説明

レーダパフォーマンスモニタ装置

【課題】解読した受信信号に関するデータを記録媒体に蓄積して記録し、異常の発生時に原因の特定に利用するデータを提示する。
【解決手段】二次監視レーダ2又は航空機3に搭載されるATCトランスポンダ31から送信される信号を受信する受信手段121と、受信された信号を解読する解読手段122,13と、信号の解読の結果を記録媒体16に記録させる記録処理手段152とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次監視レーダ及びATCトランスポンダから送信される信号を受信し、二次監視レーダの動作を監視するレーダパフォーマンスモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制には、規格化された二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)が利用されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
SSRを利用するシステムでは、図3に示すようにSSR2と航空機3に搭載されるATCトランスポンダ31とで送受信される質問信号や応答信号を利用して、航空管制が行われている。
【0004】
このようなシステムでは安全な航空路を確保するために、信号の送受信の確実性が要求される。従来、SSR2における動作(信号の送受信)を検査するため、レーダパフォーマンスモニタ装置(RPM:Radar Performance Monitor)1で受信される信号を利用する方法があった。
【0005】
従来のRPM1aの一例を図4に示す。RPM1aでは、受信器103は、アンテナ101及び減衰器102を介して信号を受信すると、受信した信号が質問信号である場合、この質問信号を質問解読器104に出力する。質問解読器104は、質問信号を解読した結果を応答発生器105へ出力する。応答発生器105は、質問信号に対して応答信号の送信が必要である場合には応答信号を生成し、送信器に出力する。応答信号を入力した送信器106は、減衰器102及びアンテナ101を介して応答信号を送信する。
【0006】
また、受信器103は、対象とするSSR2から信号を受信すると、SSR2から信号を受信したことを通知する受信通知を通信I/F107を介して監視装置4へ出力する。一方、SSR2は、信号を送受信すると、送受信した信号に関する送受信内容を監視装置4へ出力する。従来のRPM1aを利用したシステムでは、監視装置4は図3に示すように、SSR2から出力された送受信内容と、RPM1aから出力された受信通知とが入力され、入力した送受信内容と受信通知とを比較してSSR2における信号の送受信の異常を監視していた。
【0007】
SSRにおける信号の送受信の状態を監視する他の方法として、擬似信号を用いて信号の受信を確認する技術や(例えば、特許文献1参照)、SSRで信号を解析する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−240847号公報
【特許文献2】特開2007−10582号公報
【非特許文献1】ICAO、「Aeronautical Telecommunications Annex 10 VolumeIV Surveillance Rader and Collision Avoidance System」、1998年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3及び図4を用いて上述したような従来のRPM1aを用いたSSR2の監視システムでは、SSR2から信号を受信した場合にRPM1aから出力される通知信号のみが利用されている。したがって、RPM1aが対象とするSSR2以外から信号を受信した場合には通知信号は出力されない。
【0009】
このように、従来のRPM1aを用いた監視システムでは、監視装置4がSSR2の動作を監視に用いる他には利用されていない。したがって、RPM1aでは、他局のSSRから送信される信号や航空機に搭載されるATCトランスポンダから送信される信号も受信しているが、他局のSSRの干渉、滞空航空機のATCトランスポンダからの質問信号による干渉等で送受信の異常が発生していても、その原因までを特定することは困難であるという問題があった。また、特許文献1及び2に記載の技術であっても、送受信の異常の原因を特定することはできないという問題がある。
【0010】
従って本発明は、上記課題に鑑み、解読した受信信号に関するデータを蓄積して記録し、異常の発生時に原因の特定に利用するデータを提示することのできるレーダパフォーマンスモニタ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴に係るレーダパフォーマンスモニタ装置は、二次監視レーダから送信される信号を受信し、二次監視レーダの信号の動作を監視するレーダパフォーマンスモニタ装置であって、二次監視レーダ又は航空機に搭載されるATCトランスポンダから送信される信号を受信する受信手段と、受信された信号を解読する解読手段と、信号の解読の結果を記録媒体に記録させる記録処理手段とを備える。
【0012】
上記レーダパフォーマンスモニタ装置は、信号の解読の結果を表示させる表示処理手段を有することができる。
【0013】
上記レーダパフォーマンスモニタ装置の解読手段は、信号の内容、パルス幅及びパルス間隔を解読する。
【0014】
上記レーダパフォーマンスモニタ装置の記録処理手段は、解読の結果とともに信号を受信した時刻情報を記録させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、解読した受信信号に関するデータを蓄積して記録し、異常の発生時に原因の特定に利用するデータを提示するレーダパフォーマンスモニタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置(RPM)1は、二次監視レーダ(SSR)で送受信される信号の状態をモニタする装置であって、図3で示した従来のシステムと同様に、二次監視レーダ(SSR)2、SSR2と通信可能な航空機3、SSR2及び航空機3を監視する監視装置4とともに用いられる。
【0017】
RPM1は、SSR2から送信される質問信号を受信し、受信した質問信号に対して応答信号を送信することができる。また、RPM1は、航空機3に搭載されるトランスポンダ31から送信される応答信号を受信する。
【0018】
このRPM1は、信号を受信すると、信号を受信した旨を通知する受信通知を監視装置4に出力する。また、SSR2は、信号を送受信すると、送受信した信号の内容を通知する送受信内容を監視装置4に出力する。監視施設では、監視装置4で入力する送受信内容に基づいて航空管制が行われるとともに、送受信内容及び受信通知に基づいて、SSR2の通信状態及び監視空域における通信状態が監視される。
【0019】
RPM1は、受信通知の送信に加えて、受信した信号を解読し、解読の結果を記録媒体に蓄積して記録させる。RPM1に蓄積された解読の結果を必要になった場合(例えば、SSR2の通信状態が異常と判定された場合)に読み出して利用することで、監視空域における通信障害の原因を特定することができる。RPM1は、信号を受信して解読するとともに解読した信号を蓄積するため、図1に示すように、アンテナ11、信号処理器12、応答解読器13、時刻発生器14、処理器15、通信インタフェース(通信I/F)16、表示装置17及び記録媒体18を備えている。
【0020】
また、信号処理器12は、受信器121、質問解読器122、応答発生器123及び送信器124を有している。この信号処理器12の構成は、図4を用いて上述した従来のRPMで利用されるATCトランスポンダの構成と同一である。
【0021】
受信器121は、アンテナ11を介してSSR2及びトランスポンダ21から送信された信号を受信する。信号を受信した受信器121は、質問信号を質問解読器122に出力し、応答信号を応答解読器13に出力する。
【0022】
質問解読器122は、入力した質問信号の解読の結果を応答発生器123に出力するとともに、処理器15に出力する。質問解読器122は、例えば、質問信号から質問信号を送信したSSRを特定するとともに、パルス幅、パルス間隔、質問の種類、質問の内容等を解読する。
【0023】
応答発生器123は、入力した質問信号の解読の結果から質問信号に対する応答信号を生成し、生成した応答信号を送信器124に出力するとともに、処理器15に出力する。
【0024】
応答解読器13は、入力した応答信号の解読の結果を処理器15に出力する。応答解読器13は、例えば、応答信号から応答信号を送信したSSRを特定するとともに、パルス幅、パルス間隔、質問の種類、質問の内容等を解読する。
【0025】
時刻発生器14は、現在の日時をカウントし、処理器15に出力している。
【0026】
処理器15は、特定領域内の信号の送受信状態を把握するための質問信号及び応答信号の受信結果の記録データを生成して記録し、出力するため、生成手段151、記録処理手段152、表示処理手段153及び通信処理手段154を有している。
【0027】
生成手段151は、質問解読器122又は応答解読器13から解読の結果を入力すると、時刻発生器14から入力した現在の日時に解読の結果を関連付けて記録データを生成する。このとき、既に記録媒体16に記録データが記録されている場合、記録媒体16に記録されている記録データに受信信号に関する日時と解読の結果を追加した新たな記録データを生成する。記録処理手段152は、生成手段151によって生成された記録データを記録媒体16に記録させる。
【0028】
生成手段151によって、生成され記録処理手段152によって記録媒体16に記録される記録データの一例を図2に示す。図2に示す記録データでは、日時(日付及び時刻)、信号が質問信号であるか応答信号であるかの種別、信号のパルス幅、信号のパルス間隔、信号の種類及び信号の解読結果及び解読前のデータ内容がリストされている。
【0029】
表示処理手段153は、記録データを表示装置17に表示させる。例えば、表示処理手段153は、生成手段151によって新たな記録データが生成される毎に表示装置17に新たな記録データを表示し、常に最新の記録データを表示させてもよい。また例えば、表示処理手段153は、操作手段19から入力される表示のリクエストにしたがって、記録媒体16から記録データを読み出して表示させてもよい。
【0030】
通信処理手段154は、質問解読器122又は応答解読器13から、解読の結果を入力すると、通信I/F18を介して、監視装置4に信号を受信した旨を通知する受信通知を送信する。なお、必要に応じて、通信処理手段154は、記録媒体16に記録されている記録データを送信してもよい。
【0031】
上述した本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置1によれば、受信した信号を解読した結果から、受信信号に関する記録データを生成し、記録媒体16に記録する。記録媒体16に記録されている記録データを必要になった場合に参照することで、SSR2での通信の異常の原因を特定することができる。
【0032】
また、特定のSSRと組み合わせなくとも本発明のレーダパフォーマンスモニタ装置1を単体で運用することにより、航空管制に用いられる電波環境のモニタリングにも使用できる。
【0033】
上記のように、本発明を各実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0034】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明に記載した事項と自明な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るレーダパフォーマンスモニタ装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のレーダパフォーマンスモニタ装置で生成される記録データの一例である。
【図3】従来のレーダパフォーマンスモニタ装置を備えるシステムの一例である。
【図4】従来のレーダパフォーマンスモニタ装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1…レーダパフォーマンス装置(RPM)
10…受信機
11…アンテナ
12…信号処理器
121…受信器(受信手段)
122…質問解読器(解読手段)
123…応答発生器
124…送信器
13…応答解読器(解読手段)
14…時刻発生器
15…処理器
151…生成手段
152…記録処理手段
153…表示処理手段
154…通信処理手段
16…記録媒体
17…表示装置
18…記録媒体
19…操作手段
151…生成手段
152…記録処理手段
153…表示処理手段
154…通信処理手段
2…二次監視レーダ(SSR)
3…航空機
31…トランスポンダ
4…監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次監視レーダから送信される信号を受信し、前記二次監視レーダの信号の動作を監視するレーダパフォーマンスモニタ装置であって、
二次監視レーダ又は航空機に搭載されるATCトランスポンダから送信される信号を受信する受信手段と、
受信された前記信号を解読する解読手段と、
前記信号の解読の結果を記録媒体に記録させる記録処理手段と
を備えることを特徴とするレーダパフォーマンスモニタ装置。
【請求項2】
前記信号の解読の結果を表示させる表示処理手段を有することを特徴とする請求項1記載のレーダパフォーマンスモニタ装置。
【請求項3】
前記解読手段は、前記信号の内容、パルス幅及びパルス間隔を解読することを特徴とする請求項1又は2記載のレーダパフォーマンスモニタ装置。
【請求項4】
前記記録処理手段は、前記解読の結果とともに前記信号を受信した時刻情報を記録させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のレーダパフォーマンスモニタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate