レーザ加工方法
【課題】加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させる。
【解決手段】本実施形態では、加工対象物1にレーザ光を照射することにより、加工対象物1の刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って改質領域7を形成した後、加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、改質領域7に含まれる又は改質領域7から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させ、そして、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から離間移動させる。ここで、改質領域7は、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って繋がるよう形成されると共に、加工対象物1の表面3側にて露出される。このように、本実施形態においては、外部応力を印加することなく刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から刳り貫くよう加工できると共に、エッチング処理によって、改質領域7の形成に伴って生じる亀裂を除去できる。
【解決手段】本実施形態では、加工対象物1にレーザ光を照射することにより、加工対象物1の刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って改質領域7を形成した後、加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、改質領域7に含まれる又は改質領域7から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させ、そして、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から離間移動させる。ここで、改質領域7は、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って繋がるよう形成されると共に、加工対象物1の表面3側にて露出される。このように、本実施形態においては、外部応力を印加することなく刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から刳り貫くよう加工できると共に、エッチング処理によって、改質領域7の形成に伴って生じる亀裂を除去できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関し、特に、加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ加工方法としては、板状の加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、加工対象物の内部に改質領域を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような加工方法を利用して改質領域が形成された加工対象物に対し外部応力を印加することにより、改質領域を起点として加工対象物を複数のチップに分断させることが図られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−111800号公報
【特許文献2】特開2004−343008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、上述したようなレーザ加工方法では、加工対象物の内部に形成した改質領域を利用して加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工する場合がある。しかし、この場合、加工対象物に亀裂や破損が生じ、加工後の加工対象物における強度及び品質が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることができるレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して、加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法であって、加工対象物にレーザ光を照射することにより、加工対象物における所定部分の外形に沿って改質領域を形成するレーザ光照射工程と、レーザ光照射工程の後、加工対象物にエッチング処理を施すことにより、改質領域に含まれる又は改質領域から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させるエッチング処理工程と、エッチング処理工程の後、所定部分を加工対象物から離間移動させる離間移動工程と、を有し、レーザ光照射工程では、外形に沿って亀裂が繋がるように改質領域を形成すると共に、加工対象物の外表面側にて亀裂を露出させることを特徴とする。
【0007】
このレーザ加工方法では、外部応力を印加することなく所定部分を加工対象物から刳り貫くよう加工できるため、外部応力の印加によって加工対象物が破損或いは強度低下するのを抑制することができる。さらに、エッチング処理工程によって、改質領域の形成に伴って生じる亀裂を加工後の加工対象物から除去できる。従って、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることが可能となる。
【0008】
また、レーザ光照射工程では、加工対象物においてレーザ光の照射方向における第1深さ位置に第1改質領域を形成した後、加工対象物において第1深さ位置よりもレーザ光照射面側の第2深さ位置に第2改質領域を形成することが好ましい。この場合、既成の第1改質領域の影響が第2改質領域の形成に及ぶのを抑制することができ、第2改質領域を精度よく形成することが可能となる。
【0009】
また、レーザ光照射工程では、レーザ光の照射方向と直交する一方向に沿ってレーザ光の集光点を相対移動させながらレーザ光を照射する工程を、照射方向における集光点の深さ位置を変えて繰り返し実施する第1工程と、第1工程を、照射方向及び一方向と直交する他方向における集光点の位置を変えて繰り返し実施する第2工程と、を含むことが好ましい。この場合、レーザ光照射工程のタクトタイムを短縮することができる。
【0010】
また、所定部分の外形形状は、加工対象物の一表面側に行くに従って拡がるように該一表面の直交方向に対し傾斜するテーパ部を有していることが好ましい。この場合、離間移動工程において、例えば所定部分を一表面側から抜き取るように移動させることで、所定部分を加工対象物から容易に離間移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】エッチング剤の一例を示す図表である。
【図8】(a)は加工対象物を示す平面図、(b)は図8(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図9】(a)は第1実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図9(a)の続きを示す側面図、(c)は図9(b)の続きを示す側面図である。
【図10】(a)は図9(c)の続きを示す平面図、(b)は図10(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図11】(a)は図10の続きを示す平面図、(b)は図11(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図12】(a)は図11の続きを示す側面図、(b)は図12(a)の続きを示す側面図、(c)は図12(b)の続きを示す側面図である。
【図13】(a)は図12(c)の続きを示す平面図、(b)は図13(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図14】(a)は第1実施形態の変形例を示す側面図、(b)は第1実施形態の他の変形例を示す側面図、(c)は第1実施形態のさらに他の変形例を示す側面図である。
【図15】(a)は第1実施形態の別の変形例を示す側面図、(b)は図15(a)の続きを示す側面図である。
【図16】第1実施形態のさらに別の変形例を示す側面図である。
【図17】(a)は第2実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図17(a)の続きを示す側面図、(c)は図17(b)の続きを示す側面図である。
【図18】図17(c)の続きを示す側面図である。
【図19】第2実施形態の変形例を示す側面図である。
【図20】(a)は第3実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図20(a)の続きを示す側面図、(c)は図20(b)の続きを示す側面図、(d)は図20(c)の続きを示す側面図である。
【図21】図20(d)の続きを示す側面図である。
【図22】(a)は第3実施形態の変形例を示す側面図、(b)は第3実施形態の他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係るレーザ加工方法では、加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
【0015】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0016】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された板状の加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して改質領域形成予定部5に沿って相対移動させられる。これにより、改質領域形成予定部5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0017】
加工対象物1としては、半導体材料や圧電材料等が用いられ、図2に示すように、加工対象物1には、改質領域形成予定部5が設定されている。ここでの改質領域形成予定部5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを改質領域形成予定部5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が改質領域形成予定部5に沿って加工対象物1の内部に形成され、この改質領域7が、後述のエッチングによる除去領域8となる。
【0018】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、改質領域形成予定は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、曲面状や平面状の3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0019】
ちなみに、ここでは、レーザ光Lが、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0020】
ところで、本実施形態に係るレーザ加工装置で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。さらに、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0021】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更にそれら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)を含む、又はこれらからなるものが挙げられる。
【0022】
ここで、本実施形態では、加工対象物1に改質領域7を形成した後、この加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、改質領域7に含まれる又は改質領域7から延びる亀裂(クラック、微小クラック、割れ等とも称される。以下、単に「亀裂」という)に沿ってエッチングを選択的に進展させ、加工対象物1において所定部分(刳貫き部分)の外形に対応する領域を除去する。
【0023】
具体的には、本実施形態のエッチング処理では、毛細管現象等を利用して、加工対象物1の改質領域7に含まれる又は該改質領域7から延びる亀裂にエッチング剤を浸潤させ、亀裂面に沿ってエッチングを進展させる。これにより、加工対象物1では、亀裂に沿って選択的且つ高いエッチングレートでエッチングを進展させ除去する。これと共に、改質領域7のエッチングレートが高いという特徴を利用して、改質領域7に沿っても選択的にエッチングを進展させ除去する。
【0024】
この本実施形態のエッチング処理としては、エッチング剤に加工対象物を浸漬する場合(ディッピング方式:Dipping)と、加工対象物を回転させつつエッチング剤を塗布する場合(スピンエッチング方式:SpinEtching)とがある。
【0025】
図7は、用いられるエッチング剤の一例を基板の材質別に示す図表である。エッチング剤は、常温〜100℃前後の温度で用いられ、必要とされるエッチングレート等に応じて適宜の温度に設定されるものである。例えば、Si(異方性)をKOHでエッチング処理する場合には、好ましいとして、約60℃とされる。また、エッチング剤は、液体状のものだけでなく、ゲル状(ゼリー状,半固形状)のものを用いることができる。
【0026】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図8は本実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物を示す図であり、図9〜13は本実施形態のレーザ加工方法を示すフロー図である。
【0027】
図8〜13に示すように、本実施形態は、例えばデバイス基板31(図13参照)上に積層されるディスプレイ用又は保護用プレートを製造する加工方法であり、デバイス基板31のデバイス32(図13参照)を外部に露出させるため、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q1,Q2を刳り貫くよう加工する。ここでの刳貫き部分Q1,Q2は、加工対象物1の厚さ方向を軸方向とする円柱状とされ、刳貫き部分Q2の径は、刳貫き部分Q1の径よりも小径とされている。
【0028】
なお、以下の説明においては、加工対象物1の厚さ方向(レーザ光Lの照射方向)がZ方向とされ、加工対象物1のレーザ光照射面である表面3に沿う一方向(レーザ光Lの照射方向と直交する方向)がX方向とされ、X,Z方向に直交する他方向(レーザ光Lの照射方向及び一方向と直交する方向)がY方向とされている。
【0029】
図8に示すように、加工対象物1は、照射するレーザ光Lの波長に対して透明な板状部材であり、本実施形態の加工対象物1としては、矩形板状のガラス基板が用いられている。また、ここでは、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って座標指定された改質領域形成予定部5が、加工対象物1に3次元的に設けられている。
【0030】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図9(a)に示すように、加工対象物1の裏面21に保持テープ16を貼り付け、この加工対象物1の表面3側を上方にして載置台に載置する。
【0031】
続いて、加工対象物1の裏面21側のZ方向位置にレーザ光Lの集光点(以下、単に「集光点」という)を合わせると共に、この集光点をX方向に相対移動させる。これに併せて、改質領域形成予定部5(図8参照)に改質領域7が形成されるようレーザ光LをON・OFF照射する。具体的には、集光点が刳貫き部分Q1,Q2の外形位置にてレーザ光Lを照射(ON)すると共に、その他の位置でレーザ光Lを非照射(OFF)とする。
【0032】
これにより、加工対象物1の裏面21側のZ方向位置(第1深さ位置)において、裏面21に露出する改質領域(第1改質領域)7がX方向に沿って間欠的に形成される。なお、ここでは、パルスレーザ光をレーザ光Lとしてスポット照射することから、形成される改質領域7は改質スポットで構成されている。また、改質領域7には、該改質領域7から発生した亀裂が内包されて形成されている(以下の改質領域について同じ)。
【0033】
続いて、図9(b)に示すように、集光点のZ方向位置を表面3側に移動し変更した後、集光点をX方向に相対移動しながら、改質領域形成予定部5に改質領域7が形成されるようレーザ光LをON・OFF(オンオフ)照射する。これにより、既成の改質領域7よりも表面3側のZ方向位置(第2深さ位置)にて該既成の改質領域7に繋がるように、改質領域(第2改質領域)7が新たに形成される。換言すると、新たに改質領域7を形成し、該改質領域7に内包される亀裂と裏面21側に既成の改質領域7に内包された亀裂とを互いに繋げる。
【0034】
続いて、上述したレーザ光LのON・OFF照射を、裏面21側から表面3側の順で集光点のZ方向位置を変えて繰り返し行う(第1工程)。これにより、図9(c)に示すように、Y方向から見て加工対象物1内でZ方向に沿って延び且つ互いに繋がる改質領域7が、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って形成される。
【0035】
なお、レーザ光LのON・OFF照射時における集光点の相対移動を裏面21側から表面3側の順で繰り返し行う際には、タクトタイムの短縮のため、X方向に往復するように集光点を相対移動させるのが好ましい。つまり、集光点をX方向の一方向に相対移動させつつレーザ光LをON・OFF照射した後には、集光点をX方向の他方向に相対移動させつつレーザ光LをON・OFF照射するのが好ましい。
【0036】
続いて、上述した図9(a)〜(c)に示す工程を、Y方向におけるレーザ光Lの集光点位置を変えて繰り返し実施する(第2工程)。その結果、加工対象物1の内部において同一のXY面上でも互いに繋がる改質領域7が、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って形成される。すなわち、改質領域7は、図10に示すように、円柱形状の刳貫き部分Q1,Q2それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて露出している。この改質領域7は、Y方向(X方向)視においてZ方向に沿って延びると共に、Z方向視において曲線又は円弧状に延びる部分を有している。
【0037】
続いて、図11に示すように、改質領域7が形成された加工対象物1にエッチング処理を施す(エッチング処理工程)。具体的には、表面3及び裏面21に露出した改質領域7からエッチング剤を内部に浸潤させ、改質領域7及び該改質領域7に内包された亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させ、加工対象物1における刳貫き部分Q1,Q2の外形に対応する領域を除去する。
【0038】
続いて、図12(a)に示すように、加工対象物1の表面3にリムーブ用テープ17を貼り付け、図12(b)に示すように、リムーブ用テープ17を持ち上げるよう移動させることで、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1からリムーブ(離間移動)させる(離間移動工程)。最後に、図12(c)に示すように、加工対象物1を保持テープ16からリムーブさせる。
【0039】
以上により、加工対象物1の刳貫き部分Q1,Q2が刳り貫かれるよう加工され、加工対象物1に貫通孔33が形成されることとなる。その後、図13に示すように、加工後の加工対象物1´にあっては、デバイス基板31のデバイス32上に貫通孔33が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0040】
以上、本実施形態によれば、外部応力を印加することなく刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から刳り貫くよう加工できるため、外部応力の印加によって加工対象物1が破損或いは強度低下するのを抑制することができる。さらに、改質領域7及び該改質領域7に内包された亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させることから、この亀裂を加工後の加工対象物1´から除去できるため、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させることが可能となる。また、切削加工時のように加工による粉塵が発生しないため、環境に配慮した加工方法を実現できる。
【0041】
また、本実施形態では、上述したように、改質領域7を形成した後、この既成の改質領域7よりも表面3側に新たな改質領域7を形成することから、既成の改質領域7の影響が新たに形成する改質領域7に及ぶのを抑制することができる。よって、改質領域7を精度よく形成することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、上述したように、X方向に沿って集光点を相対移動させながらレーザ光Lを照射する工程を、集光点のZ方向位置を変えて繰り返し実施する(図9(a)〜(c)参照)。そして、この図9(a)〜(c)に示す工程を、集光点のY方向位置を変えて繰り返し実施することで、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って改質領域7を加工対象物1に形成する。よって、集光点の移動の無駄を抑制して迅速な加工が可能となり、タクトタイム(加工時間)の短縮化ひいては低コスト化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上述したように、レーザ光Lの照射で加工対象物1の内部に形成した改質領域7を利用することから、加工対象物1を3次元的に自由に刳貫き加工することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、図10に示すように、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて改質領域7を露出させたが、これに代えて、図14(a)に示すように、加工対象物1の表面3側にて改質領域7から延びる亀裂C1を露出させてもよいし、図14(b)に示すように、加工対象物1の裏面21側にて改質領域7から延びる亀裂C2を露出させてもよい。さらに、図14(c)に示すように、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて改質領域7から延びる亀裂C1,C2をそれぞれ露出させてもよい。要は、エッチングの際にエッチング剤を内部に浸潤させるため、改質領域7に内包される又は改質領域7から延びる亀裂が加工対象物1の外表面に至っていればよい。
【0045】
また、本実施形態では、上述したように、リムーブ用テープ17(図12参照)を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせたが、図15に示すように、ポーラスチャック等のエア吸着部35を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせてもよい。
【0046】
具体的には、加工対象物1にエッチング処理を施した後、図15(a)に示すように、加工対象物1を上下反転し、表面3をエア吸着部35に吸着させる。そして、図15(b)に示すように、保持テープ16を持ち上げるよう移動することで、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1からリムーブさせてもよい。
【0047】
また或いは、加工対象物1にエッチング処理を施した後、図16に示すように、粘着ローラ36を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせてもよい。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0049】
本実施形態では、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫くよう加工する。ここでの刳貫き部分Q3,Q4は、表面3を底面とする円錐台形状とされている。つまり、刳貫き部分Q3,Q4は、加工対象物1の表面3(一表面)に行くに従って拡がるようZ方向(表面3の直交方向)に対し傾斜するテーパ部55を側面に有している
【0050】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図17(a)に示すように、加工対象物1にレーザ光Lを照射することにより、加工対象物1における刳貫き部分Q3,Q4の外形に沿って改質領域57を形成する。改質領域57は、円錐台形状である刳貫き部分Q3,Q4それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3側及び裏面21側にて露出している。この改質領域57は、Y方向(X方向)視においてZ方向に対し傾斜する段々状に形成されている。
【0051】
続いて、図17(b)に示すように、改質領域57が形成された加工対象物1にエッチング処理を施し、加工対象物1の改質領域57を除去した後、図17(c)に示すように、刳貫き部分Q3,Q4を表面3側から抜き取るように移動させて加工対象物1からリムーブさせる。これにより、加工対象物1の刳貫き部分Q3,Q4が刳り貫かれるよう加工され、図18に示すように、加工対象物1に貫通孔43が形成されることとなる。そして、この加工後の加工対象物1´は、デバイス32上に貫通孔43が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0052】
以上、本実施形態においても、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させるという上記作用効果が奏される。
【0053】
また、本実施形態では、上述したように、Y方向視においてZ方向に対し傾斜する改質領域57を加工対象物1に形成し、テーパ部55を有する刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫いている。よって、次の作用効果を奏する。すなわち、刳貫き部分Q3,Q4を表面3側から抜き取るように移動させることが容易となり、加工対象物1から容易にリムーブさせることが可能となる。さらに、加工後に加工対象物1´がデバイス基板31に積層されたとき(図18参照)、その角部が面取りされるように構成されるため、加工対象物1´が衝撃によって欠けるのを抑制することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、図19に示すように、側面視において、表面3側の一部のみを傾斜させ且つその他をZ方向に沿うように改質領域57を形成し、表面3側にのみテーパ部55が形成された刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫くよう加工してもよい。要は、刳貫き部分Q3,Q4は、Z方向に対し傾斜するテーパ部55を有していればよい。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0056】
本実施形態では、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q5,Q6を刳り貫くよう加工する。刳貫き部分Q5は、表面3側の刳貫き部分Q5a及び裏面21側の刳貫き部分Q5bを含んでおり、刳貫き部分Q6は、表面3側の刳貫き部分Q6a及び裏面21側の刳貫き部分Q6bを含んでいる。
【0057】
刳貫き部分Q5a,Q6aは、表面3を底面とする円錐台形状とされ、加工対象物1の表面3側に行くに従って拡がるようZ方向に対し傾斜するテーパ部71を側面に有している。一方、刳貫き部分Q5b,Q6bは、裏面21を底面とする円錐台形状とされ、加工対象物1の裏面21側に行くに従って拡がるようZ方向に対し傾斜するテーパ部72を側面に有している。
【0058】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図20(a)に示すように、加工対象物1にレーザ光Lを照射することにより、加工対象物1における刳貫き部分Q5,Q6の外形に沿って改質領域77を形成するのに加え、刳貫き部分Q5内の刳貫き部分Q5a,Q5b間のXY面に沿って改質領域78を形成すると共に、刳貫き部分Q6内の刳貫き部分Q6a,Q6b間のXY面に沿って改質領域78を形成する。
【0059】
改質領域77は、円錐台形状の刳貫き部分Q5,Q6それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて露出している。この改質領域77は、Y方向(X方向)視において屈曲するように延びている。改質領域78は、改質領域77内のZ方向中央位置にて、刳貫き部分Q5a,Q5bを画成するようにXY面に沿って延び、改質領域77と繋がっている。この改質領域78は、Y方向(X方向)視においてX方向(Y方向)沿った直線状に形成されていると共に、Z方向視において円形状に形成されている。
【0060】
続いて、加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、図20(b)に示すように、加工対象物1の改質領域77を除去した後、図20(c)に示すように、加工対象物1の改質領域78を除去する。続いて、図20(d)に示すように、刳貫き部分Q5a,Q6aを表面3側から抜き取るように移動させて加工対象物1からリムーブさせると共に、刳貫き部分Q5b,Q6bを裏面21側から抜き取るように移動させ、これらを加工対象物1からリムーブさせる。
【0061】
これにより、加工対象物1の刳貫き部分Q5,Q6が刳り貫くよう加工され、図21に示すように、加工対象物1に貫通孔53が形成されることとなる。そして、この加工後の加工対象物1´は、デバイス32上に貫通孔53が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0062】
以上、本実施形態においても、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させるという上記作用効果が奏される。
【0063】
また、本実施形態では、上述したように、Y方向視において屈曲するよう延びる改質領域77を加工対象物1に形成し、テーパ部71,72を有する刳貫き部分Q5,Q6を刳り貫いている。よって、次の作用効果を奏する。すなわち、刳貫き部分Q5a,Q6aを表面3側から抜き取るように移動させることが容易となると共に、刳貫き部分Q5b,Q6bを裏面21側から抜き取るように移動させることが容易となり、加工対象物1から刳抜き部分Q5,Q6を容易にリムーブさせることが可能となる。さらに、加工後に加工対象物1´がデバイス基板31に積層されたとき(図21参照)、その角部が面取りされるように構成されるため、加工対象物1´が衝撃によって欠けるのを抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、図22(a)に示すように、改質領域78から表面3に至る亀裂C3が発生するように改質領域78を形成してもよい。この場合、亀裂C3によってエッチング剤を内部に浸潤させ、改質領域78に沿ったエッチングの進展を容易化及び迅速化できる。ちなみに、この場合、改質領域78から表面3に至る亀裂C3に代えて、改質領域78から裏面21に至る亀裂を発生させてもよい。
【0065】
また、本実施形態の改質領域77は、図22(b)に示すように、Y方向(X方向)視において、表面3側及び裏面21側の一部が傾斜され、その間がZ方向に沿うように構成されていてもよい。換言すると、刳貫き部分Q5a,Q6aがその表面3側の一部にテーパ部71を有し、刳貫き部分Q5b,Q6bがその裏面21側の一部にテーパ部72を有していればよい。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係るレーザ加工方法は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0067】
例えば、改質領域を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面21であってもよい。また、上記実施形態では、2つの刳貫き部分を同時に刳り貫くよう加工したが、刳貫き部分の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0068】
また、上記実施形態は、加工対象物に貫通孔を形成するための加工であるが、これに限定されるものではなく、加工対象物の外形加工のための加工であってもよい。つまり、刳貫き部分(所定部分)を製造物としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、刳貫き部分の外形に沿って改質領域自体を繋げているが、改質領域7に含まれる又は該改質領域から延びる亀裂が刳貫き部分の外形に沿って繋がればよい。
【0070】
また、上記実施形態でのレーザ光LのON・OFF照射は、レーザ光Lの出射のON・OFFを制御する他に、レーザ光Lの光路上に設けられたシャッタを開閉したり、加工対象物1の表面3をマスキングしたり等して実施してもよい。さらに、レーザ光Lの強度を、改質領域が形成される閾値(加工閾値)以上の強度と加工閾値未満の強度との間で制御してもよい。
【0071】
また、本発明においては、所定のZ方向位置にて集光点を合わせつつ該集光点を改質領域形成予定部に沿ってX方向及びY方向に移動させながらレーザ光Lを照射する工程を、集光点のZ方向位置を変えて繰り返し行うことで、刳貫き部分の外形に沿って改質領域を形成する場合もある。
【符号の説明】
【0072】
1…加工対象物、3…表面(一表面,外表面)、7,57,77…改質領域(第1改質領域,第2改質領域)、21…裏面(一表面,外表面)、55,71、72…テーパ部、78…改質領域、C1〜C3…亀裂、L…レーザ光、P…集光点、Q1〜Q6…刳貫き部分(所定部分)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関し、特に、加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ加工方法としては、板状の加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、加工対象物の内部に改質領域を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような加工方法を利用して改質領域が形成された加工対象物に対し外部応力を印加することにより、改質領域を起点として加工対象物を複数のチップに分断させることが図られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−111800号公報
【特許文献2】特開2004−343008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、上述したようなレーザ加工方法では、加工対象物の内部に形成した改質領域を利用して加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工する場合がある。しかし、この場合、加工対象物に亀裂や破損が生じ、加工後の加工対象物における強度及び品質が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることができるレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して、加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法であって、加工対象物にレーザ光を照射することにより、加工対象物における所定部分の外形に沿って改質領域を形成するレーザ光照射工程と、レーザ光照射工程の後、加工対象物にエッチング処理を施すことにより、改質領域に含まれる又は改質領域から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させるエッチング処理工程と、エッチング処理工程の後、所定部分を加工対象物から離間移動させる離間移動工程と、を有し、レーザ光照射工程では、外形に沿って亀裂が繋がるように改質領域を形成すると共に、加工対象物の外表面側にて亀裂を露出させることを特徴とする。
【0007】
このレーザ加工方法では、外部応力を印加することなく所定部分を加工対象物から刳り貫くよう加工できるため、外部応力の印加によって加工対象物が破損或いは強度低下するのを抑制することができる。さらに、エッチング処理工程によって、改質領域の形成に伴って生じる亀裂を加工後の加工対象物から除去できる。従って、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることが可能となる。
【0008】
また、レーザ光照射工程では、加工対象物においてレーザ光の照射方向における第1深さ位置に第1改質領域を形成した後、加工対象物において第1深さ位置よりもレーザ光照射面側の第2深さ位置に第2改質領域を形成することが好ましい。この場合、既成の第1改質領域の影響が第2改質領域の形成に及ぶのを抑制することができ、第2改質領域を精度よく形成することが可能となる。
【0009】
また、レーザ光照射工程では、レーザ光の照射方向と直交する一方向に沿ってレーザ光の集光点を相対移動させながらレーザ光を照射する工程を、照射方向における集光点の深さ位置を変えて繰り返し実施する第1工程と、第1工程を、照射方向及び一方向と直交する他方向における集光点の位置を変えて繰り返し実施する第2工程と、を含むことが好ましい。この場合、レーザ光照射工程のタクトタイムを短縮することができる。
【0010】
また、所定部分の外形形状は、加工対象物の一表面側に行くに従って拡がるように該一表面の直交方向に対し傾斜するテーパ部を有していることが好ましい。この場合、離間移動工程において、例えば所定部分を一表面側から抜き取るように移動させることで、所定部分を加工対象物から容易に離間移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工後の加工対象物における強度及び品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。
【図3】図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】レーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図5】図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】エッチング剤の一例を示す図表である。
【図8】(a)は加工対象物を示す平面図、(b)は図8(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図9】(a)は第1実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図9(a)の続きを示す側面図、(c)は図9(b)の続きを示す側面図である。
【図10】(a)は図9(c)の続きを示す平面図、(b)は図10(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図11】(a)は図10の続きを示す平面図、(b)は図11(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図12】(a)は図11の続きを示す側面図、(b)は図12(a)の続きを示す側面図、(c)は図12(b)の続きを示す側面図である。
【図13】(a)は図12(c)の続きを示す平面図、(b)は図13(a)の加工対象物を示す側面図である。
【図14】(a)は第1実施形態の変形例を示す側面図、(b)は第1実施形態の他の変形例を示す側面図、(c)は第1実施形態のさらに他の変形例を示す側面図である。
【図15】(a)は第1実施形態の別の変形例を示す側面図、(b)は図15(a)の続きを示す側面図である。
【図16】第1実施形態のさらに別の変形例を示す側面図である。
【図17】(a)は第2実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図17(a)の続きを示す側面図、(c)は図17(b)の続きを示す側面図である。
【図18】図17(c)の続きを示す側面図である。
【図19】第2実施形態の変形例を示す側面図である。
【図20】(a)は第3実施形態に係るレーザ加工方法を示す側面図、(b)は図20(a)の続きを示す側面図、(c)は図20(b)の続きを示す側面図、(d)は図20(c)の続きを示す側面図である。
【図21】図20(d)の続きを示す側面図である。
【図22】(a)は第3実施形態の変形例を示す側面図、(b)は第3実施形態の他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係るレーザ加工方法では、加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
【0015】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
【0016】
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された板状の加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して改質領域形成予定部5に沿って相対移動させられる。これにより、改質領域形成予定部5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
【0017】
加工対象物1としては、半導体材料や圧電材料等が用いられ、図2に示すように、加工対象物1には、改質領域形成予定部5が設定されている。ここでの改質領域形成予定部5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを改質領域形成予定部5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が改質領域形成予定部5に沿って加工対象物1の内部に形成され、この改質領域7が、後述のエッチングによる除去領域8となる。
【0018】
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、改質領域形成予定は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、曲面状や平面状の3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
【0019】
ちなみに、ここでは、レーザ光Lが、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
【0020】
ところで、本実施形態に係るレーザ加工装置で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。さらに、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
【0021】
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更にそれら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)を含む、又はこれらからなるものが挙げられる。
【0022】
ここで、本実施形態では、加工対象物1に改質領域7を形成した後、この加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、改質領域7に含まれる又は改質領域7から延びる亀裂(クラック、微小クラック、割れ等とも称される。以下、単に「亀裂」という)に沿ってエッチングを選択的に進展させ、加工対象物1において所定部分(刳貫き部分)の外形に対応する領域を除去する。
【0023】
具体的には、本実施形態のエッチング処理では、毛細管現象等を利用して、加工対象物1の改質領域7に含まれる又は該改質領域7から延びる亀裂にエッチング剤を浸潤させ、亀裂面に沿ってエッチングを進展させる。これにより、加工対象物1では、亀裂に沿って選択的且つ高いエッチングレートでエッチングを進展させ除去する。これと共に、改質領域7のエッチングレートが高いという特徴を利用して、改質領域7に沿っても選択的にエッチングを進展させ除去する。
【0024】
この本実施形態のエッチング処理としては、エッチング剤に加工対象物を浸漬する場合(ディッピング方式:Dipping)と、加工対象物を回転させつつエッチング剤を塗布する場合(スピンエッチング方式:SpinEtching)とがある。
【0025】
図7は、用いられるエッチング剤の一例を基板の材質別に示す図表である。エッチング剤は、常温〜100℃前後の温度で用いられ、必要とされるエッチングレート等に応じて適宜の温度に設定されるものである。例えば、Si(異方性)をKOHでエッチング処理する場合には、好ましいとして、約60℃とされる。また、エッチング剤は、液体状のものだけでなく、ゲル状(ゼリー状,半固形状)のものを用いることができる。
【0026】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図8は本実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物を示す図であり、図9〜13は本実施形態のレーザ加工方法を示すフロー図である。
【0027】
図8〜13に示すように、本実施形態は、例えばデバイス基板31(図13参照)上に積層されるディスプレイ用又は保護用プレートを製造する加工方法であり、デバイス基板31のデバイス32(図13参照)を外部に露出させるため、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q1,Q2を刳り貫くよう加工する。ここでの刳貫き部分Q1,Q2は、加工対象物1の厚さ方向を軸方向とする円柱状とされ、刳貫き部分Q2の径は、刳貫き部分Q1の径よりも小径とされている。
【0028】
なお、以下の説明においては、加工対象物1の厚さ方向(レーザ光Lの照射方向)がZ方向とされ、加工対象物1のレーザ光照射面である表面3に沿う一方向(レーザ光Lの照射方向と直交する方向)がX方向とされ、X,Z方向に直交する他方向(レーザ光Lの照射方向及び一方向と直交する方向)がY方向とされている。
【0029】
図8に示すように、加工対象物1は、照射するレーザ光Lの波長に対して透明な板状部材であり、本実施形態の加工対象物1としては、矩形板状のガラス基板が用いられている。また、ここでは、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って座標指定された改質領域形成予定部5が、加工対象物1に3次元的に設けられている。
【0030】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図9(a)に示すように、加工対象物1の裏面21に保持テープ16を貼り付け、この加工対象物1の表面3側を上方にして載置台に載置する。
【0031】
続いて、加工対象物1の裏面21側のZ方向位置にレーザ光Lの集光点(以下、単に「集光点」という)を合わせると共に、この集光点をX方向に相対移動させる。これに併せて、改質領域形成予定部5(図8参照)に改質領域7が形成されるようレーザ光LをON・OFF照射する。具体的には、集光点が刳貫き部分Q1,Q2の外形位置にてレーザ光Lを照射(ON)すると共に、その他の位置でレーザ光Lを非照射(OFF)とする。
【0032】
これにより、加工対象物1の裏面21側のZ方向位置(第1深さ位置)において、裏面21に露出する改質領域(第1改質領域)7がX方向に沿って間欠的に形成される。なお、ここでは、パルスレーザ光をレーザ光Lとしてスポット照射することから、形成される改質領域7は改質スポットで構成されている。また、改質領域7には、該改質領域7から発生した亀裂が内包されて形成されている(以下の改質領域について同じ)。
【0033】
続いて、図9(b)に示すように、集光点のZ方向位置を表面3側に移動し変更した後、集光点をX方向に相対移動しながら、改質領域形成予定部5に改質領域7が形成されるようレーザ光LをON・OFF(オンオフ)照射する。これにより、既成の改質領域7よりも表面3側のZ方向位置(第2深さ位置)にて該既成の改質領域7に繋がるように、改質領域(第2改質領域)7が新たに形成される。換言すると、新たに改質領域7を形成し、該改質領域7に内包される亀裂と裏面21側に既成の改質領域7に内包された亀裂とを互いに繋げる。
【0034】
続いて、上述したレーザ光LのON・OFF照射を、裏面21側から表面3側の順で集光点のZ方向位置を変えて繰り返し行う(第1工程)。これにより、図9(c)に示すように、Y方向から見て加工対象物1内でZ方向に沿って延び且つ互いに繋がる改質領域7が、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って形成される。
【0035】
なお、レーザ光LのON・OFF照射時における集光点の相対移動を裏面21側から表面3側の順で繰り返し行う際には、タクトタイムの短縮のため、X方向に往復するように集光点を相対移動させるのが好ましい。つまり、集光点をX方向の一方向に相対移動させつつレーザ光LをON・OFF照射した後には、集光点をX方向の他方向に相対移動させつつレーザ光LをON・OFF照射するのが好ましい。
【0036】
続いて、上述した図9(a)〜(c)に示す工程を、Y方向におけるレーザ光Lの集光点位置を変えて繰り返し実施する(第2工程)。その結果、加工対象物1の内部において同一のXY面上でも互いに繋がる改質領域7が、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って形成される。すなわち、改質領域7は、図10に示すように、円柱形状の刳貫き部分Q1,Q2それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて露出している。この改質領域7は、Y方向(X方向)視においてZ方向に沿って延びると共に、Z方向視において曲線又は円弧状に延びる部分を有している。
【0037】
続いて、図11に示すように、改質領域7が形成された加工対象物1にエッチング処理を施す(エッチング処理工程)。具体的には、表面3及び裏面21に露出した改質領域7からエッチング剤を内部に浸潤させ、改質領域7及び該改質領域7に内包された亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させ、加工対象物1における刳貫き部分Q1,Q2の外形に対応する領域を除去する。
【0038】
続いて、図12(a)に示すように、加工対象物1の表面3にリムーブ用テープ17を貼り付け、図12(b)に示すように、リムーブ用テープ17を持ち上げるよう移動させることで、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1からリムーブ(離間移動)させる(離間移動工程)。最後に、図12(c)に示すように、加工対象物1を保持テープ16からリムーブさせる。
【0039】
以上により、加工対象物1の刳貫き部分Q1,Q2が刳り貫かれるよう加工され、加工対象物1に貫通孔33が形成されることとなる。その後、図13に示すように、加工後の加工対象物1´にあっては、デバイス基板31のデバイス32上に貫通孔33が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0040】
以上、本実施形態によれば、外部応力を印加することなく刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1から刳り貫くよう加工できるため、外部応力の印加によって加工対象物1が破損或いは強度低下するのを抑制することができる。さらに、改質領域7及び該改質領域7に内包された亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させることから、この亀裂を加工後の加工対象物1´から除去できるため、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させることが可能となる。また、切削加工時のように加工による粉塵が発生しないため、環境に配慮した加工方法を実現できる。
【0041】
また、本実施形態では、上述したように、改質領域7を形成した後、この既成の改質領域7よりも表面3側に新たな改質領域7を形成することから、既成の改質領域7の影響が新たに形成する改質領域7に及ぶのを抑制することができる。よって、改質領域7を精度よく形成することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、上述したように、X方向に沿って集光点を相対移動させながらレーザ光Lを照射する工程を、集光点のZ方向位置を変えて繰り返し実施する(図9(a)〜(c)参照)。そして、この図9(a)〜(c)に示す工程を、集光点のY方向位置を変えて繰り返し実施することで、刳貫き部分Q1,Q2の外形に沿って改質領域7を加工対象物1に形成する。よって、集光点の移動の無駄を抑制して迅速な加工が可能となり、タクトタイム(加工時間)の短縮化ひいては低コスト化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上述したように、レーザ光Lの照射で加工対象物1の内部に形成した改質領域7を利用することから、加工対象物1を3次元的に自由に刳貫き加工することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、図10に示すように、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて改質領域7を露出させたが、これに代えて、図14(a)に示すように、加工対象物1の表面3側にて改質領域7から延びる亀裂C1を露出させてもよいし、図14(b)に示すように、加工対象物1の裏面21側にて改質領域7から延びる亀裂C2を露出させてもよい。さらに、図14(c)に示すように、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて改質領域7から延びる亀裂C1,C2をそれぞれ露出させてもよい。要は、エッチングの際にエッチング剤を内部に浸潤させるため、改質領域7に内包される又は改質領域7から延びる亀裂が加工対象物1の外表面に至っていればよい。
【0045】
また、本実施形態では、上述したように、リムーブ用テープ17(図12参照)を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせたが、図15に示すように、ポーラスチャック等のエア吸着部35を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせてもよい。
【0046】
具体的には、加工対象物1にエッチング処理を施した後、図15(a)に示すように、加工対象物1を上下反転し、表面3をエア吸着部35に吸着させる。そして、図15(b)に示すように、保持テープ16を持ち上げるよう移動することで、刳貫き部分Q1,Q2を加工対象物1からリムーブさせてもよい。
【0047】
また或いは、加工対象物1にエッチング処理を施した後、図16に示すように、粘着ローラ36を用いて刳貫き部分Q1,Q2をリムーブさせてもよい。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0049】
本実施形態では、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫くよう加工する。ここでの刳貫き部分Q3,Q4は、表面3を底面とする円錐台形状とされている。つまり、刳貫き部分Q3,Q4は、加工対象物1の表面3(一表面)に行くに従って拡がるようZ方向(表面3の直交方向)に対し傾斜するテーパ部55を側面に有している
【0050】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図17(a)に示すように、加工対象物1にレーザ光Lを照射することにより、加工対象物1における刳貫き部分Q3,Q4の外形に沿って改質領域57を形成する。改質領域57は、円錐台形状である刳貫き部分Q3,Q4それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3側及び裏面21側にて露出している。この改質領域57は、Y方向(X方向)視においてZ方向に対し傾斜する段々状に形成されている。
【0051】
続いて、図17(b)に示すように、改質領域57が形成された加工対象物1にエッチング処理を施し、加工対象物1の改質領域57を除去した後、図17(c)に示すように、刳貫き部分Q3,Q4を表面3側から抜き取るように移動させて加工対象物1からリムーブさせる。これにより、加工対象物1の刳貫き部分Q3,Q4が刳り貫かれるよう加工され、図18に示すように、加工対象物1に貫通孔43が形成されることとなる。そして、この加工後の加工対象物1´は、デバイス32上に貫通孔43が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0052】
以上、本実施形態においても、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させるという上記作用効果が奏される。
【0053】
また、本実施形態では、上述したように、Y方向視においてZ方向に対し傾斜する改質領域57を加工対象物1に形成し、テーパ部55を有する刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫いている。よって、次の作用効果を奏する。すなわち、刳貫き部分Q3,Q4を表面3側から抜き取るように移動させることが容易となり、加工対象物1から容易にリムーブさせることが可能となる。さらに、加工後に加工対象物1´がデバイス基板31に積層されたとき(図18参照)、その角部が面取りされるように構成されるため、加工対象物1´が衝撃によって欠けるのを抑制することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、図19に示すように、側面視において、表面3側の一部のみを傾斜させ且つその他をZ方向に沿うように改質領域57を形成し、表面3側にのみテーパ部55が形成された刳貫き部分Q3,Q4を刳り貫くよう加工してもよい。要は、刳貫き部分Q3,Q4は、Z方向に対し傾斜するテーパ部55を有していればよい。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0056】
本実施形態では、加工対象物1において複数の刳貫き部分Q5,Q6を刳り貫くよう加工する。刳貫き部分Q5は、表面3側の刳貫き部分Q5a及び裏面21側の刳貫き部分Q5bを含んでおり、刳貫き部分Q6は、表面3側の刳貫き部分Q6a及び裏面21側の刳貫き部分Q6bを含んでいる。
【0057】
刳貫き部分Q5a,Q6aは、表面3を底面とする円錐台形状とされ、加工対象物1の表面3側に行くに従って拡がるようZ方向に対し傾斜するテーパ部71を側面に有している。一方、刳貫き部分Q5b,Q6bは、裏面21を底面とする円錐台形状とされ、加工対象物1の裏面21側に行くに従って拡がるようZ方向に対し傾斜するテーパ部72を側面に有している。
【0058】
本実施形態において加工対象物1を加工する場合、まず、図20(a)に示すように、加工対象物1にレーザ光Lを照射することにより、加工対象物1における刳貫き部分Q5,Q6の外形に沿って改質領域77を形成するのに加え、刳貫き部分Q5内の刳貫き部分Q5a,Q5b間のXY面に沿って改質領域78を形成すると共に、刳貫き部分Q6内の刳貫き部分Q6a,Q6b間のXY面に沿って改質領域78を形成する。
【0059】
改質領域77は、円錐台形状の刳貫き部分Q5,Q6それぞれの側面に沿って繋がり、且つ、加工対象物1の表面3及び裏面21側にて露出している。この改質領域77は、Y方向(X方向)視において屈曲するように延びている。改質領域78は、改質領域77内のZ方向中央位置にて、刳貫き部分Q5a,Q5bを画成するようにXY面に沿って延び、改質領域77と繋がっている。この改質領域78は、Y方向(X方向)視においてX方向(Y方向)沿った直線状に形成されていると共に、Z方向視において円形状に形成されている。
【0060】
続いて、加工対象物1にエッチング処理を施すことにより、図20(b)に示すように、加工対象物1の改質領域77を除去した後、図20(c)に示すように、加工対象物1の改質領域78を除去する。続いて、図20(d)に示すように、刳貫き部分Q5a,Q6aを表面3側から抜き取るように移動させて加工対象物1からリムーブさせると共に、刳貫き部分Q5b,Q6bを裏面21側から抜き取るように移動させ、これらを加工対象物1からリムーブさせる。
【0061】
これにより、加工対象物1の刳貫き部分Q5,Q6が刳り貫くよう加工され、図21に示すように、加工対象物1に貫通孔53が形成されることとなる。そして、この加工後の加工対象物1´は、デバイス32上に貫通孔53が位置するようにしてデバイス基板31に積層される。
【0062】
以上、本実施形態においても、加工後の加工対象物1´の強度及び品質を向上させるという上記作用効果が奏される。
【0063】
また、本実施形態では、上述したように、Y方向視において屈曲するよう延びる改質領域77を加工対象物1に形成し、テーパ部71,72を有する刳貫き部分Q5,Q6を刳り貫いている。よって、次の作用効果を奏する。すなわち、刳貫き部分Q5a,Q6aを表面3側から抜き取るように移動させることが容易となると共に、刳貫き部分Q5b,Q6bを裏面21側から抜き取るように移動させることが容易となり、加工対象物1から刳抜き部分Q5,Q6を容易にリムーブさせることが可能となる。さらに、加工後に加工対象物1´がデバイス基板31に積層されたとき(図21参照)、その角部が面取りされるように構成されるため、加工対象物1´が衝撃によって欠けるのを抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、図22(a)に示すように、改質領域78から表面3に至る亀裂C3が発生するように改質領域78を形成してもよい。この場合、亀裂C3によってエッチング剤を内部に浸潤させ、改質領域78に沿ったエッチングの進展を容易化及び迅速化できる。ちなみに、この場合、改質領域78から表面3に至る亀裂C3に代えて、改質領域78から裏面21に至る亀裂を発生させてもよい。
【0065】
また、本実施形態の改質領域77は、図22(b)に示すように、Y方向(X方向)視において、表面3側及び裏面21側の一部が傾斜され、その間がZ方向に沿うように構成されていてもよい。換言すると、刳貫き部分Q5a,Q6aがその表面3側の一部にテーパ部71を有し、刳貫き部分Q5b,Q6bがその裏面21側の一部にテーパ部72を有していればよい。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係るレーザ加工方法は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0067】
例えば、改質領域を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面21であってもよい。また、上記実施形態では、2つの刳貫き部分を同時に刳り貫くよう加工したが、刳貫き部分の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0068】
また、上記実施形態は、加工対象物に貫通孔を形成するための加工であるが、これに限定されるものではなく、加工対象物の外形加工のための加工であってもよい。つまり、刳貫き部分(所定部分)を製造物としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、刳貫き部分の外形に沿って改質領域自体を繋げているが、改質領域7に含まれる又は該改質領域から延びる亀裂が刳貫き部分の外形に沿って繋がればよい。
【0070】
また、上記実施形態でのレーザ光LのON・OFF照射は、レーザ光Lの出射のON・OFFを制御する他に、レーザ光Lの光路上に設けられたシャッタを開閉したり、加工対象物1の表面3をマスキングしたり等して実施してもよい。さらに、レーザ光Lの強度を、改質領域が形成される閾値(加工閾値)以上の強度と加工閾値未満の強度との間で制御してもよい。
【0071】
また、本発明においては、所定のZ方向位置にて集光点を合わせつつ該集光点を改質領域形成予定部に沿ってX方向及びY方向に移動させながらレーザ光Lを照射する工程を、集光点のZ方向位置を変えて繰り返し行うことで、刳貫き部分の外形に沿って改質領域を形成する場合もある。
【符号の説明】
【0072】
1…加工対象物、3…表面(一表面,外表面)、7,57,77…改質領域(第1改質領域,第2改質領域)、21…裏面(一表面,外表面)、55,71、72…テーパ部、78…改質領域、C1〜C3…亀裂、L…レーザ光、P…集光点、Q1〜Q6…刳貫き部分(所定部分)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して、前記加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法であって、
前記加工対象物に前記レーザ光を照射することにより、前記加工対象物における前記所定部分の外形に沿って前記改質領域を形成するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光照射工程の後、前記加工対象物にエッチング処理を施すことにより、前記改質領域に含まれる又は前記改質領域から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させるエッチング処理工程と、
前記エッチング処理工程の後、前記所定部分を前記加工対象物から離間移動させる離間移動工程と、を有し、
前記レーザ光照射工程では、前記外形に沿って前記亀裂が繋がるように前記改質領域を形成すると共に、前記加工対象物の外表面側にて前記亀裂を露出させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ光照射工程では、前記加工対象物において前記レーザ光の照射方向における第1深さ位置に第1改質領域を形成した後、前記加工対象物において前記第1深さ位置よりも前記レーザ光照射面側の第2深さ位置に第2改質領域を形成することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記レーザ光照射工程では、
前記レーザ光の照射方向と直交する一方向に沿って前記レーザ光の集光点を相対移動させながら前記レーザ光を照射する工程を、前記照射方向における前記集光点の深さ位置を変えて繰り返し実施する第1工程と、
前記第1工程を、前記照射方向及び前記一方向と直交する他方向における前記集光点の位置を変えて繰り返し実施する第2工程と、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記所定部分の外形形状は、前記加工対象物の一表面側に行くに従って拡がるように該一表面の直交方向に対し傾斜するテーパ部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のレーザ加工方法。
【請求項1】
加工対象物の内部にレーザ光を集光させて形成した改質領域を利用して、前記加工対象物の所定部分を刳り貫くよう加工するレーザ加工方法であって、
前記加工対象物に前記レーザ光を照射することにより、前記加工対象物における前記所定部分の外形に沿って前記改質領域を形成するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光照射工程の後、前記加工対象物にエッチング処理を施すことにより、前記改質領域に含まれる又は前記改質領域から延びる亀裂に沿ってエッチングを選択的に進展させるエッチング処理工程と、
前記エッチング処理工程の後、前記所定部分を前記加工対象物から離間移動させる離間移動工程と、を有し、
前記レーザ光照射工程では、前記外形に沿って前記亀裂が繋がるように前記改質領域を形成すると共に、前記加工対象物の外表面側にて前記亀裂を露出させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ光照射工程では、前記加工対象物において前記レーザ光の照射方向における第1深さ位置に第1改質領域を形成した後、前記加工対象物において前記第1深さ位置よりも前記レーザ光照射面側の第2深さ位置に第2改質領域を形成することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記レーザ光照射工程では、
前記レーザ光の照射方向と直交する一方向に沿って前記レーザ光の集光点を相対移動させながら前記レーザ光を照射する工程を、前記照射方向における前記集光点の深さ位置を変えて繰り返し実施する第1工程と、
前記第1工程を、前記照射方向及び前記一方向と直交する他方向における前記集光点の位置を変えて繰り返し実施する第2工程と、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記所定部分の外形形状は、前記加工対象物の一表面側に行くに従って拡がるように該一表面の直交方向に対し傾斜するテーパ部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−206838(P2011−206838A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78744(P2010−78744)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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