説明

レーザ光合成装置、レーザアニール装置およびレーザアニール方法

【課題】複数のレーザビームの強度分布を均一化すること。
【解決手段】第1レーザ光12の強度分布を均一化した第1均一面16を形成する第1光学系14と、前記第1レーザ光と波長の異なる第2レーザ光22の強度分布を均一化した第2均一面26を形成する第2光学系24と、前記第1レーザ光と前記第2レーザとを合成する光合成系30と、ワーク40の同じ位置に前記第1均一面と前記第2均一面とを転写する光結合系36と、を具備するレーザ光合成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光合成装置、レーザアニール装置およびレーザアニール方法に関し、例えば異なる波長の複数のレーザ光を合成するレーザ光合成装置、レーザアニール装置およびレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長の異なる複数のレーザ光を、半導体基板等のワークの同一箇所に同時に照射するレーザ照射装置が知られている。例えば、特許文献1〜5には、シリコン基板またはシリコン膜に波長の異なる2つのレーザ光を照射する半導体装置の製造方法またはレーザアニール装置が開示されている。特許文献1には、約500nmの波長を有する可視光域のパルスレーザ光と約250nmの波長を有する紫外域のパルスレーザ光を、例えばアモルファスシリコン膜に照射することが記載されている。これにより、アモルファスシリコン膜が一定温度に保持される時間を増加させることができる。
【0003】
また、特許文献2および3には、約1μmの波長を有する連続発振(CW)レーザ光と約500nmの波長を有するCWレーザ光を例えばアモルファスシリコン膜に照射することが記載されている。これにより、照射むらを抑制し、均一なレーザ処理を行うこと、または、シリコン膜上に形成される結晶性不良領域を小さくすることができる。
【0004】
特許文献4、5には、波長の異なるレーザ光をイオン注入された半導体基板に同時に照射することにより、より深い活性化を得ることが記載されている。
【0005】
特許文献6には、レーザビームの強度分布の均一化のため、非球面レンズを用いることが記載されている。特許文献7には、レーザ光にカレイドスコープを通過させることにより、レーザビームの強度分布を均一化することが記載されている。特許文献8には、レーザ光に光ファイバを通過させることにより、レーザビームの強度分布を均一化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−12484号公報
【特許文献2】特開2004−128421号公報
【特許文献3】特開2004−282060号公報
【特許文献4】国際公開2007/015388号
【特許文献5】特開2009−302214号公報
【特許文献6】特開2005−148344号公報
【特許文献7】特開2008−53317号公報
【特許文献8】特開2003−112281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワークにレーザ光を照射する場合、レーザビームの強度分布を均一にすることが求められる。例えば、特許文献4および5のように、レーザ光を用い半導体基板を熱処理する場合、レーザビームに強度分布があると、レーザビームが照射された半導体基板に温度分布が生じてしまう。波長の異なる複数のレーザ光をワーク上の同一箇所に照射する場合、レーザビームの強度分布の均一化を行うと、色収差に起因し、ワーク上の同一箇所においてレーザビームの強度分布を均一化することができない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数のレーザビームの強度分布を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1レーザ光の強度分布を均一化した第1均一面を形成する第1光学系と、前記第1レーザ光と波長の異なる第2レーザ光の強度分布を均一化した第2均一面を形成する第2光学系と、前記第1レーザ光と前記第2レーザとを合成する光合成系と、ワーク上に前記第1均一面と前記第2均一面とを転写する光結合系と、を具備することを特徴とするレーザ光合成装置である。本発明によれば、複数のレーザビームの強度分布を均一化することができる。
【0010】
上記構成において、前記光結合系は、前記光合成系と前記第1均一面との間に配置された第1対物レンズと、前記光合成系と前記第2均一面との間に配置された第2対物レンズと、前記光合成系と前記ワークとの間に配置された結像レンズとを含む構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記光合成系は、ダイクロイックミラーである構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記光合成系は、ダイクロイックミラーであり、前記第1レーザ光は前記ダイクロイックミラーで反射され、前記第2レーザ光は前記ダイクロイックミラーを透過する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