説明

レーザー加工装置

【課題】安定的な高精度加工が可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】レーザー加工装置1は、レーザーにより被加工物100を加工するレーザー加工装置1である。レーザー加工装置1は、レーザー源6と、レーザー源6から出射されたレーザーを被加工物100上に集光させる集光レンズ18を有するレーザー光学系4と、液体を噴射して液柱を形成するレーザー加工ヘッド2と、レーザー加工ヘッド2に液体を供給する加圧ポンプ8と、を備え、レーザー加工ヘッド2は、集光レンズ18とレーザーの集光点Mとの間に配置され、液体導入部14が集光レンズ18によって集光されるレーザーの集光領域R内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー加工装置に関し、特に、レーザーによる加工点に向かって液体を噴射するノズルヘッドを備えたレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーによって被加工物を加工するレーザー加工装置としては、従来、レーザーによって被加工物を溶融し、溶融部をウォータージェットで除去することにより加工を行うものが知られている(例えば特許文献1及び特許文献2)。ウォータージェットを用いるレーザー加工装置は、酸素、不活性ガス等のアシストガスを用いて溶融部を除去する方式の装置と比較してコスト面で有利であり、また被加工物が熱影響を受けにくいため、被加工物の変質を抑制することができるという利点がある。
【0003】
特許文献1に記載のレーザー加工装置は、被加工物にほぼ垂直に噴射するウォータージェットヘッドと、ウォータージェットヘッドの周囲に配置されたレーザーヘッドとを有し、レーザーをウォータージェットに対して斜めから照射して被加工物の加工を行う。
また、特許文献2に記載のレーザー加工装置では、レーザーを被加工物上に集光するための反射鏡または集光レンズに孔を形成し、その孔を通してウォータージェットを被加工物に噴射する。
【0004】
【特許文献1】特許4038741号公報
【0005】
【特許文献2】特開2001−287071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザー加工装置では、被加工物に対してほぼ垂直にウォータージェットが噴射されるのに対し、レーザーは被加工物に対して斜めから照射される。したがって、被加工物の加工面に厚み方向の傾斜面が生じてしまい、高精度な加工が困難である。
また、特許文献2に記載のレーザー加工装置では、レーザーのレーザー軸とウォータージェットの噴射軸が一致しているものの、特にウォータージェットの噴射開始時及び終了時には、噴射されるウォータージェットに乱れが生じ、反射鏡または集光レンズに水滴が付着することがある。このため、レーザーの伝送効率が悪化したり、切断不良が生じることが考えられる。また、ウォータジェットの噴射口から被加工物までの距離が長いため、乱れのないウォータージェットの噴射が困難である。ウォータージェットが拡散すると、加工効率が低下したり、加工幅が増大する等の問題がある。
【0007】
本発明の目的は、安定的な高精度加工が可能なレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、レーザーにより被加工物を加工するレーザー加工装置であって、レーザー源と、レーザー源から出射されたレーザーを被加工物上に集光させる集光手段を有するレーザー光学系と、液体を噴射して液柱を形成するノズルヘッドと、ノズルヘッドに液体を供給する液体供給装置と、を備え、ノズルヘッドは、集光手段とレーザーの集光点との間に配置され、少なくとも一部が集光手段によって集光されるレーザーの集光領域内に配置される、ことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、レーザー光学系から出射されたレーザーは、集光手段によって被加工物上で集光し、被加工物を溶融する。一方、液体供給装置から供給された液体は、ノズルヘッドから噴射されて液柱を形成し、被加工物上の溶融物を除去し、これにより加工が行われる。
【0010】
