説明

レーダ装置及び物標検出方法

【課題】アンテナを回転して送信ビームを放射するレーダ装置及び物標検出方法において、各方位における送受信に要する時間を長くすることなく、クラッタなどからの物標の受信信号成分の分離を行ない易くすることである。
【解決手段】アンテナ20は、回転軸24の周りを回転しつつ各方位において、1パルスの送信ビーム25を放射して反射体からの反射エコーを受信する。仰俯角方向走査部30は、1パルスの送信ビーム25を、仰俯角に応じて周波数が異なるように、方位毎に仰俯角方向に走査する。受信部60は、周波数成分検出部62によって、アンテナ20で受信した受信信号の周波数成分から反射体の仰俯角を検出する。同時に、受信部60は、振幅成分検出部61によって、受信信号の時間成分から反射体の距離を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを回転して周囲の物標の検出を行なうレーダ装置及び物標検出方法に関し、特に船舶などの揺動する輸送機器で使用されるレーダ装置及び物標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置では一般的に、放射された電波の反射波をとらえることによって物標(海上の他船、ブイなど)が検出され、検出された物標がディスプレイ上に表示される。特に船舶などの揺動する輸送機器で使用されるレーダ装置では、多くの場合、特許文献1(特許第3559236号公報)に記載されているように、揺動があっても物標を捉え易くするために垂直方向に広い指向性を持つファンビーム方式が採用されている。このファンビーム方式のレーダ装置においては、無変調パルス信号の振幅情報により物標の認識が行なわれる。
【0003】
一方、船舶のように揺動することのない地上に設置された鳥類高度検出レーダ装置ではあるが、ペンシルビームを放射する仰角をパルス毎に切換えて送信と受信とを繰り返すビーム切替式アンテナを備えたものが、例えば特許文献2(特開2010−525336号公報)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ファンビーム方式のレーダ装置では、垂直方向の物標の分離を行うことが困難である。そればかりでなく、ファンビーム方式によれば、受信信号の信号強度は垂直方向の積分値によって与えられることになり、雨のように高さ方向に広く分布するクラッタの影響が大きくなるという不具合を生じる。
【0005】
上述の問題を解決するために、垂直方向(高度)によって物標を分離しようとすると、特許文献1や特許文献2に記載されているように、分離したい垂直方向の分解能に応じて繰り返しパルス信号を送受信しなければならなくなる。パルス信号の送受信の回数が多くなるほど各方位における物標検出時間が長くなってしまい、船舶のようにアンテナの周囲を広範に監視する必要のある場合には実用に耐えなくなる。
【0006】
本発明の目的は、アンテナを回転して送信ビームを放射するレーダ装置及び物標検出方法において、各方位における送受信に要する時間を長くすることなく、クラッタなどからの物標の受信信号成分の分離を行ない易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためのレーダ装置は、特定面に対する仰俯角に応じた周波数を有する送信ビームを放射して反射体からの反射エコーを受信するアンテナと、アンテナで受信した受信信号の周波数成分から反射体の仰俯角を検出するとともに受信信号の時間成分から反射体の距離を検出する受信部とを備える。
【0008】
このレーダ装置によれば、受信部において、受信信号の周波数成分から反射体の仰俯角が検出でき、受信信号の時間成分から反射体の距離が検出できる。
【0009】
上記の課題を解決するための物標検出方法は、特定面に対する仰俯角に応じた周波数を有する送信ビームを放射する送信工程と、反射体からの反射エコーをアンテナで受信して、アンテナで受信した受信信号の周波数成分から反射体の仰俯角を検出するとともに受信信号の時間成分から反射体の距離を検出する受信工程とを備える。
【0010】
この物標検出方法によれば、受信工程において、受信信号の周波数成分から反射体の仰俯角が検出でき、受信信号の時間成分から反射体の距離が検出できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射体の方位及び距離に加えて仰俯角を検出するため、クラッタなどからの物標信号成分の分離が容易になる。このような仰俯角の検出を行なうからといって送受信のパルス数を増やすのではなく、送信ビームで仰俯角方向に走査することによって、各方位における送受信に要する時間が長くなるのを防いでいる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の用途の一例を示す概念図。
【図2】第1実施形態に係るレーダ装置の構成の概略を示す概略図。
【図3】レーダ装置の受信部で捉えられる反射体の座標を説明するためのグラフ。
【図4】レーダ装置のアンテナの一例を示す部分斜視図。
【図5】送信部が出力する送信信号の波形の一例を示す波形図。
【図6】(a)送信ビームの主ビームが下方を向いている状態を説明する概念図。(b)送信ビームの主ビームが上方を向いている状態を説明する概念図。
【図7】送信ビームの主ビームの仰俯角方向における角度と周波数との関係を説明するための概念図。
【図8】周波数の変化する送信信号で走査した場合のビームパターンを示す概念図。
【図9】(a)振幅成分検出部で行なわれる振幅検出を説明するためのグラフ。(b)周波数成分検出部で行なわれる周波数検出を説明するためのグラフ。
【図10】第1実施形態における物標信号成分を中心に抽出する方法の一例を説明するためのグラフ。
【図11】第1実施形態に係るレーダ装置の変形例の構成を示す概略図。
【図12】(a)傾いてない状態で走査した受信信号の範囲を説明するグラフ。(b)傾いた状態で走査した受信信号の範囲を説明するグラフ。
【図13】第1実施形態に係るレーダ装置の変形例の構成を示す概略図。
【図14】反射エコーが俯角方向で積分される従来の受信信号を説明するグラフ。
【図15】第1実施形態における仰俯角0度の信号強度の抽出を説明するグラフ。
【図16】反射エコーが仰角方向で積分される従来の受信信号を説明するグラフ。
【図17】第1実施形態における仰俯角0度の信号強度の抽出を説明するグラフ。
【図18】第2実施形態に係るレーダ装置の構成の概略を示す概略図。
【図19】(a)一帯域フィルタの出力を示す波形図。(b)他の帯域フィルタの出力を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るレーダ装置について図1乃至図17を用いて説明する。第1実施形態のレーダ装置の用途の一例として、船舶用レーダ装置10がある。図1は、この船舶用レーダ装置10の使用例を説明するための概念図である。図1の船舶11が船舶用レーダ装置10を搭載している。この船舶用レーダ装置10によって、船舶11は、海面13からの反射エコーや雨14や霧などからの反射エコーに混じっている他の船舶12(物標)の反射エコーなどを区別して船舶12などの検出を行なわなければならない。
【0014】
そして、検出された船舶12は、通常、液晶ディスプレイなどを備える表示装置(図示省略)に表示される。表示されるレーダ映像は、レーダ装置(アンテナ)の位置を中心に例えば周囲360度の範囲が表示され、表示の原点はレーダ装置の位置に対応する。レーダ映像における物標の反射エコーの表示位置から、その物標の方位と距離を認識することが可能になる。
【0015】
アンテナ20の回転角度を変更して方位を順次変更しながら送受信を行う。一方位で一送受信を行いつつアンテナ20を1回転させて実施される検出が1スキャンである。そして、1スキャンの間に、各方位に対して例えば1パルスの送信信号の送信とその送信信号に対する1パルスの受信信号の受信とが行なわれる。この1パルスの1回の送受信が1スイープである。
【0016】
この船舶用レーダ装置10は、図2に示すように、図1に示したアンテナ20以外に、移相器31などを含んでなる仰俯角方向走査部30と、送信部40と、サーキュレータ(Circulator)などの送受切換器50と、受信部60とを備えている。
【0017】
この船舶用レーダ装置10においては、まず、アンテナ20から送信ビームを送信するため、送信部40で生成された1パルスの送信信号が送受切換器50に入力される。送信信号は、送受切換器50で受信部60に回り込まないようにされつつ、仰俯角方向走査部30を介してアンテナ20に送られる。アンテナ20からは、この1パルスの送信信号に応じて、1パルスの送信ビーム25が放射される。この送信ビーム25は、ペンシルビームであって、例えば、パルス初期においては主ビームの放射方向が最も下方(俯角方向)に向けられ、送信信号の進行に伴って主ビームの放射方向が上方に向かって変化し、パルス終期においてはその放射方向が最も上方(仰角方向)に向けられる。
【0018】
アンテナ20で受信される反射エコーの受信信号成分は、仰俯角方向走査部30を通過して、送受切換器50で送信部40に回り込まないようにされつつ、受信部60に送られる。仰俯角方向走査部30を通過することによって、受信ビームも仰俯角方向で走査されたものになる。受信ビームの仰俯角方向の角度が送信ビーム25の角度に一致するものが受信部60に送られる。例えば、俯角5度の方向に向けて放射される送信ビーム25に対しては、俯角5度方向の受信ビームに係る受信信号が選択的に受信部60に送られる。
【0019】
受信部60では、反射エコーの信号成分について、反射体がどの方位、どの距離及び仰俯角方向のどの角度から得られたものであるかを検出して、その検出結果に基いてクラッタを低減した後、物標を表示するための映像信号を出力する。図3は、受信部60で捉えられる反射体の座標の一例を示したグラフである。海面は全方位に広がっているが、図3においては、船舶12の周囲の海面13aのみがグラフ上に示されている。そのため、図3上において、船舶12と船舶12の周囲の海面13aの方位φ1と距離γ1が一致している。しかし、船舶12と海面13aでは、仰俯角方向において差が生じる。すなわち、海面13aの仰俯角がα1であるのに対し、船舶12の仰俯角はα2である。このように、海面13aと船舶12の仰俯角が異なることにより、海面13aの受信信号成分と船舶12の受信信号成分とを分離して検出することが可能になる。
【0020】
以下、図2に示すレーダ装置の各部の構成と動作について詳細に説明する。
【0021】
〔アンテナ20の構成〕
図4には、レーダ装置10のアンテナ20と仰俯角方向走査部30の構成の一例が示されている。アンテナ20は、多数のアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nからなる。アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nは、高さ方向に延びる回転軸24(図2参照)に取り付けられ、高さ方向に積層されている。これらアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nは、回転軸24の周りを回転する。また、各アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nには、スリット22が、高さ方向に対する垂直な方向に多数形成されている。これら多数のアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nと多数のスリット22とによって、アンテナ20は、ビームをペンシル状に形成することができる。なお、図4には、アンテナ20の一例として、スリットアレイアンテナが示されているが、他の種類のアレーアンテナであってもよい。アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nの素子数は、例えば20〜60個である。
【0022】
アンテナ20の各アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nでは、給電線路23によって送受信信号が伝送される。この給電線路23には、移相器31が接続される。
【0023】
〔仰俯角方向走査部30の構成〕
図2及び図4に示したように、各アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nの互いに隣り合う2つの素子間には、移相器31が接続される。アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nの数がm個であれば、アンテナ素子21nと送受切換器50との間では直接送信信号や受信信号の供給が行われるので、仰俯角方向走査部30に設けられる移相器31は(m−1)個である。
【0024】
移相器31は、例えばディレイラインなどのように送信信号を所定時間ずつ遅らせることによって、隣接するアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nに供給される送信信号にΔψだけ位相差を生じさせる。例えば、アンテナ素子21aでは、(m−1)×Δψだけアンテナ素子21nよりも位相が遅れ、アンテナ素子21bでは、(m−2)×Δψだけアンテナ素子21nよりも位相が遅れる。
【0025】
仰俯角方向走査部30では、この位相差Δψによって、1パルスの送信信号について、アンテナ20から放射される送信ビーム25を仰俯角方向に走査することができる。送信ビーム25の主ビームの指向する方向と水平方向のなす角(仰俯角)をθ、隣接するアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21n間の距離をd、送信ビーム25の空間波長をλ、管内波長をλg、給電線路長(ディレイラインの長さ)をLとすると、仰俯角θは次式を満足する角度になる。
【0026】
sinθ=−λ/d×(n±L/λg) …(1)
ここで、nは自然数であり、管内波長λgを変化させることによって、互いに隣接するアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nの位相差Δψを変化させている。
【0027】
〔送信部40の構成〕
送信部40は、アンテナ20が所定の角度だけ回転する毎に、1パルスの送信信号を生成して出力するよう構成されている。送信部40が出力する送信信号の波形の一例を図5に示す。図5に示す送信信号は、いわゆるチャープ信号であり、直線状の周波数変調が加えられている。例えば、1パルスの送信信号の初めから時間t1しか経過していない時点で周波数は9.3GHz程度であるが、送信信号の中間付近(時間t2)で周波数は9.4GHzであり、送信信号の終了時(時間t3)に周波数が9.5GHzに達する。なお、ここでは、送信信号が直線状に周波数変調される場合が例示されているが、周波数変調は直線状に周波数が変化する場合に限られない。
【0028】
図6は、送信部40からアンテナ20に図5に示す送信信号が供給されたときの仰俯角方向の走査の状況が示されている。図6(a)には、送信信号の先頭部分Sf(パルス初期)がアンテナ20に入力されて、送信ビーム25の主ビームが下方を向いている状態が示されている。一方、図6(b)には、送信信号の後尾部分Se(パルス終期)がアンテナ20に入力されて、送信ビーム25の主ビームが上方を向いている状態が示されている。
【0029】
つまり、送信信号の周波数が低い周波数f−1から中位の周波数f−2を経て高い周波数f−3へと変化させることによって、図7に示すように、送信ビーム25の主ビームが下方を向いている状態から水平の状態を経て上方を向いている状態へと変化させることができる。なお、ここでは、周波数が低い場合に下方を向くように設定されているが、逆に周波数が低い場合に上方を向くように設定することも可能である。
【0030】
上述の(1)式から、例えば、送信信号が9.4GHzのときにθ=0、送信信号が9.3GHzのときにθ=−10度、そして、送信信号が9.5GHzのときにθ=10度になるように設定可能であることが導かれる。
【0031】
図8は、高さ方向に40個並んだアンテナ素子の間に415mmのディレイラインを配置して、9.3GHzから9.5GHzまで周波数の変化する送信信号で走査した場合の送信ビーム25のビームパターンを示す概念図である。図8に示したビームパターンは、左から順に、周波数9.3GHzの送信ビームのビームパターンBP1、周波数9.4GHzのビームパターンBP2及び周波数9.5GHzのビームパターンBP3である。なお、9.3GHzから9.5GHzの周波数帯域は、船舶用に使用されているXバンドのパルスレーダの周波数帯域である。図8に示すように、この周波数帯域で、仰俯角が−10度〜+10度まで走査できるので、図2に示すレーダ装置は、船舶用のレーダ装置として十分に実用的なものである。