記結像レンズは色収差補正レンズではなく、前記第1対物レンズと前記第1均一面との間隔および前記第2対物レンズと前記第2均一面との間隔が調整されることにより、前記第1対物レンズを透過した前記第1レーザ光の前記結像レンズに入射する際の集束・発散角および前記第2対物レンズを透過した前記第2レーザ光の前記結像レンズに入射する際の集束・発散角が調整され、前記結像レンズから同一の距離の位置に前記第1均一面および前記第2均一面が転写される構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記結像レンズは色収差補正レンズでなく、前記ダイクロイックミラーの透過光が略平行光、前記ダイクロイックミラーの反射光が非平行光となるように、前記第1均一面と前記第1対物レンズとが配置され、前記第2均一面と前記第2対物レンズとが配置される構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記結像レンズは色収差補正レンズである構成とすることができる。
【0016】
本発明は、上記レーザ光合成装置を含み、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を前記ワークに照射することにより、前記ワークを熱処理することを特徴とするレーザアニール装置である。
【0017】
本発明は、上記レーザアニール装置を用い、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を前記ワークに照射することにより、前記ワークを熱処理するステップを含むことを特徴とするレーザアニール方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のレーザビームの強度分布を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係るレーザ光合成装置のブロック図である。
【図2】図2は、光結合系の別の例を示す模式図である。
【図3】図3(a)は、DOEを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。図3(b)は、カレイドスコープを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。
【図4】図4(a)は、フライアイレンズとインテグレータレンズを組み合わせた均一光学系の例を示す模式図である。図4(b)は、非球面レンズを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。図4(c)は、光ファイバを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。
【図5】図5は、実施例2に係るレーザ光合成装置のブロック図である。
【図6】図6(a)から図6(f)は、第2レーザ光のダイクロイックミラーへの入射状態に対する結像レンズ通過後の集光位置を示す図である。
【図7】図7(a)から図7(c)は、第1レーザ光のダイクロイックミラーへの入射状態に対する結像レンズ通過後の集光位置を示す図である。
【図8】図8は、実施例2に係るレーザ光合成装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2に係るレーザ光合成装置の調整方法を示すフローチャートであり、図8の調整方法をより詳細に示した図である。
【図10】図10は、実施例3に係るレーザ光合成装置のブロック図である。
【図11】図11は、実施例4に係るレーザアニール装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、結像レンズとして色収差補正レンズを用いる例である。図1は、実施例1に係るレーザ光合成装置のブロック図である。図1に示すように、レーザ光合成装置100は、主に第1レーザ装置10、第1光学系14、第2レーザ装置20、第2光学系24、ダイクロイックミラー30および光結合系36を備えている。第1レーザ装置10は、第1レーザ光12を出射する。エキスパンダ34は、第1レーザ装置10が出射した第1レーザ光12が第1光学系14に入射する際の、レーザビームの径および、レーザビームの集束発散を調整するために設けられている。第1光学系14の設計あるいは、第1レーザ装置10の特性によっては、エキスパンダ34を設けなくともよい。第1光学系14は、第1レーザ光12の強度分布を均一化し、第1均一面16を形成する。第1レーザ装置10から出射された第1レーザ光12の断面の強度分布は、例えばガウス分布である。第1光学系14は、第1均一面16において、第1レーザ光12の断面の強度分布がほぼ均一となるようにする。なお、第1均一面16において、第1レーザ光12の断面の光強度は均一であることが好ましいが、第1レーザ装置10から出射された際の第1レーザ光12の断面の強度分布より均一化されていればよい。
【0022】