ノズルヘッドが集光手段と集光点との間に配置されるので、不安定な液柱により集光手段に液滴が付着するといった従来のレーザー加工装置における不具合が発生しない。したがって、レーザー伝送効率の低下を防止することができる。また、ノズルヘッドが集光手段と集光点との間に配置されているので、液柱の噴射位置から被加工物までの距離が従来より短くなり、乱れのない液柱を形成することができる。これにより、より狭い加工幅でより高精度な加工が可能になる。更に、ノズルヘッドの少なくとも一部が、レーザーの集光領域内に配置されるので、レーザー軸と液柱の軸をより近く、例えば同軸に位置させることができるので、より好ましい角度で被加工物にレーザーを照射または液柱を噴射することができ、高精度な加工が可能となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ノズルヘッドは、集光領域内に配置される部分が透光性材料で構成される。
このように構成された本発明においては、ノズルヘッドの集光領域内に配置される部分が透光性材料で構成されているので、レーザーが透光性材料の部分を透過することができるから、レーザーの集光領域内に配置されたノズルヘッドがレーザーの通過を阻害しない。したがって、レーザー光を効率よく被加工物に到達させることができ、効率のよい加工が可能となる。また、ノズルヘッドの集光領域内に配置される部分が透光性材料で構成されているので、レーザーを遮光することなく、レーザー軸と液柱の軸をより近く、例えば同軸に位置させることができる。よって、より好ましい角度で被加工物にレーザーを照射または液柱を噴射することができ、高精度な加工が可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ノズルヘッドは、液体を噴射するジェットノズル部と、このジェットノズル部に液体を導入する液体導入部と、ジェットノズル及び液体導入部を支持するヘッド本体部と、を有し、液体導入部は、透光性材料で構成される。
このように構成された本発明においては、レーザー光学系から出射されたレーザーが液体導入部を透過し被加工物に照射される。液体導入部が透光性材料で構成されているので、レーザーを透過することができ、レーザーの照射範囲内に液体導入部を配置することが可能となる。したがって、レーザー軸と液柱の軸をより近く位置させることができるので、より好ましい角度で被加工物にレーザーを照射または液柱を噴射することができ、高精度な加工が可能となる。
【0013】
本発明において、好ましくは、液体導入部は、レーザーのレーザー軸方向に間隔をおいて配置された一対の板状部材で構成され、一対の板状部材間に液体供給チャンバが形成される。
このように構成された本発明においては、一対の板状部材をレーザーのレーザー軸方向に間隔をおいて配置することで、板状部材間に形成された液体供給チャンバからノズル部に液体を導入する。液体導入部が一対の板状部材で構成されているので、簡単な構造で液体供給チャンバを形成することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、ジェットノズル部は、液体導入部に形成された孔で構成される。
このように構成された本発明においては、ジェットノズル部が、液体導入部に形成された孔で構成されるので、ジェットノズル部が液体導入部に一体的に形成される。したがって、ジェットノズル部の構造が簡単になり製造が容易になる。また、ジェットノズル部も透光性材料で構成されることとなるので、ジェットノズル部をレーザー軸上に配置して、レーザーと同軸上に液柱を噴射することが可能となり、より高精度な加工が可能となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、ノズルヘッドは、全体が透光性材料で構成されている。
このように構成された本発明においては、ノズルヘッド全体が透光性材料で構成されているので、レーザーがノズルヘッドの任意の位置を透過することができる。したがって、レーザー光学系に対するノズルヘッドの配置の自由度が高まる。また、レーザーによってノズルヘッドが損傷するのを防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、ノズルヘッドの集光領域内に配置される部分は、不透光性材料の管状部材で構成される。