【0032】
〔受信部60の構成〕
受信部60は、図2に示すように、振幅成分検出部61と周波数成分検出部62と物標信号成分抽出部63とを備えている。
【0033】
受信部60には、アンテナ20のアンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nでそれぞれ受信した反射エコーの受信信号が仰俯角方向走査部30を介して伝送される。そのため、受信部60に伝送された受信信号は、送信ビーム25の主ビームの指向方向と同じ向きから返ってくる反射エコーの信号成分が強められ、他の方向から返ってくる反射エコーの信号成分は弱められる。つまり、受信ビームも周波数に応じて下方から上方に向かって走査される。従って、受信部60に伝送された受信信号の周波数成分が低いほど俯角の大きい所から受信されたものであり、周波数成分が高いほど仰角の大きい所から受信されたものである。受信部60に入力されたこのような受信信号は、振幅成分検出部61と周波数成分検出部62に与えられる。
【0034】
振幅成分検出部61と周波数成分検出部62で行なわれる検出について、図9を用いて説明する。図9(a)に示すグラフは、振幅成分検出部61で行なわれる振幅検出を説明するためのものである。また、図9(b)に示すグラフは、周波数成分検出部62で行なわれる周波数検出を説明するためのものである。
【0035】
振幅成分検出部61及び周波数成分検出部62では、同じタイミングで検出が行なわれる。例えば、時間t4において、振幅成分検出部61では、受信信号の振幅P1が検出される。周波数成分検出部62では、例えばフーリエ変換などの解析方法を用いて、時間t4における受信信号の周波数成分f1が検出される。
【0036】
この時間t4において検出された周波数成分f1から、図5に示す送信信号について、パルスの先頭部分Sfの近傍(時間t1)に対応する反射エコーであることが分かる。そのことから、送信ビーム25の主ビームが下方に向いていたものであることが分かり(図6(a)参照)、仰俯角が求まる。また、この時間t4(時間成分)から、電磁波が往復した距離が求まる。
【0037】
次に、時間t5において検出された周波数成分f2から、図5に示す送信信号について、パルスの先頭部分Sfの近傍(時間t1)に対応する反射エコーであることが分かる。そのことから、送信ビーム25の主ビームが下方に向いていたものであることが分かり(図6(a)参照)、仰俯角が求まる。また、同じ時間t5に検出された周波数成分f3から、図5に示す送信信号のパルス中間部分(時間t2)に対応する反射エコーであることが分かる。そのことから、送信ビーム25の主ビームがほぼ水平(仰俯角が0度)に向いていたものであることが求まる。また、この時間t5(時間成分)から、電磁波が往復した距離が求まる。例えば、図1に示した船舶12などは、ほぼ水平に放射される送信ビーム25によって反射エコーを発生する。
【0038】
次に、時間t6において検出された周波数成分f4から、図5に示す送信信号について、パルスの先頭部分Sfの近傍(時間t1)に対応する反射エコーであることが分かる。そのことから、送信ビーム25の主ビームが下方に向いていたものであることが分かり(図6(a)参照)、仰俯角が求まる。同じ時間t6において検出された周波数成分f5から、図5に示す送信信号のパルス後尾部分(時間t3)に対応する反射エコーであることが分かる。そのことから、送信ビーム25の主ビームが上方に向いていたもの(図6(b)参照)であることが分かり、仰俯角が求まる。また、この時間t6(時間成分)から、電磁波が往復した距離が求まる。例えば、海上に架けられている橋脚などは、仰角方向に放射される送信ビームによって反射エコーを発生する。
【0039】
上述の説明では、3つの時間t4、t5、t6に検出される情報について説明しているが、実際には、もっと多数の検出が所定の時間間隔で繰り返して行なわれる。ところで、時間t4からt6に検出されるものは、アンテナ20が1つの方位を向いているときに送受信される1つのパルス信号から得られる情報である。各パルスの送信信号は各方位に対応しているから、最初のパルス(方位0度)から何番目のパルスであるかが特定されれば方位が定まる。従って、アンテナ20の全方位について上述の検出を行なうことで、アンテナ20を基準とする方位と距離と仰俯角とを座標軸に持つ座標上の必要な全ての信号強度(振幅)が求まる。
【0040】
振幅成分検出部61及び周波数成分検出部62で検出されたデータは、物標信号成分抽出部63に出力される。物標信号成分抽出部63に出力されるデータには、方位、距離(時間)、仰俯角(周波数)及び信号強度(振幅)についての情報が含まれる。例えば、図9に示した受信信号の方位がφであるとすると、時間t4の検出結果から、検出される座標から信号強度を示すデータ(φ,t4,f1,P1)を物標信号成分抽出部63が受け取る。
【0041】
物標信号成分抽出部63では、受け取ったデータから物標信号成分を抽出するが、抽出する際に、仰俯角に関する情報を使って物標信号成分と海面などからの反射エコーに係る成分とを分離して、できる限り物標信号成分を中心に抽出する。図10は、物標信号成分を中心に抽出する方法の一例を説明するためのグラフである。図10のグラフは、ある1つの方位φについて、距離(時間)、仰俯角(周波数)及び信号強度(振幅)の情報をまとめたものである。
【0042】
