説明

レーザ切断加工方法及び装置

【課題】厚い鋼板のレーザ切断加工を行う経路に小半径の小径円弧部が含まれる場合、上記小径円弧部におけるワーク上面に対するワーク下面の切断進行遅れを小さくして、小径円弧部を曲がった直後のレーザ切断面に粗面が生じることを抑制することのできるレーザ切断加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】厚い鋼板のレーザ切断加工時に、レーザ切断加工方向の進行方向に見て直線部又は曲線部と小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記C位置までのレーザ出力を同一出力に保持しつつレーザ切断加工速度を低速に制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば8mm〜32mm程度の厚い鋼板のレーザ切断加工を行うレーザ切断加工方法及び装置に係り、さらに詳細には、例えば、半径が0.8mm〜1.2mm程度の小径円弧部や、上記小径円弧部の半径以上であって板厚の約1/2以下の半径の円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状のワークのレーザ切断加工を行うとき、ワークを直線状に切断加工する場合や、比較的大きな曲率半径の円弧状などの曲線に切断加工する場合には、レーザ発振器のレーザ出力を大出力に制御すると共にレーザ切断の加工速度を高速に制御してレーザ切断加工が能率よく行われている。そして、前記直線状の切断加工線や曲線状の切断加工線が小半径の小径円弧部に接続してある場合や、急激に折れ曲がるエッジ部を形成する場合には、入熱過多によるバーニング等を防止するために、レーザ発振器の出力を小出力に制御すると共にレーザ切断加工の速度を低速に制御することが行われている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−63778号公報
【特許文献2】特開平7−195186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、ワークとしての鋼板のレーザ切断加工を行う場合であって、コーナ部や鋭角部のレーザ切断加工時には、バーニング現象を防止するためにパルス切断モードとしてレーザー光の周波数を制御することが記載されている。なお、特許文献1には、切断対象とするワークの厚さが記載されていないので、厚さが数mm程度の一般的な厚さのワーク(薄板)の場合である。
【0005】
前記特許文献2には、ワークのコーナ部のレーザ切断加工を行う場合、特許文献2の図1に示されるように、レーザ切断加工の加工速度を低速に制御すると共にレーザー出力を低出力に制御することが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献2の[0028]、[0029]、[0030]には、次のことが記載されている。すなわち、ワーク材質SS400、ワーク厚さ16mmの厚板のワークに90°のエッジ加工を行う場合のレーザーパワー3000W、デューティ50%、アシストガス圧0.4kgf/cm2 で、コーナ部に近づくにつれて、次第にレーザーパワー、周波数、デューティ、アシストガス圧を低下させ、かつコーナ部においてレーザー発振を停止して、3秒のドウエル時間後に、再びレーザ切断加工を開始した従来のレーザ切断加工方法においては、図7に示されるように、コーナー直後の切断面に欠けが発生していた。
【0007】
しかし、コーナ部において、レーザーパワーを1000W、周波数を10Hz 、デューティを15%に変更し、3秒のドウエル時間後に前条件に徐々に戻した場合には、図8示されるように、欠けが発生しておらず、良好の断面である。なお、特許文献2には、90°のエッジ加工を行う場合の半径が記載されていないことから、ワークの厚さ16mmに対して、例えば半径が1mm程度の小径の格別の場合をも想定しているものではない。
【0008】
そして、特許文献2に記載の方法においては、3秒のドウエル時間を備えるものであるから、レーザ切断加工の能率向上を図る上において問題がある。
【0009】
ところで、ワークとしての鋼板がSS材であって、アシストガスとして酸素を使用し、8mm〜32mmの厚板のコーナ部を、半径が0.8mm〜1.2mm程度の小径円弧部をレーザ切断加工を行うと、前記特許文献2の図7に示されている場合と同様に、コーナ部を通過した直後の切断面の下部側に凹みやバーニングが発生することがある。また、アシストガスとしてチッソガスを使用して、ワークとしてステンレス鋼板の厚板のコーナ部を同様の小径円弧部にレーザ切断加工を行うと、コーナ部を通過した直後の下部にプラズマが発生して、当該プラズマ発生位置に対応する切断面があれて粗面になることがある。
【0010】
なお、コーナ部を通過した直後の下部の切断面が粗面になることは、前記半径の場合には極端に生じ易いものの、粗面の程度の差はあるが、厚板における板厚の約1/2の半径の場合にも生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、アシストガスとしてチッソガスを使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工方向の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記C位置までのレーザ出力を同一出力に保持しつつレーザ切断加工速度を低速に制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするものである。
