説明

レンズケア組成物および方法

非常に低濃度の消毒剤を有し、目への刺激がより少ない緩衝水性コンタクトレンズ消毒溶液。その溶液は、200〜450mOsm/kgの張性、6〜8の間のpH、および1500ppm未満の塩化物イオン濃度を有する。1ppm未満の抗菌剤を有するにもかかわらず、消毒溶液は15分以内の接触で、C.アルビカンスに対して有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズの処理、例えば、消毒、洗浄、浸漬、コンディショニングおよび湿潤用の組成物に関する。より特定的には、本発明は、コンタクトレンズの処理、例えば、コンタクトレンズの消毒、コンタクトレンズからの沈積物質の除去、コンタクトレンズの浸漬、コンディショニングおよび/または湿潤等に有用なマルチパーパスソリューションに関するものであり、そのようなソリューションの使用者に十分な快適さと受容性の利益をもたらす。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、種々の目および環境の汚染物質、微生物および他の物質がレンズ上に蓄積される傾向があるため、および/または安全で快適な装用のために好適な条件にレンズを保つ必要があるため、定期的に、処理、例えば、消毒、洗浄、浸漬等を行う必要がある。ユーザーコンプライアンス(すなわち、使用者が、コンタクトレンズを定期的にかつ一貫して処理すること)は、目の健康を促進し、コンタクトレンズの装用に伴う問題を回避するために、重要である。使用される処理溶液が装用者/使用者の快適さおよび受容性を高度にもたらす場合に、ユーザーコンプライアンスを高める。したがって、そのような快適さをもたらすか、および/またはコンタクトレンズ装用者/そのような組成物の使用者により受容される、コンタクトレンズ処理用組成物を提供することは有利である。
【0003】
英国特許第1,432,345号明細書は、ポリマー状ビグアニドおよびリン酸緩衝剤を含むコンタクトレンズ消毒組成物を開示している。この特許で開示された消毒性ポリマーの濃度は、本発明の濃度よりもかなり高い。
【0004】
ビグアニド類のより高い濃度は、それらがソフトコンタクトレンズに結合しかつその中で濃縮される傾向があるため、装用者の快適さに有害である。適正に使用された場合には、低濃度でのそれらの化合物は目の刺激を引き起こさないが、コンタクトレンズ中で濃縮されると潜在的に危険な濃度に達する可能性があり、また角膜の炎症および他の眼の組織の刺激を引き起こしうる。さらに、最近の研究は、ポリマー状ビグアニドがコンタクトレンズ装用者でのドライアイ症状にある役割を果たしている可能性を示している。
【0005】
米国特許第4,758,595号(Ogunbiyiら)明細書は、ビグアニドとホウ酸緩衝剤を含むコンタクトレンズ消毒組成物を開示している。開示された溶液中のビグアニドの濃度は先の教示よりも低いが、高濃度の塩化物イオンが存在するため、そのような低いビグアニド濃度では、その溶液はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して特には有効ではない。
【0006】
PCT公開明細書WO02/38161(Smith)は、0.2重量%未満の塩化ナトリウムを含む、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)消毒溶液を開示している。しかしながら、その溶液は、なおかなりの量の塩化ナトリウムを張性のために添加しておりかつpH調整のために塩酸を使用しているため、塩化物イオンを依然として有意な量で含有している。その結果、消毒特性を維持するために、その溶液は、最低1ppmのPHMBを有しなくてはならない。
【0007】
したがって、高度の抗菌活性、特にC.アルビカンスに対する高度の活性をも保持しつつ、ソフトコンタクトレンズでの使用に適合する改良された消毒および保存溶液が必要である。さらに、毒性と眼の中および周囲の組織に対する刺激を低い程度に維持する、改良された保存システムが必要である。
【0008】
発明の概要
驚くことに、先に開示されたものよりも有意に低い抗菌剤濃度を有する溶液が、その溶液に負電荷部位または部分的に負電荷部位を有する化合物、例えばハロゲン化物、アルカリ金属ハロゲン化物、カルボン酸官能基を有する化合物、硫酸官能基を有する化合物、リン酸官能基を有する化合物、およびフェノール性化合物が実質的に存在しない場合に、C.アルビカンスに対して有効でありうることが見出された。そのような基の濃度が、イオンとして、1500ppm未満であるそれらの溶液が特に有効である。
【0009】
一つの態様では、本発明は、1ppm以下の抗菌性化合物またはその水溶性塩を含み、200〜450mOs/kgの範囲の張性と6〜8の間のpHを有し、かつ実質的に塩化物イオンを含まない、コンタクトレンズのような物品を消毒および/または保存するための緩衝水溶液を提供する。実質的に塩化物イオンを含まないことは、そのようなイオンの濃度が1500ppm未満であることを意味する。
【0010】
他の態様では、本発明は、抗菌的に有効量のビグアニドまたはその水溶性塩を含み、200〜450mOs/kgの範囲の張性と6〜8の間のpHを有し、かつPHMBに親和性の負電荷イオン、例えば塩化物イオンおよびリン酸イオンを実質的に含まない、コンタクトレンズのような物品を消毒および/または保存するための緩衝水溶液を提供する。塩化物イオンおよびリン酸イオンを実質的に含まないことは、そのようなイオンの合計濃度が1500ppm未満であることを意味する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、1ppm以下のビグアニドまたはその水溶性塩を含み、200〜450mOs/kgの範囲の張性を有する、コンタクトレンズのような物品を消毒および/または保存するための緩衝水溶液であって、その溶液の張性の大部分がハロゲン化物を含まない電解質および非電解質化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物によりもたらされる緩衝水溶液を提供する。非電解質とは、水中でイオンに解離しないそれらの化合物を意味する。
【0012】
さらに他の態様では、本発明は、1ppm以下のビグアニドまたはその水溶性塩および1000ppm未満の塩化物イオンを含む、コンタクトレンズのような物品を消毒および/または保存するための緩衝水溶液を提供する。緩衝剤は、8.0より大きいpKaを有し、また、正電荷を有するかあるいは中性pHで電荷を有しないかのいずれかである(例えば、TRIS、ビス−TRIS−プロパン)。
【0013】
さらに他の態様では、本発明は、1ppm以下のビグアニドまたはその水溶性塩;1000ppm未満の塩化物イオン;および0.1%未満の濃度のリン酸緩衝剤を含む、コンタクトレンズのような物品を消毒および/または保存するためのリン酸緩衝水溶液を提供する。
【0014】
本発明はまた、コンタクトレンズを、1ppm未満の抗菌剤、好ましくはビグアニドまたはその水溶性塩を含み、200〜450mOsm/kgの範囲の張性と6〜8の間のpHを有し、かつ塩化物イオンおよびリン酸イオンを実質的に含まない液状媒体と接触させることを含む、ソフトコンタクトレンズの消毒方法を包含する。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の態様ならびに効果は、詳細な説明、実施例および特許請求の範囲において明らかとなるであろう。
