説明

レーザ加工装置

【課題】スキャンエリアにかかる載置プレートを下降退避して、スルーホール及びブラインドホールの同時加工できるものであって、下降退避する載置プレートの数を少なくする。
【解決手段】上面がワークWの載置面17aとなる複数の載置プレート17を、少なくとも載置面17aにおいて隣接する載置プレート17との間に所定空隙Sを存するように等ピッチで平行に配置し、レーザ照射の際にスキャンエリアにかかる載置プレート17を下降退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを走査、位置決めしつつ集光してワークを加工するレーザ加工装置に係り、より詳細にはワークを載置する載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガルバノスキャナ及びfθレンズからなる加工ヘッドを備え、レーザ発振器から発振されたレーザを、ガルバノスキャナによって所定スキャンエリアを高速で走査、位置決めしつつfθレンズで集光して照射することで、プリント基板等のワークをレーザ加工し、該スキャンエリアのレーザ加工が終了すると、XYテーブルによりワークを移動して、次のスキャンエリアをレーザ加工するレーザ加工装置が知られている。
【0003】
このようなレーザによるプリント基板への穴加工は、大きく分類して、止まり穴を明けるブラインドホール加工と、貫通孔を明けるスルーホール加工の二種類がある。ブラインドホール加工は、プリント基板の内層にある銅箔までの樹脂層をレーザによって除去する工法であり、一方スルーホール加工は、プリント基板の内層の銅箔に表面処理を施すことで銅箔のレーザ吸収率を上げ、樹脂層及び銅箔をレーザにより除去し、貫通孔を形成する工法である。スルーホール加工の場合、貫通したレーザがプリント基板を載置する載置台で反射し、載置台、基板の裏面、又は貫通孔壁面へダメージを与えることがある。従って、従来、一つのレーザ加工装置で、ブラインドホール加工とスルーホール加工を共に行うことは出来なかった。
【0004】
上記問題を解決するべく、貫通孔が形成される位置にある基板の載置部を下降退避させて、載置台、基板の裏面、又は貫通孔壁面へダメージを与えないようにし、ブラインドホール加工とスルーホール加工を共に行うことを可能にしたレーザ加工装置が案出されている(特許文献1参照)。該レーザ加工装置は、XY方向に駆動して基板を位置決めするXYテーブル上に、基板を保持する複数の載置部を昇降自在に備えており、これら載置部は細長のブロック状からなり、XYテーブル上に全体で大きな矩形状となるように敷き詰められている。レーザ発振器から発振されたレーザを、ガルバノスキャナによって所定範囲で走査、位置決めし、複数の載置部のうち該所定範囲に少なくともその一部がかかる載置部は、下降退避するように駆動制御される。基板を貫通したレーザは、載置部の下降退避移動の分だけ焦点位置から外れた位置に到達することでエネルギー密度を減少させ、下降退避した載置部でのレーザの反射光による基板の裏面又は貫通孔壁面へのダメージを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009/001497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のものは、複数の載置部の間に空隙がほとんど無く、スキャンエリアが少しでも他の載置部に亘って存在する場合、2個以上の載置部を下降退避させる必要がある。そこで、レーザ加工の際、スキャンエリアと重なって下降退避する載置プレートの数が少なくなるように、全体の載置部の数を減らして載置部1個当たりの幅を広くすると、それら載置部を昇降させる昇降装置を減らし、構成を簡略化することはできるが、スキャン領域と載置部の重なり方によっては、やはり複数の載置部が同時に下降し、しかも、1つの載置部の幅が広いため下降退避する領域が広くなりすぎて、基板を保持するバランスが悪くなり、下降退避した領域において、基板が撓み変形する可能性がある。逆に、載置部の数を増やして載置部1個当たりの幅を狭くすると、下降退避する領域が広くなりすぎることはなく、載置した基板が撓み変形することは無いが、それら載置部を昇降させる昇降装置が増え、構造及び制御が複雑となってコストアップになるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、撓み変形及びコストアップすること無く、基板を貫通したレーザが基板の裏面等にダメージを与えるのを防ぎ、もって上述した課題を解決したレーザ加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定のスキャンエリア(A)でワーク(W)を加工する加工ヘッド(9)と、
前記ワーク(W)を載置し、前記スキャンエリア間を移動、位置決めする移動テーブル(3)と、を有するレーザ加工装置(1)において、
前記移動テーブル(3)上に設置され、上面が前記ワーク(W)の載置面(17a)となる複数の載置プレート(17)と、
前記複数の載置プレート(17)をそれぞれ昇降する昇降装置(27)と、
