説明

レーダパフォーマンスモニタ装置及びレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法

【課題】モノパルス二次監視レーダで使用される測角テーブルの生成時間を短縮させるレーダパフォーマンスモニタ装置及びこのレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法を提供する。
【解決手段】入力された回数及び時間間隔を記録するメモリ131と、モノパルス方式二次監視レーダ2から質問信号を受信する受信器121と、測定モードに設定されているときに受信器121が質問信号を受信すると、質問信号に対して回数の応答信号を時間間隔で生成する応答発生器123と、応答発生器123によって生成された応答信号を送信する送信器124とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノパルス測角方式二次監視レーダで利用する測角テーブルの生成に用いられる信号を送信するレーダパフォーマンスモニタ装置及びこのレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制には、規格化された二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)が利用されている(例えば、非特許文献1)。二次監視レーダ2は、図4に示すように、管制対象となる航空機3に搭載されるトランスポンダ31との信号の送受信に基づいて、航空管制を行っている。二次監視レーダの一種にモノパルス測角方式によって方位を測定するモノパルス方式二次監視レーダレーダ(モノパルス方式SSR)がある(例えば、特許文献1参照)。モノパルス方式SSRには、電波環境の改善や測角精度が高い等の利点がある。
【0003】
モノパルス方式SSR2は、予め地上に設置されたRPM1aの設置角度方向を基準にして、RPM1aから受信する図5に示すような和パターンと差パターンの受信信号の信号パターンを利用し、モノパルス測角方式によって方位を測定する。
【0004】
モノパルス方式SSR2は、たとえば方向I〜VIIの全ての方向から受信した信号で和パターンと差パターンの信号の振幅比によって図6に示すような測角テーブルを求める。モノパルス方式SSRはその後、このように生成した測角テーブルによって、ビームの到来方向に対する和パターンと差パターンの関係を実角度に変換している。モノパルス方式SSR2では、アンテナが図7(a)〜図7(c)に示すように回転されていることによって、RPM1aからの信号を各方向I〜VIIのアンテナの機械角度で受信することができる。
【0005】
このように、モノパルス方式SSR2のアンテナの各方向についてレベルを決定するためには、各機械軸位置のアンテナでの和パターン及び差パターン個々のレベルの測定が必要である。したがって、モノパルス方式SSR2は、測角テーブルを生成する際、必要な全ての方向から信号を受信できるようなタイミングでRPM1aに質問信号を複数回送信し、RPM1aから各機械軸位置のアンテナで受信する信号から和パターンと差パターンのパターン比のレベルを取得し、測角テーブルを生成している。
【特許文献1】特許第3015494号公報
【非特許文献1】ICAO、「Aeronautical Telecommunications Annex 10 VolumeIV Surveillance Rader and Collision Avoidance System」、1998年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、測角テーブルを生成する場合、モノパルス方式SSR2は全ての必要な方向からの信号を受信できるようなタイミングでRPM1aに質問信号を複数回送信し、送信信号に対応してRPM1aから受信する複数の信号によって和パターンと差パターンのパターン比のレベルを取得している。
【0007】
しかしながら、モノパルス方式SSR2の質問信号の送信の時間間隔は指定されており、受信する応答信号から測角テーブルを生成するためには、多くの時間を必要とする問題があった。
【0008】
また、測角テーブルは、各モノパルス方式SSRによって異なり、経年変化やアンテナメンテナンスによる変化を生じる。したがって、モノパルス方式SSR2では、このような変化に応じて測角テーブルを修正する必要があり、測角テーブルの再生成を行っているが、再生成の際にもこのように多くの時間が必要になる。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、モノパルス二次監視レーダで使用される測角テーブルの生成時間を短縮させるレーダパフォーマンスモニタ装置及びこのレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴に係るレーダパフォーマンスモニタ装置は、モノパルス方式二次監視レーダで測角テーブルを生成する際に測定モードに設定され、入力された回数及び時間間隔を記録するメモリと、モノパルス方式二次監視レーダから質問信号を受信する受信器と、測定モードに設定されているときに受信器が質問信号を受信すると、質問信号に対して回数の応答信号を時間間隔で生成する応答発生器と、応答発生器によって生成された応答信号を送信する送信器とを備える。