【0012】
また、アシストガスとしてチッソガスを使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工方向の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記C位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつレーザ出力を高出力に制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、アシストガスとして酸素を使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記B位置までのレーザ出力を同一出力に保持しつつレーザ切断加工速度を低速に制御してレーザ切断加工を行い、前記B位置から前記C位置まではレーザ出力を同一出力に保持しつつ前記A位置までのレーザ切断加工速度と前記B位置までのレーザ切断加工速度との間の中速度に制御してレーザ切断加工を行い、当該C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするものである。
【0014】
また、アシストガスとして酸素を使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をAとし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記B位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつレーザ出力を高出力に制御してレーザ切断加工を行い、前記B位置から前記C位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつ前記A位置までのレーザ出力と前記B位置までのレーザ出力との間の中出力にレーザ出力を制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするものである。
【0015】
また、ワークとしての鋼板のレーザ切断加工を行うレーザ切断加工装置であって、レーザ発振器と、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光してワークに照射するためのレーザ加工ヘッドと、上記レーザ加工ヘッドへ供給するアシストガスとしてチッソガス又は酸素を切換自在なアシストガス供給手段と、前記レーザ発振器のレーザ出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御自在な制御手段と、アシストガスとしてチッソガスを使用して厚いワークのレーザ切断加工ときに半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件を予め格納した第1加工条件テーブルと、アシストガスとして酸素を使用して厚いワークのレーザ切断加工時に半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件を予め格納した第2加工条件テーブルと、ワークのレーザ切断加工を行うために入力手段から入力された加工用プログラムを先読みするプログラム先読手段と、当該プログラム先読手段によって先読みしたワークの材質に対応してアシストガスを選択するアシストガス選択手段と、前記プログラム先読手段によって先読みした内容に前記小径円弧部が含まれるときに先読みされたワークの材質に対応して前記第1又は第2の加工条件テーブルを選択する加工条件テーブル選択手段と、前記小径円弧部のレーザ切断加工を行うときに、前記加工条件テーブル選択手段によって選択された加工条件テーブルに格納されている加工条件でもって、前記レーザ発振器の出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御するための前記制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
また、ワークとしての鋼板のレーザ切断加工を行うレーザ切断加工装置であって、レーザ発振器と、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光してワークに照射するためのレーザ加工ヘッドと、上記レーザ加工ヘッドへ供給するアシストガスとしてチッソガス又は酸素を切換自在なアシストガス供給手段と、前記レーザ発振器のレーザ出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御自在な制御手段と、ワークのレーザ加工を行うために入力手段から入力された加工用プログラムを先読みするプログラム先読手段と、当該プログラム先読手段によって先読みしたワークの材質に対応してアシストガスを選択するアシストガス選択手段と、前記プログラム先読手段によって先読みした内容に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部が含まれるときに、前記小径円弧部のレーザ切断加工を行うためのレーザ切断加工条件を入力するための前記入力手段と、当該入力手段によって入力されたレーザ切断加工条件を格納する加工条件メモリと、当該加工条件メモリに格納されている加工条件でもって、前記レーザ発振器の出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御するための前記制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、厚板に対してコーナ部に小径円弧部のレーザ切断加工を行う場合であっても、コーナ部を通過した直後の切断面の下部に凹部やバーニング、粗面が生じることを防止でき、ワークの切断面を良好な面にレーザ加工し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ切断加工装置の全体的構成の機能を概念的、概略的に示した機能ブロック図である。