前記スキャンエリア間の前記移動テーブル(3)の移動、位置決めに同期して、前記複数の載置プレート(17)のうち前記スキャンエリア(A)にかかる載置プレート(17)のみを下降退避すべく前記昇降装置(27)を制御する制御部(C)と、を備え、
前記載置プレート(17)の少なくとも前記載置面(17a)が、隣接する載置プレート(17)との間に所定空隙(S)を存するように、前記複数の載置プレート(17)を平行に配置してなる。
【0009】
例えば図2,図4を参照して、前記複数の載置プレート(17)は、隣接する前記載置面(17a)の間の空隙(S)が前記スキャンエリア(A)の一辺以上の大きさの間隔で配置され、前記スキャンエリア内に存在する前記載置プレート(17)が0本または1本である。
【0010】
例えば図3を参照して、前記載置プレート(17)は、断面矩形状の本体部(17b)と、該本体部(17b)の上方に位置し、断面が前記載置面(17a)である上面に向かって先細形状となる先細部(17c)と、を備え、上下方向に所定幅を有し、かつ前記断面方向に所定肉厚を有する板状部材からなり、
前記載置プレート(17)の前記断面に直交する長手方向の両端部が前記昇降装置(27)により支持されてなる。
【0011】
例えば図2,図4を参照して、前記複数の載置プレート(17)は、前記本体部(17b)の間においても所定空隙(M)を存し平行に配置され、
前記移動テーブル(3)と一体の枠体(16)に、複数のスプリング(26)により上方に向けて付勢されて前記複数の載置プレート(17)が支持され、
前記枠体(16)の対向する一対の側端部(16a)に複数のガイド孔(16b)を設け、
前記複数の載置プレート(17)は、それぞれ前記本体部(17b)の長手方向の両端部に突出部(19)を有し、
前記各突出部(19)を前記各ガイド孔(16b)にそれぞれ嵌挿して、前記複数の載置プレート(17)が、前記枠体(16)に上下方向移動自在に支持され、かつ前記スプリング(26)により付勢されて前記突出部(19)が前記ガイド孔(16b)により位置決めされた状態で、前記載置プレートの載置面(17a)と、前記枠体(16)の側端部(16a)の上面(16d)とが同一平面になるように設定されてなる。
【0012】
例えば図3を参照して、前記載置プレート(17)は、前記載置面(17a)に開口し、前記ワーク(W)を吸着する吸着穴(20)と、
前記吸着穴(20)に連通し、前記載置プレート(17)内部を前記長手方向に延びて前記載置プレート(17)の端面で真空源(21)と接続する空洞部(22)と、を備え、
前記制御部(C)が、前記スキャンエリア(A)にかかる前記載置プレート(17)を下降退避すべく前記昇降装置(27)への出力に対応して、該下降退避させる前記載置プレート(17)による前記ワーク(W)の吸引を遮断するように制御してなる。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によると、ワークを載置する複数の載置プレートのうち、スキャンエリアにかかる載置プレートは、下降退避するので、加工ヘッドからのレーザが載置プレートで反射することがなく、スルーホールとブラインドホールの両方を同時に加工できるものでありながら、移動テーブル上に、少なくともその載置面が隣接する載置プレートとの間に所定空隙を存するように、複数の載置プレートを設けたので、スキャンエリアに載置面がかかる載置プレートの数を減少することができ、簡単な構成でもって、載置プレートの昇降制御を少なくすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0015】
請求項2に係る本発明によると、複数の載置プレートは、隣接する載置面の間の空隙がスキャンエリアの一辺以上の大きさの間隔で配置されるので、任意のスキャンエリア内に存在する載置プレートは0本または1本となり、スキャンエリアにかかる載置プレートを少なくすることができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によると、載置プレートが、断面矩形状の本体部と、該本体部の上方に位置し載置面に向かって先細形状となる先細部と、を有する板状部材からなるので、レーザの反射面となる載置面の面積を小さくすることができるものでありながら、載置プレートの剛性を向上することができ、ワークの撓みや変形を防止することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明によると、載置プレートが枠体に設けられた各ガイド孔に位置決めされ、載置プレートの載置面と、枠体の側端部の上面とが同一平面になるように設定されるので、載置プレートの載置面及び枠体の側端部の上面の平面度は高く維持され、ワークの加工精度の低下を防ぐことができる。
【0018】
請求項5に係る本発明によると、制御部が、スキャンエリアにかかる載置プレートを下降退避するための昇降装置への出力に対応して、載置プレートによるワークの吸引を遮断するので、載置プレートにワークを確実に保持して、スキャンエリアにかかる載置プレートを下降退避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の構成を示す全体図。
