説明

レーザ溶接品質判定方法及びその装置

【課題】溶接不良誤判定を抑制し且つ画像処理負荷を抑制できるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置を提供する。
【解決手段】本発明によるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置は、所定のレーザ溶接装置によりレーザ光(La)を照射して重ね合わされた板状の被溶接部材(P1、P1)を互いに溶接する際の溶接部(b)の溶接品質をその溶接中に判定する方法であって、被溶接部材の溶接部にレーザ光を照射した際に溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定ステップと、この第1判定ステップにより溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部の光像を所定の画像処理装置により画像処理して、その溶接部の溶接状態を判定する第2判定ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接品質判定方法及びその装置に係り、特に、所定のレーザ溶接装置によりレーザ光を照射して重ね合わされた板状の被溶接部材を互いに溶接する際の溶接部の溶接品質を判定するレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の車体のルーフやピラーなどにおいて、板と板とを両側から電極で加圧するスポット溶接を用いて互いに接合することが知られている。このようなスポット溶接では、スポット溶接用のシャンクの撓みによる板との接触による分流により溶接不良が生じたり、自動車の場合であれば、車体剛性を高めるために溶接箇所を複数設けなければならないなどの問題があった。
【0003】
一方、レーザ溶接であれば、板の片方側からレーザ光を当てるものであり、連続溶接(線状に溶接)も可能であるので、近年、よく用いられるようになってきている。しかしながら、レーザ溶接では、スポット溶接のように、板と板を両側から加圧するものではないので、板と板との隙間(板間隙)の管理が難しく、スポット溶接よりも溶接不良が生じやすい、即ち、溶接部に欠陥(吹上げ、溶け落ち、穴あき、アンダーフィル、ビット発生など)が生じるという問題があった。
【0004】
そのため、レーザ溶接部の品質を判定する必然性、或いは、板間隙を管理する必要が生じることになる。
そこで、従来、例えば、特許文献1には、レーザ溶接時の被溶接物のキーホール部に発生するプラズマ光像を高速度カメラにより取込み、得られた画像を即時且つ連続して画像処理することにより、プラズマ光像の傾き角を求めて、溶接品質の良否を判定するレーザ溶接品質検査方法及び装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザ溶接した箇所が板間隙により異常が生じることが開示されていると共に、レーザ溶接した箇所からの光の周波数成分の変動を解析してそのレーザ溶接部の品質を判定するレーザ溶接部の品質判定装置及び方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−066267
【特許文献2】特開2006−159242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法及び装置は、キーホール部からのプラズマ光を即時且つ連続して画像処理して溶接するものであり、その処理装置の処理能力の負荷が非常に重たいものになる。また、高速度カメラを用いたり、処理装置の高いコンピュータを用いたりするので、コストが高いものになってしまう。
【0008】
ここで、レーザ溶接においては、所謂、溶け落ちと言われるような溶接不良が生じ、最終的に穴あきと言われる欠陥が生じる場合がある。ところが、溶け落ちた金属(レーザ光により溶かされた被溶接物である金属板)は、板間隙や板間の傾きの状態によっては、まだ溶けた状態の金属の表面張力などにより、再度、その溶接部の穴あきの部分を埋め戻すように流動するような現象が生じて、結果的に穴あきの欠陥が生じないことがある。なお、このような場合でも、溶接強度は保たれる。
【0009】
このような現象に対し、上述した特許文献2の方法及び装置では、レーザ光を照射した溶接部から発生する光のみで溶接部の品質を判定しているため、そのような、結果的に穴あきの欠陥が生じない場合も、欠陥である、と誤判定(溶接不良誤判定)をしてしまうものである。
【0010】
また、特許文献2の方法及び装置では、高速度カメラを用いて、キーホール部、からのプラズマ光を即時に画像処理しているものであり、溶接した瞬間を画像処理するようにしているので、上述したような溶接不良誤判定をしてしまう可能性は高い。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、画像処理負荷を抑制できるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、溶接不良誤判定を抑制し且つ画像処理負荷を抑制できるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明は、所定のレーザ溶接装置によりレーザ光を照射して重ね合わされた板状の被溶接部材を互いに溶接する際の溶接部の溶接品質をその溶接中に判定する方法であって、被溶接部材の溶接部にレーザ光を照射した際に溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定ステップと、この第1判定ステップにより溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部の光像を所定の画像処理装置により画像処理して、その溶接部の溶接状態を判定する第2判定ステップと、を有することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、第1判定ステップにより、溶接中の重ね合わされた板状の被溶接部材の溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、第2判定ステップにより、その溶接不良であると判定された溶接部の光像を所定の画像処理装置により画像処理して、その溶接部の溶接状態を判定するので、所定の画像処理装置による画像処理負荷を抑制することが出来る。
