説明

レーダセンサ

パルスエコー方式によるレーダセンサにおいて、広いアンテナ特性をもつ第1の受信アンテナ(6)と、狭いアンテナ特性をもつ第2の受信アンテナ(17)が設けられている。さらに受信経路中に、2つの受信アンテナの受信信号を送信レーダパルスのパルス繰り返し周波数のタイミングで切り替える切替手段(18)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの受信アンテナを備えたパルスエコー方式によるレーダセンサに関する。
【0002】
従来の技術
Skolnik "Introduction to radar system", 2nd Edition, Mc Craw Hill Book Company 1980の第160頁〜161頁には、モノパルスレーダにおいて角度変位を求めるためにオーバラップした2つのアンテナ特性を評価することが知られている。
【0003】
DE 101 42 170 A1により、複数の受信経路を備えたパルスレーダ装置が知られている。この場合、複数の受信セルを同時に評価することができ、および/または種々の動作モード間の切り替えを行うことができる。
【0004】
発明の利点
請求項1の特徴部分に記載の構成、すなわち広い近傍領域アンテナ特性をもつ第1の受信アンテナと狭い遠方領域アンテナ特性をもつ第2の受信アンテナが設けられており、受信経路においてこれら両方の受信アンテナの受信信号の切り替えが送信レーダパルスのパルス繰り返し周波数のタイミングで行われるようにした構成によれば、殊に広いレーダ位置特定フィールド全体から角度情報を取得することが可能となり、すなわちたとえばモノパルス方式と三角測量方式の組み合わせによってこれが可能となる。
【0005】
これによって有効なターゲットと誤ったターゲットとの区別を向上させることができる。
【0006】
2つのレーダセンサを組み合わせて冗長的な情報を取得することで、較正を簡単に実現できるようになる。
【0007】
図面
次に、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0008】
図1は慣用のレーダセンサを示すブロック回路図であり、図2は本発明によるレーダセンサのブロック回路図であり、図3は走行進路をカバーする2つのデュアルビームセンサのアンテナ特性について示す図である。
【0009】
実施例の説明
図1には慣用のレーダセンサのブロック回路図が示されており、これに本発明が結合される。レーダセンサは高周波源1を有しており、これはたとえば24GHzの連続的な高周波信号(CW信号)を送出する。この高周波信号はレーダパルス発生のため送信側のパルス変調器2に供給され、さらに増幅器3を介して広い近傍領域アンテナ特性をもつ送信アンテナ4に到達する。パルス変調器2の制御は5MHzの矩形信号5によって行われる。やはり広いアンテナ特性を有するレーダ受信アンテナ6によって、レーダターゲットから反射したレーダパルスが受信され、受信側前置増幅器7を介して直交ミキサ8へ供給される。この直交ミキサは自身のLO入力側で時間遅延された送信パルスを受け取り、これは矩形信号5が最大で200nsの遅延をもつ時間遅延素子9を介して受信側のパルス変調器10を遅延させてスイッチングすることによって行われる。
【0010】
ターゲットまでのパルス遅延時間と直交ミキサ8における搬送波パルスの遅延時間が一致しているときのみ、NFポート(IQ出力側)に混合積が生じることになる。つまり調整可能な遅延時間によって時間窓形成が実現され、これは電磁波の伝播速度を介して結合されて距離測定に対応する。さてここで、のこぎり波発生器11を用いのこぎり波関数に従い遅延時間を変化させれば、考えられるターゲットに応じて距離をシステマティックにスキャンできるようになる。この「スキャン」をパルス繰り返し周波数と比べて相対的にゆっくり行えば、ターゲットごとに複数のパルス(通常は数100個)が受信され、これはSN比改善のためローパスフィルタ12,13によって積分される。ついで回路段14,15においてアナログ/ディジタル変換(ADC)が行われ、さらにコンポーネント16において検出および距離測定を伴う相応のディジタル信号処理(DSP)が行われる。
【0011】
図2には、本発明の実施例としてデュアルビームセンサが描かれている。この場合、図1によるセンサにさらに受信アンテナ17と切替スイッチ18が加えられている。付け加えられたアンテナ17は集束作用の強い遠方領域用アンテナであり、主ビーム方向にいっそう高い利得をもち、これによっていっそう距離の隔たったターゲットの検出が可能となる(ただし距離窓が最大距離まで遅延されることを前提とする)。
【0012】
