説明

レーザダイオードの状態検出装置

【課題】レーザダイオードの状態を検出する。
【解決手段】CD用レーザダイオード10−1及びDVD用レーザダイオード10−2は、それぞれ制御用トランジスタQ1,Q2で駆動制御される。制御用IC12は、所望の光量となるようにトランジスタQ1,Q2の制御電圧を設定する。制御用IC12は、異なる2つのパワーにおける制御電圧の初期状態からの経時変化に基づいて、レーザダイオード10−1、10−2の劣化/故障を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザダイオードの状態検出装置に関し、特に、レーザダイオードの劣化や故障を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザダイオードの劣化や寿命を評価する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、レーザダイオードの出力を制御するレーザダイオード制御回路にレーザダイオードの寿命表示回路を設け、レーザダイオード制御回路を構成するトランジスタのエミッタ電位またはコレクタ電位によりレーザダイオードの退化または寿命の表示を行うことが開示されている。
【0003】
図9に、特許文献1に示されたレーザダイオード制御回路の構成を示す。レーザダイオードLDの出力は、レーザダイオード制御回路により一定レベルが保たれるように制御される。レーザダイオードLDの出力はフィードバックされ、受光素子PDを経て出力安定化回路1に加えられ、トランジスタQ1のベース電位VBEを調整することにより一定レベルに維持される。しかし、レーザダイオードLDは長時間使用していると、レーザダイオードの順方向電流は増大したにもかかわらずある出力レベルが維持できなくなる。それを知るために外部に寿命表示回路2を設けて、電流ifの増大によるVLの降下により寿命を表示するとしている。また、トランジスタQ1のエミッタ電位又はコレクタ電位によりレーザダイオードの退化、寿命の表示を行うとしている。
【0004】
また、特許文献2には、半導体レーザダイオードにバイアス電流を供給するバイアス電流回路から供給されるバイアス電流を電圧に変換し、当該電圧値と半導体レーザダイオードが異常と判定されるバイアス電流値に基づいて設定された基準電圧値とを比較することによって、半導体レーザダイオードの異常を検出することが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、レーザダイオードに流れている電流と、レーザダイオード出力をモニタしているフォトダイオード出力をそれぞれ検出し、レーザダイオード電流に対応する電圧とフォトダイオード出力×定数倍の電圧との差を求め、その差が一定の基準値を超えたときにアラームを発出することが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、電源とレーザダイオードとの間にレーザダイオードの寿命を検知するための検知回路を設け、レーザダイオードに流れる電流を電圧に変換し、変換した電圧と基準電圧とを比較した結果に応じて、レーザダイオードの寿命を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−10991号公報
【特許文献2】特開昭58−140175号公報
【特許文献3】特開平9−83051号公報
【特許文献4】特開平6−223486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば図9に示すように別途、寿命表示回路2を設けてエミッタ電位やコレクタ電位を検出するのは、新たな回路の付加を余儀なくされ、回路規模の増大とともに、部品点数の増大に伴うコスト増加を招く。特に、最近では製品の小型化、薄型化、低コスト化が一段と要求されるようになっており、部品点数を増大させることなく、簡易にレーザダイオードの状態を検出できることが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、部品点数を増大させることなく、簡易かつ精度良くレーザダイオードの状態を検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、前記第1の制御電圧の初期値からの変化量と、前記第2の制御電圧の初期値からの変化量をそれぞれ第1、第2しきい値と比較し、少なくともいずれかが第1、第2しきい値を超えるか否かを判定する手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記第1の制御電圧の現在の値と直前の値との差分値と、前記第2の制御電圧の現在の値と直前の値との差分値をそれぞれ第3、第4しきい値と比較し、少なくともいずれかが第3、第4しきい値を超えるか否かを判定する手段とを有する。
【0012】
