説明

レーザ加工装置

【課題】高精度にレーザ出力のタイミングを制御することによって生産性の高いレーザ加工を行うレーザ加工装置を得ること。
【解決手段】レーザ発振器からのレーザ光線を被加工物に照射する加工ヘッドと、加工ヘッドを所定の軸方向に駆動する軸駆動部と、レーザ発振器を制御する制御装置と、を有するレーザ加工装置において、制御装置は、加工ヘッドを所定の位置に移動させる移動指令を軸駆動部に送出し、軸駆動部は、移動指令内から加工ヘッドの目標移動位置までの距離を抽出するとともに、抽出した距離と、加工ヘッドの実速度と、を含んで構成される加工ヘッド情報を生成するデータ生成部と、を備え、レーザ発振器は、加工ヘッド情報に基づいて、レーザ光線をオン/オフさせるタイミングを算出する算出部を備えるとともに、算出したタイミングに従ってレーザ光線をオン/オフさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器を備えたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置の制御装置としては、一般的に数値制御装置が用いられている。このような数値制御装置は、一定周期毎に移動指令を出力することにより、被加工物(ワーク)に対して加工ヘッドを相対移動させ、ワークに対してレーザビームによる加工を行なわせている。レーザ発振器に対するレーザ出力のオン/オフ等の制御も、この一定周期単位で制御されることが多い。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工プログラムにおけるレーザ出力条件の変更時点がデータ送信の指令周期に一致しない場合に、次の指令周期の到来を待機することなく、指定時点でレーザ出力条件を変更できるようにした構成を有している。
【0004】
また、特許文献2に記載のレーザ加工システムは、レーザ加工装置と、レーザ加工装置の制御軸を駆動する軸駆動部と、レーザ加工装置にレーザ光を供給するレーザ発振器と、軸駆動部及びレーザ発振器を制御する制御装置と、軸駆動部とレーザ発振器とをデイジーチェーン式に制御装置に接続する転送線路とを備えている。そして、特許文献1に記載の方法などで求めた時間遅れなどの発振器制御パラメータを、シリアルデータとしてレーザ発振器に送っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−167549号公報(第8頁、図1)
【特許文献2】特開2006−247745号公報(第8頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記前者および後者の従来技術では、制御装置からレーザ発振器や駆動アンプに送るデータは、予め決められた所定の通信周期でしか送ることができない。そして、この通信周期は、レーザ発振器へ送る通信周期と軸駆動部へ送る通信周期とで異なる。このため、精度の高いレーザ加工を行う場合は、各加工位置で加工を開始する際に一旦停止してから位置合わせを行い、その後に加工を開始する必要があり、生産性が下がるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高精度にレーザ出力のタイミングを制御することによって生産性の高いレーザ加工を行うレーザ加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーザ光線を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光線を被加工物に照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを所定の軸方向に駆動する軸駆動部と、前記レーザ発振器を制御する制御装置と、を有するレーザ加工装置において、前記制御装置は、前記加工ヘッドを所定の位置に移動させる移動指令を前記軸駆動部に送出し、前記軸駆動部は、前記移動指令内から前記加工ヘッドの目標移動位置までの距離を抽出するとともに、抽出した距離と、前記加工ヘッドの実速度と、を含んで構成される加工ヘッド情報を生成するデータ生成部と、前記加工ヘッド情報を前記レーザ発振器に送信する通信部と、を備え、前記レーザ発振器は、前記加工ヘッド情報に基づいて、前記レーザ光線をオン/オフさせるタイミングを算出する算出部を備えるとともに、算出したタイミングに従って前記レーザ光線をオン/オフさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精度にレーザ出力のタイミングを制御するので、加工開始点で一旦停止することなくレーザ加工を行うことができ、その結果、生産効率を高めることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る位置・速度情報の構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態3に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態3に係る位置・速度情報の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。