説明

レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置

【課題】製造コストが安価であり簡易な構成で且つ周辺部品等に与える影響を防止しつつレンズ支持体の位置検知ができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置を提供する。
【解決手段】レンズ支持体を光軸方向及び光軸と直交するX−Y方向に移動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置1において、レンズ支持体はX方向の端部に固定したX方向金属体43と、Y方向の端部に固定したY方向金属体45とを備え、固定体8はX方向金属体43に対向するX方向位置検知コイル49と、Y方向の金属体45に対向するY方向位置検知コイル51とを備え、X方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51に電流を流したときのインダクタンスの変化を測定することによりレンズ支持体のX方向の位置及びY方向の位置を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手振れセンサに応答してレンズ支持体をX−Y方向に移動するレンズ駆動装置において、固定体に位置検知用マグネットを設けレンズ支持体に磁気検知センサを設けてX方向及びY方向におけるレンズ支持体の移動量を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、レンズ支持体の位置検知にマグネットを用いているので、レンズ駆動装置の周囲にある電子部品にマグネットによる磁界の影響を与えるおそれがある。また、レンズ支持体の駆動にマグネットを用いている場合には、位置検知素子がこの駆動用マグネットの磁界の影響を受けるおそれがある。
更に、磁気検知素子は高価であるため製造コストが高価になると共に位置検知の為の回路が複雑になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、製造コストが安価であり簡易な構成で且つ周辺部品等に与える影響を防止しつつレンズ支持体の位置検知ができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、レンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体を光軸方向及び光軸と直交するX−Y方向に移動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置において、レンズ支持体はX方向の端部に固定した金属体と、Y方向の端部に固定した金属体とを備え、固定体はX方向端部の金属体に対向するX方向位置検知コイルと、Y方向端部の金属体に対向するY方向位置検知コイルとを備え、X方向位置検知コイル及びY方向位置検知コイルに電流を流したときのインダクタンスの変化を測定することによりレンズ支持体のX方向の位置及びY方向の位置を検知することを特徴とするレンズ駆動装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、レンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体を光軸方向及び光軸と直交するX−Y方向に移動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置において、レンズ支持体はX方向の端部に固定した反射体と、Y方向の端部に固定した反射体とを備え、固定体はレンズ支持体のX方向端部の反射体に向けて光を照射するX方向用光源及びX方向端部の反射体からの反射光を受けるX方向用受光素子と、レンズ支持体のY方向端部の反射体に向けて光を照射するY方向用光源及びY方向端部の反射体からの反射光を受けるY方向用受光素子とを備え、各受光素子が受ける光の位置を検知することによりレンズ支持体のX方向の位置及びY方向の位置を検知することを特徴とするレンズ駆動装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記金属体又は前記反射体は、非磁性体であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、レンズ支持体は錘を備え、レンズ支持体のX方向及びY方向の端部に固定した位置検知用の前記金属体又は前記反射体との重量バランスを均衡させていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、レンズ支持体のレンズの結像側に設けた画像センサとを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付きモバイル端末装置である。