このように構成された本発明においては、ノズルヘッドの管状部材が、集光領域内に配置されるので、レーザー軸と液柱の軸をより近く、例えば同軸に位置させることができる。よって、より好ましい角度で被加工物にレーザーを照射または液柱を噴射することができ、高精度な加工が可能となる。また、ノズルヘッドの集光領域内に配置される部分が管状部材で構成されるので、ノズルヘッドをブロック状に形成した場合に比べて、管状部材がレーザー光の集光領域内においてレーザー光を遮る面積が抑制される。したがって、ノズルヘッドが不透光性材料で構成されていても、レーザー光の通過の阻害を最小限に抑制することができる。これは特に、例えば水を通過することができないCO2レーザーを使用する場合等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を簡略化または省略する。なお、各図は、実施形態の構造を理解しやすくするため、実際の寸法比率とは異なって示されている。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置1の全体構成を示す。レーザー加工装置1は、レーザー加工ヘッド(ノズルヘッド)2と、このレーザー加工ヘッド2を通って被加工物100上の所定の位置にレーザーを集光させるレーザー光学系4と、このレーザー光学系4にレーザーを入射させるレーザー源6と、レーザー加工ヘッド2に液体として高圧水を送り込む加圧ポンプ8と、レーザー源6及び加圧ポンプ8を制御する制御手段であるコントローラ10と、を有する。
【0019】
レーザー加工ヘッド2は、ヘッド本体部12と、このヘッド本体部12に取り付けられた液体導入部14と、液体導入部14に導入された高圧水を被加工物100に向かって噴射するジェットノズル部16と、を有する。
【0020】
レーザー光学系4は、レーザー源6から出射されたレーザーを、レーザー加工ヘッド2に導くと共に、このレーザーを被加工物100上の集光点Mに集光させるように構成されている。なお、図1においては、レーザー光学系4は模式化して図示されており、レーザーを最終的に集光させる1枚の集光レンズ18のみ示している。このような構成では、集光レンズ18から集光点Mまでレーザーが通ることにより、略円錐形の集光領域Rが形成される。
【0021】
レーザー源6は、コントローラ10からの制御信号に基づいて、所定強度のレーザーを生成するように構成されている。なお、本実施形態においては、レーザーとしてグリーンレーザーを使用しているが、水に吸収されにくい吸収率の低いレーザーであれば、その種類は任意に選択することができる。
【0022】
加圧ポンプ8は、コントローラ10からの制御信号に基づいて水源8aからの水を所定の圧力に加圧し、レーザー加工ヘッド2の液体導入部14内に流入させるように構成されている。液体導入部14内に送り込まれた水は、ジェットノズル部16から噴射され、水柱を形成する。
【0023】
コントローラ10は、レーザー源6及び加圧ポンプ8を所定の設定条件及びタイミングで作動させ、被加工物100を加工するように構成されている。具体的には、コントローラ10は、各種信号の入出力インターフェイス、メモリ、マイクロプロセッサ、及びこれらを作動させるプログラム等により構成されている。
【0024】
ヘッド本体部12は、略円筒形に形成され、側面には外面から突出し、加圧ポンプ8に連結するための円筒形の連結パイプ20aが形成されている。ヘッド本体部12には、連結パイプ20aの内面に連続し、ヘッド本体部12の外側と内側とを連通する液体供給通路20が形成されている。ヘッド本体部12は、レーザー加工ヘッド2に要求される強度を考慮して、非透光性の高強度材料で構成される。
液体導入部14は、一対の透光性を有する円形板状部材で構成され、その外周がそれぞれヘッド本体部12の内面に固定されている。一対の円形板状部材は、レーザー軸Aに沿った方向に互いに距離を隔てて配置され、これにより、一対の円形板状部材の間には、液体を貯留してジェットノズル部16に供給する円柱状の液体供給チャンバ22が形成される。液体供給チャンバ22の側面は、ヘッド本体部12の内面に形成された凹部12aで構成されている。
【0025】
ジェットノズル部16は、被加工物100に近い側の液体導入部14の中央部に穿設された孔であり、したがって、ジェットノズル部16は液体導入部14に一体的に形成され、透過性材料で構成される。ジェットノズル部16は、その中心軸線上に、直径が小さく円筒状に延びる円筒形部分24と、この円筒形部分24に連なり、下流側に向かって直径が拡張されている円錐状部分26から構成されている。ジェットノズル部16の中心軸線は、レーザーのレーザー軸Aに一致している。本実施形態においては、円筒形部分24の直径は約0.1mm、長さは約0.1mmであり、好ましくは、円筒形部分24の直径を0.02乃至0.5mmにする。
【0026】
