説明

レーザー光線のスポット形状検出方法

【課題】レーザ光線のスポット形状および集光点位置(焦点距離)を正確に検出することができるレーザ光線のスポッと形状検出方法を提供する。
【解決手段】X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されたテーブルの保持面にレーザ光線が照射されると発光する微小粒子からなる発光体を備えた検出基板を保持し、検出基板の発光体が位置する領域にレーザ光線発振手段によって発振され検出基板を加工することができない出力のレーザ光線を照射し、検出基板の発光体が位置する領域にレーザ光線を照射した状態でテーブルをX軸方向およびY軸方向に移動させつつ発光体によって発光された光の光強度を光検出器によって検出し、光強度検出工程において検出された発光体のx、y座標値における光強度マップを作成し、さらに集光器をテーブル保持面に垂直なZ軸方向における複数の検出位置において同様作業を実施してレーザ光線のスポット形状画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置のレーザー光線発振手段から発振され集光器によって集光されるレーザー光線のスポット形状を検出するレーザー光線のスポット形状検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に形成された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成された半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイア基板や炭化珪素基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハも分割予定ラインに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述したウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射することにより破断の起点となるレーザー加工溝を形成し、この破断の起点となるレーザー加工溝が形成された分割予定ラインに沿って外力を付与することにより割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上述したウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを破断して分割するものである。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかるに、レーザー光線を集光する集光器は多数の凸レンズと凹レンズを組み合わせた組み合わせレンズによって構成されているため、またレーザー発振器から集光器に至るまでの光学系に歪みがあり、集光スポット形状が必ずしも円形等の意図した形状に集光されるとは限らない。レーザー光線の集光スポット形状および集光スポットの大きさが加工品質に影響を及ぼすことが判っており、このため、ウエーハ等の被加工物に照射されるレーザー光線のスポット形状および集光スポットの大きさを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、ウエーハ等の被加工物に照射されるレーザー光線のスポット形状および集光点位置の検出は、例えば曇りガラスにレーザー光線のスポットを位置付け、CCDカメラによって裏側からスポットを撮像する方法が実施されているが、曇りガラスの散乱光によって正確なスポット形状および集光点位置を検出することができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、レーザー光線のスポット形状および集光点位置(焦点距離)を正確に検出することができるレーザー光線のスポッと形状検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、レーザー光線発振手段によって発振され集光器によって集光されたレーザー光線のスポット形状を検出するレーザー光線のスポット形状検出方法であって、
X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されたテーブルの保持面にレーザー光線が照射されると発光する微小粒子からなる発光体を備えた検出基板を保持する検出基板保持工程と、
該テーブルに保持された該検出基板の該発光体が位置する領域に該レーザー光線発振手段によって発振され該検出基板および該発光体を加工することができない出力のレーザー光線を該集光器によって集光して照射するレーザー光線照射工程と、
該テーブルに保持された該検出基板の該発光体が位置する領域にレーザー光線を照射した状態で該テーブルを該集光器に対して相対的にX軸方向およびY軸方向に移動させつつ該発光体によって発光された光の光強度を光検出器によって検出する光強度検出工程と、
該光強度検出工程において検出された該発光体のx,y座標値における光強度マップを作成する光強度マップ作成工程と、を含み、
該集光器を該テーブル保持面に垂直なZ軸方向における複数の検出位置において該光強度検出工程および該光強度マップ作成工程を実施し、該光強度マップ作成工程で作成された複数の光強度マップに基づいてレーザー光線のスポット形状画像を作成するスポット形状画像形成工程を含んでいる、
ことを特徴とするレーザー光線のスポット形状検出方法が提供される。
【0010】
上記発光体は、発光体は、粒径が30〜100nmに設定されている。また、上記発光体は、単一蛍光粒子を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法においては、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されたテーブルの保持面にレーザー光線が照射されると発光する微小粒子からなる発光体を備えた検出基板を保持する検出基板保持工程と、テーブルに保持された該検出基板の発光体が位置する領域にレーザー光線発振手段によって発振され検出基板および発光体を加工することができない出力のレーザー光線を集光器によって集光して照射するレーザー光線照射工程と、テーブルに保持された検出基板の発光体が位置する領域にレーザー光線を照射した状態でテーブルをX軸方向およびY軸方向に移動させつつ発光体によって発光された光の光強度を光検出器によって検出する光強度検出工程と、光強度検出工程において検出された発光体のx,y座標値における光強度マップを作成する光強度マップ作成工程とを含み、集光器をテーブル保持面に垂直なZ軸方向における複数の検出位置において光強度検出工程および光強度マップ作成工程を実施し、光強度マップ作成工程で作成された複数の光強度マップに基づいてレーザー光線のスポット形状画像を作成するスポット形状画像形成工程を含んでいるので、光強度マップに基づいてスポットの境界部である輪郭(スポット形状)を求めることができる。そして、集光器のテーブル保持面に垂直なZ軸方向における複数の検出位置において検出されたスポットの大きさ(面積)が最小となるスポットが集光スポットとなり、集光スポットの大きさ(面積)を求めることができるとともに、集光器の焦点距離を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法が実施されるレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
