説明

レンズ装置および撮影システム

【課題】レンズ装置からカメラ装置に収差補正データを送信する際の通信負荷を軽減する。
【解決手段】レンズ装置1は、カメラ装置12に取り外し可能に装着される。レンズ装置は、撮影光学系20と、該撮影光学系を通してカメラ装置により撮影された画像に対して、撮影光学系の収差に応じた補正処理を行うために用いられる収差補正データを記憶したメモリ4と、収差補正データをカメラ装置に送信するデータ送信手段2とを有する。データ送信手段は、収差補正データの中から、その一部である部分データを、撮影光学系に含まれる光学調節部材の位置または状態とカメラ装置に設けられた撮像素子に関する情報とに応じて選択し、該部分データをカメラ装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置の光学収差に応じた画像の補正処理を行う撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンズ装置が有する撮影光学系は光学収差(色収差やディストーション)を有し、該撮影光学系を通して撮影された画像には、該光学収差に応じた劣化成分が含まれる。
このため、従来の撮影システムでは、レンズ装置によって被写体像が形成されるカメラ装置の撮像面における光学収差量を演算し、その光学収差量に基づいて撮影画像に対する画像処理(補正処理)を行うことで、劣化成分を低減する方法が用いられている。
特許文献1には、レンズ装置の光学収差に関するデータ(収差補正データ)を予め保持したカメラ装置が開示されている。該カメラ装置は、収差補正データと、レンズ装置のズーム、フォーカス、アイリス等の光学調節部材のパラメータとを用いて補正処理における補正量を決定する。
ただし、レンズ交換式の撮影システムにおいて、カメラ装置に装着可能なレンズ装置の種類が多くなると、それらのすべてのレンズ装置に対応した収差補正データをカメラ装置に用意させることは難しい。また、従来あるカメラ装置に装着可能なレンズ装置の新製品が発売された場合に、その新レンズ装置に対応する収差補正データを従来カメラ装置は持っていない。このため、従来カメラ装置に新レンズ装置を装着しても、収差補正を行うことができない。
このようなことから、収差補正データはレンズ装置に持たせておき、該レンズ装置がカメラ装置に装着されたときに、レンズ装置が収差補正データをカメラ装置へ送信し、カメラ装置での補正処理に使用されるようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−135805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンズ装置が収差補正データを持つ場合には、様々な解像度のカメラ装置にて使用可能な収差補正データ、つまりは高解像度のカメラ装置にも対応可能な極めて容量の大きな収差補正データ(高解像度用収差補正データ)を持つ必要がある。
この場合において、高解像度用収差補正データに対応する解像度よりも低い解像度のカメラ装置にレンズ装置を装着する場合でも、レンズ装置は高解像度用収差補正データをカメラ装置に送信する必要があり、無駄な通信負荷が発生する。
【0005】

本発明は、レンズ装置からカメラ装置に収差補正データを送信する際の通信負荷を軽減することができるようにしたレンズ装置および撮影システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、カメラ装置に取り外し可能に装着される。該レンズ装置は、撮影光学系と、該撮影光学系を通してカメラ装置により撮影された画像に対して、撮影光学系の収差に応じた補正処理を行うために用いられる収差補正データを記憶したメモリと、収差補正データをカメラ装置に送信するデータ送信手段とを有する。そして、データ送信手段は、収差補正データの中から、その一部である部分データを、撮影光学系に含まれる光学調節部材の位置または状態とカメラ装置に設けられた撮像素子に関する情報とに応じて選択し、該部分データをカメラ装置に送信することを特徴とする。
