説明

レーザ微細加工装置及びレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法

【課題】固定治具に複数の加工対象物を装着して加工用レーザ光の照射によりレーザ微細加工を行う場合、加工対象物と固定治具の境界に段差や隙間があってもフォーカスサーボが外れず、加工対象物の加工精度を維持することが可能なレーザ微細加工装置及びレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法を提供する。
【解決手段】光加工ヘッド200が、加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにする偏光状態変更手段と、加工対象物5又は固定治具10からの反射光を偏光状態により分離し、少なくとも内側のレーザ光による加工対象物5又は固定治具10からの反射光を受光する受光光学系とを有し、受光光学系による受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が加工対象物5又は固定治具10の表面に合うようフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ手段を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用レーザ光を照射して加工対象物の加工面に微細なピットを作製するレーザ微細加工装置及びレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光加工ヘッドから出射される加工用レーザ光を平板状の加工対象物に照射し、該加工対象物の加工面に微細なピットを作製するレーザ微細加工装置が知られている。このレーザ微細加工装置において、ターンテーブル上に固定された加工対象物にレーザ光を照射し加工する装置として、例えば特許文献1に示されるようなものがある。
【0003】
この特許文献1に示されるレーザ描画装置は、ターンテーブルに1枚の加工対象物を固定して回転させ、回転する加工対象物の加工面に直接レーザ光を照射して加工を施すものである。しかしながら、従来のレーザ描画装置の構成によるレーザ微細加工装置では、ターンテーブルにセットして加工できる加工対象物の枚数が一枚であることから、加工対象物の交換が煩雑で加工タクトが長く、効率的な加工が困難である。
【0004】
また、加工用レーザ光が照射される位置の線速度が一定になるようターンテーブルを回転させて加工を行う場合、加工用レーザ光が照射される位置が回転中心付近になるとターンテーブルの回転が速くなるため、回転制御の精度は、回転中心から離間した位置に比べて劣る。また、回転速度には限界があるため中心部に近づくと線速度一定での制御ができなくなる場合もある。さらに、ターンテーブルの回転中心と加工対象物の中心とを精度よく一致させることは困難であり、ターンテーブルの回転中心に加工用レーザ光の半径方向移動線が含まれるよう調整することも困難である。このため、ターンテーブルの回転中心付近では加工対象物に高精度な加工を施すことは困難であった。
【0005】
そこで、ターンテーブルにセットする加工対象物の固定治具を、固定治具の中心から離間して複数の装着孔が設けられているようにし、この装着孔に加工対象物を装着して加工用レーザ光の照射により一度にレーザ加工できる数を増やすとともに、回転中心において高精度な加工が困難であるという問題を考慮する必要がないようにすることが試みられている。
【特許文献1】特開2001−133987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような固定治具による方法においては、加工対象物を固定治具の装着孔にセットした際、加工対象物と固定治具の境界に存在する段差や隙間によりフォーカスエラー信号が大きく乱れ、フォーカスサーボが外れる可能性がある。
【0007】
光加工ヘッドの光学系を調整することによりフォーカスサーボが外れることを抑えることはある程度できるが、レーザ光焦点の加工対象物の加工面への追従性が悪くなるため、通常のフォーカスサーボの場合に比べて加工精度が落ちてしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、固定治具に固定治具の中心から離間して複数の加工対象物を装着して加工用レーザ光の照射によりレーザ微細加工を行う場合において、加工対象物と固定治具の境界に段差や隙間があってもフォーカスサーボが外れないと共に、加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことが可能なレーザ微細加工装置及びレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のレーザ微細加工装置は、光加工ヘッドが、加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにする偏光状態変更手段と、加工対象物又は固定治具からの反射光を偏光状態により分離し、少なくとも内側のレーザ光による加工対象物又は固定治具からの反射光を受光する受光光学系とを有し、受光光学系による受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が加工対象物又は固定治具の表面に合うようフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載のレーザ微細加工装置は、光加工ヘッドが、偏光状態変更手段によりレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにされたレーザ光の内側と外側との境界近傍から内側のレーザ光を、加工対象物がレーザ加工されない強度まで減光させる減光手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載のレーザ微細加工装置は、受光光学系が、偏光状態により分離した反射光におけるそれぞれの反射光を受光する第1の受光器と第2の受光器とを有し、第1の受光器が、レーザ光断面の外側のレーザ光による加工対象物又は固定治具からの反射光を受光して受光光量に基づく信号を出力し、第2の受光器が、レーザ光断面の内側のレーザ光による加工対象物又は固定治具からの反射光を受光して受光光量に基づく信号を出力し、フォーカスサーボ手段が、加工用レーザ光が加工対象物に照射されているときに、第1の受光器が出力する受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が加工対象物表面に合うようにフォーカスサーボを行う第1のフォーカスサーボ手段と、加工用レーザ光が固定治具に照射させているときに、第2の受光器が出力する受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が固定治具表面に合うようフォーカスサーボを行う第2のフォーカスサーボ手段とを有し、加工対象物と固定治具の境界又は境界近傍を検出する境界検出手段と、境界検出手段による検出に基づいて、第1のフォーカスサーボ手段と、第2のフォーカスサーボ手段とを切り替えるフォーカスサーボ切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載のレーザ微細加工装置は、境界検出手段が、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出する信号強度変化検出手段であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載のレーザ微細加工装置は、回転手段による回転の角度に相当する量を検出する回転角度検出手段と、加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値を検出するレーザ光照射半径値検出手段とを備え、境界検出手段が、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出する信号強度変化検出手段と、信号強度変化検出手段による検出時の、回転角度検出手段により検出される又は回転角度検出手段に初期値として設定される回転角度に相当する量とレーザ光照射半径値検出手段により検出される加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値とに基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、回転角度検出手段が検出する回転角度に相当する量が境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出する第1の回転角度基準境界検出手段とから構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載のレーザ微細加工装置は、回転手段による回転の基準位置を検出する回転基準位置検出手段と、回転手段による回転の角度に相当する量を回転基準位置検出手段により検出した回転の基準位置からの量として検出する回転角度検出手段と、加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値を検出するレーザ光照射半径値検出手段とを備え、境界検出手段が、レーザ光照射半径値検出手段により検出される加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値に基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