説明

レーザーショックピーニングのシステム及び方法

【課題】レーザーショックピーニングの有効性のリアルタイムモニタリングのためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】レーザーショックピーニング用のシステム10は、レーザーパルス20をワークピース24の第1の面22に向けるように配置されたレーザー12と、ワークピース24の第2の面36上のカプラー30とを含んでいる。このシステム10はさらに、カプラー30の速度を測定するように配置されたドップラーシフト検出器16を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にレーザーショックピーニングを用いて金属を硬化するためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、レーザーショックピーニングの有効性のリアルタイムモニタリングのためのシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ピーニングは、金属の物性を改良するための周知の加工処理法である。通常、ハンマーの一撃のような機械的手段により、又はショットブラスト(例えば、ショットピーニング)により創成されるピーニング衝撃は、金属表面を塑性変形させて表面又はその下に残留圧縮応力を、また内部に引張応力を生成する。金属表面の圧縮応力は金属の金属疲労及び亀裂成長に対する耐性を向上させる。
【0003】
金属表面にピーニング衝撃をもたらすためにハンマーの一撃又はショットブラストの代わりにレーザーパルスを使用してもよい。典型的なレーザーショットピーニングシステムでは、黒色テープ又は塗料のような不透明コーティングを金属表面に設けてアブレーティブコーティングを形成する。このアブレーティブコーティングの上の、通常水の流れの形態の半透明層はタンプとして作用する。目標の表面に集中した短いレーザーパルスがアブレーティブコーティングを爆発させ、半透明層が生成した衝撃波を標的材料の表面内に向ける。次に、レーザービームの位置を変え、工程を繰り返して、標的材料の表面に並んだわずかな圧縮及び深さの凹みを創成することができる。このレーザーパルスの再配置は、レーザーパルスを標的材料の表面の特定の位置に正確に向けるようにコンピューター又はロボットにより制御することが多い。レーザーショックピーニングは通例、標的表面近くの、慣用のショットピーニング処理で達成できるものより四倍深いところに残留圧縮応力の層を生成する。
【0004】
レーザーショックピーニングシステムは、標的材料内に付与されるエネルギーの量と位置を測定するためにセンサー及び回路を含んでいることが多い。例えば、標的材料に取り付けた圧電トランスデューサーを使用して、レーザーパルスにより生成した衝撃波を感知し、その衝撃波に比例する電流を生成させることができる。しかし、圧電トランスデューサーの公知の不都合は、レーザーパルスにより生成した衝撃波が圧電トランスデューサーに損傷を及ぼすことが多いということである。結果として、各々のレーザーショックピーニングサイクルに対して複数の圧電トランスデューサーが必要とされ、レーザーショックピーニングの有効性を連続的にモニターする能力が制限される。
【0005】
レーザーショックピーニングの有効性をモニターするのに圧電トランスデューサーを使用することに伴うもう1つの不都合は、レーザーショックピーニング工程における、この工程の有効性を損なうわずかな不具合に対する感受性に欠けることである。例えば、検討の結果、圧電トランスデューサーは半透明層、アブレーティブ層、又はレーザーパルスのエネルギーレベルの欠陥を確実に確認する感度に欠けていることが示されている。このシステムにおけるこれらの欠陥はいずれも、標的材料の表面に付与されるエネルギーの量を低減し得、それに対応して標的材料内に生成する圧縮応力の量と深さが低減し得る。結果として、圧電トランスデューサーはレーザーショックピーニング工程の不具合を確実に確認することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7397421号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の局面及び利点は、以下の詳細な説明に記載されているか、又はその説明から明らかになるか、又は本発明の実施により確認できる。
【0008】