【0014】
本発明において、好ましくは、第2判定ステップは、第1判定ステップから所定時間の後に実行される。
このように構成された本発明においては、第1判定ステップによる溶接不良検出から所定時間の後に、第2判定ステップによる溶接部の溶接状態の判定が行われるので、例えば、第1判定ステップにおいて抜け落ちとして溶接不良と判定された溶接部が、その所定時間の間に埋め戻しなどの現象が生じた場合、第2判定ステップにおいて、溶接状態としては、穴あきなどの欠陥が生じていないと判定され、その結果、溶接不良誤判定を抑制することが出来る。また、画像処理を行う第2判定ステップは、第1判定ステップから所定時間の後に実行されるので、溶接不良であると判定された溶接部の画像取り込みを容易に行うことが出来る。さらに、画像処理により溶接状態を判定する第2判定ステップは、第1判定ステップにより溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ実行されるので、所定の画像処理装置による画像処理負荷も抑制される。
【0015】
上記の目的を達成するために本発明は、重ね合わされた板状の被溶接部材の溶接部にレーザ光を照射してそれらの板状の被溶接部材を互いに溶接するレーザ光照射手段と、このレーザ光照射手段によりレーザ光が照射された溶接部から発生する光を検出する光検出手段と、この光検出手段により検出された溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定手段と、被溶接部材の溶接進行方向に対して、レーザ光照射手段の後方側に設けられ、溶接部から発生する光の光像を取り込む画像取込手段と、この画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定する第2画像処理判定手段と、第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部について、画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するよう第2画像処理判定手段を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0016】
このように構成された本発明においては、レーザ光照射手段により溶接されている重ね合わされた板状の被溶接部材の溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定手段により、まず、溶接部の溶接の不良の有無が判定され、制御手段は、この第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定されたときのみ、溶接不良であると判定された溶接部について、画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析し、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するよう第2画像処理判定手段を制御するので、第2画像処理判定手段による画像処理負荷を抑制することが出来る。
【0017】
本発明において、好ましくは、制御手段は、第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定された所定時間後に、溶接不良であると判定された溶接部について、画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するよう第2画像処理判定手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第1判定手段による溶接不良検出から所定時間の後に、溶接不良であると判定された溶接部について、第2画像処理判定手段による溶接部の溶接状態の判定が行われるので、例えば、第1判定手段において抜け落ちとして溶接不良と判定された溶接部が、その所定時間の間に埋め戻しなどの現象が生じた場合、第2画像処理判定手段において、溶接状態としては、穴あきなどの欠陥が生じていないと判定され、その結果、溶接不良誤判定を抑制することが出来る。また、第2画像処理判定手段は、第1判定手段から所定時間の後に画像処理を行うので、画像取込手段による溶接部から発生する光の光像の取り込みを溶接中随時行う場合、或いは、第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定されたときのみその光像の取り込みを行う場合を含め、溶接不良であると判定された溶接部の画像処理を適切に実行することが出来る。さらに、制御手段は、第1判定手段により溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、第2画像処理判定手段を実行させるよう制御するので、第2画像処理判定手段による画像処理負荷も抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置によれば、画像処理負荷を抑制しつつレーザ溶接の溶接部の品質の判定をすることが出来る。また、溶接不良誤判定を抑制し且つ画像処理負荷を抑制しつつレーザ溶接の溶接部の品質の判定をすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置の概略構成を示す概略図である。
【図2】レーザ光が照射された被溶接物の溶融状態とその溶接部で発生する光をいずれも説明のために可視化して示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置により実行されるレーザ溶接品質判定方法による処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】レーザ溶接中における溶接品質判定中の被溶接部品の状態及び溶接品質判定状況を示す図1及び図2に対応する概略図である。
【図5】重ねあわされた板状の被溶接部材の溶接部の溶接状態をそれぞれ示す図である。
【図6】溶融池をレーザ光を照射する方向から見た平面図であり、その図6(a)はレーザ光を照射したある時点での溶接部の状態を示し、図6(b)、(c)は、そのある時点から所定時間後の状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置を説明する。
先ず、図1により、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置の概略構成を示す概略図である。
先ず、図1に示すように、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、レーザ溶接機2と一体的に構成されている。レーザ溶接機2は、レーザ発振器4と、レーザ発振器4から出力されたレーザ光Laを伝送する伝送ファイバ6と、伝送ファイバ6から所定の角度で広がるレーザ光Laを平行光に変換するコリメートレンズ8と、平行光となったレーザ光を被溶接物の溶接点bに集光させるフォーカスレンズ10と、を有し、レンズ8、10は、加工ヘッド12内に設けられている。
【0021】
本実施形態では、被溶接物は、自動車のルーフやドアなどに使用される亜鉛メッキ鋼板P1、P2を想定し、これらを重ね合わせて、レーザ溶接機2によりレーザ光Laを照射して互いに溶接するものとする。
【0022】
また、レーザ溶接機2の加工ヘッド12内には、溶接点bで発生する光Lbのみを側方に反射するように斜めに傾けられたハーフミラー14が設けられている。光Lbについては、図2を用いて後述する。
【0023】
本実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、このハーフミラー14で反射された光Lbを検出する光検出機16を有する。この光検出機16は、検出された光Lbの強度に基づいて溶接点bの溶接の不良の有無を判定する。
【0024】
また、本実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、加工ヘッド12に取り付けられた画像処理装置18を有し、その画像処理装置18の被加工物側には、後述する、溶接部の溶融池から発生する光の光像を取り込むためのカメラ20が取り付けられている。画像処理装置18は、カメラ20により取り込まれた光像を画像解析し、その解析した画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態(欠陥の有無、どのような溶接形態であるか、溶接不良であるか否かなど)を判定する。
【0025】
また、本実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、光検出機16及び画像処理装置18にそれぞれ接続された制御装置22を有する。この制御装置22は、後述するように、光検出機16により検出された光Lbによる溶接点bの溶接の不良の有無の判定結果に基づいて、画像処理装置18を制御する。また、制御装置22は、レーザ溶接機2の制御装置も兼ねており、レーザ発振器4のオンオフも制御する。
【0026】
なお、この制御装置22により、光検出機16により検出された光Lbの強度に基づいて溶接点bの溶接の不良の有無を判定するようにしても良い。また、この制御装置22により、画像処理装置18により解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するようにしても良い。また、制御装置22は、図1上で別体のものとして示しているが、画像処理装置20や、光検出機16や、レーザ溶接機2などに内蔵されていても良い。
【0027】
次に、図2により、レーザ光Laが照射された被溶接物の溶融状態と溶接点bで発生する光Lbについて説明する。図2は、レーザ光が照射された被溶接物の溶融状態とその溶接部で発生する光をいずれも説明のために可視化して示す概念図である。
【0028】
先ず、レーザ光が照射された被溶接物の溶融状態を説明する。
図2に示すように、溶接点bに集光されたレーザ光La(図示せず)により、被加工物Pは加熱され、溶融、或いは、蒸発(沸騰)する。溶接点bでは、激しい沸騰による蒸気圧でキーホールと呼ばれる穴があく。本実施形態では、そのレーザ溶接プロセスにおいて、図1に示す加工ヘッド12(レーザ溶接品質判定装置1全体)は、亜鉛メッキ鋼板P1、P2に対し、図1上の右側から左側に相対的に移動しながらレーザ溶接するようにしており、図2に示すように、その溶接進行方向の後方には、溶融した金属がたまる溶融池が形成される。この溶融池では、溶けた金属が、徐々に放熱しながら凝固するようになっている。この溶融池での溶融金属の凝固していく過程では、もし、溶接点bで、「溶け落ち」や「穴あき」(図5参照)などの欠陥が生じていても、板間隙(レーザ溶接する亜鉛メッキ鋼板P1、P2間の隙間)やそれらの板間の傾きの状態によっては、まだ溶けた状態の金属の表面張力などにより、再度、その溶接部の「溶け落ち」や「穴あき」の部分を埋め戻すように流動するようないわゆる「埋め戻し」現象が生じて、結果的に「溶け落ち」や「穴あき」などの欠陥が生じないことがある。なお、亜鉛メッキ鋼板P1、P2が、亜鉛メッキ鋼板P1、P2に対して相対移動するようにレーザ溶接しても良く、その場合も図2に示す状態と同様の溶融状態となる。
【0029】
次に、溶接部で発生する光を説明する。
溶接部で発生する光は、図2に示すように、主に、被溶接物に吸収されなかったレーザ光自体が反射される光(波長1060nm近傍)と、キーホールからの金属の蒸発によって発生するプラズマ光(波長1100nm以上)と、溶融池の溶融金属熱の放射による赤外線(600nm以下)と、がある。
本実施形態では、光検出機16では、光Lbとして、特定の波長領域に分光する分光フィルタ(図示せず)を使用して分光し、レーザの反射光及びプラズマ光を検出するようにしている。
【0030】
次に、図3乃至図6により、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質装置により実行される本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法を説明する。
図3は、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置により実行されるレーザ溶接品質判定方法による処理の一例を示すフローチャートであり、図4は、レーザ溶接中における溶接品質判定中の被溶接部品の状態及び溶接品質判定状況を示す図1及び図2に対応する概略図であり、図5(a)乃至(c)は、重ねあわされた板状の被溶接部材の溶接部の溶接状態をそれぞれ示す図であり、図6は、溶融池をレーザ光を照射する方向である上方から見た平面図であり、その図6(a)はレーザ光を照射したある時点での溶接部の状態を示し、図6(b)、(c)は、そのある時点から所定時間後の状態をそれぞれ示す図である。図3において、Sは、各ステップを示す。
【0031】
先ず、図3に示すように、S1において、図1に示す制御装置22によりレーザ発振器4がオンし、レーザ溶接機2によるレーザ溶接を開始すると共に、図示しない移動装置により、レーザ溶接品質判定装置1全体を図4の矢印Aに示す方向(溶接進行方向)に移動させ、被溶接部品である亜鉛メッキ鋼板P1、P2の連続溶接(線状に溶接)を開始する。
【0032】
次に、S2に進み、図1に示す光検出機16が、被溶接部材P1、P2の溶接部にレーザ光Laを照射した際に溶接部から発生する光Lbの強度を検出する。
次に、S3に進み、光検出機16が、S2で検出した光Lbの強度に基づいて溶接点bの溶接の不良の有無を判定する。このS3では、例えば、図5(a)に示すようないわゆる「溶け落ち」と呼ばれる状態や、図5(b)に示すようないわゆる「穴あき」と呼ばれる状態のような欠陥があるか否かを検出する。欠陥としては、その他に、吹上げ、アンダーフィル、ビット発生などがある。
【0033】
S3において、欠陥が検出されなかった場合は、レーザ溶接が良好に行われたものとしてS4に進み、このS4の後、本実施形態の場合、S2に戻る。
【0034】
S3において、欠陥が検出された場合は、S5に進む。
ここで、欠陥が検出された場合には、例えば、図6(a)に示すように、溶接部の溶接点bは、その上方から見ると、溶け落ちていたり(図5(a)のような状態)、穴あき(図5(b)のような状態)が生じていることが視覚的に分かる。上述したように、溶接点bにおいて「溶け落ち」や「穴あき」などの欠陥が生じていても、板間隙やそれらの板間の傾きの状態によっては、溶融池での溶融金属の凝固していく過程で、まだ溶けた状態の金属の表面張力などにより、再度、その溶接部の「溶け落ち」や「穴あき」の部分を埋め戻すように流動するようないわゆる「埋め戻し」現象が生じて、結果的に「溶け落ち」や「穴あき」などの欠陥が生じないことがある。
【0035】
そこで、本実施形態では、レーザ溶接が連続溶接であることを利用して、即ち、レーザ溶接品質判定装置1全体が矢印Aの方向に移動していることを利用して、図4及び図6に示すように、欠陥が生じていると判定されたある時点での溶接点bの真上に、所定時間後、画像処理装置18及びカメラ20が到着したとき(図4では、所定時間後の画像処理装置18、カメラ20、溶融池を仮想線で示す。また、図6において、所定時間後の溶接点bを、図6(b)では溶接点b’とし、図6(c)では溶接点b”とする)、その溶接点b’(或いは溶接点b”)において「埋め戻し」現象が生じ、結果的に「溶け落ち」や「穴あき」などの欠陥が無くなっているか否かを画像処理装置18による画像処理により判定するようにしている。そして、そのようなことが可能なように、画像処理装置18及びカメラ20は、レーザ溶接機2に一体的に取り付けられている。なお、所定時間後には、溶接点bは、溶融池の一部となっている。
【0036】
具体的には、本実施形態では、制御装置22が、S3において欠陥が検出された時点から、S3において欠陥が検出された時点から所定時間、即ち、S3の判定の時点からカメラ20及び画像処理装置18が、欠陥が検出された溶接点bの真上に来るまでの時間をカウントする。所定時間は、カメラ20及び画像処理装置18のレーザ溶接機2に対する相対的な取付位置と、装置1の移動速度とから計算可能である。
【0037】
そして、所定時間後に、S5において、カメラ20により溶接点b’(或いは溶接点b”)の光像を取り込み、S6において、画像処理装置18により、S5で取り込んだ光像を画像処理装置18で画像解析する。
【0038】
次に、S7において、S6で解析した画像解析結果に基づいて溶接点b’(或いは溶接点b”)の溶接状態(欠陥の有無、どのような溶接形態であるか、溶接不良であるか否かなど)を判定する。
【0039】
S7において、例えば、図5(c)及び図6(b)に示すように、埋め戻し現象があり、欠陥が消滅している場合には、欠陥なし、と判定してS4に進む。S4の後は、S2に進み、上述した処理を繰り返す。
【0040】
一方、S7において、例えば、図6(b)のように、埋め戻し現象が生じず、或いは、生じても十分ではない場合には、欠陥あり、と判定して、S8に進む。S8では、溶接不良が生じたものとして、所定の作業員などに警報などを発する。
【0041】
これらのS5乃至S7は、制御装置22により制御される。なお、所定時間のカウント、S5乃至S7の処理を、画像処理装置18自体で実行するように構成しても良い。なお、S5のカメラ20による画像取込処理は、画像処理装置18に大きな処理負担をかける訳ではないので、レーザ溶接工程中、常時行うようにし、S6による画像処理だけ、S3において欠陥が検出されたときのみ実行するようにしても良い。つまり、S5の処理を、S1とS2の間、或いは、S2とS3の間に実行するようにしても良い。
【0042】
次に、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置及びレーザ溶接品質判定方法の作用効果を説明する。
【0043】
先ず、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1の作用効果を説明する。
本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、レーザ溶接機2により溶接される重ね合わされた板状の亜鉛メッキ鋼板P1、P2の溶接部(溶接点b)から発生する光Lbの強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する光検出機16或いは制御装置22により、まず、溶接部の溶接の不良の有無が判定され、画像処理装置18は、この光検出機16或いは制御装置22により溶接部が溶接不良であると判定されたときのみ、カメラ20により取り込まれた溶接部(溶接点b’、b”)の光像を画像解析し、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部(溶接点b’、b”)の溶接状態を判定するので、画像処理装置18による画像処理負荷を抑制することが出来る。
【0044】
また、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、光検出機16或いは制御装置22により溶接部(溶接点b)が溶接不良であると判定されたときのみ、カメラ20により、溶接不良であると判定された溶接部(溶接点b’、b”)から発生する光の光像を取り込むので、必要最小限な画像取り込みを行うことが出来る。
【0045】
また、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定装置1は、光検出機16或いは制御装置22により溶接部(溶接点b)が溶接不良であると判定された所定時間後に、画像処理装置18により解析された画像解析結果に基づいて溶接部(溶接点b’、b”)の溶接状態を判定するので、例えば、第1判定手段において抜け落ちとして溶接不良と判定された溶接部(溶接点b)が、その所定時間の間に埋め戻しなどの現象が生じた場合、画像処理装置18において、溶接状態としては、穴あきなどの欠陥が生じていないと判定され、その結果、溶接不良誤判定を抑制することが出来る。また、画像処理装置18は、光検出機16或いは制御装置22による溶接不良の判定時点から所定時間の後に画像処理を行うので、溶接部(溶接点b’、b”)から発生する光の光像の取り込みを溶接中カメラ20により随時行う場合、或いは、溶接部(溶接点b)が溶接不良であると判定されたときのみその溶接部(溶接点b’、b”)の光像の取り込みを行う場合を含め、溶接不良であると判定された溶接部(溶接点b’、b”)の画像処理を適切に実行することが出来る。さらに、制御手段22は、溶接部(溶接点b)の溶接が不良であると判定されたときのみ、画像処理装置18による画像処理を実行させるよう制御するので、画像処理装置18による画像処理負荷が抑制される。
【0046】
次に、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法の作用効果を説明する。
本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法は、レーザ溶接機2によりレーザ光Laを照射して重ね合わされた亜鉛メッキ鋼板P1、P2を互いに溶接する際の溶接部(溶接点b)の溶接品質をその溶接中に判定する方法であり、被溶接部材である亜鉛メッキ鋼板P1、P2(以下、被溶接部材とする)の溶接部にレーザ光を照射した際に溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部(溶接点b)の溶接の不良の有無を判定する判定ステップS3(図3参照)と、この判定ステップS3により溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部(溶接点b’、b”)の光像を画像処理装置18により画像処理して(図3のS6)、その溶接部の溶接状態を判定する判定ステップ(S7)と、を有している。従って、第1判定ステップ(S3)により、溶接中の重ね合わされた板状の被溶接部材の溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、第2判定ステップ(S6、S7)により、その溶接不良であると判定された溶接部の光像を画像処理装置18により画像処理して、その溶接部の溶接状態を判定するので、画像処理装置18の画像処理負荷を抑制することが出来る。
【0047】
また、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法は、上述したS6、S7による判定ステップは、上述したS3による判定ステップから所定時間の後に実行されるので、例えば、S3による判定ステップにおいて抜け落ちとして溶接不良と判定された溶接部(溶接点b)が、その所定時間の間に埋め戻しなどの現象が生じた場合、S6、S7による判定ステップにおいて、溶接状態としては、穴あきなどの欠陥が生じていないと判定され、その結果、溶接不良誤判定を抑制することが出来る。また、画像処理を行うS6、S7による判定ステップは、S3による判定ステップから所定時間の後に実行されるので、溶接不良であると判定された溶接部(溶接点b’、b”)の画像取り込みを容易に行うことが出来る。さらに、画像処理により溶接状態を判定するS6、S7による判定ステップは、S3による判定ステップにより溶接部(溶接点b)の溶接が不良であると判定されたときのみ実行されるので、画像処理装置18による画像処理負荷が抑制される。
【0048】
以上、本発明の実施形態によるレーザ溶接品質判定方法及びレーザ溶接品質判定装置によれば、溶接不良誤判定を抑制し且つ画像処理負荷を抑制しつつレーザ溶接の溶接部の品質の判定をすることが出来る。
【符号の説明】
【0049】
1 レーザ溶接品質判定装置
2 レーザ溶接機
8 コリメートレンズ
10 フォーカスレンズ
12 加工ヘッド
14 ハーフミラー
16 光検出機
18 画像処理装置
20 カメラ
22 制御装置
b 溶接点
La レーザ光
Lb 溶接点bで発生する光Lb
P1、P2 亜鉛メッキ鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のレーザ溶接装置によりレーザ光を照射して重ね合わされた板状の被溶接部材を互いに溶接する際の溶接部の溶接品質をその溶接中に判定する方法であって、
上記被溶接部材の溶接部にレーザ光を照射した際に溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定ステップと、
この第1判定ステップにより溶接部の溶接が不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部の光像を所定の画像処理装置により画像処理して、その溶接部の溶接状態を判定する第2判定ステップと、を有することを特徴とするレーザ溶接品質判定方法。
【請求項2】
上記第2判定ステップは、上記第1判定ステップから所定時間の後に実行される請求項1記載のレーザ溶接品質判定方法。
【請求項3】
重ね合わされた板状の被溶接部材の溶接部にレーザ光を照射してそれらの板状の被溶接部材を互いに溶接するレーザ光照射手段と、
このレーザ光照射手段によりレーザ光が照射された溶接部から発生する光を検出する光検出手段と、
この光検出手段により検出された溶接部から発生する光の強度に基づいて溶接部の溶接の不良の有無を判定する第1判定手段と、
上記被溶接部材の溶接進行方向に対して、上記レーザ光照射手段の後方側に設けられ、溶接部から発生する光の光像を取り込む画像取込手段と、
この画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定する第2画像処理判定手段と、
上記第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定されたときのみ、その溶接不良であると判定された溶接部について、上記画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するよう上記第2画像処理判定手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とするレーザ溶接品質判定装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第1判定手段により溶接部が溶接不良であると判定された所定時間後に、溶接不良であると判定された溶接部について、上記画像取込手段により取り込まれた溶接部の光像を画像解析して、その解析された画像解析結果に基づいて溶接部の溶接状態を判定するよう上記第2画像処理判定手段を制御する請求項3記載のレーザ溶接品質判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167697(P2011−167697A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31058(P2010−31058)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】