、回転角度検出手段が検出する回転角度に相当する量が境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出する第2の回転角度基準境界検出手段であることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにし、加工対象物又は固定治具からの反射光を偏光状態により分離し、少なくとも内側のレーザ光による加工対象物又は固定治具からの反射光を受光し、受光した反射光の受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が加工対象物又は固定治具の表面に合うようフォーカスサーボを行うことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、レーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにされたレーザ光の内側と外側との境界近傍から内側のレーザ光を、加工対象物がレーザ加工されない強度まで減光させることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、偏光状態により分離した反射光におけるそれぞれの反射光を受光すると共にそれぞれの反射光の受光光量に基づく信号を作成し、加工用レーザ光が加工対象物に照射されているときに、レーザ光断面の外側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が加工対象物表面に合うようにフォーカスサーボを行う第1のフォーカスサーボと、加工用レーザ光が固定治具に照射させているときに、レーザ光断面の内側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて加工用レーザ光の焦点が固定治具表面に合うようフォーカスサーボを行う第2のフォーカスサーボとを、加工対象物と固定治具の境界又は境界近傍の検出に基づいて切り替えることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、加工対象物と固定治具の境界又は境界近傍の検出を、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出することにより行うことを特徴とする。
【0019】
請求項11記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、加工対象物と固定治具の境界又は境界近傍の検出を、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出することと、回転手段による回転の角度に相当する量と加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値とを検出し続け、所定レベルのクロス時において検出した又は初期値として設定した、回転角度に相当する量と加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値とに基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、検出し続ける回転角度に相当する量が境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出することにより行うことを特徴とする。
【0020】
請求項12記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法は、加工対象物と固定治具の境界又は境界近傍の検出を、回転手段による回転の基準位置を検出し、回転手段による回転の角度に相当する量を検出した回転の基準位置からの量として検出し続けると共に、加工用レーザ光の照射位置の固定治具における半径値を検出し続け、検出した半径値に基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、検出し続ける回転角度に相当する量が境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出することにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1及び請求項7の発明によれば、加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側で偏光状態を異ならせ、反射光を偏光状態により分離し、レーザ光断面の内側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボを行うようにしたことから、フォーカスサーボの条件を加工対象物と固定治具の境界に存在する隙間によりフォーカスサーボが外れないように設定することにより、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができる。
【0022】
請求項2及び請求項8の発明によれば、レーザ光断面の内側のレーザ光の強度をレーザ加工が行われない強度まで減少させるようにしたことから、外側のレーザ光のみによりレーザ加工が行われるので、より微小なピットの作製を行うことができる。
【0023】
請求項3及び請求項9の発明によれば、加工対象物と固定治具の境界または境界近傍の検出に基づいて、2つのフォーカスサーボ手段を切り替えるようにしたことから、加工対象物と固定治具の境界に存在する隙間によりフォーカスサーボが外れないように第2のフォーカスサーボ手段の条件を設定し、レーザ光焦点の加工対象物表面への追従性が良くなるように第1のフォーカスサーボ手段の条件を設定することにより、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないとともに加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【0024】
請求項4及び請求項10の発明によれば、加工対象物と固定治具の境界または境界近傍の検出を、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度の変化を検出することで行うことにより、例えば加工対象物のエッジに加工対象物とは反射率の異なる部分を予め用意すれば、固定治具から加工対象物にレーザ光が移った直後に第1のフォーカスサーボへの切り替えを行い、加工対象物から固定治具にレーザ光が移る直前で第1のフォーカスサーボからの切り替えを行うことができるので、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないとともに加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【0025】
請求項5及び請求項11の発明によれば、加工対象物と固定治具の境界または境界近傍の検出を、加工対象物からの反射光及び固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度の変化を検出することと、その検出からの回転角度量がその時点でのレーザ照射半径値から定まる回転角度量に達することを検出することで行うことから、固定治具と加工対象物の反射率が大きく異なっていれば、加工対象物はそのままでも固定治具から加工対象物にレーザ光が移った直後に第1のフォーカスサーボへの切り替えが行われ、加工対象物から固定治具にレーザ光が移る直前で第1のフォーカスサーボからの切り替えを行うことができるので、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないとともに加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【0026】
請求項6及び請求項12の発明によれば、加工対象物と固定治具の境界または境界近傍の検出を、回転基準位置を検出してからの回転角度量がその時点でのレーザ照射半径値から定まる回転角度量に達することを検出することで行うようにすることから、固定治具上での回転基準位置が変わらなければ、固定治具と加工対象物の反射率によらず、加工対象物はそのままでも加工対象物にレーザ光が移った直後に第1のフォーカスサーボへの切り替えが行われ、加工対象物から固定治具にレーザ光が移る直前で第1のフォーカスサーボからの切り替えを行うことができるので、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないとともに加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の形態におけるレーザ微細加工装置は、光加工ヘッドから出射される加工用レーザ光をディスク状の加工対象物に照射し、加工対象物の加工面に微細なピットを作製するものである。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第1の実施形態を示す構成図である。図2は、同レーザ微細加工装置の光加工ヘッドの構成の形態1とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。図3は、同レーザ微細加工装置の偏光子の形状を示す図である。図4は、同レーザ微細加工装置の内側レーザ光と外側レーザ光が対物レンズにより集光する様子を示した説明図である。図5は、同レーザ微細加工装置の加工対象物に高反射率の膜をつけて固定治具に装着する様子を示した図である。
【0029】