ここで、レーザー加工ヘッド2のレーザー光学系4に対する位置は、液体導入部14に照射されるレーザーの直径が、液体導入部14の直径よりも小さくなるように設定される。つまり、逆に言えば、液体導入部14の直径寸法は、液体導入部14に照射されるレーザーの直径よりも大きく設定される。このような構造により、レーザー光学系4から射出されるレーザーは、ヘッド本体部12には照射されず、透光性材料で構成された液体導入部14のみに照射されるようになっている。即ち、レーザー加工ヘッド2のうち、液体導入部14のみが、レーザーの集光領域R内に配置される。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置1の作用を説明する。
まず、被加工物100を、レーザー加工ヘッド2の下方の所定の位置にセットする。次に、レーザー加工ヘッド2を、被加工物100の加工を開始する位置に移動させる。コントローラ10は、レーザー源6及び加圧ポンプ8に信号を送り、これらを起動させる。これにより、レーザー源6からレーザーが出射され、また加工ポンプ8から加圧水が供給される。
【0028】
レーザー源6から射出されたレーザーは、レーザー光学系4の集光レンズ18を通って集光されながら、レーザー加工ヘッド2の液体導入部14を透過し、被加工物100上の集光点Mに集光する。被加工物100に到達したレーザーは、被加工物100を溶融する。
一方、加圧ポンプ8によって水源8aからくみ上げられ加圧された加圧水は、液体供給通路20を通って液体供給チャンバ22に流入し、ジェットノズル部16の円筒形部分24及び円錐状部分26を通って被加工物100の加工点、即ちレーザーの集光点Mに向かって噴射され、液柱(水柱)を形成する。なお、ジェットノズル部16から噴射され、形成される液柱の直径は、円筒形部分24の直径とほぼ同一になる。
【0029】
図2は、被加工物100上におけるレーザー及び液柱の直径の関係を示す。図2(A)及び図2(B)に示すように、被加工物100上の集光点Mにおける液柱の直径D1(円筒形部分24の直径にほぼ等しい)は、被加工物100上におけるレーザーの直径D2よりも小さくなるように設定される。
【0030】
被加工物100上に噴射された液柱は、レーザーで溶融した溶融物を除去し、これにより被加工物100の加工を行う。また、被加工物100の切断面の冷却を急速に行い、被加工物100の変形、変質や、変色を防ぐ。
【0031】
このように構成された本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
レーザー加工ヘッド2が集光レンズ18と集光点Mの間に配置され、レーザー加工ヘッド2の液体導入部14が透光性材料で構成されているので、レーザーが液体導入部14を透過することができ、レーザーを液柱と同軸に噴射することができる。したがって、液柱及びレーザーを被加工物100に対して同じ角度で噴射、照射することができるので、レーザー及び液柱の両方を、被加工物100に対してほぼ垂直に照射、噴射することができる。よって、被加工物100の厚み方向に傾斜面が形成されるという従来の問題が解消され、高精度の加工を行うことができる。
【0032】
また、レーザー加工ヘッド2が集光レンズ18と集光点Mとの間に配置されているので、液柱の水滴が集光レンズ18に付着することがない。したがって、水滴の付着によってレーザーの伝送効率が低下したり、切断不良が生じるというような従来の問題が解消され、安定した加工を行うことができる。
さらに、レーザー加工ヘッド2が集光レンズ18と集光点Mとの間に配置されているので、集光レンズの背後から水柱を噴射していた従来のレーザー加工装置よりも、液柱を短くすることができる。したがって、より乱れのない液柱を形成することができるので、加工効率の低下を防止することができ、また加工幅の増大を防止することができるから、これによっても加工精度を向上させることができる。
【0033】
液体導入部14を一対の板状部材で構成し、ヘッド本体部12に間隔を隔てて固定することによって液体供給チャンバ22を形成するので、簡単な構造で液体供給チャンバ22を構成することができ、レーザー加工ヘッド2の構造を簡単にすることができる。
【0034】
また、レーザーが液体導入部14を透過するので、ヘッド本体部12を非透光性の高強度材料で構成することができる。したがって、ヘッド本体部12によってレーザー加工ヘッド2全体の強度を確保することができるため、より高圧の水を液体供給チャンバ22に供給する必要がある場合にも対応することができる。
【0035】
ジェットノズル部16が液体導入部14に形成された円筒形部分24及び円錐状部分26で構成される孔であるので、ジェットノズル部16を液体導入部14に一体的に形成することができる。したがって、ジェットノズル部16の構造を簡単にすることができる。
また、ジェットノズル部16が透光性材料に形成されるので、ジェットノズル部16をレーザーのレーザー軸Aと同軸に配置しても、レーザーが透過するため、ジェットノズル部16がレーザーの被加工物100への照射を阻害することが無く、また、レーザーがジェットノズル部16の損傷を防止することができる。
【0036】
被加工物100上の集光点Mにおける液柱の直径D1が、レーザーの直径D2よりも小さく形成されるので、レーザーが照射される範囲のうち、確実に溶融された中央部分を液柱で除去することができる。よって、狭い加工幅の加工を行うことができ、確実且つより高精度な加工を実現することができる。
【0037】
また、液柱の直径D1が、レーザーの直径D2よりも小さく形成されるので、レーザーをドライな条件下で被加工物100に集光することができる。これにより、レーザーが液柱と同じ直径を有している場合に比べて、エネルギ密度を高くすることができる。したがって、被加工物100を効率よく溶融または昇華させることができ、被加工物100の加工効率を向上させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態によるレーザー加工装置は、レーザー光学系及びレーザー加工ヘッドの構造が第1実施形態によるレーザー加工装置1と異なる他は、第1実施形態によるレーザー加工装置1と同様の構成を有する。
【0039】
図3は、本発明の第2実施形態によるレーザー加工装置30の概略構成図を示す。図3において、レーザー光学系32は、集光手段としてミラー34を有し、レーザー源6からのレーザー光を略直角に反射して被加工物100上に集光する。なお、本実施形態では、レーザーとしてCO2レーザー等の、水を透過しにくいレーザーを使用している。
【0040】
レーザー加工装置30のレーザー加工ヘッド36は、不透光性材料の管状部材で構成される。このレーザー加工ヘッド36は、加圧ポンプ8からレーザーの集光領域R内まで横方向に延び、集光領域Rの中央でレーザー光の光軸Aに沿って直角に折れ曲がり、噴射口38が被加工物100に向かって下方に向いている。管状部材は、集光領域R内におけるレーザーの遮光を最小にするために、良好な液柱を形成することができる範囲で、できるだけ細く形成することが望ましい。
なお、管状部材は、本実施形態では、内面及び外面の断面形状が円形に形成されているが、外面の断面形状は、例えば略矩形状、略三角形状等、レーザー加工装置30の仕様、加工条件等に応じて任意に設定することができる。また、内面の断面形状は、乱れのない液柱を形成するために、円形であることが望ましいが、他の形状を採用することも可能である。
【0041】
ここで、レーザー加工ヘッド36の噴射口38は、レーザー光学系4のミラー34に近接して配置されている。すなわち、噴射口38は、ミラー34までの距離L1が、被加工物100上の集光点Mまでの距離L2よりも短くなるように配置されている。このような配置により、レーザー加工ヘッド36は、集光領域Rのうち、レーザーがまだ十分に集光されず、加工可能レベルに達しない領域に配置される。
【0042】
このような本実施形態では、第1実施形態によるレーザー加工装置1と同様に、集光レンズ18で集光されたレーザーは、被加工物100に照射され、被加工物100を溶融する。レーザー加工ヘッド36から噴射された液柱は、被加工物100の溶融部を除去する。
【0043】
このように構成された本実施形態によれば、第1実施形態による効果と同様の効果が得られる他、次のような優れた効果を得ることができる。
レーザー加工ヘッド36をミラー34に近接して配置したので、ミラー34と集光点Mとの間におけるレーザーの集光領域Rのうち、レーザーの密度が比較的低い位置にレーザー加工ヘッド36を配置することができる。したがって、レーザーによるレーザー加工ヘッド36への熱の影響を最小限に抑制することができる。
【0044】
レーザー加工ヘッド36が不透光性材料の管状部材を有しているので、第1実施形態のレーザー加工ヘッド2とは異なり、レーザーが水を透過する必要がない。したがって、例えばCO2レーザーのように、水を透過することができないレーザーを使用する場合にも、レーザーを被加工物100に良好に到達させることができる。このような構造により、例えばCO2レーザーを使用した既存のレーザー加工装置に本実施形態のレーザー加工装置30を適用することができ、既存のレーザー加工装置の加工効率を向上させることができる。
また、レーザー加工ヘッド36が管状部材を有しているので、集光領域R内に占める面積を小さくすることができる。したがって、レーザーを遮光する面積も小さくなるため、レーザーのエネルギ効率を低下させることなく、被加工物100を効率よく加工することができる。
