説明

レーザー加工方法及びレーザー加工装置

【課題】レーザー光の照射エネルギーの利用効率を上げて一台のレーザーで多点の一括加工を容易に行い得るようにする。
【解決手段】無機絶縁膜2で被覆されたシリコン基板1面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜2を除去するレーザー加工方法であって、少なくとも前記基板1の表面を溶融させる程度の強度に設定された紫外域の第1のレーザー光L1を前記基板1面に照射して溶融させ、前記基板1の前記溶融部分MPに前記第1のレーザー光L1の照射と同時に、又は一定の遅延時間を与えて前記第1のレーザー光L1よりも波長が長く、一定強度に設定された第2のレーザー光L2を照射して前記基板材料を蒸発させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜を除去するレーザー加工方法に関し、特にレーザー光の照射エネルギーの利用効率を上げて一台のレーザーで多点の一括加工を容易に行い得るようにするレーザー加工方法及びレーザー加工装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のレーザー加工方法は、SiOの絶縁膜で被覆されたP型シリコン基板の表面にXeClエキシマレーザーを光源として波長が350nm以下のレーザー光を照射し、局所的に上記絶縁膜を除去するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−13632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のレーザー加工方法においては、350nm以下の単一波長のレーザー光を照射してシリコンを瞬時にアブレーション(蒸発)させ、この気化したシリコンにより絶縁膜を破壊して除去するもので、レーザー光としては、シリコンをアブレーションさせるだけの十分に大きな照射エネルギーが必要である。この場合、例えば、一つの光源を使用して多点を一括加工しようとするときには、光源から射出するレーザー光のビーム径を拡大して複数の集光レンズを並べて備えたレンズアレイに照射することが考えられる。しかし、この場合、基板に照射するレーザー光の照射エネルギーは分散されて、1点当たりの照射エネルギーが低下し、シリコンをアブレーションさせることができないというおそれがある。このような問題に対しては、大パワーのレーザーを使用すればよいということは容易に想像できるが、大パワーのレーザーは、装置が大型化すると共に高価になるという問題がある。したがって、従来のレーザー加工方法においては、一台のレーザーで多点を一括加工することは容易でなかった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、レーザー光の照射エネルギーの利用効率を上げて一台のレーザーで多点の一括加工を容易に行い得るようにするレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるレーザー加工方法は、無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜を除去するレーザー加工方法であって、少なくとも前記基板の表面を溶融させる程度の強度に設定された紫外域のレーザー光を前記基板面に照射して溶融させ、前記基板の前記溶融部分に前記レーザー光の照射と同時に、又は一定の遅延時間を与えて前記レーザー光よりも波長が長く、一定強度に設定された別のレーザー光を照射して前記基板材料を蒸発させるものである。
【0007】
この場合、前記レーザー光を、複数の集光レンズを一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて設けたレンズアレイによって複数本のレーザー光に分離し、前記複数の集光レンズの並び方向と交差する方向に前記基板を搬送しながら、該搬送中の基板上に前記分離された複数本のレーザー光を一定の時間間隔で照射するものであるのが望ましい。
さらに、前記基板は、太陽電池用シリコン基板であってもよい。
【0008】