本発明の1つの実施形態はレーザーショックピーニング用のシステムである。このシステムは、レーザーパルスをワークピースの第1の面に向けるように配置されたレーザーと、ワークピースの第2の面上のカプラーとを含んでいる。このシステムはさらに、カプラーの速度を測定するように配置されたドップラーシフト検出器を含んでいる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、レーザーパルスをワークピースの第1の面に向けるように配置されたレーザー、ワークピースの第2の面上のカプラー、及びカプラーの速度を増幅するための手段を含む、レーザーショックピーニングのためのシステムである。このシステムはさらに、カプラーの速度を増幅するための手段の少なくとも一部分の速度を測定するように配置されたドップラーシフト検出器を含んでいる。
【0010】
また、本発明は、レーザーショックピーニングのための方法も含む。この方法は、ワークピースの第1の面内にレーザーパルスからのある量のエネルギーを付与し、第1の振動数を有するパルスをワークピースの第2の面に伝送することを含んでいる。この方法はさらに、第2の振動数を有する反射されたパルスをワークピースの第2の面から受け取り、第1の振動数と第2の振動数との差に基づいてワークピースの速度を決定することを含んでいる。
【0011】
当業者は、本明細書を参照することで、かかる実施形態の特徴及び局面などをより良好に理解できるであろう。
【0012】
以下の本明細書では、図面を参照して、当業者に対して最良の態様を含めて本発明の明確かつ十分な開示をより具体的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態によるレーザーショックピーニングシステムを示す。
【図2】図2は、本発明の代わりの実施形態によるレーザーショックピーニングシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の現状の実施形態を詳細に説明する。その1以上の具体例を添付の図面に示す。以下の詳細な説明では、図面中の部分を参照するのに数字及び文字による表示を使用する。図面及び以下の説明中同じ又は類似の表示は本発明の同じ又は類似の部分を指して使用されている。
【0015】
各例は本発明の説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。実際、当業者には了解されるように、本発明には、その範囲又は思想から逸脱することなく修正及び変更を加えることができる。例えば、1つの実施形態の部分として例示又は記載された特徴は別の実施形態で使用してさらに別の実施形態とすることができる。従って、本発明は、かかる修正及び変更を特許請求の範囲及びその均等の範囲内に入るものとして包含するものである。
【0016】
図1は、本発明の1つの実施形態によるレーザーショックピーニングシステム10を示す。図1に示されているように、システム10はレーザー12、標的14、ドップラーシフト検出器16、及びコントローラー18を含み得る。
【0017】
レーザー12はレーザーパルス20を標的14に向けるように配置されている。このレーザー12は、鏡とレンズの光学連鎖によりレーザーパルス20を生じる高エネルギーのパルス式ネオジム−ガラスレーザーのような当技術分野で公知のいかなるレーザーでもよい。レーザーパルス20の持続時間、波長、及びエネルギーレベルは、標的14の具体的な組成、標的14の厚さ、個々のレーザーパルス20の数及び間隔、並びに標的14に付与されるべきエネルギーの所望の量のような様々な作動条件に応じて変化し得る。例えば、レーザーパルス20はおよそ15〜30ナノ秒の長さ、波長およそ1ミクロン、及びエネルギー50ジュール以上であり得る。具体例として、波長1ミクロンの25ナノ秒レーザーパルスは25ジュール程度のエネルギーを標的14に付与し、百万ポンド/平方インチ程度の圧力パルスを標的14の表面22に生成し得る。
【0018】
標的14は、一般に、硬化しようとするワークピース24、アブレーティブ層26、半透明層28、及びカプラー30を含んでいる。ワークピース24は、疲労破壊を起こし易いアルミニウム合金、チタン合金、ニッケル超合金、鋳鉄、他の鉄合金、及びノッチ、孔、角、又はその他の特徴を有する事実上あらゆる金属部品のような硬化することにより利益を受けることができるあらゆる材料を含み得る。アブレーティブ層26はワークピース24の表面22に設けられた不透明材料の薄いコーティングであり得る。例えば、アブレーティブ層26はワークピース24の表面22に設けられる黒色テープ又は塗料の薄い層からなり得る。半透明層28は、通例、アブレーティブ層26を覆って付けられた水その他の半透明又は透明材料の薄いシートである。例えば、図1に示されているように、給水32により、水の連続的な流れをアブレーティブ層26を覆うように向かわせて半透明層28を形成することができる。