レーザ加工装置101は、被加工物(ワーク)9にレーザ光を照射して被加工物9へのレーザ加工を行う装置である。本実施の形態のレーザ加工装置101は、加工開始・終了を判断する演算機能がレーザ発振器10に配置されている。この構成により、制御装置50の制御周期によらずにレーザ光の出射をオン/オフすることができるので、高精度なレーザ光のオン/オフ制御が可能となる。レーザ加工装置101は、レーザ発振器10と、加工ヘッド3と、制御装置50と、軸駆動部40と、を備えて構成されている。
【0013】
制御装置50は、数値制御装置などであり、レーザ発振器10および軸駆動部40を制御する。制御装置50からレーザ発振器10へは、発振器制御パラメータが送られる。発振器制御パラメータは、レーザ光の発振周波数(レーザ周波数)、出力波形のduty比(レーザduty比)、レーザ光のレーザ出力(パワー)などである。また、制御装置50から軸駆動部40へは、加工ヘッド3への位置指令(加工ヘッド3を所定の位置に移動させる移動指令)(以下、加工ヘッド位置指令という)が送られる。制御装置50は、軸駆動部40から送られてくるフィードバック情報に基づいて、加工ヘッド位置指令を作成し、軸駆動部40に送る。
【0014】
軸駆動部40は、制御装置50からの加工ヘッド位置指令に基づいて、加工ヘッド3を移動させる機能を有している。軸駆動部40は、駆動制御部4Aと軸指令出力部4Bとを有している。
【0015】
駆動制御部4Aは、データ生成部6とデータ通信部7を具備している。データ生成部6は、制御装置50からの加工ヘッド位置指令および軸指令出力部4Bからのフィードバック情報を用いて、レーザ発振器10に送るデータ(位置・速度情報20)を作成する。位置・速度情報(加工ヘッド情報)20は、加工ヘッド3の加工位置(加工開始位置または加工終了位置)までの距離に関する情報や加工ヘッド3の移動速度に関する情報を含んで構成されている。データ通信部7は、データ生成部6が生成した位置・速度情報をレーザ発振器10に送る。
【0016】
また、駆動制御部4Aは、制御装置50からの加工ヘッド位置指令に基づいて、軸指令(X軸指令、Y軸指令、Z軸指令)を生成し、軸指令出力部4Bに送る。また、駆動制御部4Aは、軸指令出力部4Bからのフィードバック情報を制御装置50に送る。
【0017】
軸指令出力部4Bは、駆動制御部4Aから軸指令を受信し、軸指令に基づいて、加工ヘッド3に移動指令(軸ごとの移動指令)を送る。また、軸指令出力部4Bは、加工ヘッド3の近傍に設けられた位置センサ(図示せず)、速度センサ(図示せず)から、加工ヘッド3の現在位置(実際の位置)、現在速度(実速度)などをフィードバック情報として取得する。軸指令出力部4Bは、取得したフィードバック情報を駆動制御部4Aに送る。
【0018】
レーザ発振器10は、レーザ光を発振しレーザ光線2として出射する。レーザ発振器10は、計算部80を有しており、計算部80からの指示に従った所定のタイミングでレーザ光線2を出射する。計算部80は、加工開始・終了を判断する演算機能を有しており、駆動制御部4Aから送られてくる位置・速度情報20に基づいて、レーザ発振器10内でレーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングを判断する。レーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングは、加工ヘッド3が加工開始点、加工終了点へ到達するタイミングである。
【0019】
