説明

レーザ治療超音波探触子及びレーザ治療超音波診断装置

【課題】 プローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な狭い体腔内に挿入して使用する場合にも、レーザ照射部位にレーザを正確に照射する。
【解決手段】 音響素子2は超音波信号により2次元の走査面を走査するとともに2次元の走査面と直交する方向に揺動し、音響素子にはその配列方向に沿って治療用レーザ照射窓4が設けられている。筐体1aの背後から送られてくる治療用レーザ光Lの光路を反射ミラー5bにより折り曲げてポリゴンミラー5cの反射面の方向に反射し、ポリゴンミラーを回転して治療用レーザ光をレーザ照射窓方向に偏向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ治療部位にレーザを照射するレーザ治療超音波探触子及びレーザ治療超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波断層画像を見ながらレーザ照射部位を特定してレーザ照射部位を焼灼する従来例としては下記の特許文献1、2に開示されている技術がある。また、体腔内に挿入する従来例のレーザ治療超音波探触子として、例えば下記の特許文献3に提案されているものがある。また、レーザ治療法として、腫瘍親和性のある光感受性物質を体内に投与した後、腫瘍組織にレーザ光を照射することにより光化学反応を引き起こさせて腫瘍組織を変成・壊死させるPDT(Photodynamic Therapy/光線力学的療法)が知られている。PDTなどのレーザ治療法として好適なレーザ波長としては、下記の非特許文献1によれば、血液中のヘモグロビンが600nm以下を吸収して効果が少ないことから、600nm以上が望ましいことが記載されている。
【特許文献1】特公昭63−20547号公報(第1図)
【特許文献2】特開平2−5936号公報(第4図)
【特許文献3】特開平4−285548号公報(要約書)
【非特許文献1】レーザーの臨床、渥美和彦、昭和56年11月20日、p61、図12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例では、2次元の超音波断層画像を見ながらレーザ照射部位を特定するので、2次元画像と直交する方向に対してはプローブの方向を変えながらレーザ照射部位を特定する必要があり、このため、経膣や経直腸などの狭い体腔内に挿入してプローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な場合には、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができないという問題点がある。
【0004】
本発明は上記従来例の問題点に鑑み、プローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な狭い体腔内に挿入して使用する場合にも、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができるレーザ治療超音波探触子及びレーザ治療超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレーザ治療超音波探触子は上記目的を達成するために、超音波信号により2次元的に走査するとともに、前記2次元的に走査する走査面と直交する方向に揺動することにより3次元エコーデータを取得する音響素子と、
前記音響素子が走査する2次元の走査面に沿って放射方向のレーザ出射角度が制御可能であるとともに、前記音響素子と一体で揺動して前記2次元の走査面と直交する方向のレーザ出射角度が制御可能なレーザ照射手段とを、
備えた構成とした。
この構成により、照射するレーザ光の、3次元音響素子の2次元の走査面の放射方向の出射角度と2次元の走査面と直交する方向の出射角度が制御可能であるので、プローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な狭い体腔内に挿入して使用する場合にも、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができる。
【0006】
また、前記音響素子は、一方向に配列された複数の音響素子で構成され、
前記レーザ照射手段は、レーザ光を前記音響素子が走査する2次元の走査面に沿って放射方向に偏向することを特徴とする。
また、前記音響素子は、一方向に配列された複数の音響素子で構成され、
前記レーザ照射手段は、前記複数の音響素子の配列方向に沿って配列されて各放射方向にレーザ光を出射する複数のレーザ光発光素子を有することを特徴とする。
また、前記音響素子は、前記2次元の走査面に沿って回転し、
前記レーザ照射手段は、前記音響素子と共に2次元の走査面に沿って回転することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のレーザ治療超音波診断装置は、上記目的を達成するために、
請求項1から4のいずれか1つに記載のレーザ治療超音波探触子と、
前記音響素子により得られた3次元エコーデータから3次元画像を構築する手段と、
前記構築した3次元画像の座標に基づいて前記レーザ照射手段が照射するレーザ光の前記2次元の走査面の放射方向の出射角度と前記2次元の走査面と直交する方向の出射角度を制御する手段とを備えた構成とした。
この構成により、既存の3次元超音波診断装置を利用して、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な狭い体腔内に挿入して使用する場合にも、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができる。また、既存の3次元超音波診断装置を利用して、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第1の実施の形態を示す構成図であり、図1(a)は本発明に係るレーザ治療超音波探触子1の音響素子を正面から見た図、図1(b)は本発明に係るレーザ治療超音波探触子1を側面から見た図である。レーザ治療超音波探触子1を構成する複数の音響素子2は、図1(a)においては上下方向に、図1(b)においては図面と直交する方向に配列され、複数の音響素子2すべての各駆動タイミングを制御することにより図2に示すように断層面100を扇状に2次元走査する超音波セクタ電子スキャニング音響素子である。また、音響素子2は2次元走査面と直交する方向(図1(a)においては左右方向、図1(b)においては図面と直交する方向)にレーザ治療超音波探触子1の筐体1aに対して揺動動作軸3の回りを揺動することにより図2に示すように患部3次元(3D)空間101を走査することができる。
【0010】
また、図1(a)に示すように、音響素子2にはその配列方向に沿って治療用レーザ照射窓4が設けられている。レーザ治療超音波探触子1内には図1(b)に示すように、治療用レーザ光スキャンユニット(以下単にスキャンユニットとも言う)5が音響素子2と共に揺動動作軸3の回りを揺動可能に設けられている。スキャンユニット5はレーザ光反射ユニット5aを有し、レーザ光反射ユニット5aでは、筐体1aの背後から不図示の光ファイバを介して送られてくる治療用レーザ光Lの光路を反射ミラー5bにより折り曲げてポリゴンミラー5cの反射面の方向に反射し、ポリゴンミラー5cを回転させてこの治療用レーザ光Lを治療用レーザ照射窓4の方向に偏向する。このため、図2に示すように治療用レーザ光Lを、ポリゴンミラー5cの回転角度位置に応じて音響素子2の配列方向の所望の角度に照射することができ、また、スキャンユニット5の揺動角度位置に応じて音響素子2の配列方向と直交する方向の所望の角度に照射することができる。また、図2に示すレーザ治療部位102の位置は、音響素子2により3次元で走査されて得られた3次元断層画像の患部3D空間101の座標から求めることができるので、この座標に応じて治療用レーザ光Lの照射タイミングを制御することによりレーザ治療部位102のみにピンポイントで治療用レーザ光Lを照射することができる。
【0011】
図3はレーザ治療超音波探触子1を備えたレーザ治療超音波診断装置10の構成を示す。超音波送信ビームフォーマ12は超音波送信制御部11の制御に基づいて、レーザ治療超音波探触子1内の音響素子2が断層面100を扇状に2次元走査するための駆動パルスを発生して音響素子2に出力し、また、素子揺動動作制御部14は音響素子2が2次元走査面と直交する方向に揺動して患部3D空間101を走査するように制御する。超音波受信ビームフォーマ13は音響素子2により得られたエコー信号の位相を調整するなどして3D信号処理部15に出力し、3D信号処理部15は3次元エコーデータから、2次元画面上に表示するための3次元画像データを構築する。ビデオ処理部16は3D信号処理部13により構築された3次元画像データを輝度信号に変換してグラフィックメモリ17に展開することにより3次元画像をモニタ19に表示させる。操作卓20はモニタ19に表示されている3次元画像の座標に対してレーザ照射位置を指定することが可能であり、レーザ照射制御部18は操作卓20から指定されたレーザ照射位置に応じて治療用レーザ光Lの照射タイミングを制御する。ここで、PDTに利用する場合には、レーザ波長としては、非特許文献1によれば、血液中のヘモグロビンが600nm以下を吸収して効果が少ないことから、660nm程度を用いる。
【0012】
<第2の実施の形態>
図4は本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第2の実施の形態を示す構成図であり、図4(a)はレーザ治療超音波探触子30の音響素子2を正面から見た図、図4(b)はレーザ治療超音波探触子30を側面から見た図である。レーザ治療超音波探触子30を構成する音響素子2の構成及び揺動機構は第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。第2の実施の形態では、音響素子2にはその配列方向に沿って複数の治療用半導体レーザ素子列31が設けられ、治療用半導体レーザ素子列31の各素子には治療用半導体レーザスキャン配線32が接続されている。第2の実施の形態によれば、治療用レーザ光Lは、治療用半導体レーザ素子列31のうち、発光する素子を選択することにより音響素子2の配列方向の所望の角度位置に照射することができ、また、第1の実施の形態と同様にスキャンユニット5の揺動角度位置に応じて音響素子2の配列方向と直交する方向の所望の角度位置に照射することができる。
【0013】
<第3の実施の形態>
図5は本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第3の実施の形態を示す構成図であり、図5(a)はレーザ治療超音波探触子40の音響素子41を正面から見た図、図5(b)はレーザ治療超音波探触子40を側面から見た図である。音響素子41の中央には半導体レーザ素子(治療用半導体レーザ素子)42が設けられ、音響素子41は半導体レーザ素子42と共に、メカニカルセクタスキャニング回転用ロータモータ43に取り付けられて図5(a)に示す矢印方向に回転して2次元走査するメカニカルセクタスキャニング音響素子である。メカニカルセクタスキャニング回転用ロータモータ43は2次元走査面と直交する方向に回転動作軸46の回りを回転可能であり、このため、音響素子41は3次元で走査することができる。第3の実施の形態によれば、半導体レーザ素子42は、音響素子41の2次元走査方向位置と2次元走査面と直交する方向位置に応じて駆動タイミングを制御することにより音響素子41の走査方向と同じ方向に治療用レーザ光Lを照射することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、プローブの方向を変えてレーザ照射方向を変えることが困難な狭い体腔内に挿入して使用する場合にも、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができ、また、既存の3次元超音波診断装置を利用して、レーザ照射部位にレーザを正確に照射することができるという効果を有し、3次元の超音波探触子及び超音波診断装置などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第1の実施の形態を示す構成図 (a)レーザ治療超音波探触子の音響素子を正面から見た図 (b)レーザ治療超音波探触子を側面から見た図
【図2】図1のレーザ治療超音波探触子の処理を示す説明図
【図3】図1のレーザ治療超音波探触子を備えたレーザ治療超音波診断装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第2の実施の形態を示す構成図 (a)レーザ治療超音波探触子の音響素子を正面から見た図 (b)レーザ治療超音波探触子を側面から見た図
【図5】本発明に係るレーザ治療超音波探触子の第3の実施の形態を示す構成図 (a)レーザ治療超音波探触子の音響素子を正面から見た図 (b)レーザ治療超音波探触子を側面から見た図
【符号の説明】
【0016】
1、30、40 レーザ治療超音波探触子
2、41 音響素子
4 治療用レーザ照射窓
5 治療用レーザ光スキャンユニット
5a レーザ光反射ユニット
5b 反射ミラー
5c ポリゴンミラー
10 レーザ治療超音波診断装置
11 超音波送信制御部
12 超音波送信ビームフォーマ
13 超音波受信ビームフォーマ
14 素子揺動動作制御部
15 3D信号処理部
16 ビデオ処理部
17 グラフィックメモリ
18 レーザ照射制御部
19 モニタ
20 操作卓
31 治療用半導体レーザ素子列
32 治療用半導体レーザスキャン配線
42 半導体レーザ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号により2次元的に走査するとともに、前記2次元的に走査する走査面と直交する方向に揺動することにより3次元エコーデータを取得する音響素子と、
前記音響素子が走査する2次元の走査面に沿って放射方向のレーザ出射角度が制御可能であるとともに、前記音響素子と一体で揺動して前記2次元の走査面と直交する方向のレーザ出射角度が制御可能なレーザ照射手段とを、
備えたレーザ治療超音波探触子。
【請求項2】
前記音響素子は、一方向に配列された複数の音響素子で構成され、
前記レーザ照射手段は、レーザ光を前記音響素子が走査する2次元の走査面に沿って放射方向に偏向することを特徴とする請求項1に記載のレーザ治療超音波探触子。
【請求項3】
前記音響素子は、一方向に配列された複数の音響素子で構成され、
前記レーザ照射手段は、前記複数の音響素子の配列方向に沿って配列されて各放射方向にレーザ光を出射する複数のレーザ光発光素子を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ治療超音波探触子。
【請求項4】
前記音響素子は、前記2次元の走査面に沿って回転し、
前記レーザ照射手段は、前記音響素子と共に2次元の走査面に沿って回転することを特徴とする請求項1に記載のレーザ治療超音波探触子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のレーザ治療超音波探触子と、
前記音響素子により得られた3次元エコーデータから3次元画像を構築する手段と、
前記構築した3次元画像の座標に基づいて前記レーザ照射手段が照射するレーザ光の前記2次元の走査面の放射方向の出射角度と前記2次元の走査面と直交する方向の出射角度を制御する手段とを、
備えたレーザ治療超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−29277(P2007−29277A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214587(P2005−214587)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】