また、本発明は、レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧の差分値と、前記第1の光量と前記第2の光量の差分値との比率の初期値からの変化量が第5しきい値を超えるか否かを判定する手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記比率の現在の値と直前の値との差分値が第6しきい値を超えるか否かを判定する手段とを有する。
【0014】
また、本発明は、レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、前記第1の制御電圧の初期値からの変化量と、前記第2の制御電圧の初期値からの変化量をそれぞれ第1、第2しきい値と比較し、少なくともいずれかが第1、第2しきい値を超えるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧の差分値と、前記第1の光量と前記第2の光量の差分値との比率の初期値からの変化量が第5しきい値を超えるか否かを判定する第2判定手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記第1の制御電圧の現在の値と直前の値との差分値と、前記第2の制御電圧の現在の値と直前の値との差分値をそれぞれ第3、第4しきい値と比較し、少なくともいずれかが第3、第4しきい値を超えるか否かを判定する手段とを有する。
【0016】
また、本発明の他の実施形態では、さらに、前記第1判定手段あるいは第2判定手段でしきい値を超えると判定された場合に前記レーザダイオードの故障と判定し、前記第3判定手段でしきい値を超えると判定された場合に前記レーザダイオードの劣化と判定する手段とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数を増大させることなく、簡易かつ精度良くレーザダイオードの状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の回路構成図である。
【図2】実施形態の処理フローチャート(その1)である。
【図3】実施形態の処理フローチャート(その2)である。
【図4】Va(t)の経時変化を示すグラフ図である。
【図5】Vb(t)の経時変化を示すグラフ図である。
【図6】C(t)の経時変化を示すグラフ図である。
【図7】他の実施形態の処理フローチャートである。
【図8】さらに他の実施形態の処理フローチャートである。
【図9】従来技術の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1に、本実施形態におけるレーザダイオード制御回路の回路構成を示す。全体の回路構成は、従来の回路構成とほとんど同様である。
【0021】
光ピックアップ10は、光ディスク装置に搭載される。光ピックアップ10には、CDからデータを再生する、あるいはCDにデータを記録するためのレーザ光を射出するCD用レーザダイオード10−1、及びDVDからデータを再生する、あるいはDVDにデータを記録するためのレーザ光を射出するDVDレーザダイオード10−2が搭載される。
【0022】
CD用レーザダイオード10−1は、トランジスタQ1により駆動される。トランジスタQ1のコレクタ端子はCD用レーザダイオード10−1に接続され、トランジスタQ1のエミッタ端子は抵抗R1を介して電源に接続される。また、トランジスタQ1のベース端子はコンデンサC1を介してエミッタ端子に接続されるとともに、制御用IC12に接続される。
【0023】
DVD用レーザダイオード10−2は、トランジスタQ2により駆動される。トランジスタQ2のコレクタ端子はDVD用レーザダイオード10−2に接続され、トランジスタQ2のエミッタ端子は抵抗R2を介して電源に接続される。また、トランジスタQ2のベース端子はコンデンサC2を介してエミッタ端子に接続されるとともに、制御用IC12に接続される。
【0024】
制御用IC12は、CD用レーザダイオード10−1から射出されるレーザ光、及びDVD用レーザダイオード10−2から射出されるレーザ光が目標の光量となるようにトランジスタQ1のベース電圧(制御電圧)Vd1を制御するとともに、トランジスタQ2のベース電圧(制御電圧)Vd2を制御する。すなわち、従来と同様にレーザダイオード10−1、10−2の出力はフィードバックされ、受光素子を経て制御用IC12に加えられ、トランジスタQ1、Q2のベース電圧Vd1、Vd2を調整することにより光量レベルを一定に維持する。制御用IC12は、所望の光量レベルに維持するために必要な制御電圧Vd1、Vd2を、メモリ14に予め記憶されたテーブル等を参照することで算出する。メモリ14は制御用IC12の外部にあってもよく、あるいは内蔵メモリであってもよい。
【0025】
一方、本実施形態における制御用IC12は、制御電圧Vd1、Vd2の経時変化を順次メモリ14に記憶しておく。そして、制御電圧Vd1,Vd2の経時変化を用いて、CD用レーザダイオード10−1及びDVD用レーザダイオード10−2の劣化や故障の有無を検出する。その原理は以下のとおりである。すなわち、従来のようにトランジスタQ1、Q2のコレクタ電位やエミッタ電位、あるいはコレクタ電流の値を検出し、これらの経時変化からレーザダイオードの劣化を検出する構成では、新たな回路素子の付加が必要となる。ところが、レーザダイオードの劣化や故障が生じると、一定の光量を得るために必要な制御電圧が変化するが、この制御電圧値は制御用IC12から出力するものであるから、その値は制御用IC12がもともと保持している。従って、この制御電圧を用いてレーザダイオードの劣化や故障を検出すれば、新たな回路素子を付加する必要がなくなるが、制御電圧の変化には、レーザダイオードの劣化や故障に起因する成分だけでなく、トランジスタQ1,Q2のエミッタ−コレクタ間の変動電圧や抵抗成分も含まれることになるので、これだけでは高精度の検出は困難である。そこで、工場出荷時の制御電圧を基準とし、この工場出荷時からの制御電圧の変化をしきい値と比較することで余分な成分による影響を排除する。また、ある光量における制御電圧の変化だけでなく、少なくとも互いに異なる2つの光量における制御電圧の変化を用いることで、検出精度を担保する。光量(パワー)が増大する程、レーザダイオードにとって負荷が大きく劣化や故障が生じ易い。従って、光量が増大する程、制御電圧の変化も大きくなる傾向にある。
【0026】
図2及び図3に、本実施形態の処理フローチャートを示す。なお、CD用レーザダイオード10−1及びDVD用レーザダイオード10−2の状態検出は同様であるので、以下では、CD用レーザダイオード10−1の状態検出を例にとり説明する。
【0027】
まず、劣化検出や故障検出を行う際の基準となるしきい値tha、thb、thc、tha’、thb’をメモリ14に格納する(S101)。また、これらのしきい値に加え、工場出荷時、つまり初期状態(経時時間t=0のとき)の制御電圧の値を記憶しておく。制御電圧は、CD用レーザダイオード10−1の光量(パワー)がある一定値Paとなるために必要な電圧、及び別の一定値Pb(Pa<Pb)となるために必要な電圧である。以下、これらをそれぞれVa(0)、Vb(0)とする。
【0028】
次に、制御IC12は、光ディスク装置のトレイに光ディスク(CD用レーザダイオードの状態検出の場合には、光ディスクはCDである)が載置されているか否かを判定する(S102)。この判定は、光ディスクが存在していないタイミング(データ再生あるいはデータ記録を行わないタイミング)においてレーザダイオード10−1の状態を検出するためである。光ディスクの有無は、トレイに設けられた機械スイッチ、あるいは光ディスクからの反射光の有無等で検出する。そして、光ディスクが存在しないと判定した場合、レーザダイオード10−1からある光量(パワー)Paを射出するために必要な制御電圧Va(t)を順次取得してメモリ14に格納する(S103)。制御電圧を経時時間tの関数Va(t)としたのは、レーザダイオード10−1の経時変化に応じて制御電圧は工場出荷時の初期状態Va(0)から変化し得るからである。
【0029】
同様に、レーザダイオード10−1から別の光量(パワー)Pbを射出するために必要な制御電圧Vb(t)を順次取得してメモリ14に格納する(S104)。
【0030】
さらに、Va(t)及びVb(t)を取得した後、これら2つの制御電圧を用いて、比率C(t)={Vb(t)−Va(t)}/(Pb−Pa)を演算し、その結果をメモリ14に格納する(S105)。
【0031】
比率C(t)を演算するのは以下の理由による。すなわち、Va(t)やVb(t)は、レーザダイオード10−1の経時変化に伴って変化するだけでなく、そのときの環境条件、特に温度に応じて変化し得るものであり、その一方で、制御電圧、言い換えればレーザダイオードの駆動電流と出力である光量(パワー)との比率は温度によらずほぼ一定であると考えられるからであり、比率C(t)は温度条件によらずにレーザダイオード10−1の状態をより良く反映していると考えられるからである。
【0032】
以上のようにして、制御電圧Va(t)、Vb(t)を取得するとともに、比率C(t)を演算により取得した後、制御用IC12は、まず、初期値Va(0)からのVa(t)の変化量であるVa(t)−Va(0)が、しきい値thaを超えているか否かを判定する(S106)。レーザダイオード10−1に何らかの故障が生じると、制御電圧Va(t)が初期値から大きく変化する。そこで、Va(t)−Va(0)>thaであれば、図3に示すようにレーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する(S114)。
【0033】
一方、Va(t)−Va(0)≦thaであれば故障と判定しないが、次に、前回取得(サンプリング)した制御電圧Va(t−1)との差分値であるΔVa=Va(t)−Va(t−1)が所定のしきい値tha’を超えるか否かを判定する(S107)。ここで、しきい値thaとtha’は、tha>tha’の関係にある。そして、ΔVaがしきい値tha’を超える場合には、レーザダイオード10−1が劣化していると判定する(S108)。ΔVaがしきい値tha’を超える場合及び超えない場合のいずれも、次の判定ステップに移行する。