モバイル端末装置とは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン等を言う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、レンズ支持体のX方向における位置検知は、X方向位置検知コイルに電流を流すことで、レンズ支持体のX方向端部に固定した金属体との間の距離に応じて電磁誘導作用によりコイルのインダクタンスが変化するので、このインダクタンスの変化を測定することにより、X方向位置検知コイルに対向する金属体の位置を検知することができる。同様に、レンズ支持体のY方向における位置検知もY方向位置検知コイルのインダクタンスの変化を測定することにより、Y方向位置検知コイルに対向する金属体の位置を検知することができる。
本発明によれば、レンズ支持体のX−Y方向の位置を、金属体とこれに対向するコイルのみで検知できるから、従来技術のような高価な磁気検知素子を用いないので、安価に製造できると共に各位置検知コイルに流す電流の発信振幅を測定するだけで済み位置検知回路も簡単にできる。
位置検知にマグネットを用いていないので、周辺の電子部品に磁界による影響を与えることがなく且つレンズ支持体の駆動にマグネットを用いている場合にはそのマグネットの影響による位置検知精度の低下や誤検知を防止できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、レンズ支持体のX方向における位置検知は、X方向用光源から対向する反射体に光を照射し、X方向用受光素子が受けた反射光の位置により、X方向受光素子に対する反射体の位置を検知することができる。同様に、レンズ支持体のY方向における位置検知もX方向用受光素子が受けた反射光の位置によりY方向受光素子に対する反射体の位置を検知することができる。
本発明によれば、レンズ支持体のX−Y方向の位置を、反射体とこれに対向位置に設けた光源及び受光素子のみで検知できるから、従来技術のような高価な磁気検知素子を用いないので、安価に製造できると共に受光素子の受ける反射光の位置のみを検知するだけで済み位置検知回路も簡単にできる。
位置検知にマグネットを用いていないので、周辺の電子部品に磁界による影響を与えることがなく且つレンズ支持体の駆動にマグネットを用いている場合にはそのマグネットの影響による位置検知精度の低下や誤検知を防止できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の作用効果を奏すると共に、位置検知用の金属体又は反射体として非磁性体を用いているので、レンズ支持体の駆動にマグネットを用いた場合でも位置検知用の金属体が駆動用マグネットに吸引される等の悪影響を防止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用効果を奏すると共に、レンズ支持体の重量バランスを均衡することにより、レンズ支持体の移動をスムーズに行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作用効果を奏するオートフォーカスカメラを提供できる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の作用効果を奏するカメラ付きモバイル端末装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図2】(a)は本実施の形態にかかるレンズ駆動装置の水平断面図であり、(b)は(a)に示すB部の作用を模式的に示した図である。
【図3】本実施の形態に係るオートフォーカスカメラにおける、コイル体と駆動部との関係を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態にかかるレンズ駆動装置を図5に示すA−A位置で切断した縦断面図である。
【図5】本実施の形態にかかるレンズ駆動装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面の図1〜図5を参照して本発明の第1実施の形態を詳細に説明する。第1実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。
【0020】
このレンズ駆動装置1は、図1に示すように、内周にレンズ(図示せず)を支持するレンズ支持体5と、内周側にレンズ支持体5を移動自在に設けたヨーク3と、ヨーク3の光軸方向前側に配置されるフレーム7及び前側スプリング9と、ヨーク3の後側に配置されるベース8及び後側スプリング11とを備えており、後側スプリング11とヨーク3との間にはスペーサ(絶縁材)15が配置されている。また、レンズ支持体5の外周にはコイル体4が固定されている。本実施の形態では、ヨーク3、フレーム7、ベース8及びスペーサ15が固定体である。