図10において、2点差線に沿って並んでいるデータは、海面からの反射エコーに係る信号成分70のものである。図10は、仰俯角に関する情報も盛り込んで3次元で表現されているため、海面からの反射エコーに係る信号成分70と物標信号成分71とを区別することができる。これら信号成分70,71を区別して物標信号成分を中心に抽出する方法の一例として、水平に放射される送信ビーム25からの反射エコーに係る信号成分だけを抽出する方法がある。海面上に浮かんでいる船舶などは、このように水平に放射された送信ビーム25に関するデータを中心に検出を行なうことで、海面からの反射エコーの信号成分70などの不要な信号成分をできる限り除いて物標信号成分71を検出することができ、物標信号成分71の検出が容易になる。
【0043】
<変形例1−1>
上記実施形態のレーダ装置10では、レーダ装置10を搭載している船舶11の揺動を考慮せずに、物標信号成分71の検出を行なうよう構成することはできる。しかし、船舶11が傾いた状態で送受信された信号成分の検出を行なうと、アンテナ20が傾いて物標信号成分を受信信号から的確に検出できなくなる場合がある。そのため、船舶11の傾きを検知する傾き検出センサーなどを用いて船舶11の傾き補正を行なうことが好ましい。以下に説明する変形例では、物標信号成分抽出部63に与えられるデータから船舶11の傾きが求められるよう受信部60Aが構成されている。
【0044】
図12(a)には、レーダ装置10のアンテナ20が傾いてない状態で、送信ビーム25を仰俯角方向に±10度の範囲で走査したときの受信信号の範囲Ar1が示されている。一方、図12(b)には、船舶11が水平に対して−5度傾いた状態(アンテナ20鉛直に対して−5度傾いた状態)で、送信ビーム25を仰俯角方向に±10度の範囲で走査したときの受信信号の範囲Ar2が示されている。図12(b)の範囲Ar2で送信ビーム25が走査されて、その中央の仰俯角α3のところが水平方向になる。そのため、アンテナ20の傾きを補正しないと、物標信号成分71が十分に捉えられない。
【0045】
そこで、図11に示すように、第1実施形態の変形例に係るレーダ装置10Aには、レーダ装置10の構成に加えて、傾き推定部64が設けられている。この傾き推定部64が物標信号成分抽出部63からデータを取得して、アンテナ20の傾きを推定する。この傾き推定部64で推定されたアンテナ20の傾きに関するデータが、物標信号成分抽出部63に出力される。物標信号成分抽出部63は、この傾きを考慮して、振幅成分検出部61及び周波数成分検出部62から取得したデータを補正する。例えば、アンテナ20が水平に対して−5度傾いたために図12(b)に示すようなデータが得られた場合には、仰俯角α3に5度加えたところを仰俯角0度とする補正を物標信号成分抽出部63が行なう。
【0046】
振幅成分検出部61及び周波数成分検出部62から取得したデータを用いて傾き推定部64が行なう推定は次のようなものである。図12(a)に示す海面による信号成分70に沿って引かれた二点鎖線DL1から分かるように、時間の値を無限大にすると二点鎖線DL1は仰俯角0度のラインに限りなく近くなる。従って、海面を示す図12(b)の二点鎖線DL2を用いてアンテナ20の傾きを計算することができる。
【0047】
例えば、海面からのアンテナの高さをhとし、反射エコーを生じた海面と船舶までの距離をLsとすると、俯角θは、θ=arctan(H/Ls)で与えられる。ここで、アンテナの高さhがあまり変化しないと仮定すると、上式の関係から図12(b)に示す一点鎖線DL0の理論式が導かれる。この一点鎖線DL0を用いれば、複数の時間において、実測値とこの理論式から導かれる値との仰俯角の差を得ることができる。例えば、図12(b)の時間t11,t12,t13における二点鎖線DL2と一点鎖線DL0との差が複数の仰俯角の差である。これら複数の仰俯角の差について中央値をアンテナ20の傾きとするなど、これら複数の仰俯角の差を適当に統計処理することによってアンテナ20の傾きが求まる。
【0048】
なお、このような理論値は他の方法で求めることもでき、例えば、船舶11の全方位の実測値を平均したものを用いることもできる。船舶11の揺動には偏りが無いため、全方位の実測値を平均すると理論値に近い値が得られるからである。
【0049】
<変形例1−2>
図13に示す第1実施形態の変形例に係るレーダ装置10Bには、レーダ装置10の構成に加えて、受信部60Bに物標推定部65が設けられている。この物標推定部65が物標信号成分抽出部63からデータを取得して、各データが示すものが物標であるか否かの推定を行なう。物標推定部65が行なう推定は、図11(a)の二点鎖線DL1、即ち海面を示す包絡線を推定し、この包絡線に基づいて物標であるか否かを推定するものである。包絡線は、例えば、変形例1−1で行なった方法と同様に、理論値と実測値の差を求めることによって求めることができる。上述のレーダ装置10,10Aが図1に示した船舶11に搭載されているものであり、空中に放射された電磁波を用いるものであるから、海面より下に位置する反射体は捉えようとする物標ではない。従って、物標推定部65において、この包絡線よりも上にあるもの(海上に在る物)だけを物標として認識することにより、反射体が海面より下に位置することを示すデータは全て雑音として処理することができる。
【0050】
<変形例1−3>
