説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】rθ加工によりヒートモード型の有機記録材料層に、半径方向に予め定めた波長オーダの間隔で、複数の凹部を均一に形成することができる、レーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ光源から射出されたレーザ光を集光して有機記録材料層に照射するレーザ照射手段を半径方向に移動させながら、回転されたディスク状の加工対象物の表面に形成された有機記録材料層に、描画データに応じて光強度が変調されたレーザ光を照射する際に、半径方向に予め定めた波長オーダの間隔の2倍の幅を有する第1の間隔で複数の凹部列が隣接するように複数の凹部を形成する第1の加工を行った後に、第1の加工に用いたレーザ光より光強度の大きいレーザ光により第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列の間に複数の凹部を形成する第2の加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路の製造などに用いられるフォトマスクやレチクルを製造するレーザ加工装置として、直交する2つのスライダを駆動してXYテーブル上に載置された被処理部材をX方向及びY方向に移動させながら、光学系を介してレーザ光を被処理部材上に集光し、この被処理部材上にビームスポットを照射してパターンを形成するXYテーブル式レーザ加工装置がよく知られている。
【0003】
従来のXYテーブル式レーザ加工装置でパターンを形成した場合、ピクセル数が多くなるとXY方向のスライダの移動回数や加減速回数が増加して描画時間が長くなる等の問題があった。このような問題点を解決するために、回転体と光学系を組み合わせて、ピクセル数が多い場合でも描画時間を短縮でき、高精度なレーザ加工が可能なレーザ加工装置が提案されている。
【0004】
ディスク型の回転体を用いたレーザ加工装置では、ターンテーブルにディスク状の加工対象物を載せて回転させながら、ビームスポットを径方向に移動させることにより高速のレーザ加工を行うことができる。この加工方法は、一般に「rθ加工」と称されている。これらのレーザ加工装置の中でも、高精度な加工を目的として、レーザ光のビームスポットの光強度分布を調整することで、加工対象物にビームスポット径以下の微細パターン(微小凹部列)を形成する方法等が種々提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、ヒートモード型の記録材料層に微細パターンを形成している。このヒートモード型の記録材料層では、レーザ光の照射により加熱部分が除去されて凹部が形成され、所望のパターンを直接描画することができる。レーザ光の照射により凹部を形成する手法は、一般に「レーザ・アブレーション」と称されている。特定のヒートモード型の記録材料にレーザ光を照射してパターンを形成する場合には、ビームスポット径以下の凹部を形成することが可能になる。
【0006】
しかしながら、rθ加工により記録材料層に同心円状又はスパイラル状にレーザ光を照射する場合、微細化が進んでトラック状に配列された凹部列間の間隔が狭くなるほど、隣接する凹部列との熱干渉が大きくなるという問題がある。即ち、レーザ照射により加熱されて高温になっている部分とそれ以外の部分とでは、同じ条件でレーザ加工を行うことができず、凹凸構造が不均一なものとなる。このため隣接する凹部列との熱干渉を回避する方法が提案されている。
【0007】
例えば、レジストが形成されたディスク原盤にレーザ光を照射して潜像を形成し、潜像を現像して微細な凹凸を形成する光情報記録媒体の製造装置において、「半径方向」におけるクロストークを回避するために、ディスク状の露光対象にらせん状の第1の走査軌跡(第1の潜像)を形成した後、第1の走査軌跡間にらせん状の第2の走査軌跡(第2の潜像)を作成するものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−216263号公報
【特許文献2】特開2001−35022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の製造装置では、2回に分けて加工することで半径方向での熱干渉を回避している。しかしながら、特許文献2では、露光対象物に潜像を形成するため凹凸形状を形成する場合には現像処理が必要となる。rθ加工によりヒートモード型の有機記録材料層をアブレーションして、現像処理を行わずに複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成する場合には、凹部形成により凹部周囲が変形する。従って、ヒートモード型の有機記録材料層のレーザ・アブレーションの場合には、「熱干渉」も問題となるが、隣接する凹部列の「加工時の変形による干渉」が更に問題となる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、rθ加工によりヒートモード型の有機記録材料層に、半径方向に予め定めた間隔(レーザ光の波長以下の間隔)で、複数の凹部を均一に形成することができる、レーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために各請求項に記載の発明は、下記構成を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載の発明は、ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するレーザ加工装置であって、前記加工対象物を保持して回転させる回転手段と、レーザ光源から射出されたレーザ光を集光して前記有機記録材料層に照射するレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を前記ディスク状の加工対象物に対し半径方向に移動する移動手段と、前記レーザ光源から射出される前記レーザ光の光強度を変調駆動するレーザ駆動手段と、前記レーザ照射手段を前記移動手段により半径方向に移動させながら、前記駆動手段により回転されたディスク状の加工対象物の表面に形成された前記有機記録材料層に、前記レーザ駆動手段により描画データに応じて光強度が変調されたレーザ光を前記レーザ照射手段から照射する際に、半径方向に前記予め定めた間隔の2倍の幅を有する第1の間隔で複数の凹部列が隣接するように複数の凹部を形成する第1の加工を行った後に、前記第1の加工に用いたレーザ光より光強度の大きいレーザ光により前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列の間に複数の凹部を形成する第2の加工を行うように、前記回転手段、前記レーザ照射手段、前記移動手段、及び前記レーザ駆動手段を制御する制御手段と、を備えたレーザ加工装置である。
【0013】
ここで「半径方向に予め定めた間隔」とは、所望の凹部列間の間隔(いわゆるトラックピッチ)であり、当該間隔が使用されるレーザ光の波長オーダの場合に、請求項1に記載の発明は特に有効である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記第2の加工では、前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列間の略中央に複数の凹部を形成するように前記移動手段を制御する、請求項1に記載のレーザ加工装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成する毎に、前記第2の加工の実施の有無、前記半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するための凹部形成情報、及び形成された複数の凹部の形状ばらつきを表す偏差が前記ヒートモード型の有機記録材料と関連付け蓄積された履歴データを、レーザ加工を行う前に予め取得する取得手段と、今回使用するヒートモード型の有機記録材料及び今回形成する半径方向に予め定めた間隔を設定する設定手段と、更に備え、前記制御手段は、前記設定手段により設定されたヒートモード型の有機記録材料に応じて、前記設定手段により設定された半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部列を形成するために、前記第2の加工を行うか否かを前記履歴データに基づいて判定し、前記第2の加工を行うと判定された場合に前記制御を行う、請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記第2の加工を行うと判定された場合に、前記第2の加工に用いるレーザ光強度として、前記偏差を最小とするレーザ光強度及び予め定めた偏差以下で且つ最小のレーザ光強度を前記履歴データに基づいて取得し、前記設定手段により何れを選択するかを設定可能として、設定されたレーザ光強度で前記第2の加工を行うように前記制御を行う、請求項3に記載のレーザ加工装置。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記半径方向に予め定めた間隔は200nm以下である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーザ加工装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するレーザ加工方法であって、レーザ光源から射出されたレーザ光を集光して前記有機記録材料層に照射するレーザ照射手段を半径方向に移動させながら、回転されたディスク状の加工対象物の表面に形成された前記有機記録材料層に、描画データに応じて光強度が変調されたレーザ光を照射する際に、半径方向に前記予め定めた間隔の2倍の幅を有する第1の間隔で複数の凹部列が隣接するように複数の凹部を形成する第1の加工を行った後に、前記第1の加工に用いたレーザ光より光強度の大きいレーザ光により前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列の間に複数の凹部を形成する第2の加工を行う、レーザ加工方法である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記第2の加工では、前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列間の略中央に複数の凹部を形成する、請求項6に記載のレーザ加工方法である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記半径方向に予め定めた間隔は200nm以下である、請求項6又は請求項7に記載のレーザ加工方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の各請求項に記載の発明によれば、以下の効果がある。
