昇)する。
【0031】
制御部3は、上下移動装置2に配設されたモーター22を駆動するパルス数や移動速度
などの演算および制御指示を行うCPU(Central Processing Unit)、レンズLを染色
する染色濃度勾配データ(染色液Sに浸漬する時間に対する染色されたレンズLの濃度の
関係を計量把握したデータ)や各種制御プログラムを格納するROM、染色するレンズL
の染色情報などを一時的に格納するRAMなどで構成され、モーター22および入力部4
と電気的に接続している。
【0032】
入力部4は、デジタルスイッチ、表示器などを備え、デジタルスイッチを操作して、染
色するレンズLの染色情報(レンズLの外径、染色上限位置など)の入力、上下移動装置
2の上下移動操作(スタートおよびストップ操作)などを行う。
なお、染色装置100には、これらの構成要素の他に、染色槽1内に収容された染色液
Sを、所定の温度に加熱・保温するための温度調節装置や、染色液Sを攪拌する攪拌装置
などを備えることができる。
【0033】
次に、レンズ保持具5について説明する。
レンズ保持具5は、レンズLを保持する保持部50と、保持部50に取付けられたフロ
ート60と、を含み構成されている。
【0034】
図2は、染色用レンズ保持具を構成する保持部の説明図であり、(a)は正面図、(b
)は右側面図、(c)は上面図である。図3は、染色用レンズ保持具を構成するフロート
の斜視図である。また、図4は、保持部にフロートが取付けられたレンズ保持具の説明図
であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は上面図である。
【0035】
図2(a)〜図2(c)において、保持部50は、2つのアーム51,52と、アーム
51,52に取付けられてレンズLに係合する押え具53a,53b,53cと、アーム
固定板54とを具備している。
アーム固定板54は、2つのアーム51,52を保持具固定軸6に吊り下げた態様に取
付け固定するための部材であり、アーム51とアーム52との間に挟持して固着された押
え具53aと共に、アーム51とアーム52とが溶接固定されている。
【0036】
アーム51は、薄板状のバネ部材、例えばバネ用ステンレス鋼板より成るアーム本体部
51aが、曲線状および直線状に屈曲されて、アーム固定板54から略半円弧状に延伸し
た形状を成している。
アーム本体部51aは、曲線状の屈曲部に連続したジャバラ形状の凹凸形状部51bが
形成され、直線状の屈曲部には、アーム本体部51aが切起し加工されてアーム固定板5
4と略直交する外側方向に延伸するフロート係合部51cを有する。また、アーム本体部
51aの先端部には、押え具53bが溶接固定されている。
【0037】
一方、アーム52は、延伸するアーム固定板54の略中心線に対して、アーム51と略
対称形状を成して、アーム51と同様にアーム本体部52a上に凹凸形状部52b、フロ
ート係合部52c、押え具53cを有する。なお、アーム51およびアーム52は、凹凸
形状部51b,52bを設けなくても良い。
【0038】
図3において、フロート60は、フロート本体部61と、フロート本体部61に形成さ
れた2つの保持部取付け孔62a,62bとを有する。
フロート本体部61は、例えば、底面の外形形状が長方形より成る直方体の中心部に、
外形形状の長方形に相似する長方形の貫通孔61aを有するリング状を成している。
【0039】
保持部取付け孔62a,62bは、断面形状が長方形のスリット状の貫通孔であり、外
形形状が長方形の2つの短辺側に位置するリング状のフロート本体部61の底面から所定
高さの位置に、断面形状が長方形の一方の長辺がフロート本体部61長方形のリング状の
長辺に沿う方向にそれぞれ貫通して形成されている。
【0040】
この保持部取付け孔62a,62bに、保持部50のフロート係合部51c,52cが
、それぞれ遊挿して取付けられて、レンズ保持具5が得られる。したがって、保持部取付
け孔62a,62bの断面形状の寸法は、フロート係合部51c,52cが、それぞれ遊
挿して取付けられる大きさを成している。
【0041】
図4(a)〜図4(c)において、レンズ保持具5は、保持部50の2つのアーム51
およびアーム52にそれぞれ形成されたフロート係合部51c,52cが、フロート60
のフロート本体部61に形成された保持部取付け孔62a,62bに遊挿して取付けられ
ている。
【0042】
保持部50(フロート係合部51c,52c)のフロート60(保持部取付け孔62a
,62b)への取付けは、アーム固定板54に固着されたバネ性を有するアーム51およ
びアーム52を互いが接近する方向に反らして、フロート係合部51cおよびフロート係
合部52cを、それぞれ保持部取付け孔62a,62bに挿入することにより行うことが
できる。
【0043】
保持部50にフロート60が取付けられたレンズ保持具5は、アーム固定板54に固着
されたアーム51およびアーム52が、それぞれバネ性を有する片持ちバネとして機能し
、互いに相対するアーム51およびアーム52を外側方向に押し開いて、押え具53a、
押え具53bおよび押え具53c間の隙間に染色するレンズLを挿入して、バネ性を有す
るアーム51およびアーム52の反発力によりレンズLを保持する(図1(a),(b)
参照)。
【0044】
このように構成されたレンズ保持具5は、保持部50に保持されたレンズLを染色する
際に、フロート60の底面が染色槽1内に貯留された染色液Sの液面に略一致した位置か
ら、レンズ保持具5を染色液S中に自由落下した後、フロート60が染色液Sに浮いた位
置から引上げてレンズLの染色が行われる。
【0045】
レンズ保持具5に保持されたレンズLを染色液S中に自由落下した時の、レンズ保持具
5とフロート60の浮力との関係は、下記の一般式(1)によって表される。
F=(ρ1−ρf)×Ar×δ…(1)
但し、Fはフロート60に印加される荷重(すなわち、レンズ保持具5と保持部50に
保持されたレンズLを含む重量)、ρ1は染色液Sの比重、ρfはフロート60の比重、
Arはフロート60の底面積、δはフロート60の底面が染色液Sの液面から染色液S中
に沈む距離(後述する図5(e)参照)を表す。
【0046】
この一般式(1)に基づいて、予めフロート60の材質、形状(平面形状および中空形
状など)、大きさ(底面積の大きさ)などを適宜設定して、フロート60の底面が染色液
Sの液面から染色液S中に沈む距離δを得ることにより、保持部50のフロート係合部5
1c,52cのフロート60の底面からの高さ位置、すなわち染色されるレンズLの染色
上限位置Bを設定することができる。
【0047】
したがって、フロート60の材質は、底面積の大きさ、および形状に対応して、PTF
E、PFAなどのフッ素樹脂、HDPEなどのエチレンコポリマー、ABS樹脂、ガラス
など、限定せずに用いることができる。但し、染色槽1の大きさなどを考慮すると、比重
ができる限り小さい発泡スチロール(発泡倍率40倍の比重は、略0.03)などを用い
るのが好ましい。
【0048】
次に、再び図1(a)に基づいて、染色装置100の動作を説明する。
染色装置100は、2つのレンズ保持具5に保持されたレンズLを、上下移動装置2の
モーター22を回動(逆回転)して、染色槽1内に貯留された染色液Sの液面まで下降し
た後、クラッチ機構部を作動してレンズ保持具5のフロート60を液面に浮かした状態か
ら、モーター22の回動(正回転)を微細に制御して上昇することにより、レンズLの表
面に連続的な染色濃度勾配を付与するハーフ染色を行う。
【0049】
先ず、入力部4のデジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色データ(レン
ズLの外径、染色上限位置Bなど)を入力する。
そして、上下移動装置2の支持具29の下端部に固着されたフック30に、ハーフ染色
するレンズLが保持された2つのレンズ保持具5が取付け固定された保持具固定軸6を掛
着する。保持具固定軸6を介してフック30に掛着された2つのレンズ保持具5は、鉛直
方向に吊り下げられる。この時、吊り下げられレンズ保持具5(レンズL)は、染色槽1
に貯留された染色液Sの液面から離間した位置(スタート位置)に停止している。
【0050】
そして、入力部4の上下移動装置2の下降スイッチを操作して、レンズ保持具5のフロ
ート60が染色槽1に貯留された染色液Sの液面となる位置まで下降させる。レンズ保持
具5(レンズL)は、制御部3からの制御信号に基づいて、モーター22が回動(逆回転
)して下降する。
【0051】
そして、入力部4の染色開始スイッチをONすると、制御部3からの接/離信号に基づ
いてモーター22の回転軸に配設されたクラッチ機構部が作動してタイミングプーリ23
の接続を解除する。これにより、染色するレンズLが保持されたレンズ保持具5のフロー
ト60が染色液Sの液面に浮いた状態となる。
【0052】
そして、制御部3のCPUにおいて、先に入力部4から入力されたレンズの染色データ
と、予めROMに格納された該当製品の染色濃度勾配データに基づいて上下移動装置2の
モーター22に出力するパルス数(すなわち、移動量)および移動速度を演算し、演算さ
れたパルス列から成る制御信号をモーター22に出力する。
【0053】
そして、モーター22は、制御部3から入力されたパルス列に従って回動(正回転)し
、レンズ保持具5に取り付けられたレンズLが上昇して、レンズLの表面に染色液S中に
浸漬した位置から下方の外縁方向に向かって所定のハーフ染色が行われる。
レンズLをハーフ染色する所定の染色移動が終了すると、モーター22が急速回転して
、レンズ保持具5(レンズL)が上昇し、スタート位置に停止する。これにより、レンズ
Lの所定のハーフ染色が終了する。
【0054】
このようにレンズLを染色する際に上下移動(下降および上昇)する上下移動装置2の
動作を、より具体的に説明する。
モーター22は、上記したように制御部3からの制御信号に基づいて正逆回転する。モ
ーター22が回動(回転)すると、モーター22に固着されたタイミングプーリ23が、
モーター22と同期して回動し、このタイミングプーリ23とタイミングプーリ24にベ
ルト掛けされたタイミングベルト25が、タイミングプーリ23,24上を往復動する。
【0055】
そして、タイミングベルト25が往復動すると、タイミングベルト25に固着されたス
ライドガイド26が、タイミングベルト25と略平行に並置して固定されたスライドガイ
ドレール27上を、タイミングベルト25の往復動と同期して、上下移動(上昇および下
降)する。同時に、このスライドガイド26と一体に構成された取付け具28、および取
付け具28に取り付けられた支持具29が、タイミングベルト25の往復動と同期して上
下移動する。したがって、支持具29の先端のフック30に掛着された2つのレンズ保持
具5、および2つのレンズ保持具5に保持されたレンズLが、上下移動する。
【0056】
また、モーター22の回転停止状態において、制御部3からの接/離信号に基づいてモ
ーター22の回転軸に配設されたクラッチ機構部が作動して、モーター22とタイミング
プーリ23との接続が解除された場合には、支持具29の先端のフック30に掛着された
2つのレンズ保持具5および2つのレンズ保持具5に保持されたレンズLの重量により、
レンズ保持具5のフロート60が染色液Sの液面に浮いた状態となる位置まで、スライド
ガイド26(取付け具28、支持具29およびフック30)が鉛直方向に自由落下する。
【0057】
次に、染色装置100を用いたレンズLの染色方法について説明する。なお、レンズL
の染色方法は、図1(a),(b)を参照しながら、図5に基づいて説明する。
【0058】
図5(a)〜図5(e)は、レンズの染色時における染色装置の部分説明図であり、レ
ンズ保持具に保持されたレンズの染色工程毎の態様を示す。具体的には、図5(a)〜図
5(c)は、下降工程の下降開始状態、レンズが染色液に浸漬する下降中途状態、下降終
了状態を示す。また、図5(d)は自由落下工程における態様を示し、図5(e)は引上
げ工程における態様を示す。
【0059】
先ず、入力部4のデジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色情報(レンズ
Lの外径、染色上限位置Bなど)を入力した後、ハーフ染色するレンズLが保持された2
つのレンズ保持具5が取付け固定された保持具固定軸6を上下移動装置2のフック30に
掛着する(染色情報入力工程)。
【0060】
フック30に掛着された2つのレンズ保持具5は、鉛直方向に吊り下げられる。この時
、吊り下げられたレンズ保持具5(レンズL)は、染色槽1に貯留された染色液Sの液面
から離間した位置(スタート位置)に停止している(図5(a)参照)。
そして、下降工程に移行する。
【0061】
下降工程では、入力部4の上下移動装置2の下降スイッチを手動操作して、図5(a)
に示すように、フック30に掛着されたレンズ保持具5に保持されたレンズLを、スター
ト位置から染色槽1に貯留された染色液Sに向かって下降(図中に矢印aで示す)を開始
する。レンズ保持具5(レンズL)は、制御部3からの制御信号に基づいて、モーター2
2が回動(逆回転)して下降する。
【0062】
そして、図5(b)に示すように、レンズ保持具5に保持されたレンズLが染色液S中
に浸漬されるに従って、染色液Sの液面が、図5(b)中に破線で示す当初の液面位置か
ら上昇する。
【0063】
そして、図5(c)に示すように、レンズLが保持されたレンズ保持具5のフロート6
0の底面が染色液Sの液面に略一致する位置まで下降させて、上下移動装置2を停止する
。これによって下降工程が終了する。
そして、自由落下工程に移行する。
【0064】
図5(d)に示す自由落下工程では、入力部4の染色開始スイッチをONすると、制御
部3からの接/離信号に基づいてモーター22の回転軸に配設されたクラッチ機構部が作
動してタイミングプーリ23の接続を解除する。これにより、染色するレンズLが保持さ
れたレンズ保持具5が自由落下して、フロート60が染色液Sの液面に浮いた状態となる

【0065】
この時、フロート60は、予め前記一般式(1)に基づいた材質(比重)および大きさ
(底面積)を備えているので、フロート60の底面が染色液Sの液面から染色液S中に、
距離δ沈み込んでいる。すなわち、染色するレンズLの染色上限位置Bが染色液Sの略液
面に位置している。
そして、引上げ工程に移行する。
【0066】
図5(e)に示す引上げ工程では、制御部3からの接/離信号に基づいてモーター22
の回転軸に配設されたクラッチ機構部が作動して、タイミングプーリ23とモーター22
が再び接続状態に移行する。それに引き続き、制御部3のCPUにおいて、先に入力部4
から入力されたレンズの染色データと、予めROMに格納された該当製品の染色濃度勾配
データに基づいて上下移動装置2のモーター22に出力するパルス数(すなわち、移動量
)および移動速度を演算し、演算されたパルス列から成る制御信号をモーター22に出力
する。
【0067】
そして、モーター22は、制御部3から入力されたパルス列に従って回動(正回転)し
、レンズ保持具5に取り付けられたレンズLが上昇(図中に矢印cで示す)して、レンズ
Lの表面に染色液S中に浸漬した染色上限位置Bから下方の外縁方向に向かって所定のハ
ーフ染色が行われる(図5(e)中のレンズLに、ドットで示す)。
レンズLをハーフ染色する所定の染色移動が終了すると、モーター22が急速回転して
、レンズ保持具5(レンズL)が上昇し、スタート位置に停止する。これにより、レンズ
Lの所定のハーフ染色が終了する。
【0068】
その後、レンズ保持具5に略同一染色上限位置Bの染色を行う新たなレンズLを取付け
て、同様の工程によってレンズLのハーフ染色を行うことができる。なお、ハーフ染色す
る新たなレンズLは、球面度数や乱視度数が異なるなどレンズ厚み(体積)の異なるレン
ズであっても、同一染色上限位置Bまでのハーフ染色を正確に行うことができる。
【0069】
例えば、それぞれレンズLを保持した2つのレンズ保持具5のフロート60が、発泡倍
率40倍の発泡スチロール(比重ρfが略0.03)より成り、7.1cm×6.5cm
の長方形の外形形状に、6.8cm×3.5cmの長方形の貫通孔61aを有するリング
幅が1.5cm(底面積Arが14.17cm3)のフロートと、比重ρ1が1.01の
染色液Sを用いてレンズL染色した場合、屈折率1.67のチオウレタン系樹脂より成り
、外径が65mm、球面度数が−(マイナス)10.25のレンズLと、外径が65mm
、球面度数が−16のレンズLにおけるフロート60の底面が染色液Sの液面から染色液
S中に沈む距離δの異差、すなわち、厚さの異なるレンズLの染色上限位置Bのバラツキ
は、略1mmである(前記一般式(1)参照)。
【0070】
したがって、フロート60の底面積Arを、より大きく設定することにより、レンズL
の染色上限位置Bのバラツキを、より小さくすることも可能である。
なお、レンズ表面にハーフ染色を施したレンズLは、純水洗浄またはアセトン洗浄を行
う洗浄・乾燥工程を経た後、眼鏡フレームの内周縁の形状に合わせる玉型加工(縁摺り加
工)などが施される。そして、眼鏡フレームに嵌め込まれてファッション性豊かな眼鏡が
完成する。
【0071】
以上のように、本実施形態のレンズLの染色方法によれば、レンズ保持具5が、レンズ
Lを保持する保持部50と、保持部50に係合するフロート60とを備え、レンズLが保
持されたレンズ保持具5を染色液S中に吊り下げて、フロート60が染色液Sに浮く位置
までレンズ保持具5を染色液S中に浸漬して、レンズLをハーフ染色することにより、球
面度数や乱視度数などよって保持するレンズ厚み(体積)の異なるレンズLであっても、
レンズ体積に係らずバラツキを抑えた正確な染色上限位置Bまでのレンズ面領域に所定の
ハーフ染色を施すことができる。また、フロート60が染色液Sに浮く位置まで染色液S
中に浸漬した時、レンズLの染色上限位置Bが染色液Sの液面となる位置まで浸漬される
ことにより、レンズLが染色液Sに浸漬する位置を制御することなく、容易にハーフ染色
を施すことができる。
【0072】
また、本実施形態のレンズ保持具5によれば、レンズ保持具5がレンズLの周縁部を保
持する保持部50と、保持部50に係合するフロート60とを備え、フロート60が染色
液Sに浮く位置まで染色液S中に吊り下げて用いることにより、染色液S中に染色するレ
ンズLを染色上限位置Bまで正確に浸漬することができる。よって、球面度数や乱視度数
などによって保持するレンズ厚み(体積)の異なるレンズLであっても、レンズ体積に係
らずバラツキを抑えた正確な染色上限位置Bまでのレンズ面領域に所定のハーフ染色を行
うことが可能なレンズ保持具5が得られる。
【0073】
以上の本実施形態において、保持具固定軸6に取付け固定された2つのレンズ保持具5
は、同一形状のフロート60を別々に用いた場合で説明したが、2つのレンズ保持具5に
対して一体に形成された一つのフロートで構成した場合であっても良い。
また、本実施形態のレンズの染色方法を用いると、レンズ体積に係らずバラツキを抑え
た正確な染色上限位置Bまでのレンズ面領域に所定のハーフ染色を施すことができるので
、2つのレンズ保持具5に保持するレンズLは、眼鏡の左右レンズとして用いられる一対
のレンズでなくても良い。さらに、保持具固定軸6に一つのレンズ保持具5を取付け固定
した構成であっても良い。
【0074】
また、本実施形態において、下降工程では、入力部4の上下移動装置2の下降スイッチ
を手動操作して、レンズ保持具5に保持されたレンズLの染色上限位置Bを、染色槽1に
貯留された染色液Sの液面位置まで下降した後、入力部4のスタートスイッチを操作する
ことにより、自由落下工程、引上げ工程を行う、いわゆる手動操作する場合で説明したが
、入力部4から入力する染色データとして、レンズ保持具5に保持されたレンズLの染色
上限位置Bとフロート60の底面との距離を入力するプログラムを追加して、入力部4の
スタートスイッチを操作することにより、一連の下降工程、自由落下工程、引上げ工程が
自動で行われて、所定のハーフ染色が行われるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)は本実施形態に係る染色装置の概構成を示す模式図であり、(b)は染色装置にセットされた染色用レンズ保持具の部分側面図。
【図2】染色用レンズ保持具を構成する保持部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は上面図。
【図3】染色用レンズ保持具を構成するフロートの斜視図。
【図4】保持部にフロートが取付けられた染色用レンズ保持具の説明図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は上面図。
【図5】(a)から(e)は、レンズの染色時における染色装置の部分説明図であり、レンズ保持具に保持されたレンズの染色工程毎の態様を示す。
【符号の説明】
【0076】
1…染色槽、2…上下移動装置、3…制御部、4…入力部、5…染色用レンズ保持具、
6…保持具固定軸、30…フック、50…保持部、51,52…アーム、51a,52a
…アーム本体部、51b,52b…凹凸形状部、51c,52c…フロート係合部、53
a,53b,53c…押え具、54…アーム固定板、60…フロート、61…フロート本
体部、61a…貫通孔、62a,62b…保持部取付け孔、100…レンズ染色装置、B
…染色上限位置、L…プラスチックレンズ、S…染色液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色用レンズ保持具に保持されたプラスチックレンズを、染色液中に吊り下げてハーフ
染色するレンズの染色方法であって、
前記染色用レンズ保持具は、前記プラスチックレンズを保持する保持部と、該保持部に
係合するフロートと、を備え、
前記プラスチックレンズが保持された前記染色用レンズ保持具を、前記フロートが前記
染色液に浮く位置まで前記染色液中に浸漬して、前記プラスチックレンズをハーフ染色す
ることを特徴とするレンズの染色方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズの染色方法であって、
前記染色用レンズ保持具の前記フロートが前記染色液に浮く位置まで前記染色液中に浸
漬した時、
前記プラスチックレンズの染色上限位置が前記染色液の液面となる位置まで浸漬される
ことを特徴とするレンズの染色方法。
【請求項3】
プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてハーフ染色するのに用いる染色用レンズ保
持具であって、
前記プラスチックレンズの周縁部を保持する保持部と、
前記保持部に係合するフロートと、を備え、
前記フロートが前記染色液に浮く位置まで前記染色液中に吊り下げて用いることを特徴
とする染色用レンズ保持具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−32845(P2010−32845A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195862(P2008−195862)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】