【0016】
好適実施態様の詳細な説明
本発明は、1ppm未満のビグアニドまたはその水溶性塩を含む水溶液の形態の組成物;およびその溶液を用いる、コンタクトレンズ、とくにソフトコンタクトレンズを消毒および/または保存するための方法に関する。本発明の消毒溶液は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、ATCC6538)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、ATCC9027)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens、ATCC13880)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans、ATCC10231)およびフザリウム・ソラニ(Fusarium solani、ATCC36031)を包含するが、これらに限定されない、広い範囲の微生物に対して有効である。C.アルビカンスは、一般に、最も殺菌しにくい有機体であるので、それは、通常、ある特定の溶液の全体としての有効性の良好な指標となる。
【0017】
消毒溶液は、一般的には、1種以上の活性成分(たとえば、抗菌剤および/または防腐剤)を、推奨される最小浸漬時間内にコンタクトレンズ表面の有害な微生物を破壊するのに充分な濃度で含有する、コンタクトレンズケア製品として定義される。推奨される最小浸漬時間は、消毒溶液のパッケージの使用説明書に含まれている。その容器または壜と、使用説明書を含むパッケージとを組合わせた本発明の溶液を、コンタクトレンズのケアのための、改良された新規なキット、パッケージまたはシステムとみなしうる。
【0018】
用語「ソフトレンズ」は、使用する際のレンズの含水量が少なくとも20重量%であるような、親水性繰返し単位の部分を有するレンズを意味する。本明細書で用いられる用語「ソフトコンタクトレンズ」は、一般的には、小さい力で容易に屈曲するようなコンタクトレンズを意味する。代表的には、ソフトコンタクトレンズは、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよび/または他の親水性モノマーから誘導された一定比率の繰返し単位を有し、典型的には架橋剤で架橋結合されたポリマーから形成される。対照的に、慣用の「ハードコンタクトレンズ」は、目の角膜の一部のみを被覆するにすぎず、通常は、ジメタクリル酸エチレングリコールなどで架橋結合されたポリ(メタクリル酸メチル)からなり、慣用のガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGP)は、代表的には、より酸素透過性の材料をもたらす、ケイ素を含有するモノマーからなる。本発明の溶液は、ハードコンタクトレンズの洗浄に適当ではあるが、ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒に特に有用である。
【0019】
コンタクトレンズ溶液に関する用語「目に安全な」とは、その溶液で処理されたコンタクトレンズが、すすぎなしで、目に直接的に置くことに関して安全であることを意味する。すなわち、その溶液が、コンタクトレンズを介しての目との日常的な接触に関して安全かつ充分快適であることである。目に安全な溶液は、目に適合性である張性およびpHを有し、国際的なISO規格および米国のFDA規制に従う、細胞に有毒でない材料およびその量からなる。本発明の溶液は目に安全であることが好ましい。
【0020】
用語「目に適合性である」とは、長時間にわたって、目を有意に損傷することなく、かつ使用者の有意な不快感なしに、目と密接に接触させうる溶液を意味する。本発明の溶液は目に適合性であることが好ましい。
【0021】
用語「消毒溶液」は、コンタクトレンズに存在する一群の微生物の存在を低減するか、または実質的に排除するのに有効である、1種以上の抗菌性化合物を含有する溶液を意味し、溶液、またはその溶液に浸漬した後のコンタクトレンズを、そのような微生物の特定の接種量で攻撃することによって試験することができる。本明細書で用いられる用語「消毒溶液」は、その溶液が、防腐溶液にも役立ちうること、または消毒溶液が、コンタクトレンズの毎日の洗浄、すすぎおよび保存にもさらに役立ちうる可能性を排除しない。
【0022】
用語「洗浄」は、溶液が、1種以上の活性成分を、洗浄しようとする物品の表面の緩く保持されたレンズ沈積物およびその他の汚染物質をほぐしかつ除去するのに充分な濃度で含有することを意味する。本発明では必要ないが、使用者は、本発明の溶液を、指による操作(たとえば、溶液を用いてレンズを指でこすること)、またはレンズに接触させた溶液を攪拌する付属的装置、たとえば機械的な洗浄支援装置と共に用いてもよい。
【0023】
物品、たとえばコンタクトレンズの洗浄、化学的消毒、保存およびすすぎに役立つ溶液を、本明細書では「マルチパーパスソリューション」と呼ぶ。そのような溶液は、「マルチパーパスソリューションシステム」または「マルチパーパスソリューションパッケージ」の一部であってよい。マルチパーパスソリューション、システムまたはパッケージを用いるための操作は、「多機能性消毒方式」と呼ばれる。マルチパーパスソリューションは、一部の装用者、たとえば化学的消毒薬その他の化学的薬剤に特に敏感な装用者が、レンズの挿入の前に別の溶液、たとえば無菌生理食塩水でコンタクトレンズをすすぐか、または湿潤させることを好むであろうという可能性を排除するものではない。用語「マルチパーパスソリューション」は、また、毎日ベースで用いられない定期的クリーナー、または代表的には毎週ベースで用いられる、タンパク質を除去する補足的クリーナー、たとえば酵素クリーナーの可能性も排除しない。
【0024】
本発明の消毒組成物は、抗菌剤を含有する。抗菌剤は、それらの抗菌活性が有機体との化学的または物理化学的相互作用を通してもたらされる、モノマー状またはポリマー状のいずれかの抗菌剤であってよい。本明細書で使用されるように、用語「ポリマー状抗菌剤」は、抗菌活性を有する任意の窒素含有ポリマーまたはコポリマーをいう。好ましいポリマー状抗菌剤として、ポリマー状四級アンモニウム化合物であるポリクオテリニウム−1(polyquaternium-1)およびポリマー状ビグアニドであるポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が挙げられる。これらの好ましい抗菌剤は、米国特許第4,407,791号および第4,525,346号(Stark)明細書ならびに米国特許第4,758,595および第4,836,986号(Ogunbiyi)明細書に、各々開示されている。本発明の組成物および方法に好適な他の抗菌剤として、他の四級アンモニウム化合物、例えばハロゲン化ベンザルコニウムおよび他のビグアニド、例えばクロルヘキシジンが挙げられる。好ましい抗菌剤は、ビグアニドであり、最も好ましくは、ポリマー状ビグアニドである。