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、rθ加工によりヒートモード型の有機記録材料層に、半径方向に予め定めた波長オーダの間隔で、複数の凹部を均一に形成することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、半径方向に隣接する2本の凹部列間の間隔を略一定とすることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、第1の加工及び第2の加工の2回に分けて加工を行う必要性が事前に判断されて、確実に複数の凹部を均一に形成することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、第1の加工及び第2の加工の2回に分けて加工を行う場合に、低エネルギーで加工を行うか、複数の凹部を均一性が最大になるように加工を行うか、を選択することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、半径方向に隣接する2本の凹部列間の間隔が200nm以下の場合でも、複数の凹部を均一に形成することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、rθ加工によりヒートモード型の有機記録材料層に、半径方向に予め定めた波長オーダの間隔で、複数の凹部を均一に形成することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、半径方向に隣接する2本の凹部列間の間隔を略一定とすることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、半径方向に隣接する2本の凹部列間の間隔が200nm以下の場合でも、複数の凹部を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】(A)は加工対象物の層構成の一例を示す部分断面図である。(B)は加工対象物の表面にレーザ光が照射される様子を示す部分断面図である。(C)は加工対象物の表面に凹部が形成される様子を示す部分断面図である。
【図3】(A)は凹部列が形成される様子を示す模式図である。(B)は凹部周辺の部分断面図である。(C)は凹部形成による変形部に重ねて凹部が形成される様子を示す部分断面図である。
【図4】(A)及び(B)は「第1の加工」及び「第2の加工」で凹部列を形成する形成方向を示す図である。
【図5】(A)は隣接する凹部列の変形部Dとの重なりを避けて2本の凹部列が形成される様子を示す模式図である。(B)は(A)の半径方向に隣接する凹部の部分断面図である。
【図6】(A)は図5(A)に示す隣接する凹部列の間に第3の凹部列が形成される様子を示す模式図である。(B)は(A)の半径方向に隣接する凹部の部分断面図である。
【図7】レーザ加工装置を構成する光加工ヘッドの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】レーザ加工処理の概略ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】2回加工処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】実施例で作製される複数の凹部列のパラメータを定義する図である。
【図12】設定条件下で履歴データに基づいて加工形式及び加工条件を決定する処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】設定条件下で履歴データに基づいて「第2の加工」用のレーザパワーと偏差との関係を示すグラフである。
【図14】UIに表示されるパラメータ設定画面の一例を示す図である。
【図15】UIに表示される判定表示画面の一例を示す図である。
【図16】UIに表示される加工条件設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0032】
<レーザ加工装置の概略構成>
まず、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す斜視図である。このレーザ加工装置は、図1に示すように、ディスク状(円盤状)の加工対象物10を回転させる回転手段としてのスピンドルモータ12と、加工対象物10の表面10aにレーザ光を照射するレーザ照射手段としての光加工ヘッド14と、加工対象物10に対して光加工ヘッド14を移動させる移動手段としてのステッピングモータ16と、を含んで構成されている。
【0033】
本実施の形態では、光加工ヘッド14側を移動させる場合について説明する。このため、ステッピングモータ16は、光加工ヘッド14の支持部材(図示せず)に取り付けられている。しかしながら、加工対象物10に対して光加工ヘッド14を相対移動させることができればよい。加工対象物10側を移動させる場合には、ステッピングモータは、スピンドルモータ12側に取り付けられる。
【0034】
加工対象物10の中心部には、センターホール10bが形成されている。加工対象物10は、センターホール10bを係止することでターンテーブル18に装着されており、スピンドルモータ12によってターンテーブル18と共に回転される。加工対象物10は、加工対象物10の回転中心Qを通る回転軸Lの周りに、所定方向(図1では矢印X方向)に回転される。光加工ヘッド14は、ステッピングモータ16により、加工対象物10の半径方向(図1では矢印Y方向)に沿って、回転中心Qから所定距離の位置まで移動される。
【0035】
加工対象物10には、光加工ヘッド14からパルス変調されたレーザ光が照射される。加工対象物10の表面10aには有機記録材料層(図2参照)が形成されている。加工対象物10を回転させながら、有機記録材料層が形成された表面10aにパルス変調されたレーザ光を照射する。レーザ光が照射された部分の有機記録材料層は、レーザ照射による光熱変換によって変化する。
【0036】
後述する通り、有機記録材料層のレーザ光が照射された部分が、化学変化及び物理変化の何れか一方または双方を引き起こし、レーザ加工された被加工部が形成される。例えば、加熱により有機記録材料層が除去されると、被加工部として凹部が形成される。これにより加工対象物10の表面10aには、複数の凹部Pが同心円状に配列された凹部列(いわゆるトラック)が形成される。
【0037】
光加工ヘッド14は、加工対象物10の加工領域内において、半径方向に沿って外周側から内周側に(又は、内周側から外周側に)所定間隔ずつ移動される。移動した位置毎に、加工対象物10に同心円状又はスパイラル状の凹部列を形成する。一度に所定間隔だけ移動する場合には同心円状の凹部列が形成され、徐々に所定間隔だけ移動する場合にはスパイラル状の凹部列が形成される。これにより、加工対象物10の加工領域全体に、複数の凹部列が形成されて、多数の凹部からなる凹凸パターンが形成される。以下では、特定の凹部Pを示す必要が無い場合には、単に「凹部」と称する。
【0038】
<微小凹部の形成>
次に、加工対象物10の表面に超微細パターンを形成する方法について説明する。図2(A)は加工対象物の層構成の一例を示す部分断面図である。図2(B)は加工対象物の表面にレーザ光が照射される様子を示す部分断面図である。図2(C)は加工対象物の表面に凹部が形成される様子を示す部分断面図である。
【0039】
加工対象物10は、図2(A)に示すように、基材20と、基材20の表面に積層された有機記録材料層22と、を備えた構成とされている。有機記録材料層22は、有機記録材料となる物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調整した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により、基材20の表面に塗布することにより形成される。
【0040】
なお、本実施の形態では、基材20上に有機記録材料層22が積層された加工対象物10を用いる場合について説明するが、加工対象物10としては、有機記録材料層22を最外層(加工表面)に備えた構成であればよい。例えば、有機記録材料層22のみの構成でもよく、有機記録材料層22以外の層を含む構成であってもよい。
【0041】
基材20としては、プラスチック基板、ガラス基板等の平板状の基板の外に、太陽電池、発光ダイオード(LED)、フラットパネルディスプレイ等、射出光が透過する界面を備えた光学デバイスが用いられる。これらの光学デバイスでは、射出光が透過する界面の屈折率差が大きい場合に、界面反射により光取り出し効率が低下する。本実施の形態では、光学デバイスの表面又はその表面を構成する部材に凹凸パターンを形成することで、反射現象を抑制して光取り出し効率を向上させることができる。
【0042】
有機記録材料層22には、ヒートモード型の有機記録材料が用いられる。ヒートモード型の有機記録材料層22は、レーザ光が照射された領域における光熱変換による発熱により、有機記録材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層である。ヒートモード型の有機記録材料としては、従来、CD−R、DVD−R等の光情報記録媒体の記録層に使用されてきた種々の有機記録材料を用いることができる。例えば、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チオール錯塩系、メロシアニン系などの有機記録材料を用いることができる。
【0043】