【0021】
ヨーク3は外周側壁3aと内周側壁3bと連結壁3cとを備えており、図4に示すように断面が略コ字形状を成している。図1に示すように、外周側壁3aは前側から見て略四角形状を成しており、四角の角部14は面取りされた形状になっている。
【0022】
図1及び図2(a)に示すように、ヨーク3の外周側壁3aの各角部14にはその内周に駆動用マグネット17が固定されている。マグネット17及び外周側壁3aと内周側壁3bとの間にはコイル体4が配置されている。尚、図2では、ヨークの3の内周側壁3bを省略している。
【0023】
図2(a)に示すように、各駆動用マグネット17は、前側から見た平面視が略台形形状を成しており、その内周側が後述する第1コイル19の外周面に沿った円弧状を成している。また、駆動用マグネット17は内周側と外周側とで磁極を異にしており、例えば内周側をN極とし、外周側をS極としてある。
【0024】
図1に示すように、レンズ支持体5の外周に固定されているコイル体4は、第1コイル19と第2コイル16a、16b、16c、16dとから構成されている。
第1コイル19は、レンズ支持体5の周方向全周に亘って巻回した円環状を成していると共に帯状をなしている。
【0025】
更に、図2(a)に示すように、第1コイル19の外周には、4つの第2コイル16a〜16dが周方向に等間隔(90度の間隔)で合計4つ配置されている。図1に示すように、各第2コイル16a〜16dは各々、レンズ支持体5の半径方向外側から見て側面視台形状の環状を成している。
【0026】
各第2コイル16a〜16dは、第1コイル19の外周面に重ねて配置しており、前側辺部22、後側辺部25及び左右側辺部24、26を第1コイル19に重ねている。
【0027】
各駆動用マグネット17は、第2コイル16a〜16dに対面して設けてあり、図2(b)に示すように、駆動用マグネット17の内周側面17aは、第2コイルの各辺部22、25、24、26に対面してあり、駆動用マグネット17の周方向の寸法は第2コイル16a〜16dの周方向の寸法と略同じ寸法としてあると共にマグネット17の内周側面17aの面積は、対面する第2コイル16a〜16dの面積と略同じ面積になっている。
【0028】
また、各駆動用マグネット17は、対面する第2コイル16a〜16dを介して第1コイル19にも対向している。
【0029】
図2(b)に示すように、駆動用マグネット17の内周面のうち右(左)側部から出た磁束線の向きは半径方向内方と円周方向右(左)方の成分を持ち、駆動用マグネット17の内周面17aから離れるほど右(左)側へカーブする。即ち、磁束線の向きは半径方向内方と半径方向に対する左右方向の成分を持つ。同様に、駆動用マグネット17の内周面17aのうち光軸方向前側部から出た磁束線は、内周面17aから離れるほど前方側へカーブする。また、駆動用マグネット17の内周面17aのうち光軸方向後側部から出た磁束線の向きは半径方向内方と光軸方向後方の成分を持ち、内周面17aから離れるほど後方側へカーブする。
【0030】
例えば、第1コイル19に前方側から見て反時計方向に電流Iを流すと、半径方向内方の鎖交磁束成分が寄与してフレミングの左手の法則により光軸方向前方へ推力が生じ、レンズ支持体5は光軸方向前方へ移動する。第2コイル16aに外方から見て反時計方向に電流Iを流すと、第2コイル16aの光軸方向前の前側辺部22では光軸方向前方の鎖交磁束成分が寄与して半径方向内方へ推力が生じる。同様に、第2コイル16aの後側辺部25、右側辺部26、左側辺部24においても半径方向内方へ推力が生じる。そのため、レンズ支持体5は第2コイル16aが半径方向内方へ移動するように移動する。
【0031】
即ち、第2コイル16a、16cは、駆動用マグネット17の磁力線のうち第2コイル16a、16cに直交する成分の磁力と、第2コイル16a、16cに流れる電流によって、フレミングの左手の法則により、図2(a)に示すように、レンズ支持体5の半径方向に推力Eが作用し、第2コイル16b、16dも同様に、レンズ支持体5の半径方向に推力Fが作用する。推力Eと推力Fとは互いに直交している。本実施の形態において、駆動用マグネット17、コイル体4及びヨーク3とでレンズ支持体5の駆動機構を構成する。尚、ヨーク3は駆動用マグネット17による磁束密度及び向きを変えて適正化する。
【0032】
図3に模式的に示すように、第1コイル19はZ駆動部32に接続されており、各第2コイル16a〜16dはX―Y駆動部33に接続されており、各々駆動部32、33から所定値の電流が通電される。尚、図3において、一点鎖線で示すZ駆動部32と第1コイル19との接続線及びX―Y駆動部33と第2コイル16a〜16dとの接続線は、電流の入力側又は出力側のみの接続を示している。