【0025】
本発明の溶液は、抗菌剤、好ましくはビグアニドを、消毒の目的に好適な濃度、好ましくは約1ppm未満、より好ましくは約0.01ppm〜0.9ppm、最も好ましくは0.5ppm未満、特には約0.25ppmで含有する。
【0026】
現在有用な抗菌性ビグアニドとして、ビグアニド、ビグアニドポリマー、それらの塩、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ビグアニドは、アレキシジン遊離塩基、アレキシジンの塩、クロロヘキシジン遊離塩、クロロヘキシジンの塩、ヘキサメチレンビグアニド、およびそれらのポリマー、ならびにそれらの塩が挙げられる。最も好ましくは、ビグアニドは、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)とも称される、ヘキサメチレンビグアニドポリマー(PHMB)である。
【0027】
驚くことに、本発明で検討される相対的に低い濃度のビグアニドが、1500ppm未満の塩化物イオンを有する溶液中でC.アルビカンスを含む広範囲の微生物に対して有効であることが見出された。好ましくは、その溶液は、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、最も好ましくは250ppm未満の濃度の塩化物イオンを含有する。
【0028】
好ましくは、本発明の溶液は、低濃度のリン酸イオンを有し、好ましくは実質的にリン酸イオンを含まない。リン酸イオンと塩化物イオンの合計で1500ppm未満を有する溶液は、驚くことに、C.アルビカンスを含む広範囲の微生物に対して有効であることが見出された。好ましくは、その溶液は、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、最も好ましくは250ppm未満の濃度の塩化物イオンを含有する。先に公知の溶液は、多量のリン酸緩衝剤、塩化ナトリウムまたはカリウム張性剤、およびpHを下方調整するための塩酸またはリン酸を使用しているため、一般的に、リン酸イオンと塩化物イオンの双方を非常に高い濃度で有している。そのような緩衝剤、張性剤、およびpH調整剤が本発明で使用されうるが、それらは、本発明で定義されるよりも高いイオン濃度をもたらしうる量よりも少ない量で使用されなくてはならない。
【0029】
本発明の組成物は、好ましくは、緩衝剤を含む。緩衝剤は、pHを好ましくは所望の範囲、例えば、約6〜約8.5、または約6〜約7、または約7〜約8の生理的に許容される範囲に保持する。特に、その溶液は、好ましくは約6.5〜7.5、最も好ましくは約6.8〜約7.6の範囲のpHを有する。
【0030】
本発明に係るコンタクトレンズケア組成物の成分としての好適な緩衝物質は、当業者に公知である。例は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、クエン酸、クエン酸カリウム等のクエン酸塩、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩、TRIS(トロメタモール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−TRIS−プロパン、NaHPO、NaHPO、およびKHPO等のリン酸緩衝剤またはそれらの混合物である。しかしながら、リン酸緩衝剤が使用される場合、0.1%未満、好ましくは0.06%未満、より好ましくは0.05%未満、最も好ましくは約0.02%の合計濃度で使用される必要がある。リン酸緩衝剤が0.015%未満の濃度であっても、有用な溶液を与えることが見出されている。
【0031】
あるいは、TRISのような緩衝剤が典型的な濃度で溶液に添加される場合、pHは9.0よりも大きく、下方に調整しなければならない。過去には、pHを下げるために塩酸を用いることが一般的であった。そのような添加は、溶液にさらなる塩化物イオンを添加することになるため、好適なpHに達するのに必要な酸の量を最小とするためにTRISの濃度を下げるか、および/または塩化物イオンまたはリン酸イオンを含まない酸を用いるかのいずれかが好ましい。当然ながら、溶液中の塩化物イオンおよびリン酸イオンの濃度が本発明を規定する範囲を超えない限り、pHを下方に調整するために塩酸および/またはリン酸を使用することは本発明の範囲内である。さらに、TRIS緩衝剤は、しばしばTRIS・HClとして供給され、これはさらに塩化物イオンを溶液に導入する。したがって、TRIS等の緩衝剤を使用する場合、HClを含まない、「遊離塩基」形態として知られているものを使用することが好ましい。
【0032】
本発明に係るコンタクトレンズケア溶液は、好ましくは、涙液と等張性であるように調製される。涙液と等張性である溶液は、一般に、その濃度が0.9%塩化ナトリウム溶液(308mOsm/kg)の濃度に対応する溶液であると理解される。塩化カリウムまたは塩化ナトリウムがこの技術分野での大半のコンタクトレンズ溶液において張性剤として使用されている。しかしながら、0.9%塩化ナトリウム溶液は、溶液におよそ5500ppmの塩化物イオンをもたらす。そのような高い濃度の塩化物イオンは、PHMBの有効性を減じるものであり、本発明の範囲内ではない。したがって、本発明の溶液、特に0.5ppm未満のPHMBを有するものは、好ましくは約0.25%未満の塩化ナトリウムおよび0.36%未満の塩化カリウムを使用する。より好ましくは、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの双方は、存在する場合、0.1%未満、最も好ましくは0.05%未満で存在する。特に好ましいものは、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムを全く有しないそれらの溶液である。
【0033】
したがって、涙液との等張性、または他の所望の張性であっても、張性に影響を与える有機または無機の物質を添加することにより調整しうる。前者は例えば、約1〜20重量%の量で、また後者は約0.1〜5重量%の量で使用しうる。一般に、張性に影響を与える物質の添加量は、本発明に係る組成物の張性が特に200〜450mOsm/kgの範囲、好ましくは220〜330mOsm/kgの範囲、最も好ましくは220〜310mOsm/kgの範囲となるような量である。この種の典型的な有機物質は、例えば、グリセリン、尿素、プロピレングリコール、ポリオール類、またはマンニトールもしくはソルビトールのような糖質および糖類であり、この種の典型的な無機物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、およびホウ酸塩である。これらの化合物相互の混合物も本発明で使用しうる。上記したように、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムの使用はいずれも好ましくない。代わりに、塩化物を含まない張性剤、好ましくはマンニトールまたはソルビトールを使用することが好ましく、ソルビトールが最も好ましい。コンタクトレンズ以外の洗浄が目的である場合は、張性ビルダーは存在しなくてもよく、あるいは上記よりもさらに多くの量であってもよい。