【0045】
噴射口38からミラー34までの距離L1が、噴射口38から集光点Mまでの距離L2より小さいので、レーザー加工ヘッド36を、ミラー34に近接して配置することができる。ここで、集光領域Rにおいて、ミラー34により近接した領域は、集光点M付近に比べてエネルギ密度が比較的低い。したがって、レーザーによるレーザー加工ヘッド36への熱の影響を最小限に抑制することができる。
【0046】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、図1に示した場合では、液体導入部14のみが集光領域R内に配置されるようになっているが、これに限らず、例えばびヘッド本体部12も集光領域R内に配置してもよい。その場合には、レーザー加工ヘッド全体2を透光性材料で構成すればよい。そのような構造によれば、レーザー加工ヘッド2全体をより小さく設計することができ、レーザー加工装置1の小型化を促進することができる。
【0047】
ノズルヘッドは、第1実施形態では液体導入部が透光性材料で構成されたが、これらに限らず、ノズルヘッドが透光性材料で構成される部材を含む場合には、少なくともレーザーが照射される部分が透光性材料で構成されていればよい。
液体としては、水に限らず、例えばシリコン等の他の液体を任意に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置におけるレーザーの集光点近傍の拡大図であり、(A)は側面図であり、(B)は平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるレーザー加工装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1,30 レーザー加工装置
2,36 レーザー加工ヘッド
6 レーザー源
8 加圧ポンプ
12 ヘッド本体部
14 液体導入部
16 ジェットノズル部
18 集光レンズ
20 液体供給通路
22 液体供給チャンバ
34 ミラー
38 噴射口
100 被加工物
A レーザー軸
M 集光点
R 集光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーにより被加工物を加工するレーザー加工装置であって、
レーザー源と、
前記レーザー源から出射されたレーザーを前記被加工物上に集光させる集光手段を有するレーザー光学系と、
液体を噴射して液柱を形成するノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドに液体を供給する液体供給装置と、を備え、
前記ノズルヘッドは、前記集光手段と前記レーザーの集光点との間に配置され、少なくとも一部が前記集光手段によって集光されるレーザーの集光領域内に配置される、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記ノズルヘッドは、前記集光領域内に配置される部分が透光性材料で構成される請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記ノズルヘッドは、前記液体を噴射するジェットノズル部と、このジェットノズル部に液体を導入する液体導入部と、前記ジェットノズル及び前記液体導入部を支持するヘッド本体部と、を有し、前記液体導入部は、透光性材料で構成される請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記液体導入部は、レーザーのレーザー軸方向に間隔をおいて配置された一対の板状部材で構成され、前記一対の板状部材間に液体供給チャンバが形成される請求項3記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記ジェットノズル部は、前記液体導入部に形成された孔で構成される請求項3又は4記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記ノズルヘッドは、全体が透光性材料で構成されている請求項1乃至5の何れか1項記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
前記ノズルヘッドの前記集光領域内に配置される部分は、不透光性材料の管状部材で構成される請求項1記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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