説明

レーザ光の出力計測方法、出力計測装置

【課題】液体の噴流中に導光させたレーザ光を被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機において、そのレーザ光出力を直接計測する。
【解決手段】噴流4を遮蔽しかつレーザ光5を透過し得る遮蔽材1を設けてその後背に計測手段2を配し、レーザ光5を遮蔽材1越しに計測手段2に入射させて計測するようにした。これにより、例えば射出ノズル33の劣化に伴うレーザビーム6の透過率の変動等の、レーザ光出力の問題点を事前に察知することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の噴流中に導光させたレーザ光を被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機における、レーザ光出力の計測に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、特に水の微細径なジェット噴流中にレーザ光を入射し、噴流にレーザ光を案内させつつ噴流もろとも被加工物に照射する水ガイド式レーザ加工機が既知である(例えば、下記特許文献を参照)。この種の加工機では、噴流がちょうど光ファイバの役割を果たしてレーザ光の拡散を妨げることから、高精密な加工が可能となり、また照射ノズルと被加工物との距離を大きくとることができる。加えて、噴流の高圧で加工塵が洗浄除去される、噴流の冷熱で被加工物が冷却されてクラック、歪み、組成変化等の熱影響が抑制されるといった副効用もある。
【特許文献1】特表2007−537881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のレーザ加工機では、レーザ光が液体の噴流中をこれに沿って導かれるために、その出力を直接計測することがこれまでできなかった。それ故に、レーザビームの強度、安定性、出力分布等を観察しておらず、例えば噴流射出用ノズルが劣化してレーザビームの透過率が変化したとしてもその変化を加工作業前に察することが困難であった。
【0004】
本発明は、上記の問題に初めて着目してなされたものであって、液体の噴流中に導光させたレーザ光の出力を好適に計測することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、液体の噴流中に導光させたレーザ光を被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機において、前記噴流を遮蔽しかつ前記レーザ光を透過し得る遮蔽材を設けてその後背に計測手段を配し、前記レーザ光を前記遮蔽材越しに前記計測手段に入射させてレーザ光出力を計測するようにした。遮蔽材は、例えばガラス板等の透明な板とし、この板によって一旦噴流を遮り、遮られた噴流の断面から板越しにレーザ光を直接計測、観察する。
【0006】
前記計測手段は、前記噴流中のレーザ光の出力分布を計測可能なCCDセンサ、フォトダイオードセンサ、感熱式パワーセンサ等を有するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体の噴流中に導光させたレーザ光の出力を直接計測でき、レーザ光出力の問題点を事前に察知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における出力計測装置の構成を示す。この出力計測装置は、液体の噴流4を遮蔽する遮蔽材1と、遮蔽材1の後背にあって遮蔽材1越しにレーザ光5を計測する計測手段2とを具備する。
【0009】
水ガイド式レーザ加工機では、水の微細径な噴流4にレーザ光5を案内させながら被加工物に照射する。具体的には、レーザ加工機の加工ヘッド3に、高圧水の供給を受けてジェット噴流4を生成する水チャンバ31を設けており、集光レンズ34及びチャンバ31のウィンドウ32を介してレーザ光をチャンバ31内に入射し、ウィンドウ32の反対側のノズル33から高圧水4及びレーザ光5を射出する。
【0010】
遮蔽材1は、例えばガラス、アクリル等を基材とした透明薄板またはレンズであり、レーザ光5の光軸に対して略垂直に固定する。
【0011】
計測手段2は、CCDセンサ、フォトダイオードセンサ、感熱式パワーセンサ等21を有したもので、遮蔽材1の背面側に配置する。センサ21と遮蔽材1との間には、レーザ光5のビーム径を拡げるビームエキスパンダ22が介在することがある。レーザ光5は、遮蔽材1越しに計測手段2に入射する。計測手段2は、分析用のコンピュータに接続しており、遮蔽材1の表面近傍におけるレーザ光5の出力ないし出力分布に応じたデータ信号をコンピュータに入力する。
【0012】
データ信号を受け取ったコンピュータは、ソフトウェアプログラムに従い、ハードディスクドライブ等の記憶デバイスにレーザ光出力データを蓄積する。また、レーザ光出力データから、ビームプロファイル(ビームのピーク、中心位置、ビーム径/幅、ビーム真円率、ガウスフィット、アパーチャフィット、ビーム均一度等)、波長、パワースペクトル、パルス幅、繰り返し周波数等を演算して、その結果を記憶デバイスに蓄積する。並びに、レーザ光出力分布及びビームプロファイル、波長、パワースペクトルやパルス幅等の各種情報を、ディスプレイに画面表示したりプリントアウトしたりする。
【0013】
尤も、計測手段2、コンピュータ及びプログラムは、既製のものを採用してよい。
【0014】
本実施形態によれば、液体の噴流4を遮蔽しかつレーザ光5を透過し得る遮蔽材1を設けてその後背に計測手段2を配し、遮蔽材1によって噴流4を遮り、遮られた噴流4の断面から遮蔽材1越しにレーザ光5を計測するようにしたため、噴流4の存在にかかわらずレーザ光出力を直接計測し観察することができる。そして、これにより、例えばノズル33の劣化に伴うレーザビーム6の透過率の変動等の、レーザ光出力の問題点を事前に察知することが可能となる。
【0015】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の出力計測装置を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0017】
1…遮蔽材
2…計測装置
21…CCDセンサ、フォトダイオードセンサ、感熱式パワーセンサ等
4…液体の噴流
5…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の噴流中に導光させたレーザ光を被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機におけるレーザ光出力の計測方法であって、
前記噴流を遮蔽しかつ前記レーザ光を透過し得る遮蔽材を設けてその後背に計測手段を配し、
前記レーザ光を前記遮蔽材越しに前記計測手段に入射させて計測することを特徴とする出力計測方法。
【請求項2】
前記計測手段は、前記噴流中のレーザ光の出力分布を計測可能なCCDセンサ、フォトダイオードセンサまたは感熱式パワーセンサ等を有するものである請求項1記載の出力計測方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の出力計測方法を実施するために使用するものであって、
前記噴流を遮蔽しかつ前記レーザ光を透過し得る遮蔽材と、
前記遮蔽材の後背に配され、前記レーザ光を前記遮蔽材越しに前記計測手段に入射させてこれを計測する計測手段と
を具備する出力計測装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記噴流中のレーザ光の出力分布を計測可能なCCDセンサ、フォトダイオードセンサまたは感熱式パワーセンサ等を有するものである請求項3記載の出力計測装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−248120(P2009−248120A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98123(P2008−98123)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(598072179)株式会社片岡製作所 (24)
【Fターム(参考)】