第2レーザ装置20は、第1レーザ光12と波長の異なる第2レーザ光22を出射する。第2光学系24は、第2レーザ光22の強度分布を均一化し、第2均一面26を形成する。なお、第2均一面26において、第2レーザ光22の断面の光強度は均一であることが好ましいが、第2レーザ装置20から出射された際の第2レーザ光22の断面の強度分布より均一化されていればよい。
【0023】
ダイクロイックミラー30は、光合成系として、第1レーザ光12と第2レーザ光22との光軸19および29を合わせ合成する。光結合系36は、ワーク40のほぼ同じ位置(転写面42)に第1均一面16と第2均一面26とを転写する。光結合系36は、第1対物レンズ18、第2対物レンズ28および結像レンズ32を備えている。第1対物レンズ18は、第1均一面16とダイクロイックミラー30との間に配置され、第2対物レンズ28は、第2均一面26とダイクロイックミラー30との間に配置されている。結像レンズ32は、ダイクロイックミラー30とワーク40との間に配置されている。
【0024】
第1対物レンズ18は、第1均一面16からの第1レーザ光12をほぼ平行光とする。第2対物レンズ28は、第2均一面26からの第2レーザ光22をほぼ平行光とする。ダイクロイックミラー30は、第1レーザ光12をほぼ100%反射し、第2レーザ光22をほぼ100%透過させる。これにより、第1レーザ光12の光軸19と第2レーザ光22の光軸29とを合わせることができる。これにより、第1レーザ光12と第2レーザ光22とをワーク40上の転写面42に照射させることができる。
【0025】
実施例1によれば、第1光学系14および第2光学系24がそれぞれ第1レーザ光12および第2レーザ光22の強度分布を均一化する。ダイクロイックミラー30が、第1レーザ光12と第2レーザ光22とを光軸を合わせ合成する。光結合系36が、ワーク40の同じ位置に第1均一面16と第2均一面26を転写する。このように、第1レーザ光12と第2レーザ光22の光軸とを合わせる前に、第1レーザ光12と第2レーザ光22との強度分布を均一化するため、第1レーザ光12と第2レーザ光22とのそれぞれについて強度分布を均一化した第1均一面16および第2均一面26を形成できる。その後、ダイクロイックミラー30が、第1レーザ光12と第2レーザ光22とを光軸を合わせ、光結合系36が、ワーク40の同じ位置に第1均一面16と第2均一面26を転写する。これにより、ワーク40上のほぼ同じ位置において第1レーザ光12と第2レーザ光22との強度分布を均一化できる。よって、例えば、第1レーザ光12と第2レーザ光22とを用いワーク40を熱処理する場合、熱処理の温度分布を均一化できる。
【0026】
図2は、光結合系の別の例を示す模式図である。光結合系36として、第1転写レンズ18aと第2転写レンズ28aとを含んでいる。第1転写レンズ18aは、第1対物レンズ18と結像レンズ32とを共通化したレンズである。第2転写レンズ28aは、第2対物レンズ28と結像レンズ32とを共通化したレンズである。このように、光結合系36として、第1転写レンズ18aおよび第2転写レンズ28aを用いることもできる。しかしながら、第1対物レンズ18をダイクロイックミラー30と第1均一面16との間に配置し、第2対物レンズ28をダイクロイックミラー30と第2均一面26との間に配置し、結像レンズ32をダイクロイックミラー30とワーク40との間に配置することが好ましい。これにより、第1レーザ光12と第2レーザ光22との光軸合わせが容易となる。
【0027】
また、光合成系としては、ダイクロイックミラー30以外の光学系を用いることもできる。実施例1のように、光合成系として、ダイクロイックミラー30を用い、第1レーザ光12はダイクロイックミラー30で反射され、第2レーザ光22はダイクロイックミラー30を透過するようにする。これにより、第1レーザ光12と第2レーザ光22との光軸を容易に合わせることができる。
【0028】
結像レンズ32として色収差補正レンズを用いることが好ましい。色収差補正レンズを用いた場合、第1対物レンズ18と第1均一面16との距離を第1対物レンズ18の第1レーザ光12の波長における焦点距離とする。これにより、第1レーザ光12はほぼ平行光としてダイクロイックミラー30に照射される。また、第2対物レンズ28と第2均一面26との距離を第2対物レンズ28の第2レーザ光22の波長における焦点距離とする。これにより、第2レーザ光22はほぼ平行光としてダイクロイックミラー30に照射される。これにより、結像レンズ32の焦点位置に第1均一面16と第2均一面26とが転写される。よって、ワーク40のほぼ同じ位置に照射される第1レーザ光12と第2レーザ光22との強度分布を均一にすることができる。
【0029】
第1光学系14および第2光学系24は、レーザビームの強度分布を均一化する光学系であればよい。例えば、実施例1においては、第1光学系14は、DOE(Diffractive Optical Element)を用いる例であり、第2光学系24はマルチモード光ファイバを用いる例である。
【0030】