【0034】
コンタクトレンズケア製品の張性を調整するためにソルビトールを添加することは公知である。英国特許第2,205,175号明細書および米国特許第3,888,782号明細書には、コンタクトレンズケア製品用粉末混合物の調製のための担体材料としてのソルビトールが記載されている。ソルビトールは、コンタクトレンズを挿入した後に涙膜を安定化させることを助け、これにより水性層の重大な損失を防止することが見出された。このことは、涙膜の減少をもたらす、乾燥の発生から保護する。界面活性物質および保存剤により引き起こされるマイナス効果は減少し、そしてコンタクトレンズの乾燥が防止される。
【0035】
さらに、ソルビトールは細胞毒性をもたず、また溶液の抗菌能に悪影響を与えない。驚くことに、ソルビトールの添加は、毒性のようなマイナス効果をもたらすことなく、本発明に係るコンタクトレンズケア組成物中に存在する抗菌性化合物、例えばPHMBの微生物学的な効能を実質的に増大させることが見出された。
【0036】
ソルビトールは、本発明に係る好ましいコンタクトレンズケア組成物中で、約0.4〜約18重量%の量、特に2〜8重量%の量、より好ましくは3〜6重量%の量、最も好ましくは4〜6重量%の量で使用される。
【0037】
溶液は、一種以上の粘度付与剤をも含んでいてもよい。粘度付与成分は、好ましくは低濃度または減少した濃度で有効であり、本発明溶液の他の成分と適合性であり、かつ非イオン性である。そのような粘度付与成分は、界面活性成分の洗浄および湿潤活性を向上および/または持続させるのに、および/またはレンズ表面をより親水性(より小さい親油性)にするようにコンディショニングするのに、および/または目で緩和剤として働く上で有効である。溶液粘度を増大させると、レンズ上で膜が形成され、これは処理されたコンタクトレンズの快適な装用を促進する。粘度付与成分はまた、挿入している間、目の表面での衝撃を和らげる働きをし、また、目への刺激を緩和する。
【0038】
好適な粘度付与成分として、ポリビニルピロリドン、水溶性天然ガム、セルロース系ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。有用な天然ガムとして、グアーガム、トラガカントガム等が挙げられる。有用なセルロース系粘度付与成分として、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等が挙げられる。より好ましくは、粘度付与剤は、セルロース誘導体(ポリマー)およびそれらの混合物から選択される。非常に有用な粘度付与成分は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0039】
本発明の組成物中で使用されるポリビニルピロリドン(PVP)は、1−ビニル−2−ピロリドンモノマーに由来する少なくとも90%の繰返し単位を含む、直鎖状ホモポリマーまたは実質的に直鎖状ホモポリマーであり、そのポリマーは、より好ましくは、少なくとも約95%または実質的にすべてがその繰返し単位を含み、残余は重合適合性のモノマー、好ましくは中性モノマー、例えばアルケン類またはアクリル酸類から選択される。PVPに対する他の同義語として、ポビドン(povidone)、ポリビドン(polyvidone)、1−ビニル−2−ピロリドン、および1−エテニル−2−ピロリオノン(CAS登録番号90003−39−8)が挙げられる。本発明で好適に用いられるPVPは、約10,000〜250,000、好ましくは30,000〜100,000の重量平均分子量を有する。そのような材料は、ISPテクノロジー社の商品名PLASDONE(商標) K−29/32、BASFの商品名KOLLIDON(商標)、USPグレードのPVPとして、例えばKOLLIDON(商標) K−30またはK−90を含む、多くの会社により販売されている。本発明はいかなる特定のPVPに限定されるものではないが、K−90PVPが好ましく、より好ましくは医薬グレードのものである。
【0040】
マルチパーパスソリューションは、好ましくは、75cps未満、好ましくは1〜50cps、最も好ましくは1〜25cpsの粘度を有する。粘度付与成分は、溶液の粘度を、USP試験法No.911により測定して、好ましくは約1.0〜約30の範囲に、または25℃で約1000cps程度にまで、好ましくは75cps未満、最も好ましくは25未満まで増加させるのに有効な量で使用される。この範囲の粘度増加を達成するために、粘度付与成分を好ましくは約0.01%〜約5%(w/v)の量で使用し、約0.05%〜約0.5%の量がより好ましい。溶液の粘度は、そのような粘度の変化はソフトコンタクトレンズの性能を害するので、6.0〜8.0、好ましくは6.5〜7.5の任意のpHにおいて、好ましくは1000cpsを超えず、好ましくは750cpsを超えず、最も好ましくは25cpsを超えない。
【0041】
本発明の溶液は、場合により、コンタクトレンズを洗浄するための界面活性剤を含有してもよい。アニオン、カチオン、非イオンおよび両性界面活性剤を含む、広範な界面活性剤が従来技術において公知である。ある種のイオン性界面活性剤はPHMBの抗菌作用に有害であると考えられているので、非イオン界面活性剤が特に好ましい。
【0042】
良好な洗浄活性を有する非イオン界面活性剤として、BASF社からの商品名Pluronic、例えばPluronic P104またはL64として入手できる種々の界面活性剤を含む、ある種のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー、poloxamer)界面活性剤が挙げられる。他の代表的な非イオン界面活性剤として、エトキシル化アルキルフェノール類、例えば商品名TRITON(Union Carbide, Tarrytown, N.Y., USA)およびIGEPAL(Rhone-Poulenc, Cranbury, N.J., USA)として入手できる種々の界面活性剤;ポリソルベート類、例えば、商品名TWEEN(ICI Americas, Inc., Wilmington, Del., USA)として入手できるポリソルベート界面活性剤を含む、ポリソルベート20;ならびにアルキルグルコシド類およびポリグルコシド類、例えば、商品名PLANTAREN(Henkel Corp., Hoboken, N.J., USA)として入手できる製品が挙げられる。好ましい界面活性剤として、ポリエトキシル化ひまし油が挙げられる。これらの界面活性剤は、商品名CREMAPHORとしてBASFから市販されている。
【0043】
コンタクトレンズ沈積物に対する洗浄活性を有する界面活性剤は、組成物の約0.001〜約5重量%、好ましくは約0.005〜約2重量%で使用することができ、約0.01〜約0.5重量%が特に好ましい。
【0044】
好ましい界面活性剤として、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドのホモポリマーおよびある種のポロキサマー、例えば、商品名Pluronic 17R4、Pluronic F−68NF、Pluronic F68LFおよびPluronic F127としてBASFから市販されている材料が挙げられ、Pluronic F−68NF(National Formularyグレード)が最も好ましい。存在する場合、ポロキサマーは、約0.001〜約10重量%、好ましくは約0.01〜約1重量%、より好ましくは約0.005〜約0.2%で使用しうる。
【0045】
本発明の溶液は、好ましくはデクスパンテノール(dexpanthenol)、パントテン酸のアルコールを含有する。デクスパンテノールは、本発明に係る溶液中で、約0.005%〜10%の量、特に0.01〜5%の量、好ましくは0.01〜1%の量、より好ましくは0.01〜0.5%の量、最も好ましくは約0.01〜0.1%の量で使用しうる。
【0046】
本発明の溶液は、好ましくはチロキサポール(tyloxapol)を含有する。チロキサポールは、Rohm&Haas社(Philadelphia, PA)から市販されている、オキシエチル化三級オクチルフェノールホルムアルデヒドポリマーである。チロキサポールは、水に自由に溶解する、界面張力減少特性を有する非イオン界面活性剤である。チロキサポールは、0.005〜1.0%、好ましくは0.01〜0.5%、最も好ましくは約0.01〜0.03%の範囲の濃度で好適に使用される。溶液がチロキサポールを含有する場合、同じくポロキサマーまたはポロキサマーの混合物を、0.05〜1%、好ましくは0.05〜0.5%、より好ましくは約0.05〜0.2%の範囲の濃度で好適に含有する。
【0047】
本組成物は、好ましくは、有効量のキレート化成分を含む。任意の好適な、好ましい眼用として許容しうる、キレート化成分を、本組成物中に含有しうが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、それらの塩、およびそれらの混合物が特に有効である。好ましくは、本溶液は、約0.02%(w/v)未満;特に0.01%(w/v)以下;より好ましくは0.008%(w/v)未満;最も好ましくは0.003%〜0.005%の間の有効量で、キレート化成分を含む。そのような少量の本組成物中のキレート化成分は、所望のキレート化および/または封止機能をもたらす上で依然として有効であり、同時に、眼の中でより良好に許容され、それにより使用者の不快感および/または目の刺激のリスクが減少する。さらに、驚くことに、EDTAはレンズケア溶液中で通常使用される濃度で、PHMBの抗菌特性に阻害効果を有することが見出された。本明細書中に記載した濃度は、その抗菌特性に、有意な程度には悪影響を及ぼさない。
【0048】
本発明の他の実施態様において、その溶液の張性の大部分がハロゲン化物を含まない電解質(例えば、重炭酸ナトリウム)および非電解質化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物によりもたらされる。非電解質とは、水中で容易にはイオンに解離しないそれらの化合物を意味する。例として、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリトール、およびイノシトールが挙げられるが、それらに限定されない。そのような溶液は、200〜450mOsm/kgの範囲、好ましくは220〜330mOsm/kgの範囲、最も好ましくは270〜310mOsm/kgの範囲の張性を有し、溶液の張性の少なくとも50%は、1種以上のハロゲン化物を含まない電解質または非電解質化合物によりもたらされる。具体的には、溶液の張性の少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%が、1種以上のハロゲン化物を含まない電解質または非電解質化合物によりもたらされる。
【0049】
さらにより好ましいのは、非電解質化合物がその溶液の張性の少なくとも50%をもたらす溶液である。より具体的には、溶液の張性の少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%が、1種以上の非電解質化合物によりもたらされる。具体的には、少なくとも3%のソルビトール、より好ましくは少なくとも4%のソルビトール、最も好ましくは少なくとも5%のソルビトールを有する溶液が好ましい。
【0050】
溶液の張性の少なくとも50%が非電解質化合物によりもたらされる溶液においては、ビグアニド抗菌性化合物の濃度を大きく減少させることができる。例えば、好ましい抗菌性化合物、PHMBは、1ppmという低い濃度で、あるいは0.1ppmという低い濃度でさえも、C.アルビカンスに対して消毒溶液中で有効に使用することができる。より好ましくは、PHMBは、0.5ppm以下、特に0.5ppm未満、より好ましくは0.25ppm以下、最も好ましくは0.15ppm以下で存在する。
【0051】
本発明の溶液については実質的に塩化物イオンを含まないことが一般に好ましいが、本発明のさらに他の実施態様は、少ない濃度のリン酸緩衝剤からの少量のリン酸イオンを有する溶液である。驚くことに、1000ppm未満の塩化物イオンを有し、0.1%未満の濃度のリン酸緩衝剤を有する溶液は、リン酸緩衝剤なしの溶液に比べて、抗菌能を維持しつつ、より良好な洗浄能をもたらすことが見出された。
【0052】
好ましくは、リン酸緩衝剤を含む溶液は、500ppm未満の塩化物イオン、より好ましくは250ppm未満の塩化物イオン、最も好ましくは100ppm未満の塩化物イオンを有する。さらに、リン酸緩衝剤(NaHPO、NaHPO、およびKHPOならびにそれらの混合物)の合計濃度が、0.06%未満、より好ましくは0.025%未満、最も好ましくは約0.005%〜0.015%の間であることが好ましい。
【0053】
種々のリン酸緩衝剤が、同じ重量%の緩衝剤から溶液に異なる量のリン酸イオンをもたらす原因となるため、本発明は、あるいは、溶液中のppmリン酸イオンで記載することができる。この方法においては、リン酸緩衝溶液は、800ppm未満のリン酸イオン、特には、500ppm未満のリン酸イオン、より好ましくは200ppm未満のリン酸イオン、最も好ましくは40ppm〜120ppmのリン酸イオンを含有することが好ましい。溶液中に約0.25ppm未満のPHMBが存在する場合は、リン酸濃度をよりさらに減少させることが望ましい。
【0054】
以下の成分を含む水溶液は、コンタクトレンズの消毒に特に有用であることが見出された。
PHMB 1ppm未満
デクスパンテノール 0.005%〜1%
チロキサポール 0.01%〜1%
NaHPO 0.06%未満
EDTA 0.2%未満
ポロキサマー 0.01%〜1%
PVP 0.01%〜1%
ソルビトール 少なくとも1%
塩化物イオン 1000ppm未満
【0055】
さらにより好ましくは、以下の成分を有するそれらの溶液である。
PHMB 0.5ppm未満
デクスパンテノール 0.01%〜0.1%
チロキサポール 0%〜0.5%
NaHPO 0.001%〜0.05%
EDTA 0.003%〜0.005%
ポロキサマー 0.001%〜0.5%
PVP 0.1%〜0.3%
ソルビトール 少なくとも4%
塩化物イオン 500ppm未満
【0056】
本明細書に記載の組成物を用いてソフトコンタクトレンズを処理する方法は、本発明の範囲内に包含される。そのような方法は、ソフトコンタクトレンズを、コンタクトレンズに所望の処理をもたらすのに有効な条件で、そのような組成物と接触させることを含む。
【0057】
接触温度は、約0℃〜約100℃の範囲内、より好ましくは約10℃〜約60℃の範囲内、さらにより好ましくは約15℃〜約37℃の範囲内であるのが好ましい。周囲温度でか、またはほぼ周囲温度での接触が、非常に好都合かつ有用である。接触は、大気圧でか、またはほぼ大気圧で起こるのが好ましい。接触は、好ましくは、約5分間または約1時間〜約12時間もしくはそれ以上の範囲の時間で起こる。特に好ましくは、0.5ppm未満のPHMBを有し、レンズと15分以内の接触で、C.アルビカンスにおける少なくとも1logの減少が得られるそれらの溶液である。同様に好ましいものは、0.25ppm未満のPHMBを有し、15分以内で、C.アルビカンスにおける少なくとも1.0、より好ましくは1.5logの減少、より好ましくは30分以内で、C.アルビカンスにおける少なくとも2.0logの減少が得られるそれらである。
【0058】
コンタクトレンズは、溶液中にレンズを浸漬させることにより、溶液と接触させることができる。必要ではないが、コンタクトレンズを含む溶液は、例えば、溶液およびコンタクトレンズを含む容器を振盪することにより、攪拌して、レンズからの沈積物質の除去を促進することができる。
【0059】
本発明の溶液および方法は、本発明の溶液が酵素、例えばUNIZYME(登録商標)のタンパク質分解活性にネガティブな効果を与えないので、コンタクトレンズから残骸(debris)または沈積物質を除去するために酵素と組み合わせて使用しうる。そのような接触工程の後、コンタクトレンズは、場合により、生理食塩水を用いて手でこするか、あるいはこすらずにすすぐだけでも、レンズからさらに沈積物質を除去しうる。洗浄方法は、装用者の目にレンズを戻す前に、実質的に液状水性媒体を含まないレンズをすすぐことをも含む。
【0060】
以下の非制限的な実施例は、本発明のいくつかの態様を示す。
【0061】
実施例1
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.5ppm
ビス−TRIS−プロパン 0.1%
デクスパンテノール 0.02%
ソルビトール 4%
PLURONIC F−127 0.1%
チロキサポール 0.02%
リン酸 pHを6.860に
溶液の張性は、237mOsm/kgであった。
【0062】
実施例2
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
ビス−TRIS−プロパン 0.1%
デクスパンテノール 0.02%
ソルビトール 5%
PLURONIC F−127 0.1%
チロキサポール 0.02%
リン酸 pHを7.040に
溶液の張性は、280mOsm/kgであった。
【0063】
実施例3
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
トロメタミン 0.1%
デクスパンテノール 0.02%
ソルビトール 5%
PLURONIC F−127 0.1%
チロキサポール 0.02%
ホウ酸 pHを7.203に
溶液の張性は、281mOsm/kgであった。
【0064】
実施例4
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
トロメタミン 0.1%
デクスパンテノール 0.02%
ソルビトール 5%
PLURONIC F−127 0.1%
チロキサポール 0.02%
リン酸 pHを7.394に
溶液の張性は、295mOsm/kgであった。
【0065】
実施例5
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 1.0ppm
ビス−TRIS−プロパン 0.1%
デクスパンテノール 1.0%
ソルビトール 4%
PLURONIC F−127 0.1%
CHEMOPHORE RH40 0.1%
リン酸 pHを6.954に
溶液の張性は、287mOsm/kgであった。
【0066】
実施例6
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 1.0ppm
ビス−TRIS−プロパン 0.1%
デクスパンテノール 0.2%
ソルビトール 4%
PLURONIC F−127 0.1%
チロキサポール 0.02%
リン酸 pHを7.095に
溶液の張性は、241mOsm/kgであった。
【0067】
実施例7
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 1.0ppm
ビス−TRIS−プロパン 0.1%
デクスパンテノール 0.1%
ソルビトール 4%
PLURONIC F−127 0.1%
CHEMOPHORE RH40 0.1%
リン酸 pHを7.060に
溶液の張性は、243mOsm/kgであった。
【0068】
実施例8
実施例1〜7に従って調製された溶液のC.アルビカンスに対する消毒性能を評価するために、二つの他の溶液と比較して、一連の試験を行った。以下、組成物Aと称する、これらの溶液の第一のものは、1.0ppmのポリマー状ビグアニドと張性剤としての塩化ナトリウムを含む、商標RENU(登録商標)MultiPlusとして販売されている市販の溶液である。以下、組成物Bと称する、第二のものは、1.0ppmのポリマー状ビグアニドと張性剤としての塩化ナトリウムを含む、商標SOLOCARE(登録商標)PLUSとして販売されている市販の溶液である。
【0069】
【表1】

【0070】
これらの結果は、少なくとも4倍の抗菌剤成分を有する、リン酸塩およびNaClを含む組成物Bと比較して、0.25ppmという低い抗菌剤濃度を有する、リン酸塩およびNaClを含まない溶液の有効性を示す。
【0071】
実施例9〜13
0.25ppmのPHMB濃度を有する低塩化物レンズケア溶液の有効性を例証するために、本発明に係るいくつかの溶液を、以下の成分:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.02%
チロキサポール 0.02%
NaHPO 0.01%
PLURONIC 17R4 0.05%
PVP(K−90) 0.4%
および表2に示される以下の追加的な成分を配合することにより調製した。溶液は、5.38CFM/mLの接種濃度でC.アルビカンスに対して試験された。
【0072】
【表2】

【0073】
これらの結果は、少なくとも4倍の抗菌剤成分を有する、NaClを含む(ただし、高濃度のリン酸緩衝剤を有する)実施例8の組成物Bと比較して、0.25ppmという低い抗菌剤濃度を有する、NaClを含まない(ただし、低濃度のリン酸緩衝剤を有する)溶液の有効性を示す。
【0074】
実施例14〜16
0.25ppmのPHMB濃度を有する、追加的な低塩化物溶液の有効性を例証するために、本発明に係るいくつかの溶液を、以下の成分:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.02%
チロキサポール 0.02%
NaHPO 0.01%
PLURONIC F−68NF 0.1%
ソルビトール 5%
