説明

レーザ彫刻性が改良されたID書類用層構造およびフィルム

本発明は、レーザ彫刻のための特性が改良された層構造、特に共押出しフィルム形態の前記層構造の実施の形態、および前記層構造を有するセキュリティ書類、好ましくは認証書類に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ彫刻性が改良された層構造、特に共押出しフィルム形態のこのような層構造の実施の形態、およびこのような層構造を有するセキュリティ書類、好ましくは認証書類に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ彫刻によってプラスチックフィルムを彫刻することは、フィルムコンポジットの製造における重要な工程である。このようなフィルムコンポジットは、たとえば、セキュリティ書類、特にパスポート、通行証、IDカードまたはクレジットカードのような認証書類にとって、大きな役割を果たす。レーザ彫刻によってカードを白黒に個人化すること、すなわち文字または画像、たとえば、白黒写真を施すことが一般的に知られている。レーザ彫刻による個人化は一般的に、特に偽造に対するその高いセキュリティ性を特徴とする。(文字)画像をカードの内側に形成し、(文字)画像を除去できないように、かつ新しい(文字)画像を製造できないようにする。たとえば、カードが全体的にポリカーボネートから成る場合には、カードをそれぞれ個々の層に分離して、レーザ層に達することはできない。
【0003】
セキュリティ書類、特に認証書類の個人化では、鮮鋭度および解像度の改良に対する要求が高まっている。
【0004】
欧州特許出願第EP 190 997 A2号公報は、レーザ彫刻用の各種無機または有機顔料を記載しており、これを0.001〜10重量%(10〜100,000重量ppm)、好ましくは0.01〜3重量%(100〜30,000重量ppm)の量で使用する。例として記載される実施の形態では、顔料を1.8重量%(18,000重量ppm)の量で使用する。このような高濃度のレーザ感応性顔料をレーザ彫刻用に使用する場合には、レーザ彫刻可能層内の凝集体が、レーザ彫刻時にいわゆる「バーナ」、すなわち厚い黒点となり、したがって作成される文字または画像の品質を著しく害するといった問題がある。さらに、特に黒色顔料を使用する場合には、このような高濃度はベース材料を著しく灰色化させ、その結果作成される文字または画像に関するコントラスト、さらにはその鮮鋭度および解像度を低下させる。
【0005】
欧州特許出願第EP 232 502 A2号公報は、PVCベースの認証カードのレーザ彫刻用黒色顔料として、カーボンブラックを使用することを記載している。カーボンブラックを、PVCパウダー100kg当たり0.1〜20g(1〜200重量ppm)の量で、好ましくはPVCパウダー100kg当たり0.6g(6重量ppm)の量で使用する。ここでも高いカーボンブラック濃度に伴う上記問題がある。カーボンブラック濃度が低ければ好ましいのであるが、作成される文字または画像の鮮鋭度および解像度が最適でなく、したがって改良するべきである。
【0006】
欧州特許出願第EP 1 056 041 A2号公報では、多層認証カードにおけるレーザ彫刻の鮮鋭度および解像度は、レーザ感応性添加剤を含有する層をできるだけ薄く、すなわち、50μmより薄く作成すると、改良されうることを記載している。欧州特許出願第第EP 1 056 041 A2号公報は、使用される添加剤の濃度に非常に影響されることを示唆していない。ある実施例では、ラッカー組成物に基づいて200ppmの量のカーボンブラックを使用しているが、これは乾燥後には、乾燥層内で著しく高い濃度となっている。欧州特許出願第第EP 1 056 041 A2号公報に記載される実施の形態でも、凝集体形態になり、ベース材料の灰色化が増すといった不都合を有し、その結果作成される文字または画像の鮮鋭度および解像度が最適でなく、したがって改良するべきである。
【0007】
日本の特許出願第JP 2007−210166号公報は、3層のレーザ彫刻可能なポリカーボネートの共押出しフィルムを記載しており、3層全てが必ずレーザ感応性添加剤を含有しなければならない。しかし、3層全てにレーザ感応性添加剤が存在することは、コントラストを損なうこととなり、したがって、その結果作成される文字または画像の鮮鋭度および解像度が同様に最適でなく、改良するべきである。
【0008】
したがって、ベース材料の灰色化が増すために、色効果が劣悪であるといった不都合を受けることなく、セキュリティ書類、特に認証書類を個人化するために、レーザ彫刻によって組み込まれる文字または画像の鮮鋭度および解像度を改良することについての要求は、引き続きあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的はしたがって、レーザ彫刻によって、セキュリティ書類、特に認証書類を個人化レーザ彫刻するのに好適な層構造を提供することであって、この層構造に、ベース材料の灰色化が増すために、色効果が劣悪であるといった不都合を受けることなく、公知のシステムに比べて改良された鮮鋭度および解像度を有する文字または画像を、レーザ彫刻によって組み込む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと、少なくとも1つのレーザ感応性添加剤を40〜180ppmの量で含有し、5〜30μmの層厚を有する少なくとも1つの層を備える層構造をレーザ彫刻する場合に、ベース材料の灰色化が増すために劣悪な色効果が生じることなく、このような改良された鮮鋭度および解像度に達することができることを見出した。このような層に好適なキャリアは、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有するさらなる層である。
【0011】
したがって本発明は、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層および
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと、レーザ感応性添加剤として少なくとも1つの黒色顔料とを含有する少なくとも1つの層を備え、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層はレーザ感応性添加剤を含まず、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと、レーザ感応性添加剤として少なくとも1つの黒色顔料とを含有する層は、5〜30μmの層厚を有し、レーザ感応性添加剤としての黒色顔料は、その層内に40〜180ppmの量で存在することを特徴とする
層構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】レーザ彫刻されたIDカードがデジタル化された例。
【0013】
【図2】最適露出のヒストグラムの例。
【0014】
【図3】例示的IDカードについて、3つのカラーチャネル、レッド、グリーンおよびブルーについてのこれらの強度曲線。
【0015】
【図4】グレイスケール諧調度の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の範囲内で、ppmは示さない限り重量ppmを意味するものと理解される。
【0017】
本発明による層厚およびレーザ感応性添加剤の量の選択によって、十分に透明である一方で、しかしながら他方では、レーザエネルギーに対して十分に吸収の中心となり、したがって品質、すなわち鮮鋭度および解像度が改良された、レーザ彫刻による彫刻が可能となる。
【0018】
レーザ彫刻によるプラスチックフィルムの彫刻は、当業者の間では短くレーザ彫刻と呼ばれ、以後もそう呼ぶ。したがって「レーザ彫刻される」という表現は、以後レーザ彫刻によって彫刻されることを意味するものと理解される。レーザ彫刻法は当業者に公知であり、レーザ印刷による印刷と混同されない。
【0019】
好適なレーザ感応性添加剤はたとえば、いわゆるレーザマーキング添加剤であり、すなわち使用されるレーザの波長範囲、好ましくはND:YAGレーザ(ネオジム−ドープイットリウム−アルミニウム−ガーネットレーザ)の波長範囲に吸収を持つ添加剤のことである。このようなレーザマーキング添加剤および成形組成物におけるその使用は、たとえば、国際特許出願第WO−A 2004/50766およびWO−A 2004/50767号公報に記載され、DSMによって商品名ミカブ(Micabs)(登録商標)で市販されている。レーザ感応性添加剤として好適なさらなる吸収剤は、たとえば、国際特許出願第WO−A 2006/042714号公報に記載されるような、カーボンブラックおよびリン含有錫/銅混合酸化物である。