図1〜図5において、ウェハー5は、LEDウェハー等のディスク状の加工対象物で、表面が微細ピットを作製する加工面である。ウェハー固定治具10は、ディスク状で、ウェハー5を挿嵌可能な装着孔10aが複数穿設されている。この装着孔10aは、ウェハー固定治具10の回転中心から離間して設けられている。ターンテーブル12は、ウェハー5を回転させるテーブルであり、全面に図示しない吸引口を複数備え、ウェハー固定治具10とウェハー5を吸着可能に構成されている。
【0030】
また、図1に示すようにレーザ微細加工装置1は、光加工ヘッド200、表示装置602や入力装置604を備えたコントローラ600、HF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108、フォーカスサーボ回路A110、HF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114、フォーカスサーボ回路B116、信号切替回路102、信号強度変化検出回路104、ドライブ回路118、発光信号供給回路252、レーザ駆動回路250、スピンドルモータ300、スピンドルモータ制御回路302、フィードモータ400、フィードモータ制御回路402等から構成されている。
【0031】
フィードモータ制御回路402は、コントローラ600から半径位置の入力があると、フィードモータ400内にあるエンコーダが出力するパルス信号から半径位置を計算し、設定された半径位置になるようフィードモータ400を駆動する。これにより、コントローラ600から適切な半径位置を入力させることで、ウェハー5に加工用レーザ光が照射され始める半径位置から加工用レーザ光の照射を開始することができる。また、フィードモータ制御回路402にはコントローラ600から送り速度の入力がある。
【0032】
コントローラ600は、フィードモータ400内にあるエンコーダが出力するパルス信号から半径位置を常に計算し、入力装置604から予め入力されている微細ピットの半径方向間隔と線速度から、ターンテーブル12の1回転で丁度微細ピットの半径方向間隔分、加工用レーザ光が照射される半径位置を移動する送り速度を計算してフィードモータ制御回路402に指示する。フィードモータ制御回路402は、フィードモータ400内にあるエンコーダが出力するパルス信号から送り速度を算出し、送り速度が指示された速度に合うようフィードモータ400を駆動する。
【0033】
スピンドルモータ制御回路302は、スピンドルモータ300をコントローラ600から指示された回転速度になるよう駆動する。
【0034】
コントローラ600は、計算された半径位置と入力されている線速度から、加工用レーザ光が照射される位置の線速度が入力されている線速度になるための回転速度を計算し、スピンドルモータ制御回路302に指示する。スピンドルモータ制御回路302は、スピンドルモータ300内にあるエンコーダが出力するパルス信号から回転速度を計算し、回転速度が指示された速度になるようスピンドルモータ300を駆動する。
【0035】
レーザ駆動回路250及び発光信号供給回路252は、後述する光加工ヘッド200のレーザ光源20に、設定された間隔の微細ピットを作製するためのレーザ光照射を行わせる。
【0036】
コントローラ600は、入力装置604から入力されている微細ピットの円周方向間隔と線速度から、発光信号のタイミングを計算し、発光信号供給回路252に指示する。発光信号供給回路252は、指示された発光タイミングでパルス信号である発光信号を生成し、レーザ駆動回路250に出力する。レーザ駆動回路250は入力した発光信号により加工用レーザ駆動信号(ハイレベルとローレベルとからなるパルス信号)を生成し、後述する光加工ヘッド200のレーザ光源20に出力する。これにより、加工用レーザ光が照射されたウェハー5には、微細ピットが設定された間隔で作製されることになる。
【0037】
光加工ヘッド200は、内部に設けられたレーザ光源20から微細ピットを作製するための加工用レーザ光を出射するものである。偏光状態を示す図2は、レーザ光源20から出射されたレーザ光の偏光方向をY軸、偏光方向に垂直な方向をX軸として示してある。レーザ光源20から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ22により平行光になり(図2(A))、透過軸が出射されたレーザ光の偏光方向と平行になっている偏光ビームスプリッタ24を殆んど透過し(図2(B))、「進相軸」(Fast)及び「遅相軸」(Slow)がX軸及びY軸から45度の位置にある1/4波長板26を透過する(図2(C))。これによりレーザ光は、直線偏光から円偏光になり、減光フィルタ28でレーザ光断面の内側部分(以下、内側レーザ光という)のみが減光されて、偏光子30に入射する。内側レーザ光を減光するのは、外側レーザ光のみをレーザ加工可能にし、より微小なピットの作製を行うことができるようにするためである。
【0038】
偏光子30は、図3に示すような形状であり、所定半径より内側のみがX、Y軸から45度の方向(即ち、1/4波長板26の「進相軸」(Fast)または「遅相軸」(Slow)の方向)に透過軸がある偏光子になっている。このため、内側レーザ光のみが円偏光から偏光方向がX、Y軸から45度の方向にある直線偏光になる(図2(D))。このとき透過する光は、円偏光が全方向に偏光方向がある光と考えればよいので半分程度の光である。すなわち、内側レーザ光は直線偏光になるとともに光量が半分程度に減光される。そして、偏光子30は、所定半径より外側は入射した光をそのまま透過する材質で形成されているため、レーザ光断面の外側部分(以下、外側レーザ光という)は円偏光のままである(図2(D))。
【0039】
ウェハー5又はウェハー固定治具10で反射したレーザ光は、偏光子30を透過したときも内側レーザ光は偏光方向がX、Y軸から45度の方向にある直線偏光であり、外側レーザ光は円偏光である。そして、減光フィルタ28で再度内側レーザ光のみが減光され(図2(E))、1/4波長板26を透過する(図2(F))。これにより、外側レーザ光は円偏光からX軸方向に偏光方向がある直線偏光になり、内側レーザ光は1/4波長板26の「進相軸」(Fast)又は「遅相軸」(Slow)に対して偏光方向が平行であるので、X、Y軸から45度の方向に偏光方向がある直線偏光のままである。
【0040】
偏光ビームスプリッタ24がY軸方向に透過軸があるので、偏光方向がこの透過軸に垂直である外側レーザ光は、偏光ビームスプリッタ24で反射する。内側レーザ光は、偏光方向がこの透過軸に対して45度の位置にあるので半分が反射し、半分が透過する(図2(G))。そして、反射した光の偏光方向は外側レーザ光と同じX軸方向になり、透過した光の偏光方向はY軸方向になる。但し、偏光ビームスプリッタは偏光方向が透過軸と平行な光もわずかに(例えば5%程度)反射するため、偏光ビームスプリッタ24で反射した光には偏光方向がY軸方向の内側レーザ光も含まれる。偏光ビームスプリッタ24で反射した光の強度は、
偏光方向がX軸方向:外側レーザ光×r+内側レーザ光×t×1/2×r×t×1/2
偏光方向がY軸方向:内側レーザ光×t×1/2×r×t×1/2×0.05
(rはウェハー5又はウェハー固定治具10の反射率、tは減光フィルタの透過率)
となる。この光が集光レンズ34、シリンドリカルレンズ36を介して偏光ビームスプリッタ38に入射する。
【0041】
偏光ビームスプリッタ38は、透過軸がY軸方向にあり、偏光方向がY軸方向の光は透過してフォトディテクタ40に集光し(図2(H))、偏光方向がX軸方向の光は偏光ビームスプリッタ38で反射してフォトディテクタ42に集光する(図2(I))。フォトディテクタ40及びフォトディテクタ42に集光する光は、集光レンズ34、シリンドリカルレンズ36を介しているため、フォトディテクタ40及びフォトディテクタ42が出力する受光信号から非点収差法によるフォーカスサーボが可能である。偏光方向がX軸方向での内側レーザ光は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/4を乗算した強度になるので、外側レーザ光に対して強度はかなり弱い。従って、フォトディテクタ42の受光信号によるフォーカスサーボは外側レーザ光によるフォーカスサーボになる。
【0042】
また、偏光方向がY軸方向の光は内側レーザ光のみであるので、フォトディテクタ40の受光信号によるフォーカスサーボは、内側レーザ光のみによるフォーカスサーボになる。偏光方向がY軸方向での内側レーザ光は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/4×0.05を乗算した強度であるので、かなり強度は小さいが、ウェハー5やウェハー固定治具10の反射率が高ければフォーカスサーボを行うことができる。尚、集光レンズ34及びシリンドリカルレンズ36をナイフに変更し、ナイフエッジ法によるフォーカスサーボを行うことも可能である。また、減光フィルタ28を液晶素子にしてレーザ強度を調整できるようにしてもよいし、微小なピットの作製が不要であれば、減光フィルタ28を除いてもよい。
【0043】
内側レーザ光と外側レーザ光とが対物レンズである集光レンズ32により集光する様子を示したものが図4である。外側レーザ光は、NA(Numerial Aperture)が大きいため焦点深度が小さく、レーザスポットも小さい。これに対し内側レーザ光は、NAが小さいため焦点深度が大きく、レーザスポットも大きい。従って、内側レーザ光を減光してレーザ加工が行われないレーザ強度にすれば、ウェハー5に微細なピットを作製することができ、内側レーザ光による反射光に基づいて(すなわちフォトディテクタ40の受光信号に基づいて)フォーカスサーボを行えば、ウェハー5とウェハー固定治具10との間にある段差でフォーカスサーボが外れないようにすることができる。