さらにシステムは双安定フリップフロップ19と組み合わせられたスイッチ18によって拡張されており、これは送信レーダパルスのパルス繰り返しのタイミングで、高周波信号エネルギーを両方のアンテナからミキサ8へ交互に導く。つまり受信アンテナごとに半分の個数のパルスだけが受信される。この場合、アナログ/ディジタル変換器ADCの手前に設けられたローパス12,13は積分作用をもってはならず、帯域制限のためアンチ・エイリアシング・ローパスフィルタとしての役割を果たせばよい。それに応じてアナログ/ディジタル変換器はいっそう高いサンプリングレートをもつ必要がある。ここではアンテナ経路各々に対する本来のパルス積分は、プロセッサ16においてディジタルで行われる。3dBの積分損失というみかけの欠点を少なくとも部分的に補償することができる。その理由は、検出のためランプ特性をもつ両方の受信経路の低周波信号をプロセッサ16において累算できるからであり、したがって両方のアンテナを介して捕捉されるターゲットのためにオリジナルのセンサのSN比が達成されるからである。ただしターゲットが狭いアンテナの視野領域外にあるならば、3dBの積分損失が生じることになる。
【0013】
センサの近傍領域(これは広い受信特性に相応)が「スキャン」されるかぎり、切り替えがアクティブである。このとき、両方のアンテナ特性がオーバラップした領域では、既知のモノパルス方式によって角度測定も可能である。角度測定方式についてはここでは詳しくは立ち入らない。特定の「スキャン距離」からは切り替えはもはや有用ではなくなる。なぜならば遠方特性のターゲットだけが検出されるからである。
【0014】
デュアルビームセンサを2つあるいはそれよりもよいのは3つ利用すれば、共通の走行進路においてモノパルスと三角測量を組み合わせて角度測定を行うことができる。図3には、2つのデュアルビームセンサ20,21によって走行進路をカバーする様子が描かれている。この場合、ハッチングされた領域によってオーバラップ領域が表されている。
【0015】
1つのセンサの各アンテナ特性が重なり合っている領域ではターゲット角度はモノパルス方式により求められ、2つのセンサの特性が重なり合っている領域では角度は三角測量により求められる。近傍領域(4つの特性がオーバラップしている領域)では冗長な情報が取得され、それらの情報をたとえばモノパルス評価の簡単な較正に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】慣用のレーダセンサを示すブロック回路図
【図2】本発明によるレーダセンサのブロック回路図
【図3】走行進路をカバーする2つのデュアルビームセンサのアンテナ特性について示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの受信アンテナを備えたパルスエコー方式によるレーダセンサにおいて、
第1の受信アンテナ(6)は広い近傍領域アンテナ特性を有しており、
第2の受信アンテナ(17)は狭い遠方領域アンテナ特性を有しており、
前記2つの受信アンテナの受信信号を送信レーダパルスのパルス繰り返し周波数のタイミングで切り替える切替手段(18)が受信経路中に設けられていることを特徴とする、
パルスエコー方式によるレーダセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のレーダセンサにおいて、
近傍領域アンテナ特性のための距離窓内でのみ切り替えが行われることを特徴とするレーダセンサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の少なくとも2つのレーダセンサから成るレーダシステムにおいて、
ターゲット角度測定が、近傍領域ではモノパルス方式に従いオーバラップしたアンテナ特性を介して行われ、遠方領域では三角測量によって行われることを特徴とするレーダシステム。
【請求項4】
請求項3記載のレーダシステムにおいて、
レーダセンサの較正が冗長情報の取得により行われ、たとえばそれぞれ異なる受信アンテナのオーバラップ領域における冗長情報の取得により行われることを特徴とするレーダシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−519246(P2008−519246A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511733(P2005−511733)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052507
【国際公開番号】WO2005/054895
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】