【0034】
次に、図3に示すように、初期値Vb(0)からのVb(t)の変化量であるVb(t)−Vb(0)が、しきい値thbを超えているか否かを判定する(S109)。そして、Vb(t)−Vb(0)>thbであれば、レーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する(S114)。なお、多くの場合、Va(t)−Va(0)>thaであれば、Vb(t)−Vb(0)>thbであるが、Va(t)−Va(0)≦0であっても、Vb(t)−Vb(0)>thbとなる場合もあり得る。Vb(t)は、Va(t)よりも光量(パワー)が大きく、レーザダイオード10−1の劣化・故障状態がより顕在化してくると考えられるからである。
【0035】
一方、Vb(t)−Vb(0)≦thbであれば、次に、前記取得(サンプリング)した制御電圧Vb(t−1)との差分値であるΔVb=Vb(t)−Vb(t−1)が所定のしきい値thb’を超えるか否かを判定する(S110)。ここで、しきい値thbとthb’は、thb>thb’の関係にある。そして、ΔVbがしきい値thb’を超える場合には、レーザダイオード10−1が劣化していると判定する(S111)。ΔVbがしきい値thb’を超える場合及び超えない場合のいずれも、さらに次の判定ステップに移行する。
【0036】
次に、S105で演算した比率C(t)の初期値C(0)からの変化量C(t)−C(0)が所定のしきい値thcを超えているか否かを判定する(S112)。ここで、C(0)は、制御電圧の初期値Va(0)、Vb(0)を用いてC(0)={Vb(0)−Va(0)}/(Pb−Pa)で演算される。そして、比率C(t)の変化量がしきい値thcを超える場合には、レーザダイオード10−1の故障が生じたと判定する(S114)。一方、S112でNOと判定された場合、すなわち、変化量Va(t)−Va(0)がしきい値thaを超えず、変化量Vb(t)−Vb(0)がしきい値thbを超えず、かつ、比率の変化量C(t)−C(0)がしきい値を超えない場合には、レーザダイオード10−1は故障していないと判定する(S113)。なお、レーザダイオード10−1がS113で故障していないと判定しても、S108やS111で劣化している(故障には至っていないものの、劣化状態にある)と判定される場合もある点に留意されたい。劣化状態にあるレーザダイオード10−1は、このまま使用を継続することでやがて故障状態に至る可能性がある。そこで、S114で故障と判定した場合に、ユーザに対して何らかの報知を行うことは当然であるが、S108やS111で劣化と判定した場合にも、ユーザに対して劣化状態にある旨を報知することが好適である。
【0037】
図4に、制御電圧Va(t)の経時変化の一例を示す。レーザダイオード10−1が劣化していくに従い、制御電圧Va(t)は変化し、一般には増大していく(一時的に減少する場合もあり得る)。そして、制御電圧Va(t)の初期値Va(0)からの変化量がしきい値thaを超えた時点taで、レーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する。
【0038】
図5に、制御電圧Vb(t)の経時変化の一例を示す。レーザダイオード10−1が劣化していくに従い、制御電圧Vb(t)は変化し、一般には増大していく(一時的に減少する場合もあり得る)。制御電圧Vb(t)の変化は、制御電圧Va(t)の変化よりも大きいものと考えられる。そして、制御電圧Vb(t)の初期値Vb(0)からの変化量がしきい値thbを超えた時点tbで、レーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する。
【0039】
図6に、比率C(t)の経時変化の一例を示す。レーザダイオード10−1が劣化していくに従い、Va(t)及びVb(t)が変化するから、これに伴って比率C(t)も変化していく。そして、比率C(t)の変化量がしきい値thcを超えた時点tcで、レーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、制御用IC12が、光量を一定に維持するために設定する制御用電圧Vd1(レーザダイオード10−2の場合にはVd2)を用いてレーザダイオード10−1の状態を検出するので、新たに部品を付加する必要はなく、制御用IC12で制御用電圧Vd1を順次メモリ14に記憶し、これらの値を用いてしきい値と大小比較する処理を実行するプログラムを制御用IC12に組み込めばよい。
【0041】