なお、上記レンズ装置と、該レンズ装置が取り外し可能に装着され、該レンズ装置から受信した収差補正データを用いて、撮影した画像の補正処理を行うカメラ装置とを含む撮影システムも本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収差補正データの中から補正処理に使用する部分データを選択してカメラ装置に送信するので、レンズ装置からカメラ装置に収差補正データを送信する際の無駄なデータ送信をなくして通信負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の撮影システムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1のカメラシステムでの処理を示すフローチャート。
【図3】実施例1のカメラシステムでの処理を示すフローチャート。
【図4】実施例1のカメラシステムでの処理を示すフローチャート。
【図5】実施例1のカメラシステムにおける撮像素子のイメージサイズと画素を示す図。
【図6】実施例1のカメラシステムにおける送信データの範囲を示す図。
【図7】本発明の実施例2のカメラシステムでの処理を示すフローチャート。
【図8】実施例2における収差補正データのプロット図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1には、本発明の実施例1である撮影システムの構成を示している。レンズ装置1は、カメラ装置12に殿は図示可能に装着される。
レンズ装置1は、不図示のアイリス、ズームレンズ、フォーカスレンズ等の光学調節部材を含む撮影光学系20と、アイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5と、レンズ制御部2と、収差補正演算部3と、光学収差補正データメモリ4とを有する。また、レンズ装置1は、カメラ情報記憶部14も有する。
アイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5は、光学調節部材であるアイリス、ズームレンズおよびフォーカスレンズの位置(または状態)を検出するセンサである。
レンズ制御部2は、光学調節部材の駆動を制御したり、光学収差補正データメモリ4やアイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5とのデータ又は情報のやり取りを行ったり、レンズ通信部7を介したカメラ装置12とのデータの送受信処理を行ったりする。
光学収差補正データメモリ4は、不揮発性メモリであり、レンズ装置1の光学収差に関する収差補正データテーブルが記憶されている。
収差補正演算部3は、光学収差補正データメモリ4に記憶された収差補正データテーブルのうち一部のデータとしての部分データを、アイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5から入力された光学調節部材の位置情報に応じて選択する。この選択された部分データは、データ送信手段としてのレンズ制御部2によってレンズ通信部7を介してカメラ装置12に送信される収差補正データである。
カメラ装置12は、演算部8、画像処理部9、撮像素子10、映像出力部11およびカメラ制御部13を有する。
カメラ制御部13は、カメラ装置12内での各種処理や制御を行うとともに、レンズ装置1との通信を行う。また、カメラ制御部13は、レンズ装置1から受信した収差補正データ(部分データ)を画像処理部9に送信する。
カメラ情報記憶部14は、カメラ装置12から取得した、撮像素子10のイメージサイズや有効画素数といった撮像素子に関する情報(以下、カメラ情報という)を記憶している。
撮像素子10は、レンズ装置1(撮影光学系20)により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。撮像信号は、画像処理部9に入力される。
画像処理部9は、撮像信号に対して各種画像処理を行って撮影画像(撮影映像)を生成する。そして、画像処理部9は、撮影画像に対して収差補正処理を行う。収差補正処理は、レンズ装置1から受信した収差補正データを用いて行われる。収差補正処理が行われた撮影画像は、出力映像信号として映像出力部11へと出力される。
【0011】
図2、図3および図4のフローチャートには、レンズ装置1(主としてレンズ制御部2)で行われる一連の処理を示している。
撮影システムの電源が投入されると、レンズ制御部2は、ステップS101にてカメラ装置12とのシリアル通信が確立したか否かを確認する。具体的には、レンズ装置1からシリアル接続コマンドを送信し、カメラ装置12からシリアル通信許可の返信があれば、カメラ装置12とのシリアル接続が確立されたものとする。