上記実施形態のレーダ装置10,10Aでは、受信部60の振幅成分検出部61、周波数成分検出部62、物標信号成分抽出部63及び傾き推定部64をハードウエアで構成した場合について説明したが、振幅成分検出部61や周波数成分検出部62や物標信号成分抽出部63や傾き推定部64の機能をソフトウエアによって実現するようにしてもよい。この場合には、ROM等の記録媒体からプログラムを読み込んだCPU等の制御部が、実施形態の振幅成分検出部61や周波数成分検出部62や物標信号成分抽出部63や傾き推定部64の機能を実現する。
【0051】
<特徴>
(1)アンテナ20では、各アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nが回転軸24の周りを回転する。この回転軸24は、船舶11の水平な構造物(特定面)に対して垂直に設置される。つまり、静止した水面上に船舶11が浮いている状態で回転軸24が水面及び特定面に対して鉛直になる。そして、所定の方位毎に、1パルスの送信ビーム25がアンテナ20から放射される。この1パルスの送信ビーム25によって、所定方位、所定の仰俯角の範囲及び所定の距離に含まれる全ての反射体(物標や海面など)の検出を行なう。ただし、アンテナ20は、360度回転するものでなくてもよく、所定の角度範囲を往復するものであってもよい。また、方位毎の検出に掛かる時間を長くしてもよい場合には、各方位において放射される送信ビーム25のパルス数を増やすこともできる。パルス数を増やす場合(一方位において送信ビーム25の放射と受信を複数回繰り返す場合)でも各パルスのそれぞれにおいて俯仰角方向の走査が行なわれる。
【0052】
高さの異なる各アンテナ素子21a,21b,21c,21d…21nから放射される電磁波の位相は、仰俯角方向走査部30の移相器31によって所定の値だけずれるように構成されている。この送信ビーム25を送信するために送信部40で生成される送信信号は、図5に示すように周波数変調されている。例えば、1パルスの送信ビーム25において、図5に示す送信信号の先頭部分Sfでは送信ビーム25が俯角方向に向けて放射され、後尾部分Seでは仰角方向に向けて放射されるように、放射方向が仰俯角方向で変化する走査を行わせることができる。ただし、1パルスの送信ビーム25で走査されればよいので、走査の方向や走査の仕方は、俯角方向から仰角方向に向けて1回だけ走査される方式には限られない。
【0053】
従って、送信ビーム25の主ビームが指向する仰俯角に、送信ビーム25の周波数が対応する。そのため、受信部60の振幅成分検出部61で検出される振幅成分を与える反射エコーがアンテナ20の特定面に対してどのような仰俯角の方向から放射されたものであるのかは、受信部60の周波数成分検出部62において検出される周波数成分によって特定することができる。また、距離については従来と同様に受信信号の時間成分から特定することができ、方位についても従来と同様にアンテナの回転角度から特定することができる。
【0054】
従来は、アンテナ20から放射される送信ビームは扇状に広がるファンビームであったので、図14に示すように、反射エコーが仰俯角方向で積分された状態で受信されていた。そのため、時間t5における船舶の反射エコーに係る信号成分は、その前後に受信される海面の反射エコーに係る信号成分に対して十分に高い信号強度を有していない。
【0055】
一方、送受信される仰俯角を限定すると、海面の反射エコーなどに係る不要な信号成分を除くことができる。図15は、特定面と平行に送受信された信号成分の信号強度、つまり図10の仰俯角0度の信号強度を抽出したものである。図14と図15とを比べて分かるように、検出する仰俯角を限って物標信号成分以外の信号成分が除かれることにより、物標信号成分が抽出され易くなる。
【0056】
上述のような物標信号成分の検出が1パルスの信号の送受信で行なえるため、複数のパルス信号を送受信しなければならない場合に比べて、短時間で物標の検知を行うことができる。
【0057】
このような反射体の方位及び距離に加えて仰俯角を検出することによって、物標の受信信号成分の分離が容易になるのは、海面からの反射エコーがある場合に限られない。例えば、図16には、雨などのクラッタがある場合に受信部60で得られるデータの一例が示されている。雨などのクラッタは、仰俯角方向に広く分布するので、従来のファンビームを用いるレーダ装置では、図17に点線で示すように仰俯角方向の積分値しかえられないため、クラッタ成分に埋もれて、時間t15に現れている物標信号成分の抽出が難しかった。このような場合も、仰俯角を0度近傍(特定仰俯角方向)に限って解析を行なうと、クラッタ成分が小さくなるため、物標信号成分の抽出が容易になる。
【0058】
(2)既に説明したように、揺動する船舶11では、アンテナ20も揺動して送信ビーム25の放射方向が、特に仰俯角方向で大きく変化することがあるため、物標信号成分の抽出が難しくなる。そこで、レーダ装置10Aには、図12(b)に示したように、海面を基準面として、その基準面に対するアンテナ20の傾きを推定する傾き推定部64が設けられている。
【0059】
傾き推定部64では、基準面である海面の方位と距離と仰角に関するデータが物標信号成分抽出部63から取得されて、図12に示した理論値(一点鎖線DL0)と実測値(二点鎖線DL2)との仰俯角の差が求められる。それによって、アンテナ20の傾きが補正されるため、アンテナ20の傾きを測るセンサーなどを省くことができる。
【0060】
(3)物標推定部65では、推定した海面(基準面)を用いることによって、海面より下に反射体が位置することを示すデータであるか、海面より上に反射体が位置することを示すデータであるかを判別できるので、反射体が海面より下に位置することを示すデータを雑音として取り除くことができ、SN比を向上させることができる。