なお、制御用IC12は、レーザダイオード10−1の状態を検出すると、その検出結果を光ディスク装置のメインコントローラに出力する。光ディスク装置のメインコントローラは、光ディスク装置のLED等を点灯させてレーザダイオード10−1の状態をユーザに報知することができ、あるいは光ディスク装置が接続されるホストコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)に検出信号を順次出力してもよい。これにより、ホストコンピュータは、レーザダイオード10−1の状態をリアルタイムに把握することができる。
【0042】
本実施形態では、図2及び図3のフローチャートに示すとおり、S106,S109,S112のいずれかでYESと判定された場合に、レーザダイオード10−1に故障が生じていると判定している。しかしながら、S106,S109,S112の少なくとも2つ以上の判定でYESと判定された場合に、レーザダイオード10−1に故障が生じていると判定することもできる。例えば、S106,S109,S112の各処理でYESと判定された場合に、判定のパラメータMALを1ずつインクリメントしていき、S112の処理の後でパラメータMALの値が2以上であるか否かを判定して2以上である場合にS114の処理に移行して故障と判定してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、制御電圧Va(t)、Vb(t)に加え、さらに比率C(t)を用いてレーザダイオード10−1の状態を判定しているが、比率C(t)は温度条件による影響を排除ないし低減するためのものであるところ、レーザダイオード10−1が搭載されている光ディスク装置に再生専用機等のように温度センサが設けられている場合には、別途、検出した温度データで制御電圧Va(t)、Vb(t)の値を補正することができるので、比率C(t)を用いないで判定してもよい。
【0044】
この場合の処理フローチャートを図7に示す。S201〜S204の処理は、図2のS101〜S104の処理と同一である。次に、比率C(t)を演算することなく、Va(t)−Va(0)がしきい値thaを超えるか否かを判定する(S205)。そして、しきい値を超える場合には故障と判定し(S211)、しきい値を超えない場合には次にΔVaをしきい値tha’と比較する(S206)。ΔVaがしきい値tha’を超える場合には劣化と判定する(S207)。次に、しきい値tha’を超えるか否かによらず、Vb(t)−Vb(0)がしきい値thbを超えるか否かを判定する(S208)。しきい値を超える場合には故障が生じたと判定する(S211)。しきい値を超えない場合には、次にΔVbがしきい値thb’を超えるか否かを判定し(S209)、超える場合には劣化と判定する(S210)。Va(t)−Va(0)がしきい値を超えず、かつ、Vb(t)−Vb(0)がしきい値を超えない場合に、レーザダイオード10−1に故障がないと判定する(S212)。
【0045】
また、本実施形態において、比率C(t)のみを用いてレーザダイオード10−1の状態を判定することもできる。レーザダイオード10−1が搭載されている光ディスク装置に温度センサが設けられていない場合に有効である。
【0046】
この場合の処理を図8に示す。S301〜S305の処理は、図2のS101〜S105の処理と同一である。次に、比率C(t)の初期値C(0)からの変化量C(t)−C(0)が所定のしきい値thcを超えるか否かを判定する(S306)。しきい値を超えている場合には、レーザダイオード10−1に故障が生じたと判定する(S309)。しきい値を超えていない場合には、前回取得(サンプリング)した値C(t−1)との差分量ΔC=C(t)−C(t−1)がしきい値thc’を超えるか否かを判定する。ここで、thc>thc’である。そして、超えている場合には、レーザダイオード10−1に劣化が生じていると判定する(S308)。一方、変化量C(t)−C(0)がしきい値thcを超えていない場合には、故障なしと判定する(S310)。
【0047】
また、本実施形態では、異なるしきい値を用いて劣化判定及び故障判定を別個に行っているが、故障に至る前の劣化判定のみを行うこともできる。具体的には、図2,図3において、S107,S108,S110,S111の各処理を省き、S114にて劣化状態と判定してもよい。図7,図8についても同様である。すなわち、図2,図3において、S114では故障と判定しているが、しきい値を適当に設定することで、故障の他に故障直前の劣化状態を判定することもできる(故障予知)。要するに、制御電圧の初期値からの経時変化、あるいは制御電圧と光量との比率の経時変化の少なくともいずれかをしきい値と比較することで、レーザダイオード10−1の劣化状態を検出すればよい。
【0048】
なお、本実施形態では、レーザダイオード10−1の劣化状態を検出しているが、レーザダイオード10−2の劣化状態を検出するためのしきい値は、レーザダイオード10−1の劣化状態を検出するためのしきい値と異なる値でもよいのは言うまでもない。
【0049】
また、本実施形態では、レーザダイオード10−1、10−2を駆動するトランジスタQ1、Q2としてバイポーラトランジスタを例示したが、もちろんユニポーラトランジスタでもよく、この場合には制御電圧はゲート電圧となる。