【0020】
明色背景上に暗色をレーザ彫刻することによる彫刻にとって、レーザ感応性添加剤は好ましい。本発明の範囲内で特に好ましいレーザ感応性添加剤は、黒色顔料である。最も特に好ましいレーザ感応性添加剤は、カーボンブラックである。
【0021】
レーザ感応性添加剤の粒子サイズについて、100nm〜10μmの範囲が好ましく、50nm〜2μmの範囲が特に好都合である。
【0022】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層および、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤を含有する層の両方にある熱可塑性プラスチックは、好ましくはエチレン性不飽和モノマーのポリマーおよび/または2官能性反応性化合物の重縮合生成物および/または2官能性反応性化合物の付加重合生成物から選択される少なくとも1つの熱可塑性プラスチックであってもよい。いくつかの用途では、透明な熱可塑性プラスチックを使用することが好都合で、したがって好ましい場合がある。少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層および、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤を含有する層の熱可塑性プラスチックは、同じでもまたは異なっていてもよい。
【0023】
特に好適な熱可塑性プラスチックは、ジフェノールに基づくポリカーボネートまたはコポリカーボネート、ポリまたはコポリアクリレートおよびポリまたはコポリメタクリレート、たとえば、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレンとのポリマーまたはコポリマー、たとえば、好ましくは、ポリスチレン(PS)またはポリスチレンアクリロニトリル(SAN)、熱可塑性ポリウレタン、さらにはポリオレフィン、たとえば、好ましくは、ポリプロピレンタイプまたは環状オレフィンに基づくポリオレフィン(たとえば、トパス(TOPAS)(登録商標),ヘキスト(Hoechst))、テレフタル酸の重縮合または共重縮合生成物、たとえば、好ましくは、ポリまたはコポリエチレンテレフタレート(PETまたはCoPET)、グリコール−変性PET(PETG)、グリコール−変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTG)またはポリまたはコポリブチレンテレフタレート(PBTまたはCoPBT)、ナフタレンジカルボン酸の重縮合または共重縮合生成物、たとえば、好ましくは、ポリエチレングリコールナフタレート(PEN)、少なくとも1つのシクロアルキルジカルボン酸の重縮合または共重縮合生成物、たとえば、好ましくは、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボン酸(PCCD)、ポリスルホン(PSU)、または上記熱可塑性プラスチックの混合物である。
【0024】
好ましい熱可塑性プラスチックは、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートまたは少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含有する混合物である。少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、少なくとも1つのテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のまたはシクロアルキルジカルボン酸の、好ましくはシクロヘキサンジカルボン酸の少なくとも1つの重縮合または共重縮合生成物とを含有する混合物が、特に好ましい。特に500〜100,000、好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜40,000の平均分子量Mwを有するポリカーボネートまたはコポリカーボネートまたは、これらと10,000〜200,000、好ましくは26,000〜120,000の平均分子量Mwを有するテレフタル酸の少なくとも1つの重縮合または共重縮合生成物との混合物が、最も特に好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態では、ポリアルキレンテレフタレートが、テレフタル酸の重縮合または共重縮合生成物として好適である。好適なポリアルキレンテレフタレートはたとえば、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体(たとえば、ジメチルエステルまたは無水物)と、脂肪族、脂環族またはアラリファティック(araliphatic)ジオールとの反応生成物およびこれらの反応生成物の混合物である。
【0026】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族ジオールから、公知の方法によって(クンストストッフ−ハンドブッフ(Kunststoff-Handbuch),Vol.VIII,p.695ff,カール−ハンサー−ベラグ(Karl-Hanser-Verlag),ムニッヒ(Munich)1973)調製されてもよい。
【0027】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に基づいて、少なくとも80mol%、好ましくは90mol%のテレフタル酸基と、ジオール成分に基づいて、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール基とを含有する。
よい。
【0028】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、20mol%までで、8〜14個の炭素原子を有する他の芳香族ジカルボン酸または4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、たとえば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸の基を含有してもよい。
【0029】
エチレンおよび1,4−ブタンジオールグリコール基に加えて、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、80mol%までで、3〜12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオールまたは6〜21個の炭素原子を有する脂環族ジオール、たとえば、1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールおよび2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ([ベータ]−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス(3−[ベータ]−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキフェニル)−プロパンを含有してもよい(ドイツ特許出願第DE−OS 24 07 674、24 07 776、27 15 932号公報参照)。
【0030】
ポリアルキレンテレフタレートを、たとえば、ドイツ特許出願第DE−OS 19 00 270号公報および米国特許出願第US−PS 3 692 744号公報に記載されるように、比較的少量の3価または4価アルコールまたは3または4塩基性カルボン酸を導入することによって分岐してもよい。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリト酸、トリメチロール−エタンおよび−プロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0031】
好ましくは、酸成分に基づいて1mol%以下の分岐剤を使用する。
【0032】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(たとえば、そのジアルキルエステル)と、エチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール基からのみ調製されたポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が、特に好ましい。
【0033】