カメラ装置12とのシリアル通信が確立した場合には、ステップS104に進み、レンズ制御部2は、カメラ装置12に対してシリアル通信許可コマンドの返信を行い、ステップS105へ進む。また、カメラ装置12とのシリアル通信が確立しない場合は、カメラ装置12がシリアル通信機能のないカメラ装置であると判断して、ステップS102へ進む。
ステップS102では、レンズ制御部2は、カメラ装置12との通信接続をパラレルモードとして、アナログ通信接続を行う。そして、ステップS103へ進む。
ステップS103では、レンズ制御部2は、カメラ装置12からのシリアル接続確認コマンドを待つ状態としておく。カメラ装置12からシリアル接続確認コマンドを受信した場合はステップS101へ戻り、レンズ制御部2は、シリアル通信許可コマンドの返信を行い(S104)、ステップS105に進む。
ステップS105では、レンズ制御部2は、カメラ装置12が収差補正処理を行うことが可能なカメラ装置であるかどうかを確認するために、カメラ装置12に対して収差補正対応確認コマンドを送信する。
そして、ステップS106において、レンズ制御部2は、カメラ装置12から収差補正対応コマンドを受信したか否かを判定し、受信した場合はステップS107に進む。また、受信しなかった場合は、収差補正対応コマンドの受信を待つようにステップS105へ戻る。
ステップS107では、レンズ制御部2は、カメラ装置12から撮像素子10のイメージサイズや有効画素数等のカメラ情報を取得するため、カメラ装置12に対してカメラ情報取得コマンドを送信する。
ステップS108では、レンズ制御部2は、カメラ情報を取得したか否かを確認する。取得した場合はステップS110に進み、取得できていなければステップS109へ進む。なお、カメラ情報取得コマンドの送信は所定の複数回数行い、ステップS109にて、その回数を確認する。そして、カメラ情報取得コマンドの送信回数が所定回数内であればステップS107を繰り返し、所定回数に達したときはステップS122に進む。カメラ情報取得コマンドを所定回数送信しても、カメラ装置12からカメラ情報を得られない場合には、どのような撮像素子性能を持つカメラ装置なのかを判断できない。このため、レンズ制御部2は、光学収差補正データメモリ4に記憶されている収差補正データの全体をカメラ装置12に送信する。
【0012】
ステップS110では、レンズ制御部2は、新たに取得したカメラ情報によりカメラ情報記憶部14に記憶していた古いカメラ情報を更新する。
次にステップS111では、レンズ制御部2は、取得したカメラ情報に基づいて、カメラ装置12が収差補正処理を行う単位としての許容錯乱円を演算する。
許容錯乱円δは、以下の式で求められる。
【0013】
撮像素子10のイメージサイズの高さをHとし、幅をWとし、有効画素数をNとすると、
δ=(H×W)/N
となる。収差補正処理では、撮像素子10の1画素を基準とした許容錯乱円を1単位とすることが必要である。例えば、対角2/3インチ、有効画素数192万画素、画素形状が正方格子である撮像素子10については、許容錯乱円は以下のようになる。
H=6.6mm、W=8.8mm、N=1920000であるから、
δ=(8.8×6.6)/1920000より、
δ=5.5μm
となる。
図5に示すように、撮像素子10のイメージサイズ(2/3インチ、1/2インチ等)や有効画素数の違いによって、収差補正をすべき単位である1画素のサイズや個数が変化し、カメラ装置12に送信すべき収差補正データの分解能や量に差が発生する。このため、レンズ制御部2において、取得したカメラ情報に基づいて許容錯乱円を演算して収差補正処理の必要精度を求めることで、カメラ装置12に適した容量の収差補正データ(部分データ)をカメラ装置12に送信することが可能となる。
図3において、ステップS112では、レンズ制御部2は、レンズ装置1における現在のアイリス、ズームおよびフォーカスの位置情報を、アイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5から取得する。
次に、ステップS113では、レンズ制御部2は、取得したアイリス、ズームおよびフォーカスの位置情報に応じて、カメラ装置12の撮像素子10において撮影映像の生成に使用されるイメージエリアを算出する。そして、該イメージエリアに応じて、光学収差補正データメモリ4に記憶された収差補正データテーブルの中から収差補正処理に使用する収差補正データ(部分データ)の範囲、つまりはカメラ装置12に送信するデータ範囲を決定する。
カメラ装置12にて行う収差補正処理は、撮像素子10のうち出力する撮影映像の生成に使用するイメージエリアにて行われるので、収差補正データとしても該イメージエリアに対応するデータがあればよい。このため、収差補正データテーブルの全体は必要ない。
図6には、ズーム位置とカメラ装置12に送信するデータ範囲との関係を示している。アイリスおよびフォーカス位置が固定されている場合に、ズーム位置が変わることによって、レンズ装置1から撮像素子10に被写体像が投射される範囲が変わる。ズーム位置がワイド端に近づくほどイメージエリアが大きくなるため、送信データ範囲(使用する範囲)も大きくなる。また、ズーム位置がテレ端に近づくほどイメージエリアが小さくなるため、送信データ範囲も小さくなる。
そして、ステップS114では、レンズ制御部2は、光学収差補正データメモリ4に記憶された収差補正データテーブルから、ステップS113で決定した送信データ範囲の収差補正データを取得する。
次に、ステップS115では、レンズ制御部2は、送信データ範囲の収差補正データと、ステップS111で演算した許容錯乱円とに基づいて、カメラ装置12に実際に送信する収差補正データ(以下、送信収差補正データという)を演算する。
さらにステップS116では、レンズ制御部2は、収差データ送信許可コマンドをカメラ装置12に送信する。そして、ステップS117では、カメラ装置12から収差データ受領許可コマンドを受信したか否かを判定し、受信できなかった場合はステップS112へ戻る。受信できた場合は、ステップS118に進み、レンズ制御部2は、前回の送信収差補正データと今回の送信収差補正データとを比較する。ステップS119において、今回の送信収差補正データが前回の送信収差補正データに対してデータ更新されていなければ、更新なしとしてステップS121に進み、更新なしコマンドをカメラ装置12に送信する。
一方、データ更新されていれば、ステップS120に進み、レンズ制御部2は、許容錯乱円を1単位として送信収差補正データをカメラ装置12に送信する。その後、ステップS112へ戻る。
カメラ装置12の画像処理部9は、受信した送信収差補正データを用いて収差補正処理を行い、映像出力部11を介して収差補正処理後の映像を出力する。
【0014】
さらにステップS109にて、レンズ制御部2は、カメラ情報取得コマンドの送信の回数を確認し、所定回数に達したときはステップS122に進む。
図4に示すステップS122〜ステップS130処理は、前述したステップS112〜ステップS121での処理とほぼ同じであるため、説明は省略する。
【0015】
以上説明したように、本実施例では、レンズ制御部2は、カメラ装置12に送信する収差補正データの作成に必要なカメラ情報(イメージサイズや画素数)をカメラ装置12から取得する。そして、アイリス、ズームおよびフォーカスの位置情報と予め記憶された収差補正データテーブルとを用いて、カメラ装置12に適した収差補正データを作成する。さらに、アイリス、ズームおよびフォーカスの位置情報に応じたイメージエリアに対応する送信すべきデータ範囲を求め、該データ範囲の収差補正データをカメラ装置12に送信する。これにより、レンズ装置1からカメラ装置12への無駄なデータ送信を防ぎ、通信負荷を軽減できる。
なお、本実施例では、レンズ装置1からカメラ装置12に収差補正対応確認コマンドやカメラ情報取得コマンドを送信し、収差補正処理の対応の有無の確認やカメラ情報を取得する場合について説明した。しかし、シリアル通信の確立後、カメラ装置12から、収差補正処理を行うかどうかの情報や撮像素子のイメージサイズや有効画素数といったカメラ情報を送信し、レンズ装置1にて受信するようにしてもよい。
【実施例2】
【0016】
実施例1では、カメラ装置12に送信する収差補正データを許容錯乱円単位のデータとする場合について説明した。これに対し、本実施例では、イメージサークルの中心からの距離(像高)に応じた収差補正データの近似式を作成し、これを送信するようにしてもよい。
本実施例における撮像システムの構成は実施例1と同じである。本実施例において、実施例1と共通する構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0017】