【図2】レーザ切断加工装置を制御する制御装置の機能を示した機能ブロック図である。
【図3】小径円弧部の説明図である。
【図4】加工条件テーブルのデータの説明図である。
【図5】ワークとしてのSUSにおける小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ実出力とレーザ切断加工速度との関係を示した説明図である。
【図6】ワークとしてのSS材における小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ実出力とレーザ切断加工速度との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係るレーザ切断加工装置1は、例えば8mm〜32mm程度の厚い鋼板のワークWを支持するワークテーブル3を備えると共に、前記ワークWにレーザ光LBを照射してワークWのレーザ切断加工を行うためのレーザ加工ヘッド5を備えている。前記ワークテーブル3は、前記レーザ加工ヘッド5に対してX、Y軸方向へ相対的に移動位置決め自在に備えられており、このワークテーブル3をX、Y軸方向へ相対的に移動位置決めする位置決めモータ7が備えられている。また、前記ワークWに対して前記レーザ加工ヘッド5を相対的に接近離反する方向であるZ軸方向へ移動位置決めするためのZ軸モータ9が備えられている。
【0020】
また、前記レーザ切断加工装置1にはレーザ発振器11が備えられており、前記レーザ加工ヘッド5内には、前記レーザ発振器11から発振されたレーザ光LBを前記ワークW方向へ反射する反射鏡13が備えられると共に、レーザ光LBを集光してワークWに照射する集光レンズ15が備えられている。さらに、前記レーザ切断加工装置1には、前記ワークWがSS材等の場合には、アシストガスとして酸素を供給する酸素供給手段17が備えられていると共に、前記ワークWがSUSの場合にはアシストガスとしてチッソガスを供給するチッソガス供給手段19を備えている。そして、ワークWの材質に対応して供給するアシストガスを酸素又はチッソガスに切換え自在な切換弁21が備えられている。すなわち、前記酸素供給手段17、チッソガス供給手段19及び切換弁21は、前記レーザ加工ヘッド5へ供給するアシストガスとして酸素又はチッソガスを切換え自在な1種のアシストガス供給手段23を構成するものである。
【0021】
さらに、前記レーザ切断加工装置1は、前記ワークWに対する前記レーザ加工ヘッド5の相対的な移動位置決め制御、前記レーザ発振器11におけるレーザ出力の制御及び前記アシストガス供給手段23の制御を行う制御装置25が備えられている。この制御装置25はコンピュータから構成してあり、CPU27、ROM29、RAM31、入力手段33及び出力手段35を備えている。
【0022】
また、前記制御装置25には第1加工条件テーブル37及び第2加工条件テーブル39が備えられている。前記第1,2の加工条件テーブル37,39は、図3に示すように、例えば板厚tが8mm〜32mm程度の厚いワークWのコーナ部を、例えば半径Rが0.8mm〜1.2mmの極小範囲、又は当該極小範囲の半径よりは大きく、ワークWの板厚の約1/2よりは小さな範囲、すなわち小範囲の半径の小径円弧部ARにレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件が予め格納してある。
【0023】
すなわち、ワークWのレーザ切断加工方向の進行方向(図3の矢印方向)に見て、レーザ切断加工の直進部(直線部)41又は曲率半径の大きな曲線部(直線部41と同一条件でレーザ切断加工が行われる部分であるから、レーザ切断加工条件で見ると直線部41に属するものである)と前記小径円弧部ARとの接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して次の直線部41又は曲線部との接続位置をB位置とし、このB位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置からC位置までレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件が前記第1,2の加工条件テーブル37,39に予め格納されているものである。
【0024】
前記第1加工条件テーブル37には、アシストガスとしてチッソガスを使用して厚いワークWの小径円弧部ARのレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件が格納してある。そして、第2加工条件テーブル39には、アシストガスとして酸素を使用して厚いワークWの小径円弧部ARのレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件が格納されている。