本実施の形態では、第2コイル16a及び16cと、16b及び16dとが直列に接続されており、2つのコイル16a及び16cで推力Eの方向に、16b及び16dで推力Fの方向に駆動するようになっている。
【0033】
例えば、Z駆動部32では、レンズ支持体5をフォーカス位置へ移動(光軸方向への移動)する場合には、第1コイル19に電流Zを流す。
同様に、手振れ補正をする場合には、X―Y駆動部33では、第2コイル16a及び16cに電流Eを流してE方向にレンズ支持体5を移動させ、第2コイル16b及び16dに電流Fを流してF方向にレンズ支持体5を移動させる。これにより、レンズ支持体5をE−F方向に移動して手振れ補正を行う。
【0034】
Z駆動部32では、画像センサ31から受けるコントラストの高域成分のピークを比較しつつ、合焦点位置へレンズ支持体5をZ方向へ直線移動する。
X―Y駆動部33には、ジャイロセンサ等の手振れセンサ37が接続されており、X方向及びY方向の手振れ量を算出し、その算出結果に基づいてX−Y駆動部33に駆動信号を発する。
【0035】
尚、図2及び図3において、符合Z、E、Fは流した電流に基づいて生じる推力の方向と大きさを示している。
但し、図2(a)に示すように、本実施の形態では、X方向は前面視四角形状のヨーク3の一辺方向であり、Y方向は前面視四角形状のヨーク3の隣りの辺の方向としてあり、ヨーク3の対角線方向に生じる推力E、Fについて、X方向の分力EXとFXの和がX方向の推力として、Y方向の分力EYとFYの和がY方向の推力として作用することになり、XーY駆動部33では、各X方向の分力の和EX+FXをX方向推力として、各Y方向の分力の和EY+FYをY方向推力となるように制御している。
【0036】
次に、レンズ支持体5のX方向及びY方向の位置を検出する位置検出手段41について説明する。図1及び図4に示すように、位置検出手段41は、レンズ支持体5のX方向の端部に固定したX方向金属体43及びレンズ支持体5のY方向の端部に固定したY方向金属体45と、スペーサ15に固定したX方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51とを備えている。
【0037】
X方向金属体43及びY方向金属体45は各々レンズ支持体5の後端部に固定してあり且つ同じ材質及び形状である。本実施の形態では、非磁性の金属材であり、例えば、アルミニウム材である。また、X方向金属体43及びY方向金属体45は平板であり、それぞれX軸、Y軸と直交する方向に平板面が対向する。
尚、レンズ支持体5には、X方向金属体43及びY方向金属体45との重量バランスを均衡させる為に、X方向金属体43及びY方向金属体45に対応する2箇所に錘59が固定してある。本実施の形態では、錘59はX方向金属体43及びY方向金属体45と同種の金属材を用いている。
【0038】
スペーサ15において、X方向位置検知コイル49はX方向金属体43に対向する位置に固定してあり、Y方向位置検知コイル51はY方向金属体45に対向する位置に固定してあり、各々円環状を成している。各検知コイル49、51の環の内側には鉄心53が配置されている。
スペーサ15は樹脂製であり、図1に示すように、前側から見て平面視四角形状の環状を成しており、四角の辺部に貫通孔を設けて各検知コイル49、51を環の外側から挿入して固定してある。
【0039】
各位置検知コイル49、51は回路基板55を介して位置検出回路部54に接続されている。位置検出回路部54では各位置検知コイル49、51に流す電流の振幅を比較しており、振幅を計測することにより、各位置検知コイル49、51から各々対向する金属体43、45までの位置(距離)を決定する。即ち、X方向位置検知コイル49に高周波電流を流すとX方向金属体43に渦電流が生じる。その渦電流により、対向するX方向金属体43との距離に応じて電磁誘導作用によりX方向位置検知コイル49のインダクタンスが変化して電流の発信振幅が変化する。したがって、X方向位置検知コイル49に流した電流の発信振幅を検出することにより、X方向位置検知コイル49に対向するX方向金属体43の位置、換言すれば、X方向位置検知コイル49とX方向金属体43との間の距離を検知することができる。Y方向位置検知コイル51とY方向金属体45との関係についても同様である。
【0040】
図1に示すように、2つの各位置検知コイル49、51は、1つの回路基板55に設けてあり、回路基板55は90度曲げてスペーサ15の外周側に固定してある。
回路基板55は位置検出回路部54に接続されており、位置検出回路部54は、X方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51に対する各金属板43、45の位置を演算し、その検知信号をX―Y駆動部33へ送信する。
【0041】