および表3に示される以下の追加的な成分を配合することにより調製した。溶液は、5.38CFM/mLの接種濃度でC.アルビカンスに対して試験された。
【0075】
【表3】

【0076】
これらの結果は、少なくとも4倍の抗菌剤成分を有する、NaClを含む(ただし、高濃度のリン酸緩衝剤を有する)実施例8の組成物Bと比較して、0.25ppmという低い抗菌剤濃度を有する、NaClを含まない(ただし、低濃度のリン酸緩衝剤を有する)溶液の有効性を示す。
【0077】
実施例17〜20
EDTA、種々のグレードのPVPおよび0.25ppmのPHMB濃度を有する、低塩化物溶液の有効性を例証するために、本発明に係るいくつかの溶液を、以下の成分:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.02%
チロキサポール 0.02%
NaHPO 0.01%
EDTA 0.004%
ソルビトール 5%
および表4に示される以下の追加的な成分を配合することにより調製した。溶液は、5.7CFM/mLの接種濃度でC.アルビカンスに対して試験された。
【0078】
【表4】

【0079】
実施例21〜22
EDTA、種々のグレードのPVPおよび0.125ppmのPHMB濃度を有する、低塩化物溶液の有効性を例証するために、本発明に係るいくつかの溶液を、以下の成分:
PHMB 0.125ppm
デクスパンテノール 0.02%
チロキサポール 0.02%
NaHPO 0.01%
EDTA 0.004%
ソルビトール 5%
および表5に示される以下の追加的な成分を配合することにより調製した。溶液は、5.7CFM/mLの接種濃度でC.アルビカンスに対して試験された。
【0080】
【表5】

【0081】
実施例23〜26
EDTA、PVPおよび0.25ppmのPHMB濃度を有し、異なる濃度のリン酸緩衝剤を有する、低塩化物溶液の有効性を例証するために、本発明に係るいくつかの溶液を、以下の成分:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.02%
チロキサポール 0.02%
NaHPO 0.01%
EDTA 0.004%
PLURONIC F−68NF 0.1%
PVP(K−90) 0.2%
ソルビトール 5%
および表6に示される以下の追加的な成分を配合することにより調製した。溶液は、5.60CFM/mLの接種濃度でC.アルビカンスに対して試験された。
【0082】
【表6】

【0083】
実施例26
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
PLURONIC F−127 0.1%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 5%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0084】
実施例27
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
PLURONIC F−127 0.1%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 5%
EDTA 0.004%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0085】
実施例28
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
PLURONIC F−127 0.1%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 2%
プロピレングリコール 1%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0086】
実施例29
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
PLURONIC F−127 0.1%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 5%
PVP(K−90) 0.5%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0087】
実施例30
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
PLURONIC F−127 0.1%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 5%
Pluronic 17R4 0.07%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0088】
実施例31
本発明に係る溶液を、以下の成分を配合することにより調製した:
PHMB 0.25ppm
デクスパンテノール 0.2%
NaHPO 0.001%
チロキサポール 0.02%
ソルビトール 5%
Pluronic酸 F−68LF 0.1%
pHはリン酸および/または水酸化ナトリウムで中性に調整し、また、溶液の張性は許容範囲内であった。
【0089】
実施例32
実施例26−31に従って調製された溶液のC.アルビカンスに対する消毒性能を評価するために、SoloCare PLUS溶液と比較して、一連の試験を行った。
【0090】
【表7】

【0091】
本組成物は、非常に有益で有利な、動作効率およびレンズ装用者/使用者の快適さと受容性の組み合わせをもたらす。コンタクトレンズケア溶液の状況において、レンズ装用者/使用者の快適さと受容性は、例えば、コンタクトレンズの定期的で効果的な処理を促進する上で、非常に重要である。そのようなコンタクトレンズの処理は、究極的には、眼の健康を増進し、コンタクトレンズを装用することにより引き起こされる問題の頻度を減少させる。そこで、レンズ装用者/使用者の快適さと受容性は、コンタクトレンズケア製品において、特に、相当の、さらに向上されたレンズ装用者/使用者の快適さと受容性を示す本組成物において、相当に重要で有益である。
【0092】
本発明を種々の特定の実施例および実施態様に関して説明したが、本発明はそれらに限定されるものではないこと、およびそれは特許請求の範囲内で、さまざまな形で実施することができるものであることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝剤と1%未満のポリマー状抗菌剤を含む水性コンタクトレンズ消毒溶液であって、該溶液が200〜450mOsm/kgの張性、6〜8の間のpH、および1500ppm未満の塩化物イオンの濃度を有する消毒溶液。
【請求項2】
塩化物イオンとリン酸イオンの合計濃度が1500ppm未満である、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項3】
塩化物イオンとリン酸イオンの合計濃度が1500ppm未満である、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項4】
該PHMBの濃度が0.5ppm以下である、請求項3に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項5】
