説明

レーダ装置、及びその制御方法

【課題】限定された周波数帯域において、他のレーダ装置との信号の干渉を高い確度で防止する。
【解決手段】レーダ信号の送信と前記送信の休止とを交互に繰り返すレーダ装置において、
前記レーダ信号の周波数と、前記送信を行う送信時間のうち少なくともいずれか1つが異なるように前記周波数と前記送信時間とが組み合わせられた複数の組合せを格納した記憶部と、
送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せから選択する制御部とを有し、前記制御部は、所定のタイミングごとに、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せのうちの第1の組合せから第2の組合せに変更するので、レーダ装置相互の信号の周波数または送信時間の少なくとも1つの重複を高い確度で回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号の送信と休止を交互に繰り返すレーダ装置と、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、先行車両に対する追従走行制御を行うために、自車両前方の先行車両の相対速度や相対距離を検出する車載レーダ装置が用いられる。かかる車載レーダ装置としては、簡単な信号処理回路により小型かつ低廉に構成されるFM−CW(Frequency Modulation-Continuous Wave)方式のレーダ装置が広く採用される。FM−CWレーダ装置は、三角波に従って周波数変調された連続波をレーダ信号として送信し、その送信信号に対する反射信号の受信を行い、送信信号と受信信号の周波数差から物標の相対速度と相対距離を検出する。
【0003】
一般的なFM−CWレーダ装置では、50MHz〜200MHz程度の変調幅で送信信号の周波数が変調される。よって、同じFM−CWレーダ装置を搭載した複数の車両が接近しており、それぞれのレーダ装置の変調幅が重複している場合には、それぞれのレーダ装置から同じ周波数の送信信号が送信される。すると、信号同士が互いに干渉し合い、干渉を受けた信号を用いて先行車両との相対距離、相対速度を検出しようとすると、誤検出が生じてしまう。よって、こうしたレーダ装置間の信号の干渉を回避する方法が要望される。
【0004】
その例として、特許文献1には、自車両のレーダ装置が送信する送信信号の周波数変調周期(三角波の周期)をランダムに変更することにより、他車両のレーダ装置からの送信信号との干渉の確率を小さくする方法が記載されている。また、特許文献2、3には、他車両のレーダ装置からの送信信号との干渉が検出されると、自車両のレーダ装置が送信する送信信号の周波数を変化させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−33546号公報
【特許文献3】特開2002−168947号公報
【特許文献3】特開2004−170183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の車載レーダ装置間での信号の干渉を防止するためには、個々の車載レーダ装置が送信する送信信号の周波数変調幅が重複しないことが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、送信信号の周波数変調周期を変更しても、自車両のレーダ装置が送信する信号の変調幅と、他車両のレーダ装置からの信号の変調幅との重複は解消されない。よって、自車両のレーダ装置は、自らの送信信号と同じ周波数の他車両のレーダ装置からの送信信号を受信してしまうという問題がある。
【0006】
かといって、車載レーダの送信信号の周波数は、電波法の規定により76.0GHz〜77.0GHzの帯域に制限されており、その一方で、個々のレーダ装置の変調幅は50MHz〜200MHz程度を必要とする。よって、法上使用可能な帯域内で複数のレーダ装置の変調幅を重複なく配置できるパターンは自ずと限定される。よって、個々のレーダ装置が無秩序に送信信号の周波数を設定したのでは、効率良く変調幅の重複を回避し、高い確度で干渉を防止することができない。
【0007】