また、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、少なくとも2つの上記酸成分から、および/または少なくとも2つの上記アルコール成分から調製されたコポリエステルであり;特に好ましいコポリエステルはポリ(エチレングリコール/1,4−ブタンジオール)テレフタレートである。
【0034】
成分として好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gの固有粘度を有し、これは各場合フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で25℃で測定される。
【0035】
本発明の特に好ましい実施の形態では、少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、テレフタル酸の少なくとも1つの重縮合または共重縮合生成物との混合物は、少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物である。このようなポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、好ましくは、1〜90重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、99〜10重量%のポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物、好ましくは、1〜90重量%のポリカーボネートと、99〜10重量%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物であってもよく、合計の量は100重量%である。このようなポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、特に好ましくは、20〜85重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、80〜15重量%のポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物、好ましくは、20〜85重量%のポリカーボネートと、80〜15重量%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物であってもよく、合計の量は100重量%である。このようなポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、ポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、最も特に好ましくは、35〜80重量%のポリカーボネートまたはコポリカーボネートと、65〜20重量%のポリまたはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリまたはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物、好ましくは、35〜80重量%のポリカーボネートと、65〜20重量%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを含有する混合物であってもよく、合計の量は100重量%である。最も特に好ましい実施の形態では、混合物は、上記組成物の中では、ポリカーボネートとグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの混合物であってもよい。
【0036】
好ましい実施の形態では、好適なポリカーボネートまたはコポリカーボネートは特に芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートである。
【0037】
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは線形でも、公知の方法で分岐されてもよい。
【0038】
これらのポリカーボネートの調製は、ジフェノール、炭酸誘導体、任意の鎖重合停止剤および任意の分岐剤から、公知の方法で行われうる。ポリカーボネートの調製に関する詳細は、約40年にわたって多くの特許明細書に記録されている。例として、ここではシュネル(Schnell),「ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates)」,ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),Volume9,インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),ニューヨーク,ロンドン,シドニー1964、D.フライタグ(Freitag),U.グリゴ(Grigo),P.R.ミュラー(Muller),H.ノウバートン(Nouvertne)’,バイエル(BAYER)AG,「ポリカーボネート(Polycarbonates)」,エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering),Volume11,Second Edition,1988,pages648−718、および最後にドレス(Dres.)U.グリゴ(Grigo),K.キルヒャー(Kirchner)およびP.R.ミュラー(Muller)「ポリカーボネート(Polycarbonate)」,ベッカー/ブラウン(Becker/Braun),クンストストッフ−ハンドブッフ(Kunststoff-Handbuch),Volume3/1,ポリカーボネート(Polycarbonate),ポリアセタール(Polyacetale),ポリエステル(Polyester),セルロースエステル(Celluloseester),カール・ハンサー・ベラグ・ムニッヒ(Carl Hanser Verlag Munich),ウィーン1992,pages117−299のみを参照する。
【0039】
好ましいジフェノールはたとえば、一般式(I)のジヒドロキシアリール化合物であってもよく、
HO−Z−OH (I)
ここで、Zは6〜34個の炭素原子を有する芳香族基(これは1以上の任意に置換された芳香族核を含んでもよい)、および脂肪族または脂環族基またはアルキルアリールまたはブリッジ要素として複素原子である。
【0040】
好適なジヒドロキシアリール化合物の例は:ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、およびその環上がアルキレート化およびハロゲン化された化合物である。
【0041】
これらのおよびさらなる好適なジヒドロキシアリール化合物はたとえば、ドイツ特許出願第DE−A3 832 396号公報、フランス特許出願第FR−A 1 561 518号公報、H.シュネル(Schnell),ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates),インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),ニューヨーク1964,p.28ff;p.102ffに、および D.G.レグランド(Legrand),J.T.ブレンドラー(Bendler),ポリカーボネート科学技術ハンドブック(Handbook of Polycarbonate Science and Technology),マーセル・デッカー(Marcel Dekker)ニューヨーク2000,p.72ffに記載される。
【0042】
好ましいジヒドロキシアリールはたとえば、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロ−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−シクロヘキサン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホンおよび2,2’,3,3’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオールまたは
式(Ia)のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンであり、
【化1】

ここで、RおよびRは互いに独立して、水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、好ましくはフェニル、およびC〜C12−アラルキル、好ましくはフェニル−C〜C−アルキル、特にベンジルを表し、
mは4〜7の整数、好ましくは4または5を表し、
およびRはX毎に独立して選択されてもよく、互いに独立して、水素またはC〜C−アルキルを表し、
Xは炭素を表し、
但し、少なくとも1つの原子X上では、RおよびRは同じアルキルを表す。式(Ia)において、RおよびRは、好ましくは1または2個の原子X上では、特に1個の原子X上でのみ、同じアルキルである。
【0043】
式(Ia)において、基RおよびRについて好ましいアルキル基は、メチルである。ジフェニル置換炭素原子(C−1)に関してアルファ位置にあるX原子は好ましくは、ジアルキル置換ではなく;しかし、C−1に関してベータ位置ではアルキル2置換が好ましい。
【0044】
式(Ia)の特に好ましいジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、脂環族基中に5および6個の環炭素原子Xを有するもの(式(Ia)において、m=4または5)、たとえば、式(Ia−1)〜(Ia−3)のジフェノールである。
【化2】

【0045】
式(Ia)の最も特に好ましいジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンである(式(Ia−1)、ここでRおよびRはHである)。
【0046】
このようなポリカーボネートを、欧州特許出願第EP−A 359 953号公報に従って、式(Ia)のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンから調製してもよい。
【0047】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼンおよび1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンである。
【0048】
最も特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。
【0049】
1個のジヒドロキシアリール化合物をホモポリカーボネートの形態で、および各種ジヒドロキシアリール化合物をコポリカーボネートの形態で、共に使用することができる。式(I)または(Ia)の1個のジヒドロキシアリール化合物をホモポリカーボネートの形態で、および式(I)および/または(Ia)の複数のジヒドロキシアリール化合物をコポリカーボネートの形態で、共に使用することができる。各種ジヒドロキシアリール化合物をランダムに、およびブロック状に共に結合させてもよい。式(I)および(Ia)のジヒドロキシアリール化合物のコポリカーボネートの場合には、式(Ia)のジヒドロキシアリール化合物の、任意に使用される式(I)の他のジヒドロキシアリール化合物に対するモル比は、好ましくは99mol%の(Ia):1mol%の(I)〜2mol%の(Ia):98mol%の(I)の間、好ましくは99mol%の(Ia):1mol%の(I)〜10mol%の(Ia):90mol%の(I)の間、特に99mol%の(Ia):1mol%の(I)〜30mol%の(Ia):70mol%の(I)の間である。
【0050】
最も特に好ましいコポリカーボネートは、式(Ia)および(I)のジヒドロキシアリール化合物、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンと2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンを用いて調製されてもよい。
【0051】
好適な炭酸誘導体はたとえば、一般式(II)のジアリールカーボネートであってもよく、
【化3】

ここで、R、R’およびR”は同じまたは異なり、互いに独立して、水素、線形または分岐C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表し、Rはさらに、−COO−R”’を表してもよく、ここでR”’は水素、線形または分岐C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表す。
【0052】
好ましいジアリールカーボネートはたとえば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニル−フェニルカーボネートおよびジ−(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソ−ブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ペンチルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニルフェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−ナフチル)−フェニル]カーボネート、ジ−[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−プロピルサリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソ−ブチルサリチレート)カーボネート、tert−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(tert−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ−(フェニルサリチレート)カーボネートおよび ジ−(ベンジルサリチレート)カーボネートである。
【0053】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネートおよびジ−(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0054】
ジフェニルカーボネートが最も特に好ましい。
【0055】
1個のジアリールカーボネートおよび各種ジアリールカーボネートを共に使用することができる。
【0056】
末端基を制御または変更するために、鎖重合停止剤としてたとえば、ジアリールカーボネートの調製で使用されなかった1以上のモノヒドロキシアリール化合物を、さらに使用することができる。このような化合物は一般式(III)のものであってもよく、
【化4】

ここでRは、線形または分岐C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリール、C〜C34−アリールまたは−COO−Rを表し、ここでRは水素、線形または分岐C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表し、
、Rは同じまたは異なり、互いに独立して、水素、線形または分岐C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表す。
【0057】
このようなモノヒドロキシアリール化合物はたとえば、1−、2−または3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)−フェノール、4−(2−ナフチル)−フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、イソプロピルサリチレート、n−ブチルサリチレート、イソブチルサリチレート、tert−ブチルサリチレート、フェニルサリチレートおよびベンジルサリチレートである。
【0058】
4−tert−ブチルフェノール、4−イソオクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0059】
好適な分岐剤は3以上の官能性基を有する化合物、好ましくは3以上のヒドロキシル基を有するものでありうる。
【0060】
3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する好適な化合物はたとえば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−(4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノールおよびテトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタンである。
【0061】
3以上の官能性基を有する他の好適な化合物はたとえば、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸(トリクロライド)、シアヌル酸トリクロライドおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0062】
好ましい分岐剤は3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0063】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層はさらに、少なくとも1つの充填剤を含む。充填剤は好ましくは、少なくとも1つの着色顔料および/または充填される層を半透明にするための少なくとも1つの他の充填剤、特に好ましくは白色顔料、最も特に好ましくは二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたは硫酸バリウムであり、好ましい実施の形態では、二酸化チタンである。
【0064】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層に、少なくとも1つのこのような充填剤を充填することで、組み込まれた彫刻または画像の外観を改良し、その結果、改良された鮮鋭度および解像度の評価もさらに向上する。
【0065】
上記充填剤は好ましくは、たとえば、押出しまたは共押出しが行われてプラスチックフィルムが成形される前の充填剤と熱可塑性プラスチックの全重量に基づいて、2〜45重量%、特に好ましくは5〜30重量%の量で、熱可塑性プラスチックに添加される。
【0066】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する第1層に加えて、本発明による層構造は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する少なくとも1つのさらなる、好ましくは第2層を備え、第2層は、5〜30μmの層厚を有し、40〜180ppmの量でレーザ感応性添加剤を含有しており、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと任意の少なくとも1つの充填剤とを含有する層が、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2つの層の間に配置される。
【0067】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層は好ましくは、8〜25μmの層厚を有する。
【0068】
レーザ感応性添加剤は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層内に、好ましくは50〜160ppmの量で、特に好ましくは60〜150ppmの量で、最も特に好ましくは60〜100ppmの量で存在する。
【0069】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと任意の少なくとも1つの充填剤とを含有する層は好ましくは、30μm〜375μm、特に好ましくは50μm〜250μmおよび最も特に好ましくは75μm〜200μmの層厚を有してもよい。
【0070】
本発明による層構造は、たとえば、好ましくは存在する層を共押出しすることによって、存在する層をラミネーションすることによって、または押出しラミネーション、すなわち少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層を、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと任意の少なくとも1つの充填剤とを含有する予め作成された層上に押出しコーティングすることによって製造されてもよい。各種共押出しおよび押出しコーティングが好ましい。共押出しによる製造が最も特に好ましい。
【0071】
共押出しによって製造されるこのようなフィルムは、本発明による特に好ましい実施の形態の層構造を示し、このフィルムも同様に本発明によって提供される。
【0072】
したがって、本発明は、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層および
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する少なくとも1つの層
を備え、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層は、5〜30μmの層厚を有し、レーザ感応性添加剤は、その層内に40〜180ppmの量で存在することを特徴とする
共押出しフィルムを提供する。
【0073】
好ましい実施の形態は、少なくとも3層、好ましくは3層の共押出しフィルムであり、これは、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2層を備え、この層は5〜30μmの層厚を有し、40〜180ppmの量でレーザ感応性添加剤を含有し、かつ少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1層、好ましくは1層を備え、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有するこの層は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2層の間に配置される。
【0074】
本発明による共押出しフィルムの最も特に好ましい実施の形態では、レーザ感応性添加剤は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層層内に、40〜100ppmの量で存在する。
【0075】
このような少なくとも3層、好ましくは3層の共押出しフィルムは、セキュリティ書類に組み込まれた場合に、レーザ彫刻によって彫刻可能な層が、任意に少なくとも1つの充填剤が充填された熱可塑性プラスチック層に関して、外向きを確保する必要がないといった利益を有する。本発明による特に好ましい共押出しフィルムの対称構造によって、フィルムをセキュリティ書類に組み込んだ場合に、向きに関係なくレーザ彫刻することができる。
【0076】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層は好ましくは、少なくとも1つの上記充填剤を含有する。
【0077】
本発明による層構造に関して、上で行われた説明(記載の層厚、構成要素および好ましい範囲を含む)は、本発明による共押出しフィルムにも同様に当てはまる。
【0078】
本発明による層構造および本発明による共押出しフィルムはさらに、少なくとも1つの上記熱可塑性プラスチックを含有する好ましくは透明層を備えてもよい。
【0079】
本発明による層構造、およびしたがって本発明による共押出しフィルムは、レーザ彫刻によって彫刻されるセキュリティ書類、好ましくは認証書類の一部として非常に好適である。
【0080】
本発明による層構造は好ましくは、レーザ彫刻によってセキュリティ書類、特に好ましくは認証書類に組み込まれるべき文字および/または画像、好ましくは個人化文字および/または画像の鮮鋭度および品質を改良するのに好適である。最も特に好ましくは、本発明による層構造は、接着またはラミネートコンポジットの様式で、プラスチックカード、たとえば、身分証明書カード、パスポート、運転免許証、クレジットカード、銀行カード、アクセス制御用カードまたは他の身分証明書類等の形態での認証書類に好適である。本発明の範囲内で好ましい認証書類は、セキュリティ機能たとえば、チップ、写真、生物学的データ等を有する多層シート状書類である。これらのセキュリティ機能は、可視可能でも、または少なくとも外部からスキャン可能でもよい。好ましくはこのような認証書類は銀行カードとパスポートの間の大きさを有する。このような認証書類はまた、いくつかの部分を有する書類の一部、たとえば、紙またはカードから成る部分を含むパスポートでは、プラスチック材料の認証書類であってもよい。
【0081】
したがって、本発明はさらに、本発明による少なくとも1つの層構造を備えるセキュリティ書類、好ましくは認証書類を提供する。
【0082】
本発明によるセキュリティ書類、好ましくは認証書類は、さらなる追加の層を備えてもよく、これを介してたとえば、さらなる情報を、セキュリティ書類、好ましくは認証書類に組み込んでもよい。
【0083】
このようなさらなる情報とはたとえば、個人の肖像写真または非個人の一般的情報であってもよく、たとえば、これを何らかの一般的セキュリティ書類、好ましくは認証書類に、同じ形態で含ませる。
【0084】
このような層は、たとえば、常套の印刷法、好ましくはインクジェットまたはレーザ印刷、特に好ましくはインクジェット印刷によって予め情報を備えるフィルムから、セキュリティ書類、好ましくは認証書類へと、組み込まれてもよい。
【0085】
インクジェット印刷法によって印刷されうるフィルムは当業者に公知であり、たとえば、任意に少なくとも1つの上記充填剤を含有する少なくとも1つの上記熱可塑性プラスチックを備えるフィルムであってもよい。特に好ましい実施の形態では、充填剤、たとえば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム等によって白色または半透明に着色されたプラスチックフィルムを、印刷された情報をより良好に可視可能にする目的で、使用する。
【0086】
レーザ印刷によって、特にカラーレーザ印刷によって印刷されるフィルムでは、10〜1013Ω、好ましくは10〜1012Ωの比表面抵抗を有する上記熱可塑性プラスチックの1つのプラスチックフィルムが特に好適である。比表面抵抗(Ω)はDIN IEC 93に従って決定される。
【0087】
フィルムは好ましくは、所定の比表面抵抗を達成するために、熱可塑性プラスチックに、たとえば、部分的にフッ素化または過フッ素化された有機酸の3級または4級、好ましくは4級アンモニウムまたはホスホニウム塩、または好ましくは部分的にフッ素化または過フッ素化されたアルキルスルホン酸、好ましくはパーフルオロアルキルスルホン酸の4級アンモニウムまたはホスホニウムヘキサフルオロホスフェートから選択される添加剤を添加したフィルムであってもよい。
【0088】
好ましく好適な4級アンモニウムまたはホスホニウム塩は:
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、
パーフルオロオクタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩、
パーフルオロブタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、
パーフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩、
N−メチル−トリプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート、
N−エチル−トリプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート、
テトラプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート、
ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート、
ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート、
N−メチル−トリブチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート、
シクロヘキシルジエチルメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート、
シクロヘキシルトリメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート、
および対応するホスホニウム塩である。アンモニウム塩が好ましい。
【0089】
好ましくは、1以上の上記4級アンモニウムまたはホスホニウム塩、すなわち混合物を使用することも可能である。
【0090】
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩、およびパーフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩および対応するパーフルオロブタンスルホン酸塩が最も特に好適である。
【0091】
最も特に好ましい実施の形態では、パーフルオロブタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩(ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロブタンスルホネート)を添加剤として使用してもよい。
【0092】
上記塩は公知であり、公知の方法によって調製されてもよい。スルホン酸塩はたとえば、等モル量のフリーのスルホン酸と対応する陽イオンのヒドロキシ形態とを、水中で、室温で組み合わせ、溶液を濃縮することによって調製されてもよい。他の調製方法はたとえば、ドイツ特許出願第DE−A 1 966 931号公報およびオランダ特許出願第NL−A 7 802 830号公報に記載される。
【0093】
上記塩は好ましくは、たとえば、押出しまたは共押出しによって行われうるプラスチックフィルムの成形前に、熱可塑性プラスチックに、0.001〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で添加される。
【0094】
本発明によるセキュリティ書類、好ましくは認証書類はまた、UV放射線に対する保護、機械的ダメージに対する保護を与えるさらなる追加の層、たとえば、引っ掻き耐性コーティング等を備えてもよい。
【0095】
本発明によるセキュリティ書類、好ましくは認証書類はたとえば、以下のように製造されてもよい:セキュリティ書類を構成するために、フィルムスタックを各種フィルムから形成し、ラミネートしてコンポジットを得、次にセキュリティ書類、好ましくは認証書類に好適な形態に切断する。次に、さらなる層を任意にコンポジットラミネートに、たとえば、さらなるフィルムの粘着性接着および/またはラミネーションによって、またはラッカー組成物によってコーティングすることによって、塗布してもよい。
【0096】
以下の実施例は、実施例によって本発明を説明する役割を果たすものであって、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0097】
(本発明による層構造を製造するためのマスターバッチ(組成物)の調製)
(実施例1:レーザ感応性添加剤を含有する層を製造するためのマスターバッチの混練)
レーザ感応性添加剤を含有する層を製造するためのマスターバッチの調製を、常套の二軸性混練押出し成形機(ZSK32)によって、250〜330℃の常套のポリカーボネート処理温度で行った。
【0098】
以下の組成を有するマスターバッチを混練し、次いで粒剤化した:
・マクローロン(Makrolon)(登録商標)3108ポリカーボネート(バイエル・マテリアルサイエンス(Bayer MaterialScience)AGから)を99.994重量%の量で、
・95nmの平均粒子サイズを有するフラムラス(Flammrus)101(カーボンブラック、デグッサ(Degussa)から)を0.006重量%(60ppm)の量で。
【0099】
(実施例2:熱可塑性プラスチックと、充填剤として白色顔料を含有する層を製造するためのマスターバッチの混練)
熱可塑性プラスチックと、充填剤として白色顔料を含有する層を製造するためのマスターバッチの調製を、常套の二軸性混練押出し成形機(ZSK32)によって、250〜330℃の常套のポリカーボネート処理温度で行った。
【0100】
以下の組成を有するマスターバッチを混練し、次いで粒剤化した:
・マクローロン(Makrolon)(登録商標)3108ポリカーボネート(バイエル・マテリアルサイエンス(Bayer MaterialScience)AGから)を85重量%の量で、
・白色顔料充填剤として二酸化チタン(クロノス(Kronos)(登録商標)2230、クロノス・チタン(Kronos Titan)から)を15重量%の量で。
【0101】
(本発明による層構造の共押出しフィルムの形態での製造)
(実施例3〜5:充填剤として白色顔料を含有する熱可塑性プラスチック層と、レーザ感応性添加剤を含有する熱可塑性プラスチック層とを備える2層共押出しフィルム)
以下の2層共押出しフィルムを実施例1および2のマスターバッチから製造した。レーザ感応性添加剤のカーボンブラックの量は、実施例1のマスターバッチを、バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートで希釈することによって変更した。レーザ感応性添加剤と熱可塑性プラスチックとを含有する層をレーザ感応性層と記載し;熱可塑性プラスチックと充填剤として白色顔料とを含有する層を基材層と記載した。
【0102】
以下の組成を有する100μmの厚さのレーザ彫刻可能な2層フィルムを製造した:
【表1】

【0103】
(実施例6および7:充填剤なしの熱可塑性プラスチック層と、レーザ感応性添加剤を含有する熱可塑性プラスチック層とを備える2層共押出しフィルム)