該溶液が、15分以内の接触で、C.アルビカンスを少なくとも1log減少させることをもたらす、請求項4に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項6】
PHMBの濃度が0.25ppm以下である、請求項3に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項7】
該溶液が、15分以内の接触で、C.アルビカンスを少なくとも1.5log減少させることをもたらす、請求項6に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項8】
ハロゲン化物を含まない電解質、非電解質化合物、およびそれらの混合物よりなる群から選択される張性剤をさらに含み、溶液の張性の大部分が該張性剤によりもたらされる、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項9】
該張性剤がソルビトールである、請求項8に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項10】
ソルビトールが、該溶液の少なくとも2重量%の量で存在する、請求項9に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項11】
緩衝剤が0.1%未満の濃度のリン酸緩衝剤であり、塩化物イオンとリン酸イオンの合計濃度が1000ppm未満である、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項12】
該リン酸緩衝剤濃度が0.06%未満である、請求項11に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項13】
該リン酸緩衝剤濃度が0.005〜0.015%である、請求項12に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項14】
少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項15】
該溶液が、チロキサポールおよびポロキサマーの双方を含む、請求項14に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項16】
デクスパンテノールをさらに含む、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項17】
キレート化剤をさらに含む、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項18】
該キレート化剤がEDTAである、請求項17に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項19】
粘度増強剤をさらに含む、請求項1に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項20】
該粘度増強剤がPVPである、請求項19に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項21】
(a)1ppm未満のPHMB;
(b)0.005%〜1%のデクスパンテノール;
(c)0.005%〜1%の界面活性剤;
(d)0.06%未満のリン酸緩衝剤;
(e)0.2%未満のキレート化剤;
(f)0.01%〜1%の粘度増強剤;ならびに
(g)少なくとも1%の、グリセリン、尿素、プロピレングリコール、重炭酸ナトリウム、糖類、アルコール類、ポリオール類およびそれらの混合物よりなる群から選択される張性剤;
を含み、該溶液が、200〜450mOsm/kgの張性、6〜8の間のpH、および1000ppm未満の塩化物イオン濃度を有する、水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項22】
該界面活性剤が、チロキサポール、ポロキサマーおよびそれらの混合物よりなる群から選択され、該キレート化剤がEDTAであり、該粘度増強剤がPVPであり、該張性剤がソルビトールである、請求項21に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項23】
(a)0.5ppm未満のPHMB;
(b)0.01%〜0.1%のデクスパンテノール;
(c)0.001%〜0.5%の界面活性剤;
(d)0.001%〜0.05%のリン酸緩衝剤;
(e)0.1%〜0.3%の粘度増強剤;ならびに
(f)少なくとも4%の、グリセリン、尿素、プロピレングリコール、重炭酸ナトリウム、糖類、アルコール類、ポリオール類およびそれらの混合物よりなる群から選択される張性剤;
を含み、該溶液が、200〜450mOsm/kgの張性、6〜8の間のpH、および500ppm未満の塩化物イオン濃度を有する、請求項21に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項24】
該界面活性剤が、チロキサポール、ポロクキマーおよびそれらの混合物よりなる群から選択され、該キレート化剤がEDTAであり、該粘度増強剤がPVPであり、該張性剤がソルビトールである、請求項23に記載の水性コンタクトレンズ消毒溶液。
【請求項25】
コンタクトレンズの洗浄および消毒方法であって、該コンタクトレンズを、緩衝剤と1ppm未満のポリマー状抗菌剤を含む水溶液と接触させることを含み、該溶液は、200〜450mOsm/kgの張性、6〜8の間のpH、および1500ppm未満の塩化物イオン濃度を有する、コンタクトレンズの洗浄および消毒方法。
【請求項26】
該ポリマー状抗菌剤がPHMBである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該PHMBの濃度が0.5ppm以下である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
該方法が、15分以内の接触で、レンズ上でC.アルビカンスを少なくとも10減少させることをもたらす、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該PHMBの濃度が0.25ppm以下である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
該方法が、15分以内の接触で、レンズ上でC.アルビカンスを少なくとも101.5減少させることをもたらす、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510414(P2006−510414A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560382(P2004−560382)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014138
【国際公開番号】WO2004/054629
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】