また、本発明のレーザー加工装置は、無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜を除去するレーザー加工装置であって、前記基板を載置するステージと、紫外域の波長を含む複数波長のレーザー光を発生するレーザーと、前記レーザー光を前記基板上に集光する集光手段と、前記レーザーから射出された前記レーザー光を前記集光手段まで導いて前記集光手段を照明する照明光学系と、を備えて構成され、前記レーザーは、前記複数波長のレーザー光のうち、紫外域のレーザー光を前記基板の表面を溶融させる程度の強度に設定して射出し、該レーザー光の発生と同時に、又は一定の遅延時間を与えて前記レーザー光よりも波長が長く、一定強度に設定された別のレーザー光を射出する、ものである。
【0009】
このような構成により、レーザーで紫外域の波長を含む複数波長のレーザー光を発生して射出し、該レーザー光を照明光学系により集光手段まで導いてこれを照明し、集光手段によりステージ上に載置された基板上に集光する。このとき、上記レーザーにより、上記複数波長のレーザー光のうち、紫外域のレーザー光を基板の表面を溶融させる程度の強度に設定して射出し、該レーザー光の発生と同時に、又は一定の遅延時間を与えて上記レーザー光よりも波長が長く、一定強度に設定された別のレーザー光を射出し、基板面に被覆された無機絶縁膜を局所的に除去する。
【0010】
好ましくは、前記集光手段は、複数の集光レンズを一定の配列ピッチで並べて設けたレンズアレイであり、前記照明光学系は、前記レーザーから射出した前記レーザー光のビーム径を拡大すると共に前記レンズアレイを均一に照明するものであるのが望ましい。
また、前記ステージは、前記レンズアレイの前記複数の集光レンズの並び方向と交差する方向に前記基板を搬送可能に構成されているのが望ましい。
さらに、前記基板は、太陽電池用シリコン基板であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外域のレーザー光の照射エネルギーの不足分を、通常ではレーザー加工には使用されない波長の長いレーザー光によって補ってレーザー加工することができる。したがって、レーザー加工に必要なレーザー光の照射エネルギーの利用効率を上げることができる。それ故、一台のレーザーにより紫外域のレーザー光の照射エネルギーを抑えた状態で多点を一括加工することができ、レーザー加工装置を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるレーザー加工方法の実施形態を示す断面説明図である。
【図2】シリコンの波長対光吸収係数の関係を示すグラフである。
【図3】本発明のレーザー加工例を示す写真であり、(a)は本発明の加工例で、(b)は比較例である。
【図4】本発明のレーザー加工装置の実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明のレーザー加工装置に使用する集光手段の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【図6】本発明のレーザー加工装置に使用する制御手段の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明のレーザー加工装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】太陽電池用基板の一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるレーザー加工方法の実施形態を示す断面説明図である。このレーザー加工方法は、無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に絶縁膜を除去するもので、紫外域の第1のレーザー光L1を照射する第1ステップと、第1のレーザー光L1及び該第1のレーザー光L1よりも波長の長い第2のレーザー光L2を照射する第2ステップと、行うものである。以下、基板が例えば窒化シリコン(SiN)や二酸化ケイ素(SiO)等の絶縁膜2で表面が被覆されたシリコン基板1である場合について説明する。
【0014】
先ず、上記第1ステップにおいては、図1(a)に示すように複数の集光レンズ3を一定の配列ピッチで並べて備えたレンズアレイ4を介してシリコン基板1上に予め定められた多点のレーザー加工点5に波長λ1が例えば355nmの第1のレーザー光L1を照射する。この場合、照射する第1のレーザー光L1の照射エネルギーは、少なくともシリコン基板1の表面を溶融させる程度の強度に設定されていればよく、シリコンをアブレーションさせる程の強度は必要ない。
【0015】