以下の2層共押出しフィルムを実施例1のマスターバッチとバイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートから製造した。レーザ感応性添加剤のカーボンブラックの量は、実施例1のマスターバッチを、バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートで希釈することによって変更した。レーザ感応性添加剤と熱可塑性プラスチックとを含有する層をレーザ感応性層と記載し;熱可塑性プラスチックを含有し充填剤を含まない層を基材層と記載した。
【0104】
以下の組成を有する100μmの厚さのレーザ彫刻可能な2層フィルムを製造した:
【表2】

【0105】
(実施例8および9:充填剤なしの熱可塑性プラスチック層と、レーザ感応性添加剤を含有する熱可塑性プラスチック層とを備える2層共押出しフィルム)
以下の2層共押出しフィルムを実施例1のマスターバッチとバイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートから製造した。レーザ感応性添加剤のカーボンブラックの量は、実施例1のマスターバッチを、バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートで希釈することによって変更した。レーザ感応性添加剤と熱可塑性プラスチックとを含有する層をレーザ感応性層と記載し;熱可塑性プラスチックを含有し充填剤を含まない層を基材層と記載した。
【0106】
以下の組成を有する200μmの厚さのレーザ彫刻可能な2層フィルムを製造した:
【表3】

【0107】
クロムローラとマットスチールローラをカレンダに装填し、200μmの厚さのいわゆる1−4表面を有するレーザ彫刻可能なフィルムを製造した。
【0108】
(実施例10〜12:充填剤として白色顔料を含有する熱可塑性プラスチック層と、レーザ感応性添加剤を含有する2つの熱可塑性プラスチック層を備える3層共押出しフィルム)
以下の3層共押出しフィルムを実施例1および2のマスターバッチから製造した。レーザ感応性添加剤のカーボンブラックの量は、実施例1のマスターバッチを、バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートで希釈することによって変更した。レーザ感応性添加剤と熱可塑性プラスチックとを含有する層をレーザ感応性層と記載し;熱可塑性プラスチックと充填剤として白色顔料とを含有する層を基材層と記載した。
【0109】
以下の組成を有する100μmの厚さのレーザ彫刻可能な3層フィルムを製造した:
【表4】

【0110】
(実施例13:レーザ感応性添加剤を含有する層を製造するための高濃縮マスターバッチの混練)
レーザ感応性添加剤を含有する層を製造するためのマスターバッチの調製を、常套の二軸性混練押出し成形機(ZSK32)によって、250〜330℃の常套のポリカーボネート処理温度で行った。
【0111】
以下の組成を有するマスターバッチを混練し、次いで粒剤化した:
・マクローロン(Makrolon)(登録商標)3108ポリカーボネート(バイエル・マテリアルサイエンス(Bayer MaterialScience)AGから)を99.8重量%の量で、
・95nmの平均粒子サイズを有するフラムラス(Flammrus)101(カーボンブラック、デグッサ(Degussa)から)を0.2重量%(2000ppm)の量で。
【0112】
(実施例14〜20:充填剤として白色顔料を含有する熱可塑性プラスチック層と、レーザ感応性添加剤を含有する熱可塑性プラスチック層とを備える2層共押出しフィルム)
以下の2層共押出しフィルムを実施例13および2のマスターバッチから製造した。レーザ感応性添加剤のカーボンブラックの量は、実施例13のマスターバッチを、バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートで希釈することによって変更した。レーザ感応性添加剤と熱可塑性プラスチックとを含有する層をレーザ感応性層と記載し;熱可塑性プラスチックと充填剤として白色顔料とを含有する層を基材層と記載した。
【0113】
以下の組成を有する100μmの厚さのレーザ彫刻可能な2層フィルムを製造した:
【表5】

【0114】
(実施例21:レーザ彫刻可能な認証書類(IDカード)の製造)
(本発明によるIDカード層構造用に使用されるフィルム)
(フィルム1−1:白色充填フィルム)
バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートと、白色顔料充填剤として二酸化チタン(クロノス(Kronos)(登録商標)2230、クロノス・チタン(Kronos Titan)から)とに基づく100μmの厚さのポリカーボネートフィルムであって、85重量%のマクローロン3108(登録商標)と15重量%の二酸化チタンの組成を有するポリカーボネートフィルムを、押出しによって、約280℃の溶融温度で製造した。
【0115】
(フィルム1−2:白色充填フィルム)
フィルム1−1と同じ組成で400μmの厚さを有するフィルムを製造した。
【0116】
(フィルム2:透明フィルム)
バイエル・マテリアルサイエンスAGからのマクローロン3108(登録商標)ポリカーボネートに基づく50μmの厚さのポリカーボネートフィルムを、押出しによって、約280℃の溶融温度で製造した。
【0117】
上記フィルムから以下に記載するレーザ彫刻可能な層構造を、IDカードの形態にラミネートした:
層(1)フィルム2;50μm
層(2)実施例3〜12による共押出しフィルム
層(3)フィルム1−1;100μm(任意;本発明によるフィルムの厚さに依存する)
層(4)フィルム1−2;400μm
層(5)フィルム1−1;100μm(任意;本発明によるフィルムの厚さに依存する)
層(6)実施例3〜12による共押出しフィルム
層(7)フィルム2;50μm。
【0118】
上記試験構造では、ラミネートカードを比較可能な全層厚にするように、層(2)および(6)について、それぞれ100μmの層厚を有する共押出しフィルムを使用する場合には、層(3)および(5)を使用した(ISO IEC 7810:2003参照)。カードのそりを除去するために、対称な層構造のカードを選択した。
【0119】
最後に、上記手順において、フィルムからスタックを形成し、ブルックル(Burkle)からのラミネーティングプレス機で、以下のパラメータを用いて、ラミネートを行った:
170〜180℃にプレス機を予備加熱し
8分間15N/cmの圧力でプレスし、
2分間200N/cmの圧力でプレスし、
38℃にプレス機を冷却してプレス機を開放する。
【0120】
(実施例22:レーザ彫刻可能な認証書類のレーザ彫刻)
ホーバ(Foba)からのレーザ装置において、以下のパラメータを用いて、レーザ彫刻を実施例21のIDカードに行った:
レーザ媒体:Nd:YAG
波長:1064nm
出力:40ワット
電流:30A
周波数:14KHz
投入速度:200mm/秒。
【0121】
レーザ彫刻では、情報を、IDカードのレーザ彫刻可能なフィルム層(層(2))の片側のみに彫刻した。レーザ彫刻によってレーザ彫刻可能な層に彫刻された情報は、女性の完全な白黒肖像写真であり、グレイ・ステップ・ウェッジ(grey step wedge)であった。
【0122】
(実施例23:コントラストの決定)
(グレイ・ウェッジにおけるグレイスケール諧調度の決定)
グレイ・ウェッジのグレイスケール諧調度を決定するために、レーザ彫刻されたIDカードを平台スキャナによって解像度200dpiでデジタル化した。ヒストグラム(カードのデジタル化形態)は、画像内の色値の統計的頻度を示しており、ここでは画像の明るい領域が露出過剰にならず、画像の暗い領域が露出不足にならないように確保されていた。このような露出過剰および露出不足は、ヒストグラムでは、最大値曲線が0を下回ってまたは255を超えて突出せず、全ての最大値曲線が完全に0〜255の間で画像形成されることで排除した。このようなレーザ彫刻されたIDカードがデジタル化される例を、図1に示す。最適露出のヒストグラムの例を図2に示す。
【0123】
得られた24ビット画像(3個のベースカラー(レッド/グリーン/ブルー)×8ビット(256諧調)をtiffフォーマットで損失なく記憶した。
【0124】
グレイスケール諧調度を測定するために、画像分析プログラムAnalySISを用いて、グレイウェッジ全体について、水平強度プロファイルを測定した。これは、RGB(レッド/グリーン/ブルー)カラーモデルにおける各カラーチャネルについての強度曲線を与えた。たとえば、図1の例示的IDカードについて、3つのカラーチャネル、レッド、グリーンおよびブルーについてのこれらの強度曲線を図3に示す。強度Iは平均であった((R+G+B)/3=I)。
【0125】
グレイスケール諧調度の図としてのデータを示すために、グレイウェッジ領域内のラインポイントのみを評価した。グレイウェッジ前後の画像ポイントは評価に際し考慮しなかった。このようなグレイスケール諧調度の図をたとえば、図4に示す。
【0126】
このように決定されたデータによって、その調製で、スキャナソフトウェアでは白色度およびコントラストに関して同じ値にあるものでも、平台スキャン試料を比較することができ、またはいくつかの平台スキャン試料を比較することができる。
【0127】
実施例21によるIDカードに関するデータについて、レーザ彫刻によって彫刻された画像のコントラストを決定した。このコントラストは、グレイスケール諧調度の最大座標におけるグレイスケール値強度とグレイスケール諧調度の最小座標におけるグレイスケール値強度との比、すなわち商であり、グレイスケール諧調度の最大座標におけるグレイスケール値強度は全てのデータの設定で255である。この値(商)が高いほど、コントラストはより良好である。
【0128】
コントラスト決定の結果を表1に示す:
【表6】

【0129】
記載のレファレンスフィルムは先に記載したフィルム2であった。レファレンス測定は、測定におけるレーザ感応性添加剤なしのこのようなフィルムの影響を除くために、レーザ感応性添加剤なしのフィルムの商を決定する役割を果たすものであった。
【0130】
結果は、本発明による層構造を含むIDカードにレーザ彫刻によって組み込まれた白黒肖像写真のコントラストは、レーザ感応性添加剤が低含有量である比較例3、6、8、10および14に比べて、著しく高いことを示していた。レーザ感応性添加剤の含有量が高い比較例17〜20では、彫刻された肖像写真を著しく暗くする背景の著しい灰色化が、IDカードの目視検査でも観察することができた。したがって本発明による層構造は、鮮鋭度および解像度の改良をもたらし、彫刻された肖像写真の最適な色効果をもたらした。したがってレーザ感応性添加剤の含有量について選択された範囲は、彫刻された肖像写真の鮮鋭度および解像度について最適であるとともに、見る者にとっての色効果も最適であることを示している。さらに、レーザ製造肖像写真の品質および均質性を評価すると、本発明による範囲内のカーボンブラック含有量と層厚をそれぞれ有する本発明による層構造を用いた場合には、レーザ彫刻可能な層(レーザ感応性添加剤を含有する熱可塑性プラスチック層)内に、カーボンブラックの凝集体の分布をなくすことができることが明らかとなった。レーザ製造された肖像写真には、レーザ彫刻後に、いわゆるバーナと呼ばれる厚い黒点につながる凝集体は見られなかった。基材層の層厚や、または基材層内に充填剤が存在することは、レーザ彫刻によって彫刻された肖像写真の品質に、明らかな影響を与えなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層および
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと、レーザ感応性添加剤として少なくとも1つの黒色顔料とを含有する少なくとも1つの層を備え、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層はレーザ感応性添加剤を含まず、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと、レーザ感応性添加剤として少なくとも1つの黒色顔料とを含有する層は、5〜30μmの層厚を有し、黒色顔料は、その層内に40〜180ppmの量で存在することを特徴とする
層構造。
【請求項2】
レーザ感応性添加剤はカーボンブラックであることを特徴とする請求項1による層構造。
【請求項3】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層は、充填剤として少なくとも1つの白色顔料を含有することを特徴とする請求項1または2による層構造。
【請求項4】
白色顔料は二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたは硫酸バリウムであり、好ましくは二酸化チタンであることを特徴とする請求項3による層構造。
【請求項5】
個々の層内にある熱可塑性プラスチックは、互いに独立して、エチレン性不飽和モノマーのポリマーおよび/または2官能性反応性化合物の重縮合生成物、好ましくは、ジフェノールに基づく1以上のポリカーボネートまたはコポリカーボネート、ポリまたはコポリアクリレートおよびポリまたはコポリメタクリレート、スチレンとのポリマーまたはコポリマー、ポリウレタンおよびポリオレフィン、テレフタル酸の重縮合または共重縮合生成物、ナフタレンジカルボン酸の重縮合または共重縮合生成物、少なくとも1つのシクロアルキルジカルボン酸の重縮合または共重縮合生成物、ポリスルホンまたはその混合物、特に好ましくはジフェノールに基づく1以上のポリカーボネートまたはコポリカーボネートまたは少なくとも1つのポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含有する混合物から選択される少なくとも1つの熱可塑性プラスチックであることを特徴とする請求項1〜4の少なくとも1つによる層構造。
【請求項6】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有するさらなる層を備え、該層は、5〜30μmの層厚を有し、40〜180ppmの量でレーザ感応性添加剤を含有しており、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層が、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2つの層の間に配置されることを特徴とする請求項1〜5の少なくとも1つによる層構造。
【請求項7】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層と、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層が共押出しによって製造されることを特徴とする請求項1〜6の少なくとも1つによる層構造。
【請求項8】
レーザ感応性添加剤は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層内に、50〜160ppmの量で存在することを特徴とする請求項1〜7の少なくとも1つによる層構造。
【請求項9】
請求項1〜8の少なくとも1つによる少なくとも1つの層構造を含むセキュリティ書類、好ましくは認証書類。
【請求項10】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する少なくとも1つの層および
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する少なくとも1つの層
を備え、
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する層は、5〜30μmの層厚を有し、レーザ感応性添加剤は、その層内に40〜180ppmの量で存在することを特徴とする
共押出しフィルム。
【請求項11】
フィルムは少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2層を備え、該層は5〜30μmの層厚を有し、40〜180ppmの量でレーザ感応性添加剤を含有しており、ここで、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層が、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのレーザ感応性添加剤とを含有する2層の間に配置されることを特徴とする請求項10による共押出しフィルム。
【請求項12】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する層は、充填剤として少なくとも1つの白色顔料を含有することを特徴とする請求項10または11による共押出しフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−516790(P2012−516790A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548569(P2011−548569)
【出願日】平成22年1月23日(2010.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000409
【国際公開番号】WO2010/089035
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】