説明

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

【課題】プリント配線基板の中央部分は製品取りの領域でありここに基準マークを設置すると製品の取数が減るため、周辺の基準マークのデータのみで高精度の加工位置補正を実現する。
【解決手段】被加工物の穴加工位置の多数を囲む基準マークを印し、穴加工工程において前記基準マークの位置を計測し、規定された基準マーク位置データに対する測定された基準マーク位置データの誤差をそれぞれの基準マークに対して求め、誤差を変数のべき乗と係数の積で表される複数の項で関係付けし、基準マークに対し誤差の2乗の総和が最小となるように係数を求め、前記式と算出された前記係数から構成される補正量算出式と前記加工穴位置データとから加工すべく穴位置に対する補正量を求め、前記穴加工位置データに前記補正量を加算した新穴加工位置データを求め、前記穴加工位置データを新穴加工位置データに置き換えて加工することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板などの基板本体にスルーホールあるいはビアホールを設ける際などにプリント配線基板上に設けられた基準マークの設計値に対するずれ量を求め、得られたずれ量に基づいて加工箇所の座標を補正して加工するようにしたレーザ加工方法およびレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置や画像検査装置などでは、レーザ光や可視光などの光を利用して物体の加工や対象物の検査が広く行われている。例えばプリント配線基板用レーザ加工装置では、プリント配線基板にレーザ光を照射して、多層プリント配線基板の層間接続回路であるIVH(インタースティシャル・バイア・ホール)の穴加工を行っている。
【0003】
図9にプリント配線基板用レーザ加工装置の概要を示す。制御装置101は、レーザ発振器102、ガルバノ装置103、加工テーブル104、カメラ部105の制御を行う。レーザ発振器102は、加工用のレーザ光106を出力する。ガルバノ装置103は、2軸のモータに取付けられたミラーによって、レーザ光106の位置決めを行う。集光レンズ107は、レーザ光106を集光する。カメラ部105は、プリント配線基板108上の基準マークの位置検出を行う。加工テーブル104は、加工するプリント配線基板108を搭載し、位置決めを行う。
【0004】
次にプリント配線基板用レーザ加工装置の動作について説明する。レーザ発振器102から出力されたレーザ光106は、ガルバノ装置103で位置決めを行い、集光レンズ107によって集光され、プリント配線基板108の所定の位置に照射され、穴加工を行う。
【0005】
近年、電子機器の小型・軽量化が求められているが、これを実現するために多層プリント配線基板による電子部品の高密度実装が進んでいる。これは1枚の多層プリント配線基板に形成するIVHの穴数増加、小径化、高密度化することになり、これに対応するためにはプリント配線基板用レーザ加工装置の穴加工精度を高精度化する必要が求められおり、そしてそのような高密度配線基板にスルーホールあるいはビアホールを形成する穴加工工程では、被加工物である基板のプリント配線基板の穴加工位置を加工治具および加工装置に正確に認識させる必要がある。
【0006】
図10は実際のプリント配線基板の位置ずれを示したものである。XY方向に穴加工位置、Z方向にX軸方向のずれ量を示している。これらの図10に示すように、穴加工位置は単純伸縮、回転、シフトずれだけでなく複雑な変形をしている。
【0007】
このため従来は、プリント配線基板に設けられた回路パターンに対して高精度の穴明けを行うために、方形あるいは平行四辺形のワークに対し、基準マークをワークの四隅と各辺の中点およびワーク四隅の対角線の交点に合計9点マークを配置しておき、各基準マークの設計値に対する互いに直角なXおよびY方向のずれ量をそれぞれ測定して求め、任意の加工箇所におけるずれ量が基準マークにおけるXおよびY方向の各ずれ量で決まる放物線上にあるとして当該箇所のXY方向の各ずれ量を推定し、推定したずれ量に基づいて当該箇所の座標を補正して加工をするようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−75932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1の場合、直線上に等ピッチに配置されたマークが放物線状にずれているとして加工精度を向上させていた。しかし、マークを所望の位置に配置できるとは限らない。
【0010】
また、プリント配線基板のほぼ中央に認識用のマークを設置することが必要である。プリント配線基板の中央部分は製品取りの領域でありここに基準マークを設置すると製品の取り数が低減する。このため、設置するスペースによりプリント配線基板1枚あたりの製品の取り数が低下するという課題を有していた。