図3(a)は、DOEを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。均一化光学系は、DOE50と集光レンズ60とを有している。レーザ光56はDOE50によりランダムな方向に拡散される。拡散されたレーザ光56を集光レンズ60を用い集光する。これにより均一面54にはレーザ光56が均一化された均一面54が形成される。
【0031】
図3(b)は、カレイドスコープを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。均一化光学系は、集光レンズ60、カレイドスコープ58および対物レンズ62を有している。レーザ光56は集光レンズ60によりカレイドスコープ58の一端に入射する。レーザ光56は、カレイドスコープ58の側面で反射を繰り返すため、カレイドスコープ58の他端に均一面54が形成される。カレイドスコープ58の他端から出射したレーザ光56は対物レンズ62により平行光となる。
【0032】
図4(a)は、フライアイレンズとインテグレータレンズを組み合わせた均一光学系の例を示す模式図である。均一化光学系は、フライアイレンズ64とインテグレータレンズ66を有している。レーザ光56はフライアイレンズ64により複数の光56aに分割される。なお分割された複数の光56aの光軸を一点鎖線で示している。その後、インテグレータレンズ66を介し均一面54で複数の光56aが重なり合う。レーザ光56を複数の光56aに分割し合成するため、均一面54においては、レーザ光56の強度分布が均一化する。
【0033】
図4(b)は、非球面レンズを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。均一化光学系は、第1非球面レンズ68および第2非球面レンズ69を有している。強度分布がガウス分布のレーザ光56は第1非球面レンズ68により、強度分布が一様化する。強度分布が一様化したレーザ光56は、第2非球面レンズ69により平行光となる。第2非球面レンズ以降に均一面54が形成される。
【0034】
図4(c)は、光ファイバを用いた均一化光学系の例を示す模式図である。均一化光学系は、集光レンズ60、光ファイバ52および対物レンズ62を有している。レーザ光56は集光レンズ60により光ファイバ52の一端に入射する。レーザ光56は、光ファイバ52内で反射を繰り返すため、光ファイバ52の他端に均一面54が形成される。光ファイバ52の他端から出射したレーザ光56は対物レンズ62により平行光となる。光ファイバ52としては、マルチモード光ファイバまたはシングルモードフィルタを用いることができる。マルチモード光ファイバでは、光ファイバ内を種々のモードの光が伝播する。このため、出射端面において、種々のモードで伝播してきた光が重なり合い均一化面における強度分布が均一化され易い。一方、シングルモード光ファイバでは、光がファイバ内を伝播するモードが一つであるため、出射端面での種々の伝播モードの光が重なり合わない。よって、出射端面での強度分布が均一化され難い。以上より、光ファイバ52としては、マルチモード光ファイバを用いることが好ましい。
【0035】
実施例1においては、第1レーザ装置10は例えばYVOレーザの第2高調波を出射する。第1レーザ光12の波長は例えば約532nmである。第2レーザ装置20は例えば半導体レーザ装置であり、第2レーザ光の波長は例えば808nmである。レーザ装置として半導体レーザ装置を用いる場合、大出力化のため、複数の半導体レーザ素子からのレーザ光を光ファイバを用い合成することがある。よって、第1レーザ装置10または第2レーザ装置20が半導体レーザ装置の場合、対応する第1光学系14または第2光学系24は光ファイバを用いた均一化光学系であることが好ましい。
【実施例2】
【0036】
実施例2は、結像レンズとして色収差補正レンズを用いない例である。図5は、実施例2に係るレーザ光合成装置のブロック図である。図5に示すように、レーザ光合成装置102においては、結像レンズ32が色収差補正レンズではないため、第1レーザ光12と第2レーザ光22との波長差により、第1レーザ光12と第2レーザ光22とで焦点位置が異なる。このため、ワーク40の転写面42に、第1均一面16および第2均一面26をともに転写するためには、第1レーザ光12または第2レーザ光22のいずれか一方を結像レンズ32に平行光として入射させると、他方は非平行光として結像レンズ32に入射させることとなる。図5の例では、第2レーザ光22を結像レンズ32に平行に入射させ、第1レーザ光12を結像レンズ32に非平行に入射させている。その他の構成は、実施例1の図1とおなじであり、説明を省略する。
【0037】
実施例2において、第1レーザ光12と第2レーザ光のいずれを平行光にすることが好ましいか検討した。図6(a)から図6(f)は、第2レーザ光のダイクロイックミラーへの入射状態に対する結像レンズ通過後の集光位置を示す図である。図6(a)は、第2対物レンズ28を用い第2レーザ光22を発散光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図であり、図6(b)は、図6(a)の結像レンズ32以降の拡大図である。図6(c)は、第2対物レンズ28を用い第2レーザ光22を平行光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図であり、図6(d)は、図6(c)の結像レンズ32以降の拡大図である。図6(e)は、第2対物レンズ28を用い第2レーザ光22を集束光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図であり、図6(d)は、図6(c)の結像レンズ32以降の拡大図である。なお、図6(a)から図6(f)では、レーザビーム内の光の進み方が理解し易いように第2レーザ光22を複数の線で示している。
