説明

レーザ溶接方法及びこのレーザ溶接方法によって作製された電池

【課題】レーザ溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子が周囲に飛散しないようにした金属部材間のレーザ溶接方法
【解決手段】金属部材18a1、19d間の溶接箇所24にレーザ光LBを照射することよるレーザ溶接方法において、レーザ溶接箇所24をレーザ光LBに対して透過性の樹脂からなるカバー25aで覆い、このカバー25aを経て溶接箇所24にレーザ光LBを照射することにより、金属部材18a1、19d間をレーザ溶接する。レーザ光LBに対して透過性を有する樹脂からなるカバー25aとして、レーザ溶接箇所24との間に空隙26を形成し、溶接箇所24の周囲で金属部材18a1、19dと接触することにより空隙26を密閉状態に維持するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材間のレーザ溶接方法及びこのレーザ溶接方法によって作製された電池に関し、特にレーザ溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子が周囲に飛散しないようにした金属部材間のレーザ溶接方法及びこのレーザ溶接方法によって作製された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車業界では、ガソリン、ディーゼル油、天然ガス等の化石燃料を使用する自動車に換えて、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の開発が活発に行われている。このようなEV、HEV用電池としては、ニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池が使用されているが、軽量で、かつ高容量の電池が得られるということから、近年ではリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が多く用いられるようになってきている。
【0003】
EV、HEV用の二次電池においては、高出力の放電を行うと電池に大電流が流れるため、電池の内部抵抗を極力低減させる必要がある。そのため、端子部における低抵抗化を実現することについて種々の改良が行われてきている。これらの電池の端子部における低抵抗化を実現する方法としては、従来から機械的なカシメ法が多く使用されていが、単なる機械的なカシメのみでは、EVやHEV等の振動が多い環境下では、電気抵抗の経時変化が発生するため、例えば下記特許文献1(特開2009− 87693号公報)や下記特許文献2(特開2008− 84755号公報)に示されているように、レーザ溶接法が併用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009− 87693号公報
【特許文献2】特開2008− 84755号公報
【特許文献3】特開2009−285929号公報
【特許文献4】特開2006−286973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの電池の製造工程においてレーザ溶接法を用いる場合、レーザ溶接箇所に異物が付着していたり、レーザ溶接箇所における金属部材間の隙間が大きかった場合、レーザ溶接時に溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子が飛散することがある。溶接箇所の異物付着等の外乱は完全に抑えるのは困難であるが、これによりスパッタとして飛び出した金属粒子が溶接箇所近傍に付着していると、電気的に短絡する恐れが生じるので、電池の製造工程においては、スパッタとして飛び出した金属粒子の付着状況を検査する工程が必要になる。
【0006】
なお、上記特許文献3(特開2009−285929号公報)には、レーザ溶接法を採用した中空容器の製造方法の発明が開示されている。この中空容器50の製造方法は、図9に示したように、凹状の金属体51a、51bと、レーザ光非透過性の凹状形状体の第1樹脂体52a、52bの側面に、レーザ光透過性の第2樹脂体53a、53bを接合した凹状容器体54a、54bの当接面にレーザ光LBを照射することによって溶着して中空状容器50を製造する際に、第1凹状容器体54aの第2樹脂体53a、53bの当接面と、レーザ光非透過樹脂製の中間部材55の一方の当接面とを当接させ、レーザ光照射により第1凹状容器体54aと中間部材55の一方とを溶着させる工程と、第2凹状容器体54bの第2樹脂体53a、53bの当接面と、中間部材55の他方の当接面とを当接させ、レーザ光照射により第2凹状容器体54bと中間部材55の他方とを溶着させる工程とを備えている。しかしながら、このようなレーザ溶接方法は、透明なレーザ光透過性樹脂と光吸収性の樹脂との間のレーザ溶接方法に関するものであるから、直ちには金属部材間のレーザ溶接には採用できない。
【0007】
さらに、上記特許文献4(特開2006−286973号公報)には、図10に示したように、コンデンサ素子61と、コンデンサ素子61を収納する開口部を有する外装ケース62と、外装ケース62の開口部を密封封止する封口体63と、コンデンサ素子61に接続されていると共に、封口体63により外部に導出された引き出し端子64とを備え、引き出し端子64を封口体63と密封状態で接合したコンデンサ60であって、封口体63をレーザ光LBの透過性材料で構成し、引き出し端子64と封口体63との当接部をレーザ光LBの照射により密封封止するコンデンサ素子の製造方法の発明が開示されている。しかしながら、このコンデンサ素子の製造方法も、金属部材と樹脂部材間のレーザ溶接に関するものであるから、直ちには金属部材間のレーザ溶接には採用できない。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術のレーザ溶接方法における問題点を解決すべくなされたものであり、金属部材間のレーザ溶接に際し、レーザ溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子が周囲に飛散しないようにした金属部材間のレーザ溶接方法及びこのレーザ溶接方法によって作製された電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のレーザ溶接方法は、金属部材間の溶接箇所にレーザ光を照射することによるレーザ溶接方法において、前記レーザ溶接箇所をレーザ光に対して透過性の樹脂で覆い、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を経てレーザ光を前記金属部材間の溶接箇所に照射することにより、前記金属部材間をレーザ溶接することを特徴とする。
【0010】
本発明のレーザ溶接方法では、レーザ光はレーザ光に対して透過性の樹脂を経て金属部材間の溶接箇所に照射される。そのため、レーザ溶接中に溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子はレーザ光に対して透過性の樹脂の内部に捕捉されるので、外部に飛散することがなくなり、溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子を介する電気的短絡の問題を解消することができるようになる。そのため,本発明のレーザ溶接法は、電池の正負極の極板芯体と集電体との間のレーザ溶接、電池の集電体と端子との間のレーザ溶接、電池の金属製外装缶と金属製封口板との間のレーザ溶接、等の電池を構成する金属部材間のレーザ溶接に対して最適となる。特に、極板芯体と集電体との間の溶接、集電体と端子との間の溶接等のように溶接部が電池外装体の内部に位置する場合は、短絡を防止するためにスパッタの飛散を防止することが重要であり、これらの溶接部に本発明を適用することはより効果的である。
【0011】
なお、レーザ溶接箇所に発生した熱は、レーザ光に対して透過性の樹脂に伝わるよりも熱伝導率が良好な溶接される金属部材に伝わるので、レーザ光に対して透過性の樹脂全体が熱で溶融、損傷することはなく、溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子がレーザ光に対して透過性の樹脂の外部へ飛散することを防ぐことができる。
【0012】
なお、レーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に固定する方法としては、押さえ部材等を用いる方法、レーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に接着する方法などが可能である。
【0013】
レーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に接着する場合、レーザ光に対して透過性の樹脂を、レーザ溶接時には保持手段等により固定しておき、レーザ溶接後にレーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に接着してもよいが、レーザ溶接前に予めレーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に接着しておくことが好ましい。レーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に接着する方法としては、レーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に熱溶着する方法、あるいは接着剤を用いる方法などが可能である。また、金属部材においてレーザ光に対して透過性の樹脂と接触する部分にレーザ照射し、この部分を発熱させてレーザ光に対して透過性の樹脂を溶融させ金属部材に接着することも可能である。
【0014】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を、前記レーザ光に対して透過性の樹脂と前記レーザ溶接箇所との間に空隙が存在するように、前記溶接箇所の周囲で前記金属部材と接触させることにより、前記空隙を密閉状態に維持した状態でレーザ溶接することが好ましい。
【0015】
本発明のレーザ溶接方法において、レーザ光に対して透過性の樹脂は、レーザ溶接箇所との間に空隙が存在するようにして、溶接箇所の周囲で金属部材と接触することにより空隙を密閉状態に維持するため、レーザ光に対して透過性の樹脂はレーザ溶接箇所のカバーとして機能する。そのため、レーザ溶接中に溶接箇所からスパッタとして飛び出した金属粒子は溶接箇所とレーザ光に対して透過性の樹脂との間に形成された空隙内ないしレーザ光に対して透過性の樹脂の内部に捕捉され、周囲に飛散することがなくなる。しかも、溶接箇所とレーザ光に対して透過性の樹脂との間に形成された空隙の存在により、溶接箇所の金属の表面からスパッタとして飛び出した金属粒子が直ちに透過性樹脂を損傷させてしまう虞が少なくなるので、照射されたレーザ光が正しく金属表面の溶接箇所に当たらなくなることが少なくなり、また、各レーザパルス毎に透過性の樹脂の損傷の程度が異なることが少なくなるため、溶接箇所の品質が安定化される。
【0016】
しかも、レーザ溶接箇所に発生した熱は、熱伝導率が良好な溶接される金属部材に伝わるので、空隙の気体は大幅に膨張するほど高温にはならない。そのため、レーザ光に対して透過性の樹脂を押さえ部材によって固定ないしレーザ光に対して透過性の樹脂と金属部材との間が接着されていれば、レーザ溶接箇所のカバーとして機能するレーザ光に対して透過性の樹脂からなる樹脂が外れることがなく、良好にレーザ溶接を行うことができるようになる。
【0017】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を前記レーザ溶接箇所の周囲でレーザ光に対して非透過性の樹脂を介して前記金属部材と接触させることが好ましい。
【0018】
金属部材にレーザ光に対して非透過性の樹脂を熱溶着、あるいは接着剤等により接着しておき、レーザ光に対して透過性の樹脂をレーザ光に対して非透過性の樹脂に接触させ、その後レーザ光に対して透過性の樹脂を経てレーザ光をレーザ光に対して非透過性の樹脂に照射し、レーザ光に対して非透過性の樹脂を溶融させ、レーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂とを接着することができる。この場合、レーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂との接着は、金属部材間のレーザ溶接の前後の何れであってもよいが、金属部材間のレーザ溶接の前に予め行うことが好ましい。
【0019】
また、予めレーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂を接着しておき、レーザ光に対して透過性の樹脂及びレーザ光に対して非透過性の樹脂で溶接箇所を覆い、その後レーザ光に対して透過性の樹脂を経てレーザ光をレーザ光に対して非透過性の樹脂に照射し、レーザ光に対して非透過性の樹脂を溶融させ、レーザ光に対して非透過性の樹脂と金属部材を接着することもできる。また、レーザ光に対して透過性の樹脂及びレーザ光に対して非透過性の樹脂で溶接箇所を覆い、レーザ光に対して透過性の樹脂を経てレーザ光をレーザ光に対して非透過性の樹脂に照射し、レーザ光に対して非透過性の樹脂を溶融させ、金属部材とレーザ光に対して非透過性の樹脂の間、及びレーザ光に対して非透過性の樹脂とレーザ光に対して透過性の樹脂の間を同時に接着することもできる。
【0020】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を前記レーザ溶接箇所の周囲でレーザ光に対して非透過性の樹脂を介して前記金属部材と接触させ、前記レーザ溶接箇所からの反射光によって前記レーザ光に対して非透過性の樹脂を溶融させ、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を前記レーザ溶接箇所を覆うように接合させるようにすることが好ましい。
【0021】
金属部材間の溶接箇所に照射されたレーザ光の一部は反射される。本発明のレーザ溶接方法においては、レーザ光に対して透過性の樹脂と金属部材との間に配置されたレーザ光に対して非透過性の樹脂は反射されたレーザ光を吸収するので、温度が上昇して溶融する。そのため、レーザ光の照射を終えると、レーザ光に対して非透過性の樹脂は固化してレーザ光に対して透過性の樹脂と金属部材との間を接合するので、レーザ光に対して透過性の樹脂は溶接箇所の周囲で金属部材と強固に接合される。そのため本発明のレーザ溶接方法によれば、レーザ溶接箇所はレーザ光に対して透過性の樹脂によって覆われた状態となるので、よりレーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子による短絡を抑制することができるようになる。
【0022】
ここで、金属部材間のレーザ溶接の前に、金属部材にレーザ光に対して非透過性の樹脂を接着しておき、その後レーザ光に対して透過性の樹脂をレーザ光に対して非透過性の樹脂に接触させた状態で金属部材間のレーザ溶接を行い、その反射光によりレーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂とを接着することができる。また、予めレーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂を接着しておき、レーザ光に対して透過性の樹脂及びレーザ光に対して非透過性の樹脂で溶接箇所を覆い、その後金属部材間のレーザ溶接を行い、その反射光によりレーザ光に対して非透過性の樹脂と金属部材を接着することもできる。また、レーザ光に対して透過性の樹脂及びレーザ光に対して非透過性の樹脂で溶接箇所を覆い、金属部材間のレーザ溶接時の反射光により、金属部材とレーザ光に対して非透過性の樹脂の間、及びレーザ光に対して非透過性の樹脂とレーザ光に対して透過性の樹脂の間を同時に接着することもできる。
【0023】
なお、予めレーザ光に対して非透過性の樹脂とレーザ光に対して透過性の樹脂とが接合されていると、レーザ溶接時にレーザ光に対して透過性を所定の位置に保持しやすくなる。
【0024】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記レーザ溶接箇所に凸部を形成することが好ましい。
【0025】
レーザ溶接箇所に凸部が形成されていると、照射されたレーザ光の反射量が増大するため、レーザ光に対して非透過性の樹脂が溶融し易くなるので、レーザ光に対して透過性の樹脂とレーザ光に対して非透過性の樹脂の間あるいはレーザ光に対して非透過性の樹脂と金属部材の間をより確実に接合でき、レーザ溶接箇所を覆うレーザ光に対して透過性の樹脂の被覆状態が良好となる。
【0026】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、レーザ光に対して透過性の樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂は、溶融する際に熱を吸収するから、レーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子と接触すると、金属粒子から熱を奪って溶融して金属粒子を冷却するため、効率よく金属粒子を内部に捕捉することができる。そのため、本発明のレーザ溶接方法によれば、より良好にレーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子が周囲に飛散するのを抑制することができるようになる。
【0028】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記レーザ光に対して非透過性の樹脂として前記レーザ光に対して透過性の樹脂に着色剤を混合したものを使用することが好ましい。
【0029】
レーザ光に対して非透過性の樹脂としてレーザ光に対して透過性の樹脂に着色剤を混合したものを使用すると、それぞれの樹脂間の接合強度が強くなるので、より強固にレーザ溶接箇所を被覆することができるようになる。
【0030】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記空隙内をレーザ溶接に適した雰囲気ガスで満たすことが好ましい。
【0031】
レーザ溶接箇所は、瞬間的に高温になるため、周囲のガスと反応して変色ないし変質し易い。本発明のレーザ溶接方法においては、空隙内がレーザ溶接に適した雰囲気ガスで満たされているため、レーザ溶接箇所が変色ないし変質し難く、良好な品質のレーザ溶接箇所が得られる。なお、レーザ溶接に適した雰囲気ガスは、いわゆるアシストガスとして周知のものであり、通常は安価な窒素ガスが使用されるが、用途によってはヘリウムガス、アルゴンガスなども使用し得る。
【0032】
また、本発明のレーザ溶接方法においては、前記金属部材が電池を構成する金属部材とすることができ、この場合、前記電池を構成する金属部材が極板芯体と集電体、あるいは電池の集電体と端子の場合に適用することが好ましい。
【0033】
電池の金属部材間のレーザ溶接方法として上記本発明のレーザ溶接方法を採用すると、特に電池を構成する金属部材が極板芯体と集電体、あるいは電池の集電体と端子の場合には、電池の内部抵抗を低減させることができるとともに、内部短絡の発生が防止された電池が得られる。
【0034】
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明の電池は、電池を構成する金属部材間のレーザ溶接箇所が、レーザ光に対して透過性の樹脂により、前記レーザ溶接箇所と前記レーザ光に対して透過性の樹脂の間に密閉された空隙を有する状態で覆われていることを特徴とする。さらに、本発明の電池においては、前記金属部材と前記レーザ光に対して透過性の樹脂との接合部には、レーザ光に対して非透過性の樹脂が介在するものとすることが好ましい。
【0035】
本発明の電池によれば、上記本発明のレーザ溶接方法において詳細に述べたように、電池の内部抵抗を低減させることができるとともに、内部短絡の発生が防止された電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1の非水電解質二次電池の斜視図である。
【図2】図2Aは実施形態1の非水電解質二次電池の内部構造を示す正面図であり、図2Bは図2AのIIB−IIB線に沿った断面図である。
【図3】実施形態1の負極端子の組立前の斜視図である。
【図4】図4A実施形態1の端子を組み立て後にレーザ溶接した後の部分断面図であり、図4Bは同じく平面図である。
【図5】図5Aは図4AのVA部分の拡大図であり、図5Bは変形例の部分拡大図である。
【図6】図6Aは実施形態2の非水電解質二次電池の内部構造を示す正面図であり、図6Bは負極集電体の展開図である。
【図7】図7Aは図6Bのスリット部の拡大図であり、図7Bは図7AのVIIB−VIIB線に沿った断面図であり、図7Cは図7AのVIIC−VIIC線に沿った断面図である。
【図8】図8Aは変形例1の図7Bに対応する位置の断面図であり、図8Bは同じく図7Cに対応する位置の断面図であり、図8Cは変形例2の図7Bに対応する位置の断面図であり、図8Dは同じく図7Cに対応する位置の断面図である。
【図9】従来の中空容器の製造法を示す断面図である。
【図10】図10Aは従来のコンデンサの分解組み立て断面図であり、図10Bはレーザ光を用いた引出端子と封口体の接合方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのレーザ溶接方法として、角形非水電解質二次電池に適用した例を用いて説明するものであって、本発明をこの角形非水電解質二次電池に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも適応し得るものである。
【0038】
[実施形態1]
最初に実施形態1の角形非水電解質二次電池を図1〜図4を用いて説明する。この角形非水電解質二次電池10Aは、正極極板と負極極板とがセパレータ(何れも図示省略)を介して巻回された偏平状の巻回電極体11を、角形の電池外装缶12の内部に収容し、封口板13によって電池外装缶12を密閉したものである。
【0039】
正極極板は、アルミニウム箔からなる正極芯体の両面に、帯状のアルミニウム箔が露出している正極芯体露出部14が形成されるように、正極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することにより作製されている。また、負極極板は、銅箔からなる負極芯体の両面に、帯状の銅箔が露出している負極芯体露出部15が形成されるように、負極活物質合剤を塗布し、乾燥後に圧延することによって作製されている。そして、偏平状の巻回電極体11は、正極極板及び負極極板を、巻回軸方向の両端部に正極芯体露出部14及び負極芯体露出部15がそれぞれ位置するように、ポリエチレン製の多孔質セパレータ(図示省略)を介して偏平状に巻回することにより作製されている。
【0040】
このうち、正極芯体露出部14は正極集電体16aを介して正極端子17に接続され、負極芯体露出部15は負極集電体18a1を介して負極端子19に接続されている。なお、正極集電体16aは正極集電受け部材(図示省略)と正極芯体露出部14を挟んで抵抗溶接されており、同じく負極集電体18a1は負極集電受け部材18a2と負極芯体露出部を挟んで抵抗溶接されている。また、正極端子17、負極端子19はそれぞれ絶縁部材20、21を介して封口板13に固定されている。この角形非水電解質二次電池10Aは、偏平状の巻回電極体11を角形の電池外装缶12内に挿入した後、封口板13を電池外装缶12の開口部にレーザ溶接し、その後電解液注液孔(図示省略)から非水電解液を注液して、この電解液注液孔を密閉することにより作製されている。
【0041】
ここで、実施形態1の角形非水電解質二次電池10Aにおける正極端子17及び負極端子19の具体的構成について説明を行うが、通常は正極集電体16aがアルミニウム系金属から形成されており、負極集電体18a1が銅系金属から形成されている点で相違しているが、その他の構成は実質的に同一であるので、負極端子19に代表させて説明を行う。
【0042】
この負極端子19は、図3に示したように、鍔部19aの一方側に形成された円筒状のカシメ部材19bと、鍔部19aの他方端側に形成された端子部19cとを備えている。この円筒状のカシメ部材19bは、第1の絶縁体としてのガスケット21a、封口板13、第2の絶縁体としての絶縁部材21b及び負極集電体18a1にそれぞれ形成された開口部内に挿通されて組み立てられる。なお、負極集電体18a1としては、図4に示したように、負極端子19のカシメ部材19bが挿通される開口部の周囲にザグリ穴18a3が形成されているものを使用している。
【0043】
この組み立てられた状態で、端子部19cが下向きとなるように図示しない治具上に載置し、カシメ部材19bの先端側から等方向に拡径するようにカシメると共に、カシメ部材19bの先端側に他のカシメ部材19bよりも厚さが薄い薄肉部19dが部分的に形成されるように成形する。そうすると、カシメ部材19bの端部の薄肉部19dは、図4に示したように、負極集電体18a1と十分に密着し、表面が平らになるとともに、カシメ部材19bの端部の薄肉部19dは負極集電体18a1のザグリ穴18a3内に嵌合された状態となる。
【0044】
この実施形態1の負極端子19においては、負極端子19の鍔部19aと、ガスケット21aと、封口板13と、絶縁部材21bと、負極集電体18a1とは、互いに機械的に固定された状態となっている。そのため、負極端子19と負極集電体18a1とは機械的に強固に固定されている。さらに、カシメ部材19bの端部の薄肉部19dが負極集電体18a1のザグリ穴18a3内に嵌合されているため、振動が加わっても、負極端子19と負極集電体18a1とがより動き難くなる。
【0045】
しかしながら、EV、HEV用の振動が多い環境下では、カシメ部の電気抵抗の経時変化が発生する可能性があるため、実施形態1では、図4及び図5に示したように、カシメ部材19bの端部の薄肉部19dと負極集電体18a1のザグリ穴18a3の嵌合部にレーザ光LBを照射し、カシメ部材19bの端部の薄肉部19dの表面と負極集電体18a1の表面とを直接溶融させてスポット溶接を行うことが好ましい。なお、図4における参照符号22はレーザ溶接によって形成されるナゲットを示しており、また、図5は図4のVA部分の拡大図である。
【0046】
レーザ溶接に際しては、たとえば、銅又はアルミニウムのレーザ溶接において厚さ0.2〜2mm程度の材料に0.2〜0.8mm程度の溶け込み深さを得ようとすると、5〜20×10W/m程度の高いパワー密度が必要であり、溶接箇所に異物付着等の外乱があるとスパッタが飛散しやすい。レーザ光のパワー密度を落とせば、スパッタは飛散しにくくなるが、熟伝導が大きな銅又はアルミニウムの溶接では、溶接箇所の周囲に逃げる熱が大きくなり周囲の部品に熱影響が発生し、十分な溶け込み深さも得られなくなる。
【0047】
そのため、スパッタが発生しにくい比較的低めのパワー密度で必要な溶け込み深さが得られる条件を設定することになるが、低めのパワー密度では熱影響も発生しやすいため溶接条件の設定が難しく、適切な溶接条件が得られないこともある。十分な溶け込み深さを得るためにスパッタ発生が避けられない場合には、溶接後に溶接箇所近傍の飛散物付着を検査する工程或いは飛散物を除去する工程が必要となるが、このような工程を設けると製造効率の低下に繋がる。
【0048】
そこで、実施形態1では、レーザ溶接箇所24の近傍をレーザ光に対して透過性を持った熱可塑性樹脂、たとえばポリスチレン樹脂、からなるカバー25aで覆い、このカバー25aを通してレーザ光LBを溶接箇所に照射して溶接を行なうようにしている。このカバー25aは、レーザ溶接箇所24の周囲全体を覆い、金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dとの間に空隙26が形成されるようになされている。ここで、カバー25aの厚さとしては、0.05〜1mm程度とすることが好ましい。
【0049】
また、金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dにおいてカバー25aが接合される部分には、例えばポリスチレン樹脂に着色剤としてのアセチレンブラックを混合したレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27が一体に固着されている。このレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27はたとえば熱溶着することによって負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dに固着されており、厚さは任意であるが、カバー25aの厚さと同じかそれよりも薄い方が好ましい。
【0050】
ここでは、カバー25aを10〜200Nの力でレーザ溶接箇所24近傍を密封するように押し付けることによって、カバー25aと金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dとの間に形成された空隙26が密封状態となるようにしている。そのため、レーザ溶接箇所24からスパッタとして飛び出した金属粒子28が飛散しても、金属粒子28はカバー25aを形成する樹脂内に捕獲されて、カバー25aの外側に飛散しないようになる。このカバー25aを形成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用すると、レーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子28と接触した際に金属粒子28から熱を奪って溶融して金属粒子28を冷却するため、カバー25aの内部に金属粒子を捕捉することができ、より良好にレーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子が周囲に飛散するのを抑制することができるようになる。
【0051】
また、レーザ溶接時には、図5Aに示したように、レーザ溶接箇所24から一部のレーザ光が反射されて周囲に広がる。この反射光29がレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27に吸収されると、レーザ光に対して非透過性の樹脂部分27の温度が上昇して溶融するので、カバー25aはレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を介して金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dに強固に固着される。そのため、レーザ溶接後に外力を取り除いても、レーザ溶接箇所24はカバー25aによって被覆された状態となる。
【0052】
また、カバー25aを形成するレーザ光に対して透過性の樹脂と接するレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27が金属部材と固着していない場合でも、レーザ溶接時の反射光によりレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を溶融させて、カバー25aを負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dに強固に固着することも可能である。なお、図5Bに示したように、特にレーザ溶接箇所24に凸部30を設けると、照射されたレーザ光はこの凸部30によって周囲に反射し易くなるので、より良好にレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を溶融させることができるようになる。凸部30の高さは、0.1〜0.5mm程度とすることが好ましい。
【0053】
また、良好な溶接状態を得るにはレーザ溶接に適した加工雰囲気を作ることが好ましいが、空隙26部分をレーザ溶接に適した雰囲気ガスで満たし、レーザ溶接箇所24をレーザ溶接に適した雰囲気ガスで覆うことにより、レーザ溶接中に絶えず雰囲気ガスを吹き付ける必要がなくなるため、雰囲気ガスの使用量も押えることができる。この雰囲気ガスとしては、レーザ溶接用アシストガスとして周知の不活性ガス、例えばヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等を適宜選択して用いればよい。
【0054】
このように、実施形態1におけるレーザ溶接方法においては、レーザ光に対して透過性の樹脂によって形成されたカバー25aは、レーザ溶接箇所24との間に空隙26を形成し、しかも、レーザ溶接箇所24の周囲で金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dと接触することにより空隙26を密閉状態に維持している。そのため、レーザ溶接中にレーザ溶接箇所24からスパッタとして飛び出した金属粒子28はレーザ溶接箇所24とカバー25aとの間に形成された空隙26内ないしカバー25aを形成するレーザ光に対して透過性の樹脂の内部に捕捉されるから、周囲に飛散することがなくなる。
【0055】
しかも、レーザ溶接箇所24とカバー25aとの間に形成された空隙26の存在により、レーザ溶接箇所24の金属の表面からスパッタとして飛び出した金属粒子28が直ちにカバー25aを形成するレーザ光に対して透過性の樹脂を損傷させてしまう虞が少なくなるので、照射されたレーザ光が正しく金属表面の溶接箇所24に当たらなくなることが少なくなる。また、各レーザパルス毎にレーザ光に対して透過性から形成されたカバー25aの損傷の程度が異なることが少なくなるため、レーザ光による溶接箇所24の品質が安定化される。
【0056】
しかも、レーザ溶接箇所24に発生した熱は、熱伝導率が良好な溶接される金属部材である負極集電体18a1及びカシメ部材19bの端部の薄肉部19dに伝わるため、空隙26の気体は大幅に膨張するほど高温にはならない。そのため、カバー25aを図示省略した押さえ部材によって固定されていれば、レーザ溶接箇所のカバー25aが外れることがなく、良好にレーザ溶接を行うことができるようになる。
【0057】
なお、実施形態1によれば、レーザ溶接箇所をレーザ光に対して透過性の樹脂で覆い、密封した状態でレーザ溶接することで、飛散物で電気的に短絡することがなくなるから、これによりレーザ溶接後のスパッタの付着状況検査が不要になるとともに、スパッタの発生しやすい溶接条件を用いることもできるようになる。
【0058】
さらに、上記実施形態1では、レーザ溶接箇所24とカバー25aとの間に空隙26を形成した例を示したが、必ずしもこの空隙26は必要なものではない。すなわち、レーザ溶接箇所24が直接レーザ光に対して透過性の樹脂で直接被覆され、空隙が存在しないようになされていると、一度溶接が行われるとレーザ溶接箇所24の金属の表面からスパッタとして飛び出した金属粒子がレーザ光に対して透過性の樹脂内に捕獲されるため、同一箇所に再度レーザ光を照射すると、そのレーザ光は金属粒子に乱反射されてしまうためにレーザ溶接箇所に正確に照射されない虞がある。
【0059】
しかしながら、上記実施形態1では、レーザ溶接は複数箇所において移動しながら行われるため、移動後はレーザ光に対して透過性の樹脂が損傷されていない箇所においてレーザ溶接が行われるため、前回のレーザ溶接箇所で損傷されたレーザ光に対して透過性の樹脂は次回のレーザ溶接に際して与える影響は少ない。なお、レーザ溶接箇所24とカバー25aとの間に空隙26を形成する必要がない場合には、熱可塑性樹脂からなるレーザ光に対して透過性の樹脂を加熱して溶融させ、その後に所定のレーザ溶接箇所24に配置することにより容易に固定することができる。
【0060】
[実施形態2]
実施形態2は、本発明を上記特許文献2に開示されている角形密閉電池としての角形非水電解質二次電池10Bに適用したものである。実施形態2の角形非水電解質二次電池10Bが実施形態1の角形非水電解質二次電池10Aと構成が相違する点は、正極集電体16b及び負極集電体18b1の構成のみであるので、それぞれ同一構成の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。また、実施形態2の正極集電体16b及び負極集電体18b1は、形成材料が正極集電体16bの場合はアルミニウムであるのに対し負極集電体18b1の場合は銅であって、それぞれの形状は対称となっているので、負極集電体18b1に代表させて説明を行う。
【0061】
負極集電体18b1は、図6Bに示したように、展開状態で長方形状の本体部18b2の下側両側に一対の膨出部18b3を備えた形状を有している。そして一対の膨出部18b3の一方側に、負極集電体18b1の長さ方向に平行にスリット18b4が形成されている。この負極集電体18b1を負極芯体露出部15に取り付けるには、負極芯体露出部15を圧縮して超音波溶接等によって纏めておき、負極集電体18b1の一対の膨出部18b3を折り曲げ部位18b5に沿って折り曲げ、この折り曲げられた一対の膨出部18b3間に纏められた負極芯体露出部15を挟み込む。
【0062】
次いで、図7に示したように、スリット18b4を覆うようにレーザ光に対して透過性の樹脂からなるカバー25bを空隙26が生じるように被覆する。また、カバー25bと負極集電体18b1との間にはレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を配置し、適宜の保持手段によってカバー25bを所定の溶接位置に保持しておく。
【0063】
そして、図7B及び図7Cに示したように、スリット18b4内にカバー25b及び空隙26を介してレーザ光を照射し、負極集電体18b1の膨出部18b3と負極芯体露出部15とを同時に溶融させてレーザ溶接を行う。このレーザ溶接は、レーザ光LBをスリット18b4に沿って移動させて行う。すなわち、実施形態2においては、スリット18b4の部分が実施形態1における溶接箇所24(図5参照)に対応する。これにより、スリット18b4に沿って、負極集電体18b1の膨出部18b3と負極芯体露出部15とが強固にレーザ溶接され、このレーザ溶接時にスパッタとして飛び出した金属粒子がカバー25bの外部に飛散することがなくなる。
【0064】
なお、このレーザ溶接に際しては、レーザ光LBの強度及び照射時間を制御することにより、レーザ溶接により形成されたナゲット(図示省略)が束ねられた負極芯体露出部15を貫通してレーザ照射側とは反対側に位置する負極集電体18b1の膨出部18b3も溶融するようにすることが望ましい。この場合も、レーザ光に対して非透過性の樹脂部分27はレーザ照射位置から反射したレーザ光によって溶融させることができるが、実施形態2ではレーザ照射位置が広いので充分な反射光が得られない場合があるので、別途カバー25bを経て直接レーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を溶融するようにレーザ光LBを照射してよく、或いはレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を加熱溶融させて適切な位置に接着固定させてもよい。
【0065】
また、負極芯体露出部15は薄い銅箔が束ねられたものであるから、容易に変形する。そのため、負極集電体18b1の一対の膨出部18b3によって強く負極芯体露出部15の表面に押しつけると、負極芯体露出部15の表面は、変形例1として図8A及び図8Bに示したように、スリット18b4内に盛り上がり、突起15aを形成する。この突起15aは実施形態1のレーザ溶接箇所24に形成された凸部30(図5B参照)に対応する。このような突起15aを形成すると、突起部によるレーザ光LBの反射量が増加するため、効果的にレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27を溶融させることができ、レーザ溶接終了後にカバー25bを負極集電体18b1の膨出部18b3の表面に固着することができる。負極芯体露出部15に突起15aを設ける方法としては、負極芯体露出部15を介してスリット18b4と対向する負極集電体18b1の膨出部18b3に突起を設け、負極芯体露出部15がスリット18b4内に盛り上がるようにしてもよい。
【0066】
また、実施形態2及び変形例1では、別途カバー25aないし25bを所定の溶接位置に保持しておくための手段が形成されていないものを用いた例を示したが、変形例2として図8C及び図8Dに示したように、カバー25cに押さえ部25d及び接合部25eを形成するようにしてもよい。すなわち、図8C及び図8Dに示した変形例2では、カバー25cには、負極集電体18b1の膨出部18b3上に位置し、レーザ溶接時に専らに所定の溶接位置側に押さえつけるための押さえ部25dと、負極集電体18b1の膨出部18b3に形成されたスリット18b4の内壁に沿って配置される接合部25eが形成されており、これらの押さえ部25d及び接合部25eの負極集電体18b1の膨出部18b3側にはレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27が形成されている。
【0067】
このような構成のカバー25cを採用すると、接合部25eが安定した状態でスリット18b4の内壁に嵌合した状態に保持され、しかも、押さえ部25dによってカバー25cが安定的に負極集電体18b1の膨出部18b3上に押さえつけられるので、カバー25cが安定した状態でスリット18b4上に保持され、レーザ溶接部の品質が安定する。加えて、カバー25cの接合部25eがスリット18b4の内壁側に位置しているため、レーザ溶接部から反射した反射光が接合部25e及びレーザ光に対して非透過性の樹脂部分27に当たり易くなり、カバー25cと負極集電体18b1の膨出部18b3との間の接着強度が強くなる。
【0068】
なお、実施形態2及び変形例1ないし2の場合においても、空隙26を設けることは必須の構成要件ではないが、束ねられた負極芯体露出部15を貫通するようにナゲットを形成する必要上、レーザ光LBの強度を大きくすると共に照射時間も長くする必要があるため、スパッタとして飛び出す金属粒子も多くなる可能性がある。そのため、実施形態2及び変形例1ないし2においても、空隙26を形成することが望ましい。
【0069】
本発明において使用できるレーザ溶接装置は、パルス型レーザ溶接装置に限定されず、連続発振型レーザ溶接装置であってもよい。また、本発明において使用できるレーザ光に対して透過性の樹脂は特に限定されないが、ポリスチレン、低密度ポリエチレン、ポリカーボネート等が使用できる。
【0070】
また、上記各実施形態においては、レーザ光に対して非透過性の樹脂部分を用いる例を示したが、レーザ光に対して非透過性樹の脂部分27を用いずにレーザ光に対して透過性の樹脂を金属部材に直接固定あるいは接着させる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10A、10B…角形非水電解質二次電池 11…巻回電極体 12…電池外装缶 13…封口板 14…正極芯体露出部 15…負極芯体露出部 15a…突起 16a、16b…正極集電体 17…正極端子 18a1、18b1…負極集電体 18a2…負極集電受け部材 18a3…ザグリ穴 18b2…本体部 18b3…膨出部 18b4…スリット 18b5…折り曲げ部位 19b…カシメ部材 19c…端子部 19a…鍔部 19d…薄肉部 19…負極端子 20…絶縁部材 21a…ガスケット 21b…絶縁部材 22…ナゲット 24…溶接箇所 25a〜25c…カバー 25d…押さえ部 25e…接合部 26…空隙 27…非透過性の樹脂部分 28…金属粒子 29…反射光 30…凸部 LB…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材間の溶接箇所にレーザ光を照射することによるレーザ溶接方法において、
前記レーザ溶接箇所をレーザ光に対して透過性の樹脂で覆い、
前記レーザ光に対して透過性の樹脂を経てレーザ光を前記金属部材間の溶接箇所に照射することにより、前記金属部材間をレーザ溶接することを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項2】
前記レーザ光に対して透過性の樹脂を、前記レーザ光に対して透過性の樹脂と前記レーザ溶接箇所との間に空隙が存在するように、前記溶接箇所の周囲で前記金属部材と接触させることにより、前記空隙を密閉状態に維持した状態でレーザ溶接することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記レーザ光に対して透過性の樹脂を、前記レーザ溶接箇所の周囲でレーザ光に対して非透過性の樹脂を介して前記金属部材と接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記レーザ溶接箇所からの反射光によって前記レーザ光に対して非透過性の樹脂を溶融させ、前記レーザ光に対して透過性の樹脂を前記レーザ溶接箇所を覆うように接合させることを特徴とする請求項3に記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記レーザ溶接箇所に凸部を形成したことを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
前記レーザ光に対して透過性の樹脂として熱可塑性樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレーザ溶接方法。
【請求項7】
前記レーザ光に対して非透過性の樹脂として熱可塑性樹脂に着色剤を混合したものを使用することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載のレーザ溶接法。
【請求項8】
前記空隙内をレーザ溶接に適した雰囲気ガスで満たすことを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載のレーザ溶接方法。
【請求項9】
前記金属部材が、電池を構成する金属部材であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のレーザ溶接方法。
【請求項10】
前記電池を構成する金属部材が、極板芯体と集電体、あるいは電池の集電体と端子であることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接方法。
【請求項11】
電池を構成する金属部材間のレーザ溶接箇所が、レーザ光に対して透過性の樹脂により、前記レーザ溶接箇所と前記レーザ光に対して透過性の樹脂の間に密閉された空隙を有する状態で覆われていることを特徴とする電池。
【請求項12】
前記金属部材と前記レーザ光に対して透過性の樹脂との接合部には、レーザ光に対して非透過性の樹脂が介在することを特徴とする請求項11に記載の電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−213789(P2012−213789A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80425(P2011−80425)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】