【0011】
本発明は、製品の取数を低下させることなく加工精度を向上させるレーザ加工方法およびレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工方法は、被加工物を予め決められた2次元の穴加工位置データに基づいて穴加工するに先立ち、前記被加工物の変形や保持位置ずれに追随するように前記穴加工位置データを補正するレーザ加工方法であって、前記被加工物の表面、もしくは内部の予め規定された位置に前記穴加工位置の多数を囲む基準マークを印し、穴加工工程において前記基準マークの位置を計測し、規定された基準マーク位置データに対する測定された基準マーク位置データの誤差をそれぞれの基準マークに対して求め、誤差を一または複数変数のべき乗と係数の積で表される項の所定数の和で構成された式で関係付けし、前記式を構成している係数の数以上前記基準マークを設け、それぞれの前記基準マークに対し前記誤差と前記式の差分を2乗し、全ての前記基準マークに対して前記誤差と前記式の差分を2乗した式の総和をとり、前記総和が最小となるように前記係数を求め、前記式と算出された前記係数から構成される補正量算出式と前記加工穴位置データとから加工すべく穴位置に対する補正量を求め、前記穴加工位置データに前記補正量を加算した新穴加工位置データを求め、前記穴加工位置データを新穴加工位置データに置き換えて加工する方法である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は、上記のレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置であって、被加工物に対して予め決められた2次元の穴加工位置データを獲得する基準マーク獲得手段と、前記被加工物の表面、もしくは内部の予め規定された位置に前記穴加工位置の多数を囲むように印された基準マークの位置を穴加工工程において計測する基準マーク位置計測手段と、規定された基準マーク位置データに対する測定された基準マーク位置データの誤差をそれぞれの基準マークに対して求める誤差算出手段と、誤差を一または複数変数のべき乗と係数の積で表される項の所定数の和で構成された式で関係付けし、前記式を構成している係数の数以上に設けたそれぞれの前記基準マークに対し、前記誤差と前記式の差分を2乗し、全ての前記基準マークに対して前記誤差と前記式の差分を2乗した式の総和をとり、前記総和が最小となるように前記係数を求める誤差特性算出手段と、前記式と算出された前記係数から構成される補正量算出式と前記加工穴位置データとから加工すべく穴位置に対する補正量を求め補正量算出手段と、前記穴加工位置データに前記補正量を加算した新穴加工位置データを求める位置指令算出手段と、前記新穴加工位置データを位置指令とする位置指令手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のようにすることで、本発明は、プリント配線基板に複数の基準マークからプリント配線基板の歪具合を算出し、加工座標の歪量を算出し、加工座標に前記歪量を加算した座標に穴加工することにより製品の取り数を低減することなく穴を高精度に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のレーザ加工装置の実施の形態における全体構成を示す図
【図2】本発明を適用するに好適なプリント配線基板の表面を示す図
【図3】基準マークのずれ量の表示方法を示す図
【図4】本発明のレーザ加工方法の実施の形態1のフローチャート
【図5】本発明を適用するプリント配線基板の測定座標を示す図
【図6】本発明を適用するプリント配線基板の位置ずれ特性を示す図
【図7】本発明を適用するプリント配線基板の位置ずれ特性を示す図
【図8】本発明を適用した場合の位置ずれ特性を示す図
【図9】従来のレーザ加工装置の全体構成を示す図
【図10】従来の発明における考え方の説明を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図1から図5を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1において、プリント配線基板用レーザ加工機の主な構成としては、加工プログラム、加工条件、パラメータなどを入力する入力部1と加工機全体を制御する制御部2と、レーザ光3を出力するレーザ発振部4と、穴加工を行う被加工物5を搭載し、位置決めを行う加工テーブル部6と、2軸のモータを位置決めしてレーザ光3の位置決めを行うガルバノスキャナ部7と、ガルバノスキャナ部7で走査したレーザを被加工物に集光する集光レンズ8と、レーザ発振部4からガルバノスキャナ部7にレーザ光3を導くミラー9と、レーザ光3で加工した加工穴や被加工物5上の基準マーク10を撮像するカメラ部11がある。
【0018】
制御部2は、主制御部12、レーザ制御部13、加工テーブル制御部14、ガルバノ制御部15、位置検出部16で構成する。主制御部12はシーケンス制御部17と光学位置決め部18で構成している。
【0019】
シーケンス制御部17は入力部1から入力した加工穴の位置情報、基準マーク10の位置情報を記憶したプログラム、加工条件などのデータを解析し、レーザ制御部13、加工テーブル制御部14、ガルバノ制御部15、位置検出部16にそれぞれ動作指令を出力する。
【0020】
レーザ制御部13は主制御部12からレーザ出力指令を入力すると、レーザ発振部4にレーザ出力指令信号を出力する。また主制御部12にレーザ発振部4の動作情報などを出力する。
【0021】
レーザ発振部4は、レーザ制御部13からレーザ出力指令信号を入力すると、レーザ出力信号に従い、レーザ光3を出力する。
【0022】
加工テーブル制御部14は指令速度などの制御パラメータや加工テーブル動作指令が主制御部12から入力されると、位置制御を行い、モータ駆動指令信号を加工テーブル部6に出力する。
【0023】
またモータの位置情報などを主制御部12に出力する。加工テーブル部6は、加工テーブル制御部14からモータ駆動指令信号を入力すると、モータ駆動指令信号に従い、モータを駆動する。また、モータの位置検出信号を加工テーブル制御部14に出力する。
【0024】
ガルバノ制御部15は指令速度などの制御パラメータやガルバノ動作指令が主制御部12から入力されると、位置制御を行い、ガルバノ駆動指令信号をガルバノスキャナ部7に出力する。またガルバノスキャナ部7の位置情報などを主制御部12に出力する。ガルバノスキャナ部7はガルバノ制御部15から駆動指令信号を入力すると、駆動指令信号に従い、モータを駆動する。また、モータの位置検出信号をガルバノ制御部15に出力する。
【0025】
位置検出部16は、主制御部12から位置検出指令を入力すると、カメラ部11に検出信号を出力する。またカメラ部11の撮像画像から位置検出を行い、位置検出結果を主制御部12に出力する。
【0026】
カメラ部11は位置検出部16から検出信号を入力すると、カメラ部11で基準マーク10を撮像し、撮像画像を位置検出部16に出力する。
【0027】
光学位置決め部18は、基準マーク座標記憶部19と、加工穴座標記憶部20と、誤差算出部21と、誤差特性算出部22と、係数記憶部23と、位置指令算出部24と、位置指令部24とから構成される。
【0028】
基準マーク座標記憶部19は、入力部1から入力されたプログラムのうち基準マーク設計座標データを予め記憶しておく。加工穴座標記憶部20は、入力されたプログラムのうち加工穴設計座標データを予め記憶しておく。
【0029】
誤差算出部21は、基準マーク座標記憶部19のマーク座標データに基づいて被加工物5上に設けられた基準マーク10を測定した結果を位置検出部16から取得し、基準マーク記憶部19の設計座標に対する誤差を算出し、算出した誤差を誤差特性算出部22に出力する。
【0030】
誤差特性算出部22は基準マーク座標記憶部19に記憶された基準マーク設計座標データと誤差算出部21の基準マーク10のX軸方向のずれ量との関係、および基準マーク設計座標データと誤差算出部21の基準マーク10のY軸方向のずれ量との関係を算出し、係数記憶部23に計算結果を出力する。
【0031】
係数記憶部23は、誤差特性算出部22で算出した計算結果を記憶し、記憶した指令位置生成部24に出力する。
【0032】
指令位置作成部24は、係数記憶部23の記憶データと加工穴座標記憶部20の加工穴設計座標データとから加工穴設計座標に対する位置補正量を算出し、位置補正量と加工穴設計座標を加算して加工する穴の指令位置を算出し、位置指令部25に出力する。
【0033】
位置指令部25は指令座標をガルバノスキャナ部7で位置決めをする部分と、加工テーブル部6で位置決めする部分に分離し、ガルバノスキャナ部7の位置指令値をガルバノ制御部14へ加工テーブル部6の位置指令を加工テーブル制御部13へ出力する。
【0034】
図2は、本発明を適用するのに好適なプリント配線基板の表面図である。
【0035】
図2において、基準マーク(アライメントマーク)P1〜P16の座標は、それぞれP1(x1,y1)、P2(x2,y2)、P3(x3,y3)、P4(x4,y4)、P5(x5,y5)、P6(x6,y6)、P7(x7,y7)、P8(x8,y8)、P9(x9,y9)、P10(x10,y10)、P11(x11,y11)、P12(x12,y12)、P13(x13,y13)、P14(x14,y14)、P15(x15,y15)、P16(x16,y16)、加工すべき穴の多数はこのP1〜P16に加工まれた領域に存在している。
【0036】
設計上の点Piにおける測定位置をPi’とし、点Piの設計位置と測定位置との差を△iとすると、△iは式1で表される。なお、△xiは△iのx成分、△yiは△iのy成分である。
【0037】
【数1】

【0038】
次に、基準マークP1〜P16の各座標をXY軸の2次元に配置し、Z軸方向に誤差△xiを配置する。
【0039】
例えば、図2における点P1〜P5について抜粋して示すと、図3に示すように、点P1、P2、P3、・・・、P16から垂直に誤差ΔXiだけシフトした点をそれぞれ点Q1、Q2、Q3、・・・、Q16とする。16点を通る2次元曲面q1は曲面を4次式で表すと式2で表される。
【0040】
【数2】

【0041】
ここでそれぞれの点Q1、Q2、Q3、・・・、Q16と2次元曲面の誤差が最小となる係数列a1、a2、a3、・・・、a15を求める。例えば、ここでは誤差の2乗和が最小となるように係数列a1、a2、a3、・・・、a15を求めることとする。
【0042】
以下、この係数列を求める手法を、文献「金谷健一『これなら分かる最適化数学:基礎原理から計算手法まで』(共立出版、2005)」を引用して説明する。
【0043】
まず、係数列a1、a2、a3、・・・、a15を求めるには、式3で表される。
【0044】
【数3】

【0045】
ここで
【数4】

【0046】
【数5】

【0047】
【数6】

となる。
【0048】
式3の連立方程式を解き、係数列xを求める。
【0049】
多元1次連立方程式を解くには、数値計算でおこなう。数値的方法にはガウス−ジョルダンの消去法、ガウスの消去法、ヤコビ法、ガウス・ザイデル法、SOR法(逐次過大緩和法)などがある。
【0050】
式2と算出した行列xによりP1、P2、P3、・・・、P16の座標においてQ1、Q2、Q3、・・・、Q16の近傍を通る2次元曲面qを得ることができる。
【0051】
また、△yiについても△xiと同様にして、2次曲面q2を得ることができ、曲線を4次式で表すと式7で表される。
【0052】
【数7】

【0053】
ここでそれぞれの点Q21、Q22、Q23、・・・、Q36と2次元曲面の誤差が最小となる行列b1、b2、b3、・・・、b15を求める。
【0054】
たとえば、ここでは誤差の2乗和が最小となるように行列b1、b2、b3、・・・、b15を求める。これは行列a1、a2、a3、・・・、a15の算出方法と同様に求めることができる。
【0055】
【数8】

【0056】
ここで
【数9】

【0057】
【数10】

【0058】
【数11】

となる。
【0059】
連立方程式を解き、行列yを求める。
式7と算出した係数列yによりP1、P2、P3、・・・、P16の座標においてQ21、Q22、Q23、・・・、Q36の近傍を通る2次元曲面q2を得ることができる。
【0060】
ここで、基板上の任意の点P0(x0、y0)のX軸方向の補正量Δxは、式1および係数列a1、a2、a3、・・・、a16からΔxを求めることができる。
【0061】
【数12】

【0062】
同様に補正量Δyは、式2および係数列b1、b2、b3、・・・、b16からΔyを求めることができる。
【0063】
【数13】

【0064】
そして、加工をするときには、設計上の加工位置(x0、y0)に代えて、(x0+Δx,y0+Δy)の位置に位置決めして加工を行う。
【0065】
図4に補正データ作成処理のフローチャートを示す。補正データ作成処理をスタートすると、
ステップ1では基準トマーク座標の設計値データを読込み、記憶する。
【0066】
ステップ2ではステップ1で読み込んだ基準マーク座標の位置を測定する。
【0067】
ステップ3ではステープ2で測定したデータからステップ1で読み込んだ設計データを引いて基準マークのずれ量を算出する。
【0068】
ステップ4では、測定する基準マーク座標データの有無をチェックし、基準マーク座標データがある場合にはステップ1に戻り、基準マーク座標データがない場合にはステップ5に進む。
【0069】
ステップ5では、ステップ1で読み込んだ基準マーク座標データ、ステップ3で算出したずれ量のうちX軸方向のずれ量のデータの複数の組と(数1)からにより最小二乗法により係数列a1、a2、a3、・・・、a15を求める。
【0070】
ステップ6では、ステップ1で読み込んだアライメントマーク座標データ、ステップ3で算出したずれ量のうちY軸方向のずれ量のデータの複数の組から(数2)により最小二乗法で誤差の2乗和が最小となるように係数列b1、b2、b3、・・・、b15を求める。
【0071】
ステップ7では、加工する穴の座標データを取得する。
【0072】
ステップ8では、式1とステップ5で算出した係数で構成される式にステップ7で取得した加工する穴座標データとから加工すべき穴座標のX軸方向のずれ量を算出する。
【0073】
ステップ9では、式2とステップ6で算出した係数で構成される式にステップ7で取得した加工する穴座標データとから加工すべき穴座標のY軸方向のずれ量を算出する。
【0074】
ステップ10では、ステップ8で算出したX軸方向のずれ量とステップ9で算出したY軸方向のずれ量とステップ7で取得した加工する穴座標から加工する座標データを算出する。
【0075】
ステップ11、ステップ10で算出した加工座標データを位置司令部に格納する。
【0076】
ステップ12では、加工する穴座標データの有無をチェックし、加工する穴座標データがある場合にはステップ7に戻り、加工する穴座標データがないは、処理を終了する。
【0077】
このようにして実施した事例を図5〜図8を用いて説明する。
【0078】
図5はX軸方向315mm、Y軸方向455mmプリント配線基板に対して格子状に35mmピッチで基準マークを設けた基板である。図5において各基準マークの位置を測定し、Y軸方向の誤差を算出し、高さ方向にY軸方向の誤差を示したのが図6である。図7は図6において、X軸方向のピッチを70mm、Y軸方向のピッチを105mmとして誤差を抜粋した図である。図8は図5の外周部の基準マークのみで補正した場合の内部基準マークに対する位置ずれ量を算出した結果である。
【0079】
このように、本発明を適用すると図7に比較して図8の誤差が良化しており、穴加工の位置ずれ精度を大幅に改善できていることがわかる。
【0080】
以上のように、加工する穴の多数を囲む基準マークの設計座標とその測定値から基準マークの誤差を算出し、基準マークの設計座標とその誤差からずれ量を算出し、設計穴座標にずれ量を補正値として加算した座標に位置決めして穴加工することで部品の取り数を低減することなく高精度に穴加工ができる。
【0081】
なお、基板5の材質が変更されず、かつ製造工程が安定している場合、代表的なたとえば図2においてP1、P5,P9、P13の4点だけに位置きめマークを配置し、他のマークのずれ量は定数でもよい。
【0082】
また、上記では図形P1−P3−P9−P7を長方形として説明したが、図形P1−P3−P9−P7は平行四辺形であってもよい。
【0083】
また、2次元曲面の式を4次式としたが、ずれ量が単純であれば低次で複雑であれば高次の式に変更してもよい。
【0084】
また、基準マークの配置は説明では等ピッチ間隔としたが、配置は一部に集中しないように配置することが望ましいが任意の位置に設定してもよい。
【0085】
また、基準マークの配置は説明では矩形基板の4辺に平行した一直線上に並んだ事例で説明したが、必ずしも一直線上ある配置である必要はない。
【0086】
また、基準マークの配置は多数の加工穴の周囲としたが、製品部のある部分を基準マークの代用としてもよい。
【0087】
また、基準マークの設計座標とその座標のずれ量からプリント配線基板の座標とその座標に対する位置ずれの関係を算出したが、基準マークの測定座標とその座標のずれ量からずれ量から算出してもよい。
【0088】
また、加工するには同一位置に一もしくは複数のレーザパルスを照射して加工すると穴を構成する外周および内部に複数のレーザパルスを照射して加工するトレパニング加工がある。このトレパニング加工において穴を構成する外周および内部の位置決めにそれぞれの規定された座標に対して補正量を算出して、規定された座標に算出された補正量を加算してこの位置に加工するようにしてもよい。このトレパニング加工における穴形状は任意形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は製品の取り数を低減することなく、高精度に加工することができ、プリント配線基板などを加工するレーザ加工装置とレーザ加工方法に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 入力部
2 制御部
3 レーザ光
4 レーザ発振部
5 被加工物
6 加工テーブル部
7 ガルバノスキャナ部
8 集光レンズ
9 ミラー
10 基準マーク
11 カメラ部
12 主制御部
13 レーザ制御部
14 加工テーブル制御部
15 ガルバノ制御部
16 位置検出部
17 シーケンス部
18 光学位置決め部
19 基準マーク座標記憶部
20 加工穴座標記憶部
21 誤差算出部
22 誤差特性算出部
23 係数記憶部
24 指令位置作成部
25 位置指令部
P1〜P16 基準マーク
Δxi 基準マークPiにおけるX方向のずれ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を予め決められた2次元の穴加工位置データに基づいて穴加工するに先立ち、前記被加工物の変形や保持位置ずれに追随するように前記穴加工位置データを補正するレーザ加工方法であって、
前記被加工物の表面、もしくは内部の予め規定された位置に前記穴加工位置の多数を囲む基準マークを印し、
穴加工工程において前記基準マークの位置を計測し、
規定された基準マーク位置データに対する測定された基準マーク位置データの誤差をそれぞれの基準マークに対して求め、
誤差を一または複数変数のべき乗と係数の積で表される項の所定数の和で構成された式で関係付けし、
前記式を構成している係数の数以上前記基準マークを設け、
それぞれの前記基準マークに対し前記誤差と前記式の差分を2乗し、
全ての前記基準マークに対して前記誤差と前記式の差分を2乗した式の総和をとり、前記総和が最小となるように前記係数を求め、
前記式と算出された前記係数から構成される補正量算出式と前記加工穴位置データとから加工すべく穴位置に対する補正量を求め、
前記穴加工位置データに前記補正量を加算した新穴加工位置データを求め、
前記穴加工位置データを新穴加工位置データに置き換えて加工することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ加工方法を実施するレーザ加工装置であって、
被加工物に対して予め決められた2次元の穴加工位置データを獲得する基準マーク獲得手段と、
前記被加工物の表面、もしくは内部の予め規定された位置に前記穴加工位置の多数を囲むように印された基準マークの位置を穴加工工程において計測する基準マーク位置計測手段と、
規定された基準マーク位置データに対する測定された基準マーク位置データの誤差をそれぞれの基準マークに対して求める誤差算出手段と、
誤差を一または複数変数のべき乗と係数の積で表される項の所定数の和で構成された式で関係付けし、前記式を構成している係数の数以上に設けたそれぞれの前記基準マークに対し、前記誤差と前記式の差分を2乗し、全ての前記基準マークに対して前記誤差と前記式の差分を2乗した式の総和をとり、前記総和が最小となるように前記係数を求める誤差特性算出手段と、
前記式と算出された前記係数から構成される補正量算出式と前記加工穴位置データとから加工すべく穴位置に対する補正量を求め補正量算出手段と、
前記穴加工位置データに前記補正量を加算した新穴加工位置データを求める位置指令算出手段と、
前記新穴加工位置データを位置指令とする位置指令手段とを有したことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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