【0025】
前記加工条件テーブル37,39としては、図4に示すように、一般的にレーザ切断加工を行う厚板t1,t2,t3,…毎に加工条件テーブルを備えているものである。そして、加工条件としては、コーナ部の半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の半径Rを所定の大小範囲に区画設定した条件1,2があり、また、前記極小範囲の半径よりは大きく、ワークWの板厚tの約t/2よりも小さな範囲の小範囲を大,中,小の範囲に区画設定した条件3,4,5がある。なお、条件としては、1〜5の条件に限ることなく、さらに細分化することも可能である。
【0026】
そして、各条件1,2,3,4,5毎に位置AB間のレーザ切断加工条件としての加工速度、レーザ出力、周波数、デューティが予め実験的に求められて設定されている。また、加工条件としては、各条件1〜5毎にBC間の距離Lが板厚毎に予め実験的に求められて設定されている。さらに、加工条件として、BC間のレーザ切断加工条件としての加工速度、レーザ出力、周波数、デューティが予め実験的に求められて設定されている。
【0027】
したがって、レーザ切断加工を行おうとするワークWの材質がSUSの場合、SS材の場合に対応して第1加工条件テーブル37又は第2加工条件テーブル39が選択されかつワークWの板厚t1,t2,t3,…に対応して適正な加工条件テーブルが選択されるものである。そして、選択した加工テーブルに格納されている加工条件でもって小径円弧部ARのレーザ切断加工が行われ得るものである。
【0028】
また、前記制御装置25には、ワークWのレーザ切断加工を行うために前記入力手段33から入力された加工用プログラム(内容を変更可能なプログラム)を格納するプログラム格納用のメモリ43が備えられていると共に、当該メモリ43に格納された加工用プログラムを先読みするプログラム先読み手段45が備えられている。そして、前記プログラム先読み手段45によって読み取られたワークWの材質に対応してアシストガスとして酸素又はチッソガスを選択する前記切換弁としてのアシストガス選択手段21が備えられている。
【0029】
また、前記プログラム先読み手段45によって先読みした加工用プログラムの内容に前記小径円弧部ARが含まれるか否かを判別する判別手段47が備えられている。この判別手段47は、加工用プログラムに含まれる円弧部分の半径の値が予め設定してある前記極小範囲の半径、又は前記小範囲の半径に含まれるか否かを判別するものである。前記判別手段47によって小径円弧部ARの半径が前記極小範囲又は小範囲に含まれると判別された場合には、直線部41を示す式と小径円弧部ARを示す式とに基づいて、A位置、B位置の座標位置を演算するための演算手段49が前記制御装置25に備えられている。そして、前記演算手段49によって演算された演算結果のデータを格納する第2のメモリ51が備えられている。
【0030】
さらに、前記制御装置25には、加工条件テーブル選択手段53が備えられている。この加工条件テーブル選択手段53は、前記プログラム先読み手段45によって加工用プログラムの先読みをしたことにより、読み込まれたワークWの材質がSUSの場合には第1加工条件テーブル37を選択し、読み込まれたワークWの材質がSS材の場合には第2加工条件テーブル39を選択する機能を有するものである。そして、第1加工条件テーブル37又は第2加工条件テーブル39が選択されると、制御装置25に備えた検索手段55によってワークWの板厚tに対応した加工条件テーブルが検索される。この検索された加工条件テーブルの加工条件のデータは、第3メモリ57に格納され、前記第2メモリ51に格納されたA位置、B位置のデータと、第3メモリ57に格納された加工条件テーブルの加工条件のデータに基づいて、制御手段59の制御の下に、前記レーザ発振器11のレーザ出力及びワークWに対する前記レーザ加工ヘッド5の相対的な移動位置決めが行われるものである。
【0031】
ところで、板厚が8mm〜32mm程度の厚い鋼板であるワークのレーザ切断加工を行うとき、コーナ部の半径Rが0.8mm〜1.2mm程度の極小範囲の小さな小径円弧部のレーザ切断加工を行うことは難しいものである。そこで、小さな小径円弧部のレーザ切断加工を行ったときに、どのような問題が生じるか否かを実験した。実験用のワークとしては、厚さ10mmのSUSを使用し、アシストガスとしてチッソガスを使用した。
【0032】
そして、レーザ実出力3000W(出力4000W,800Hz ,デューティ60%)で、レーザ切断加工速度を650mm/min で直線部のレーザ切断加工を行い、小径円弧部の半径をR=1mmに設定して、直線部と同一条件でもって小径円弧部を90°に亘ってレーザ切断加工を行った。この場合、小径円弧部を曲がった後の切断面は直線部分の切断面と同様であったが、ドロスの発生が見られた。すなわち、前記小径円弧部をレーザ切断加工したときの、レーザ切断加工に影響する外乱は小さなものである。
【0033】
次に、レーザ出力を同一条件に保持して、レーザ切断加工速度を700mm/min に速くしたところ、前記小径円弧部を曲がった直後の下面付近(図3に示す符号61の付近)にプラズマが発生して面粗れが発生したが、レーザ切断加工が進むにつれて間も無く元のレーザ切断面に復帰した。しかし、レーザ切断加工速度をさらに高速の750mm/min にしてレーザ切断加工を行ったところ、小径円弧部を曲がった直後から面粗れが発生し、元の切断面に復帰することはなかった。すなわち、レーザ出力を一定に保持して小径円弧部のレーザ切断加工を行うと、加工速度が大きく(速く)なるほど、レーザ切断加工に影響する外乱は大きくなるものである。