【0038】
図6(a)、図6(c)および図6(e)のように、第2対物レンズ28は、第2均一面26を通過した第2レーザ光22を発散光線、平行光線または集束光線とする。第2レーザ光22はダイクロイックミラー30を透過する。第2レーザ光22は結像レンズ32により焦点を結ぶ。第2レーザ光22がダイクロイックミラー30に入射すると第2レーザ光22が屈折する。図6(c)においては、ダイクロイックミラー30に平行光線が入射するため、第2レーザ光22が屈折する角度はで均一である。一方、図6(a)および図6(b)においては、ダイクロイックミラー30に非平行光線が入射するため、第2レーザ光22が屈折する角度は第2レーザ光22の入射位置によって異なる。このため、図6(d)のように、ダイクロイックミラー30に平行光線が入射する場合は、結像レンズ32により第2レーザ光22が結像する位置は、矢印のように光軸29上にある。一方、図6(b)および図6(f)のように、ダイクロイックミラー30に非平行光線が入射する場合は、結像レンズ32により第2レーザ光22が結像する位置は、光軸29から距離ΔLずれる。
【0039】
図7(a)から図7(c)は、第1レーザ光のダイクロイックミラーへの入射状態に対する結像レンズ通過後の集光位置を示す図である。図7(a)は、第1対物レンズ18を用い第1レーザ光12を発散光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図であり、図7(b)は、第1対物レンズ18を用い第1レーザ光12を平行光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図であり、図7(c)は、第1対物レンズ18を用い第1レーザ光12を集束光線としてダイクロイックミラー30に入射させた場合の図である。
【0040】
図7(a)から図7(c)のように、第1対物レンズ18は、第1均一面16を通過した第1レーザ光12を発散光線、平行光線または集束光線とする。第1レーザ光12はダイクロイックミラー30により反射される。第1レーザ光12は結像レンズ32により焦点を結ぶ。第1対物レンズ18を用い第1レーザ光12を非平行光としても、結像レンズ32により第1レーザ光12が焦点を結ぶ位置は光軸19上である。
【0041】
このように、ダイクロイックミラー30を透過する第2レーザ光が非平行光である場合、結像レンズ32により焦点を結ぶ位置が光軸29からずれるため、光軸調整が難しくなる。一方、ダイクロイックミラー30を反射する第1レーザ光が非平行光である場合、結像レンズ32により焦点を結ぶ位置は光軸19からずれない。このため光軸調整が難しくない
【0042】
以上より、結像レンズ32が色収差補正レンズでない実施例2においては、第1対物レンズ18は第1レーザ光12を非平行光とし、第2対物レンズ28は第2レーザ光22を平行光とすることが好ましい。
【0043】
図8は、実施例2に係るレーザ光合成装置102の調整方法を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、光結合系36の調整を行なう(ステップS10)。例えば、第1対物レンズ18および第2対物レンズ28の位置を調整する。次に、第1レーザ光12と第2レーザ光22とが光軸を合わせ合成され、かつワーク40の同じ位置に第1均一面16と第2均一面26とが転写されているか確認する(ステップS12)。Yesの場合、レーザ光合成装置102の調整は終了する。Noの場合、再度ステップS10に戻る。ステップS10およびS12のように、光結合系36を調整することができる。このように、第1均一面16と第2均一面26とが同じ位置に転写されるように、光結合系36を調整できるため、簡単に、ワーク40上の第1レーザ光12と第2レーザ光22との強度分布を簡単に均一化できる。なお、実施例1および3に係るレーザ光合成装置においても、図8の調整を行なうことができる。
【0044】