【0061】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態による船舶用レーダ装置について図18及び図19を用いて説明する。図18に示すように、第2実施形態の船舶用レーダ装置10Bが図2に示す第1実施形態の船舶用レーダ装置10と異なる点は、受信部60Bの構成である。第1実施形態の船舶用レーダ装置10Bの受信部60Bは、中心周波数f11,f12,f13,f14…,fnが互いに異なる複数の帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nと、それらの出力をそれぞれ増幅する増幅器67a,67b,67c,67d…67nと、増幅器67a,67b,67c,67d…67nの出力の振幅成分を検出する振幅成分検出部68と物標信号成分抽出部69とを有している。
【0062】
帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nの出力は、中心周波数f11,f12,f13,f14…,fnに応じた仰俯角に対応している。例えば、中心周波数f11の帯域フィルタ66aを通過するものは、図5のパルスの先頭部分Sfに限定することができる。つまり、この帯域フィルタ66aの出力は、図6(a)に示すように、俯角方向に放射される送信ビーム25に対応するものである。そして、図19(a)に示す時間t21に比較的強い信号強度P21を持つ出力が帯域フィルタ66aから出力される。このような時間t21の強い信号強度P21を発生する反射体としては、大きな俯角を持つ比較的近距離からの反射エコーを発生するものであるから、図1に示す海面13などが考えられる。
【0063】
例えば、中心周波数f14の帯域フィルタ66dを通過するものは、図5のパルスの中間部分(時間t2の近傍)に限定することができる。つまり、この帯域フィルタ66dの出力は、仰俯角0度の方向に放射される送信ビーム25に対応するものである。そして、図19(b)に示す時間t2mに比較的強い信号強度P2mを持つ出力が帯域フィルタ66dから出力される。このような時間t2mの強い信号強度P2mを発生する反射体としては、水平方向からの反射エコーを発生するものであるから、図1に示す船舶11などが考えられる。
【0064】
振幅成分検出部68では、各帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nの出力する振幅が検出される。1パルスの送信信号に対応する帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nの出力について、それぞれ、所定のサンプリング数だけデータが得られる。各パルスの送信信号は各方位に対応しているから、最初のパルス(方位0度)から何番目のパルスであるかが特定されれば方位が定まる。そして、そのデータがどの帯域フィルタ66aの出力であるかが特定されると、仰俯角が定まる。さらに、その振幅が検出される時間成分から距離が定まる。振幅成分検出部68は、全ての帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nの出力について、サンプリングされる振幅の方位と仰俯角と距離を特定してデータを生成する。
【0065】
上述の説明から分かるように、結局、図18に示す物標信号成分抽出部69に入力されるデータは、図2に示した物標信号成分抽出部63に入力されるデータと同じである。この物標信号成分抽出部69でも、物標信号成分抽出部63と同じ処理が行われる。
【0066】
<変形例2−1>
第2実施形態の船舶用レーダ装置10Bは、物標信号成分抽出部69が第1実施形態の物標信号成分抽出部63と同じ処理を行うことから、第1実施形態の船舶用レーダ装置10Aの傾き推定部64と同じ構成を備えるよう構成することができる。
【0067】
<変形例2−2>
上記実施形態のレーダ装置10Bでは、受信部60Bの帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nや増幅器67a,67b,67c,67d…67nや振幅成分検出部68や物標信号成分抽出部69をハードウエアで構成した場合について説明したが、帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nや増幅器67a,67b,67c,67d…67nや振幅成分検出部68や物標信号成分抽出部69の機能をソフトウエアによって実現するようにしてもよい。この場合には、ROM等の記録媒体からプログラムを読み込んだCPU等の制御部が、実施形態の帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nや増幅器67a,67b,67c,67d…67nや振幅成分検出部68や物標信号成分抽出部69の機能を実現する。
【0068】
<特徴>
送信ビーム25の主ビームが指向する仰俯角に、送信ビーム25の周波数が対応する。そのため、受信部60Bの振幅成分検出部68で検出される振幅成分を与える反射エコーがアンテナ20の特定面に対してどのような仰俯角の方向から放射されたものであるのかは、その振幅成分を出力した帯域フィルタ66a,66b,66c,66d…66nを特定することによって検出することができる。
【0069】
送受信される仰俯角を限定することにより、海面の反射エコーなどに係る不要な信号成分を除くことができ、物標信号成分が抽出され易くなるのは、第1実施形態の船舶用レーダ装置10,10Aと同様である。また、上述のような物標信号成分の検出が1パルスの信号の送受信で行なえるため、複数のパルス信号を送受信しなければならない場合に比べて、短時間で物標の検知を行うことができるのも、第1実施形態の船舶用レーダ装置10,10Aと同様である。
【符号の説明】
【0070】
10、10A,10B レーダ装置
20 アンテナ
30 仰俯角方向走査部
40 送信部
50 送受切換器
60,60A,60B 受信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特許第3559236号公報
【特許文献2】特開2010−525336号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定面に対する仰俯角に応じた周波数を有する送信ビームを放射して反射体からの反射エコーを受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した受信信号の周波数成分から前記反射体の前記仰俯角を検出するとともに前記受信信号の時間成分から前記反射体の距離を検出する受信部と、
を備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記特定面に垂直な回転軸周りに回転して、各方位に前記送信ビームを放射し、
前記受信部は、各方位からの反射エコーを受信して方位毎に前記反射体の前記距離及び前記仰俯角を検出する、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
周波数変調された送信信号を生成する送信部をさらに備え、
前記アンテナは、前記特定面に対する垂直方向に複数配置され、それぞれに電磁波を放射する複数のアンテナ素子と、
前記送信信号の周波数に応じて位相を変え、前記アンテナ素子間で前記電磁波に位相差を生じさせる複数の移相器を含む、
請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記受信部は、
前記受信信号の前記周波数成分を検出する周波数成分検出部と、
前記周波数成分検出部が検出する周波数成分に対応する振幅成分を前記受信信号から検出する振幅成分検出部とを有し、
前記周波数成分検出部及び前記振幅成分検出部が検出する周波数成分と振幅成分の検出の時間とから前記反射体の前記仰俯角及び前記距離を検出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記受信部は、
前記受信信号のフィルタリングを行なうための、中心周波数が互いに異なる複数の帯域フィルタと、
前記複数の帯域フィルタの複数の出力から振幅成分をそれぞれ検出する振幅成分検出部とを有し、
前記複数の帯域フィルタの特定と振幅成分の検出の時間とから前記反射体の前記仰俯角及び前記距離を検出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記アンテナは、前記特定面に垂直な回転軸周りに回転して、各方位に前記送信ビームを放射し、
前記受信部は、前記受信部が検出した前記反射体の前記方位と前記距離と前記仰俯角との情報から基準面上の複数の点について前記方位と前記距離と前記仰俯角の情報を抽出して前記特定面の前記基準面に対する傾きを推定する傾き推定部を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記アンテナは、前記特定面に垂直な回転軸周りに回転して、各方位に前記送信ビームを放射し、
前記受信部は、前記受信部が検出した前記反射体の前記方位と前記距離と前記仰俯角との情報から基準面を推定し、前記反射体が前記基準面よりも上に位置することを示す前記受信信号を物標のものと認識する物標推定部を備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項8】
特定面に対する仰俯角に応じた周波数を有する送信ビームを放射する送信工程と、
反射体からの反射エコーをアンテナで受信して、前記アンテナで受信した受信信号の周波数成分から前記反射体の前記仰俯角を検出するとともに前記受信信号の時間成分から前記反射体の前記距離を検出する受信工程と、
を備える物標検出方法。
【請求項9】
前記受信工程は、
前記物標の検出を行うために特定仰俯角方向の前記受信信号を選択する仰俯角選択工程を含む、
請求項8に記載の物標検出方法。
【請求項10】
前記送信工程は、
前記アンテナを前記特定面に垂直な回転軸周りに回転して、各方位に前記送信ビームを放射し、
前記受信工程は、
前記受信信号から基準面上の複数の点について前記方位と前記距離と前記仰俯角の情報を抽出して前記特定面の前記基準面に対する傾きを推定し、前記反射体の仰俯角を前記傾きに基づいて補正する仰俯角補正工程を含む、
請求項8又は請求項9に記載の物標検出方法。
【請求項11】
前記送信工程は、
前記アンテナを前記特定面に垂直な回転軸周りに回転して、各方位に前記送信ビームを放射し、
前記受信工程は、
前記受信信号から前記反射体の前記方位と前記距離と前記仰俯角との情報を抽出して基準面を推定し、前記反射体が前記基準面よりも上に位置することを示す前記受信信号を物標のものと認識する物標推定工程を含む、
請求項8又は請求項9に記載の物標検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−108075(P2012−108075A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258864(P2010−258864)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】