【0019】
ワークピース24の表面22上の半透明オーバーレイ28とアブレーティブ層26の組合せにより、ワークピース24の表面22内にエネルギーを付与するレーザーパルス20の能力が高められる。レーザーパルス20は半透明層28を貫通し、アブレーティブ層26に当たり、そこでアブレーティブ層26を気化させる。アブレーティブ層26から生成した蒸気は入って来るレーザーエネルギーを吸収し、急速に加熱され、ワークピース24の表面22と半透明層28との間で膨張する。その結果半透明層28とワークピース24の表面22との間に生じた圧力は衝撃波を創成し、この衝撃がワークピース24を通って伝搬してワークピース24を塑性変形させ、ワークピース24内の所望の位置に圧縮応力の窪み(yield)34を生成する。この衝撃波により生じた塑性変形はワークピース24の表面22内に歪み硬化と圧縮残留応力を生成する。
【0020】
図示したワークピース24上の衝撃点の形状は一般に丸いが、必要であれば、最も効率的かつ効果的な加工処理条件をもたらすように他の形状を使用してもよい。1つのパルスで処理される領域の大きさは、ワークピース24の組成、使用するレーザー12、及びその他の加工処理要因のような幾つかの工程に特有の要因に依存する。処理される領域の大きさは直径がおよそ2.5ミリメートル〜25ミリメートルの範囲であり得るが、本発明は処理される領域の大きさにより制限されることはない。
【0021】
カプラー30は、一般に、ワークピース24の処理される表面22と反対側の面36上に位置する。カプラー30は、ワークピース24とカプラー30間の伝達損失が最小になるようにワークピース24に接続された音響的に追従する材料からなり得る。例えば、カプラー30はワークピース24と同一の材料からなってもよいし、或いはカプラー30はワークピース24の密度に近似するようにカプラー30の密度を調整するために添加剤を含む異なる材料からなってもよい。カプラー30の密度はワークピース24の密度のおよそ30パーセント以内であることができ、特定の実施形態において、カプラー30の密度はワークピース24のおよそ20パーセント以内、又はおよそ10パーセント以内であることができる。同様に、カプラー30を通る音速はワークピース24を通る音速のおよそ30パーセント以内であることができ、特定の実施形態において、カプラー30を通る音速はワークピース24のおよそ20パーセント以内、又はおよそ10パーセント以内であることができる。カプラー30の密度、音速、及び音響インピーダンスを調節してワークピース24のものに近付けることによって、レーザーパルス20により生成した衝撃波は、ワークピース24とカプラー30の両方をおよそ同じ速度で伝搬し、カプラー30は衝撃波がワークピース24内へ戻る反射(これは、ワークピース24内に前から存在する亀裂の伝搬を起こし得る)を防止又は低減する。
【0022】
水、油、接着剤、糊、又はその他の非圧縮性の材料の薄い塗膜(図には示していない)を使用して、カプラー30をワークピース24の背面36に取り付け又は接続することができる。カプラー30を通るエネルギーの伝搬により、ワークピース24を通って伝搬したこれに付与されたエネルギーに比例する速度でカプラー30が振動させられる。従って、このシステム10は、カプラー30の速度を測定することにより、ワークピース24内に付与されたエネルギーの量を決定することができる。
【0023】
ドップラーシフト検出器16は、カプラー30の速度により生じた振動数シフト、すなわちドップラーシフトに基づいてカプラー30の速度を測定するように配置することができる。ドップラーシフト検出器16は、当技術分野で知られているいかなるドップラーシフト検出器でもよく、図1に示した機能要素の幾つか又は全てを含み得る。図1に示されているように、ドップラーシフト検出器16は機能上送信機38、受信機40、及び復調機42を含んでいる。本発明の範囲内の代わりの実施形態においては、送信機38と受信機40を組み合わせて、伝送と受信の双方を行う単一のトランスデューサー部品にしてもよい。
【0024】
送信機38は試験パルス44を生成し、その試験パルス44をワークピース24の方に、より具体的にはカプラー30の方に向けて、また受信機40及び/又は復調機42の少なくとも1つに送る。試験パルス44は、初期振動数F1を有するマイクロ波、レーザーパルス、音波、又はその他類似の高い振動数のパルスでよい。試験パルス44はワークピース、より具体的にはカプラー30に衝突し、反射パルス46を生成する。ワークピース24及び/又はカプラー30の相対運動により、試験パルス44の振動数にドップラーシフトが誘発され、試験パルス44と反射パルス46の間の振動数の変化は次式に従って計算することができる。