【図2】本発明の実施の形態に係る載置台を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側方断面図、(c)は正面断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る載置プレートを示す斜視図。
【図4】一部を変更した載置プレートを示す断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。レーザ加工装置1は、図1に示すように、ベッド2上にX方向及びY方向に移動自在に支持されたXYテーブル(移動テーブル)3を備えている。該XYテーブル3は、X方向に移動自在のXテーブル4と、該Xテーブル4上に配置され、Y方向に移動自在のYテーブル4とを有し、上記Xテーブル3及びYテーブル5は、NC装置等の制御部Cからの指令によって、不図示のガイド、ボールねじ、及びサーボモータが駆動することで、それぞれX方向、Y方向に位置決め可能である。上記Yテーブル5上には、プリント基板等のワークWが載置されている。図1において、XYZ軸はそれぞれ直角方向にあり、Z軸方向は、XY軸がなす平面に垂直な方向である。
【0021】
ベッド2には、更に、上記XYテーブル3及びワークWを囲むようにして門形のコラム6が固定されており、該コラム6上に板状の光路プレート7が固定され、かつ上記コラム6には、不図示のガイド、ボールねじ、及びサーボモータによりZ軸方向に位置決め可能な加工ヘッド9が取付けられている。該光路プレート7上には、レーザを発振するレーザ発振器10と、レンズ、ミラー等の各種ビーム形成部品群11と、が搭載されている。上記レーザ発振器10から発振されたレーザ12は、上記ビーム形成部品群11を通過して、レーザ光路上に配置されたミラー13a、13bを介して、上記加工ヘッド9に案内される。該加工ヘッド9は、一対のガルバノスキャナ14と、レーザを集光するfθレンズ15を備えており、上記ガルバノスキャナ14は、先端に回転自在に支持されたガルバノミラー14aを有し、上記加工ヘッド9に案内されたレーザ12を所定のスキャンエリア(例えば図2の斜線部であるスキャンエリアA)で走査しつつ位置決めして、上記ワークWに穴明け、溝、又は外形加工が可能となっている。
【0022】
上記Yテーブル5は、図2に示すように、該Yテーブル5の上部に一体に固定される枠体16を備え、該枠体16は、その周囲が上方に突出して側端部を形成しており、その対向する一対の側端部16aに同形状のガイド孔16bを等ピッチで複数備える。対向する1対の上記ガイド孔16bには、上記ワークWを載置する載置プレート17の両端にある突出部19がそれぞれ嵌挿され、載置プレート17の1枚当たり一対のガイド孔16bが設けられる。
【0023】
上記載置プレート17は、図3に示すように、上面が上記ワークWを載置する載置面17aとなっており、断面矩形状の本体部17bと、該本体部17bの上方に位置し、断面が上記載置面17aである上面に向かって先細形状となる先細部17cと、を備え、上下方向に所定幅を有し、かつ上記断面方向に所定肉厚を有する板状部材からなる。前記先細部17cは、図3に示す実施の形態にあっては、一側面eのみを面取りして形成されているが、図4に示すように、両側面f、gを面取りして形成しても良いことは勿論である。上記突出部19は、上記載置プレート17の本体部17bから突出されて形成されており、上記複数の載置プレート17は、上記載置面17aにおいて、隣接する載置プレート17と所定空隙Sを存し、かつ上記本体部17bにおいて、隣接する載置プレート17と所定空隙Mを存し平行に配置されている。上記所定空隙Sは、上記ガルバノスキャナ14のスキャンエリアの一辺以上の大きさの間隔に設定される。
【0024】
上記各載置プレート17は、上記載置面17aに開口し、上記ワークWを吸着する吸着穴20と、該吸着穴20に連通し、上記載置プレート17の内部を長手方向に延びて上記載置プレート17の端面で真空源21と接続する空洞部22と、を備えている。上記真空源21は、上記各空洞部22及び吸着穴20の吸引を入切する複数のバルブからなるバルブユニット23を有し、該バルブユニット23は、上記制御部Cによって制御されると共に、各バルブがそれぞれホース25を介して各空洞部22に連通している。
【0025】
図2に示すように、上記各載置プレート17と上記枠体16内部の底面16cとの間には、スプリング26が複数配置され、上記各載置プレート17は、これらスプリング26によって上方に向けて付勢されて上記ガイド孔16bの上面に当接して位置決めされる。そして、上記スプリング26によって上記載置プレート17がガイド孔16bに位置決めされた状態で、上記載置プレート17の載置面17aと、上記枠体16の側端部16aの上面16dが同一平面になるように設定されて、上記載置面17a及び枠体16の側端部16aの上面16dに上記ワークWが高い平面度で載置される。
【0026】