【0034】
したがって、厚い鋼板のワークのレーザ切断加工を行うときに、小径円弧部が含まれる場合には、当該小径円弧部においてレーザ出力及びレーザ切断加工速度を適正に制御する必要がある。
【0035】
ところで、前記実験は、レーザ出力を一定に保持してレーザ切断加工速度を変更した場合であるが、直線部のレーザ切断加工速度と小径円弧部のレーザ切断加工速度が等速の場合であった。したがって、レーザ切断加工速度が650mm/min の場合には、加工速度が遅く、レーザ切断加工の進行方向の切断長の単位長さ当りに対するレーザ光の照射量が充分に行われ、ワーク上面の切断進行に対するワーク下面の切断進行の遅れは小さなものとなり、小径円弧部を曲がった後においても、切断面の面粗れが発生しなかったものと推測される。
【0036】
ところが、レーザ切断加工速度が700mm/min と高速になると、レーザ切断加工の進行方向の単位長さ当りに対するレーザ光の照射量が減少するので、ワーク上面の切断進行方向に対するワーク下面の切断進行方向の遅れが大きくなる。したがって、ワーク上面において小径円弧部に沿ってレーザ切断加工が行われた場合であっても、ワーク下面においては遅れに起因して上面の小径円弧部の半径に対して円弧軌路の形状が大きく崩れることになる。このように、ワークの上面に対して下面のレーザ切断加工の遅れによって円弧軌跡が崩れることにより、下面付近61にプラズマが発生して、下面付近61に面粗れが生じたものと推測される。
【0037】
そして、小径円弧部を経過して再び直線部のレーザ切断加工に移行したときには、前記加工速度650mm/min の場合よりもワーク下面の遅れが大きく、この下面側の遅れに起因する外乱はあるものの、レーザ切断加工に影響を与える外乱は小さく、レーザ切断加工の進行に伴って外乱が消失し、元のレーザ切断加工の状態に復帰したものと推測される。
【0038】
ところが、レーザ切断加工速度が750mm/min になると、レーザ切断加工方向の単位長さ当りに対するレーザ光の照射量がより少なくなり、ワーク上面のレーザ切断加工の進行に対してワーク下面のレーザ切断加工の遅れがより大きくなる。したがって、小径円弧部のレーザ切断加工を行う場合には、ワーク上面の小径円弧部の半径に比較して、ワーク下面の円弧軌跡の崩れはより大きなものとなる。よって、小径円弧部に達するまでの直線部のレーザ切断加工は可能であったが、小径円弧部のレーザ切断加工を行ったときの下面側の遅れに起因する外乱が大きく、小径円弧部のレーザ切断加工後は、外乱が消失することなく元のレーザ切断加工状態に復帰できなかったものと推測される。
【0039】
すなわち、小径円弧部のレーザ切断面に粗面が発生する外乱の大きな原因は、ワーク上面のレーザ切断加工の進行に対して、ワーク下面のレーザ切断加工が遅れを生じることにあるものである。前記外乱は、前述したように、ワークのレーザ切断加工時におけるワーク上面に対するワーク下面のレーザ切断加工の遅れに起因するものである。そして、レーザ切断加工条件としてのレーザ出力、レーザ切断加工速度を一定に保持して、例えば直線部のレーザ切断加工を行っているときの、ワーク上面に対するワーク下面のレーザ切断加工の遅れが、ワークのレーザ切断面に悪影響を与えることがなく、問題ない場合であっても、例えば半径が0.8mm〜1.2mm程度の小径円弧部のレーザ切断加工時に、上面の曲率半径と下面の曲率半径との差が許容値以上に大きくなると、ワーク上面に対するワーク下面のレーザ切断加工の遅れが、小径円弧部の切断後に継続してレーザ切断加工されるレーザ切断加工面に粗面が発生する外乱として作用するものである。
【0040】
なお、上記実験は、ワークがSUSでアシストガスとしてチッソガスを使用した場合であったがワークとしてSS材を用い、アシストガスとして酸素を使用してレーザ切断加工を行ったところ、同様の実験結果が得られた。なお、アシストガスとして酸素を使用するものであるから、前記下面付近61にはバーニングや凹みが発生した。
【0041】
前記実験結果から理解されるように、板厚が8mm以上の厚いワークのレーザ切断加工に、例えば半径が0.8mm〜1.2mm程度の小径円弧部が含まれる場合には、レーザ出力を一定に保持してレーザ切断加工速度をより高速にすると、小径円弧部のレーザ切断加工時には、ワークの上面のレーザ加工位置に対する下面の遅れがより大きくなることに起因する外乱が次第に大きくなるという問題がある。なお、コーナ部の半径が0.8mm〜1.2mm程度の極小範囲よりも大きく、板厚tの約1/2以下の小範囲の半径における小径円弧部の場合にも、粗面の程度に差はあるものの、小径円弧部を通過した後の切断面に、同様に粗面が生じることがある。
【0042】
既に理解されるように、厚さが8mm〜32mm程度の厚い鋼板のワークのレーザ切断加工を行うときに、レーザ切断経路(レーザ切断軌跡)中に、コーナ部の半径が0.8mm〜1.2mm程度又はt/2以下の半径の小径円弧部が含まれると、ワーク上面のレーザ切断加工の進行に対してワーク下面側が遅れることに起因して、レーザ切断加工の切断面を粗面にする外乱が生じることがある。
【0043】