ΔF=2F1(vs/c)cosθ
式中、F1は試験パルス44の初期振動数であり、vsはワークピース24及び/又はカプラー30の速度であり、cは試験パルス44の速度であり、θは入射の角度(図1参照)である。
【0025】
受信機40はいかなるタイプの非接触式トランスデューサーであってもよく、送信機38からの試験パルス44とワークピース24及び/又はカプラー30からの反射パルス46とを受信し、試験パルス44と反射パルス46の振動数を反映する信号48を復調機42に送る。復調機42は、試験パルス44と比較した反射パルス46のドップラーシフトした振動数に基づいてワークピース24及び/又はカプラー30の速度を決定する。次に、この復調機42が、ワークピース24及び/又はカプラー30の計算された速度を反映する信号50をコントローラー18に送る。コントローラー18の仕様に応じて、復調機42及び/又はコントローラー18は、信号50をコントローラー18で比較するためのデジタル値に変換するアナログ・デジタルコンバーターを含み得る。
【0026】
コントローラー18は、復調機42からの信号50を受け取り、この信号50をコントローラー18にプログラミングされた1以上の所定の限界値と比較するコンパレーターからなり得る。この信号50が所定の限界値を越えていれば、レーザー12によりワークピース24に付与されたエネルギーの量は充分であり、コントローラー18はシステム10が的確に機能していることを表示する。逆に、信号50が1以上の所定の限界値を越えていない場合、レーザー12によりワークピース24に付与されたエネルギーの量は充分でなく、コントローラー18はシステム10がうまく機能していないことを表示する。例えば、半透明層28及び/又はアブレーティブ層26がないか又は薄過ぎる場合、レーザーパルス20により生成する衝撃波の大きさが小さくなり、それに対応して、ワークピース24に付与されここを通って伝搬されるエネルギーの量が低くなる。同様に、短か過ぎるか、不正確に向けられているか、又は不充分なエネルギーであるレーザーパルス20では、それに対応して、ワークピース24に付与されここを通って伝搬されるエネルギーの量が低下する。システム10内のこれらの可能な不具合のいずれかにより起こる、ワークピース24に付与されここを通って伝搬されるエネルギーの低下に対応して、ワークピース24及び/又はカプラー30の速度の低下が生じる。このワークピース24及び/又はカプラー30の速度の低下が1以上の所定の限界値を下回ると、制御システム18はこの異常に低い速度を検出し、システム10が的確に作動していないことを示す表示を与える。このようにして、システム10はレーザーショックピーニング工程の有効性及び効率をリアルタイムでモニターすることができる。
【0027】
システム10の作動の量的な一例として、質量50キログラムのステンレス鋼ワークピースに25ジュールのエネルギーを付与するレーザーパルスが音響的に調和したカプラーで20フィート/秒の振動を誘発すると仮定する。各々のレーザーパルスで少なくとも25ジュールのエネルギーをワークピースに付与することが望まれる場合、コントローラーは、20フィート/秒より低いカプラーの速度を特定するように所定の限界値をプログラミングすることができる。もちろん、ワークピースに付与されるエネルギー及びその結果生じるカプラーの速度として挙げた上記の値は単なる例示である。これら及び他の測定値に対する実際の値は具体的なレーザー、ワークピース、幾何学的条件、及びショックピーニングシステムに関連するその他の変量に依存し、当業者は容易に計算又は決定することができる。
【0028】
図1に示されているように、システム10はさらに、いろいろな位置に複数の受信機、トランスデューサー、又はマイクロホン52を含んでいることができる。各々のマイクロホン52は、ワークピース24の表面22に対するレーザーパルス20の衝撃により生成したエネルギー波、例えば音波の反射を受信し、タイミング信号54をコントローラー18に送るように配置されている。その後、コントローラー18は各々のマイクロホン52からのタイミング信号54を比較し、ワークピース24の表面22上のレーザーパルス20の正確な位置を三角測量することができる。このようにして、コントローラー18は、ワークピース24の表面22上の各々のレーザーパルス20の位置を正確に示すことができる。コントローラー18がシステム10のレーザーパルス20のいずれかで不具合を検出した場合、コントローラー18は不十分なレーザーパルス20の正確な位置を提供し得、所望であれば再度実行し得る。
【0029】
図2は、本発明の代わりの実施形態によるレーザーショックピーニングシステム60を示す。ここでもシステム60は一般に、図1に示した実施形態に関して既に説明したようなレーザー12、標的14、ドップラーシフト検出器16、及びコントローラー18を含んでいる。レーザー12からのレーザーパルス20は半透明層28を貫通し、アブレーティブ層26に当たり、そこで即座にアブレーティブ層26を気化させる。アブレーティブ層26から生じた蒸気は入って来るレーザーエネルギーを吸収し、急速に加熱され、ワークピース24の表面22と半透明層28との間に拡がる。その結果半透明層28とワークピース24の表面22との間に創成された圧力により、ワークピース24内を通って伝搬して、ワークピース24を塑性変形させると共にワークピース24の所望の位置に圧縮応力窪み34を生成する衝撃波が創成される。この衝撃波により生じた塑性変形によって、ワークピース24の表面22に歪み硬化と圧縮残留応力が生じる。
【0030】
レーザーパルス20により生じた衝撃波は、ワークピース24とカプラー30の両方を通っておよそ同じ速さで、ワークピース24内に反射される(これは、前から存在する亀裂を伝搬させ得る)ことなく伝搬する。ワークピース24を通るエネルギーの伝搬によって、カプラー30は、ワークピース24に付与されここを通って伝搬したエネルギーに比例する速度で振動させられる。
【0031】
図2に示したシステム60はさらに、ワークピース24又はカプラー30の少なくとも1つに取り付け又は連結された増幅手段62を含んでいる。増幅手段62は、ワークピース24及び/又はカプラー30の移動に応答して振動することができるあらゆるバネ質量システム(spring mass system)又は加速度計からなることができる。例えば、図2に示されているように、増幅手段62は、当技術分野で物体同士を接続するために公知のバネ66、バンド、又はその他の材料によりカプラー30に取り付けられた部材64を含み得る。部材64のような増幅手段62の少なくとも一部分は、バネ66の剛性を部材64の質量で割った値の平方根に比例する振動数で振動する。従って、部材64の質量とバネ66の剛性はカプラー30の速度の増幅を高めるように選択することができる。
【0032】
ドップラーシフト検出器16は、試験パルス44が部材64のような増幅手段62の一部分で反射することを除いて、図1に示した実施形態に関して既に記載したように機能する。結果として、増幅手段62の一部分の相対運動により試験パルス44の初期振動数にドップラーシフトが誘発され、試験パルス44と反射パルス46との間の振動数の変化は次式に従って計算することができる。
ΔF=2F1(vs/c)cosθ
ここで、F1は試験パルス44の初期振動数であり、vsは部材64の速度であり、cは試験パルス44の速度であり、θは図2に示されている入射の角度である。
【0033】
ドップラーシフト検出器16は、試験パルス44と比較した反射パルス46のドップラーシフトした振動数に基づいて増幅手段62の一部分の速度を決定し、増幅手段62の一部分の計算された速度を反映する信号50をコントローラー18に送る。次に、コントローラー18は、既に記載したように、その信号50を、コントローラー18にプログラミングされた1以上の所定の限界値と比較して、そのシステム60が正常なパラメーター内で作動しているか否か決定する。
【0034】
上に説明し図1と2に示した実施形態はレーザーショックピーニングの有効性と効率をリアルタイムでモニターする方法を提供し得る。既に記載したように、この方法は、レーザーパルス20からのある量のエネルギーをワークピース24の表面22又は第1の面内に付与することを含んでいる。レーザーパルス20によりワークピース24に付与されたエネルギーは、ワークピース24、カプラー30、及び/又は増幅手段62を、ワークピース24に付与されたエネルギーの量を反映する速度で移動させる。
【0035】
この方法はさらに、第1の振動数F1を有する試験パルス44をワークピース24の第2の面36、カプラー30、及び/又は増幅手段62に送り、第2の振動数を有する反射パルス46を受け取ることを含んでいる。この方法は、第1の振動数と第2の振動数との差に基づいてワークピース24、カプラー30、及び/又は増幅手段62の速度を決定する。次いで、この方法は、ワークピース24、カプラー30、及び/又は増幅手段62の速度を1以上の所定の限界値と比較して、レーザーショックピーニングの効率及び/又は有効性を決定することができる。この方法はさらに、レーザーパルス20からのエネルギー波の反射を受け取り、レーザーパルス20からのエネルギー波に基づいてワークピース24に付与されたエネルギーの位置を決定することを含み得る。