さらに、特許文献2、3に記載された方法では、干渉を検出した場合に送信信号の周波数を変更しても、他車両のレーダ装置も同じ動作を行えば、変更した周波数での干渉が再発してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、限定された周波数帯域において、他のレーダ装置との信号の干渉を高い確度で防止でき、さらに、干渉を検出した場合であっても、高い確度で干渉の再発を防止できるレーダ装置、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、レーダ信号の送信と前記送信の休止とを交互に繰り返すレーダ装置において、前記レーダ信号の周波数と、前記送信を行う送信時間のうち少なくともいずれか1つが異なるように前記周波数と前記送信時間とが組み合わせられた複数の組合せを格納した記憶部と、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せから選択する制御部とを有する。そして、前記制御部は、所定のタイミングごとに、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せのうちの第1の組合せから第2の組合せに変更することを特徴とする。
【0010】
上記側面の好ましい実施態様では、前記レーダ装置は、前記レーダ信号に対する他の信号の干渉を検出する干渉検出部をさらに有し、前記制御部は、前記干渉が検出されたとき更に、前記組合せの変更を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記側面によれば、レーダ信号の周波数と送信時間のうち少なくともいずれか1つが異なるように前記周波数と前記送信時間とが組み合わせられた複数の組合せを格納した記憶部を備えたレーダ装置同士では、それぞれが異なる組合せを用いることで、レーダ装置相互の送信信号の周波数または送信時間の少なくとも1つの重複を確実に回避できる。そして、これらレーダ装置は、その組合せを、所定のタイミングごとに変更するので、それぞれが同じ組合せを用いる確率を小さくでき、レーダ装置相互の信号の干渉を高い確度で防ぐことができる。また、上記実施態様によれば、干渉が検出されたときにも、前記組合せの変更を行うので、干渉の再発を高い確度で防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0013】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を説明する図である。図1のレーダ装置1は、周波数変調された送信信号の送信と、先行車両などの物標で反射された反射信号の受信を行い、送信信号と受信信号の周波数差に基づいて物標の相対距離と相対速度を検出するFM−CW方式のレーダ装置である。このレーダ装置1は、例えば車両に搭載され、先行車両の相対速度、相対距離の検出に用いられる。
【0014】
このレーダ装置1では、周波数変調器2が周波数変調信号を生成し、発振器4がその周波数変調信号に応じて周波数変調された送信信号を生成する。そして、送信信号は送信アンテナ6により車両前方へ送信される。
【0015】
このとき、周波数変調器2は、周波数変調信号の生成を行う所定の時間区間と、生成を休止する所定の時間区間を交互に繰り返す。ここで、図2(A)により、送信信号の送信タイミングと周波数を示す。なお、図2(A)において横軸は時間を示す。図2(A)に示すように、周波数変調器2の前記動作により、三角波に従って周波数変調された送信信号が送信される送信時間と、送信が休止される休止時間が交互に繰り返される。そして、本実施形態では、1組の送信時間と休止時間が送信周期に対応する。また、休止時間には、次に述べる受信信号の処理が行われる。
【0016】
送信信号が先行車両などの物標で反射されると、その反射信号は受信アンテナ8により受信される。そして、受信信号はミキサ10に入力され、送信信号の一部分と混合される。そして、送信信号と受信信号との周波数差であるビート信号が生成され、ビート信号は周波数計測器12と干渉検出部14に入力される。
【0017】
ここで、図2(B)、(C)を用い、送信信号と受信信号、及びこれらから生成されるビート信号について説明する。図2(B)には上記の送信時間間に送信される送信信号W1とその受信信号W2の周波数、図2(C)にはこれらの周波数差であるビート信号B1の周波数が示される。なお、図2(B)、(C)において、横軸は時間を示す。
【0018】
図2(B)に示すように、送信信号W1は、周期1/fm、中心周波数f0、振幅ΔFの三角波に従って周波数変調された連続波であり、振幅ΔFを周波数変調幅として上昇と下降を繰り返す。そして、受信信号W2は、物標の距離に応じた時間的遅れ(ΔT)と相対速度に応じたドップラ効果の影響による周波数偏移(ΔD)を受ける。すると、このような送信信号W1と受信信号W2からは、図2(C)に示すように、送信信号W1の周波数の上昇区間で周波数fb1、下降区間で周波数fb2となるビート信号B1が得られる。
【0019】
ビート信号B1は、周波数計測器12によりFFT(高速フーリエ変換)されて周波数成分が抽出される。そして、抽出された周波数成分が制御部20に入力される。
【0020】
制御部20は、一例としてマイクロコンピュータで構成される。そして、制御部20の機能は、図示されないCPUが、不揮発性メモリである記憶部19に格納された各種の処理プログラムや制御プログラムに従って動作することで実現される。
【0021】
制御部20は、ビート信号B1の周波数成分が入力されると、次の2式により先行車両の相対距離Rと相対速度Vを算出する。なお、次の2式において、Cは光速である。
【0022】
式1: R=C・(fb1+fb2)/(8・ΔF・fm)
式2: V=C・(fb2−fb1)/(4.f0)
そして、これらの算出結果は、車両の追従走行制御を行う不図示の走行制御ECU(Electronic Control Unit)に入力される。そして、走行制御ECUは、先行車両との車間距離が所定の距離に保たれるように車両各部の動作を制御する。
【0023】
ここで、図1と同様の構成を有する他のレーダ装置を搭載した他車両が自車両に接近した場合について、図3を用いて説明する。図3には、自車両のレーダ装置1の受信信号W2と、他車両のレーダ装置からの送信信号W3の周波数が示される。図3に示すように、同じレーダ装置同士では、周波数変調幅が重複する場合が生じる。すると、自車両のレーダ装置1の受信信号W2に他車両のレーダ装置からの送信信号W3が干渉し(矢印C)、図2(C)に示したビート信号B1の周波数fb1、fb2がその影響を受けて偏移する。すると、上記の式1、式2からも明らかなように相対距離Rと相対速度Vが誤検出されてしまう。よって、本実施形態では、次のようにして、他車両のレーダ装置からの送信信号との干渉を未然に防ぐことを特徴とする。
【0024】
本実施形態では、一例として、送信信号の周波数変調は100MHzの変調幅で行われる。また、図2(A)で示した1つの送信周期は100ミリ秒(送信時間は20ミリ秒、休止時間は80ミリ秒)に設定される。そして、制御部20の記憶部19には、送信信号の周波数、つまり変調幅の中心周波数と、送信時間、つまり1つの送信周期における送信開始時との複数の組合せが、図4(A)に示すようなマトリクス19aとして格納される。
【0025】
マトリクス19aにおいては、横の行に4通りの周波数が対応づけられる。横の行ごとの周波数と、これを中心とする周波数変調幅相互の関係を図4(B)に示すと、それぞれが重複しないように配置される。
【0026】
また、マトリクス19aの縦の列には、3通りの送信開始時が対応づけられる。送信開始時は、1つの送信周期の100ミリ秒間で、20ミリ秒間の送信時間が開始される時間に対応する。この送信開始時に対応する送信時間(および休止時間)相互の関係を図4(C)に示す。すると、第1列の送信開始時0ミリ秒では、各送信周期の開始0ミリ秒から20ミリ秒までが送信時間、20ミリ秒から100ミリ秒までが休止時間となる。また、第2列の送信開始時40ミリ秒では、各送信周期の開始0ミリ秒から40ミリ秒までは休止時間、40ミリ秒から60ミリ秒が送信時間、60ミリ秒から100ミリ秒までが休止時間となる。さらに、第3列の送信開始時80ミリ秒では、各送信周期の開始0ミリ秒から80ミリ秒までは休止時間、80ミリ秒から100ミリ秒までが送信時間となる。よって、縦の列ごとの送信開始時それぞれの送信時間が重複しないように、つまり1つの列の送信時間は他の列の休止時間に対応するように配置される。
【0027】
そして、マトリクス19aには、上記のような周波数と送信開始時の12通りの組合せS11、…、S34が格納される。
【0028】
制御部20は、レーダ装置1の始動時に、上記のようなマトリクス19aから、1つの組合せを選択し、その組合せの周波数と送信時間で周波数変調信号の生成を周波数変調器2に行わせることにより、送信信号が送信される。このとき、組合せの選択は、レーダ装置1の機種や製造番号などの属性情報、搭載される車両種別などの属性情報に基づく初期設定によって行われる。あるいは、始動時刻やその他の乱数に基づきランダムに決定することも可能である。
【0029】
そして、制御部20は、通信装置30を介して電波時計台から絶対時刻を取得し、絶対時刻の秒の開始に合わせて周波数変調器2に送信周期を開始させる。すなわち、毎秒の開始に同期して100ミリ秒の送信周期が開始され、1秒間に10周期の送信と休止が実行される。そして、各送信周期では、選択した組合せに対応する送信開始時に20ミリ秒の送信時間が開始される。このように、絶対時刻の秒の開始に送信周期の開始を同期させることで、列が異なる組合せ相互では送信時間の重複が回避される。
【0030】
ここで、上記動作を行うレーダ装置1を搭載した複数の車両が互いに接近する場合を考えると、それぞれのレーダ装置が始動時に選択した組合せが異なれば、送信信号の周波数または送信時間の少なくとも1つは重複しないので、これらのレーダ装置から同時に同じ周波数の信号が送信されることはない。このように、マトリクス19aを複数のレーダ装置が共有し、これに従って送信信号の周波数を設定することにより、個々の装置が無秩序に周波数を設定する場合より効率よく法上使用可能な周波数帯域内での変調幅の割り当てを行うことができる。よって、レーダ装置間での送信信号の干渉を回避することができ、相対速度や相対距離の誤検出を防ぐことができる。
【0031】
また、制御部20は、1つまたは複数の送信周期ごと、あるいは、一定時間ごとに、周波数と送信開始時の組合せを、マトリクス19aの他の組合せに変更する。ここで、他の組合せは、マトリクス19aの行または列の順序に従って、S11、S21、S31、S12、…、S32、S13、…、S33、S14、…、S34、S11、…のような順番に選択してもよい。あるいは、現在時刻や各種ノイズなどを用いて公知の方法により発生させた乱数に基づいて新たな組合せを選択してもよい。
【0032】
このように周波数と送信時間の組合せを随時変更することにより、複数のレーダ装置相互において、同じ周波数と送信開始時の組合せを用いる確率を小さくでき、干渉をより高い確度で回避することができる。なお、上述の始動時の組合せ選択や、組合せの変更タイミング、あるいは変更する組合せの選択方法を、装置ごとに異なる設定とすれば、複数のレーダ装置が同じ周波数と送信開始時の組合せを同時に用いる確率をさらに小さくできる。
【0033】
図1に戻り、上記レーダ装置1にはさらに、干渉検出部14が設けられる。干渉検出部14は、一例としてビート信号B1の振幅または周波数が予め設定された閾値を超えたときに干渉の検出を行い、その結果を制御部20に入力する。
【0034】
従来の技術では、複数のレーダ装置がそれぞれ干渉を避けるために送信信号の周波数をずらすが、各レーダ装置が同じ動作を行えば、変更した周波数での干渉が再発してしまう。また、周波数をずらす幅が不十分だと、変調幅の重複を完全に解消するために周波数をずらす動作を反復しなくてはならない。
【0035】
そこで、本実施形態では、制御部20は上述したマトリクス19aから送信信号の周波数と送信時間をランダムに選択して用いることを特徴とする。その際、上述したように、現在時刻や各種ノイズなどを用いて公知の方法により発生させた乱数に基づいて新たな組合せを選択することが可能である。あるいは、一旦マトリクス19a内の行列の番号S11、S12、…、S34を乱数により組みなおし、その後に行列の番号順に組合せを選択してもよい。
【0036】
そして、上述したように、マトリクス19aに格納される組合せは、相互に送信信号の周波数と送信時間の少なくともいずれか1つが異なるように構成されているので、複数のレーダ装置がそれぞれ異なる組合せを選択することにより、確実に周波数変調幅の重複を解消できる。よって、複数のレーダ装置それぞれが、高い確度で干渉の再発を防止することができる。
【0037】
図5は、本実施形態のレーダ装置1の動作手順を説明するフローチャート図である。図5に示す手順は、レーダ装置1が起動されると実行される。まず制御部20は、マトリクス19aから初期設定の組合せを選択する。それとともに、干渉検出の回数をカウントするカウンタ変数を「0」に初期設定する(S2)。そして、カウンタ変数の値が「3」未満のとき(S4のYES)、つまり干渉が3回以上検出されていないときは、選択したパターンに対応する周波数と送信時間で送信信号が送信される(S6)。一方、カウンタ変数の値が「3」以上のとき(S4のNO)、つまり干渉が3回以上検出されたときは、他のレーダ装置が周波数と送信時間の同じ組合せを用い、なおかつ組合せの変更パターンが同じ可能性が大きいので、干渉が継続して発生することを防ぐために、送信信号の送信を停止する(S20)。
【0038】
そして、受信信号から干渉が検出されずに(S10のNO)、所定時間あるいは所定の送信周期が経過すると(S12のYES)、マトリクス19aから他の周波数と送信時間の組合せを選択する(S14)。そして、手順S4に戻り、上記の一連の手順を繰返す。一方、手順S10で干渉が検出されると(S10のYES)、組合せの変更を行い、カウンタ変数の値を「1」インクリメントする(S18)。そして、手順S4に戻り、上記の一連の手順を繰返す。
【0039】
なお、上述した送信信号の周波数、送信時間、送信周期等は一例であって、上記以外でも本実施形態が適用できる。また、図5の手順S4における干渉検出回数も、任意に設定することが可能である。あるいは、手順S20で送信を停止する代わりに、マトリクス19aの組合せの順番を乱数により組みなおす手順としてもよい。
【0040】
図6は、本実施形態の変形例におけるレーダ装置1の動作手順を説明するフローチャート図である。図5に示した手順と同じ手順は同じ符号を付してある。
【0041】
レーダ装置1が起動されると、制御部20はマトリクス19aから初期設定の組合せを選択するとともに、選択した組合せを制御部20内の作業用メモリに記憶する(S2a)。そして、選択したパターンに対応する周波数と送信時間で送信信号が送信される(S6)。
【0042】
そして、受信信号から干渉が検出されずに(S10のNO)、所定時間あるいは所定の送信周期が経過すると(S12のYES)、マトリクス19aから他の周波数と送信時間の組合せを選択し、新たに選択した組合せでメモリの履歴を更新する(S14a)。そして、手順S4に戻り、上記の一連の手順が実行される。一方、手順S10で干渉が検出されると(S10のYES)、組合せの履歴をメモリから読み取って、選択されていない組合せがあるかを判断する。選択されてない組合せがあるときは(S16のYES)、そのいずれかを選択するととともに、選択した組合せをメモリの履歴に追加する(S18a)。そして、手順S4に戻り、上記の一連の手順が実行される。また、選択されていない組合せがないときは(S16のNO)、交通渋滞など、自車両のレーダ装置1の周囲に複数の他のレーダ装置が存在し、他のレーダ装置によりマトリクス19aの組合せが使用されているので、干渉が継続して発生することを防止するために送信を停止する(S20)。
【0043】
なお、図5、図6の手順S10で干渉が検知されない場合に、所定時間経過するごとにマトリクス19aでの組合せを変更する、図5の手順S12、S14、または図6の手順S12、S14aを省略してもよい。すなわち、干渉が検知されない場合(S10のNO)は組合せを変更せず、干渉が検知された場合に(S10のYES)上述のようにして組合せを変更する手順としてもよい。このような手順により、干渉が検知されるまでは周波数と送信時間の組合せを変更しないので、制御部20の処理を軽減できる。そして、干渉が検知されたときは、組合せを変更することにより、干渉の再発を高い確度で回避できる。
【0044】
なお、図5、図6の手順S20で送信を停止した後、一定時間経過後にカウンタ変数や組合せの履歴をクリアして、送信を再開してもよい。近隣の車両が移動するのに十分な時間を設定しておくことにより、送信を再開しても干渉が生じる確率を小さくすることができる。また、休止時間に他車両のレーダ装置からの送信信号を受信し、制御部20がその周波数を検出する構成としてもよい。その際、検出された周波数が自車両のレーダ装置1の送信信号の周波数と干渉しなくなることを確認してから、自車両のレーダ装置1の送信を再開してもよい。
【0045】
図7は、レーダ装置1が車両に搭載された例を示す図である。レーダ装置1は車両100の前部に搭載され、車両100前面のバンパーやフロントグリル、ナンバープレート板脇などに設けられるレドームを透過して、車両100の前方へのレーダ信号の送信と、反射信号の受信が行われる。また、レーダ装置1は車両100の前方だけでなく、後部や側面部に搭載されてもよく、車両100の後方や側方を探索するように構成することも可能である。その場合も上述した実施形態と同様に実施可能であり、同様の作用効果を奏する。
【0046】
また、上述の説明におけるレーダ装置1は、送信アンテナ6が送信するレーダ信号を生成し、受信アンテナ8が受信する受信信号を処理する構成であり、送信アンテナ6と受信アンテナ8とを含まない。しかし、レーダ装置1が送信アンテナ6と受信アンテナ8とを含む構成としても、本実施形態は適用できる。
【0047】
なお、上述の説明における送信時間と休止時間、およびこれらからなる送信周期の長さは上記の例に限られない。また、上述の説明においてはFM−CWレーダ装置を例としたが、送信時間と休止時間とを繰返しながら送信信号を送信するレーダ装置に本実施形態は適用できる。さらに、車載レーダ装置としてだけではなく、他のレーダ装置との干渉の回避が必要なレーダ装置に、本実施形態は適用できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーダ装置相互の送信信号の周波数または送信時間の少なくとも1つの重複を高い確度で回避でき、その結果、レーダ装置相互の信号の干渉を防ぐことができる。また、干渉が検出されたときであっても、干渉の再発を高い確度で防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置の構成を説明する図である。
【図2】送信信号等の周波数およびタイミングを説明する図である。
【図3】自車両のレーダ装置1の受信信号と、他車両のレーダ装置からの送信信号の関係を説明する図である。
【図4】送信信号の周波数と送信時間の組合せのマトリクスについて説明する図である。
【図5】本実施形態のレーダ装置1の動作手順を説明するフローチャート図である。
【図6】本実施形態の変形例におけるレーダ装置1の動作手順を説明するフローチャート図である。
【図7】レーダ装置1が車両に搭載された例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:レーダ装置、2:周波数変調器、4:発振器、6:送信アンテナ、8受信アンテナ、10:ミキサ、12:周波数計測器、14、干渉検出部、19:記憶部、20:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号の送信と前記送信の休止とを交互に繰り返すレーダ装置において、
前記レーダ信号の周波数と、前記送信を行う送信時間のうち少なくともいずれか1つが異なるように前記周波数と前記送信時間とが組み合わせられた複数の組合せを格納した記憶部と、
送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せから選択する制御部とを有し、
前記制御部は、所定のタイミングごとに、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せのうちの第1の組合せから第2の組合せに変更することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記所定のタイミングは、前記レーダ信号の送信時間と送信の休止時間とを含む送信周期、または経過時間に基づくタイミングであることを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記レーダ信号に対する他の信号の干渉を検出する干渉検出部をさらに有し、
前記制御部は、前記干渉が検出されたとき更に、前記組合せの変更を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、前記組合せの変更を所定回数行ったときは、前記レーダ信号の送信を停止することを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記制御部は、前記干渉が検出される度に前記組合せの変更を繰り返し、前記記憶部に格納された複数の組合せのうち所定数以上の組合せで前記干渉が検出されたときは、前記レーダ信号の送信を停止することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記制御部は、前記組合せの変更を行うときは、前記複数の組合せの所定の順序、前記レーダ装置の属性情報、前記レーダ装置が搭載される車両等の属性情報、絶対時刻、または乱数に基づいて前記第2の組合せを選択することを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
レーダ信号の送信と前記送信の休止とを交互に繰り返すレーダ装置の制御方法において、
前記レーダ信号の周波数と、前記送信を行う送信時間のうち少なくともいずれか1つが異なるように前記周波数と前記送信時間とが組み合わせられた複数の組合せから、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を選択する工程と、
所定のタイミングごとに、送信されるレーダ信号の周波数と送信時間を、前記複数の組合せのうちの第1の組合せから第2の組合せに変更する工程とを有することを特徴とするレーダ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292264(P2008−292264A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137392(P2007−137392)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】