【図3】図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル機構を構成する支持テーブルに着脱可能に装着される光検出器のブロック構成図。
【図4】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図5】本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法における検出基板支持工程の説明図。
【図6】本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法における光強度検出工程の説明図。
【図7】本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法における光強度マップ作成工程で作成される光強度マップの一例を示す図。
【図8】本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法におけるスポット形状画像形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によるレーザー光線のスポット形状検出方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示すX軸方向に移動可能に配設され被計測物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4にX軸方向およびY軸方向に対して垂直な矢印Zで示すZ軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物を保持する保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被計測物を図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、被計測物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。X軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の移動位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向移動位置を検出する。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1のY軸方向移動手段38を具備している。第1のY軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向移動位置を検出するためのY軸方向移動位置検出手段384を備えている。Y軸方向移動位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向移動位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り位置を検出する。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態における計測ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2のY軸方向移動手段43を具備している。第2のY軸方向移動手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0022】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング521を含んでいる。ケーシング521内には図2に示すようにレーザー光線発振手段522と出力調整手段523とが配設されている。このレーザー光線発振手段522および出力調整手段523は、後述する制御手段によって制御される。また、レーザー光線照射手段52は、上記レーザー光線発振手段522から発振され出力調整523によって出力が調整されたレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物に照射する集光器524を具備している。この集光器524は、多数の凸レンズと凹レンズを組み合わせた組み合わせレンズによって構成されており、上記ケーシング521の先端部に装着されている。
【0023】
図1に戻って説明を続けると、レーザー光線照射手段52を構成するケーシング52の前端部には、上記集光器524から照射されるレーザー光線によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段55が配設されている。この撮像手段55は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像データを図示しない制御手段に送る。
【0024】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動手段53を具備している。Z軸方向移動手段53は、上記X軸方向移動手段37や第1のY軸方向移動手段38および第2のY軸方向移動手段43と同様に一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ562等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51とユニットハウジング52を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、レーザー光線照射手段52のZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段54を具備している。Z軸方向位置検出手段54は、上記案内レール423、423と平行に配設されたリニアスケール54aと、上記ユニットホルダ51に取り付けられユニットホルダ51とともにリニアスケール54aに沿って移動する読み取りヘッド57bとからなっている。このZ軸方向位置検出手段54の読み取りヘッド54bは、図示の実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。また、レーザー光線照射ユニット5は、ユニットハウジング52の前端部に配設され後述する被計測物の計測領域を撮像する撮像手段55を備えている。この撮像手段55は、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル機構3を構成する支持テーブル35上に光検出器6が着脱可能に装着されるように構成されている。この光検出器6は、図3に示すようにチャックテーブル機構3を構成するチャックテーブル36に保持された後述する検出基板に保持された発光体が発光する光の波長のみを透過するバンドパスフィルター61と、該バンドパスフィルター61を透過した光を結像する結像レンズ62と、該結像レンズ62で結像された光を受光して光強度信号を出力するホトマルチプラ63とからなっている。このように構成された光検出器6は、チャックテーブル36に保持された後述する検出基板に固定された発光体が発光した光を受光し、受光した光の強度に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。
【0027】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図4に示す制御手段7を具備している。制御手段7はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)71と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)72と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)73と、カウンター74と、入力インターフェース75および出力インターフェース76とを備えている。制御手段7の入力インターフェース75には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向移動量検出手段384、撮像手段524、光検出器6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段7の出力インターフェース76からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線発振手段522、出力調整手段523、表示手段70等に制御信号を出力する。
【0028】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述したレーザー加工装置におけるレーザー光線照射手段52の集光器524から照射されるレーザー光線のスポット形状を検出するためには、図5に示すように環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に検出基板8を貼着する(検出基板支持工程)。検出基板8は図示の実施形態においてはガラス基板によって円形に形成されており、その表面(上面)における中心部にレーザー光線が照射されると発光する発光体9が固定されている。発光体9は、粒径が30〜100nmの単一蛍光粒子が用いられる。このような単一蛍光粒子としては、蛍光シリカナノ粒子を用いることができる。
【0029】
上述した検出基板支持工程を実施したならば、上記図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に検出基板8が貼着された粘着テープTを載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、粘着テープTを介して検出基板8をチャックテーブル36上に吸引保持する(検出基板保持工程)。このようにして、検出基板8が貼着されている粘着テープTを装着した環状のフレームFは、チャックテーブル36に配設されたクランプ362によって固定される。このようにして、検出基板8を粘着テープTを介して吸引保持したチャックテーブル36は、X軸方向移動手段37および第1のY軸方向移動手段38を作動してチャックテーブル36の中心位置をレーザー光線照射手段52の集光器524の直下に位置付ける。
【0030】
チャックテーブル36の中心位置をレーザー光線照射手段52の集光器524の直下に位置付けたならば、レーザー光線照射手段52を作動して集光器524からチャックテーブル36に保持された検出基板8に固定された発光体9が位置する領域にレーザー光線を照射する。このようにして照射されたレーザー光線は、検出基板8および発光体9を加工することができない出力(例えば0.01W)に設定されている(レーザー光線照射工程)。
【0031】
次に、Z軸方向移動手段53を作動してレーザー光線照射手段52の集光器524をZ軸方向に移動し、集光器524によって集光されるレーザー光線の集光点がチャックテーブル36に保持された検出基板8の表面(上面)より設計値として所定量高い第1の検出位置(Z1)に位置付ける。そして、チャックテーブル36に保持された検出基板8に固定された発光体9が位置する領域にレーザー光線を照射した状態でチャックテーブル36をX軸方向およびY軸方向に移動させつつ発光体9が発光する光の光強度を光検出器6によって検出する光強度検出工程を実施する。この光強度検出工程について、図6を参照して説明する。図6には、レーザー光線照射手段52の集光器524から検出基板8に照射されたレーザー光線のスポットSと、検出基板8に固定された発光体9が誇張した状態で示されている。即ち、制御手段7は、X軸方向移動手段37および第1のY軸方向移動手段38を作動してチャックテーブル36をX軸方向およびY軸方向に移動するとともに、X軸方向位置検出手段374およびY軸方向移動位置検出手段384からの検出信号に基づいてチャックテーブル36に保持された検出基板8に固定された発光体9を例えば(x1,y1)の座標値に位置付ける。そして、X軸方向移動手段37を作動してチャックテーブル36を(xn,y1)の座標値まで移動する。このチャックテーブル36の移動は、発光体9がレーザー光線のスポットSが位置していない領域からスポットSが位置している領域を通過してスポットSが位置していない領域に至る。このようにして移動する発光体9は、レーザー光線のスポットSが位置していない領域ではレーザー光線が照射されないので発光せず、スポットSが位置していない領域ではレーザー光線が照射されるので高い光強度で発光する。そして発光体9は、スポットSの境界部においては部分的にレーザー光線が照射されるので比較的低い光強度で発光する。このようにして発光体9が移動する際に、光検出器6は発光体9が発光する光を受光し、その光強度信号を制御手段7に送る。制御手段7は、光検出器6からの光強度信号とY軸方向移動位置検出手段384およびY軸方向移動位置検出手段384から検出信号に基づいて0.1μm毎の座標値に対応した光強度をランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納する。
【0032】
上述したように、(x1,y1)座標値から(xn,y1)座標値まで走査したならば、X軸方向移動手段37および第1のY軸方向移動手段38を作動してチャックテーブル36をX軸方向およびY軸方向に移動するとともに、X軸方向位置検出手段374およびY軸方向移動位置検出手段384からの検出信号に基づいてチャックテーブル36に保持された検出基板8に固定された発光体9を例えば(x1,y2)の座標値に位置付ける。そして、X軸方向移動手段37を作動してチャックテーブル36を(xn,y2)の座標値まで移動する。このようにして発光体9が移動する際に、光検出器6は上述したように発光体9が発光する光を受光し、その光強度信号を制御手段7に送る。制御手段7は、光検出器6からの光強度信号とY軸方向移動位置検出手段384およびY軸方向移動位置検出手段384から検出信号に基づいて0.1μm毎の座標値に対応した光強度をランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納する。次に制御手段7は、(x1,y3)座標値から(xn,y3)座標値まで走査し、以後順次(x1,yn)座標値から(xn,yn)座標値まで走査して、光検出器6によって検出された各(x,y)座標値における発光体9が発光する光の光強度をランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納する。
【0033】
以上のようにして第1の検出位置(Z1)における(x1,y1)座標値から(xn,yn)座標値までの光強度検出工程を実施したならば、制御手段7は、ランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納された各(x,y)座標値における発光体9が発光する光の光強度に基づいて、例えば図7に示すように第1の検出位置(Z1)の各(x,y)座標値における光強度マップを作成し、ランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納する(光強度マップ作成工程)。
【0034】
上述したように第1の検出位置(Z1)における光強度検出工程および光強度マップ作成工程を実施したならば、制御手段7はZ軸方向移動手段53を作動してレーザー光線照射手段52の集光器524をZ軸方向に0.1μm下降せしめ、集光器524を第2の検出位置(Z2)に位置付ける。そして、第2の検出位置(Z2)において、上記光強度検出工程および光強度マップ作成工程を実施する。以後、Z軸方向移動手段53を作動してレーザー光線照射手段52の集光器524をZ軸方向に0.1μmづつ下降し、第3の検出位置(Z3)、第4の検出位置(Z4)、第5の検出位置(Z5)においてそれぞれ上述した光強度検出工程および光強度マップ作成工程する。
【0035】
次に、制御手段7は、上記各検出位置(Z1〜Z5)における光強度マップに基づいてレーザー光線のスポット形状画像を作成する(スポット形状画像形成工程)。このスポット形状画像形成工程においては、上述したようにスポットSの境界部においては発光体9は部分的にレーザー光線が照射されるので比較的低い光強度で発光するので、この比較的低い光強度の(x,y)座標値に基づいてスポットSの輪郭を求めることができる。図8には、スポット形状画像形成工程によって求められた各検出位置(Z1〜Z5)におけるスポットSの輪郭が示されており、この画像が表示手段70に表示される。従って、表示手段70に表示されたスポットSの輪郭に基づいてスポット形状を確認することができる。なお、図8においては、第3の検出位置(Z3)においてスポットSの大きさ(面積)が最小となっている。従って、第3の検出位置(Z3)におけるスポットSが集光スポットとなり、集光スポットの大きさ(面積)を求めることができるとともに、集光器524の焦点距離を正確に求めることができる。なお、図8に示す実施形態においては、第1の検出位置(Z1)および第2の検出位置(Z2)の画像は集光器524が焦点距離より高い位置に位置付けられた状態を示し、第4の検出位置(Z4)および第5の検出位置(Z5)の画像は集光器524が焦点距離より低い位置に位置付けられた状態を示している。なお、上述したスポット形状画像形成工程において作成されたスポット形状が設定された形状と異なる場合には、加工品質に影響を及ぼすので、集光器を交換したり組レンズ等の光学系の修正を行う。
【符号の説明】
【0036】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:X軸方向移動手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1のY軸方向移動手段
384:Y軸方向移動量検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
43:第2のY軸方向移動手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
524:集光器
53:Z軸方向移動手段
54:Z軸方向位置検出手段
6:光検出器
7:制御手段
70:表示手段
8:検出基板
9:発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光線発振手段によって発振され集光器によって集光されたレーザー光線のスポット形状を検出するレーザー光線のスポット形状検出方法であって、
X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されたテーブルの保持面にレーザー光線が照射されると発光する微小粒子からなる発光体を備えた検出基板を保持する検出基板保持工程と、
該テーブルに保持された該検出基板の該発光体が位置する領域に該レーザー光線発振手段によって発振され該検出基板および該発光体を加工することができない出力のレーザー光線を該集光器によって集光して照射するレーザー光線照射工程と、
該テーブルに保持された該検出基板の該発光体が位置する領域にレーザー光線を照射した状態で該テーブルを該集光器に対して相対的にX軸方向およびY軸方向に移動させつつ該発光体によって発光された光の光強度を光検出器によって検出する光強度検出工程と、
該光強度検出工程において検出された該発光体のx,y座標値における光強度マップを作成する光強度マップ作成工程と、を含み、
該集光器を該テーブル保持面に垂直なZ軸方向における複数の検出位置において該光強度検出工程および該光強度マップ作成工程を実施し、該光強度マップ作成工程で作成された複数の光強度マップに基づいてレーザー光線のスポット形状画像を作成するスポット形状画像形成工程を含んでいる、
ことを特徴とするレーザー光線のスポット形状検出方法。
【請求項2】
該発光体は、粒径が30〜100nmに設定されている、請求項1記載のレーザー光線のスポット形状検出方法。
【請求項3】
該発光体は、単一蛍光粒子が用いられる、請求項1又は2記載のレーザー光線のスポット形状検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22634(P2013−22634A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162089(P2011−162089)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】