レーザ発振器10からのレーザ光線2は、所定の光路を通って加工ヘッド3に導かれる。加工ヘッド3は、レーザ発振器10から発振されたレーザ光線2を被加工物9に向けて照射するとともに加工ノズルを介してアシストガスを供給する。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る位置・速度情報の構成例を示す図である。位置・速度情報20は、加工ヘッド位置指令(移動指令)として、X軸加工開始位置21X、Y軸加工開始位置21Y、X軸加工終了位置22X、Y軸加工終了位置22Y、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Yを有している。また、位置・速度情報20は、フィードバック情報として、X軸位置フィードバック情報24X、Y軸位置フィードバック情報24Y、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yを有している。
【0021】
X軸加工開始位置21Xは、加工ヘッド3が次に加工を行なう際の加工開始位置(X座標)であり、Y軸加工開始位置21Yは、加工ヘッド3が次に加工を行う際の加工開始位置(Y座標)である。X軸加工終了位置22Xは、加工終了位置(X座標)であり、Y軸加工終了位置22Yは、加工終了位置(Y座標)である。
【0022】
X軸加工残距離23Xは、加工ヘッド3が次の加工開始位置まで移動するのに必要な残距離(X方向の距離)または加工ヘッド3が加工終了位置まで移動するのに必要な残距離(X方向の距離)である。同様に、Y軸加工残距離23Yは、加工ヘッド3が次の加工開始位置まで移動するのに必要な残距離(Y方向の距離)または加工ヘッド3が加工終了位置まで移動するのに必要な残距離(Y方向の距離)である。したがって、加工ヘッド3が加工位置から次の加工位置へ移動している間のX軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Yは、加工ヘッド3が次の加工開始位置まで移動するのに必要な残距離(目標移動位置までの距離)である。また、加工ヘッド3によって被加工物9を加工している間のX軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Yは、加工ヘッド3が加工終了位置まで移動するのに必要な残距離(目標移動位置までの距離)である。
【0023】
X軸位置フィードバック情報24Xは、加工ヘッド3の現在位置(X座標)を示す情報であり、Y軸位置フィードバック情報24Yは、加工ヘッド3の現在位置(Y座標)を示す情報である。
【0024】
X軸速度フィードバック情報25Xは、加工ヘッド3の現在速度(X方向)を示す情報であり、Y軸速度フィードバック情報25Yは、加工ヘッド3の現在速度(Y方向)を示す情報である。
【0025】
なお、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yは、X軸位置フィードバック情報24Xの単位時間当たりの変化量、Y軸位置フィードバック情報24Yの単位時間当たりの変化量に基づいて算出してもよい。また、本実施の形態における座標や距離は、被加工物9上の座標や距離であってもよいし、被加工物9を載置するワークステージ(図示せず)上の座標や距離であってもよい。
【0026】
本実施の形態では、計算部80が、位置・速度情報20に基づいて、レーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングを算出する。具体的には、計算部80は、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Y、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yを用いて、レーザ光線2の出射タイミングを算出する。例えば、X軸方向に対しては、(X軸加工残距離23X)/(X軸速度フィードバック情報25X)によって、次の加工開始位置まで加工ヘッド3が移動するのに要する時間(移動残時間)が算出される。同様に、Y軸方向に対しては、(Y軸加工残距離23Y)/(Y軸速度フィードバック情報25Y)によって、次の加工開始位置まで加工ヘッド3が移動するのに要する時間(移動残時間)が算出される。計算部80は、X軸方向における移動残時間と、Y軸方向における移動残時間のうち、移動残時間が大きい方の時間を、次の加工を開始するまでの時間または現在の加工を終了するまでの時間とする。
【0027】
計算部80は、時間を計測する時間計測部(図示せず)を備えている。時間計測部が、次の加工を開始するまでの時間を計測すると、計算部80は、レーザ光線2の出射をオンにしてレーザ光線2を出射する。同様に、時間計測部が、現在の加工を終了するまでの時間を計測すると、計算部80は、レーザ光線2の出射をオフにしてレーザ光線2の出射を停止する。