図2(B)に示すように、凹部の加工に用いる加工用レーザ光は、対物レンズ24で集光され、加工対象物10の表面10aに照射される。加工用レーザ光として、有機記録材料層22を構成する有機記録材料が光吸収を示す波長のレーザ光を照射する。加工用レーザ光とは、光源から出射されるレーザ光の内、凹部を形成可能な照射強度及び波長のレーザ光を意味する。加工用レーザ光のビームスポット径をdsとする。レーザビームの断面光強度はガウス分布を有しており、ビームスポットの中心に行くほど光強度が大きくなる。
【0044】
一方、本実施の形態では、ヒートモード型の有機記録材料は、図2(C)に示すように、有機記録材料層22がレーザ光吸収による発熱によって変形する場合に、加工対象物10の有機記録材料層22には、ビームスポット径(直径ds)より小さい直径dpの凹部Pが形成される。これにより、加工対象物10の表面には、微小凹部からなる超微細パターンが形成される。
【0045】
<加工用レーザ光>
有機記録材料層22を構成する有機記録材料は、加工用レーザ光の波長において、他の波長より吸収率の高いものが採用される。有機記録材料の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長領域内であるものに限定されず、紫外領域や赤外領域にあるものでも構わない。
【0046】
加工用レーザ光の波長は、有機記録材料層22に凹部が形成される程度のレーザパワーを得ることができる波長であればよい。例えば、有機記録材料層22の有機記録材料に色素を用いる場合には、1000nm以下の波長が好ましい。有機記録材料として使用する色素の種類に応じて、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nm等の波長で発振するレーザ光源を使用することができる。
【0047】
レーザ光源としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザ光源であってもよい。自在に発光間隔を変更可能なレーザ光源を採用することが好ましい。例えば、半導体レーザを採用することが好ましい。
【0048】
<凹部形成時の変形>
次に、加工対象物10の表面に凹部列が形成された場合の凹部周囲の変形について説明する。図3(A)は凹部列が形成される様子を示す模式図である。図3(B)は凹部周辺の部分断面図である。図3(C)は凹部形成による変形部に重ねて凹部が形成される様子を示す部分断面図である。
【0049】
図3(A)に示すように、加工対象物10の表面10aに在るヒートモード型の有機記録材料層22には、複数の凹部P(いわゆる「ピット」)が同心円状に配列された凹部列が形成される。上述した通り、有機記録材料層22の変化した材料が移動又は消失する現象を起すことで、各凹部が形成される。このため、図3(B)に示すように、凹部周囲の有機記録材料が隆起する等、凹部Pの周辺部にレーザ加工による変形部Cを生じている。また、レーザ加工後で冷却期間の経過前は、変形部Cはレーザ照射により加熱されて高温状態になっている。
【0050】
従って、例えば300nm以下、200nm以下というように、所望の凹部列の間隔が狭くなると、図3(C)に示すように、高温状態に在る変形部Cの斜面上に凹部を形成することになる。これでは、同じ条件でレーザ加工を行うことができず、同じ形状の凹部を形成することは困難となる。本発明は、隣接する凹部列間の間隔が狭いほど有効であり、波長405nmの青紫色レーザ光を用いる場合を想定すると、隣接する凹部列間の間隔は、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。
【0051】
<加工時の変形による干渉の回避>
次に、加工時の変形による干渉を回避して所望の間隔で凹部列を形成する方法について説明する。本実施の形態では、上記の隣接する凹部列による干渉を低減するために、必要に応じて、所望の間隔の2倍の間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成する「第1の加工」を行った後に、隣接する凹部列の間に複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成する「第2の加工」を行う。
【0052】
例えば、スパイラル状に形成する例で簡単に説明すると、図4(A)に示すように、半径方向に沿って外周側から内周側に「第1の加工」で凹部列(太い実線で図示)を形成した後に、半径方向に沿って外周側から内周側に「第2の加工」で凹部列(細い実線で図示)を形成する。或いは、図4(B)に示すように、半径方向に沿って外周側から内周側に「第1の加工」で凹部列(太い実線で図示)を形成した後に、半径方向に沿って内周側から外周側に折り返すように「第2の加工」で凹部列(細い実線で図示)を形成してもよい。なお、半径方向の移動方向は、適宜、反転させてもよい。
【0053】
このとき、「第1の加工」と同じ形状の凹部を形成するために、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーを、「第1の加工」用レーザ光のレーザパワーよりも大きく設定する。本実施の形態のヒートモード型の有機記録材料が用いられる場合には、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーは、「第1の加工」用レーザ光のレーザパワーの1.02倍〜1.50倍とすることが好ましい。例えば、凹部列間の間隔が200nm以下と狭くなるほど、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーは大きくなるが、本実施の形態のヒートモード型の有機記録材料が用いられる場合には、およそこの範囲のレーザパワーで、「第2の加工」により「第1の加工」と略同じ形状の凹部を形成することができる。
【0054】
図5(A)は隣接する凹部列の変形部Dとの重なりを避けて2本の凹部列が形成される様子を示す模式図である。図5(B)は図5(A)の半径方向に隣接する凹部の部分断面図である。また、図6(A)は図5(A)に示す隣接する凹部列の間に第3の凹部列が形成される様子を示す模式図である。図6(B)は図6(A)の半径方向に隣接する凹部の部分断面図である
【0055】
「第1の加工」では、図5(A)に示すように、隣接する凹部列の変形部Cとの重なりを避けて2本の凹部列を形成する。この場合には、図5(B)に示すように、高温状態に在る変形部Cの斜面上に凹部を形成せずに済む。次に、「第2の加工」では、図6(A)に示すように、隣接する凹部列の間に第3の凹部列を形成する。「第2の加工」を行う時点では、変形部Cは既に冷却されて安定しており「熱干渉」を受けずに済む。
【0056】
また、例えば、図6(B)に示すように、隣接する凹部列の間は台形状に隆起する等、「第1の加工」により変形又は変質を生じており、「第1の加工」時より加工し難くなっているが、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーを「第1の加工」用レーザ光のレーザパワーよりも大きく設定することで、「第1の加工」と同じ形状の凹部を形成することが可能となる。
【0057】
<光加工ヘッドの構成>
次に、本実施の形態に係る光加工ヘッドの構成について説明する。
図7はレーザ加工装置を構成する光加工ヘッドの構成を示す概略図である。図7に示すように、光加工ヘッド14は、レーザ光を出射するレーザ光源26を備えている。本実施の形態では、レーザ光源26として、所定波長で発振する半導体レーザ(レーザダイオード:LD)が用いられている。
【0058】
レーザ光源26の光出射側には、入射光を回折する回折格子28、及び所定方向の偏光を透過し且つ該偏光と直交する方向の偏光を反射する偏光ビームスプリッタ30が、レーザ光源26側からこの順に配置されている。回折格子28は、入射されたレーザ光を回折により複数のレーザ光に分岐する機能を有する光学素子であればよい。例えば、グレーティング、ホログラム等を用いることができる。
【0059】
偏光ビームスプリッタ30の光透過側には、コリメータレンズ32、直線偏光を円偏光に又は円偏光を直線偏光に変換する1/4波長板34、及び対物レンズ24が、偏光ビームスプリッタ30側からこの順に配置されている。一方、偏光ビームスプリッタ30の光反射側には、シリンドリカルレンズ36、及び受光した光を光量に応じた電気信号に変換する光検出デバイス38が、偏光ビームスプリッタ30側からこの順に配置されている。
【0060】
また、対物レンズ24は保持部材(図示せず)により移動可能に保持されている。対物レンズ24の近傍には、フォーカスアクチュエータ40及びトラッキングアクチュエータ42が配置されている。フォーカスアクチュエータ40は、対物レンズ24を光軸方向に移動させる。また、トラッキングアクチュエータ42は、対物レンズ24を加工対象物10の半径方向に移動させる。
【0061】
なお、光加工ヘッド14は、例えば、支持基板等の支持部材(図示せず)を備えている。光加工ヘッド14を構成する上記の各部材は、この支持部材(図示せず)上に支持されている。また、図7を参照すれば分かるように、レーザ光源26は、レーザドライバ50に接続されており、レーザドライバ50により駆動されている。光検出デバイス38は増幅回路58に接続されており、増幅回路58に電気信号を出力する。なお、増幅回路58で増幅された電気信号は、サーボ回路60に入力される。フォーカスアクチュエータ40及びトラッキングアクチュエータ42の各々は、サーボ回路60に接続されている。
【0062】
ここで、上記の光加工ヘッド14の動作を説明する。レーザ光源26から出射されたレーザ光は、回折格子28により回折され、メインビームとサブビームとを含む複数のレーザ光に分岐される。回折格子28により分岐された3本のレーザ光の各々は、偏光ビームスプリッタ30を透過して、コリメータレンズ32で平行光化され、1/4波長板34で直線偏光から円偏光に変換されて、対物レンズ24に入射する。対物レンズ24に入射した3本のレーザ光は、加工対象物10の表面10aで焦点を結ぶように集光されて、加工対象物10に照射される。
【0063】
一方、加工対象物10に照射された3本のレーザ光の各々は、加工対象物10の表面10aでその一部が反射される。反射されたレーザ光(反射光)の各々は、対物レンズ24で平行光化され、1/4波長板34で円偏光から直線偏光に変換され、コリメータレンズ32で集光されて、偏光ビームスプリッタ30に入射する。偏光方向が反転している反射光は、偏光ビームスプリッタ30で反射され、シリンドリカルレンズ36で非点収差が与えられて、光検出デバイス38側に出射される。