そこで、前述した実験に使用したワークと同様に、厚さ10mmのSUSを使用し、かつアシストガスとしてチッソガスを使用し、図5(A)に示すように、レーザ実出力3000W、レーザ切断加工速度750mm/min でもって直線部のレーザ切断加工を行い、小径円弧部でのワーク上面に対するワーク下面のレーザ切断加工の遅れを抑制するために、前記A位置でのレーザ切断加工速度を500mm/min の低速に制御し、この低速度500mm/min をC位置まで保持し、このC位置から元の加工速度750mm/minに復帰したところ、レーザ切断の切断面が前述したごとき粗面となることはなかった。なお、前記B位置からC位置までの距離は4mmであった。しかし、前記B位置からC位置までの距離を10mmまで延ばして実験を行ったところ、次第にドロスの発生が見られた。
【0044】
すなわち、板厚10mmのSUSの直線部のレーザ切断加工を行うとき、レーザ実出力3000W、レーザ切断速度750mm/minは適正なレーザ切断加工条件であり、小径円弧部のレーザ切断加工時にはレーザ出力をそのままに維持し、レーザ切断速度を500mm/minの低速に制御したことにより、小径円弧部でのレーザ切断加工時には、直線部のレーザ切断加工時の単位切断長さ当りに対するレーザ光の照射量が大きくなる。したがって、ワーク上面に対するワーク下面のレーザ切断の遅れは、小径円弧部においては直線部の遅れより小さくなる。よって、レーザ切断加工に影響する外乱は小さくなり、良好なレーザ切断面となるものである。
【0045】
ところで、前記B位置からC位置までの距離を例えば10mmに延ばすと、前記4mm以上の部分が直線部のレーザ切断加工となり、レーザ実出力3000W、レーザ切断速度750mm/minとする適正なレーザ切断加工条件から外れたレーザ切断加工が行われることとなってドロスの発生が見られたものである。
【0046】
次に、小径円弧部でのレーザ切断加工時に、直線部のレーザ切断加工時よりも、単位切断長さ当りのレーザ光の照射量を大きくして、ワーク上面のレーザ切断加工位置に対するワーク下面のレーザ切断加工位置の遅れを小さくして、ワーク上面と下面との遅れの差を小さくするために、図5(B)に示すように、全体に亘ってレーザ切断加工速度を750mm/min の一定速度に保持し、A位置からC位置に到るレーザ切断加工時のレーザ実出力を3700Wに大きくしたところ、小径円弧部のレーザ切断加工後のレーザ切断面が粗面になることはなかった。
【0047】
次に、ワークとして板厚が19mmのSS材を用い、アシストガスとして酸素を使用し、レーザ実出力3000W、切断速度800mm/min のレーザ切断加工条件でもって、小径円弧部を含むレーザ切断加工を、図5(A)に示す条件と同様に、A位置からC位置までの速度を1/2の400mm/min の切断速度に制御してレーザ切断加工を行ったところ、小径円弧部を曲がった直後に、ワークのレーザ切断面における下面付近にバーニングが発生した。そこで、図6(A)に示すように、B位置からC位置までのレーザ加工切断速度を、前記切断速度800mm/min と400mm/min の中間速度である600mm/min の切断速度に制御してレーザ切断加工を行ったところ、レーザ切断面に粗面を生じることなく、良好の切断面であった。
【0048】
この場合、ワークがSS材であってアシストガスが酸素であることにより、ワークのレーザ切断加工部には、レーザ光の照射によるレーザエネルギーのみならず、ワークと酸素との酸化反応熱がワークの溶断に寄与することになる。したがって、小径円弧部のレーザ切断加工時には、ワーク上面のレーザ切断加工に対するワーク下面の遅れが抑制されて、ワーク上面に対するワーク下面の遅れの差が小さくなり、上記差が大きくなることに起因して切断を粗面にする外乱は小さくなるものである。
【0049】
しかし、小径円弧部の切断直後の位置Bにおいても400mm/min の低速に維持すると、前記酸化反応熱の寄与が大きくなり、切断面に粗面を生じるものと推測される。そこで、小径円弧部の切断直後のB位置において前記中間速度である600mm/min に速度を大きくすると、前記酸化反応熱の寄与が抑制されると共に、前記外乱が次第に消失する。そして、外乱が消失したC位置から元の切断速度800mm/min に復帰しての高速のレーザ切断加工が可能になるものである。
【0050】
なお、前記図5、図6に示したレーザ切断加工条件のデータは、それぞれ前記第1加工条件テーブル37、第2加工条件テーブル39に格納されているものである。そして、第1、第2の加工条件データテーブル37,39には、各ワークの板厚毎に、またレーザ加工条件が異なる毎にそれぞれ格納されているものである。
【0051】
既に理解されるように、ワークとしてSS材等の炭素鋼の鋼板のレーザ切断加工を行うときに、アシストガスとして酸素を使用すると、鋼板の溶断に酸化反応熱も寄与することとなるので、小径円弧部のレーザ切断加工を行う場合には、レーザ光の照射エネルギーのみならず前記酸化反応熱の寄与も考慮する必要がある。そこで、板厚19mmのSS材のレーザ切断加工を行うときに、レーザ切断加工速度を800mm/min の一定速度に保持して、小径円弧部を含むレーザ切断加工を行うに当り、図6(A)に示したレーザ切断加工条件に準じて、図6(B)に示すように、A位置からB位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力を最大出力に制御し、B位置からC位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力を、前記最大出力と直線部のレーザ切断加工時の小出力との間の中出力に制御してレーザ切断加工を行ったところ、小径円弧部を経過した後のレーザ切断加工面には、粗面の発生は見られず、良好な切断面であった。