【0028】
つぎに、レーザ加工装置101によるレーザ加工処理手順について説明する。レーザ加工装置101が被加工物9の加工を開始すると、制御装置50は、加工プログラムに基づいて、レーザ発振器10に発振器制御パラメータを送る。
【0029】
また、制御装置50は、加工プログラムに基づいて、軸駆動部40に対し所定の周期毎に加工ヘッド位置指令を送る。駆動制御部4Aは、制御装置50からの加工ヘッド位置指令に基づいて、軸指令を生成し、軸指令出力部4Bに送る。軸指令出力部4Bは、駆動制御部4Aから軸指令を受信し、軸指令に基づいて、加工ヘッド3に移動指令を送る。これにより、加工ヘッド3は、加工ヘッド位置指令に応じた位置に移動する。換言すると、被加工物9に対して加工ヘッド3が相対移動させられる。
【0030】
軸指令出力部4Bは、位置センサ、速度センサから、加工ヘッド3の現在位置、現在速度をフィードバック情報として取得する。軸指令出力部4Bは、取得したフィードバック情報を駆動制御部4Aに送る。
【0031】
データ生成部6は、制御装置50からの加工ヘッド位置指令および軸指令出力部4Bからのフィードバック情報を用いて、位置・速度情報20を作成する。なお、位置・速度情報20は、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Y、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yで構成してもよい。この場合、例えば、データ生成部6は、加工ヘッド位置指令から、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Yを抽出し、フィードバック情報からX軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yを抽出する。そして、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Y、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yを用いて、位置・速度情報20を作成する。
【0032】
この位置・速度情報20は、データ通信部7から計算部80に送られる。そして、計算部80が、位置・速度情報20に基づいて、レーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングを算出する。位置・速度情報20に、X軸加工開始位置21X、Y軸加工開始位置21Y、X軸加工終了位置22X、Y軸加工終了位置22Y、X軸位置フィードバック情報24X、Y軸位置フィードバック情報24Yが含まれている場合、計算部80は、さらに高精度にレーザ光の出射タイミングを制御することが可能となる。
【0033】
また、駆動制御部4Aは、軸指令出力部4Bからのフィードバック情報を制御装置50に送る。制御装置50は、加工プログラムおよびフィードバック情報に基づいて、次の加工ヘッド位置指令を作成する。加工ヘッド位置指令うち、X軸加工開始位置21X、Y軸加工開始位置21Y、X軸加工終了位置22X、Y軸加工終了位置22Yは、加工プログラムから抽出される情報である。
【0034】
また、加工ヘッド3が加工位置から次の加工位置へ移動している間のX軸加工残距離23Xは、X軸加工開始位置21XおよびX軸位置フィードバック情報24Xに基づいて算出される情報である。また、加工ヘッド3によって被加工物9を加工している間のX軸加工残距離23Xは、X軸加工終了位置22XおよびX軸位置フィードバック情報24Xに基づいて算出される情報である。
【0035】
同様に、また、加工ヘッド3が加工位置から次の加工位置へ移動している間のY軸加工残距離23Yは、Y軸加工開始位置21YおよびY軸位置フィードバック情報24Yに基づいて算出される情報である。また、加工ヘッド3によって被加工物9を加工している間のY軸加工残距離23Yは、Y軸加工終了位置22YおよびY軸位置フィードバック情報24Yに基づいて算出される情報である。
【0036】
制御装置50は、作成した加工ヘッド位置指令を軸駆動部40に送る。制御装置50では、レーザ加工を行っている間、加工プログラムおよびフィードバック情報に基づいた加工ヘッド位置指令の作成、軸駆動部40への送信を繰り返す。
【0037】
駆動制御部4Aでは、レーザ加工を行っている間、加工ヘッド位置指令および軸指令出力部4Bからのフィードバック情報を用いて、位置・速度情報20を作成し、データ通信部7を介して計算部80に送る。計算部80は、レーザ加工を行っている間、位置・速度情報20に基づいて、レーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングを算出する。