図7のフローチャートには、本実施例での処理を示している。なお、本実施例は、実施例1のステップS115に代わるカメラ装置12への送信データの算出方法を特徴とするため、その前後の処理についての説明は省略する。
ステップS114にて、レンズ制御部2は、アイリス/ズーム/フォーカス位置取得部5からアイリス、ズームおよびフォーカスの位置情報を取得する。そして、レンズ制御部2は、これらの位置情報を用いて、光学収差補正データメモリ4に記憶された収差補正データテーブルの中から、必要な送信データ範囲の収差補正データを取得する。
次にステップS201では、レンズ制御部2は、ステップS111で演算した許容錯乱円を必要分解能の1単位として、ステップS114にて取得した光学収差補正データから、カメラ装置12へ送信する収差補正用近似式を算出するための収差補正データを算出する。
次にステップS202では、レンズ制御部2は、送信データ範囲内における収差補正データの1次の近似式を算出する。近似式の算出について図8を用いて説明する。
図8では、収差補正データをイメージサークルの中心からの距離(像高)に応じた複数の補正量(数値)のデータとして、必要分解能の1単位ごとにプロットしてある。グラフの黒丸が補正量である。
カメラ装置12に送信が必要な送信データ範囲は、アイリス、ズーム、フォーカスの位置に応じて算出され、カメラ装置12にて収差補正処理を行うデータ範囲である。その送信データ範囲内の補正量のデータを、イメージサークルの中心からの距離(像高)を基準として近似式として算出する。
通常、画素数が少ない場合は、送信すべき収差補正データの量は少なくなり、図8(a)に示すようになる。画素数が多い場合は、図8(c)に示すように収差補正データの量が増える。
また、アイリス、ズーム、フォーカスの位置によって送信データ範囲が変わる。例えば、図8(b)に示すように、アイリスおよびフォーカス位置が変わらず、ズーム位置のみテレ側に変化した場合は、図8(a)のワイド側である場合と比較して、送信データ範囲が狭くなる。
このように、送信すべき収差補正データ量は、カメラ装置12の撮像素子10の仕様に応じて変化する。また、アイリス、ズーム、フォーカスの位置よって送信すべきデータ範囲が変化する。
本実施例では、補正量のデータを低次の式から近似していき、最も適した近似式を算出する。
ステップS202では、レンズ制御部2は、まず1次式として補正量ABを、
AB=ax+b
として算出する。
ステップS203では、レンズ制御部2は、算出した1次の近似式と補正量のデータとの差異が許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち、光学中心からの距離(像高)における近似式からの計算値と光学収差補正データメモリ4から演算した収差補正データとを比較する。許容範囲としては、レンズ装置1とカメラ装置12との間で専用の許容範囲を設けてもよいし、収差補正後に出力される映像との関係で許容範囲を決定してもよい。
上記差異が許容範囲内であれば、ステップS204に進み、レンズ制御部2は、近似式をAB=ax+bとして決定する。そして、ステップS116に戻る。一方、許容範囲内でない場合は、ステップS205に進み、近似式の次元数がNか否かを確認する。
近似式の次元は何次元でもよいが、レンズ制御部2での近似式の算出処理に要する時間や、カメラ装置12での処理速度を考えると、3次式程度までがよい。
近似式の次元数がNを超えていない場合には、ステップS206に進み、近似式の次元数を1つ上げて2次元とし、近似式をAB=ax+bx+cとして、再度補正量ABを算出する。
そして、ステップS203に戻り、レンズ制御部2は、算出した2次の近似式と補正量のデータとの差異が許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲内であれば、ステップS204に進み、近似式として決定してステップS116に戻る。
近似式の次元数がNを超えた場合には、ステップS207に進む。ステップS207では、レンズ制御部2は、送信データ範囲のデータの変曲点を算出する。変曲点とは、図8(a)に示すように、補正量のデータ同士を結んだ直線の傾きが変化する点である。
ステップS208では、レンズ制御部2は、補正量データを変曲点ごとに分割し、分割単位ごとに補正量データの1次の近似式を算出する。
例えば、分割数が2である場合、それぞれの補正量の近似式を、
AB=ax+b
AB=ax+b
とする。
次にステップS209では、レンズ制御部2は、それぞれの分割範囲において算出した近似式と補正量のデータとの差異が許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲内であればステップS210に進み、分割単位ごとの近似式として、
AB=ax+b
AB=ax+b
を決定する。そして、ステップS116に戻る。許容範囲内でない場合は、ステップS211に進み、近似式の次元数がNか否かを確認する。
近似式の次元数がNを超えていない場合は、ステップS212に進み、レンズ制御部2は、近似式の次元数を1つ上げ、再度、近似式の算出を行う。例えば、2次式であれば、それぞれの分割範囲での補正量の近似式を、
AB=a+bx+c
AB=a+bx+c
とする。
そして、ステップS209に戻り、レンズ制御部2は、それぞれの分割範囲において算出した近似式と補正量のデータとの差異が許容範囲内であるかを判定する。許容範囲内であればステップS210に進み、近似式として決定し、ステップS115に戻る。
ただし、近似式の決定は分割単位ごとに行い、全ての近似式が同じ次元数である必要はなく、分割単位にて適した近似式を決定すればよい。
このようにして決定した近似式の係数および次数を、送信する収差補正データに含める。その後、ステップS116へ戻る。
近似式の次元数がNを超えた場合は、ステップS213に進む。ステップS213では、レンズ制御部2は、許容範囲内では近似式が決定できなかったため、カメラ装置12に送信する収差補正データを許容錯乱円単位のデータとする。そして、ステップS116へ戻る。
以上説明したように、本実施例では、レンズ装置1のアイリス、ズーム、フォーカス位置から収差補正データを送信するデータ範囲を求め、イメージサークルの中心からの距離(像高)に応じた収差補正データの近似式を作成する。これにより、実施例1に比べてデータ送信量をより少なくすることができ、通信負荷をより軽減することができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
レンズ装置からカメラ装置に収差補正データを送信する際の通信負荷を軽減したレンズ装置および撮影システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 レンズ装置
2 レンズ制御部
3 収差補正演算部
4 光学収差補正データメモリ
5 アイリス、ズーム、フォーカス位置取得部
6 アイリス、ズーム、フォーカス位置検出部
7 レンズ通信部
8 演算部
9 画像処理部
10 CCD
11 映像出力部
12 カメラ装置
13 カメラ制御部
14 カメラ情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ装置に取り外し可能に装着されるレンズ装置であって、
撮影光学系と、
該撮影光学系を通して前記カメラ装置により撮影された画像に対して、前記撮影光学系の収差に応じた補正処理を行うために用いられる収差補正データを記憶したメモリと、
前記収差補正データを前記カメラ装置に送信するデータ送信手段とを有し、
前記データ送信手段は、前記収差補正データの中から、その一部である部分データを、前記撮影光学系に含まれる光学調節部材の位置または状態と前記カメラ装置に設けられた撮像素子に関する情報とに応じて選択し、該部分データを前記カメラ装置に送信することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記データ送信手段は、前記部分データが複数の数値を含む場合において、該複数の数値の近似式を前記部分データとして前記カメラ装置に送信することを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレンズ装置と、
該レンズ装置が取り外し可能に装着され、前記レンズ装置から受信した収差補正データを用いて、撮影した画像の補正処理を行うカメラ装置とを含むことを特徴とする撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−41093(P2011−41093A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187903(P2009−187903)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】