【0011】
また、本発明の特徴に係る測角テーブルの生成方法は、レーダパフォーマンスモニタ装置が、モノパルス方式二次監視レーダから質問信号を受信するステップと、レーダパフォーマンスモニタ装置が、測定モードに設定されている際に受信した質問信号に対して、予め設定された回数の応答信号を予め設定された時間間隔で生成するステップと、レーダパフォーマンスモニタ装置が、生成された応答信号を送信するステップと、モノパルス方式二次監視レーダが、応答信号に基づいて測角テーブルを生成するステップとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モノパルス二次監視レーダで使用される測角テーブルの生成時間を短縮させるレーダパフォーマンスモニタ装置及びこのレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置(RPM)1は、図4で上述した従来のRPM1aと同様にモノパルス方式二次監視レーダ(モノパルス方式SSR)2から送信される信号の状態をモニタするとともに、モノパルス方式SSR2からの質問信号S1に対して応答信号S2、S3を送信する。モノパルス方式SSR2で測角テーブルを生成する際、RPM1は測定モードに設定される。測定モードに設定されたRPM1は、モノパルス方式SSR2から質問信号S1を受信すると、予め設定されたタイミングで測角テーブルの生成に利用される応答信号S3をモノパルス方式SSR2に対して送信する。ここで、「測定モード」とは、モノパルス方式SSR2で測角テーブルを生成する際に、RPM1が測角テーブル生成用の応答信号を送信するモードである。
【0014】
RPM1は、測定モード時において、モノパルス方式SSR2から送信された質問信号S1に対して設定されたタイミングで応答信号S3を送信するため、図1に示すように、アンテナ11、信号処理器12、処理器13及び設定手段14を備えている。また、信号処理器12は、受信器121、質問解読器122、応答発生器123及び送信器124を有し、処理器13は、設定値記録メモリ131及びタイミング通知手段132を有している。
【0015】
設定手段14は、オペレータからの操作によって測定モードで利用される設定値が入力されると、この設定値を設定値記録メモリ131に記録する。また、設定手段14は、オペレータからの操作によって、RPM1を測定モードに設定する操作が入力される。設定値としては、応答信号S3を送信する回数Nと応答信号S3を送信する時間間隔Tを設定する。
【0016】
受信器121は、アンテナ11を介してSSR2から送信された信号を受信し、受信した信号を質問解読器122に出力する。
【0017】
質問解読器122は、質問信号S1を入力すると、質問信号S1を解読した結果を応答発生器123及び処理器13に出力する。
【0018】
タイミング通知手段132は、測定モードに設定されているときに、SSR2から受信した質問信号S1の解読結果を入力すると、設定値記録メモリ131で設定された回数N、時間間隔Tのタイミングで応答信号S3を送信するタイミングを通知する通知信号を出力する。
【0019】
タイミング通知手段132は、図1で示すように、カウンタ132aと、計時手段132b、判定手段132c及び生成手段132dを有している。カウンタ132aの値Pは、たとえば初期値が0に設定されており、測定モードに設定された後に質問信号S1に対して応答信号S3が1回送信されると値Pをインクリメントすることで、質問信号S1に対して応答信号S3を送信した回数をカウントする。また、計時手段132bは、たとえば新たに応答信号S3を送信した時点から計時を開始し、前回応答信号S3を送信した時刻からの経過時間を計時する。
【0020】
判定手段132cは、応答信号S3を送信したとき、設定値記録メモリ131で記録されている回数Nとカウンタ132aでカウントされている値Pとを比較する。カウントされた値Pと回数Nとが一致したとき、すなわち、応答信号S3をN回送信したとき、処理器13は、処理を終了する。一方、カウントされた値Pが設定された回数Nに満たないとき、判定手段132cは、前回応答信号S3を送信してから時間間隔Tが経過したか否かを判定する。判定手段132cで時間間隔Tが経過したと判定すると、生成手段132dは、通知信号を生成して出力する。
【0021】
応答発生器123は、質問解読器122から応答信号S2、S3の送信が必要な解読結果を入力すると、応答信号S2、S3を生成して出力する。また、応答発生器123は、タイミング通知手段132から通知信号を入力すると、応答信号S3を生成して出力する。送信器124は、応答発生器123から入力した応答信号S2、S3をアンテナ11を介して送信する。
【0022】
モノパルス方式SSR2は、測角テーブルの生成時に、各アンテナの方向でRPM1から応答信号S3を受信すると和パターンと差パターンの信号レベルを蓄積し、各アンテナの方向で求められた信号レベルに基づいて従来と同様の方法で、受信した各応答信号に基づいて測角データを生成する。
【0023】
図2及び図3を用いて、測定モードに設定されたRPM1がSSR2から質問信号S1を受信し、応答信号S3を送信する場合の処理の一例を説明する。
【0024】
図2に示すように、RPM1では、まず設定手段14を介して設定値が設定値記録メモリ131に登録されて測定モードに設定された後(S01、S02)、受信器121が質問信号S1を受信すると(S03でYES)、質問解読器122は質問信号S1を解読する(S04)。
【0025】
次に、応答発生器123が受信した質問信号S1に対して応答信号S3を生成すると(S05)、送信器124が送信する(S06)。
【0026】
続いて、タイミング通知手段132は、設定値として設定値記録メモリ131で設定されている回数Nの応答信号S3が送信されたか否かを判定する(S7)。応答信号S3が指定の回数送信されていた場合(S7でYES)、タイミング通知手段132は、指定の時間間隔Tが経過すると(S8でYES)、通知信号を出力し(S9)、ステップS5に戻る。
【0027】
すなわち、図3に示すようにRPM1は、通常時には受信した質問信号S1に対して1回応答信号S2を送信するのに対し、測定モードの設定時には、応答信号S3が時間間隔TでN回送信される。モノパルス方式SSR2は、このように時間間隔TでN回受信する応答信号S3から測角テーブルを生成して使用する。
【0028】
上述したように本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置1で予め回数N及び時間間隔Tを設定し、測定モードの設定時には1回の質問信号S1の受信に対して、設定回数Nの応答信号S3を設定時間間隔Tでモノパルス方式SSR2に送信する。これにより、モノパルス方式SSR2では、質問信号S1を1回送信するのみで、測角テーブルの生成に必要な各方向において応答信号S3を複数回密に受信することができる。したがって、従来のように質問信号S1を多数回送信する必要がなく、各方向において質問信号S1の送信回数を減らすことができるため、測角テーブルの生成に要する時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置を説明する機能ブロック図。
【図2】図1のレーダパフォーマンスモニタ装置における処理の一例を説明するフローチャートである。
【図3】図1のレーダパフォーマンスモニタ装置で送信する応答について説明する図である。
【図4】従来のレーダパフォーマンスモニタ装置とモノパルス方式二次監視レーダについて説明する図である。
【図5】モノパルス方式二次監視レーダにおける測角方法について説明する図。
【図6】モノパルス方式二次監視レーダにおいて生成された測角テーブルについて説明する図。
【図7】モノパルス方式二次監視レーダにおける測角方法について説明する図。
【符号の説明】
【0030】
1…レーダパフォーマンスモニタ装置(RPM)
11…アンテナ
12…信号処理器
121…受信器
122…質問解読器
123…応答発生器
124…送信器
13…処理器
131…設定値記録メモリ
132…タイミング通知手段
132a…カウンタ
132b…計時手段
132c…判定手段
132d…生成手段
14…設定手段
2…二次監視レーダ(SSR)
3…航空機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノパルス方式二次監視レーダで測角テーブルを生成する際に測定モードに設定され、前記測角テーブルの生成に利用される応答信号を送信するレーダパフォーマンスモニタ装置であって、
入力された回数及び時間間隔を記録するメモリと、
前記モノパルス方式二次監視レーダから質問信号を受信する受信器と、
測定モードに設定されているときに前記受信器が前記質問信号を受信すると、前記質問信号に対して前記回数の応答信号を前記時間間隔で生成する応答発生器と、
前記応答発生器によって生成された前記応答信号を送信する送信器と、
を備えることを特徴とするレーダパフォーマンスモニタ装置。
【請求項2】
測角テーブルを生成して利用するモノパルス方式二次監視レーダと、前記モノパルス方式二次監視レーダで前記測角テーブルを生成する際に測定モードに設定され、前記測角テーブルの生成に利用される応答信号を送信するレーダパフォーマンスモニタ装置を利用する測角テーブルの生成方法であって、
前記レーダパフォーマンスモニタ装置が、前記モノパルス方式二次監視レーダから質問信号を受信するステップと、
前記レーダパフォーマンスモニタ装置が、測定モードに設定されている際に受信した質問信号に対して、予め設定された回数の応答信号を予め設定された時間間隔で生成するステップと、
前記レーダパフォーマンスモニタ装置が、生成された前記応答信号を送信するステップと、
前記モノパルス方式二次監視レーダが、前記応答信号に基づいて測角テーブルを生成するステップと、
を備えることを特徴とする測角テーブルの生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−256407(P2008−256407A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96618(P2007−96618)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】