【0064】
加工対象物10の表面10aで反射されて戻ってきた反射光の各々は、光検出デバイス38で別々に検出される。光検出デバイス38で検出された反射光の各々は、電気信号に変換されて増幅回路58に出力される。増幅回路58で増幅された電気信号は、サーボ回路60に供給される。また、メインビームの反射光を検出してフォーカシング制御を行うこともできる。
【0065】
<レーザ加工装置の全体構成>
次に、レーザ加工装置の制御系を含めた全体構成について説明する。図8は本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の全体構成を示すブロック図である。このレーザ加工装置は、図8に示すように、加工対象物10を回転させるスピンドルモータ12と、加工対象物10の表面10aにレーザ光を照射する光加工ヘッド14と、加工対象物10に対して光加工ヘッド14を移動させるステッピングモータ16と、レーザ加工装置の各部を制御する制御部44と、を含んで構成されている。
【0066】
スピンドルモータ12には、スピンドルモータ12の回転数に応じた周波数のFGパルス信号を生成する周波数発生器64が取り付けられている。周波数発生器64は、サーボ回路60に接続されると共に、制御部44に接続されている。ステッピングモータ16は、ステッピングモータ16を駆動するモータドライバ48、モータドライバ48を制御するモータコントローラ46を介して、制御部44に接続されている。
【0067】
光加工ヘッド14のレーザ光源26は、レーザ光源26を駆動するレーザドライバ50を介して、制御部44に接続されている。レーザドライバ50には、レーザ光の照射波形を調整するストラテジ回路52、レーザ光の照射強度を調整するレーザパワー制御回路54、及び同期信号を生成するパルス生成部56が接続されている。ストラテジ回路52、レーザパワー制御回路54、及びパルス生成部56の各々は、制御部44に接続されている。
【0068】
光加工ヘッド14の光検出デバイス38は、入力された電気信号を増幅する増幅回路58に接続されている。増幅回路58は、電気信号をコンピュータで読み取り可能なデータにデコードするデコーダ62を介して、制御部44に接続されている。また、増幅回路58は、増幅された電気信号に基づいてフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成するサーボ回路60に接続されている。
【0069】
光加工ヘッド14のフォーカスアクチュエータ40及びトラッキングアクチュエータ42の各々は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を出力するサーボ回路60に接続されている。また、サーボ回路60は、制御部44に接続されると共に、スピンドルモータ12にも接続されている。
【0070】
制御部44は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んで構成されている。制御部44は、ROMに格納された「レーザ加工処理」や「加工形式及び加工条件の決定処理」等のプログラムに従ってレーザ加工装置の各部を制御し、加工対象物10に対するレーザ加工処理を中枢的に制御するように構成されている。制御部44には、加工データ等を記憶するためのメモリ66が接続されている。また、制御部44には、加工データや履歴データ等を入力するためのデータ入出力手段として、PC(パーソナル・コンピュータ)68が接続されている。また、PC68は、ディスプレイ等の表示手段、キーボードやマウス等の入力手段、外部からデータを取得するための通信インタフェース、及び各種ドライブを含んで構成されており、ユーザに操作画面を表示して入力を促すユーザインタフェース(UI)としても機能する。
【0071】
<レーザ加工処理の手順>
次に、図8に示すレーザ加工装置によるレーザ加工処理の手順を説明する。制御部44が、ROMに格納されたプログラムに従ってレーザ加工装置の各部を制御し、加工対象物10に複数の凹部列を形成するレーザ加工処理を中枢的に制御する。なお、加工対象物10に複数の凹部列を形成するための加工データは、予めメモリ66に記憶されている。また、本実施の形態では、過去に複数の凹部列を形成した時の加工条件(加工形式、加工ピッチ、レーザパワー等)を蓄積した履歴データも、予め取得されてメモリ66に記憶されている。なお、加工データや履歴データは、データ入出力手段としてのPC68を用いて、種々の方法で取得することができる。例えば、通信網を介して外部から取得されてもよく、ドライブを介してDVD等の可搬性の媒体から取得されてもよい。
【0072】
上述した通り、本実施の形態では、加工時の変形による干渉を回避して所望の間隔で凹部列を形成するために、必要に応じて「第1の加工」を行った後に「第2の加工」を行う「2回加工」を実施する。なお、1回の加工で所望の間隔で凹部列を形成することができる場合には、「2回加工」を実施する必要はなく「1回加工」を実施すればよい。
【0073】
図9はレーザ加工処理の概略ルーチンを示すフローチャートである。図9に示すように、レーザ加工処理を行う場合には、まず、ステップ100で「2回加工」が必要か否かを判定する。そして、肯定判定の場合にはステップ102に進み、「2回加工処理」を実施して処理ルーチンを終了する。一方、否定判定の場合にはステップ104に進み、「1回加工処理」を実施して処理ルーチンを終了する。なお、具体的な判定方法については、実施例において詳細に説明する。
【0074】
ここでは、図10を参照して「2回加工処理」の手順について説明する。図10は2回加工処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、1回加工処理の処理ルーチンは、2回に分けて凹部列を形成する以外は、2回加工処理の処理ルーチンと同じであるため説明は省略する。
【0075】
加工対象物10がレーザ加工装置のターンテーブル18(図1参照)に装着されて加工可能な状態になると共に、レーザ加工装置の電源スイッチ(図示せず)が操作されて装置各部に電力が供給される。これにより、制御部44内のROMに記憶されたレーザ加工処理の処理ルーチンを実行するためのプログラムが読み出されて、レーザ加工処理が開始される。なお、電力供給と同時にレーザ光源26が点灯され、凹部を形成することが不可能な「照射強度及び波長」のレーザ光が、加工対象物10に照射されている。
【0076】
まず、ステップ200で、加工データをメモリ66から読み出す。この加工データには、形成する各凹部の凹部情報が含まれている。凹部情報としては、各凹部の加工対象物10上での位置座標を示す位置情報、凹部の形状、大きさ、及び深さ等を示す形態情報、等が含まれている。「第2の加工」は「第1の加工」に続けて行われる。従って、加工データには、「第1の加工」用データと「第2の加工」用データの両方が含まれる。また、「第1の加工」と「第2の加工」を合わせた「全加工」の凹部列を正方格子配列、六方格子配列、及びその他の格子配列にすることができる。ただし、rθ加工では完全な格子配列には出来ないため、上述の正方格子配列、六方格子配列、及びその他の格子配列は、歪み量10%以下の疑似格子配列とする。
【0077】
次に、ステップ202で、凹部形成情報を生成する。まず、メモリ66から読み出した加工データに基づいて、各凹部の加工対象物10上での回転中心Qからの距離を求める。回転中心Qからの距離は、各凹部情報に含まれる位置情報に基づいて算出することができる。また、メモリ66から読み出した加工データに基づいて、各凹部を形成するために加工対象物10に照射するレーザ光の照射波形及び照射強度を凹部毎に導出し、凹部毎に凹部形成情報(照射波形情報及び照射強度情報)を生成する。本実施の形態では、位置に拘わらず全凹部が同じ形状で形成されるように、凹部形成情報が生成される。
【0078】
次に、ステップ204で、凹部形成情報を並べ替えて記憶する。まず、全凹部の凹部形成情報を、凹部を形成する順序に並べ替える。また、周方向に隣接する凹部間の距離(凹部間隔)を算出する。得られた回転中心Qからの距離、凹部形成情報(照射波形情報及び照射強度情報)、及び凹部間隔を、メモリ66に記憶する。
【0079】
照射強度情報とは、所望の長さ(回転方向長さ)、深さ、及び形状の凹部を形成するために照射するべき加工用レーザ光の強度を示す情報である。照射時間及び照射強度は、凹部を形成するために必要な照射量(照射エネルギー)により定まり、加工データに含まれる凹部情報に基づいて算出される。
【0080】
照射強度情報には、照射波形におけるバイアス強度Tnに対するピーク強度Pnの比(以下、「照射波形のPn/Tn値」という。)を示す情報が含まれる。照射波形のPn/Tn値は、回転中心Qからの距離によらず一定の凹部を形成するために、回転中心Qからの距離に応じて算出される。外周側に形成される凹部ほど、照射波形のPn/Tn値が小さくなるように算出される。本実施の形態では、位置に拘わらず全凹部が同じ形状で形成されるように、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーは、「第1の加工」用レーザ光のレーザパワーよりも大きく設定される。
【0081】
照射波形とは、加工用レーザ光の照射強度の変化率を示す波形である。この照射波形の立ち上がりから立ち下がりまでの時間は、形成する凹部の長さに応じたクロック数に応じて定められる。換言すれば、照射波形に応じた変化率で照射強度の変化する加工用レーザ光が加工対象物10に照射されることで、照射された加工用レーザ光の照射時間及び照射強度に応じた長さ、形状、及び深さの凹部が形成される。
【0082】
実際には、照射波形はクロック信号に同期させて出力されるので、レーザ光源26に入力される照射波形は、クロック信号に同期して変調された波形となる。また、照射波形のPn/Tn値に応じて照射波形が補正されて、加工用レーザ光の照射強度が調整される。
【0083】
なお、照射波形によっては所望の凹部形状が得られない場合がある。特に、ヒートモード型の有機記録材料層では、通常、各凹部の形成開始点に比べて、形成終了点の方が形成される凹部が太くなる傾向にある。また、加工対象物10の回転速度や、照射されるレーザ光の強度によって、隣接する凹部が繋がってしまう場合がある。従って、所望の凹部形状が得られるように、ワンパルス型、マルチパルス型、Lシェイプ型、キャッスル型等の照射波形を適宜選択する。