【0044】
そして、フォーカスサーボ回路A110に設定されるカットオフ周波数を、ウェハー5とウェハー固定治具10との間にある隙間でフォーカスサーボが外れない値に設定すれば、ウェハー5とウェハー固定治具10との間にある段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができる。
【0045】
但し、焦点深度が大きい場合のフォーカスサーボは焦点深度が小さい場合のフォーカスサーボに比べて追従性が悪くなるためウェハー5のレーザ加工精度が悪くなる。このため、ウェハー5にレーザ光が照射されているときは、外側レーザ光による反射光に基づいて(すなわちフォトディテクタ42の受光信号に基づいて)通常の光ディスク装置でのカットオフ周波数で設定されているフォーカスサーボ回路B116を用いてフォーカスサーボを行うようにする。即ち、ウェハー5にレーザ光が照射されているときはフォトディテクタ42、HF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114、フォーカスサーボ回路B116を用いてフォーカスサーボを行い、ウェハー固定治具10にレーザ光が照射されているときは、フォトディテクタ40、HF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108、フォーカスサーボ回路A110を用いてフォーカスサーボを行うようにする。このようにフォーカスサーボを切り替えれば、ウェハー固定治具10の反射率が高ければ、ウェハー5の反射率が低くても内側レーザ光による(すなわちフォトディテクタ40の受光信号に基づく)フォーカスサーボは可能である。
【0046】
信号強度変化検出回路104は、光加工ヘッド200のフォトディテクタ40が出力する信号を加算し増幅してローパスフィルタを通した後、所定レベルより大きいまたは小さいで2値化信号にする。そして、2値化信号がLOWからHIGHになったときは、検出信号Aを出力し、検出信号がHIGHからLOWになったときは検出信号Bを出力する。尚、光加工ヘッド200のフォトディテクタ40の系を受光光学系Aとし、フォトディテクタ42の系を受光光学系Bとする。
【0047】
HF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108、フォーカスサーボ回路A110は、レーザ光がウェハー固定治具10を照射しているときにフォーカスサーボに使用される回路である。フォーカスサーボ回路A110のカットオフ周波数は通常のフォーカスサーボの場合より小さく設定されており(ウェハー5とウェハー固定治具10の隙間により発生する信号成分の周波数の2.5分の1〜15分の1相当)、ウェハー5とウェハー固定治具10の境界をレーザ光が移動してもフォーカスサーボが外れないようになっている。
【0048】
HF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114、フォーカスサーボ回路B116は、レーザ光がウェハー5を照射しているときにフォーカスサーボに使用される回路である。フォーカスサーボ回路B116は、通常の光ディスク装置におけるフォーカスサーボと同様の条件で設定されている。
【0049】
信号切替回路102は、信号強度変化検出回路104から検出信号Bが入力したときは、フォーカスサーボ回路B116から入力した信号をドライブ回路118に出力し、信号強度変化検出回路104から検出信号Aが入力したときは、フォーカスサーボ回路A110から入力した信号をドライブ回路118に出力する。尚、装置稼働時においてはコントローラ600からの指示により、フォーカスサーボ回路A110から入力した信号をドライブ回路118に出力する。
【0050】
このように構成されたレーザ微細加工装置1において、作業者は図5に示すようにウェハー5のエッジ数mmに反射率の高い膜5aをつけ、ウェハー固定治具10の装着孔10aに装着した後、入力装置604から加工を指示する。尚、この場合、ウェハー固定治具10の表面の反射率は高く、ウェハー5は低いとする。
【0051】
レーザ微細加工装置1は、所定の半径位置からレーザ加工を開始する。ここで、信号切替回路102は、コントローラ600の指示によりフォーカスサーボ回路A110から入力した信号を出力するようにされる。そして、図示されていない回路がフォーカスエラー信号生成回路A108が出力する信号に発生したS字信号が0クロスしたタイミングを検出すると、コントローラ600からフォーカスサーボ回路A110に作動指示が出ることでフォーカスサーボの引き込みが行われる。
【0052】
以後、信号強度変化検出回路104は、レーザ光が高反射率の箇所から低反射率の箇所へ移ったときに検出信号Bを出力し、低反射率の箇所から高反射率の箇所へ移ったときに検出信号Aを出力し、それにより信号切替回路102が出力する信号を変更するので、ウェハー5上にレーザ光が照射されているときは、受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116でフォーカスサーボが行われ、ウェハー固定治具10上にレーザ光が照射されているときは受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110でフォーカスサーボが行われる。
【0053】
そして、ウェハー5のエッジ数mmに反射率の高い膜5aをつけてあるので、フォーカスサーボの切り替えは、この膜5aとウェハー5の間の境界で行われるため、ウェハー5とウェハー固定治具10の間の境界をレーザ光が通過するときは、必ず受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110によるフォーカスサーボが行われ、このフォーカスサーボは、焦点深度が大きいためS字検出距離が長く、カットオフ周波数が小さく設定され、フォーカスサーボが外れにくいフォーカスサーボであるのでウェハー5とウェハー固定治具10との境界にある段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができる。そして、ウェハー5上にレーザ光が照射されているときに、受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116により行われるフォーカスサーボは、焦点深度が小さいためS字検出距離が短くカットオフ周波数が通常の光ディスク装置におけるフォーカスサーボと同程度に設定され、追従性がよいフォーカスサーボであるので、ウェハー5の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【0054】
尚、もしウェハー固定治具10の表面の反射率が高く、ウェハー5も高い場合は、ウェハー5のエッジ数mmには反射率の低い膜5aをつけ、信号強度変化検出回路104の設定をHIGH→LOW→HIGHが所定時間内に発生したときは検出信号Bを出力し、検出信号Bを出力した後にHIGHからLOWになったときは検出信号Bを出力するようにすればよい。これにより、反射率の低い膜5aからウェハー5にレーザ光が移動したときに、受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116によるフォーカスサーボに切り替わり、ウェハー5から反射率の低い膜5aにレーザ光が移動したときに、受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110によるフォーカスサーボに切り替わるので、上記と同様のフォーカスサーボを行うことができる。
【0055】
以上のように、本実施例のレーザ微細加工装置1によれば、加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側で偏光状態を異ならせ、反射光を偏光状態により分離し、レーザ光断面の内側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボを行うようにしたことから、フォーカスサーボの条件をウェハー5とウェハー固定治具10との境界に存在する隙間によりフォーカスサーボが外れないように設定することにより、段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができる。
【0056】
また、レーザ光断面の内側のレーザ光の強度をレーザ加工が行われない強度まで減少させるようにしたことから、外側のレーザ光のみによりレーザ加工が行われるので、より微小なピットの作製を行うことができる。また、ウェハー5とウェハー固定治具10との境界近傍を検出して2つのフォーカスサーボ手段を切り替えるようにしたことから、ウェハー5とウェハー固定治具10との境界に存在する段差や隙間でフォーカスサーボが外れないと共にウェハー5の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【実施例2】
【0057】
本実施例では、実施例1に示すフォーカスサーボの切り替えの他の方法を説明する。図6は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第2の実施形態を示す構成図である。図7は、本発明の第2の実施形態におけるエッジ検出回路が実行するプログラムのフローチャートである。図8は、本発明の第2の実施形態においてフォーカスサーボの切り替え点をスピンドルモータのエンコーダが出力するパルス信号のパルス数のカウントから検出する様子を示した説明図である。
【0058】
図6に示すレーザ微細加工装置2は、実施例1のレーザ微細加工装置1に加え、カウント回路120、エッジ検出回路122等を備えている。尚、レーザ微細加工装置1と同一の回路等は説明を省略し、作動等の異なる回路は異なる部分を説明する。
【0059】
信号強度変化検出回路104は、2値化信号がHIGHからLOWになったときのみ検出信号を出力する。また、遅延回路を内蔵し、信号切替回路102には2値化信号がHIGHからLOWになった後、所定時間(実施例1で高反射率の膜5aの幅分レーザ光照射位置が移動する時間)経過した後、検出信号を出力する。
【0060】
信号切替回路102は、信号強度変化検出回路104から検出信号が入力したときは、フォーカスサーボ回路B116から入力した信号を出力し、エッジ検出回路122から検出信号が入力したときは、フォーカスサーボ回路A110から入力した信号を出力する。
【0061】
カウント回路120は、信号強度変化検出回路104から検出信号が入力するとスピンドルモータ300のエンコーダが出力するパルス信号をカウントし、カウント値に相当する信号をエッジ検出回路122に出力する。そして、エッジ検出回路122から信号が入力するとカウントを停止しカウント値をリセットする。
【0062】
エッジ検出回路122は、コントローラ600からの指示により、図7のプログラムがスタートし、信号強度変化検出回路104から検出信号が入力すると(図7のS102−YES)、コントローラ600が出力する半径値を取り込んで(図7のS104)、ウェハー5のエッジ手前までのカウント値Aを計算し(図7のS106)、カウント回路120から入力するカウント値がこのカウント値Aになったとき(図7のS108−YES)、信号を出力する(図7のS110)。尚、信号強度変化検出回路104から検出信号が入力されない場合(図7のS102−NO)、コントローラ600からの終了指示を確認し(図7のS112)、終了指示がある場合には(図7のS112−YES)、プログラムを終了する(図7のS114)。
【0063】
レーザ光が、照射位置がウェハー5上になる前のウェハー5とウェハー固定治具10の境界位置を通過してから、照射位置がウェハー固定治具10上になる前のウェハー5とウェハー固定治具10の境界位置を通過するまでの回転角度は、図8に示すようにレーザ光照射位置の半径値で決まるので、境界の手前にあるA点までのカウント値Aも半径値で決まる。エッジ検出回路122には半径値とカウント値Aの関数がテーブル形式または数式で記憶されており、半径値が入力するとカウント値Aが計算されるようになっている。
【0064】
このように構成されたレーザ微細加工装置2において、作業者はウェハー5をそのままウェハー固定治具10の装着孔10aに装着した後、入力装置604から加工を指示する。尚、この場合もウェハー固定治具10の表面の反射率は高く、ウェハー5は低いとする。
【0065】
レーザ微細加工装置2は、レーザ微細加工装置1と同様にフォーカスサーボ引き込みを行う。その後、信号強度変化検出回路104はレーザ光がウェハー固定治具10からウェハー5へ移ったときに、ウェハー5のエッジから数mm分、レーザ光照射位置が移動した後、検出信号が出力する。エッジ検出回路122は、レーザ光照射位置がウェハー5からウェハー固定治具10に移る直前で信号を出力し、それにより信号切替回路102が出力する信号を切り替えるので、実施例1と同様、ウェハー5上にレーザ光が照射されているときは受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116でフォーカスサーボが行われ、ウェハー固定治具10上にレーザ光が照射されているときは、受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110でフォーカスサーボが行われる。
【0066】
また、ウェハー5とウェハー固定治具10との間の境界をレーザ光が通過するときは、必ず受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110によるフォーカスサーボ(即ち焦点深度が大きいためS字検出距離が長く、カットオフ周波数が小さく設定され、フォーカスサーボが外れにくいフォーカスサーボ)が行われるので、ウェハー5とウェハー固定治具10との境界にある段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができ、受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116によるフォーカスサーボは、焦点深度が小さいためS字検出距離が短く、カットオフ周波数が通常の光ディスク装置におけるフォーカスサーボと同程度に設定され、追従性がよいフォーカスサーボであるので、ウェハー5の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【0067】
尚、上記実施形態においてはカウント回路120を信号強度変化検出回路104から検出信号が入力するとスピンドルモータ300のエンコーダが出力するパルス信号のカウントを0を初期値として開始し、エッジ検出回路122はコントローラ600から入力した半径値からウェハー5のエッジ手前までのカウント値を計算するようにしたが、これに代えて、カウント回路120は常時エンコーダが出力するパルス信号のカウントを行い、信号強度変化検出回路104から検出信号が入力するとカウント値をエッジ検出回路122に出力するようにし、エッジ検出回路122はカウント回路120から入力したカウント値と、コントローラ600から入力した半径値とからウェハー5のエッジ手前までのカウント値を計算するようにしてもよい。これによっても同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0068】
本実施例では、実施例1及び実施例2に示すフォーカスサーボの切り替えの他の方法を説明する。図9は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第3の実施形態を示す構成図である。図10は、本発明の第3の実施形態におけるエッジ検出回路が実行するプログラムのフローチャートである。図11は、本発明の第3の実施形態においてフォーカスサーボの切り替え点をスピンドルモータのエンコーダが出力するパルス信号のパルス数のカウントから検出する様子を示した説明図である。
【0069】
図9に示すレーザ微細加工装置3は、実施例2のレーザ微細加工装置2から信号強度変化検出回路104を取り除いたような構成である。尚、レーザ微細加工装置1及びレーザ微細加工装置2と同一の回路等は説明を省略し、作動等の異なる回路は異なる部分を説明する。
【0070】
信号切替回路102は、エッジ検出回路122から信号Bが入力したときは、フォーカスサーボ回路B116から入力した信号を出力し、エッジ検出回路122から信号Aが入力したときは、フォーカスサーボ回路A110から入力した信号を出力する。
【0071】
カウント回路120は、スピンドルモータ300のエンコーダからインデックス信号が入力すると同エンコーダが出力するパルス信号のカウントを開始し、カウント値に相当する信号をエッジ検出回路122に出力する。そして、エンコーダからインデックス信号が入力するごとにカウント値をリセットし、カウントを継続する。
【0072】
エッジ検出回路122は、コントローラ600からの指示により、図10のプログラムがスタートし、スピンドルモータ300のエンコーダからインデックス信号が入力すると(図10のS204−YES)、コントローラ600が出力する半径値を取り込んで(図10のS206)、ウェハー5のエッジ手前の点のカウント値A(0)〜A(7)を計算し(図10のS208)、カウント回路120から入力するカウント値がこのAになったとき(図10のS210−YES)、A(n)のnが偶数のときは信号Bを(図10のS212−YES、S214)、nが奇数のときは信号Aを(図10のS212−NO、S216)出力する。尚、カウント回路120から入力するカウント値がAに満たない場合に(図10のS210−NO)、コントローラ600からの終了指示を確認し(図10のS224)、終了指示がある場合には(図10のS224−YES)、プログラムを終了する(図10のS226)。
【0073】
尚、この場合、ウェハー固定治具10に装着するウェハー5は4つで、エンコーダからインデックス信号が出力される点は、レーザ光照射位置がウェハー固定治具10上にある点であり、この点はウェハー固定治具10がターンテーブル12に固定されているか、ウェハー固定治具10に工夫がされて同じ状態でセットできるため、一定であるとする。
【0074】
エンコーダからインデックス信号が入力する点が一定であれば、レーザ光がウェハー5とウェハー固定治具10の境界位置を通過する箇所のインデックス信号が出力する点からの回転角度は、図11に示すようにレーザ光照射位置の半径値で決まるので、ウェハー5の境界の近傍点Aまでのカウント値A(0)〜(7)も半径値で決まる。エッジ検出回路122には半径値とカウント値A(0)〜(7)の関数がテーブル形式または数式でそれぞれ記憶されており、半径値が入力するとカウント値A(0)〜(7)が計算されるようになっている。
【0075】
このように構成されたレーザ微細加工装置3において、作業者はウェハー5をそのままウェハー固定治具10の装着孔10aに装着した後、入力装置604から加工を指示する。尚、この場合はウェハー固定治具10の表面の反射率やウェハー5の反射率は任意でよい。
【0076】
レーザ微細加工装置3は、レーザ微細加工装置1と同様にまずフォーカスサーボ引き込みが行われる。その後、エッジ検出回路122は、レーザ光がウェハー5とウェハー固定治具10の境界を通過し、ウェハー5のエッジから数mmの箇所に来たときに信号Bを出力し、レーザ光がウェハー5とウェハー固定治具10との境界を通過する手前のウェハー5のエッジから数mmの箇所に来たときに信号Aを出力し、それにより信号切替回路102が出力する信号を切り替えるので、実施例1と同様、ウェハー5上にレーザ光が照射されているときは受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116でフォーカスサーボが行われ、ウェハー固定治具10上にレーザ光が照射されているときは受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110でフォーカスサーボが行われる。また、ウェハー5とウェハー固定治具10との間の境界をレーザ光が通過するときは、必ず受光光学系AとHF信号増幅回路A106、フォーカスエラー信号生成回路A108及びフォーカスサーボ回路A110によるフォーカスサーボ(即ち焦点深度が大きいためS字検出距離が長く、カットオフ周波数が小さく設定され、フォーカスサーボが外れにくいフォーカスサーボ)が行われるので、ウェハー5とウェハー固定治具10との境界にある段差や隙間でフォーカスサーボが外れないようにすることができ、受光光学系BとHF信号増幅回路B112、フォーカスエラー信号生成回路B114及びフォーカスサーボ回路B116によるフォーカスサーボは、焦点深度が小さいためS字検出距離が短く、カットオフ周波数が通常の光ディスク装置におけるフォーカスサーボと同程度に設定され、追従性がよいフォーカスサーボであるので、ウェハー5の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことができる。
【実施例4】
【0077】
本実施例では、実施例1〜実施例3に示す光加工ヘッドの変形例を説明する。光加工ヘッド200は、内側レーザ光と外側レーザ光との偏光状態を異ならせ、反射したレーザ光を偏光状態により分離することができれば、様々な構成のものを用いることができる。図12は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態2とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。具体的に図12は、直線偏光を偏光子30に入射させ、内側レーザ光と外側レーザ光とで偏光状態を異ならせる方法である。
【0078】
光加工ヘッド200で、レーザ光源20から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ22により平行光になり(図12(A))、ビームスプリッタ25で半分が透過し(図12(B))、減光フィルタ28で内側レーザ光のみが減光されて、偏光子30に入射する。偏光子30は、実施例1のものと同じであるが、偏光子30の透適軸はレーザ光源20が出射するレーザ光の偏光方向から45度の角度にある。このため、内側レーザ光は約半分が透過し、透過したレーザ光の偏光方向は偏光子30の透過軸と平行になる。これに対し、外側レーザ光の偏光方向はレーザ光源20が出射するレーザ光の偏光方向のまま透過する(図12(C))。
【0079】
ウェハー5又はウェハー固定治具10で反射したレーザ光は、再度偏光子30と減光フィルタ28を透過するが偏光状態は同じままである(図12(D))。そして、ビームスプリッタ25で半分が反射し、集光レンズ34、シリンドリカルレンズ36を介して偏光ビームスプリッタ38に入射する(図12(E))。偏光ビームスプリッタ38は、Y軸方向に透過軸があるため、偏光方向がY軸方向の光は透過してフォトディテクタ40に集光し(図12(F))、偏光方向がX軸方向の光は反射してフォトディテクタ42に集光する(図12(G))。偏光ビームスプリッタ38で透過または反射する光の強度は、
偏光方向がX軸方向(反射):内側レーザ光×1/2×t×1/2×r×t×1/2×1/2
偏光方向がY軸方向(透過):外側レーザ光×1/2×r×1/2+内側レーザ光×1/2×t×1/2×r×t×1/2×1/2
(rはウェハー5又はウェハー固定治具10の反射率、tは減光フィルタの透過率)
となる。
【0080】
偏光方向がY軸方向での内側レーザ光は内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/16を乗算した強度になり、1/4を乗算した強度になる外側レーザ光に対して強度はかなり弱い。従って、フォトディテクタ40の受光信号によるフォーカスサーボは外側レーザ光によるフォーカスサーボになる。偏光方向がX軸方向での内側レーザ光は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/16を乗算した強度であるので、実施例1で示されている光加工ヘッドの構成の形態1の場合よりやや大きい強度になり、フォトディテクタ42の受光信号を使用すれば内側レーザ光によるフォーカスサーボは可能である。
【0081】
この変形例においては、ビームスプリッタ25でレーザ加工に使用する外側レーザ光の半分を損失することになるが、実施例1と同様に内側レーザ光によるフォーカスサーボと外側レーザ光によるフォーカスサーボが可能である。尚、この変形例においては、減光フィルタ28をなくし、偏光子30の透過軸の向きをX軸方向に近づけて、減光を行ってもよい。また、偏光子30を回転可能にして内側レーザ光の光量を制御してもよい。これによれば、内側レーザ光による反射光が減光フィルタによって減光されず、偏光ビームスプリッタ38で反射する内側レーザ光の透過する内側レーザ光に対する割合が大きくなるの
で、フォトディテクタ42に集光する内側レーザ光による反射光の強度が大きくなり、内側レーザ光によるフォーカスサーボが行いやすくなる。
【実施例5】
【0082】
本実施例では、実施例1〜実施例3に示す光加工ヘッドのさらに別の変形例を説明する。図13は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態3とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。具体的に図13は、直線偏光を1/4波長板31に入射させ、内側レーザ光と外側レーザ光とで偏光状態を異ならせる方法である。
【0083】
光加工ヘッド200で、レーザ光源20から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ22により平行光になり(図13(A))、ビームスプリッタ25で半分が透過し(図13(B))、減光フィルタ28で内側レーザ光のみが減光されて、1/4波長板31に入射する。1/4波長板31も図3に示すような形状であり、所定半径より内側のみがX、Y軸から45度の方向に「進相軸」(Fast)又は「遅相軸」(Slow)がある偏光子になっている。このため、透過したレーザ光は、内側レーザ光のみが円偏光になり、外側レーザ光はレーザ光源20が出射するレーザ光と偏光方向が同じ(すなわちY軸方向の)直線偏光のままである(図12(C))。
【0084】
そして、レーザ光はウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した後、再び1/4波長板31を透過することにより内側レーザ光はX軸方向の直線偏光となり、外側レーザ光はY軸方向の直線偏光のままである(図13(D))。そして、ビームスプリッタ25で半分が透過し(図13(E))、集光レンズ34及びシリンドリカルレンズ36を介して偏光ビームスプリッタ38に入射する。偏光ビームスプリッタ38はY軸方向に透過軸があるので、外側レーザ光は偏光ビームスプリッタ38を透過してフォトディテクタ40に受光し(図13(F))、内側レーザ光は偏光ビームスプリッタ38で反射してフォトディテクタ42に受光する(図13(G))。偏光ビームスプリッタ38で透過または反射する光の強度は、
偏光方向がX軸方向(反射):内側レーザ光×1/2×t×r×t×1/2
偏光方向がY軸方向(透過):外側レーザ光×1/2×r×1/2
(rはウェハー5又はウェハー固定治具10の反射率、tは減光フィルタの透過率)
となる。
【0085】
この変形例においては、偏光ビームスプリッタ38で内側レーザ光と外側レーザ光を殆んど分離することが可能であり、フォトディテクタ42で受光する内側レーザ光の強度は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/4を乗算した強度であるので、実施例1や実施例4で示されている光加工ヘッドの構成の形態1,2より大きい強度になり、ウェハー固定治具10の反射率が小さくてもフォトディテクタ42の受光信号で内側レーザ光によるフォーカスサーボが可能である。この変形例においてもビームスプリッタ25でレーザ加工に使用する外側レーザ光の半分を損失することになるが、内側レーザ光によるフォーカスサーボと外側レーザ光によるフォーカスサーボが可能である。
【0086】
尚、この変形例において、ビームスプリッタ25を偏光ビームスプリッタにし、1/4波長板31を所定半径より外側のみがX、Y軸から45度の方向に「進相軸」(Fast)又は「遅相軸」(Slow)がある偏光子にすれば、フォトディテクタ42で受光する内側レーザ光の強度は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×0.05を乗算した強度になり、強度は小さくなるが、レーザ加工に使用する外側レーザ光の半分を損失することをなくすことができる。
【実施例6】
【0087】
本実施例では、実施例1〜実施例3に示す光加工ヘッドのさらに別の変形例を説明する。図14は、本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態4とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。具体的に図14は、図13と同様、直線偏光を1/4波長板31に入射させ、内側レーザ光と外側レーザ光とで偏光状態を異ならせる方法であり、図13におけるビームスプリッタと偏光ビームスプリッタの位置を変えた構成である。
【0088】
光加工ヘッド200で、レーザ光源20から出射されたレーザ光はコリメートレンズ22により平行光になりビームスプリッタ25で半分が透過し(図14(A))、透過軸が出射されたレーザ光と平行になっている偏光ビームスプリッタ27をほとんど透過し(図14(B))、減光フィルタ28で内側レーザ光のみが減光されて、1/4波長板31に入射する。1/4波長板31を透過したレーザ光は、内側レーザ光のみが円偏光になり、外側レーザ光はY軸方向の直線偏光のままであり(図14(C))、ウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した後、再び1/4波長板31を透過することにより内側レーザはX軸方向の直線偏光となり、外側レーザ光はY軸方向の直線偏光のままである(図14(D))。
【0089】
偏光ビームスプリッタ27はY軸方向に透過軸があるので、外側レーザ光はPBS26を透過し、内側レーザ光は偏光ビームスプリッタ27で反射する。反射した内側レーザ光は(図14(E))、集光レンズ34、シリンドリカルレンズ36を介してフォトディテクタ40に集光する。透過した外側レーザ光はビームスプリッタ25で半分が反射し、集光レンズ35、シリンドリカルレンズ37を介してフォトディテクタ42に集光する。偏光ビームスプリッタ27で反射する光の強度及びビームスプリッタ25で反射する光の強度は、
偏光ビームスプリッタ27で反射する光:内側レーザ光×1/2×t×r×t
ビームスプリッタ25で反射する光:外側レーザ光×1/2×r×1/2
(rはウェハー5又はウェハー固定治具10の反射率、tは減光フィルタの透過率)
となる。
【0090】
この変形例においては、偏光ビームスプリッタ27で内側レーザ光と外側レーザ光を殆んど分離することが可能であり、フォトディテクタ40で受光する内側レーザ光の強度は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×1/2を乗算した強度であるので、実施例1、実施例4、実施例6で示されている光加工ヘッドの構成の形態1〜3よりさらに大きい強度になり、ウェハー固定治具10の反射率が小さくてもフォトディテクタ42の受光信号で内側レーザ光によるフォーカスサーボが可能である。この変形例においても、ビームスプリッタ25でレーザ加工に使用する外側レーザ光の半分を損失することになるが、内側レーザ光によるフォーカスサーボと外側レーザ光によるフォーカスサーボが可能である。
【0091】
尚、この変形例においても、ビームスプリッタ25を偏光ビームスプリッタにし、1/4波長板31を所定半径より外側のみがX、Y軸から45度の方向に「進相軸」(Fast)又は「遅相軸」(Slow)がある偏光子にすれば、フォトディテクタ42で受光する内側レーザ光の強度は、内側レーザ光がそのままウェハー5又はウェハー固定治具10で反射した光の強度にt×0.05を乗算した強度になり、強度は小さくなるが、レーザ加工に使用する外側レーザ光の半分を損失することをなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明によれば、固定治具に固定治具の中心から離間して複数の加工対象物を装着して加工用レーザ光の照射によりレーザ微細加工を行う場合において、加工対象物と固定治具の境界に段差や隙間があってもフォーカスサーボが外れないと共に、加工対象物の加工精度を維持しつつフォーカスサーボを行うことが可能なレーザ微細加工装置及びレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係るレーザ微細加工装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】同レーザ微細加工装置の光加工ヘッドの構成の形態1とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。
【図3】同レーザ微細加工装置の偏光子の形状を示す図である。
【図4】同レーザ微細加工装置の内側レーザ光と外側レーザ光が対物レンズにより集光する様子を示した説明図である。
【図5】同レーザ微細加工装置の加工対象物に高反射率の膜をつけて固定治具に装着する様子を示した図である。
【図6】本発明に係るレーザ微細加工装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるエッジ検出回路が実行するプログラムのフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態においてフォーカスサーボの切り替え点をスピンドルモータのエンコーダが出力するパルス信号のパルス数のカウントから検出する様子を示した説明図である。
【図9】本発明に係るレーザ微細加工装置の第3の実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態におけるエッジ検出回路が実行するプログラムのフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態においてフォーカスサーボの切り替え点をスピンドルモータのエンコーダが出力するパルス信号のパルス数のカウントから検出する様子を示した説明図である。
【図12】本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態2とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。
【図13】本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態3とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。
【図14】本発明に係るレーザ微細加工装置の第1〜第3の実施形態に係る光加工ヘッドの構成の形態4とレーザ光の光路中の各部分における偏光状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1〜3・・・レーザ微細加工装置
5・・・・・ウェハー
5a・・・・膜
10・・・・ウェハー固定治具
10a・・・装着孔
12・・・・ターンテーブル
20・・・・レーザ光源
22・・・・コリメートレンズ
24・・・・偏光ビームスプリッタ
25・・・・ビームスプリッタ
26・・・・1/4波長板
27・・・・偏光ビームスプリッタ
28・・・・減光フィルタ
30・・・・偏光子
31・・・・1/4波長板
32・・・・集光レンズ
34・・・・集光レンズ
35・・・・集光レンズ
36・・・・シリンドリカルレンズ
37・・・・シリンドリカルレンズ
38・・・・偏光ビームスプリッタ
40・・・・フォトディテクタ
42・・・・フォトディテクタ
102・・・信号切替回路
104・・・信号強度変化検出回路
106・・・HF信号増幅回路A
108・・・フォーカスエラー信号生成回路A
110・・・フォーカスサーボ回路A
112・・・HF信号増幅回路B
114・・・フォーカスエラー信号生成回路B
116・・・フォーカスサーボ回路B
118・・・ドライブ回路
120・・・カウント回路
122・・・エッジ検出回路
200・・・光加工ヘッド
250・・・レーザ駆動回路
252・・・発光信号供給回路
300・・・スピンドルモータ
302・・・スピンドルモータ制御回路
400・・・フィードモータ
402・・・フィードモータ制御回路
600・・・コントローラ
602・・・表示装置
604・・・入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の加工対象物を平板状の固定治具に形成された深さが該加工対象物の厚さと略同一であると共に該固定治具の中心から離間して設けられた装着孔に装着し、該固定治具を回転手段により回転させながら光加工ヘッドから出射される加工用レーザ光を該加工対象物に照射すると共に、半径方向送り手段により該固定治具を該光加工ヘッドと相対的に半径方向に送り、該加工対象物の加工面に微細な加工を施すレーザ微細加工装置において、
該光加工ヘッドが、該加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにする偏光状態変更手段と、該加工対象物又は該固定治具からの反射光を偏光状態により分離し、少なくとも該内側のレーザ光による該加工対象物又は該固定治具からの反射光を受光する受光光学系とを有し、
該受光光学系による受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該加工対象物又は該固定治具の表面に合うようフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ手段を備えたことを特徴とするレーザ微細加工装置。
【請求項2】
前記光加工ヘッドが、前記偏光状態変更手段により前記レーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにされたレーザ光の該内側と該外側との境界近傍から内側のレーザ光を、前記加工対象物がレーザ加工されない強度まで減光させる減光手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のレーザ微細加工装置。
【請求項3】
前記受光光学系が、偏光状態により分離した反射光におけるそれぞれの反射光を受光する第1の受光器と第2の受光器とを有し、該第1の受光器が、前記レーザ光断面の外側のレーザ光による前記加工対象物又は前記固定治具からの反射光を受光して受光光量に基づく信号を出力し、該第2の受光器が、前記レーザ光断面の内側のレーザ光による該加工対象物又は該固定治具からの反射光を受光して受光光量に基づく信号を出力し、
前記フォーカスサーボ手段が、前記加工用レーザ光が該加工対象物に照射されているときに、該第1の受光器が出力する受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該加工対象物表面に合うようにフォーカスサーボを行う第1のフォーカスサーボ手段と、該加工用レーザ光が該固定治具に照射させているときに、該第2の受光器が出力する受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該固定治具表面に合うようフォーカスサーボを行う第2のフォーカスサーボ手段とを有し、
該加工対象物と該固定治具の境界又は境界近傍を検出する境界検出手段と、
該境界検出手段による検出に基づいて、該第1のフォーカスサーボ手段と、該第2のフォーカスサーボ手段とを切り替えるフォーカスサーボ切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーザ微細加工装置。
【請求項4】
前記境界検出手段が、前記加工対象物からの反射光及び前記固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出する信号強度変化検出手段であることを特徴とする請求項3記載のレーザ微細加工装置。
【請求項5】
前記回転手段による回転の角度に相当する量を検出する回転角度検出手段と、
前記加工用レーザ光の照射位置の前記固定治具における半径値を検出するレーザ光照射半径値検出手段とを備え、
前記境界検出手段が、前記加工対象物からの反射光及び該固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出する信号強度変化検出手段と、該信号強度変化検出手段による検出時の、該回転角度検出手段により検出される又は該回転角度検出手段に初期値として設定される回転角度に相当する量と該レーザ光照射半径値検出手段により検出される該加工用レーザ光の照射位置の該固定治具における半径値とに基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、該回転角度検出手段が検出する回転角度に相当する量が該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出する第1の回転角度基準境界検出手段とから構成されることを特徴とする請求項3記載のレーザ微細加工装置。
【請求項6】
前記回転手段による回転の基準位置を検出する回転基準位置検出手段と、
該回転手段による回転の角度に相当する量を該回転基準位置検出手段により検出した回転の基準位置からの量として検出する回転角度検出手段と、
前記加工用レーザ光の照射位置の前記固定治具における半径値を検出するレーザ光照射半径値検出手段とを備え、
前記境界検出手段が、該レーザ光照射半径値検出手段により検出される該加工用レーザ光の照射位置の該固定治具における半径値に基づいて、境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、該回転角度検出手段が検出する回転角度に相当する量が該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出する第2の回転角度基準境界検出手段であることを特徴とする請求項3に記載のレーザ微細加工装置。
【請求項7】
平板状の加工対象物を平板状の固定治具に形成された深さが該加工対象物の厚さと略同一であると共に該固定治具の中心から離間して設けられた装着孔に装着し、該固定治具を回転手段により回転させながら光加工ヘッドから出射される加工用レーザ光を該加工対象物に照射すると共に、半径方向送り手段により該固定治具を該光加工ヘッドと相対的に半径方向に送り、該加工対象物の加工面に微細な加工を施すレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法において、
該加工用レーザ光をレーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにし、
該加工対象物又は該固定治具からの反射光を偏光状態により分離し、少なくとも該内側のレーザ光による該加工対象物又は該固定治具からの反射光を受光し、
該受光した反射光の受光光量に基づく信号から作成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該加工対象物又は該固定治具の表面に合うようフォーカスサーボを行うことを特徴とするレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。
【請求項8】
前記レーザ光断面の内側と外側とで偏光状態が異なるようにされたレーザ光の該内側と該外側との境界近傍から内側のレーザ光を、前記加工対象物がレーザ加工されない強度まで減光させることを特徴とする請求項7記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。
【請求項9】
偏光状態により分離した前記反射光におけるそれぞれの反射光を受光すると共にそれぞれの反射光の受光光量に基づく信号を作成し、前記加工用レーザ光が該加工対象物に照射されているときに、前記レーザ光断面の外側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該加工対象物表面に合うようにフォーカスサーボを行う第1のフォーカスサーボと、該加工用レーザ光が該固定治具に照射させているときに、該レーザ光断面の内側のレーザ光による反射光の受光光量に基づく信号から生成したフォーカスエラー信号に基づいて該加工用レーザ光の焦点が該固定治具表面に合うようフォーカスサーボを行う第2のフォーカスサーボとを、該加工対象物と該固定治具の境界又は境界近傍の検出に基づいて切り替えることを特徴とする請求項7又は請求項8記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。
【請求項10】
前記加工対象物と前記固定治具の境界又は境界近傍の検出を、
該加工対象物からの反射光及び該固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出することにより行うことを特徴とする請求項9記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。
【請求項11】
前記加工対象物と前記固定治具の境界又は境界近傍の検出を、
前記加工対象物からの反射光及び該固定治具からの反射光に基づいて作成された信号の強度が所定レベルをクロスして変化するときを検出することと、
前記回転手段による回転の角度に相当する量と前記加工用レーザ光の照射位置の該固定治具における半径値とを検出し続け、
該所定レベルのクロス時において検出した又は初期値として設定した、該回転角度に相当する量と該加工用レーザ光の照射位置の該固定治具における半径値とに基づいて、該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、検出し続ける回転角度に相当する量が該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出することにより行うことを特徴とする請求項9記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。
【請求項12】
前記加工対象物と前記固定治具の境界又は境界近傍の検出を、
前記回転手段による回転の基準位置を検出し、該回転手段による回転の角度に相当する量を検出した回転の基準位置からの量として検出し続けると共に、
前記加工用レーザ光の照射位置の前記固定治具における半径値を検出し続け、
検出した該半径値に基づいて、該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量を計算し、検出し続ける回転角度に相当する量が該境界又は境界近傍における回転角度に相当する量になったときを検出することにより行うことを特徴とする請求項9に記載のレーザ微細加工装置のフォーカスサーボ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−290090(P2008−290090A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136099(P2007−136099)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】