図9は、実施例2に係るレーザ光合成装置102の調整方法を示すフローチャートであり、図8の調整方法をより詳細に示した図である。図9に示すように、まず、第1対物レンズ18と第1均一面16との間隔を調整する(ステップS20)。次に、第2対物レンズ28と第2均一面26との間隔を調整する(ステップS22)。なお、ステップS20とS22との順番は逆でもよく、または同時に行ってもよい。ステップS20により、第1対物レンズ18を透過した第1レーザ光12の結像レンズ32に入射する際の集束・発散角(図6(a)から図6(f)において、結像レンズ32に入射する際の第1レーザ光12の角度)が調整される。また、ステップS22により、第2対物レンズ28を透過した第2レーザ光22の結像レンズ32に入射する際の集束・発散角(図7(a)から図7(c)において、結像レンズ32に入射する際の第2レーザ光22の角度)が調整される。次に、結像レンズ32から同一の距離の位置に第1均一面16および第2均一面26が転写されるか確認する(ステップS24)。Yesの場合、レーザ光合成装置102の調整は終了する。Noの場合、再度ステップS20に戻る。ステップS20からS24によれば、第1対物レンズ18と第1均一面16との間隔と、第2対物レンズ28と第2均一面26との間隔と、を調整する。これにより、簡単に、ワーク40上の同じ位置に、第1均一面16および第2均一面26を転写することができる。よって、第1レーザ光12と第2レーザ光22との強度分布を簡単に均一化できる。
【0045】
図6(a)から図7(c)を用い説明したように、図9の調整方法においては、ダイクロイックミラー30の透過光が略平行光、ダイクロイックミラー30の反射光が非平行光となるように、第1均一面16と第1対物レンズ18とを配置し、第2均一面26と第2対物レンズ28とを配置することが好ましい。
【実施例3】
【0046】
図10は、実施例3に係るレーザ光合成装置のブロック図である。実施例3に係るレーザ光合成装置104においては、第1光学系14をフライアイレンズ64とインテグレートレンズ66を用い形成している。その他の構成は実施例1のズ1と同じであり説明を省略する。このように、第1光学系14および第2光学系24は、例えば図3(a)から図4(c)において説明した均一化光学系またはその他の均一化光学系を用いることができる。
【実施例4】
【0047】
実施例4は、実施例1に係るレーザ光合成装置をレーザアニール装置に用いた例である。図11は、実施例4に係るレーザアニール装置の模式図である。実施例4に係るレーザアニール装置106は、主にレーザ光合成装置100、X軸ステージ74、回転ステージ82、搬送ロボット90を有している。台座70上に、X軸ステージ用台座72、アニールチャンバ88、搬送チャンバ94およびローダ/アンローダ96が固定されている。X軸ステージ用台座72上にはX軸ステージ74が配置されている。X軸ステージ74上には、台座76を介しレーザ光合成装置102が配置されている。X軸ステージ74により、レーザ光合成装置102を一軸方向に動かすことができる。
【0048】
アニールチャンバ88内には回転ステージ82が配置されている。回転ステージ82上にはワークとして例えば半導体ウエハ(例えばシリコンウエハ)80が配置される。回転ステージ82は軸84を中心に回転する。アニールチャンバ88には、第1レーザ光12および第2レーザ光22が透過する窓86が設けられている。
【0049】
搬送チャンバ94内には搬送ロボット90が配置されている。搬送ロボット90にはベルヌイチャック92が設けられている。ベルヌイチャック92は半導体ウエハ80を保持する。搬送ロボット90は、半導体ウエハ80をローダ/アンローダ96から回転ステージ82上に配置させる。また、搬送ロボット90は、半導体ウエハ80を回転ステージ82からローダ/アンローダ96にアンロードする。
【0050】
実施例4係るレーザアニール装置106においては、レーザ光の照射位置を、X軸ステージを用い一軸方向に移動させる。さらに、回転ステージ82を回転させることにより、半導体ウエハ80の任意の位置に第1レーザ光12および第2レーザ光22を照射することができる。
【0051】
実施例4によれば、実施例2に係るレーザ光合成装置102を用い合成した第1レーザ光12および第2レーザ光22を半導体ウエハ80の同じ位置(第1均一面16と第2均一面が転写された位置)に照射し、熱処理する。これにより、半導体ウエハ80の温度分布を抑制できる。よって、均一な熱処理が可能となる。
【0052】
実施例4は、実施例1に係るレーザ光合成装置100を用いるレーザアニール装置の例であったが、実施例2に係るレーザ光合成装置102または実施例3に係るレーザ光合成装置104を用いてもよい。
【0053】
実施例1から実施例4において、第1レーザ装置10および第2レーザ装置20は、波長の異なる第1レーザ光12および第2レーザ光22を出射すればよい。例えば、第1レーザ光12として約500nmの波長の光を用いる場合、YAGレーザ、YLFレーザの第2高調波を第1レーザ光12として用いることができる。光合成系としてダイクロイックミラー30を用いる場合、第1レーザ光12と第2レーザ光22の波長は、50nm以上異なっていることが好ましく、100nm以上異なっていることが好ましい。また、色収差に起因して、ワーク上の同一箇所においてレーザビームの強度分布を均一化することができないという課題が生じるのは、第1レーザ光12と第2レーザ光22との波長が大きく異なっている場合である。よって、第1レーザ光12と第2レーザ光22との波長は、100nm以上異なっていることが好ましく、200nm以上異なっていることが好ましい。さらに、第1レーザ装置10および第2レーザ装置20は、CWレーザでもよいし、パルスレーザでもよい。
【0054】