【0036】
以上の説明では例を使用して、最良の形態を含めて本発明を開示し、また当業者が装置又はシステムを作成し使用し、包含される方法を実行することを含めて本発明を実施することを可能にした。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者には明らかなその他の例を含み得る。かかるその他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含む場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的に差のない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲に入る。
【符号の説明】
【0037】
10 LSPシステム
12 レーザー
14 標的
16 ドップラーシフト検出器
18 コントローラー
20 レーザーパルス
22 標的の表面
24 ワークピース
26 アブレーティブ層
28 半透明層
30 カプラー
32 給水
34 窪み
36 ワークピースの面
38 送信機
40 受信機
42 復調機
44 試験パルス
46 反射パルス
48 受信機からの信号
50 復調機からの信号
52 マイクロホン
54 トランスデューサーからのタイミング信号
60 LSPシステム
62 増幅手段
64 部材
66 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーショックピーニングのためのであって、
a.レーザーパルス(20)をワークピース(24)の第1の面(22)に向けるように配置されたレーザー(12)、
b.ワークピース(24)の第2の面(36)上のカプラー(30)、及び
c.前記カプラー(30)の速度を測定するように配置されたドップラーシフト検出器(16)
を含んでなる、前記システム(10)。
【請求項2】
前記カプラー(30)があるカプラー密度を有してあり、ワークピース(24)があるワークピース密度を有しており、前記カプラー密度がワークピース密度のおよそ30パーセント以内である、請求項1記載のレーザーショックピーニングのためのシステム(10)。
【請求項3】
前記ドップラーシフト検出器(16)が前記カプラー(30)の前記速度を反映する信号(50)を送る、請求項1又は2記載のレーザーショックピーニングのためのシステム(10)。
【請求項4】
さらに、前記信号(50)を受け取るコントローラー(18)を含む、請求項3記載のレーザーショックピーニングのためのシステム(10)。
【請求項5】
さらに、エネルギー波の反射を受け取るように配置された複数のトランスデューサー(52)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザーショックピーニングのためのシステム(10)。
【請求項6】
a.前記複数のトランスデューサー(52)の各々がタイミング信号(54)を送る、請求項5記載のレーザーショックピーニングのためのシステム(10)。
【請求項7】
レーザーショックピーニングのための方法であって、
a.レーザーパルス(20)からのある量のエネルギーをワークピース(24)の第1の面(22)内に付与し、
b.第1の振動数を有するパルス(40)をワークピース(24)の第2の面(36)に送り、
c.ワークピース(24)の第2の面(36)からの第2の振動数を有する反射パルス(46)を受け取り、
d.第1の振動数と第2の振動数との差に基づいてワークピース(24)の速度を決定する
ことを含んでなる、前記システム(10)。
【請求項8】
さらに、前記レーザーパルス(20)によりワークピース(24)の第1の面(22)内に付与されたエネルギーの前記量をワークピース(24)の前記速度に基づいて決定することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、ワークピース(24)の前記速度を所定の値と比較することを含む、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記レーザーパルス(20)からのエネルギー波の反射を受け取ることを含む、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241478(P2011−241478A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103933(P2011−103933)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】