【0084】
照射波形を示す照射波形情報は、形成する凹部間の距離、加工対象物の回転速度、各凹部を形成するための照射強度等の情報に対応して、予めメモリ66に記憶しておくことができる。例えば、凹部間の距離、加工対象物の回転速度、及び照射強度が特定の設定値である場合に、所望の凹部形状を得ることができる照射波形を予め実験により求めておいて、求めた照射波形を示す照射波形情報を設定値に関連付けて記憶しておくことができる。
【0085】
また、過去に複数の凹部列を形成した時の加工条件(加工形式、加工ピッチ、レーザパワー等)を蓄積した履歴データをメモリ66に記憶しておいて、この履歴データに基づいて凹部形成情報を生成してもよい。後述する実施例では、レーザパワー等の「第1の加工」及び「第2の加工」の凹部形成情報を、均一な形状の凹部からなる凹部列が所望の間隔で形成されるように、使用する記録材料の種類を含むユーザの設定値と履歴データとに基づいて適宜設定する例について説明する。
【0086】
次に、ステップ206で、同期信号として用いるクロック信号の周波数を示す「クロック周波数情報」を生成する。クロック信号は、光加工ヘッド14からレーザ光を照射する際に、タイミング調整や照射時間調整のために用いられる信号である。詳しくは、制御部44の水晶発振器(図示せず)によって生成されたクロック信号の周波数を読み取り、読み取った周波数を光加工ヘッド14の基準クロック周波数として定める。この基準クロック周波数から、回転中心Qからの距離の変化に応じたクロック周波数を導出して、クロック周波数情報としてメモリ66に記憶する。
【0087】
加工対象物10を回転駆動する駆動方式としては、線速度一定で回転駆動する方式(CLV方式)と、角速度一定で回転駆動する方式(CAV方式)とがある。CLV方式の場合には、回転中心Qからの距離に拘らず、クロック周波数は一定であり、基準クロック周波数と同一となる。これに対し、CAV方式の場合には、回転中心Qからの距離の変化に応じて、クロック周波数が変化する。最内周側の加工領域でのクロック周波数を基準クロック周波数とすると、内周側から外周側に行くほどクロック周波数は高くなる。
【0088】
次に、ステップ208で、光加工ヘッド14を「第1の加工」の所定位置へ移動させることを指示する「移動開始信号」をモータコントローラ46へ出力する。移動開始信号には、光加工ヘッド14の移動量及び移動方向が含まれる。移動開始信号がモータコントローラ46に出力されると、モータコントローラ46は、移動開始信号に従って、移動量や移動方向に応じたパルス信号を生成し、モータドライバ48に出力する。モータドライバ48は、モータコントローラ46から供給されるパルス信号に応じてステッピングモータ16を回転駆動する。
【0089】
モータドライバ48によりステッピングモータ16が駆動されて、光加工ヘッド14が半径方向に沿って所定位置へ移動される。例えば、まず「第1の加工」で外周側から内周側に向って凹部列を形成する場合には、光加工ヘッド14は、加工対象物10の加工領域内の最外周側の加工領域に対応する位置まで移動される。加工対象物10には、「第1の加工」用と「第2の加工」用とに分けて、最内周側と最外周側とに2種類の基準マークが予め形成されている。この場合には、「第1の加工」用の最外周側の基準マークの位置まで光加工ヘッド14が移動される。
【0090】
次に、ステップ210で、「第1の加工」を実施する。まず、加工対象物10の回転開始を指示する「回転開始信号」をサーボ回路60へ出力する。回転開始信号を受け付けたサーボ回路60は、スピンドルモータ12の回転制御を開始し、これによって加工対象物10の回転が開始される。なお、回転開始信号には、CLV方式、CAV方式の何れを用いるかを示す駆動方式情報が含まれる。この駆動方式情報に基づいた駆動方式によりスピンドルモータ12の回転が制御されて、加工対象物10が一定の角速度又は一定の線速度で回転される。
【0091】
次に、トラッキング制御及びフォーカシング制御の開始を指示する「制御開始信号」をサーボ回路60へ出力する。サーボ回路60には、光加工ヘッド14の光検出デバイス38で検出され、増幅回路58で増幅された電気信号が入力されると共に、周波数発生器64から供給されるFGパルス信号が入力される。サーボ回路60は、光検出デバイス38から増幅回路58を介して入力された電気信号に基づいて、光加工ヘッド14のトラッキング制御及びフォーカシング制御を行う。また、サーボ回路60は、周波数発生器64から供給されたFGパルス信号に基づいて、スピンドルモータ12の回転制御を行う。
【0092】
次に、形成する1トラック分の凹部について、クロック周波数情報をメモリ66から読み出し、パルス生成部56に出力する。パルス生成部56は、入力されたクロック周波数情報に基づいて、同期信号として用いるクロック信号を生成し、レーザドライバ50に出力する。
【0093】
次に、形成する1トラック分の凹部について、照射波形情報及び照射強度情報をメモリ66から読み出し、照射波形情報をストラテジ回路52に出力すると共に、照射強度情報をレーザパワー制御回路54に出力する。ストラテジ回路52は、入力された照射波形情報に応じた照射波形を選択して、レーザドライバ50に出力する。また、レーザパワー制御回路54は、加工用レーザ光の照射強度が所望の値に調整されるように、入力された照射強度情報に含まれるピーク強度情報及びバイアス強度情報を、レーザドライバ50に出力する。
【0094】
レーザドライバ50は、ストラテジ回路52から供給された照射波形情報、レーザパワー制御回路54から供給された照射強度情報、及びパルス生成部56から供給された同期信号に基づいて、光加工ヘッド14のレーザ光源26を駆動する。即ち、レーザドライバ50は、入力されたレーザ加工情報(照射波形情報、照射強度情報、及び同期信号)に基づいて、光加工ヘッド14のレーザ光源26を駆動する。
【0095】
詳細には、レーザドライバ50は、レーザパワー制御回路54から入力されたピーク強度情報及びバイアス強度情報に基づいて、これら情報に応じたピーク強度及びバイアス強度が得られるように、ストラテジ回路52から入力された照射波形を補正して、補正照射波形を生成する。レーザドライバ50は、補正照射波形及びクロック信号を光加工ヘッド14に出力する。光加工ヘッド14のレーザ光源26は、補正照射波形に応じて変化する電圧に応じた照射強度の加工用レーザ光を、クロック信号に同期させて加工対象物10に照射する。これにより、加工対象物10の所定の加工領域に、同心円状の凹部列(第1の凹部列)が形成される。
【0096】
1トラック分の凹部形成が終了すると、光加工ヘッド14を次の加工領域に移動させる。次の加工領域は、加工対象物10上で加工領域済み領域に対し半径方向に沿って外周側に隣接する加工領域である。続いて、次に形成する1トラック分の凹部について、クロック周波数情報、照射波形情報、及び照射強度情報を、メモリ66から読み出す。これらの情報に基づいてレーザ加工情報が生成される。
【0097】
続いて、レーザドライバ50は、生成されたレーザ加工情報に基づいて、光加工ヘッド14のレーザ光源26を駆動し、加工用レーザ光を加工対象物10に照射する。同様にして、「第1の加工」用の加工データに含まれる全ての凹部列の形成が終了するまで、光加工ヘッド14の移動とトラックの形成とが繰り返し行われて、加工対象物10の加工領域の全体に複数のトラックが形成される。
【0098】
ステップ212で「第1の加工」が終了したと判断されると、ステップ214に進み、「第2の加工」に移行する。まず、ステップ214で、光加工ヘッド14を「第2の加工」の所定位置へ移動させることを指示する「移動開始信号」をモータコントローラ46へ出力する。次に、光加工ヘッド14を「第2の加工」の所定位置へ移動させることを指示する「移動開始信号」をモータコントローラ46へ出力する。モータドライバ48によりステッピングモータ16が駆動されて、光加工ヘッド14が半径方向に沿って所定位置へ移動される。例えば、「第2の加工」で外周側から内周側に向って凹部列を形成する場合には、「第2の加工」用の最外周側の基準マークの位置まで光加工ヘッド14が移動される。その後は、ステップ216で、「第1の加工」と同様にして「第2の加工」が実施され、加工領域に複数の凹部列が予め定めた一定の間隔で形成される。そして、ステップ218で「第2の加工」が終了したと判断されると、「2回加工処理」の処理ルーチンを終了する。
【0099】
<ヒートモード型の有機記録材料>
ヒートモード型の有機記録材料としては、従来、光記録ディスクなどの記録層に使用されてきた色素型の有機記録材料を用いることができる。色素型の有機記録材料の好適な例としては、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。
【0100】
これらの中でも、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な「記録層」に用いられる色素型の有機記録材料が好ましい。有機記録材料は、溶剤に溶かしてスピンコートやスプレー塗布により膜を形成することができるので、生産性に優れるからである。かかる色素型の有機記録材料層は、記録波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。特に、光の吸収量を示す消衰係数kの値は、その上限が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1以下であることが最も好ましい。
【0101】
その理由は、消衰係数kが高すぎると、有機記録材料層の光の入射側から反対側まで光が届かず、不均一な凹部Pが形成されるからである。また、消衰係数kの下限値は、0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。その理由は、消衰係数kが低すぎると、光吸収量が少なくなるため、その分大きなレーザパワーが必要となり、加工速度の低下を招く場合があるからである。
【0102】
なお、有機記録材料層は、上記したように記録波長において光吸収があることが必要であり、このような観点から、レーザ光を出射する光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変したりすることができる。
【0103】
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素等から選択することが有利である。
【0104】
また、光源の発振波長が660nm付近であった場合には、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素等から選択することが有利である。
【0105】
さらに、光源の発振波長が405nm付近であった場合には、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0106】
以下、光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合、405nm付近であった場合に対し、有機記録材料としてそれぞれ好ましい化合物の例を挙げる。ここで、以下の化学式1,2で示す化合物(I−1〜I−10)は、光源の発振波長が780nm付近であった場合の化合物である。
【0107】
また、化学式3,4で示す化合物(II−1〜II−8)は、光源の発振波長が660nm付近であった場合の化合物である。さらに、5,6で示す化合物(III−1〜III−14)は、光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物である。なお、本実施の形態は、これらを有機記録材料層に用いた場合に限定されるものではない。
【0108】
光源の発振波長が780nm付近であった場合の有機記録材料層を構成する化合物の例を以下に示す。
【0109】
【化1】



【0110】
【化2】



【0111】
光源の発振波長が660nm付近であった場合の有機記録材料層を構成する化合物の例を以下に示す。
【0112】
【化3】



【0113】
【化4】



【0114】
光源の発振波長が405nm付近であった場合の有機記録材料層を構成する化合物の例を以下に示す。
【0115】
【化5】



【0116】
【化6】



【0117】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0118】
このような色素型の有機記録材料層は、色素を、結合剤などと共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調整し、次いで、この塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成した後に、乾燥することにより形成される。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10℃以上40℃以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が15℃以上であり、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さが均一に調整される。
【0119】
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれを任意で組み合わせればよい。ここで、有機記録材料層は、単層でも重層であってもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
【0120】
塗布液中の色素の濃度は、一般に、0.01質量%以上15質量%以下の範囲であり、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下の範囲、より好ましくは、0.5質量%以上5質量%以下の範囲、最も好ましくは、0.5質量%以上3質量%以下の範囲である。
【0121】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメエチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサンなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等が挙げられる。
【0122】
上記溶剤は、使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0123】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点で、スピンコート法を採用するのが好ましい。
【0124】
有機記録材料層は、スピンコート法による形成に有利であるという点から、有機溶媒に対して0.3質量%以上30質量%以下で溶解することが好ましく、1質量%以上20質量%以下で溶解することがより好ましい。特にテトラフルオロプロパノールに1質量%以上20質量%以下で溶解することが好ましい。また、有機記録材料層を構成する化合物は、熱分解温度が150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましい。塗布の際、塗布液の温度は、23℃以上50℃以下の範囲であることが好ましく、24℃以上40℃以下の範囲であることがより好ましく、中でも、25℃以上30℃以下の範囲であることが特に好ましい。
【0125】
塗布液が結合剤を含有する場合、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子;が挙げられる。
【0126】
有機記録材料層の材料として結合剤を併用する場合には、結合剤の使用量は、一般に、色素に対して0.01倍量以上50倍量以下(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量以上5倍量以下(質量比)の範囲にあり、このましくは、0.1倍量以上5倍量以下(質量比)の範囲にある。
【0127】
また、有機記録材料層には、有機記録材料層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させてもよい。褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。この一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載されているものが利用される。
【0128】
以上、有機記録材料層が色素型記録層である場合の溶剤塗布法について述べたが、有機記録材料層は記録物質の物性に合わせて、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
【実施例】
【0129】
次に、本発明の効果を確認した一実施例について説明する。以下では、複数の凹部列を形成した時の加工条件(加工形式、加工ピッチ、レーザパワー等)を蓄積した履歴データに基づいて凹部形成情報を生成する例について説明する。ここでは、使用する記録材料の種類(例えば、レジストID)、凹部列の間隔(加工ピッチ)、「第1の加工」用のレーザパワーを含むユーザの設定値と履歴データとに基づいて、加工形式(1回加工又は2回加工)を判定し、2回加工が必要と判定された場合には加工条件(「第2の加工」用のレーザパワー)を設定する手順を実行した実施例について説明する。これらの設定がすべて終了した後で、レーザ加工処理が実施される。
【0130】
まず、作製例1〜13の履歴データの収集条件について説明する。作製例1〜13の各作製例を実施する毎に、各作製例の履歴データが順次蓄積される。作製例1〜13の各々について、加工形式、加工ピッチ、「第1の加工」用のレーザパワー、「第2の加工」用のレーザパワー、パワー比(第2の加工/第1の加工)、「第1の加工」による平均凹部幅(a)、「第2の加工」による平均凹部幅(b)、凹部幅比((b)/(a))、及び偏差のデータが履歴として蓄積されている。なお、ここで「偏差」とは、凹部幅の標準偏差を加工ピッチで割った値であり、加工ピッチの大きさに拘わらず「凹部ばらつき」を表す指標である。本実施例では、この「凹部ばらつき」を1000倍した値を「偏差」と呼ぶ。
【0131】
図11は本実施例で作製される複数の凹部列のパラメータを定義する図である。図11に示すように、複数の凹部(斜線部)が周方向に配列された凹部列が、径方向に複数列に亘って並べられることで、複数の凹部が正方格子状に配列されている。この例では、N列、(N+1)列、(N+2)列の3列が例示されている。N列及び(N+2)列は「第1の加工」で形成され、(N+1)列は「第2の加工」で形成される。「第1の加工」で形成される凹部の径方向幅の平均値が「平均凹部幅(a)」であり、「第2の加工」で形成される凹部の径方向幅の平均値が「平均凹部幅(b)」である。また、例えば、N列と(N+1)列というように、径方向に互いに隣接する凹部列の間隔が「加工ピッチ」である。
【0132】
<作製例1>
ディスク状の表面が平らなシリコン基板上に100nm厚の色素層(有機記録材料層)を形成し、これにレーザ光により200nm間隔の凹部(ピット)を1mm四方に形成した。各層の詳細は以下の通りである。
【0133】
・基板
材質:シリコン
厚さ:0.5mm
・色素層(有機記録材料層)
下記化学式の色素材料(化5の例示化合物(III-3)に相当)2gをTFP(テトラフルオロプロパノール)溶剤100mlに溶解し、スピンコートした。スピンコートの際には、塗布開始回転数500rpm、塗布終了回転数1000rpmとして塗布液を基板の内周部にディスペンスし、徐々に2200rpmまで回転を上げた。なお、色素材料の屈折率nは1.986であり、消衰係数kは0.0418である。
【0134】
【化7】

【0135】
上記の有機記録材料層に対し、パルステック工業株式会社製NE0500(波長405nm、NA0.85)で微細な凹部を記録した。凹部は正方格子状に200nm間隔で配列されるように形成した。最終的に得られる凹部列の間隔(加工ピッチ)は200nmとした。凹部の形成条件は下記の通りである。
凹部列の間隔(ピッチ):第1の加工、第2の加工とも400nm
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は3.5mW
線速:5m/s
記録信号:25MHzの矩形波
デューティ比(レーザーの発光時間/発光周期):20%
【0136】
以上の加工条件で作製した微細パターンの凹部形状観察はSEM(走査型電子顕微鏡)で行った。第1の加工と第2の加工で形成した凹部の外径をそれぞれ10箇所測定し平均したものを凹部幅とする。第2の加工で形成した凹部幅は第1の加工で形成した凹部幅の1.04倍である。凹部幅の標準偏差を加工ピッチで割った値を「凹部ばらつき」とすると、上記の加工で形成した凹部の偏差は13.0であることが確認された。結果を表1に示す。
【0137】
<作製例2>
レーザ出力を以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は3mW
【0138】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の0.82倍であり、偏差は60.5であることがSEMにより確認された。結果を表1に示す。
【0139】
<作製例3>
レーザ出力を以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は2.5mW
【0140】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の0.71倍であり、偏差は94.5であることがSEMにより確認された。結果を表1に示す。
【0141】
<作製例4>
上記作製例1に対し、200nmの凹部列の間隔を1回の加工(レーザ出力:3mW)で形成した場合には、偏差は24.5であることがSEMにより確認された。結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
<作製例5>
レーザ出力を以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は3.2mW
【0144】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の1.04倍であり、偏差は20であることがSEMにより確認された。結果を表2に示す。
【0145】
<作製例6>
レーザ出力を以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は4.5mW
【0146】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の0.82倍であり、偏差は17.5であることがSEMにより確認された。結果を表2に示す。
【0147】
<作製例7>
レーザ出力を以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
レーザ出力:第1の加工は3mW、第2の加工は5mW
【0148】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の0.71倍であり、偏差は23であることがSEMにより確認された。結果を表2に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
<作製例8>
加工ピッチを以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
加工ピッチ:150nm
【0151】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の0.96倍であり、偏差は15.3であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0152】
<作製例9>
上記作製例8に対し、150nmの凹部列の間隔を1回の加工(レーザ出力:3mW)で形成した場合には、偏差は40.0であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0153】
<作製例10>
加工ピッチを以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
加工ピッチ:300nm
【0154】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の1.02倍であり、偏差は6.7であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0155】
<作製例11>
上記作製例10に対し、300nmの凹部列の間隔を1回の加工(レーザ出力:3mW)で形成した場合には、偏差は19.3であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0156】
<作製例12>
加工ピッチを以下の通り変更した以外は作製例1と同様にして微細パターンを作製した。
加工ピッチ:400nm
【0157】
以上の加工条件で作製した微細パターンでは、第2の加工で形成した凹部幅は、第1の加工で形成した凹部幅の1.03倍であり、偏差は15.7であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0158】
<作製例13>
上記作製例12に対し、400nmの凹部列の間隔を1回の加工(レーザ出力:3mW)で形成した場合には、偏差は17.2であることがSEMにより確認された。結果を表3に示す。
【0159】
【表3】

【0160】
図12は設定条件下で履歴データに基づいて加工形式及び加工条件を決定する処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図13は設定条件下で履歴データに基づいて「第2の加工」用のレーザパワーと偏差との関係を示すグラフである。図14はUIに表示されるパラメータ設定画面の一例を示す図である。図15はUIに表示される判定表示画面の一例を示す図である。図16はUIに表示される加工条件設定画面の一例を示す図である。
【0161】
以下では、図12〜図16に基づいて、本発明の実施例について説明する。ユーザがレーザ加工処理を行う場合に、図示しないUIを操作して「加工形式及び加工条件の決定処理」の開始を指示する。処理の開始が指示されると、図12に示す処理ルーチンが開始されて、図13に示す「パラメータ設定画面」がUIの表示装置に表示される。この例では、使用する記録材料の種類を表す「レジストID(例えば、*****)」、凹部列の間隔を表す「加工ピッチ(例えば、200nm)」、第1の加工用の「レーザパワー(例えば、3.0mW)」が、パラメータとして設定可能とされている。まず、2回加工を行う必要があるか否かが判定される。また、「パラメータ設定画面」には、終了ボタンが表示されている。ユーザはこの終了ボタンを介して設定終了を指示することができる。
【0162】
まず、ステップ300で、パラメータの設定が完了したか否かを判定する。パラメータの設定完了を待って、設定が完了すると肯定判定してステップ302に進む。ステップ302では、設定されたパラメータに応じて、蓄積情報(履歴データ)を読み出す。この例では、レジストID「*****」の記録材料について、加工ピッチ「200nm」の場合に、第1加工のレーザパワー(又は1回加工でのレーザパワー)を「3.0mW」として過去に凹部を形成した時の、履歴データの全部が読み出される。
【0163】
履歴データは、テーブル等で記憶されている。上記の作製例1〜13の履歴データを例にして説明すると、例示化合物(III-3)の記録材料について、加工ピッチ「200nm」の場合に、レーザパワー「3.0mW」で凹部を形成した時の、加工形式、加工ピッチ、「第1の加工」用のレーザパワー、「第2の加工」用のレーザパワー、パワー比、「第1の加工」による平均凹部幅(a)、「第2の加工」による平均凹部幅(b)、(b)/(a)、及び偏差の履歴データ(作製例1〜7のデータ)が読み出される。
【0164】
なお、上記平均凹部幅(a)及び平均凹部幅(b)が、加工ピッチの約半分の値となるように、レーザパルス幅等のレーザパワー以外の照射条件が選択される。例えば、作製例1〜7の履歴データに示すように、加工ピッチ「200nm」では、平均凹部幅(a)及び平均凹部幅(b)は約100nmとなる。
【0165】
図13に示すグラフは、上記の設定条件下で、履歴データに基づいて作成されたものであり、「第2の加工」用のレーザパワーと偏差との関係を示している。白丸は作製例4(1回加工)のデータをプロットしたものであり、黒丸は作製例1〜3、5〜7(2回加工)のデータをプロットしたものである。実線はこれら黒丸のプロットの近似曲線であり、点線は偏差の閾値A(図13では、閾値「A」は約20である)を表している。ここで「偏差の閾値」とは、許容される偏差の上限値を意味する。
【0166】
次に、ステップ304で、1回加工の場合の偏差が2回加工の最小偏差より大きいか否かを判定する。1回加工の場合の偏差が2回加工の最小偏差以下の場合は、2回加工を行う必要はないため、否定判定してステップ314に進み、図15に示す「判定表示画面」がUIの表示装置に表示されて、1回加工を行う(2回加工を行う必要はない)旨がユーザに報知される。また、「判定表示画面」には、OKボタンが表示されている。ユーザはこのOKボタンを介して判定結果(加工形式)を了解し、判定結果に従い加工を行うことを指示することができる。この指示があると、「加工形式及び加工条件の決定処理」のルーチンを終了する。
【0167】
一方、1回加工の場合の偏差が2回加工の最小偏差より大きい場合は、2回加工を行う方が有利であるため、ステップ304で肯定判定してステップ306に進み、図15に示す「判定表示画面」がUIの表示装置に表示されて、2回加工の必要がある旨がユーザに報知される。ユーザがOKボタンを介して判定結果(加工形式)を了解し、判定結果に従い加工を行うことを指示すると、ステップ308に進み、「第2の加工」の条件として「第2の加工」用のレーザパワーを設定するために、図16に示す「加工条件設定画面」がUIの表示装置に表示される。
【0168】
図16に示す「加工条件設定画面」には、「第2の加工」用のレーザパワーとして、偏差の閾値以下の範囲で「最小のレーザパワー」と、「偏差が最小となるレーザパワー」とが、選択可能に表示されている。また、「偏差の閾値」がパラメータとして設定可能とされている。ユーザが「偏差の閾値」を設定して、「最小のレーザパワー」と「偏差が最小となるレーザパワー」の何れかを選択すると、ステップ310に進む。或いは、OKボタンやNGボタンを設けて、「設定終了指示」を行うようにしてもよい。図示はしていないが、以下では「設定終了指示」が可能に構成されているものとして説明する。
【0169】
ステップ310で、「最小のレーザパワー」が選択されたか否かが判定される。肯定判定の場合はステップ312に進み、否定判定の場合はステップ316に進む。ステップ316で、「偏差が最小となるレーザパワー」が選択されたか否かが判定される。肯定判定の場合はステップ318に進み、否定判定の場合はステップ320に進む。ステップ320で、「設定終了指示」があったか否かが判定される。肯定判定の場合はルーチンを終了し、ステップ310に戻って、設定が終了するまで判定を繰り返す。
【0170】
ステップ312では、蓄積情報(即ち、履歴データ)から「最小のレーザパワー」を求め、得られた「最小のレーザパワー」を第2の加工用のレーザパワーと決定して、ルーチンを終了する。また、ステップ318では、蓄積情報(即ち、履歴データ)から「偏差が最小となるレーザパワー」を求め、得られた「偏差が最小となるレーザパワー」を第2の加工用のレーザパワーと決定して、ルーチンを終了する。
【0171】
上記の「加工形式及び加工条件の決定処理」を、図13に示すグラフに基づいて説明する。この例では、例示化合物(III-3)の記録材料について、加工ピッチ「200nm」の場合に、レーザパワー「3.0mW」で凹部を形成した時の履歴データ(作製例1〜7のデータ)が読み出されている。
【0172】
白丸で表される作製例4(1回加工)では、その偏差は24.5である。一方、黒丸で表される作製例1〜3、5〜7(2回加工)では、作製例1の偏差が13.0で最小である。これらを比較すると、1回加工の場合の偏差は2回加工の最小偏差より明らかに大きいので、「2回加工を行う必要がある」という判定になる。また、偏差が閾値以下で且つ最小のレーザパワーとなるのは、黒丸で表される作製例5(偏差が20で且つレーザパワーが3.2mW)の場合である。
【0173】
図13に示す「第2の加工」用のレーザパワーと偏差との関係を示す曲線は、記録材料、加工ピッチ、レーザパワー等の設定条件が変化しても、同様のプロファイルを有する曲線となる。この曲線は、設定されたレーザパワー付近で急激に減少した後に、レーザパワーが大きくなるに従って緩やかに増加する、下に凸の曲線である。ここでは、加工ピッチの値が増減しても同様のプロファイルを有する曲線となる点に着目して説明する。例えば、作製例10、11(加工ピッチ300nm)、作製例12、13(加工ピッチ400nm)のように、加工ピッチの値が増加する(広くなる)と変曲点が相対的に左下側に移動するが、1回加工の場合の偏差が顕著に減少するため、1回加工の場合の偏差が2回加工の最小偏差より小さくなる場合が発生する。この場合には、「1回加工」という判定になる。
【0174】
一方、作製例8、9(加工ピッチ150nm)のように、加工ピッチの値が減少する(狭くなる)と変曲点が相対的に右上側に移動して偏差が増加するが、1回加工の場合の偏差が顕著に増加するため、1回加工の場合の偏差が2回加工の最小偏差より大きくなり、2回加工の必要性が高くなる。また、「第2の加工」用のレーザパワーが「第1の加工」用のレーザパワーと同じ場合の偏差も顕著に増加するため、「第2の加工」用のレーザパワーを高くする必要性も増加する。例えば、設定されたレーザパワーが3.0mWでは、加工ピッチが200nm以下で「第2の加工」用のレーザパワーを高くする必要性が明確となる。
【0175】
また、偏差の閾値を一定と仮定すると、偏差が相対的に増加する分、第2の加工用のレーザパワーは大きくなる。しかしながら、偏差が閾値以下となる範囲は狭くなるので、第2の加工用のレーザパワーは略一定の範囲内に納まる。換言すれば、第2の加工用のレーザパワーを高くしても、一定の閾値を下回ることができなくなる。また、「最小のレーザパワー」は「偏差が最小となるレーザパワー」に徐々に近付いて行く。
【0176】
上述した通り、「第2の加工」用のレーザパワーと偏差との関係を示す曲線は、加工ピッチ等の設定条件が変化しても同様のプロファイルを有する曲線となる。この結果から、本実施の形態のヒートモード型の有機記録材料が用いられる場合には、「第1の加工」用レーザ光のレーザパワーの1.02倍〜1.50倍の範囲のレーザパワーを、「第2の加工」用レーザ光のレーザパワーとすることで、「第2の加工」により「第1の加工」と略同じ形状の凹部を形成することができる。
【符号の説明】
【0177】
10 加工対象物
10a 表面
10b センターホール
12 スピンドルモータ
14 光加工ヘッド
16 ステッピングモータ
18 ターンテーブル
20 基材
22 有機記録材料層
24 対物レンズ
26 レーザ光源
28 回折格子
30 偏光ビームスプリッタ
32 コリメータレンズ
34 1/4波長板
36 シリンドリカルレンズ
38 光検出デバイス
40 フォーカスアクチュエータ
42 トラッキングアクチュエータ
44 制御部
46 モータコントローラ
48 モータドライバ
50 レーザドライバ
52 ストラテジ回路
54 レーザパワー制御回路
56 パルス生成部
58 増幅回路
60 サーボ回路
62 デコーダ
64 周波数発生器
66 メモリ
68 PC(パーソナル・コンピュータ)
70 光検出器
72 光検出器
74 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するレーザ加工装置であって、
前記加工対象物を保持して回転させる回転手段と、
レーザ光源から射出されたレーザ光を集光して前記有機記録材料層に照射するレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段を前記ディスク状の加工対象物に対し半径方向に移動する移動手段と、
前記レーザ光源から射出される前記レーザ光の光強度を変調駆動するレーザ駆動手段と、
前記レーザ照射手段を前記移動手段により半径方向に移動させながら、前記駆動手段により回転されたディスク状の加工対象物の表面に形成された前記有機記録材料層に、前記レーザ駆動手段により描画データに応じて光強度が変調されたレーザ光を前記レーザ照射手段から照射する際に、
半径方向に前記予め定めた間隔の2倍の幅を有する第1の間隔で複数の凹部列が隣接するように複数の凹部を形成する第1の加工を行った後に、前記第1の加工に用いたレーザ光より光強度の大きいレーザ光により前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列の間に複数の凹部を形成する第2の加工を行うように、前記回転手段、前記レーザ照射手段、前記移動手段、及び前記レーザ駆動手段を制御する制御手段と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2の加工では、前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列間の略中央に複数の凹部を形成するように前記移動手段を制御する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成する毎に、前記第2の加工の実施の有無、前記半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するための凹部形成情報、及び形成された複数の凹部の形状ばらつきを表す偏差が前記ヒートモード型の有機記録材料と関連付け蓄積された履歴データを、レーザ加工を行う前に予め取得する取得手段と、
今回使用するヒートモード型の有機記録材料及び今回形成する半径方向に予め定めた間隔を設定する設定手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定されたヒートモード型の有機記録材料に応じて、前記設定手段により設定された半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部列を形成するために、前記第2の加工を行うか否かを前記履歴データに基づいて判定し、前記第2の加工を行うと判定された場合に前記制御を行う、請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の加工を行うと判定された場合に、前記第2の加工に用いるレーザ光強度として、前記偏差を最小とするレーザ光強度及び予め定めた偏差以下で且つ最小のレーザ光強度を前記履歴データに基づいて取得し、前記設定手段により何れを選択するかを設定可能として、設定されたレーザ光強度で前記第2の加工を行うように前記制御を行う、請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記半径方向に予め定めた間隔は200nm以下である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
ディスク状の加工対象物の表面に形成されたヒートモード型の有機記録材料層にレーザ光を照射して、半径方向に予め定めた間隔で複数の凹部を同心円状又はスパイラル状に形成するレーザ加工方法であって、
レーザ光源から射出されたレーザ光を集光して前記有機記録材料層に照射するレーザ照射手段を半径方向に移動させながら、回転されたディスク状の加工対象物の表面に形成された前記有機記録材料層に、描画データに応じて光強度が変調されたレーザ光を照射する際に、
半径方向に前記予め定めた間隔の2倍の幅を有する第1の間隔で複数の凹部列が隣接するように複数の凹部を形成する第1の加工を行った後に、前記第1の加工に用いたレーザ光より光強度の大きいレーザ光により前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列の間に複数の凹部を形成する第2の加工を行う、
レーザ加工方法。
【請求項7】
前記第2の加工では、前記第1の加工で形成された隣接する2本の凹部列間の略中央に複数の凹部を形成する、請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記半径方向に予め定めた間隔は200nm以下である、請求項6又は請求項7に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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