図1及び図4に示すように、X方向金属体43及びY方向金属体45の面積は、各々X方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51の対向面に対して十分に大きな面積を有し、例えば、レンズ支持体5がX方向に移動してもY方向位置検知コイル51がY方向金属体45のY方向の移動を検知できるようになっている。また、レンズ支持体5が光軸方向に移動しても、各検知コイル49、51は対応する金属体43、45の移動を検知できるようになっている。
【0042】
図1に示すように、前側スプリング9は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部9aと、外周側部9aの内周に配置され平面視円弧形状の内周側部9bと、外周側部9aと内周側部9bとを連結する4つの腕部9cとで構成されており、Z方向及びX―Y方向への変形が自在にできるようになっている。
【0043】
後側スプリング11は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部11aと、外周側部11aの内周に配置され平面視円形状の内周側部11bと、外周側部11aと内周側部11bとを連結する4つの腕部11cとで構成されている。
【0044】
前側スプリング9の外周側部9aは、フレーム7とヨーク3との間に挟持されており、内周側部9bはレンズ支持体5の前端に固定されている。後側スプリング11の外周側部11aはベース8と後側スペーサ15との間に挟持されており、内周側部11bはレンズ支持体5の後端に固定されている。これにより、レンズ支持体5は前側スプリング9と後側スプリング11とにより、光軸方向(Z方向)及びX―Y方向に移動自在に支持されている。
【0045】
そして、第1コイル19に電流を流すことにより、レンズ支持体5が光軸方向前方に移動すると、レンズ支持体5は、前側スプリング9及び後側スプリング11の前後方向の付勢力の合力と、第1コイル19及びマグネット17との間で生じる電磁力とが吊り合う位置で停止する。
【0046】
レンズ支持体5がX―Y方向に移動する場合には、所定の第2コイル16a〜16dに所定値の電流を流すことにより、前側スプリング9及び後側スプリング11のX―Y方向のスプリングの合力と、第2コイル16a〜16dと各対応するマグネット17との間で生じる電磁力とが吊り合う位置で停止する。
【0047】
次に、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の組立て、作用及び効果について説明する。レンズ駆動装置1の組み立てに先立って、第1コイル19の外周面に各第2コイル16a〜16dを接着固定してコイル体4を形成し、レンズ支持体5の外周に固定する。また、レンズ支持体5の後端部には、X方向金属体43、Y方向金属体45及び錘59を取り付ける。回路基板55には、X方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51を取り付けておき、スペーサ15の2箇所に形成された各孔15aにX方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51を嵌合する。
【0048】
レンズ駆動装置1の組立ては、図1に示すように、ベース8に、後側スプリング11、スペーサ15、レンズ支持体5、各マグネット17を内周側面に固定したヨーク3、前側スプリング9及びフレーム7をこの順序で組み付けて固定する。
【0049】
コイル体4を固定したレンズ支持体5と、マグネット17を内周面に固定したヨーク3との組み付けは、ヨーク3の内周にその後側から前側に向けてレンズ支持体5を挿入して行う。
【0050】
そして、第1コイル19はZ駆動部32に接続し、第2コイル16a〜16dは、対向するコイル16aと16c、16bと16dを直列に接続した後、X―Y駆動部33に接続する。
【0051】
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、画像センサ31から受ける高域成分(コントラスト)のピークを比較しつつ、合焦点位置へレンズ支持体5をZ方向へ直線移動する。
【0052】
レンズ支持体5のZ方向への直線移動の際には、第1コイル19に電流Zを流すことにより生じるマグネット17との間で生じる電磁力と、前側スプリング9及び後側スプリング11との付勢力の合力とが吊り合う位置で停止する。
【0053】
また、レンズ支持体5のX―Y制御(手振れ補正)は、ジャイロセンサ等によりX―Y方向の手振れ量の大きさを信号として受け、X方向及びY方向の手振れ補正量を演算してレンズ支持体5の移動するべき目標位置E、F(X、Y)を各々決定して、第2コイル16a、16cと、第2コイル16b、16dとに通電することにより行う。
【0054】
そして、X方向位置検知コイル49がX方向金属体43の位置を検知することにより、レンズ支持体5のX方向位置を検知し、X−Y駆動部33に送る。X−Y駆動部33では、レンズ支持体5が手振れセンサがX方向の目標位置に達したかどうかを監視する。
【0055】
同様に、レンズ支持体5のY方向の移動においても、Y方向位置検知コイル51がY方向金属体45の位置を検知することにより、レンズ支持体5のY方向位置を検知し、X−Y駆動部33に送る。X−Y駆動部33では、レンズ支持体5がY方向の目標位置に達したかどうかを監視する。
【0056】
本実施の形態によれば、手振れセンサ37がX方向及びY方向の手振れ量を検知し、X―Y駆動部33では、手振れ量に基づくレンズ支持体5の移動するべき目標位置E、F(X、Y)を決定し、目標位置にレンズ支持体5がX方向及びY方向へ移動するように電流を流す。
尚、レンズ支持体5をX方向及びY方向に移動するための電流を流すときには、目標位置に移動する移動量よりも移動量が大きくなるような電流を流し、X方向位置検知コイル49及びY方向位置検知コイル51が目標位置に達したことを検知したところで、その位置を維持する為の電流値の電流を流し、レンズ支持体のX方向及びY方向の移動を停止する。
【0057】
レンズ支持体5にはX方向金属体43及びY方向金属体45を設けているので、これらに各々対応して設けた位置検知コイル49、51が各金属体43、45の位置を検知する。手振れセンサ37が検知した手振れ量を打ち消す目標位置E、F(X、Y)にレンズ支持体5が移動したか否かを検知する。これにより、レンズ支持体5の手振れ補正が正確に且つ迅速に行うことができる。
【0058】
レンズ支持体5のX−Y方向の位置は、レンズ支持体5に設けた金属体43、45と、固定体であるスペーサ15に設けた位置検知コイル49、51とで検知できるから、小型で且つ簡易な構成である。
【0059】
また、各金属体43、45の面積を、位置検知コイル49、51の対向面よりも大きな面積としているので、レンズ支持体5が光軸方向に移動した場合でも、各金属体43、45と位置検知コイル49、51とを対向させることができ、レンズ支持体5の手振れ補正を正確に行うことができる。
【0060】
レンズ支持体5は、第1コイル19及び第2コイル16a〜16dに電流を流したときの電磁力により、光軸方向及びX―Y方向移動ができ、コンパクトな構成でレンズ支持体5の駆動ができる。
X方向金属体43及びY方向金属体45は、非磁性体であるから、これらの金属体43、45がヨーク3や駆動用マグネット17に吸引されるのを防止できる。
【0061】
X方向金属体43及びY方向金属体45をレンズ支持体5に取り付け、X方向位置検知コイル49、Y方向位置検知コイル51をスペーサ15に取り付けて、レンズ支持体5とスペーサ15とを組み付ければ良いので組み付けが容易にできる。また、レンズ駆動装置1の周囲にある電子部品に位置検出手段41による磁界の影響を与えるおそれは小さい。さらに、位置検知素子である位置検知コイル49、51が駆動用マグネット17の磁界の影響を受けるおそれもそ小さい。
【0062】
レンズ支持体5には、錘59を設けて、X方向金属体43、Y方向金属体45との間で、重量バランスを均衡にしているから、レンズ支持体5の移動をスムーズに行うことができる。
【0063】
マグネット17及び手振れ補正として機能する第2コイル16a〜16dを前側から見た平面視四角形のヨーク3の奥ゆきのある角部3bに配置することにより、手振れ補正機能を有しながら、手振れ補正機能を搭載していないレンズ駆動装置と同様なサイズで且つコンパクトな構成にできる。
【0064】
次に、本発明の第2実施の形態について説明するが、以下に説明する第2実施の形態では、第1実施の形態と異なる点のみを説明する。この第2実施の形態では、レンズ支持体5のX方向の位置検知は、レンズ支持体のX方向の端部に固定するX方向金属体43に代えて反射体を固定し、固定体にはX方向位置検知コイル49に代えて対向する反射体に向けて光を照射するX方向用光源及びX方向端部の反射体からの反射光を受けるX方向用受光素子を設けて、光源から対向する反射体に向けて光を照射し、X方向受光素子が受ける反射体からの反射光の位置を検知することにより、レンズ支持体5のX方向の位置を検出する。レンズ支持体5のY方向の位置検知もX方向の位置検知と同様に、レンズ支持体のY方向の端部に固定するY方向金属体45に代えて反射体を固定し、固定体にはY方向位置検知コイル51に代えて対向する反射体に向けて光を照射するY方向用光源及びY方向端部の反射体からの反射光を受けるY方向用受光素子を設けて、光源から対向する反射体に向けて光を照射し、Y方向受光素子が受ける反射体からの反射光の位置を検知することにより、レンズ支持体5のY方向の位置を検出する。
この第2実施の形態によれば、第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