実施例1から実施例4においては、第1レーザ光12の光軸19と第2レーザ光22の光軸29とを合わせ、第1レーザ光12と第2レーザ光22とをワーク40の同じ位置に照射する場合を例に説明したが、光軸19と光軸29とは合っていなくてもよい。例えば、光軸19と光軸29とをずらしておき、第1レーザ光12と第2レーザ光22とのいずれか一方がワーク40上のある位置に照射されてから第1レーザ光12と第2レーザ光22との他方が同じ位置に照射されるようにすることもできる。例えば、レーザアニール装置において、ワーク(半導体ウエハ)上のある位置に第1レーザ光22を照射し、第1レーザ光22の効果が残っている間(例えばワークの温度が下がる前)に第2レーザ光を同じある位置に照射すればよく、光軸19と光軸29とは合っていなくてもよい。このように、結像レンズ32から第1均一面16が転写される面までの距離と、結像レンズ32から第2均一面26が転写される面までの距離と、が等しければよい。
【0055】
以上、発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 第1レーザ装置
12 第1レーザ光
14 第1光学系
16 第1均一面
18 第1対物レンズ
19、29 光軸
20 第2レーザ装置
22 第2レーザ光
24 第2光学系
26 第2均一面
28 第2対物レンズ
30 ダイクロイックミラー
32 結像レンズ
36 光結合系
40 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レーザ光の強度分布を均一化した第1均一面を形成する第1光学系と、
前記第1レーザ光と波長の異なる第2レーザ光の強度分布を均一化した第2均一面を形成する第2光学系と、
前記第1レーザ光と前記第2レーザとを合成する光合成系と、
ワーク上に前記第1均一面と前記第2均一面とを転写する光結合系と、
を具備することを特徴とするレーザ光合成装置。
【請求項2】
前記光結合系は、前記光合成系と前記第1均一面との間に配置された第1対物レンズと、前記光合成系と前記第2均一面との間に配置された第2対物レンズと、前記光合成系と前記ワークとの間に配置された結像レンズとを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ光合成装置。
【請求項3】
前記光合成系は、ダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項1または2記載のレーザ光合成装置。
【請求項4】
前記光合成系は、ダイクロイックミラーであり、前記第1レーザ光は前記ダイクロイックミラーで反射され、前記第2レーザ光は前記ダイクロイックミラーを透過することを特徴とする請求項2記載のレーザ光合成装置。
【請求項5】
前記結像レンズは色収差補正レンズではなく、
前記第1対物レンズと前記第1均一面との間隔および前記第2対物レンズと前記第2均一面との間隔が調整されることにより、前記第1対物レンズを透過した前記第1レーザ光の前記結像レンズに入射する際の集束・発散角および前記第2対物レンズを透過した前記第2レーザ光の前記結像レンズに入射する際の集束・発散角が調整され、前記結像レンズから同一の距離の位置に前記第1均一面および前記第2均一面が転写されることを特徴とする請求項4記載のレーザ光合成装置。
【請求項6】
前記結像レンズは色収差補正レンズでなく、
前記ダイクロイックミラーの透過光が略平行光、前記ダイクロイックミラーの反射光が非平行光となるように、前記第1均一面と前記第1対物レンズとが配置され、前記第2均一面と前記第2対物レンズとが配置されることを特徴とする請求項4記載のレーザ光合成装置。
【請求項7】
前記結像レンズは色収差補正レンズであることを特徴とする請求項3記載のレーザ光合成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項記載のレーザ光合成装置を含み、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を前記ワークに照射することにより、前記ワークを熱処理することを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項9】
請求項8記載のレーザアニール装置を用い、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を前記ワークに照射することにより、前記ワークを熱処理するステップを含むことを特徴とするレーザアニール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−55111(P2013−55111A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190551(P2011−190551)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(303006916)フェトン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】