上記各載置プレート17の両端の突出部19には、上記各載置プレート17を昇降駆動させる昇降装置であるソレノイド27がプランジャー27aによって接続されて、上記各載置プレート17は、上記各ガイド孔16bによって案内されつつ昇降可能となっている。上記ソレノイド27は、上記制御部Cに接続されて、該制御部Cからの信号により、上記ソレノイド27が励磁することにより、上記プランジャー27aが吸引され上記載置プレート17が下降し、逆電流に切り替え又は非励磁による上記スプリング26の付勢により、上記プランジャー27aは上昇し、載置プレート17は上昇して、枠体16の周囲縁部からなる側端部16aの上面16dに同一平面になるように位置決めされる。
【0027】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、レーザ加工装置1は、まず制御部Cによる指令によって、XYテーブル3を移動、位置決めさせる。載置プレート17は、真空源21によって空洞部22の内部が負圧になり、該空洞部22と連通している吸着穴20によって、載置面17aに載置されたワークWを吸引保持しているが、上記XYテーブル3の位置決め位置において、上記制御部Cは、ガルバノスキャナ14のスキャンエリア(例えば図2の斜線部であるスキャンエリアA)にかかる載置プレートのみ(例えば図2の載置プレート17)の吸引保持を遮断し、それと同期して該載置プレート17を下降退避させる。
【0028】
この状態で、レーザ発振器10から発振されたレーザ12は、ビーム形成部品群11を通過して要求される形状に整形されると共に必要なエネルギー分布を与えられ、ミラー13a,13bによって加工ヘッド9内に案内される。該加工ヘッド9内に入射してきたレーザ12は、一対のガルバノスキャナ14によって光路を走査、位置決めされ、fθレンズ15を透過してワークWの加工面に垂直(図1のZ軸方向)に入射し、該ワークWをスルーホール又はブラインド加工する。
【0029】
これにより、ワークWに貫通孔を形成するスルーホール加工でも、該貫通孔を通過したレーザ12は、スキャンエリアAにかかる載置プレート17が下降退避して、載置面17aが下降した分だけ焦点位置から外れた位置に到達しエネルギー密度を減少させるので、下降退避した載置面17a及びその周りでのレーザの反射光によるワークWの裏面又は貫通孔壁面へのダメージを防止し、加工品質を向上できる。更に、載置面17aは、先細部17cの一側面e若しくは両側面f,gの面取りによって面積が小さくなるため、レーザが反射する面積を小さくし、かつ上記面取り部分でレーザが分散して、よりワークWの裏面又は貫通孔壁面へのダメージを防止し、加工品質を向上できる。
【0030】
また、枠体16の対向する一対の側端部16aに等ピッチでガイド孔16bを設けて、上記ガイド孔16bに嵌挿される突出部19を有する本体部17bにおいて、隣接する載置プレートとの間に所定空隙Mを存して平行に配置されるので、該所定空隙Mにワークを貫通したレーザが照射されても、レーザの反射光によってワークを傷つけず、ワークの加工品質を向上することができる。
【0031】
また、スキャンエリアAにかかる載置プレート17が、ワークWの吸着保持を遮断されるのと同期して下降退避するので、下降退避する載置プレート17の吸着保持に引っ張られてワークWが撓むことがなく、ワークWの変形を防止することができる。
【0032】
また、隣接する載置プレート17の、載置面17aの間の空隙Sがスキャンエリアの一辺以上の大きさの間隔で配置されるので、任意のスキャンエリア内に存在する載置プレートは0本または1本となって、載置プレート17の昇降制御を少なくすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0033】
このスキャンエリアAのレーザ加工が終了すると、XYテーブル3が、元のスキャンエリアAと隣接する新たなスキャンエリア位置に移動し、その際、これまでガルバノスキャナ14のスキャンエリアAにかかり下降退避していたが、XYテーブル3の移動によってスキャンエリアから外れた載置プレート17は、上昇してワークWの吸着保持を再開する。このようなXYテーブル3の移動とワークWの加工を順次繰り返し、ワークW全体の加工を行っていく。
【0034】
[実施例1]
本発明における実施例を説明する。レーザ加工装置1の複数の載置プレート17は、それらの載置面17aが、それぞれ30[mm]の空隙Sを有するように、平行に配置されている。また、ワークWであるプリント基板の大きさが一辺500[mm]、載置プレートのピッチP(図4参照)が35[mm]、ガルバノスキャナ14によるスキャンエリアは一辺が30[mm]に設定されている。
【0035】
載置面17aにおける、隣接する載置プレート17との空隙Sが30[mm]に設定され、スキャンエリアが一辺30[mm]であるので、スキャンエリアにかかる載置プレート17の載置面17aは必ず1本または0本となる。ここで、ワークWの厚さが0.1[mm]のとき、空隙Sが97[mm]でもワークWが撓まず、加工精度も良好であるというデータが得られている。よって、載置プレート17を1枚下降退避させても本実施例の空隙SはワークWの厚さが0.1[mm]以下での安全率を見込んで65[mm]に設定してあるのでワークWは撓むことなく良好な加工精度を得ることができる。