本発明は上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、第1及び第2実施の形態において、第2コイル16a〜16d及びマグネット17はヨーク3の各角部3bに設けることに限らず、互いに周方向に90度の間隔をあけていれば良い。
【0066】
第2コイル16a〜16dは、互いに90度間隔をあけて隣合わせに2つだけ設けても良い。
【0067】
第2コイル16a〜16dは、第1コイル19の内周側に配置しても良い。
上述した実施の形態において、レンズ支持体5は、ズームレンズを保持して、ズーム倍率に応じてZ方向に移動するものであってもよい。
【0068】
第1実施の形態において、X方向金属体43及びY方向金属体45は、アルミニウムに限らず、銅でも良いし、鋼材等の磁性体であっても良い。
【0069】
第1実施の形態において、レンズ支持体5の後端に更にZ方向金属体を設け、このZ方向金属体に対向してベース8にZ方向位置検知コイルを設けて、レンズ支持体5のZ方向の位置を検知するものであっても良い。同様に、第2実施の形態においても、レンズ支持体5の後端にZ方向反射体を設け、このZ方向反射体に対向してベース8に光源及び受光素子を設けて、レンズ支持体5のZ方向の位置を検知するものであっても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 レンズ駆動装置
3 ヨーク
5 レンズ支持体
13 空間部
32 Z駆動部
33 X−Y駆動部
35 合焦点演算手段
37 手振れセンサ
43 X方向金属体
45 Y方向金属体
49 X方向位置検知コイル
51 Y方向位置検知コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体を光軸方向及び光軸と直交するX−Y方向に移動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置において、
レンズ支持体はX方向の端部に固定した金属体と、Y方向の端部に固定した金属体とを備え、固定体はX方向端部の金属体に対向するX方向位置検知コイルと、Y方向端部の金属体に対向するY方向位置検知コイルとを備え、X方向位置検知コイル及びY方向位置検知コイルに電流を流したときのインダクタンスの変化を測定することによりレンズ支持体のX方向の位置及びY方向の位置を検知することを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
レンズを支持するレンズ支持体と、レンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体を光軸方向及び光軸と直交するX−Y方向に移動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置において、
レンズ支持体はX方向の端部に固定した反射体と、Y方向の端部に固定した反射体とを備え、固定体はレンズ支持体のX方向端部の反射体に向けて光を照射するX方向用光源及びX方向端部の反射体からの反射光を受けるX方向用受光素子と、レンズ支持体のY方向端部の反射体に向けて光を照射するY方向用光源及びY方向端部の反射体からの反射光を受けるY方向用受光素子とを備え、各受光素子が受ける光の位置を検知することによりレンズ支持体のX方向の位置及びY方向の位置を検知することを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記金属体又は前記反射体は、非磁性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
レンズ支持体は錘を備え、レンズ支持体のX方向及びY方向の端部に固定した位置検知用の前記金属体又は前記反射体との重量バランスを均衡させていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、レンズ支持体のレンズの結像側に設けた画像センサとを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラ。
【請求項6】
請求項5に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付きモバイル端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−177754(P2012−177754A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39730(P2011−39730)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000131348)シコー株式会社 (168)
【Fターム(参考)】