【0052】
以上のごとき説明から理解されるように、板厚が例えば8mm〜32mmの厚い鋼板のレーザ切断加工経路中のコーナ部に、半径が例えば0.8mm〜1.2mmの小径円弧部が含まれる場合には、ワーク上面におけるレーザ切断加工の進行位置に対するワーク下面のレーザ切断加工の進行位置の遅れの差を、直線部のレーザ切断加工時の遅れの差より小さく抑制することにより、前記小径円弧部の経過後のレーザ切断面に粗面が発生することを抑制することができるものである。レーザ切断面に前記粗面が発生する要因は、小径円弧部のレーザ切断加工を行うときに、ワーク上面に対するワーク下面の切断遅れが大きいことに起因するものであるから、小径円弧部のレーザ切断加工時には、ワーク上面に対するワーク下面の切断遅れを小さくすべく、レーザ切断加工条件を制御すればよいことになる。
【0053】
既に理解されるように、SUS又はSS材等の炭素鋼板の厚板のレーザ切断加工を行うべく、入力手段33から必要な加工用プログラムが入力されて第1メモリ43に格納されると、プログラム先読み手段45によって前記加工用プログラムの先読みが行われる。そして、レーザ切断加工の対応となるワークがSUSの場合には、アシストガス選択手段21によってチッソガス供給手段19が選択されることとなり、ワークがSS材の場合には酸素供給手段17が選択されることになる。
【0054】
また、前記プログラム先読み手段45によって先読みされた加工用プログラムにおけるレーザ切断加工経路に小径円弧部が含まれる場合には、ワークの材質に対応して第1加工条件テーブル37又は第2加工条件テーブル39が選択される。そして、選択した加工条件テーブル37又は39において読み取られた加工用プログラムに指定されているワークの板厚tに対応した加工条件テーブル及び小径円弧部の半径に対応した条件1〜5の1つが選択され、この選択された加工条件テーブルの加工条件のデータが第3メモリ57に格納される。また、先読みされた小径円弧部の半径R及び当該小径円弧部の前後の直線部又は曲線部との接続位置A,Bが演算手段49によって演算される。そして、演算結果のデータは第2メモリ51に格納される。
【0055】
上述のように、第2メモリ51にA位置、B位置の位置データが格納され、第3メモリ57に選択された加工条件データが格納されると、この第2、第3メモリ51,57に格納されているデータに基づいて、制御手段59の制御の下にレーザ発振器11のレーザ出力及びワークWに対するレーザ加工ヘッド5の相対的な移動位置決めが行われて、ワークWのレーザ切断加工が行われるものである。
【0056】
すなわち、ワークWの材質、板厚及び小径円弧部に対応して予め実験的に求めたレーザ切断加工条件の加工条件テーブル37,39を備え、この加工条件テーブル37,39のレーザ切断加工条件に基づいて、小径円弧部のレーザ切断加工を行うものであるから、小径円弧部のレーザ切断加工直後のレーザ切断面に粗面が発生することを効果的に抑制することができるものである。
【0057】
ところで、前記説明より理解されるように、厚いワークの小径円弧部のレーザ切断加工を行うときには、レーザ出力又はレーザ切断加工速度の適宜一方を制御するものであるから、適正な加工条件を得るための実験が容易である。そして、ワークの材質、板厚に対応しての小径円弧部の適正な加工条件のデータの収集が容易なものである。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザ切断加工装置
5 レーザ加工ヘッド
11 レーザ発振器
17 酸素供給手段
19 チッソガス供給手段
21 切換弁(アシストガス選択手段)
23 アシストガス供給手段
25 制御装置
37 第1加工条件テーブル
39 第2加工条件テーブル
43 第1メモリ
45 プログラム先読み手段
49 演算手段
51 第2メモリ
53 加工条件テーブル選択手段
55 検索手段
57 第3メモリ
59 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシストガスとしてチッソガスを使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工方向の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記C位置までのレーザ出力を同一出力に保持しつつレーザ切断加工速度を低速に制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【請求項2】
アシストガスとしてチッソガスを使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工方向の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記C位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつレーザ出力を高出力に制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【請求項3】