【0036】
ワークW全域の加工穴位置へのレーザショットを行うには、一辺が30[mm]のスキャンエリアを順次あてがうようにXYテーブル3を位置決めしていくことが必要であるが、XYテーブル3の位置決め位置は予めプログラム変換により解っているので、これからレーザショットするスキャンエリア内に載置プレート17があるかの判別は容易である。
【0037】
従って、一つのスキャンエリア内のレーザショットが完了し、次のスキャンエリアへXYテーブル3が移動する移動時間内に、次のスキャンエリアにかかる載置プレート17を1本又は0本下降させ、それと同期して下降する載置プレート17の吸引を遮断する、若しくは、逆にレーザショットの完了したスキャンエリアにかかっていた載置プレート17を上昇させ、吸引を再開するように繰り返して加工を進める。このようにすれば、常にワークWを貫通するレーザの先は空間又は下降退避した載置プレート17があるので、載置面17aでの反射光によるワークWへのダメージを防止し、加工品質を向上できる。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザ加工装置
3 移動テーブル(XYテーブル)
9 加工ヘッド
16 枠体
16a 側端部
16b ガイド孔
16c 底面
17 載置プレート
17a 載置面
17b 本体部
17c 先細部
19 突出部
20 吸着穴
21 真空源
22 空洞部
26 スプリング
27 昇降装置
C 制御部
M,S 空隙
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のスキャンエリアでワークを加工する加工ヘッドと、
前記ワークを載置し、前記スキャンエリア間を移動、位置決めする移動テーブルと、を有するレーザ加工装置において、
前記移動テーブル上に設置され、上面が前記ワークの載置面となる複数の載置プレートと、
前記複数の載置プレートをそれぞれ昇降する昇降装置と、
前記スキャンエリア間の前記移動テーブルの移動、位置決めに同期して、前記複数の載置プレートのうち前記スキャンエリアにかかる載置プレートのみを下降退避すべく前記昇降装置を制御する制御部と、を備え、
前記載置プレートの少なくとも前記載置面が、隣接する載置プレートとの間に所定空隙を存するように、前記複数の載置プレートを平行に配置してなる、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記複数の載置プレートは、隣接する前記載置面の間の空隙が前記スキャンエリアの一辺以上の大きさの間隔で配置され、前記スキャンエリア内に存在する前記載置プレートが0本または1本である、
請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記載置プレートは、断面矩形状の本体部と、該本体部の上方に位置し、断面が前記載置面である上面に向かって先細形状となる先細部と、を備え、上下方向に所定幅を有し、かつ前記断面方向に所定肉厚を有する板状部材からなり、
前記載置プレートの前記断面に直交する長手方向の両端部が前記昇降装置により支持されてなる、
請求項1又は2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記複数の載置プレートは、前記本体部の間においても所定空隙を存し平行に配置され、
前記移動テーブルと一体の枠体に、複数のスプリングにより上方に向けて付勢されて前記複数の載置プレートが支持され、
前記枠体の対向する一対の側端部に複数のガイド孔を設け、
前記複数の載置プレートは、それぞれ前記本体部の長手方向の両端部に突出部を有し、
前記各突出部を前記各ガイド孔にそれぞれ嵌挿して、前記複数の載置プレートが、前記枠体に上下方向移動自在に支持され、かつ前記スプリングにより付勢されて前記突出部が前記ガイド孔により位置決めされた状態で、前記載置プレートの載置面と、前記枠体の側端部の上面とが同一平面になるように設定されてなる、
請求項3記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記載置プレートは、前記載置面に開口し、前記ワークを吸着する吸着穴と、
前記吸着穴に連通し、前記載置プレート内部を前記長手方向に延びて前記載置プレートの端面で真空源と接続する空洞部と、を備え、
前記制御部が、前記スキャンエリアにかかる前記載置プレートを下降退避すべく前記昇降装置への出力に対応して、該下降退避させる前記載置プレートによる前記ワークの吸引を遮断するように制御してなる、
請求項1ないし4のいずれか記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86142(P2013−86142A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229955(P2011−229955)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】