【0038】
レーザ発振器10は、計算部80による計算結果(レーザ光線2の出射タイミング)に基づいて、レーザ光線2を出射する。このレーザ光線2は、所定の光路を伝搬して加工ヘッド3に導かれ、加工ヘッド3で集光されて被加工物9の被加工部分に照射される。これにより、被加工物9に対してレーザ光線2(レーザビーム)によるレーザ加工が行われる。
【0039】
このように、本実施形態では、レーザ発振器10内でレーザ光線2の出射タイミングを算出しているので、制御装置50の制御周期によらずレーザ光線2の出射タイミングを制御することが可能になり、高精度なオン/オフの制御が行える。
【0040】
また、フィードバック情報(X軸位置フィードバック情報24Xなど)が制御装置50を介さずにレーザ発振器10で送受信されることにより、通信遅れと制御装置50の制御周期による遅れ分が短くなる。このため、フィードバック情報の到着タイミングに起因する計算誤差が小さくなる。そして、計算誤差が小さくなることにより、到着タイミングの精度が高まることとなり、その結果、レーザ光線2のオン/オフのタイミング精度が高まる。このため、加工開始点で一旦停止することなく加工を行えるので、生産効率を高めることが可能になる。
【0041】
例えば、特開2004−167549号公報、特開2006−247745号公報などの従来のレーザ加工方法では、軸駆動部のフィードバック情報を計算に考慮していない。このため、もしサーボアンプの制御パラメータにズレが生じ、レーザ加工装置のサーボ応答が変化した場合でも、あらかじめ与えられたサーボの応答に基づいたサーボ遅れしか考慮しないので、レーザ光線のオン/オフタイミングの時間精度が悪化し、加工形状に悪影響をもたらしてしまう。
【0042】
なお、本実施の形態では、軸指令出力部4Bが加工ヘッド3を移動させる場合について説明したが、軸指令出力部4Bは、被加工物9(ワークステージ)を移動させてもよい。この場合、フィードバック情報は、被加工物9の位置、速度などに関する情報となる。
【0043】
このように、実施の形態1によれば、レーザ発振器10内でレーザ光線2の出射タイミングを算出しているので、高精度にレーザ出力のタイミングを制御することができる。したがって、加工開始点で一旦停止することなくレーザ加工を行うことができ、その結果、生産効率を高めることが可能になる。
【0044】
実施の形態2.
つぎに、図3を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、軸駆動部に計算部を配置しておき、軸駆動部で、レーザ光線2のオン/オフのタイミングを判断する。
【0045】
図3は、実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。図3の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1のレーザ加工装置101と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。本実施の形態のレーザ加工装置102は、レーザ発振器11と、加工ヘッド3と、制御装置50と、軸駆動部41と、を備えて構成されている。
【0046】
軸駆動部41は、駆動制御部4C、軸指令出力部4Bを有しており、駆動制御部4Cが計算部81を備えている。計算部81は、実施の形態1で説明した計算部80と同様の機能を有している。計算部81は、制御装置50からの加工ヘッド位置指令および軸指令出力部4Bからのフィードバック情報から、位置・速度情報20に対応する情報を抽出する。計算部81は、抽出した情報に基づいて、レーザ発振器11内でレーザ光線2の出射をオン/オフするタイミングを判断し、レーザ光線2の出射タイミングをレーザ発振器11に送る。レーザ発振器11は、計算部81からの出射タイミングに基づいて、レーザ光線2をオン/オフする。
【0047】
このように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、レーザ発振器11内でレーザ光線2の出射タイミングを算出しているので、高精度にレーザ出力のタイミングを制御することができる。したがって、加工開始点で一旦停止することなくレーザ加工を行うことができ、その結果、生産効率を高めることが可能になる。
【0048】
実施の形態3.
つぎに、図4および図5を用いてこの発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3では、軸駆動部からレーザ発振器に、位置・速度情報20とともに、発振器制御パラメータを送る。
【0049】
図4は、実施の形態3に係るレーザ加工装置の構成を示す図である。図4の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1のレーザ加工装置101と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。本実施の形態のレーザ加工装置103は、レーザ発振器10と、加工ヘッド3と、制御装置51と、軸駆動部40と、を備えて構成されている。
【0050】
制御装置51は、実施の形態1で説明した制御装置50と同様の機能を有している。本実施の形態の制御装置51は、発振器制御パラメータを軸駆動部40に送る。軸駆動部40は、後述の位置・速度情報21内に発振器制御パラメータを含めて、レーザ発振器10に送る。
【0051】
図5は、実施の形態3に係る位置・速度情報の構成例を示す図である。位置・速度情報21は、位置・速度情報20と同様の情報と、発振器制御パラメータと、を含んで構成されている。
【0052】
具体的には、位置・速度情報21は、加工ヘッド位置指令として、X軸加工開始位置21X、Y軸加工開始位置21Y、X軸加工終了位置22X、Y軸加工終了位置22Y、X軸加工残距離23X、Y軸加工残距離23Yを有している。また、位置・速度情報21は、フィードバック情報として、X軸位置フィードバック情報24X、Y軸位置フィードバック情報24Y、X軸速度フィードバック情報25X、Y軸速度フィードバック情報25Yを有している。さらに、位置・速度情報21は、発振器制御パラメータとして、レーザ出力26、レーザ周波数27、レーザduty比28を有している。
【0053】
なお、レーザ加工装置103が、軸駆動部40(データ生成部6、データ通信部7)の代わりに軸駆動部41(計算部81)を有し、レーザ発振器10の代わりにレーザ発振器11を有する構成としてもよい。この場合、計算部81からレーザ発振器11にレーザ光線2の出射タイミングと、発振器制御パラメータとが送られる。
【0054】
このように、実施の形態3によれば、位置・速度情報21内に発振器制御パラメータを含めてレーザ発振器10に送るので、レーザ発振器10と制御装置50を結ぶケーブルを少なくすることが可能となり、安価なレーザ加工装置103を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ出力のタイミング制御に適している。
【符号の説明】
【0056】
2 レーザ光線
3 加工ヘッド
4A,4C 駆動制御部
4B 軸指令出力部
6 データ生成部
7 データ通信部
9 被加工物
10,11 レーザ発振器
20,21 位置・速度情報
40,41 軸駆動部
50,51 制御装置
80,81 計算部
101〜103 レーザ加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光線を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光線を被加工物に照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを所定の軸方向に駆動する軸駆動部と、前記レーザ発振器を制御する制御装置と、を有するレーザ加工装置において、
前記制御装置は、
前記加工ヘッドを所定の位置に移動させる移動指令を前記軸駆動部に送出し、
前記軸駆動部は、
前記移動指令内から前記加工ヘッドの目標移動位置までの距離を抽出するとともに、抽出した距離と、前記加工ヘッドの実速度と、を含んで構成される加工ヘッド情報を生成するデータ生成部と、
前記加工ヘッド情報を前記レーザ発振器に送信する通信部と、
を備え、
前記レーザ発振器は、
前記加工ヘッド情報に基づいて、前記レーザ光線をオン/オフさせるタイミングを算出する算出部を備えるとともに、算出したタイミングに従って前記レーザ光線をオン/オフさせることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記レーザ発振器を制御する制御パラメータを前記データ生成部に送り、
前記データ生成部は、前記制御パラメータを含めた加工ヘッド情報を生成し、
前記通信部は、前記制御パラメータを含めた加工ヘッド情報を前記レーザ発振器に送信することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
レーザ光線を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光線を被加工物に照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを所定の軸方向に駆動する軸駆動部と、前記レーザ発振器を制御する制御装置と、を有するレーザ加工装置において、
前記制御装置は、前記加工ヘッドを所定の位置に移動させる移動指令を前記軸駆動部に送出し、
前記軸駆動部は、
前記移動指令内から前記加工ヘッドの目標移動位置までの距離を抽出するとともに、抽出した距離と、前記加工ヘッドの実速度と、に基づいて、前記レーザ光線をオン/オフさせるタイミングを算出する算出部を備え、
前記レーザ発振器は、
算出されたタイミングに従って前記レーザ光線をオン/オフさせることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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