アシストガスとして酸素を使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をA位置とし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記B位置までのレーザ出力を同一出力に保持しつつレーザ切断加工速度を低速に制御してレーザ切断加工を行い、前記B位置から前記C位置まではレーザ出力を同一出力に保持しつつ前記A位置までのレーザ切断加工速度と前記B位置までのレーザ切断加工速度との間の中速度に制御してレーザ切断加工を行い、当該C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【請求項4】
アシストガスとして酸素を使用して厚い鋼板のワークのレーザ切断加工時に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部を切断するときのレーザ切断加工方法であって、レーザ切断加工の進行方向に見て直線部又は曲線部と前記小径円弧部との接続位置をAとし、当該A位置を通過して当該小径円弧部と次の直線部又は曲線部との接続位置をB位置とし、かつ当該B位置からレーザ切断加工の進行方向の所定距離の位置をC位置としたとき、前記A位置までのレーザ切断加工時のレーザ出力、レーザ切断加工速度に対して、前記A位置から前記B位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつレーザ出力を高出力に制御してレーザ切断加工を行い、前記B位置から前記C位置までのレーザ切断加工速度を同一速度に保持しつつ前記A位置までのレーザ出力と前記B位置までのレーザ出力との間の中出力にレーザ出力を制御してレーザ切断加工を行い、前記C位置以後のレーザ切断加工は、前記A位置までのレーザ切断加工と同一の加工条件でもってレーザ切断加工を行うことを特徴とするレーザ切断加工方法。
【請求項5】
ワークとしての鋼板のレーザ切断加工を行うレーザ切断加工装置であって、レーザ発振器と、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光してワークに照射するためのレーザ加工ヘッドと、上記レーザ加工ヘッドへ供給するアシストガスとしてチッソガス又は酸素を切換自在なアシストガス供給手段と、前記レーザ発振器のレーザ出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御自在な制御手段と、アシストガスとしてチッソガスを使用して厚いワークのレーザ切断加工ときに半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件を予め格納した第1加工条件テーブルと、アシストガスとして酸素を使用して厚いワークのレーザ切断加工時に半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部のレーザ切断加工を行うときのレーザ切断加工条件を予め格納した第2加工条件テーブルと、ワークのレーザ切断加工を行うために入力手段から入力された加工用プログラムを先読みするプログラム先読手段と、当該プログラム先読手段によって先読みしたワークの材質に対応してアシストガスを選択するアシストガス選択手段と、前記プログラム先読手段によって先読みした内容に前記小径円弧部が含まれるときに先読みされたワークの材質に対応して前記第1又は第2の加工条件テーブルを選択する加工条件テーブル選択手段と、前記小径円弧部のレーザ切断加工を行うときに、前記加工条件テーブル選択手段によって選択された加工条件テーブルに格納されている加工条件でもって、前記レーザ発振器の出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御するための前記制御手段と、を備えていることを特徴とするレーザ切断加工装置。
【請求項6】
ワークとしての鋼板のレーザ切断加工を行うレーザ切断加工装置であって、レーザ発振器と、レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光してワークに照射するためのレーザ加工ヘッドと、上記レーザ加工ヘッドへ供給するアシストガスとしてチッソガス又は酸素を切換自在なアシストガス供給手段と、前記レーザ発振器のレーザ出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御自在な制御手段と、ワークのレーザ加工を行うために入力手段から入力された加工用プログラムを先読みするプログラム先読手段と、当該プログラム先読手段によって先読みしたワークの材質に対応してアシストガスを選択するアシストガス選択手段と、前記プログラム先読手段によって先読みした内容に、半径が0.8mm〜1.2mmの極小範囲の小径円弧部及び/又は前記極小範囲の半径よりは大きく板厚の1/2の半径よりは小さな小範囲の半径の小径円弧部が含まれるときに、前記小径円弧部のレーザ切断加工を行うためのレーザ切断加工条件を入力するための前記入力手段と、当該入力手段によって入力されたレーザ切断加工条件を格納する加工条件メモリと、当該加工条件メモリに格納されている加工条件でもって、前記レーザ発振器の出力及びワークに対する前記レーザ加工ヘッドの相対的な移動速度を制御するための前記制御手段と、を備えていることを特徴とするレーザ切断加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate