レーザ隅肉溶接方法
【課題】レーザ溶接により板状の第1の被溶接部材を第2の被溶接部材に隅肉溶接するレーザ隅肉溶接方法において、両被接合部材の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接を実現する。
【解決手段】第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に貫通穴40を設け、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態においては、貫通穴40を第2の被溶接部材20の一面21上に位置させて貫通穴40の側面41を第2の被溶接部材20の一面21と交差する第1の被溶接部材10の面としてレーザ溶接を行うとともに、第2の被溶接部材20の一面21に突起50を設け、重なり状態において、突起50に第1の被溶接部材10を当てることにより、第2の被溶接部材20の一面21上に重ねられる第1の被溶接部材10の位置を規定する。
【解決手段】第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に貫通穴40を設け、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態においては、貫通穴40を第2の被溶接部材20の一面21上に位置させて貫通穴40の側面41を第2の被溶接部材20の一面21と交差する第1の被溶接部材10の面としてレーザ溶接を行うとともに、第2の被溶接部材20の一面21に突起50を設け、重なり状態において、突起50に第1の被溶接部材10を当てることにより、第2の被溶接部材20の一面21上に重ねられる第1の被溶接部材10の位置を規定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接により隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法に関し、特に、板状の第1の被溶接部材を第2の被溶接部材に溶接するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、リード端子などの板状をなす第1の被溶接部材の一方の板面を第2の被溶接部材の一面に接触させつつ、第1の被溶接部材の一端側の部位を第2の被溶接部材の一面上に重ねてなる重なり状態を形成し、この状態で、第1の被溶接部材上からレーザを照射して、両被溶接部材を溶け合わせて溶接する、いわゆる重ね溶接が行われていた。
【0003】
しかし、重ね溶接は、重なり合った両被溶接部材を第1の被溶接部材上から溶かすために、大きなレーザ出力が必要であり、生産性が低下する傾向にある。そこで、従来では、より低出力の方法として、上記重なり状態にて、第1の被溶接部材と第2の被溶接部材との互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行う隅肉溶接方法が行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、上記重なり状態において、第2の被溶接部材の一面に板状の第1の被溶接部材が重ねられているので、第2の被溶接部材の一面と第1の被溶接部材の端部に位置する側面とが交差した状態にある。そして、これら交差する両面の境界部分にレーザを照射し、ここを溶融させて溶接するのである。
【0005】
このような隅肉溶接では、第1の被溶接部材の端部に位置する側面を狙ってレーザを照射するが、当該端部よりも第1の被溶接部材の内側へ照射位置がずれると、重ね溶接に近くなり、狙いとする溶接形状が得にくくなる。
【0006】
一方で、特許文献2では、リードフレームとパッドとのレーザ溶接において、リードフレームに貫通穴を設け、この穴を介してレーザ照射を行って溶接することで、低いパワーにて溶接を可能としたものが提案されている。
【0007】
つまり、この特許文献2のような方法で、第1の被溶接部材の端部よりも内側に寄った部位に穴を設けてやれば、穴の側面にて隅肉溶接が可能となるから、レーザの照射位置ずれの対策となり、高い接合信頼性が得られると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−144436号公報
【特許文献2】特表2004−538656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなレーザ隅肉溶接は、半導体装置のリードの接合に適用されてきており、その場合、第1の被溶接部材である複数本のリードと、基板等の第2の被溶接部材との位置合わせにおいて、高い位置精度が要求されている。
【0010】
そのため、従来では、たとえば個々のリード毎にCCDカメラなどの検査装置を用いて位置合わせを行っており、その検査装置の導入や検査工程によるコストアップ、さらにはリード毎の照射位置の微調整による手間などがかかっていた。
【0011】
そこで、レーザ隅肉溶接方法そのものによって、両被溶接部材の精度のよい位置合わせを実現することが望まれているが、従来では、レーザ隅肉溶接方法そのものにおいては、両被接合部材の位置精度を確保しつつ、高い接合信頼性を実現する方法は無かった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、レーザ溶接により板状の第1の被溶接部材を第2の被溶接部材に隅肉溶接するレーザ隅肉溶接方法において、両被接合部材の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、第1の被溶接部材(10)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位に、その板厚方向に貫通する貫通穴(40)を設け、上記重なり状態においては、貫通穴(40)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に位置させて貫通穴(40)から第2の被溶接部材(20)の一面(21)を露出させることにより、当該板厚方向に延びる貫通穴(40)の側面(41)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)と交差する第1の被溶接部材(10)の面としてレーザ溶接を行う。
【0014】
それとともに、請求項1の溶接方法では、第2の被溶接部材(20)の一面(21)に、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、上記重なり状態においては、突起(50)に第1の被溶接部材(10)を当てることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
このような請求項1に記載の溶接方法によれば、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位に位置する貫通穴(40)の側面(41)にて隅肉溶接が行えるから、第1の被溶接部材(10)を、その端部よりも内側に寄った部位にて適切に溶接できる。また、突起(50)により第1の被溶接部材(10)の位置が規定されるから、その位置精度を向上させることができる。よって、本発明によれば、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ隅肉溶接方法において、上記重なり状態においては、貫通穴(40)の中に突起(50)を位置させ、突起(50)のうち異なる方向に面する複数の側面(51、52)と貫通穴(40)の側面(41)とを当てることにより、第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うことを特徴としている。
【0017】
それによれば、第1の被溶接部材(10)の複数の異なる方向への位置ずれを、突起(50)で拘束できるから、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保するうえで好ましい。
【0018】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のレーザ隅肉溶接方法において、上記重なり状態においては、突起(50)の根元部が第1の被溶接部材(10)に当たることにより、第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うものであり、さらに、突起(50)の根元部を折り曲げて、突起(50)における貫通穴(40)の外部に位置する先端側の部位を、第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)と突起(50)の先端側の部位とで第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにすることを特徴としている。
【0019】
第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に第1の被溶接部材(10)を搭載する場合、これら両被接合部材(10、20)間の隙間を極力小さくして溶接性を確保するため、通常は、押さえ治具を用いて第1の被溶接部材(10)を押さえる。
【0020】
しかし、請求項3に記載の発明によれば、折り曲げられた突起(50)の先端側の部位にて、第1の被溶接部材(10)が第2の被溶接部材(20)の一面(21)に押さえ付けられるから、別体の押さえ治具を用いなくても、上記隙間小さくすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、第1の被溶接部材(10)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、次のような工程を行うことを特徴とするものである。
【0022】
・第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、重なり状態において、突起(50)の根元部に第1の被溶接部材(10)を当てることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる第1の被溶接部材(10)の位置を規定する。
【0023】
・さらに、重なり状態において、突起(50)の根元部を折り曲げて突起(50)の先端側の部位を第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)と突起(50)の先端側の部位とで第1の被溶接部材(10)を挟み付ける。
【0024】
・第1の被溶接部材(10)の他方の板面とこれに交差する突起(50)の先端側の部位の側面(50a、50b)とを、第1の被溶接部材(10)と第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面として溶接を行う。本発明のレーザ隅肉溶接方法は、これらの工程を行うことを特徴としている。
【0025】
この請求項4に記載の発明によれば、突起(50)による第1の被溶接部材(10)の位置の規定が行えるとともに、折り曲げられた突起(50)の先端側の部位にて、第1の被溶接部材(10)が第2の被溶接部材(20)の一面(21)に押さえ付けられるから、別体の押さえ治具を用いなくても、上記隙間を小さくすることができる。
【0026】
また、突起(50)の先端側の部位が第1の被溶接部材(10)に被せるように折り曲げられることになるから、突起(50)の先端側の部位は、第1の被溶接部材(10)の他方の板面において第1の被溶接部材(10)端部よりも内側に寄った部位に位置する。それゆえ、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位にて隅肉溶接が行える。よって、本発明によれば、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0027】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までを示す工程図である。
【図3】(a)は第1実施形態におけるレーザの照射許容範囲を示す概略平面図、(b)は従来の一般的な溶接方法におけるレーザの照射許容範囲を示す概略平面図である。
【図4】第1実施形態の溶接方法における突起による位置精度の向上効果を示す概略平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図6】図5の状態の概略平面図である。
【図7】図5の状態の概略側面図である。
【図8】従来の一般的なレーザ隅肉溶接方法を示す概略側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までを示す工程図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る貫通穴の各種形状を示す概略平面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図13】他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。また、以下の各図中、レーザ30はレーザ光の外形を示している。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図2は、本実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までの状態を平面的に示す工程図であり、(a)、(b)は組み付け工程、(c)はレーザ照射工程を示す。
【0031】
本実施形態のレーザ溶接では、図1、図2(b)、(c)に示されるように、板状をなす第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、第2の被溶接部材20の一面21と当該一面21に交差する第1の被溶接部材10の面41との境界部分にレーザ30を照射し、これを溶融させてレーザ溶接を行うものである。
【0032】
第1の被溶接部材10は、たとえば鉄や銅などの金属よりなる板状をなすものであり、具体的にはリードフレームにおけるリード端子などが挙げられる。ここで、第1の被溶接部材10において第2の被溶接部材20の一面21に接触する板面が一方の板面であり、レーザ30の照射側の面が他方の板面である。
【0033】
第2の被溶接部材20は、第1の被溶接部材10が接触して搭載される一面21をもつ鉄や銅などの金属製のものであり、ここでは板状をなすものであるが、当該一面21を持つものであれば、不定形のブロック状などでもよい。具体的に、第2の被溶接部材20としては、たとえばリードフレームにおけるリード端子や、ブロック状のバスバーなどが挙げられる。
【0034】
なお、図1、図2では、XYZ座標軸を示しているが、これによるXY平面は第2の被溶接部材20の一面21に平行な面に相当し、Z軸は第2の被溶接部材20の一面21の法線方向すなわちレーザ30の照射方向に相当する。また、この座標軸においては、X軸、Y軸のそれぞれについて、正の方向をX、負の方向を−Xとして区別してある。
【0035】
まず、本方法では、図2(a)に示されるように、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とを組み付ける組み付け工程を行うが、その前に、各被溶接部材10、20に対して、次のような加工を施しておく。
【0036】
第1の被溶接部材10に対しては、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に、その板厚方向に貫通する貫通穴40を設けておく。ここでは、貫通穴40は、第1の被溶接部材10の端部側の部位において、当該端部よりも内側の部位から端部に開口する切れ込みである。
【0037】
この第1の被溶接部材10の貫通穴40は、エッチング加工やプレス加工などにより形成される。なお、この貫通穴40は、このような開口縁部の一部が切れた切れ込みではなく、開口縁部全周が閉じている穴でもよい。
【0038】
一方、第2の被溶接部材20については、その一面21上に突出する突起50を設けておく。この突起50は、図1、図2(a)に示されるように、その端部に切れ込みを入れ、その切れ込み部分を折り曲げて第2の被溶接部材20の一面21上に突出させることにより形成される。
【0039】
このように、突起50は、第2の被溶接部材20と一体に成形されたものであってもよいが、それ以外にも、第2の被溶接部材20と別体であって第2の被溶接部材20の一面21に接合固定されたものであってもよい。別体の場合には、突起50は、溶接時の熱に耐えうるならば、金属でもよいし、セラミックの金属以外の材料よりなるものであってもよい。
【0040】
そして、このような両被接合部材10、20を用いて、図2(a)、(b)に示される組み付け工程を行う。この工程では、第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねる。
【0041】
このとき、当該組み付け工程では、この重なり状態において、貫通穴40を第2の被溶接部材20の一面21上に位置させて、貫通穴40から第2の被溶接部材20の一面21を露出させる。
【0042】
さらに、このとき、当該重なり状態において、突起50に第1の被溶接部材10を当てる。具体的には、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面51、52と貫通穴40の側面41とを当てる。
【0043】
ここで、貫通穴40の側面41は、Z方向に沿った貫通穴40の内面であり、第1の被溶接部材10の板厚方向に延び且つ第2の被溶接部材20の一面21と交差する面である。また、突起50の側面は、突起50の突出方向(つまりZ方向)に沿って延びる面であるが、突起50においては、異なる方向(X、−X、Y、−Yの各方向)に面した複数個の側面が存在する。
【0044】
そして、図1、図2(b)では、これら突起50の側面のうち−Y方向に面した側面51と、−X方向に面した側面52とが、貫通穴40の側面41に当たっている。それによれば、この状態から、第1の被溶接部材がX方向とY方向へ動こうとしても、突起50によって止められているので動かない。
【0045】
このことは、貫通穴40に突起50を挿入した状態で、第2の被溶接部材20の一面21と平行方向に両被溶接部材10、20を互いに相対的に移動させ、第1の被溶接部材10が突起50に当たって動かなくなる位置とすればよい。
【0046】
ここで、この第1の被溶接部材10が突起50に当たっている状態のときが、両被接合部材10、20の狙いの位置となるように設計されている。つまり、重なり状態においては、突起50に第1の被溶接部材10を当てることにより、第2の被溶接部材20の一面21上に重ねられる第1の被溶接部材10の位置が規定されるのである。
【0047】
さらに言うならば、本実施形態では、突起50に当たるように第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20に組み付ければ、それだけで狙いの位置に両被接合部材10、20を正確に合わせることができるのである。
【0048】
こうして、組み付け工程を行い、両被接合部材10、20を仮止めした後、図1、図2(c)に示されるレーザ照射工程を行う。この工程では、第2の被溶接部材20の一面21と直交するZ方向から貫通穴40を介して第2の被溶接部材20の一面21にレーザ30を照射する。ここで、レーザ30は、一般的なレーザ隅肉溶接方法に用いられるものであり、たとえばYAGレーザなどが適用される。
【0049】
このとき、上述したように、上記重なり状態においては、第1の被溶接部材10の板厚方向に延びる貫通穴40の側面41が、第2の被溶接部材20の一面21と交差する第1の被溶接部材10の面とされている。そのため、レーザ30は、この貫通穴40の側面41と第2の被溶接部材20の一面21との境界部分を狙って照射する。
【0050】
具体的には、第1の被溶接部材10の他方の板面上から貫通穴40およびその周辺部を照射領域として、レーザ30を照射し、その熱により、上記両面41、21を溶融させる。こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接され、本溶接方法が終了する。
【0051】
ところで、本実施形態によれば、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に位置する貫通穴40の側面41にて隅肉溶接が行えるから、第1の被溶接部材10を、その端部よりも内側に寄った部位にて適切に溶接できる。
【0052】
このことについて、図3を参照して、より具体的に述べる。図3(a)は本実施形態の溶接方法におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示す概略平面図、図3(b)は従来の一般的な溶接方法におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示す概略平面図である。
【0053】
図3(b)に示されるように、従来では、第1の被溶接部材10の端部の側面を狙ってレーザ30を照射するため、その端部からレーザ30が外れないように狭い範囲Kで照射を行っていた。それに対して、本実施形態では、第1の被溶接部材10の端部を含み、その端部よりも内側の部位にて隅肉溶接が行えるため、照射許容範囲Kも大幅に広くなり、照射位置ずれの余裕度が大きくなっている。
【0054】
また、本実施形態の溶接方法では、突起50により第1の被溶接部材10の位置が規定されるから、その位置精度を向上させることができる。このことについて、図4を参照して、より具体的に述べる。
【0055】
図4は、複数本の配列されたリード端子としての第1の被溶接部材10を持つ半導体モジュール1の1辺側の溶接個所について、(a)本実施形態の溶接方法、(b)従来の一般的な溶接方法を示す概略平面図である。
【0056】
図4(b)に示されるように、従来では、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とを接触させるとき、個々の第1の被溶接部材10が曲がったり、たわんだりすることで、部材10の長手方向であるX方向や、配列方向であるY方向への位置ずれが生じることがある。そのため、たとえば画像認識などの高価な設備を導入し、各第1の被溶接部材10毎にその端部を検出し、レーザ30の照射位置を微調整する必要が生ずる。
【0057】
それに対して、図4(a)に示されるように、本実施形態では、各第1の被溶接部材10について、突起50に当てて位置合わせを行うため、上述したようにX方向、Y方向への第1の被溶接部材10の位置ずれが抑制される。
【0058】
つまり、本実施形態によれば、溶接方法そのものが、両被接合部材10、20の位置ずれを抑制するものであるため、当該位置ずれの検出手段や検出工程、さらにはレーザ照射位置の微調整工程などが不要となる。このように、本実施形態によれば、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0059】
また、上述したが、本実施形態では、両被接合部材10、20の重なり状態において、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面51、52と貫通穴40の側面41とを当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行うようにしている。
【0060】
それによれば、第1の被溶接部材10の複数の異なる方向への位置ずれを、突起50で拘束できるから、両被接合部材10、20の位置精度を確保するうえで好ましい。なお、本実施形態では、突起50の1つの側面のみと第1の被溶接部材10とが当たることで、当該1つの側面が面する1つの方向のみへの位置ずれを行うことを、排除するものではない。
【0061】
また、突起50の高さは、図1に示したように、第1の被溶接部材10の板厚よりも大きく、突起50の先端側の部位が貫通穴40上に突出することが好ましい。これは、突起50が低いと、第1の被溶接部材10の位置ずれの障壁として、突起50が十分に機能しない可能性があるためである。しかし、もちろん本実施形態において、突起50の高さが第1の被溶接部材10の板厚よりも小さいことを排除するものではない。
【0062】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図6は、図5の状態の概略平面図であり、図7は、図5の状態の概略側面図である。ここでは、本実施形態と上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0063】
図5〜図7に示されるように、本実施形態においても、両被接合部材10、20の重なり状態においては、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面と貫通穴40の側面41とを当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行っている。
【0064】
ここでは、図5〜図7に示されるように、突起50は、その根元部から先端に向かってテーパ状に幅が拡がった形状とされているので、切れ込みとしての貫通穴40における第1の被溶接部材10の端部に位置する開口部に噛み合った状態とされている。つまり、この貫通孔40の当該開口部にて、突起50の根元部におけるY、−Y方向に面した2個の側面が、貫通穴40の側面41に当たっている。
【0065】
そして、突起50の根元部を折り曲げることによって、突起50のうち貫通穴40の外部に位置する先端側の部位は、第1の被溶接部材10の端部よりも内側の部位に被さっている。ここで、突起部50の当該先端側の部位は、貫通穴40の幅よりも大きいため、貫通穴40には入り込まず、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触している。
【0066】
このように、本実施形態では、両被溶接部材10、20の組み付け工程において、突起50の根元部を貫通穴40の側面41に当てるとともに、第1の被溶接部材10に当たっている突起50の根元部を折り曲げるようにする。それによって、組み付け工程では、突起50の先端側の部位を、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させる。
【0067】
そして、この状態では、突起50の先端側の部位にて、第1の被溶接部材10の他方の板面側から第1の被溶接部材10が第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けられた状態となる。つまり、本実施形態では、第2の被溶接部材20の一面21と突起50の先端側の部位とで、第1の被溶接部材10を挟み付けている。
【0068】
そして、本実施形態では、この図5〜図7に示される状態にて、レーザ照射工程を行い、上記第1実施形態と同様、貫通穴40の側面41と第2の被溶接部材20の一面21との境界部分を、レーザ30照射の加熱により溶融させる。なお、図6には、この照射工程におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示してある。こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接される。以上が、本実施形態の溶接方法である。
【0069】
そして、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、貫通穴40の側面41にて隅肉溶接が行えること、および、突起50による第1の被溶接部材10の位置の規定がなされることから、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0070】
さらに、本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。図8は、従来の一般的なレーザ隅肉溶接方法を示す概略側面図である。
【0071】
図8に示されるように、第2の被溶接部材20の一面21上に第1の被溶接部材10を搭載する場合、両被接合部材10、20間の隙間が大きいと、第1の被溶接部材の端部が第2の被溶接部材20の一面21から浮いてしまい、レーザ溶接ができなくなる。そのため、従来では、押さえ治具2により第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けた状態でレーザ溶接を実施する。
【0072】
それに対して、本実施形態では、図5〜図7に示されるように、折り曲げられた突起50の先端側の部位にて、第1の被溶接部材10が第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けられる。そのため、本実施形態では、別体の押さえ治具を用いなくても、両被接合部材10、20間の隙間小さくすることができ、適切な溶接が可能となる。
【0073】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図10は、本実施形態のレーザ隅肉溶接方法における(a)組み付け工程から(b)レーザ照射工程までの状態を平面的に示す工程図である。
【0074】
本実施形態も、板状をなす第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、両被接合部材10、20の互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うものである。
【0075】
ここで、本実施形態では、両被接合部材10、20の互いに交差する面、つまり、レーザ30を照射して隅肉溶接を行う部分が、上記各実施形態とは相違するものであり、この点を中心に述べることとする。
【0076】
本実施形態においても、図9、図10に示されるように、両被接合部材10、20の重なり状態においては、第2の被溶接部材20に突起50を設け、その突起50の根元部を、第1の被溶接部材10の貫通穴40の側面41に当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行っている。
【0077】
ここで、図9、図10に示されるように、本実施形態の突起50は、第2実施形態と同様に、根元部から先端に向かってテーパ状に幅が拡がった形状とされており、切れ込みとしての貫通穴40における第1の被溶接部材10の端部に位置する開口部にて、突起50の根元部における側面が貫通穴40の側面41に当たっている。
【0078】
そして、突起50の根元部を折り曲げることによって、突起50のうち貫通穴40の外部に位置する先端側の部位は、第1の被溶接部材10の端部よりも内側の部位に被さっている。ここで、本実施形態では、突起50の先端側の部位は第2実施形態よりも長く、貫通穴40を超えて、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触している。
【0079】
このように、本実施形態によっても、組み付け工程では、突起50の根元部を折り曲げて、突起50の先端側の部位を第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材20の一面21と突起50の先端側の部位とで第1の被溶接部材10を挟み付けるようにしている。
【0080】
そして、本実施形態では、この状態でレーザ30を照射するが、このとき、第1の被溶接部材10の他方の板面に対して、突起50の先端側の部位の側面50a、50bが交差した位置関係となっている。
【0081】
そこで、本実施形態では、これら第1の被溶接部材10の他方の板面と突起50の先端側の部位の側面50a、50bとを、両被接合部材10、20における互いに交差する面として、当該他方の板面と当該側面50a、50bとの境界部分にレーザ30を照射して隅肉溶接を行う。
【0082】
なお、ここでは、突起50の先端側の部位のうち当該先端の側面50aにて、当該側面50aと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界部分にレーザ30を照射して隅肉溶接を行っているが、これに隣り合う側面50bと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界部分にて溶接してもよいことはもちろんである。
【0083】
ここで、突起50の先端に位置する側面50aは、図9、図10に示されるように、第1の被溶接部材10の他方の板面側からみて当該側面の中央部が両端部よりも凹んだ凹面形状とされている。図示例では、当該側面50aは円弧状の凹面形状とされている。
【0084】
これにより、当該側面50aと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界も円弧状となり、当該側面50aが平坦面の場合に比べて、当該境界の長さが大きくなり、溶接長さも大きくなるから、接合強度向上の点で好ましい。
【0085】
こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接され、本実施形態の溶接方法が完了する。そして、本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、突起50による第1の被溶接部材10の位置の規定がなされること、および、折り曲げられた突起50による第1の被溶接部材10の第2の被溶接部材20の一面21への押さえ付けによる上記隙間の低減がなされる。
【0086】
さらに、本実施形態では、上述したように、組み付け工程では、突起50の根元部を折り曲げることによって、第1の被溶接部材10端部よりも内側に寄った部位にて、突起50の先端側の部位を当該第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させている。そして、レーザ照射工程では、この突起50の先端側の部位の側面50a、50bとこれに交差する第1の被溶接部材の他方の板面との境界部分で隅肉溶接するようにしている。
【0087】
つまり、本実施形態では、貫通穴40の側面41にて隅肉溶接を行う上記各実施形態とは異なり、貫通穴40の外側にて隅肉溶接を行うことで、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位にて隅肉溶接が行える。よって、本実施形態によっても、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接を実現することができる。
【0088】
さらに、本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。一般に、両被接合部材10、20が重なった上記重なり状態においては、レーザ吸収率の良好な材料よりなる部材側から、または、厚みの薄い部材側から照射するのが通常である。たとえば、鉄と銅では鉄の方が、レーザ吸収率が大きく、鉄側から照射するのがよい。
【0089】
ここで、上記第1実施形態、第2実施形態では、第1の被溶接部材10側からレーザ30を照射したが、第2の被溶接部材20の材質や厚み次第では、第2の被溶接部材20を照射側に選択したほうが好ましい場合もでてくる。
【0090】
そのような場合に、本実施形態の溶接方法であれば、第2の被溶接部材20の上に第1の被溶接部材10を重ねた状態で、第2の被溶接部材20の突起50を第1の被溶接部材10の上側に位置させることができるので、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20との位置を入れ替えることなく、適切なレーザ照射が可能となる。つまり、本実施形態の溶接方法は、両被接合部材10、20の材質や厚みが異なる場合に有効である。
【0091】
なお、上記図9、図10では、突起50の根元部を貫通穴40の側面41に当てており、その根元部を折り曲げて、貫通穴40から突出する突起50の先端側の部位を、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させ、その接触部分にて隅肉溶接を行っていた。しかし、本実施形態においても、貫通穴40の外で、突起50の根元部を第1の被溶接部材10の端部に当てるようにしてもよい。
【0092】
さらには、本実施形態においては、貫通穴40が無いものであってもよい。この場合も、突起50の根元部を、第1の被溶接部材10の端部に当てるようにすることにより、第1の被溶接部材10の位置ずれを防止するようにすればよい。そして、その根元部を折り曲げることで突起50の先端側の部位を第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させ、隅肉溶接することは、上記同様に行える。
【0093】
(第4実施形態)
図11(a)、(b)、(c)は、本発明の第4実施形態に係る貫通穴40の各種形状を示す概略平面図である。
【0094】
上記各実施形態では、第1の被溶接部材10の貫通穴40は、第1の被溶接部材10の端部に開口する切れ込みであったが、図11(a)に示されるように、貫通穴40は、開口縁部全周が閉じている穴でもよい。この場合、上記突起は貫通穴40に挿入すれば、貫通穴40内に配置できる。
【0095】
また、貫通穴40の位置についても、図11(b)に示されるような位置であってもよいし、その数についても、図11(c)に示されるように、複数個であってもよい。また、上記各実施形態および図11に示される貫通穴40は、矩形穴であったが、穴の開口形状は円、楕円、三角などの形状であってもよい。
【0096】
また、これら本実施形態に述べた各貫通穴40については、各貫通穴40の形状や位置に対応して、第2の被溶接部材20側に上記突起を設ければよく、それにより、これら各貫通穴40は、上記第1〜第3の各実施形態に適用できることは明らかである。
【0097】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20との組み付け状態を示している。
【0098】
上記第1実施形態では、貫通穴40の内部に突起50が位置し、突起50の側面51、52と貫通穴40の側面41とが当たることで第1の被溶接部材10の位置が規定されていた。それに対して、図12に示されるように、貫通穴40の外部にて突起50が第1の被溶接部材10の端部の側面に当たっていてもよい。
【0099】
その場合、図12に示されるように、突起50を複数個設け、個々の突起50を第1の被溶接部材10のうち異なる方向X、Yに面する側面に当たるように配置することが好ましい。そうすれば、複数の方向への第1の被溶接部材10の位置ずれを防止できるので、位置精度の確保の点で好ましい。
【0100】
また、この図12に示される構成において、上記第2実施形態のように、突起50の根元部を折り曲げて先端側の部位にて第1の被溶接部材10を押さえつけるようにしてもよく、その場合も、その押さえ付けによる上記同様の効果が期待される。
【0101】
つまり、上記第2実施形態の場合、折り曲げられて第1の被溶接部材10と重なる突起50は、その根元部が貫通穴40の内部に位置したが、この場合も、貫通穴40の外部に突起50の根元部が位置してもよい。この場合、突起50の根元部が、第1の被溶接部材10の貫通穴40の外部すなわち第1の被溶接部材10の端部に当たることにより、第1の被溶接部材10の位置ずれを防止することになる。
【0102】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、隅肉溶接される両被接合部材10、20の面は、互いに交差する面であるが、この交差する面としては、互いに直交する面であること、つまり当該面同士の交差角度が90°に限定されるものではない。
【0103】
それ以外にも、当該面同士の交差角度は、隅肉溶接を可能な角度であればよい。たとえば、図13に示されるように、第2の被溶接部材20の一面21と第1の被溶接部材10の貫通穴40の側面41との成す角度が鋭角であるような順テーパの位置関係にあるものも含むものである。
【符号の説明】
【0104】
10 第1の被溶接部材
20 第2の被溶接部材
21 第2の被溶接部材の一面
40 貫通穴
41 貫通穴の側面
50 突起
50a、50b 突起の先端側の部位の側面
51、52 突起の側面
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接により隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法に関し、特に、板状の第1の被溶接部材を第2の被溶接部材に溶接するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、リード端子などの板状をなす第1の被溶接部材の一方の板面を第2の被溶接部材の一面に接触させつつ、第1の被溶接部材の一端側の部位を第2の被溶接部材の一面上に重ねてなる重なり状態を形成し、この状態で、第1の被溶接部材上からレーザを照射して、両被溶接部材を溶け合わせて溶接する、いわゆる重ね溶接が行われていた。
【0003】
しかし、重ね溶接は、重なり合った両被溶接部材を第1の被溶接部材上から溶かすために、大きなレーザ出力が必要であり、生産性が低下する傾向にある。そこで、従来では、より低出力の方法として、上記重なり状態にて、第1の被溶接部材と第2の被溶接部材との互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行う隅肉溶接方法が行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、上記重なり状態において、第2の被溶接部材の一面に板状の第1の被溶接部材が重ねられているので、第2の被溶接部材の一面と第1の被溶接部材の端部に位置する側面とが交差した状態にある。そして、これら交差する両面の境界部分にレーザを照射し、ここを溶融させて溶接するのである。
【0005】
このような隅肉溶接では、第1の被溶接部材の端部に位置する側面を狙ってレーザを照射するが、当該端部よりも第1の被溶接部材の内側へ照射位置がずれると、重ね溶接に近くなり、狙いとする溶接形状が得にくくなる。
【0006】
一方で、特許文献2では、リードフレームとパッドとのレーザ溶接において、リードフレームに貫通穴を設け、この穴を介してレーザ照射を行って溶接することで、低いパワーにて溶接を可能としたものが提案されている。
【0007】
つまり、この特許文献2のような方法で、第1の被溶接部材の端部よりも内側に寄った部位に穴を設けてやれば、穴の側面にて隅肉溶接が可能となるから、レーザの照射位置ずれの対策となり、高い接合信頼性が得られると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−144436号公報
【特許文献2】特表2004−538656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなレーザ隅肉溶接は、半導体装置のリードの接合に適用されてきており、その場合、第1の被溶接部材である複数本のリードと、基板等の第2の被溶接部材との位置合わせにおいて、高い位置精度が要求されている。
【0010】
そのため、従来では、たとえば個々のリード毎にCCDカメラなどの検査装置を用いて位置合わせを行っており、その検査装置の導入や検査工程によるコストアップ、さらにはリード毎の照射位置の微調整による手間などがかかっていた。
【0011】
そこで、レーザ隅肉溶接方法そのものによって、両被溶接部材の精度のよい位置合わせを実現することが望まれているが、従来では、レーザ隅肉溶接方法そのものにおいては、両被接合部材の位置精度を確保しつつ、高い接合信頼性を実現する方法は無かった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、レーザ溶接により板状の第1の被溶接部材を第2の被溶接部材に隅肉溶接するレーザ隅肉溶接方法において、両被接合部材の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、第1の被溶接部材(10)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位に、その板厚方向に貫通する貫通穴(40)を設け、上記重なり状態においては、貫通穴(40)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に位置させて貫通穴(40)から第2の被溶接部材(20)の一面(21)を露出させることにより、当該板厚方向に延びる貫通穴(40)の側面(41)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)と交差する第1の被溶接部材(10)の面としてレーザ溶接を行う。
【0014】
それとともに、請求項1の溶接方法では、第2の被溶接部材(20)の一面(21)に、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、上記重なり状態においては、突起(50)に第1の被溶接部材(10)を当てることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
このような請求項1に記載の溶接方法によれば、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位に位置する貫通穴(40)の側面(41)にて隅肉溶接が行えるから、第1の被溶接部材(10)を、その端部よりも内側に寄った部位にて適切に溶接できる。また、突起(50)により第1の被溶接部材(10)の位置が規定されるから、その位置精度を向上させることができる。よって、本発明によれば、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ隅肉溶接方法において、上記重なり状態においては、貫通穴(40)の中に突起(50)を位置させ、突起(50)のうち異なる方向に面する複数の側面(51、52)と貫通穴(40)の側面(41)とを当てることにより、第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うことを特徴としている。
【0017】
それによれば、第1の被溶接部材(10)の複数の異なる方向への位置ずれを、突起(50)で拘束できるから、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保するうえで好ましい。
【0018】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のレーザ隅肉溶接方法において、上記重なり状態においては、突起(50)の根元部が第1の被溶接部材(10)に当たることにより、第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うものであり、さらに、突起(50)の根元部を折り曲げて、突起(50)における貫通穴(40)の外部に位置する先端側の部位を、第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)と突起(50)の先端側の部位とで第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにすることを特徴としている。
【0019】
第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に第1の被溶接部材(10)を搭載する場合、これら両被接合部材(10、20)間の隙間を極力小さくして溶接性を確保するため、通常は、押さえ治具を用いて第1の被溶接部材(10)を押さえる。
【0020】
しかし、請求項3に記載の発明によれば、折り曲げられた突起(50)の先端側の部位にて、第1の被溶接部材(10)が第2の被溶接部材(20)の一面(21)に押さえ付けられるから、別体の押さえ治具を用いなくても、上記隙間小さくすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、第1の被溶接部材(10)を第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、隅肉溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、次のような工程を行うことを特徴とするものである。
【0022】
・第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、重なり状態において、突起(50)の根元部に第1の被溶接部材(10)を当てることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる第1の被溶接部材(10)の位置を規定する。
【0023】
・さらに、重なり状態において、突起(50)の根元部を折り曲げて突起(50)の先端側の部位を第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材(20)の一面(21)と突起(50)の先端側の部位とで第1の被溶接部材(10)を挟み付ける。
【0024】
・第1の被溶接部材(10)の他方の板面とこれに交差する突起(50)の先端側の部位の側面(50a、50b)とを、第1の被溶接部材(10)と第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面として溶接を行う。本発明のレーザ隅肉溶接方法は、これらの工程を行うことを特徴としている。
【0025】
この請求項4に記載の発明によれば、突起(50)による第1の被溶接部材(10)の位置の規定が行えるとともに、折り曲げられた突起(50)の先端側の部位にて、第1の被溶接部材(10)が第2の被溶接部材(20)の一面(21)に押さえ付けられるから、別体の押さえ治具を用いなくても、上記隙間を小さくすることができる。
【0026】
また、突起(50)の先端側の部位が第1の被溶接部材(10)に被せるように折り曲げられることになるから、突起(50)の先端側の部位は、第1の被溶接部材(10)の他方の板面において第1の被溶接部材(10)端部よりも内側に寄った部位に位置する。それゆえ、第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位にて隅肉溶接が行える。よって、本発明によれば、両被接合部材(10、20)の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0027】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までを示す工程図である。
【図3】(a)は第1実施形態におけるレーザの照射許容範囲を示す概略平面図、(b)は従来の一般的な溶接方法におけるレーザの照射許容範囲を示す概略平面図である。
【図4】第1実施形態の溶接方法における突起による位置精度の向上効果を示す概略平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図6】図5の状態の概略平面図である。
【図7】図5の状態の概略側面図である。
【図8】従来の一般的なレーザ隅肉溶接方法を示す概略側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までを示す工程図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る貫通穴の各種形状を示す概略平面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図である。
【図13】他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。また、以下の各図中、レーザ30はレーザ光の外形を示している。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図2は、本実施形態のレーザ隅肉溶接方法における組み付け工程からレーザ照射工程までの状態を平面的に示す工程図であり、(a)、(b)は組み付け工程、(c)はレーザ照射工程を示す。
【0031】
本実施形態のレーザ溶接では、図1、図2(b)、(c)に示されるように、板状をなす第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、第2の被溶接部材20の一面21と当該一面21に交差する第1の被溶接部材10の面41との境界部分にレーザ30を照射し、これを溶融させてレーザ溶接を行うものである。
【0032】
第1の被溶接部材10は、たとえば鉄や銅などの金属よりなる板状をなすものであり、具体的にはリードフレームにおけるリード端子などが挙げられる。ここで、第1の被溶接部材10において第2の被溶接部材20の一面21に接触する板面が一方の板面であり、レーザ30の照射側の面が他方の板面である。
【0033】
第2の被溶接部材20は、第1の被溶接部材10が接触して搭載される一面21をもつ鉄や銅などの金属製のものであり、ここでは板状をなすものであるが、当該一面21を持つものであれば、不定形のブロック状などでもよい。具体的に、第2の被溶接部材20としては、たとえばリードフレームにおけるリード端子や、ブロック状のバスバーなどが挙げられる。
【0034】
なお、図1、図2では、XYZ座標軸を示しているが、これによるXY平面は第2の被溶接部材20の一面21に平行な面に相当し、Z軸は第2の被溶接部材20の一面21の法線方向すなわちレーザ30の照射方向に相当する。また、この座標軸においては、X軸、Y軸のそれぞれについて、正の方向をX、負の方向を−Xとして区別してある。
【0035】
まず、本方法では、図2(a)に示されるように、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とを組み付ける組み付け工程を行うが、その前に、各被溶接部材10、20に対して、次のような加工を施しておく。
【0036】
第1の被溶接部材10に対しては、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に、その板厚方向に貫通する貫通穴40を設けておく。ここでは、貫通穴40は、第1の被溶接部材10の端部側の部位において、当該端部よりも内側の部位から端部に開口する切れ込みである。
【0037】
この第1の被溶接部材10の貫通穴40は、エッチング加工やプレス加工などにより形成される。なお、この貫通穴40は、このような開口縁部の一部が切れた切れ込みではなく、開口縁部全周が閉じている穴でもよい。
【0038】
一方、第2の被溶接部材20については、その一面21上に突出する突起50を設けておく。この突起50は、図1、図2(a)に示されるように、その端部に切れ込みを入れ、その切れ込み部分を折り曲げて第2の被溶接部材20の一面21上に突出させることにより形成される。
【0039】
このように、突起50は、第2の被溶接部材20と一体に成形されたものであってもよいが、それ以外にも、第2の被溶接部材20と別体であって第2の被溶接部材20の一面21に接合固定されたものであってもよい。別体の場合には、突起50は、溶接時の熱に耐えうるならば、金属でもよいし、セラミックの金属以外の材料よりなるものであってもよい。
【0040】
そして、このような両被接合部材10、20を用いて、図2(a)、(b)に示される組み付け工程を行う。この工程では、第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねる。
【0041】
このとき、当該組み付け工程では、この重なり状態において、貫通穴40を第2の被溶接部材20の一面21上に位置させて、貫通穴40から第2の被溶接部材20の一面21を露出させる。
【0042】
さらに、このとき、当該重なり状態において、突起50に第1の被溶接部材10を当てる。具体的には、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面51、52と貫通穴40の側面41とを当てる。
【0043】
ここで、貫通穴40の側面41は、Z方向に沿った貫通穴40の内面であり、第1の被溶接部材10の板厚方向に延び且つ第2の被溶接部材20の一面21と交差する面である。また、突起50の側面は、突起50の突出方向(つまりZ方向)に沿って延びる面であるが、突起50においては、異なる方向(X、−X、Y、−Yの各方向)に面した複数個の側面が存在する。
【0044】
そして、図1、図2(b)では、これら突起50の側面のうち−Y方向に面した側面51と、−X方向に面した側面52とが、貫通穴40の側面41に当たっている。それによれば、この状態から、第1の被溶接部材がX方向とY方向へ動こうとしても、突起50によって止められているので動かない。
【0045】
このことは、貫通穴40に突起50を挿入した状態で、第2の被溶接部材20の一面21と平行方向に両被溶接部材10、20を互いに相対的に移動させ、第1の被溶接部材10が突起50に当たって動かなくなる位置とすればよい。
【0046】
ここで、この第1の被溶接部材10が突起50に当たっている状態のときが、両被接合部材10、20の狙いの位置となるように設計されている。つまり、重なり状態においては、突起50に第1の被溶接部材10を当てることにより、第2の被溶接部材20の一面21上に重ねられる第1の被溶接部材10の位置が規定されるのである。
【0047】
さらに言うならば、本実施形態では、突起50に当たるように第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20に組み付ければ、それだけで狙いの位置に両被接合部材10、20を正確に合わせることができるのである。
【0048】
こうして、組み付け工程を行い、両被接合部材10、20を仮止めした後、図1、図2(c)に示されるレーザ照射工程を行う。この工程では、第2の被溶接部材20の一面21と直交するZ方向から貫通穴40を介して第2の被溶接部材20の一面21にレーザ30を照射する。ここで、レーザ30は、一般的なレーザ隅肉溶接方法に用いられるものであり、たとえばYAGレーザなどが適用される。
【0049】
このとき、上述したように、上記重なり状態においては、第1の被溶接部材10の板厚方向に延びる貫通穴40の側面41が、第2の被溶接部材20の一面21と交差する第1の被溶接部材10の面とされている。そのため、レーザ30は、この貫通穴40の側面41と第2の被溶接部材20の一面21との境界部分を狙って照射する。
【0050】
具体的には、第1の被溶接部材10の他方の板面上から貫通穴40およびその周辺部を照射領域として、レーザ30を照射し、その熱により、上記両面41、21を溶融させる。こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接され、本溶接方法が終了する。
【0051】
ところで、本実施形態によれば、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位に位置する貫通穴40の側面41にて隅肉溶接が行えるから、第1の被溶接部材10を、その端部よりも内側に寄った部位にて適切に溶接できる。
【0052】
このことについて、図3を参照して、より具体的に述べる。図3(a)は本実施形態の溶接方法におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示す概略平面図、図3(b)は従来の一般的な溶接方法におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示す概略平面図である。
【0053】
図3(b)に示されるように、従来では、第1の被溶接部材10の端部の側面を狙ってレーザ30を照射するため、その端部からレーザ30が外れないように狭い範囲Kで照射を行っていた。それに対して、本実施形態では、第1の被溶接部材10の端部を含み、その端部よりも内側の部位にて隅肉溶接が行えるため、照射許容範囲Kも大幅に広くなり、照射位置ずれの余裕度が大きくなっている。
【0054】
また、本実施形態の溶接方法では、突起50により第1の被溶接部材10の位置が規定されるから、その位置精度を向上させることができる。このことについて、図4を参照して、より具体的に述べる。
【0055】
図4は、複数本の配列されたリード端子としての第1の被溶接部材10を持つ半導体モジュール1の1辺側の溶接個所について、(a)本実施形態の溶接方法、(b)従来の一般的な溶接方法を示す概略平面図である。
【0056】
図4(b)に示されるように、従来では、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とを接触させるとき、個々の第1の被溶接部材10が曲がったり、たわんだりすることで、部材10の長手方向であるX方向や、配列方向であるY方向への位置ずれが生じることがある。そのため、たとえば画像認識などの高価な設備を導入し、各第1の被溶接部材10毎にその端部を検出し、レーザ30の照射位置を微調整する必要が生ずる。
【0057】
それに対して、図4(a)に示されるように、本実施形態では、各第1の被溶接部材10について、突起50に当てて位置合わせを行うため、上述したようにX方向、Y方向への第1の被溶接部材10の位置ずれが抑制される。
【0058】
つまり、本実施形態によれば、溶接方法そのものが、両被接合部材10、20の位置ずれを抑制するものであるため、当該位置ずれの検出手段や検出工程、さらにはレーザ照射位置の微調整工程などが不要となる。このように、本実施形態によれば、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0059】
また、上述したが、本実施形態では、両被接合部材10、20の重なり状態において、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面51、52と貫通穴40の側面41とを当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行うようにしている。
【0060】
それによれば、第1の被溶接部材10の複数の異なる方向への位置ずれを、突起50で拘束できるから、両被接合部材10、20の位置精度を確保するうえで好ましい。なお、本実施形態では、突起50の1つの側面のみと第1の被溶接部材10とが当たることで、当該1つの側面が面する1つの方向のみへの位置ずれを行うことを、排除するものではない。
【0061】
また、突起50の高さは、図1に示したように、第1の被溶接部材10の板厚よりも大きく、突起50の先端側の部位が貫通穴40上に突出することが好ましい。これは、突起50が低いと、第1の被溶接部材10の位置ずれの障壁として、突起50が十分に機能しない可能性があるためである。しかし、もちろん本実施形態において、突起50の高さが第1の被溶接部材10の板厚よりも小さいことを排除するものではない。
【0062】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図6は、図5の状態の概略平面図であり、図7は、図5の状態の概略側面図である。ここでは、本実施形態と上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0063】
図5〜図7に示されるように、本実施形態においても、両被接合部材10、20の重なり状態においては、貫通穴40の中に突起50を位置させ、突起50のうち異なる方向に面する複数の側面と貫通穴40の側面41とを当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行っている。
【0064】
ここでは、図5〜図7に示されるように、突起50は、その根元部から先端に向かってテーパ状に幅が拡がった形状とされているので、切れ込みとしての貫通穴40における第1の被溶接部材10の端部に位置する開口部に噛み合った状態とされている。つまり、この貫通孔40の当該開口部にて、突起50の根元部におけるY、−Y方向に面した2個の側面が、貫通穴40の側面41に当たっている。
【0065】
そして、突起50の根元部を折り曲げることによって、突起50のうち貫通穴40の外部に位置する先端側の部位は、第1の被溶接部材10の端部よりも内側の部位に被さっている。ここで、突起部50の当該先端側の部位は、貫通穴40の幅よりも大きいため、貫通穴40には入り込まず、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触している。
【0066】
このように、本実施形態では、両被溶接部材10、20の組み付け工程において、突起50の根元部を貫通穴40の側面41に当てるとともに、第1の被溶接部材10に当たっている突起50の根元部を折り曲げるようにする。それによって、組み付け工程では、突起50の先端側の部位を、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させる。
【0067】
そして、この状態では、突起50の先端側の部位にて、第1の被溶接部材10の他方の板面側から第1の被溶接部材10が第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けられた状態となる。つまり、本実施形態では、第2の被溶接部材20の一面21と突起50の先端側の部位とで、第1の被溶接部材10を挟み付けている。
【0068】
そして、本実施形態では、この図5〜図7に示される状態にて、レーザ照射工程を行い、上記第1実施形態と同様、貫通穴40の側面41と第2の被溶接部材20の一面21との境界部分を、レーザ30照射の加熱により溶融させる。なお、図6には、この照射工程におけるレーザ30の照射許容範囲Kを示してある。こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接される。以上が、本実施形態の溶接方法である。
【0069】
そして、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、貫通穴40の側面41にて隅肉溶接が行えること、および、突起50による第1の被溶接部材10の位置の規定がなされることから、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接が実現できる。
【0070】
さらに、本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。図8は、従来の一般的なレーザ隅肉溶接方法を示す概略側面図である。
【0071】
図8に示されるように、第2の被溶接部材20の一面21上に第1の被溶接部材10を搭載する場合、両被接合部材10、20間の隙間が大きいと、第1の被溶接部材の端部が第2の被溶接部材20の一面21から浮いてしまい、レーザ溶接ができなくなる。そのため、従来では、押さえ治具2により第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けた状態でレーザ溶接を実施する。
【0072】
それに対して、本実施形態では、図5〜図7に示されるように、折り曲げられた突起50の先端側の部位にて、第1の被溶接部材10が第2の被溶接部材20の一面21に押さえ付けられる。そのため、本実施形態では、別体の押さえ治具を用いなくても、両被接合部材10、20間の隙間小さくすることができ、適切な溶接が可能となる。
【0073】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、組み付けられた第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20とにレーザ30を照射している状態を示している。また、図10は、本実施形態のレーザ隅肉溶接方法における(a)組み付け工程から(b)レーザ照射工程までの状態を平面的に示す工程図である。
【0074】
本実施形態も、板状をなす第1の被溶接部材10の一方の板面を第2の被溶接部材20の一面21に接触させつつ、第1の被溶接部材10を第2の被溶接部材20の一面21上に重ねてなる重なり状態を形成し、この重なり状態にて、両被接合部材10、20の互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うものである。
【0075】
ここで、本実施形態では、両被接合部材10、20の互いに交差する面、つまり、レーザ30を照射して隅肉溶接を行う部分が、上記各実施形態とは相違するものであり、この点を中心に述べることとする。
【0076】
本実施形態においても、図9、図10に示されるように、両被接合部材10、20の重なり状態においては、第2の被溶接部材20に突起50を設け、その突起50の根元部を、第1の被溶接部材10の貫通穴40の側面41に当てることにより、第1の被溶接部材10の位置の規定を行っている。
【0077】
ここで、図9、図10に示されるように、本実施形態の突起50は、第2実施形態と同様に、根元部から先端に向かってテーパ状に幅が拡がった形状とされており、切れ込みとしての貫通穴40における第1の被溶接部材10の端部に位置する開口部にて、突起50の根元部における側面が貫通穴40の側面41に当たっている。
【0078】
そして、突起50の根元部を折り曲げることによって、突起50のうち貫通穴40の外部に位置する先端側の部位は、第1の被溶接部材10の端部よりも内側の部位に被さっている。ここで、本実施形態では、突起50の先端側の部位は第2実施形態よりも長く、貫通穴40を超えて、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触している。
【0079】
このように、本実施形態によっても、組み付け工程では、突起50の根元部を折り曲げて、突起50の先端側の部位を第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させることにより、第2の被溶接部材20の一面21と突起50の先端側の部位とで第1の被溶接部材10を挟み付けるようにしている。
【0080】
そして、本実施形態では、この状態でレーザ30を照射するが、このとき、第1の被溶接部材10の他方の板面に対して、突起50の先端側の部位の側面50a、50bが交差した位置関係となっている。
【0081】
そこで、本実施形態では、これら第1の被溶接部材10の他方の板面と突起50の先端側の部位の側面50a、50bとを、両被接合部材10、20における互いに交差する面として、当該他方の板面と当該側面50a、50bとの境界部分にレーザ30を照射して隅肉溶接を行う。
【0082】
なお、ここでは、突起50の先端側の部位のうち当該先端の側面50aにて、当該側面50aと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界部分にレーザ30を照射して隅肉溶接を行っているが、これに隣り合う側面50bと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界部分にて溶接してもよいことはもちろんである。
【0083】
ここで、突起50の先端に位置する側面50aは、図9、図10に示されるように、第1の被溶接部材10の他方の板面側からみて当該側面の中央部が両端部よりも凹んだ凹面形状とされている。図示例では、当該側面50aは円弧状の凹面形状とされている。
【0084】
これにより、当該側面50aと第1の被溶接部材10の他方の板面との境界も円弧状となり、当該側面50aが平坦面の場合に比べて、当該境界の長さが大きくなり、溶接長さも大きくなるから、接合強度向上の点で好ましい。
【0085】
こうして、両被接合部材10、20が隅肉溶接され、本実施形態の溶接方法が完了する。そして、本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、突起50による第1の被溶接部材10の位置の規定がなされること、および、折り曲げられた突起50による第1の被溶接部材10の第2の被溶接部材20の一面21への押さえ付けによる上記隙間の低減がなされる。
【0086】
さらに、本実施形態では、上述したように、組み付け工程では、突起50の根元部を折り曲げることによって、第1の被溶接部材10端部よりも内側に寄った部位にて、突起50の先端側の部位を当該第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させている。そして、レーザ照射工程では、この突起50の先端側の部位の側面50a、50bとこれに交差する第1の被溶接部材の他方の板面との境界部分で隅肉溶接するようにしている。
【0087】
つまり、本実施形態では、貫通穴40の側面41にて隅肉溶接を行う上記各実施形態とは異なり、貫通穴40の外側にて隅肉溶接を行うことで、第1の被溶接部材10のうち端部よりも内側に寄った部位にて隅肉溶接が行える。よって、本実施形態によっても、両被接合部材10、20の位置精度を確保しつつ、接合信頼性の高い隅肉溶接を実現することができる。
【0088】
さらに、本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。一般に、両被接合部材10、20が重なった上記重なり状態においては、レーザ吸収率の良好な材料よりなる部材側から、または、厚みの薄い部材側から照射するのが通常である。たとえば、鉄と銅では鉄の方が、レーザ吸収率が大きく、鉄側から照射するのがよい。
【0089】
ここで、上記第1実施形態、第2実施形態では、第1の被溶接部材10側からレーザ30を照射したが、第2の被溶接部材20の材質や厚み次第では、第2の被溶接部材20を照射側に選択したほうが好ましい場合もでてくる。
【0090】
そのような場合に、本実施形態の溶接方法であれば、第2の被溶接部材20の上に第1の被溶接部材10を重ねた状態で、第2の被溶接部材20の突起50を第1の被溶接部材10の上側に位置させることができるので、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20との位置を入れ替えることなく、適切なレーザ照射が可能となる。つまり、本実施形態の溶接方法は、両被接合部材10、20の材質や厚みが異なる場合に有効である。
【0091】
なお、上記図9、図10では、突起50の根元部を貫通穴40の側面41に当てており、その根元部を折り曲げて、貫通穴40から突出する突起50の先端側の部位を、第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させ、その接触部分にて隅肉溶接を行っていた。しかし、本実施形態においても、貫通穴40の外で、突起50の根元部を第1の被溶接部材10の端部に当てるようにしてもよい。
【0092】
さらには、本実施形態においては、貫通穴40が無いものであってもよい。この場合も、突起50の根元部を、第1の被溶接部材10の端部に当てるようにすることにより、第1の被溶接部材10の位置ずれを防止するようにすればよい。そして、その根元部を折り曲げることで突起50の先端側の部位を第1の被溶接部材10の他方の板面に接触させ、隅肉溶接することは、上記同様に行える。
【0093】
(第4実施形態)
図11(a)、(b)、(c)は、本発明の第4実施形態に係る貫通穴40の各種形状を示す概略平面図である。
【0094】
上記各実施形態では、第1の被溶接部材10の貫通穴40は、第1の被溶接部材10の端部に開口する切れ込みであったが、図11(a)に示されるように、貫通穴40は、開口縁部全周が閉じている穴でもよい。この場合、上記突起は貫通穴40に挿入すれば、貫通穴40内に配置できる。
【0095】
また、貫通穴40の位置についても、図11(b)に示されるような位置であってもよいし、その数についても、図11(c)に示されるように、複数個であってもよい。また、上記各実施形態および図11に示される貫通穴40は、矩形穴であったが、穴の開口形状は円、楕円、三角などの形状であってもよい。
【0096】
また、これら本実施形態に述べた各貫通穴40については、各貫通穴40の形状や位置に対応して、第2の被溶接部材20側に上記突起を設ければよく、それにより、これら各貫通穴40は、上記第1〜第3の各実施形態に適用できることは明らかである。
【0097】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係るレーザ隅肉溶接方法を示す斜視図であり、第1の被溶接部材10と第2の被溶接部材20との組み付け状態を示している。
【0098】
上記第1実施形態では、貫通穴40の内部に突起50が位置し、突起50の側面51、52と貫通穴40の側面41とが当たることで第1の被溶接部材10の位置が規定されていた。それに対して、図12に示されるように、貫通穴40の外部にて突起50が第1の被溶接部材10の端部の側面に当たっていてもよい。
【0099】
その場合、図12に示されるように、突起50を複数個設け、個々の突起50を第1の被溶接部材10のうち異なる方向X、Yに面する側面に当たるように配置することが好ましい。そうすれば、複数の方向への第1の被溶接部材10の位置ずれを防止できるので、位置精度の確保の点で好ましい。
【0100】
また、この図12に示される構成において、上記第2実施形態のように、突起50の根元部を折り曲げて先端側の部位にて第1の被溶接部材10を押さえつけるようにしてもよく、その場合も、その押さえ付けによる上記同様の効果が期待される。
【0101】
つまり、上記第2実施形態の場合、折り曲げられて第1の被溶接部材10と重なる突起50は、その根元部が貫通穴40の内部に位置したが、この場合も、貫通穴40の外部に突起50の根元部が位置してもよい。この場合、突起50の根元部が、第1の被溶接部材10の貫通穴40の外部すなわち第1の被溶接部材10の端部に当たることにより、第1の被溶接部材10の位置ずれを防止することになる。
【0102】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、隅肉溶接される両被接合部材10、20の面は、互いに交差する面であるが、この交差する面としては、互いに直交する面であること、つまり当該面同士の交差角度が90°に限定されるものではない。
【0103】
それ以外にも、当該面同士の交差角度は、隅肉溶接を可能な角度であればよい。たとえば、図13に示されるように、第2の被溶接部材20の一面21と第1の被溶接部材10の貫通穴40の側面41との成す角度が鋭角であるような順テーパの位置関係にあるものも含むものである。
【符号の説明】
【0104】
10 第1の被溶接部材
20 第2の被溶接部材
21 第2の被溶接部材の一面
40 貫通穴
41 貫通穴の側面
50 突起
50a、50b 突起の先端側の部位の側面
51、52 突起の側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、前記第1の被溶接部材(10)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、
この重なり状態にて、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と当該一面(21)に交差する前記第1の被溶接部材(10)の面との境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、
前記第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位には、その板厚方向に貫通する貫通穴(40)を設け、
前記重なり状態においては、前記貫通穴(40)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に位置させて前記貫通穴(40)から前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)を露出させることにより、当該板厚方向に延びる前記貫通穴(40)の側面(41)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と交差する前記第1の被溶接部材(10)の面として前記レーザ溶接を行うとともに、
前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、前記重なり状態においては、前記突起(50)に前記第1の被溶接部材(10)を当てることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる前記第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにしたことを特徴とするレーザ隅肉溶接方法。
【請求項2】
前記重なり状態においては、前記貫通穴(40)の中に前記突起(50)を位置させ、前記突起(50)のうち異なる方向に面する複数の側面(51、52)と前記貫通穴(40)の側面(41)とを当てることにより、前記第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ隅肉溶接方法。
【請求項3】
前記重なり状態においては、前記突起(50)の根元部が前記第1の被溶接部材(10)に当たることにより、前記第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うものであり、
さらに、前記突起(50)の根元部を折り曲げて、前記突起(50)における前記貫通穴(40)の外部に位置する先端側の部位を、前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と前記突起(50)の先端側の部位とで前記第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにすることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ隅肉溶接方法。
【請求項4】
板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、前記第1の被溶接部材(10)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、
この重なり状態にて、前記第1の被溶接部材(10)と前記第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、
前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、前記重なり状態において、前記突起(50)の根元部に前記第1の被溶接部材(10)を当てることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる前記第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにし、
さらに、前記突起(50)の根元部を折り曲げて前記突起(50)の先端側の部位を前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と前記突起(50)の先端側の部位とで前記第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにし、
前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面とこれに交差する前記突起(50)の先端側の部位の側面(50a、50b)とを、前記第1の被溶接部材(10)と前記第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面として溶接を行うようにしたことを特徴とするレーザ隅肉溶接方法。
【請求項1】
板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、前記第1の被溶接部材(10)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、
この重なり状態にて、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と当該一面(21)に交差する前記第1の被溶接部材(10)の面との境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、
前記第1の被溶接部材(10)のうち端部よりも内側に寄った部位には、その板厚方向に貫通する貫通穴(40)を設け、
前記重なり状態においては、前記貫通穴(40)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に位置させて前記貫通穴(40)から前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)を露出させることにより、当該板厚方向に延びる前記貫通穴(40)の側面(41)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と交差する前記第1の被溶接部材(10)の面として前記レーザ溶接を行うとともに、
前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、前記重なり状態においては、前記突起(50)に前記第1の被溶接部材(10)を当てることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる前記第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにしたことを特徴とするレーザ隅肉溶接方法。
【請求項2】
前記重なり状態においては、前記貫通穴(40)の中に前記突起(50)を位置させ、前記突起(50)のうち異なる方向に面する複数の側面(51、52)と前記貫通穴(40)の側面(41)とを当てることにより、前記第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ隅肉溶接方法。
【請求項3】
前記重なり状態においては、前記突起(50)の根元部が前記第1の被溶接部材(10)に当たることにより、前記第1の被溶接部材(10)の位置の規定を行うものであり、
さらに、前記突起(50)の根元部を折り曲げて、前記突起(50)における前記貫通穴(40)の外部に位置する先端側の部位を、前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と前記突起(50)の先端側の部位とで前記第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにすることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ隅肉溶接方法。
【請求項4】
板状をなす第1の被溶接部材(10)の一方の板面を第2の被溶接部材(20)の一面(21)に接触させつつ、前記第1の被溶接部材(10)を前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねてなる重なり状態を形成し、
この重なり状態にて、前記第1の被溶接部材(10)と前記第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面の境界部分を溶融させてレーザ溶接を行うレーザ隅肉溶接方法において、
前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)には、当該一面(21)上に突出する突起(50)を設け、前記重なり状態において、前記突起(50)の根元部に前記第1の被溶接部材(10)を当てることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)上に重ねられる前記第1の被溶接部材(10)の位置を規定するようにし、
さらに、前記突起(50)の根元部を折り曲げて前記突起(50)の先端側の部位を前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面に接触させることにより、前記第2の被溶接部材(20)の一面(21)と前記突起(50)の先端側の部位とで前記第1の被溶接部材(10)を挟み付けるようにし、
前記第1の被溶接部材(10)の他方の板面とこれに交差する前記突起(50)の先端側の部位の側面(50a、50b)とを、前記第1の被溶接部材(10)と前記第2の被溶接部材(20)との互いに交差する面として溶接を行うようにしたことを特徴とするレーザ隅肉溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−16741(P2012−16741A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156699(P2010−156699)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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