説明

レーダ画像処理装置

【課題】軌道差で生じた位相差を除去して、正確にずれ量推定を行う。
【解決手段】互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測した複数のレーダ画像を格納するレーダ画像A,B格納部1110,1120と、軌道情報に基づき、軌道差により発生したレーダ画像間の位相補正量を算出する軌道に基づく位相差算出部1230と、位相補正量に基づき、レーダ画像の位相を補正する位相補正部1300と、位相補正したレーダ画像間の相互相関を計算する相互相関計算部1400と、相互相関からレーダ画像間のずれ量を推定するずれ量推定部1500と、ずれ量の推定結果に基づき、レーダ画像同士が互いに重なるようにレーダ画像をずらしてリサンプルするリサンプル部1600と、リサンプル結果を格納する出力格納部1700とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ画像処理装置に関し、特に、観測対象へ電波を照射して得るレーダ画像を処理するためのレーダ画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や人工衛星などの移動プラットフォームには、合成開口レーダや実開口レーダなどのレーダが搭載され、それらにより得られるレーダ画像は、複数枚重ね合わされて処理されることがある。この重ね合せ処理は、地形の起伏計測、微小変化抽出、切断(トモグラフィ)画像作成などに用いられる。
【0003】
重ね合わせ処理は、2段階の処理に分けられ、処理の第一段では、基準画像に対して他の画像を重ね合わせ、当該基準画像に対する他の画像のずれの大きさを推定する。処理の第二段では、基準画像の各画素と他の画像の各画素の示す観測対象(地表上の建造物など)が一致するよう、推定したずれ量に合わせて、重ね合わせた他の画像をずらしてリサンプルする。
【0004】
処理の第一段における、ずれの大きさの従来の推定法は、例えば、図1に示すように、2枚の画像の相互相関を計算して、ずれ量(Δx,Δy)に対する相互相関の分布図を作成し、相互相関の最大値が生じた位置をずれ量推定値
【数1】

とする(例えば、非特許文献1参照)。図1において、レーダ画像Aを基準画像とし、レーダ画像Bを、レーダ画像Aに重ね合わせる他のレーダ画像とする。ずれの推定は、画像全体で一つのずれ量とみなして推定してもよいし、画像を小画像に分割し、小画像ごとにずれ量を推定してもよい。相互相関には、次式(1)および(2)で示される、相互相関係数C(Δx,Δy)もしくは相互相関関数C(Δx,Δy)を用いる。
【0005】
【数2】

【0006】
【数3】

【0007】
ここで、x,yはそれぞれレーダ画像Aとレーダ画像Bの縦軸と横軸、A(x,y),B(x,y)はそれぞれレーダ画像Aとレーダ画像Bの座標(x,y)における画素値である。xmin,xmax,ymin、ymaxは、それぞれ、ずれ量を推定するレーダ画像のx軸最小値、x軸最大値、y軸最小値、y軸最大値を示す。*は複素共役を示す。
【0008】
処理の第二段における、従来のリサンプリング法では、レーダ画像Aの各画素と重ね合わせたレーダ画像Bの各画素の示す観測対象(地表上の建造物など)が一致するよう、推定したずれ量
【数4】

に合わせて、レーダ画像Bをずらしてリサンプルする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D. S. Schwartz, 他“P-3 SAR motion compensation techniques”, Proc of SPIE, vol. 4050, pp. 219-230, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の重ね合せ処理では、ずれ量の推定処理に問題点があった。レーダ画像の取得では、風の影響や軌道制御の精度上の限界のために、画像Aと画像Bを観測した際の移動プラットフォームの軌道が一致しない。すると、レーダ画像の画素には軌道と観測対象の距離に比例した位相が含まれるため、画像Aと画像Bにおいて、同一の観測対象を示す画素間でも位相に差が生じる。この位相差のため、ずれが無くても画像間の相関が低下するので、相互相関係数C(Δx,Δy)や相互相関関数C(Δx,Δy)からずれ量を推定しようとしても、正確なずれ量において相関の最大値が低下して、雑音に埋もれ、他のずれ量において最大となる可能性がある。このため、ずれ量に誤差が生じてしまうという問題点があった。
【0011】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、軌道差で生じた位相差を除去して、正確にずれ量推定を行うことが可能なレーダ画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測した複数のレーダ画像を格納するレーダ画像格納部と、前記軌道の軌道差により発生したレーダ画像間の位相補正量を算出する位相補正量算出部と、前記位相補正量の算出結果に基づき、前記レーダ画像の位相を補正する位相補正部と、位相補正した前記レーダ画像間の相互相関を計算する相互相関計算部と、前記相互相関から前記レーダ画像間のずれ量を推定するずれ量推定部と、前記ずれ量の推定結果に基づき、前記レーダ画像同士が互いに重なるように前記レーダ画像をずらしてリサンプルするリサンプル部とを備えたレーダ画像処理装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測した複数のレーダ画像を格納するレーダ画像格納部と、前記軌道の軌道差により発生したレーダ画像間の位相補正量を算出する位相補正量算出部と、前記位相補正量の算出結果に基づき、前記レーダ画像の位相を補正する位相補正部と、位相補正した前記レーダ画像間の相互相関を計算する相互相関計算部と、前記相互相関から前記レーダ画像間のずれ量を推定するずれ量推定部と、前記ずれ量の推定結果に基づき、前記レーダ画像同士が互いに重なるように前記レーダ画像をずらしてリサンプルするリサンプル部とを備えたレーダ画像処理装置であるので、軌道差で生じた位相差を除去して、正確にずれ量推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】レーダ画像の重ね合わせ処理を説明した説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係るレーダ画像処理装置の構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るレーダ画像処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態3に係るレーダ画像処理装置の構成を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るレーダ画像処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図に基づいて本発明の実施の形態に係るレーダ画像処理装置について説明する。本発明のレーダ画像処理装置は、観測対象へレーダにより電波を照射することによって得るレーダ画像を処理するものであって、レーダ画像の重ね合わせ処理を行うものである。本発明の対象となる、レーダ画像の重ね合わせ処理では、地表などの同一観測対象を複数回観測して複数枚のレーダ画像を得て、それらの複数枚のレーダ画像から一枚の基準画像を定め、当該基準画像にその他の画像を重ねて、そのずれの大きさを推定し、基準画像の各画素が示す観測対象(地表上の建造物など)と重ね合わせ画像における同一の観測対象とが一致するように、推定したずれ量に合わせて重ね合わせ画像をずらして、リサンプルするものである。以降では、基準画像をレーダ画像A、重ね合わせ画像をレーダ画像Bと呼称する。なお、レーダ画像Aおよびレーダ画像Bを取得するためのレーダは、航空機や人工衛星などの移動プラットフォームに搭載されていることを想定する。また、レーダ画像Aおよびレーダ画像Bは、当該移動プラットフォームの互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測して得た画像とする。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態1によるレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図2において、レーダ画像A格納部1110は、重ね合わせ処理における基準画像となるレーダ画像Aを格納する。基準とする画像は、複数枚のレーダ画像の中から本装置の操作者が任意の画像を設定することができる。レーダ画像B格納部1120は、重ね合わせ込まれる画像のレーダ画像Bを格納する。軌道情報A格納部1210および軌道情報B格納部1220は、それぞれ、レーダ画像Aおよびレーダ画像Bを取得した際の移動プラットフォームの軌道情報を格納する。軌道情報としては、例えば慣性航法装置やGlobal Positioning System(GPS)から得た、時刻ごとのプラットフォームの位置情報、もしくは、それを推定できる情報などがあるが、これらに限定されるものではない。また、軌道に基づく位相差算出部1230は、軌道情報A格納部1210と軌道情報B格納部1220に格納された軌道情報を基に、軌道差で生じたレーダ画像Aとレーダ画像B間の位相補正量を計算する。位相補正部1300は、軌道に基づく位相差算出部1230で計算した位相補正量を基にレーダ画像Aおよびレーダ画像Bの位相を補正する。相互相関計算部1400では、位相補正されたレーダ画像Aとレーダ画像B間の相互相関の分布図を計算する。ずれ量推定部1500では、相互相関の分布図からレーダ画像A,B間のずれ量を推定する。リサンプル部1600は、ずれ量推定値を基に、レーダ画像Bをリサンプルする。出力格納部1700は、リサンプルしたレーダ画像Bを格納する。
【0017】
次に、動作について説明する。図3は、実施の形態1によるレーダ画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップの番号は基本的にブロック図中の実行するブロックの符合に対応する(以降同様)。
【0018】
まず、ステップST1100では、レーダにより得られたレーダ画像Aとレーダ画像Bが入力され、それぞれ、レーダ画像A格納部1110およびレーダ画像B格納部1120に格納される。
【0019】
次に、ステップST1200では、軌道に基づく位相差算出部1230が、軌道情報A格納部1210と軌道情報B格納部1220に予め格納されている軌道情報Aと軌道情報Bとを読み込み、当該軌道情報Aと軌道情報Bとから、レーダ画像Aとレーダ画像Bの画素ごとの位相補正量を計算する。レーダ画像A、レーダ画像Bの位相補正量φ(x,y),φ(x,y)は、次式(3)および(4)で計算できる。
【0020】
【数5】

【0021】
【数6】

ここで、λはレーダの波長、r(x,y)はレーダ画像Aの座標(x,y)に位置する画素の示す観測対象と、その画素を観測した時刻におけるプラットフォームの位置との距離である。この観測した時刻におけるプラットフォームの位置は、画像再生の際に定義される位置である。r(x,y)も同様に、レーダ画像Bの座標(x,y)に位置する画素の示す観測対象と、その画素を観測した時刻におけるプラットフォームの位置との距離である。
【0022】
次に、ステップST1300では、位相補正部1300が、ステップST1200で計算した位相補正量を基に、レーダ画像Aとレーダ画像Bの位相を補正する。補正後のレーダ画像A,Bの画素A'(x,y),B'(x,y)は、それぞれ次式(5),(6)となる。
【0023】
【数7】

【0024】
【数8】

【0025】
ただし、jは虚数単位を示す。なお、この補正はレーダ画像A,Bの位相の差を補正するものなので、例えばレーダ画像Aのみ次式(7)により補正し、レーダ画像Bを補正しないことも可能である。
【0026】
【数9】

【0027】
さらに、ステップST1400では、相互相関計算部1400が、位相補正したレーダ画像A,Bの相互相関の分布を計算する。この計算は、例えば、ずれ量(Δx,Δy)を変えながら、上述した式(1)もしくは式(2)で逐次計算してもよい。また、式(2)の計算は、フーリエ変換を用いた次式(8)でも実行できる。
【0028】
【数10】

【0029】
ここで、F[ ],F−1[ ]は、それぞれ、2次元フーリエ変換、2次元逆フーリエ変換を表す。
【0030】
ステップST1500では、ずれ量推定部1500が、ステップST1400で求めた相互相関分布から、相互相関が最大となるずれ量を求め、それをずれ量推定値
【数11】

とする。
【0031】
次に、ステップST1600では、リサンプル部1600が、ずれ量推定値
【数12】

に応じてレーダ画像Bをずらし、レーダ画像Aの各画素と重なるようにレーダ画像Bの各画素を補間処理によりリサンプルする。この補間には、例えば、最近画素の画素を用いる方法や、一次関数または二次関数などの多項式により補間する方法などがある。なお、ステップST1600でリサンプルされたレーダ画像Bは、出力格納部1700に格納される。
【0032】
以上のように、本実施の形態1によれば、相互相関を計算する前に、軌道差により生じる位相差を補正することで、この位相差による相互相関の低下で生じるずれ量推定の誤差を防止し、正確なずれ量推定が可能である。
【0033】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、レーダ観測時の移動プラットフォームの軌道の情報を基に、位相補正量を計算した。本実施の形態2では、軌道情報を使う代わりに、レーダ画像A,B間の干渉縞から位相補正量を推定する。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態2に係るレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。図4において、実施の形態1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し、ここでは、その説明を省略する。実施の形態1との構成の違いは、本実施の形態2においては、実施の形態1で示した、図2の軌道情報A格納部1210および軌道情報B格納部1220が設けられておらず、その代わりに、粗い重ね合わせ部2210が設けられており、また、実施の形態1で示した、図2の軌道に基づく位相差算出部1230が設けられておらず、その代わりに、干渉縞に基づく位相補正量算出部2220が設けられている点である。
【0035】
粗い重ね合わせ部2210は、レーダ画像Aとレーダ画像Bとを粗い精度で重ね合せ処理するものである。また、干渉縞に基づく位相補正量算出部2220は、レーダ画像Aと粗いレジストレーションをしたレーダ画像Bの干渉縞から位相補正量を算出するものである。
【0036】
次に、動作について説明する。図5は、本実施の形態2に係るレーダ画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。ステップST1100は実施の形態1と同じである。
【0037】
ステップST2210では、粗い重ね合わせ部2210が、レーダ画像Aとレーダ画像Bとを粗い精度で重ね合わせる。なお、一般に、2枚のずれのないレーダ画像の位相差を計算すると、干渉縞が生じる。そして、レーダ画像間のずれが大きいほど干渉縞が雑音に埋もれて確認できなくなる。このステップST2210でいう粗い重ねあわせとは、干渉縞が確認できる程度の粗さを指す。また、粗い重ね合わせの方法としては、レーダ画像Aとレーダ画像Bの振幅成分のみからなる画像(振幅画像)において、画像中の単数もしくは複数の特徴点(例えば建造物の角や電柱など)が重なり合うようにリサンプルするなどの方法がある。
【0038】
次に、ステップST2220では、干渉縞に基づく位相補正量算出部2220が、干渉縞を基に位相補正量を推定する。レーダ画像の干渉縞は、2回の観測の間に生じた位相の変化である。この位相の変化は、地表の変化、視線の変化による見え方の変化、及び/または、軌道差による位相差である。この軌道差による位相差が、位相補正量である。レーダ画像A,Bの位相差の分布を見ると、地表の変化、見え方の変化はランダムな分布になり、軌道差による位相差は周期性を持った縞模様として現れる。このため、レーダ画像A,Bの位相差の分布を2次元フーリエ変換すると、軌道差による位相差の周波数成分が、他の二つの位相変化の周波数成分よりもスペクトル上で大きいパワーを持つ。よって、この大きいパワーの周波数成分を取り出し、2次元逆フーリエ変換することで、軌道差による位相差を取り出すことが出来る。この位相差が、式(7)中のφ(x,y)−φ(x,y)に相当する。
【0039】
ステップST1300では、実施の形態1と同様の手順で、位相補正部1300が、計算された位相補正量を基に、レーダ画像Aとレーダ画像Bの位相を補正する。但し、本実施の形態の場合、当該位相補正量は、ステップST2220で計算されたものである。
【0040】
なお、以降のステップST1400からステップST1600までの処理は、上述の実施の形態1と同じであるため、ここでは、説明を省略する。
【0041】
以上のように、本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、相互相関を計算する前に、軌道差により生じる位相差を補正することで、この位相差による相互相関の低下で生じるずれ量推定の誤差を防止し、正確なずれ量推定が可能である。また、本実施の形態2においては、レーダ画像A,B間の干渉縞から位相補正量を推定するようにして、軌道情報を必要としないことから、軌道情報の計測誤差に影響されずに正確なずれ量推定が可能である。また、軌道情報を必要としないことから、データ保存容量に制限のある装置でも、正確なずれ量推定が可能となり、さらに、軌道情報の無いレーダ画像についても正確なずれ量推定が可能である。
【0042】
実施の形態3.
本実施の形態3では、上述の実施の形態2の粗い合わせ込みの代わりに、少しずつずらす度に位相補正および相互相関の計算を実施することで、画像に特徴点などが無く粗い合せ込みが出来ない場合でも、軌道情報を用いない位相差補正を実現し、ひいては、正確なずれ量推定を可能にする。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態3によるレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。図6において、実施の形態1または実施の形態2と同一もしくは相当部分は同一符号で示し、ここでは、その説明を省略する。実施の形態2との構成の違いは、本実施の形態3においては、実施の形態2で示した、図4の粗い重ね合わせ部2210が設けられておらず、その代わりに、ずれ量設定部3200とリサンプル部3600とが設けられており、また、実施の形態2で示した、図4の相互相関計算部1400が設けられておらず、その代わりに、相互相関逐次計算部3400が設けられている点である。
【0044】
ずれ量設定部3200は、複数のずれ量(Δx,Δy)を予め設定するものであって、レーダ画像B格納部1120に格納されたレーダ画像Bのデータと、相互相関逐次計算部3400の更新信号とを入力とし、設定したずれ量(Δx,Δy)を順次出力する。なお、ずれ量設定部3200に接続されたリサンプル部3600は、この設定したずれ量に合わせてリサンプルする。相互相関逐次計算部3400は、干渉縞に基づく位相補正量算出部2220による位相補正されたレーダ画像Aとレーダ画像Bとから相互相関を計算し、設定したずれ量の更新信号と相互相関の分布図とを出力する。
【0045】
次に、動作について説明する。図7は、本実施の形態3に係るレーダ画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。ステップST1100は、実施の形態1および2と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
ステップST3200では、ずれ量設定部3200が、レーダ画像Bをずらすためのずれ量を設定する。ずれ量の設定は、設定するずれ量(Δx,Δy)を複数個予め決めておき、それらを順次設定する。
【0047】
ステップST3600では、リサンプル部3600が、設定されたずれ量に応じてレーダ画像Bをずらし、レーダ画像Aの各画素と重なるようにレーダ画像Bの各画素を補間処理によりリサンプルする。この補間には、例えば、最近画素の画素を用いる方法や、一次関数または二次関数などの多項式により補間する方法などがある。
【0048】
ステップST2220およびステップST1300は実施の形態2と基本的に同じである。すなわち、ステップST2220で、位相補正量算出部2220が、リサンプルされたレーダ画像Bと基本画像であるレーダ画像Aとを重ね合わせて干渉させ、干渉縞から位相補正量を推定する。ステップST1300では、実施の形態2と同様に、位相補正部1300が、ST2220で計算された位相補正量を基に、レーダ画像Aとレーダ画像Bの位相を補正する。
【0049】
ステップST3410では、相互相関逐次計算部3400が、位相補正されたレーダ画像Aと、ステップST3200で設定したずれ量分だけずらした上で位相補正されたレーダ画像Bとの相互相関を計算する。また、計算した相互相関の値と、そのとき設定されていたずれ量とを基に、ずれ量と相互相関の分布図を作成する。
【0050】
ステップST3420では、予め設定したずれ量が順次全て設定され、全てのずれ量に対する相互相関の計算および分布の作成が完了したか否かを確認する。完了していなければ、ステップST3200の処理に戻り、まだ設定されておらず相互相関の計算等が完了していないずれ量の値に設定して、ステップST3600からステップST3410までの処理を行う。一方、ステップST3420の判定の結果、全てのずれ量に対する相互相関の計算および分布の作成が完了していれば、ステップST1500へ進み、ステップST1500およびステップST1600の処理を行う。ステップST1500およびステップST1600の処理については、実施の形態1および2と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
【0051】
以上のように、本実施の形態3によれば、上述の実施の形態1および実施の形態2と同様に、相互相関を計算する前に、軌道差により生じる位相差を補正することで、この位相差による相互相関の低下で生じるずれ量推定の誤差を防止し、正確なずれ量推定が可能である。また、本実施の形態3においても、実施の形態2と同様に、軌道情報を必要としないことから、軌道情報の計測誤差に影響されずに正確なずれ量推定が可能であり、また、データ保存容量に制限のある装置でも正確なずれ量推定が可能で、さらに、軌道情報の無いレーダ画像についても正確なずれ量推定が可能である。加えて、本実施の形態3においては、粗い合わせ込みの代わりに、少しずつずらす度に位相補正および相互相関の計算を実施するようにしたので、レーダ画像に特徴点などが無く、実施の形態2で示したような粗い重ね合せが出来ない場合でも、正確なずれ量推定が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1110 レーダ画像A格納部、1120 レーダ画像B格納部、1210 軌道情報A格納部、1220 軌道情報B格納部、1230 軌道に基づく位相差算出部、1300 位相補正部、1400 相互相関計算部、1500 ずれ量推定部、1600 リサンプル部、1700 出力格納部、2210 粗い重ね合わせ部、2220 干渉縞に基づく位相補正量算出部、3200 ずれ量設定部、3400 相互相関逐次計算部、3600 リサンプル部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測した複数のレーダ画像を格納するレーダ画像格納部と、
前記軌道の軌道差により発生したレーダ画像間の位相補正量を算出する位相補正量算出部と、
前記位相補正量の算出結果に基づき、前記レーダ画像の位相を補正する位相補正部と、
位相補正した前記レーダ画像間の相互相関を計算する相互相関計算部と、
前記相互相関から前記レーダ画像間のずれ量を推定するずれ量推定部と、
前記ずれ量の推定結果に基づき、前記レーダ画像同士が互いに重なるように前記レーダ画像をずらしてリサンプルするリサンプル部と
を備えたことを特徴とするレーダ画像処理装置。
【請求項2】
前記位相補正量算出部は、
前記レーダ画像の軌道情報を格納する軌道情報格納部と、
前記軌道情報が入力され、軌道差に基づくレーダ画像間の位相補正量を計算する補正量算出部と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項3】
前記位相補正量算出部は、
前記レーダ画像同士が干渉して干渉縞が確認できる程度に前記レーダ画像を粗く重ね合わせる粗い重ね合わせ部と、
前記干渉縞に基づくレーダ画像間の位相補正量を計算する補正量算出部と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項4】
互いに異なる軌道から同一の観測対象を観測した複数のレーダ画像を格納するレーダ画像格納部と、
前記複数のレーダ画像の中の1つを基準画像としたときに、当該基準画像に重ね合わせる他のレーダ画像をずらすためのずれ量を設定するずれ量設定部と、
設定した前記ずれ量に基づき、前記他のレーダ画像をずらしてリサンプルする第1のリサンプル部と、
リサンプルされた前記他のレーダ画像と前記基準画像とを重ね合わせて干渉させ、当該干渉縞に基づく前記他のレーダ画像と前記基準画像との間の位相補正量を計算する位相補正量算出部と、
位相補正量の算出結果に基づき、前記他のレーダ画像と前記基準画像の位相をそれぞれ補正する位相補正部と、
位相補正した前記他のレーダ画像と前記基準画像との間の相互相関を計算する相互相関計算部と、
前記相互相関から前記他のレーダ画像と前記基準画像とのずれ量を推定するずれ量推定部と、
前記ずれ量の推定結果に基づき、前記他のレーダ画像と前記基準画像とが互いに重なるようにずらしてリサンプルする第2のリサンプル部と
を備えたことを特徴とするレーダ画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281584(P2010−281584A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132922(P2009−132922)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】