説明

レーザ加工機

【課題】レーザビームの照射位置の誤差を簡便に較正できるレーザ加工機を提供する。
【解決手段】レーザ発振器から発振されるビームLを被加工物が配置される所定面4に向けて反射させるミラー112、122と、ミラー112、122の方向を変化させることでビームLの光軸を所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構111、121と、ミラー122に映る目標照射位置及びその周辺の領域を撮像するカメラセンサと、カメラセンサにより撮像した画像を参照して光軸操作機構111、121に指令した目標照射位置と所定面4における実際のビームLの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構とを具備する加工機を構成し、前記誤差に基づき、加工時にビームLをその目標照射位置に照射するために光軸操作機構111、121に与えるべき指令の補正量を決定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを被加工物の任意の箇所に照射して加工を行うレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物の任意の箇所にレーザビームを照射する加工機の一種として、レーザビームの光軸を変位させるものがある。光軸の向きを変化させるための具体的手段としては、ガルバノスキャナと集光レンズとの組み合わせが採用されることが少なくない(例えば、下記特許文献を参照)。
【0003】
レーザビームの光軸を変位させる走査においては、ガルバノスキャナ等のミラーの回転位置決め誤差や集光レンズの光学的な歪み等の要因によって、平面座標系に対する誤差が発生する。レーザ加工を実行するに際しては、その誤差を予め取り除いておく必要がある。
【0004】
従前では、テストピースに試験用のパターンをレーザ加工し、しかる後にこれを顕微鏡で観察して試験用のパターンと実際に形成されたパターンとの誤差を計測、その誤差を低減するような補正量をガルバノスキャナ等に対する指令値に加味していた。
【0005】
しかしながら、テストピースに形成されたパターンを顕微鏡で調査するのに非常に時間がかかる上、加工機の組立調整や納品調整において必ずこのような補正作業を行うので、作業現場に高精度な顕微鏡が必須であった。さらに、レーザ発振器の光学調整や集光レンズの交換時、焦点変更時にも補正作業を行うことが要求され、煩瑣であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−068270号公報
【特許文献2】特開2009−297726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、レーザビームの照射位置の誤差を簡便に較正できるレーザ加工機を提供することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレーザ加工機は、レーザビームを被加工物に照射して加工を施すためのものであって、レーザ発振器から発振されるレーザビームを被加工物が配置される所定面に向けて反射させるミラーと、前記ミラーの方向を変化させることによりレーザビームの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構と、前記ミラーに映る、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を撮像するカメラセンサと、前記カメラセンサにより撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構に指令した目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構とを具備してなり、前記誤差に基づき、加工時にレーザビームをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定することができる。
【0009】
並びに、本発明に係るレーザ加工機は、レーザビームを被加工物に照射して加工を施すためのレーザ加工機であって、レーザ発振器から発振されるレーザビームを被加工物が配置される所定面に向けて反射させるミラーと、前記ミラーの方向を変化させることによりレーザビームの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構と、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域、並びに当該所定面に照射したレーザビームの光点を撮像するカメラセンサと、前記カメラセンサにより撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構に指令した目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構とを具備してなり、前記誤差に基づき、加工時にレーザビームをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定することができる。
【0010】
前記レーザ発振器と前記ミラーとの間の光路上にビームスプリッタを配置し、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を前記ミラー及び前記ビームスプリッタを介して前記カメラセンサで撮像するものとすれば、カメラセンサの光軸をレーザビームの光軸に可能な限り接近させ、両者を重畳することができるようになる。また、カメラセンサを何処に設置するかについて、設計の自由度が増す。
【0011】
前記所定面に設けられ当該所定面上の各箇所の位置座標を示唆するグリッドパターンを前記カメラセンサで撮像し、撮像した画像に現れるグリッドパターンを基準として前記誤差較正機構が前記誤差の検出を行うものとすれば、所定面における目標照射位置と実際に照射されるレーザビームの光軸の位置との誤差を精度よく検出することができる。
【0012】
前記誤差較正機構は、詳細には、前記光軸操作機構に対してレーザビームの光軸を前記所定面における目標照射位置に位置づけるための指令を行う照射位置指令部と、前記カメラセンサで撮像した画像を参照して前記所定面における目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を算出する誤差検出部と、前記誤差検出部で算出した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザビームの照射位置の誤差を簡便に較正できるレーザ加工機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工機を示す斜視図。
【図2】同レーザ加工機のレーザ照射装置を示す斜視図。
【図3】同レーザ加工機のハードウェア資源構成を示す図。
【図4】同レーザ加工機の機能ブロック図。
【図5】同レーザ加工機における誤差較正時の構成を模式的に示す図。
【図6】同レーザ加工機による誤差較正の方法を示す平面図。
【図7】同レーザ加工機が誤差較正時に実行する処理の手順を示すフローチャート。
【図8】同レーザ加工機が加工作業時に実行する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態のレーザ加工機0は、加工対象となる被加工物を支持する設置台4と、被加工物に向けてレーザビームLを照射するレーザ照射装置1とを備え、被加工物の任意の箇所にレーザ加工を施すことができるものである。
【0016】
設置台4は、レーザ加工時に被加工物を支持する。被加工物が配置される所定面たる設置台4の上面には、当該面上の各箇所の位置座標を示唆するグリッドパターンを設けてある。グリッドパターンの形態は一意に限定されないが、図6に示す例では、x軸方向及びx軸に対して直交するy軸方向に沿って所定間隔(例えば、1mm間隔)で無数の点(例えば、直径0.5mmの円形)41を付している。これ以外の態様として、グリッドパターンとして格子目等を設置台4の上面に付すようにしても構わない。
【0017】
設置台4は、レーザ照射装置1に対して不動であってもよいし、レーザ照射装置1に対してx軸方向及び/またはy軸方向に沿って相対的に変位可能であってもよい。後者の場合、設置台4をXYステージに支持させた態様をとることがある。但し、較正時には設置台4を所定の基準位置に固定する。較正の最中に設置台4を変位させることはない。
【0018】
図2に示すように、レーザ照射装置1は、レーザ発振器(図示しない)と、レーザ発振器から発振されるレーザビームLを走査するガルバノスキャナ11、12と、そのレーザビームLを集光する集光レンズ13とを有する。
【0019】
ガルバノスキャナ11、12は、レーザビームLを反射するミラー112、122を、光軸操作機構たるサーボモータまたはステッピングモータ等111、121により回動させるものである。ミラー112、122の方向を変えることで、ビームLの光軸を変位させることができる。本実施形態では、ビームLの光軸をX軸方向に変化させるX軸ガルバノスキャナ11と、ビームLの光軸をY軸方向に変化させるY軸ガルバノスキャナ12とを両備しており、設置台4の上面におけるビームLの照射位置をx軸方向及びy軸方向の二次元に制御し得る。
【0020】
集光レンズ13は、例えばFθレンズとする。
【0021】
設置台4の上面に照射されるレーザビームLの照射位置は、ガルバノスキャナ11、12の回転位置決め誤差の影響を受ける。加えて、集光レンズ13による光学的な歪みも発生する。レーザビームLの照射位置の誤差は、ガルバノスキャナ11、12の走査範囲の中央から距離が離れるに従って大きくなる傾向にある。図2中符号Aに、その様子を模式的に示している。
【0022】
ガルバノスキャナ11、12を制御する誤差較正機構たる制御装置5は、図3に示すように、プロセッサ5a、メインメモリ5b、補助記憶デバイス5c、I/Oインタフェース5d等を有し、これらがコントローラ5e(システムコントローラやI/Oコントローラ等)によって制御されて連携動作するものである。補助記憶デバイス5cは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、その他である。I/Oインタフェース5dは、サーボドライバ(サーボコントローラ)を含むことがある。
【0023】
制御装置5が実行するべきプログラムは、補助記憶デバイス5cに記憶されており、プログラム実行の際に、メインメモリ5bに読み込まれ、プロセッサ5aによって解読される。そして、制御装置5はプログラムに従い、図4に示す、照射位置指令部51、画像取得部52、較正用位置データ記憶部53、誤差検出部54、補正量記憶部55、加工用位置データ記憶部56、及び加工時制御部57としての機能を発揮する。
【0024】
照射位置指令部51は、レーザ照射装置1に対し、レーザビームLを目標照射位置に照射させるための指令を行う。照射位置指令部51は、設置台4の上面における目標照射位置の(x,y)座標にレーザビームLを照射するべく、その座標に対応した制御信号をガルバノスキャナ11、12に入力してミラー112、122の角度を操作する。
【0025】
画像取得部52は、カメラセンサ2により撮像した画像を受信して取得し、メインメモリ5bまたは補助記憶デバイス5cの所要の記憶領域に一時記憶する。カメラセンサ2は、設置台4の上面における目標照射位置及びその周辺の領域、及び/または、設置台4の上面に実際に照射されたレーザビームLの光点を撮像する。カメラセンサ2の配置に関しては、後述する。
【0026】
較正用位置データ記憶部53は、較正用の位置データを記憶する。レーザビームLの照射位置の較正では、設置台4の上面上のXY平面座標系の複数点に向けてレーザビームLを照射し、各点での照射位置の誤差を検出、各点毎の補正量を決定する。本実施形態では、設置台4の上面上に散在する6000点ないし7000点について誤差の検出及び補正量の決定を行うこととしており、その6000点ないし7000点の各々の(x,y)座標を較正用位置データとして記憶している。
【0027】
誤差検出部54は、レーザビームLの目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する。誤差検出部54は、較正用位置データを読み出してレーザビームLの目標照射位置の(x,y)座標を知得し、照射位置指令部51を介して、目標座標に対応した制御信号をガルバノスキャナ11、12に入力する。その上で、画像取得部52で取得した画像を参照して、図6に示すように、較正用位置データの座標、即ちガルバノスキャナ11、12に指令した目標照射位置座標T(xT,yT)と、その座標を目標にレーザビームLを照射したときの実際の照射位置L(xL,yL)座標との、x軸、y軸方向それぞれの差(Δx,Δy)を算出する。
【0028】
補正量記憶部55は、レーザビームLの目標照射位置と実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置1に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する。具体的には、目標照射位置座標(xT,yT)、及びx軸方向誤差Δx、y軸方向誤差Δyを所定の関数式に代入して、ガルバノスキャナ11、12に与える制御信号のx軸方向補正量、y軸方向補正量を演算し、その補正量を先の目標座標(xT,yT)に関連づけてメインメモリ5bまたは補助記憶デバイス5cに記憶する。
【0029】
加工用位置データ記憶部56は、加工用の位置データを記憶する。加工用位置データ記憶部56は、被加工物のどの箇所にレーザビームLを照射するかを規定するCADデータ等、または加工時にレーザビームLを照射する複数点の(x,y)座標を、加工用位置データとして記憶する。
【0030】
加工時制御部57は、上記の加工用位置データで規定される照射位置にレーザビームLを照射するべく、レーザ照射装置1を制御する。加工時制御部57は、加工用位置データを読み出してレーザビームLの目標照射位置の(x,y)座標を知得し、かつその目標座標に関連づけられた補正量を読み出す。目標座標に直結した補正量が補正量記憶部55に記憶されていない場合には、目標座標に近い複数の座標に関連づけられた複数の補正量を読み出して、それらの補間により適当な補正量を算定する。そして、照射位置指令部51を介して、目標座標に補正量を加味した座標に対応する制御信号を、ガルバノスキャナ11、12に入力する。結果、本来の目標照射位置に正しくレーザビームLが照射される。
【0031】
カメラセンサ2は、例えばCCDセンサまたはCMOSセンサである。カメラセンサ2は、ガルバノスキャナ11、12のミラー112、122に映る、設置台4の上面における目標照射位置及びその周辺の領域を撮像する。図5に示すように、本実施形態では、レーザ発振器とミラー122との間の光路上に、ハーフミラーに代表されるビームスプリッタ3を含む光学モジュールを配置した上、設置台4側から集光レンズ13及びミラー112、122を介して導いた光束(設置台4の上面における目標照射位置の周辺領域のグリッドパターン及びレーザビームLの光点が含まれる)の一部をビームスプリッタ3にて分離し、結像レンズ7を通じてカメラセンサ2へと入射させて、光束を撮像するようにしている。ビームスプリッタ3とミラー122との間に介在しビームLを透過させる透過板6は、ビームスプリッタ3を透過するレーザビームLの屈折による光軸の変位分を相殺する光路キャンセル用ウィンドウである。
【0032】
ビームスプリッタ3及びこれと対をなすウィンドウ6は、レーザ加工時には光路上から取り除かれる必要がある。そのために、ビームスプリッタ3及びウィンドウ6をユニット化するとともに、このユニットを移動させる自動または手動の駆動装置を設けておき、較正時にユニットをレーザ発振器とミラー122との間の光路上に挿入し、レーザ加工時にユニットを当該光路上から退避させる進退動作を実施することが好ましい。
【0033】
レーザビームLの照射位置の較正は、レーザ加工作業前に実施する。較正時に制御装置5が実行する処理の手順を、図7のフローチャートに示す。制御装置5は、記憶している較正用位置データに含まれる目標照射位置の座標を読み出し(ステップS1)、読み出した座標にレーザビームLの光軸を位置づけるべく、ガルバノスキャナ11、12のミラー112、122を操作する(ステップS2)。
【0034】
しかる後、レーザ発振器からレーザを発振させてレーザビームLを設置台4の上面に照射するとともに(ステップS3)、設置台4の上面における目標照射位置及びその周辺の領域、並びに当該面に照射したレーザビームLの光点(即ち、反射光)をカメラセンサ2により撮像する(ステップS4)。ステップS3及びS4では、目標照射位置の周辺領域のグリッドパターンとレーザビームLの光点とを一度に撮影して一枚の画像に収めることもあれば、レーザを照射する前にまず目標照射位置の周辺領域のグリッドパターンを撮影し、その後に(ミラー112、122を動かすことなく)レーザを照射して設置台4の上面に現れる光点を撮影するというように時間差を置いて二度の撮影を行い二枚の画像を得ることもある。
【0035】
続いて、撮影した一枚または二枚の画像から、ビーム検出センサ2を介して実際にレーザビームLを感知したXY座標と目標XY座標との誤差を取得する(ステップS5)。図6に示しているように、本実施形態では、設置台4上面におけるレーザビームLの実際の照射点を示す光点とともに、設置台4上面に付してあるグリッドパターン41を撮像している。グリッドパターン41は、設置台4上面におけるXY座標を表す基準となるものであるから、画像に写った光点Lと、光点Lの周囲にある(または、光点Lに近接した)グリッドパターン41との間の画像上の距離を演算することを通じて、光点Lの位置座標(xL,yL)を算出できる。算出した光点Lの座標(xL,yL)と、目標照射位置Tの座標(xT,yT)との乖離が、ステップS5で取得するべき誤差(Δx,Δy)ということになる。
【0036】
そして、取得した誤差に基づいて補正量の決定を行い(ステップS6)、決定した補正量と目標XY座標との組を記憶する(ステップS7)。制御装置5は、上述のステップS1ないしS7を、較正用位置データに含まれる全てのXY座標について補正量を決定するまで反復する(ステップS8)。
【0037】
レーザ加工作業時には、設置台4に被加工物を設置するとともに、XYステージを制御して設置台4を原点位置に復帰させる。加工時に制御装置5が実行する処理の手順を、図8のフローチャートに示す。制御装置5は、記憶している加工用位置データで規定されるXY座標を読み出し(ステップS9)、その目標XY座標にレーザビームLを照射する際のガルバノスキャナ11、12に対する指令の補正量を読み出すか、補間により取得する(ステップS10)。続いて、目標XY座標に補正量を加味した座標に対応する制御信号をガルバノスキャナ11、12に入力し、ガルバノスキャナ11、12を操作する(ステップS11)。そして、レーザビームLを照射する(ステップS12)。制御装置5は、上述のステップS9ないしS12を、加工用位置データに規定される必要なXY座標についてレーザ加工を施すまで反復する(ステップS13)。
【0038】
本実施形態では、レーザビームLを被加工物に照射して加工を施すためのレーザ加工機であって、レーザ発振器から発振されるレーザビームLを被加工物が配置される所定面(設置台4の上面)に向けて反射させるミラー112、122と、前記ミラー112、122の方向を変化させることによりレーザビームLの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構111、121と、前記ミラー112、122に映る、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を撮像するカメラセンサ2と、前記カメラセンサ2により撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構111、121に指令した目標照射位置と実際のレーザビームLの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構5とを具備し、前記誤差に基づき、加工時にレーザビームLをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構111、121に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機を構成した。
【0039】
並びに、本実施形態では、レーザビームLを被加工物に照射して加工を施すためのレーザ加工機であって、レーザ発振器から発振されるレーザビームLを被加工物が配置される所定面に向けて反射させるミラー112、122と、前記ミラー112、122の方向を変化させることによりレーザビームLの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構111、121と、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域、並びに当該所定面に照射したレーザビームLの光点を撮像するカメラセンサ2と、前記カメラセンサ2により撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構111、121に指令した目標照射位置と実際のレーザビームLの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構5とを具備し、前記誤差に基づき、加工時にレーザビームをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構111、121に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機を構成した。
【0040】
本実施形態によれば、カメラセンサ2によって直接にビームLの照射位置及びその誤差を計測でき、テストピースに形成したパターンを顕微鏡で観測するという煩瑣な手間をかけなくとも簡便に照射位置の較正を行い得る。また、高精度の顕微鏡を現場に用意する必要もない。
【0041】
前記レーザ発振器と前記ミラー122との間の光路上にビームスプリッタ3を配置し、レーザ発振器から発振されるレーザビームLを前記ビームスプリッタ3を透過させた上で前記ミラー122、112を介して前記所定面に向けるとともに、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を当該所定面に照射したレーザビームLの光点とともに前記ミラー122及び前記ビームスプリッタ3を介して前記カメラセンサ2で撮像するようにしていることから、レーザビームLの目標照射位置、即ちミラー112、122の角度をどのように変化させたとしても、カメラセンサ2は不動に保たれる。従って、所定面上の広範囲に亘り安定して較正を行うことができる。
【0042】
前記所定面に設けられ当該所定面上の各箇所の位置座標を示唆するグリッドパターンを前記カメラセンサ2で撮像し、撮像した画像に現れるグリッドパターンを基準として前記誤差較正機構5が前記誤差の検出を行うため、所定面における実際のビームLの照射位置の座標検出精度が高く、精確な較正が可能となる。
【0043】
前記誤差較正機構5は、前記光軸操作機構111、121に対してレーザビームLの光軸を前記所定面における目標照射位置に位置づけるための指令を行う照射位置指令部51と、前記カメラセンサ2で撮像した画像を参照して前記所定面における目標照射位置と実際のレーザビームLの光軸の位置との誤差を算出する誤差検出部54と、前記誤差検出部54で算出した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構111、121に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部55とを備えており、較正を人力を介さず自動で、短時間で行うことが可能である。
【0044】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、較正時にレーザビームLを照射して、その光点及び周辺領域のグリッドパターン41をカメラセンサ2で撮影していた。一方で、ミラー112、122の角度によらず、撮影画像(即ち、カメラセンサ2の視野)内においてレーザビームLが照射される位置(画像内での画素の座標)が恒常的に一定であることが保証されている、換言すれば、撮影画像内の特定の位置の画素をレーザビームLが照射される位置と常に見なすことができるのであれば、レーザビームLを照射せずとも、グリッドパターン41に基づいて知得される目標照射位置の画素とレーザビームLの照射位置に該当する画素との距離から、目標照射位置と実際の照射位置との誤差を検出することが可能である。つまるところ、較正時にレーザビームLを照射して光点を撮影することは必須要件ではない。
【0045】
上記実施形態では、ビームスプリッタ3及びウィンドウ6を用いて、ミラー122に映じる目標照射位置及びその周辺の領域を撮像していたが、ビームスプリッタ3等を用いず、カメラセンサ2自体を駆動装置を介して進退動作させ、光路に割り込ませるようにしても構わない。この場合、較正時にカメラセンサ2をレーザ発振器とミラー122との間の光路上に挿入し、レーザ加工時にカメラセンサ2を当該光路上から退避させることとなる。
【0046】
あるいは、ミラー122を介さず、設置台4上面の目標照射位置及びその周辺の領域を直接に撮像してもよい。
【0047】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、レーザビームを被加工物の任意の箇所に照射して加工を行う加工機として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
0…レーザ加工機
1…レーザ照射装置
111、121…光軸操作機構
112、122…ミラー
2…カメラセンサ
3…ビームスプリッタ
4…所定面
5…誤差較正機構
L…レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを被加工物に照射して加工を施すためのレーザ加工機であって、
レーザ発振器から発振されるレーザビームを被加工物が配置される所定面に向けて反射させるミラーと、
前記ミラーの方向を変化させることによりレーザビームの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構と、
前記ミラーに映る、前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を撮像するカメラセンサと、
前記カメラセンサにより撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構に指令した目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構とを具備し、
前記誤差に基づき、加工時にレーザビームをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機。
【請求項2】
レーザビームを被加工物に照射して加工を施すためのレーザ加工機であって、
レーザ発振器から発振されるレーザビームを被加工物が配置される所定面に向けて反射させるミラーと、
前記ミラーの方向を変化させることによりレーザビームの光軸を前記所定面における所望の目標照射位置へと位置づける光軸操作機構と、
前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域、並びに当該所定面に照射したレーザビームの光点を撮像するカメラセンサと、
前記カメラセンサにより撮像した画像を参照し、前記所定面における前記光軸操作機構に指令した目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を検出する誤差較正機構とを具備し、
前記誤差に基づき、加工時にレーザビームをその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機。
【請求項3】
前記レーザ発振器と前記ミラーとの間の光路上にビームスプリッタを配置し、
前記所定面における目標照射位置及びその周辺の領域を前記ミラー及び前記ビームスプリッタを介して前記カメラセンサで撮像する請求項1または2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記所定面に設けられ当該所定面上の各箇所の位置座標を示唆するグリッドパターンを前記カメラセンサで撮像し、
撮像した画像に現れるグリッドパターンを基準として前記誤差較正機構が前記誤差の検出を行う請求項1、2または3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記誤差較正機構が、
前記光軸操作機構に対してレーザビームの光軸を前記所定面における目標照射位置に位置づけるための指令を行う照射位置指令部と、
前記カメラセンサで撮像した画像を参照して前記所定面における目標照射位置と実際のレーザビームの光軸の位置との誤差を算出する誤差検出部と、
前記誤差検出部で算出した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するために前記光軸操作機構に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部と
を備えている請求項1、2、3または4記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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