次に、第2ステップにおいては、図1(b)に示すようにシリコン基板1の上記レーザー加工点5の溶融部分MPに第1のレーザー光L1の照射と同時に、又は一定の遅延時間を与えて第1のレーザー光L1よりも波長が長く、第1のレーザー光L1と相まってシリコン(Si)を蒸発させ得るのに十分な強度に設定された例えば波長λ2が1064nmの第2のレーザー光L2を照射する。なお、上記遅延時間は、シリコン(Si)の溶融状態が保たれている時間内である。
【0016】
図2に示すように、一般に、シリコン(Si)は、短波長のレーザー光を吸収し易い。したがって、通常、シリコン基板1のレーザー加工は、吸収率の高い紫外域のレーザー光が使用される。しかしながら、短波長になるほど出力パワーが小さくなるため、最大出力に設定しても一台のレーザー7で多点を一括加工することができない場合がある。
【0017】
一方、溶融したシリコン(Si)は、長波長のレーザー光を吸収し易くなることが知られている。そこで、本発明においては、上述したように、波長λ1が短い紫外域の例えば355nmの第1のレーザー光L1の照射エネルギーをシリコン(Si)が溶融し得る程度に抑えて照射し、出力の高く波長λ2の長い例えば1064nmの第2のレーザー光L2により第1のレーザー光L1の照射エネルギーの不足分を補ってシリコン(Si)を蒸発させるようにしている。これにより、一台のレーザー7によりシリコン基板1の多点の一括加工が可能になった。
【0018】
図3は、本発明によるレーザー加工例を示す写真である。ここで、同図(a)は、355nmの第1のレーザー光L1の照射エネルギーを0.716J/cmに設定し、1064nmの第2のレーザー光L2の照射エネルギーを0.608J/cmに設定して使用し、468個の加工点(1点の加工形状は50μm×50μm)5を100ショットで一括加工した例である。この場合、同図に示すように、シリコン基板1上の絶縁膜2を完全に除去することができた。なお、レーザー加工は、レーザー光の1ショットで行ってもよいが、上記のように複数ショットで行う場合には、1ショットで行う場合よりも照射エネルギーを低減することができる。
【0019】
一方、図3(b)は、照射エネルギーを0.8J/cmに設定した355nmの第1のレーザー光L1のみを使用して、上記と同様に468個の加工点5を100ショットで一括加工した比較例である。この場合、照射エネルギーが足りず、絶縁膜2を除去することができなかった。なお、照射エネルギーを同図(a)と同様に0.7J/cmに設定した第1のレーザー光L1のみを使用して加工した場合には、絶縁膜2を全く除去することができなかった。以上の実験結果から、本発明の効果が確認できた。
【0020】
なお、上記実施形態においては、第1のレーザー光L1が355nmの波長のレーザー光である場合について説明したが、第1のレーザー光L1は紫外域のレーザー光であれば、355nmの波長に限られない。また、第2のレーザー光は、第1のレーザー光よりも波長が長ければよく、単一波長のものに限られず、複数波長のレーザー光を含んでいてもよい。
【0021】
次に、本発明のレーザー加工方法に使用するレーザー加工装置について、図4を参照して説明する。図4は、本発明のレーザー加工装置の実施形態を示す正面図である。このレーザー加工装置は、無機絶縁膜2で被覆されたシリコン基板1面にレーザー光を照射して局所的に絶縁膜2を除去するもので、ステージ6と、レーザー7と、集光手段8と、照明光学系9と、撮像手段10と、アライメント手段11と、制御手段12とを備えて構成されている。
【0022】
上記ステージ6は、シリコン基板1を位置決め保持して、図4に矢印Aで示す方向に一定速度で搬送するもので、図示省略の搬送機構を備えて構成されている。また、ステージ6には、シリコン基板1の搬送距離を検出するための図示省略の位置センサーも備えられている。
【0023】
上記ステージ6の上方には、レーザー7が配設されている。このレーザー7は、紫外域の波長を含む複数波長のレーザー光を発生するもので、非線形光学結晶を用いて第2のレーザー光L2としての波長λ2が1064nmの基本波から波長変換して第1のレーザー光L1としての波長λ1が355nmのレーザー光を生成し、該第1及び第2のレーザー光L2を同軸上で出力するように構成された、例えばYAGレーザーである。そして、第1及び第2のレーザー光L1,L2の切換が可能で且つ第1及び第2のレーザー光L1,L2の照射エネルギー強度が夫々個別に調整可能な構成となっている。また、第1のレーザー光L1(λ1=355nm)に対して第2のレーザー光L2(λ2=1064nm)に一定の遅延時間が与えられている。この遅延時間は、第1のレーザー光L1の光学距離に対して第2のレーザー光L2の光学距離を長くすることにより得ることができ、第1及び第2のレーザー光L1,L2の光学距離の差を適宜調整することにより遅延時間を所望の時間に設定することができる。なお、レーザー7は、エキシマレーザーであってもよいが、ここでは、YAGレーザーの場合について説明する。
【0024】
上記レーザー7の光射出方向前方には、集光手段8が設けられている。この集光手段8は、レーザー7から射出したレーザー光をシリコン基板1上に集光するもので、図5に示すように透明な例えば石英基板13の一面13aに複数の集光レンズ3を矢印Aで示す基板搬送方向と交差する方向に、同方向のレーザー加工点5の配列ピッチXと同じ配列ピッチXで一列に並べて設けたレンズ列14を基板搬送方向に、同方向のレーザー加工点5の配列ピッチYと同じ配列ピッチYで複数列(同図においては3列で示す)配置したレンズアレイ4であり、集光レンズ3側をステージ6側として設置されている。また、集光手段8は、石英基板13の他面13bに、該面13bに被着した遮光膜15に各集光レンズ3の光軸に開口中心を合致させた状態で一定形状の開口16を形成してマスク17を設け、各集光レンズ3によりシリコン基板1上に上記開口16を縮小投影するようになっている。さらに、マスク17には、上記開口中心に対して基板搬送方向手前側に一定距離はなれて覗き窓18を形成し、該覗き窓18内にアライメントの基準となるアライメントマーク19が上記複数の開口16のうち、いずれかの一つの開口16の中心と基板搬送方向に見て合致するように設けられている。なお、上記集光手段8は、個別の部材に設けられたレンズアレイ4とマスク17とを一体化したものであってもよい。さらに、上記レンズ列14は、複数列に限られず、1列であってもよい。
【0025】
上記レーザー7と集光手段8との間の光路上には、照明光学系9が設けられている。この照明光学系9は、レーザー7から射出された第1及び第2のレーザー光L1,L2を集光手段8まで導いて集光手段8を照明するもので、レーザー7から射出したレーザー光のビーム径を拡大するビームエキスパンダと集光手段8を均一に照明するためのフォトインテグレータやコンデンサーレンズ等を含んで構成した均一化手段とを備えている。
【0026】
上記ステージ6の上方には、上記集光手段8によるレーザー光の集光位置に対して基板搬送方向手前側に一定距離はなれて撮像手段10が設けられている。この撮像手段10は、集光手段8の覗き窓18を通してシリコン基板1に予め形成されたアライメントの基準となるパターンと集光手段8の覗き窓18内に予め設けられたアライメントマーク19とを同一視野内で同時に撮影して、シリコン基板1と集光手段8との位置ずれ量が検出できるようにするためのものであり、例えば基板搬送方向(矢印A方向)と交差する方向に複数の受光エレメントを一直線に並べて設けたラインカメラである。
【0027】
上記集光手段8を矢印Aで示す基板搬送方向と交差する方向に微動可能にアライメント手段11が設けられている。このアライメント手段11は、集光手段8を微動してシリコン基板1に予め定められた複数のレーザー加工点5にレンズアレイ4の各集光レンズ3を位置付けるためのもので、上記撮像手段10によって撮影して検出されるシリコン基板1と集光手段8との位置ずれ量を補正するように動作するようになっている。
【0028】
上記ステージ6と、レーザー7と、撮像手段10と、アライメント手段11とに結線して制御手段12が設けられている。この制御手段12は、レーザー7を制御して、少なくともシリコン基板1の表面を溶融させる程度の強度に設定された第1のレーザー光L1をシリコン基板1面に照射させ、シリコン基板1の上記溶融部分MPに第1のレーザー光L1の照射と同時に、又は一定の遅延時間を与えて、一定強度に設定された第2のレーザー光L2を照射させるものであり、図6に示すように、ステージコントロール部20と、レーザーコントロール部21と、画像処理部22と、アライメント手段コントロール部23と、演算部24と、メモリ25と、制御部26とを備えている。
【0029】