【0050】
また、本実施形態で説明しているある光量(パワー)Paを射出するために必要な制御電圧として、スタンパディスク等の高反射ディスクに対して射出する光量(パワー)に必要な制御電圧を適用し、別の光量(パワー)Pbを射出するために必要な制御電圧として、RW系ディスク等の低反射ディスクに対して射出する光量(パワー)に必要な制御電圧を適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 光ピックアップ、10−1 CD用レーザダイオード、10−2 DVD用レーザダイオード、12 制御用IC、14 メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、
前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、
前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、
前記第1の制御電圧の初期値からの変化量と、前記第2の制御電圧の初期値からの変化量をそれぞれ第1、第2しきい値と比較し、少なくともいずれかが第1、第2しきい値を超えるか否かを判定する手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、さらに、
前記第1の制御電圧の現在の値と前回取得した値との差分値と、前記第2の制御電圧の現在の値と前回取得した値との差分値をそれぞれ第3、第4しきい値と比較し、少なくともいずれかが第3、第4しきい値を超えるか否かを判定する手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項3】
レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、
前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、
前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、
前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧の差分値と、前記第1の光量と前記第2の光量の差分値との比率の初期値からの変化量が第5しきい値を超えるか否かを判定する手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、さらに、
前記比率の現在の値と前回取得した値との差分値が第6しきい値を超えるか否かを判定する手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項5】
レーザダイオードの状態を検出するための装置であって、
前記レーザダイオードは駆動用トランジスタに接続され、前記駆動用トランジスタに印加される制御電圧により前記レーザダイオードの駆動電流が調整されるものであり、
前記レーザダイオードから第1の光量を射出するために必要な第1の制御電圧を順次設定するとともに、前記レーザダイオードから前記第1の光量と異なる第2の光量を射出するために必要な第2の制御電圧を順次設定する手段と、
前記第1の制御電圧の初期値からの変化量と、前記第2の制御電圧の初期値からの変化量をそれぞれ第1、第2しきい値と比較し、少なくともいずれかが第1、第2しきい値を超えるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧の差分値と、前記第1の光量と前記第2の光量の差分値との比率の初期値からの変化量が第5しきい値を超えるか否かを判定する第2判定手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、さらに、
前記第1の制御電圧の現在の値と前回取得した値との差分値と、前記第2の制御電圧の現在の値と前回取得した値との差分値をそれぞれ第3、第4しきい値と比較し、少なくともいずれかが第3、第4しきい値を超えるか否かを判定する第3判定手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、さらに、
前記第1判定手段あるいは第2判定手段でしきい値を超えると判定された場合に前記レーザダイオードの故障と判定し、前記第3判定手段でしきい値を超えると判定された場合に前記レーザダイオードの劣化と判定する手段と、
を有することを特徴とするレーザダイオードの状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−124438(P2011−124438A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281906(P2009−281906)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】