上記ステージコントロール部20は、ステージ6の移動を制御するもので、レーザー加工時にはステージ6を図4の矢印A方向に一定速度で移動させるようになっている。また、上記レーザーコントロール部21は、レーザー7の繰り返し発振周波数の調整、第1及び第2のレーザー光L1,L2の照射エネルギーの調整、レーザー7の総出力の調整を司るものであり、例えばキーボード等を操作して初期設定できるようになっている。さらに、上記画像処理部22は、撮像手段10により撮影された画像を処理して、シリコン基板1に予め形成されたパターン及び集光手段8に予め設けられたアライメントマーク19の基板搬送方向と交差する方向の位置情報を得るものである。さらにまた、上記アライメント手段コントロール部23は、画像処理部22で得られた位置情報に基づいて後述の演算部24で算出されたシリコン基板1と集光手段8との位置ずれ量を補正するようにアライメント手段11を制御するものである。また、上記演算部24は、シリコン基板1に予め形成されたパターンのうち、上記撮像手段10により最初に撮影されたパターンの基板搬送方向と交差するエッジが検出されてから最初のレーザー加工点5が集光手段8の各集光レンズ3の真下に到達するまでにシリコン基板1が移動する距離を算出し、該距離だけシリコン基板1が搬送されると上記レーザーコントロール部21にレーザー7に対する加工指令を出力するよう命令するようになっている。さらに、その後は、演算部24は、シリコン基板1が一定距離搬送される毎にレーザーコントロール部21に同様の命令をするようになっている。また、メモリ25は、各種初期設定値や演算部24における演算結果等を保存するものである。そして、制御部26は、上記各要素が適切に動作するように装置全体を統合して制御するものである。
【0030】
次に、このように構成されたレーザー加工装置の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。ここでは、シリコン基板1が図8に示すように、基板面を覆って例えば窒化シリコン(SiN)の絶縁膜2が被着され、その上に複数の縦及び横配線27,28が一定の配列ピッチで設けられた太陽電池用シリコン基板1であり、上記縦及び横配線27,28の交差部にレーザー加工点5が設定されている場合について説明する。
先ず、ステップS1においては、図4に示す矢印A方向に一定速度で搬送中のシリコン基板1の表面が撮像手段10により撮影される。
【0031】
ステップS2においては、撮像手段10により撮影された画像を画像処理部22で画像処理し、基板搬送方向と交差する方向の輝度変化から、複数の縦配線27及び集光手段8のアライメントマーク19が検出され、各縦配線27及びアライメントマーク19の位置情報が得られる。
【0032】
ステップS3においては、画像処理部22で得られた複数の縦配線27の位置情報及びアライメントマーク19の位置情報に基づいて例えばアライメントマーク19に近接した縦配線27を抽出し、該縦配線27とアライメントマーク19との位置ずれ量を演算部24で算出する。
【0033】
ステップS4においては、上記位置ずれ量を補正するようにアライメント手段11が駆動されシリコン基板1と集光手段8とのアライメントが実行される。以後、上記ステップS1〜S4は、シリコン基板1が搬送中常時実行され、左右に振れながら搬送されるシリコン基板1の動きに追従して集光手段8が動くことになる。
【0034】
ステップS5においては、撮像手段10により撮影された画像を画像処理部22で画像処理して、基板搬送方向の輝度変化から横配線28を検出する。
【0035】
ステップS6においては、ステージ6に備えられた位置センサーの出力に基づいて、1番目の横配線28が検出されてからシリコン基板1が予め定められた所定距離だけ移動したか否かが判定される。ここで、“YES”判定となるとステップS7に進む。この場合は、縦及び横配線27,28の交差部(レーザー加工点5)が集光手段8の各集光レンズ3の真下に正に達した状態となっている。
【0036】
ステップS7においては、レーザー7から第1のレーザー光L1(λ1=355nm)が射出され、照明光学系9により集光手段8が均一に照明される。これにより、第1のレーザー光L1は、集光手段8の各集光レンズ3を通ってシリコン基板1のレーザー加工点5に集光され、シリコン基板1を加熱して溶融させる。また、レーザー7からは、第1のレーザー光L1の射出と同時に又は一定の遅延時間を与えて第2のレーザー光L2(λ2=1064nm)が射出し、第1のレーザー光L1の照射により溶融したシリコン基板1の溶融部分MPに照射し、シリコンを蒸発させる。これにより、気化したシリコンの蒸気によってシリコン基板1に被着された絶縁膜2が破壊されて除去される。
【0037】
ステップS8においては、一定の時間間隔で、又はシリコン基板1が上記横配線28の配列ピッチYのn倍(nは1以上の整数であり、本実施形態ではn=3)の距離だけ移動する毎にレーザー7から第1及び第2のレーザー光L1,L2が射出され、後続のレーザー加工点5に照射し、該レーザー加工点5の絶縁膜2が除去される。
【0038】
なお、上記実施形態においては、ステージ6が一定方向に移動するものである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、ステージ6は、その面に平行な平面内を2次元方向にステップ移動するものであってもよい。この場合、集光手段8は、単レンズで構成されていてもよい。
【0039】
また、以上の説明においては、基板が太陽電池用のシリコン基板1である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、基板は、無機絶縁膜2を被覆した半導体基板であっても、酸化皮膜で覆われたアルミニウムの基板等如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…シリコン基板
2…絶縁膜
3…集光レンズ
4…レンズアレイ
6…ステージ
7…レーザー
8…集光手段
9…照明光学系
L1…第1のレーザー光(紫外域のレーザー光)
L2…第2のレーザー光(別のレーザー光)
MP…溶融部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜を除去するレーザー加工方法であって、
少なくとも前記基板の表面を溶融させる程度の強度に設定された紫外域のレーザー光を前記基板面に照射して溶融させ、
前記基板の前記溶融部分に前記レーザー光の照射と同時に、又は一定の遅延時間を与えて前記レーザー光よりも波長が長く、一定強度に設定された別のレーザー光を照射して前記基板材料を蒸発させる、
ことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記レーザー光を、複数の集光レンズを一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて設けたレンズアレイによって複数本のレーザー光に分離し、前記複数の集光レンズの並び方向と交差する方向に前記基板を搬送しながら、該搬送中の基板上に前記分離された複数本のレーザー光を一定の時間間隔で照射することを特徴とする請求項1記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記基板は、太陽電池用シリコン基板であることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
無機絶縁膜で被覆された基板面にレーザー光を照射して局所的に前記絶縁膜を除去するレーザー加工装置であって、
前記基板を載置するステージと、
紫外域の波長を含む複数波長のレーザー光を発生するレーザーと、
前記レーザー光を前記基板上に集光する集光手段と、
前記レーザーから射出された前記レーザー光を前記集光手段まで導いて前記集光手段を照明する照明光学系と、
を備えて構成され、
前記レーザーは、前記複数波長のレーザー光のうち、紫外域のレーザー光を前記基板の表面を溶融させる程度の強度に設定して射出し、該レーザー光の発生と同時に、又は一定の遅延時間を与えて前記レーザー光よりも波長が長く、一定強度に設定された別のレーザー光を射出する、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項5】
前記集光手段は、複数の集光レンズを一定の配列ピッチで並べて設けたレンズアレイであり、
前記照明光学系は、前記レーザーから射出した前記レーザー光のビーム径を拡大すると共に前記レンズアレイを均一に照明するものである、
ことを特徴とする請求項4記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記ステージは、前記レンズアレイの前記複数の集光レンズの並び方向と交差する方向に前記基板を搬送可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
前記基板は、太陽電池用シリコン基板であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。


【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105944(P2013−105944A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249723(P2011−249723)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】