説明

レーダ装置

【課題】 目標の重要度に応じたビーム分配により探知と追尾を同時に行うことで両者の性能を向上させたレーダ装置を提供する。
【解決手段】 探知された目標の航跡が追尾すべきTBMなどの移動体の航跡に合致する度合いに応じて、追尾に割り当てるビーム数を決定するための重要度を求める重要度算出器8と、重要度に応じて探知と追尾にそれぞれ割り当てるビーム数を算出するビーム分配数算出器10と、ビーム分配数算出器10が算出した分配数に従って探知及び追尾のビーム割り当てを制御するビーム制御部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェンスビームにて探知した目標をトラッキングビームで追尾するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。このレーダ装置では、フェーズドアレイアンテナ方式で構成され、探索時間と追尾時間の最適な配分値の算出を行うビームマネージメント装置を新規に付加することにより、探索ビームと追尾ビームの制御を最適化している。また、特許文献2には、複数の検出結果に対する無駄な検定ビームの照射を最小限に抑えて探知性能の劣化を防ぐビーム制御装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−160832号公報
【特許文献2】特開平10−300847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表される従来のレーダ装置では、探索ビームを空間に走査する時間と、探索された目標を追尾ビームにより追尾する時間とを制御するビームマネージメントを行っている。つまり、複数の探索ビームをフェンスのように連ねたフェンスビームによる探索を行い、これにより探索された目標に対して追尾ビームを発射するというビームマネージメントであり、探索若しくは追尾のどちらか一方のみを実施していた。
【0005】
このように、従来のレーダ装置では、フェンスビームによる探索(以下、フェンスサーチと称す)とトラッキングビームによる追尾(以下、トラッキングと適宜称す)とを同時運用するという概念がなく、目標を追尾している間は探知機能が疎かになるという課題があった。
【0006】
安定した探知及び追尾を実現するには、どちらか一方の動作に特化させるのではなく、状況に応じたフレキシブルなビームマネージメントが必要である。例えば、TBM(Theater Ballistic Missile;戦域弾道ミサイル)目標に対して、その探知能力及び追尾能力を向上させるには目標の重要度を的確に判定し、状況に応じたビーム配分機能が必要とされる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、目標の重要度に応じたビーム分配により探知と追尾を同時に行うことで両者の性能を向上させたレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るレーダ装置は、探知された目標の航跡が追尾すべき移動体の航跡に合致する度合いに応じて、追尾に割り当てるビーム数を決定するための重要度を求める重要度算出部と、重要度に応じて探知と追尾にそれぞれ割り当てるビーム数を算出するビーム分配数算出部と、ビーム分配数算出部が算出した分配数に従って探知及び追尾のビーム割り当てを制御するビーム制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、探知された目標の航跡が追尾すべき移動体の航跡に合致する度合いに応じて、追尾に割り当てるビーム数を決定するための重要度を求める重要度算出部と、重要度に応じて探知と追尾にそれぞれ割り当てるビーム数を算出するビーム分配数算出部と、ビーム分配数算出部が算出した分配数に従って探知及び追尾のビーム割り当てを制御するビーム制御部とを備えるので、目標の重要度に応じたビーム分配により探知と追尾を同時に行うことで両者の性能を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態1は、ビーム分配でフェンスサーチ及びトラッキングを同時に行うための目標の重要度(危険度)を決定する重要度算出器を備えるものである。
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態1によるレーダ装置は、レーダ信号処理装置1、素子アンテナ2、送受信モジュール3、励振装置4及び受信装置5から構成される。レーダ信号処理装置1は、目標検出装置6、データ処理装置を構成する、追尾方式制御部7、重要度算出器8、ビーム制御部9及びビーム分配数算出器10、から構成される。
【0011】
電波を送受信するための素子アンテナ2は、複数個が配置されてアレイアンテナを構成する。送受信モジュール3は、空間に放射又は空間から受信する電波を増幅すると共に、電波の位相を制御して任意方向に指向性を有する送受信ビームを形成する。励振装置4は、空間に放射する電波の元となる位相制御信号20を送受信モジュール3に供給する。
【0012】
受信装置5は、送受信モジュール3からの受信信号11をディジタルの受信ビデオ信号に変換する。目標検出装置6は、受信装置5から出力される受信ビデオ信号から目標情報を抽出し、目標の位置を算出してプロットデータ13を生成する。追尾方式制御部7は、目標検出装置6から出力されるプロットデータ13から目標の予測速度や予測位置などを航跡データ14として重要度算出器8に出力する。
【0013】
重要度算出器8は、追尾方式制御部7から出力される航跡データから目標の速度、RCS(Radar Cross Section;反射断面積)、信号対雑音(S/N)比に関する情報を抽出し、これに基づき目標の重要度の有無を算出する。ビーム制御部9は、ビーム指向方向を制御するためのビーム制御情報19を生成する。ビーム分配数算出器10は、フェンスサーチとトラッキングに割り当てるビーム本数を決定する。
【0014】
図2は、ビームマネージメントの一例を示す図であり、ビーム制御部9から励振装置4に出力されるビーム制御情報19を示している。ビーム制御情報19の1データレートには、10本分のフェンスビームにそれぞれ対応する制御データがある。このビーム制御情報19は、例えば目標が1個検出されると、図中の下段に記載したように、その目標に対して5本分のフェンスビームをトラッキングビームに割り当て、残りの5本でフェンスサーチを行う。このトラッキングビームに割り当てるビーム本数は、その目標の重要度に応じて決定する。図示の例では、重要度が高く、ビーム総数の半分がトラッキングに割り当てられている。
【0015】
なお、図2の例では、トラッキングビームに使用されるビーム数は、最大5本であり、10本のビーム総数による全能力の半分が割り当てられる。これにより、例えば目標数が2個の場合、1目標あたり2本のトラッキングビームが割り当てられ、残りの6本のビームがフェンスサーチに使用される。このように、本発明では、送受信可能なビーム総数からフェンスサーチ機能とトラッキング機能に割り当てる最大数を決定しておき、目標数やその重要度に応じてトラッキングビーム数を適宜割り当ててフェンスサーチ機能及びトラッキング機能を同時に実行する。
【0016】
次に動作について説明する。
先ず、送受信モジュール3が、励振装置4からの位相制御信号20に従って電波の位相を制御し、素子アンテナ2を介して任意方向に指向性を有する電波をフェンスビームやトラッキングビームとして空間に放射し、目標で反射した電波を受信して増幅する。受信装置5は、送受信モジュール3からの受信信号11をディジタルの受信ビデオ信号に変換して目標検出装置6に出力する。
【0017】
目標検出装置6では、受信装置5から出力される受信ビデオ信号から目標情報を抽出し、目標の位置を算出した算出結果である探知プロットをプロットデータ13として追尾方式制御部7に出力する。追尾方式制御部7では、目標検出装置6から出力されるプロットデータ13から目標の速度及び位置を含む航跡データ14として重要度算出器8に出力する。
【0018】
図3は、実施の形態1によるレーダ装置の動作を示すフローチャートであり、目標の重要度に基づくビーム分配を決定して実航跡処理を実行するまでを示している。
重要度算出器8では、追尾方式制御部7から航跡データ14を入力すると(ステップST1)、フェンスビームによる目標探知の結果かトラッキングビームによる追尾目標の位置及び速度などの航跡を規定する諸元データであるかを判別する(ステップST2)。
【0019】
レーダ信号処理装置1の基本的な運用形態は、フェンスビームによる探知動作である。フェンスビームにより目標を検出すると、当該目標の重要度に応じてフェンスビーム機能の一部をトラッキングビームに割り当てる。例えば、重要度の高い目標に対してトラッキングビームの分配数を増やすと、ビーム面積が拡大して高精度の目標情報を得るのに有利になる。
【0020】
ステップST2において、航跡データ14の内容がフェンスビームによる新たな追尾目標の探知結果であるか、トラッキングビームによる追尾目標の航跡を規定するデータであるかを問わず、現在トラッキングビームにより追尾中の目標数を判定する(ステップST3)。これは、追尾可能な目標数には限りがあるので、複数の追尾目標がある場合、目標の重要度を順位付けして重要な目標を厳選するためである。
【0021】
続いて、重要度算出器8は、追尾目標に関する航跡データ14を用いてその重要度を決定する(ステップST4)。具体的には、次の2通りの方法で重要度を決定する。
先ず、重要度算出器8には、速度、飛行パターン(インバンド、アウトバンド)のそれぞれ及びこれらの組み合わせに対応する物体の重要度が登録されたデータベースが設けられている。そこで、重要度算出器8は、ステップST2において追尾中の目標がなく、新規の追尾目標が1機だけ探知された場合であれば、航跡データ14から目標の速度、飛行パターンを求め、これと当該データベースの内容を比較して対応する重要度を求める。
【0022】
また、ステップST2において、新規の追尾目標が探知された際に既に追尾中の目標があるなど、追尾すべき目標が複数あると判定された場合、トラッキング機能に割り当てられるビーム数には限りがあるため、追尾を行いながら目標同士で重要度を比較して各目標の追尾に割り当てるビーム数を決定しなければならない。この場合、複数の追尾目標の速度、飛行パターンを同時に求めて上記データベースの内容と同時に比較することはできないため、データベースの照合で重要度を判断することはできない。
【0023】
そこで、重要度算出器8は、航跡データ14に基づいて、各追尾目標の速度、RCS(Radar Cross Section;反射断面積)及びS/N比の値から総合的に判断して、追尾目標の重要度を定量的に算出する。本発明では、特に高速移動している目標を探知し、そのRCSにより微小目標を検出し、S/N比の値により目標の検出環境を考慮して重要度を決定する。例えば、TBM(Theater Ballistic Missile;戦域弾道ミサイル)と戦闘機とでは仰角方向速度が大きく異なる。この場合、TBMを探知及び追尾することを目的とするのであれば、仰角速度の大小を重要度を定量化する因子として決定しておき、仰角速度が大きな目標の重要度が大きくなるように重要度の数値を決定する。また、TBMは、RCS値の小さい弾頭とRCS値の大きいブースタに分離する。この場合も考慮して、RCS値の大小を重要度を定量化する因子として決定しておき、RCS値の小さい目標の重要度が大きくなるように重要度の数値を決定する。
【0024】
このように、複数の追尾目標がある場合、時々刻々と変化する航跡データから抽出した情報を元にして重要度を算出しているので、時間経過と共に目標毎の重要度も変化する。これにより、目標同士の重要度を比較することで各目標の重要度を順位付けを行い、重要な目標を厳選することができる。つまり、重要度の順位付けによりトラッキングビーム数を分配することで、重要目標に限定した継続追尾が可能である。一方、重要度は、時間の経過とともに変化し、ビーム分配数も変化する。これにより、それまで追尾していた目標の重要度が減少した場合は、分配すべきトラッキングビームの本数を減少する。反対に、他に重要度が高い目標が現れれば、重要度が低下した目標のトラッキングビームをその新しい目標に振り分ける。また、追尾すべき目標が無いときには、探知能力維持のため、フェンスサーチに全てのビームを割り当てる。
【0025】
なお、S/N比の値は、単独で重要度の算出要素にすることはなく、その値の大小により最終的なトラッキングビーム本数を決定する判断要素とする。例えば、S/N比が大きければ、ノイズレベルが小さく追尾目標との間でのビーム送受が良好に行われていることからトラッキングビームの本数を多く割り当てる必要がないと判断する。また、S/N比が小さければ、ノイズレベルが大きく劣悪な環境でビーム送受がなされていると判断し、的確な追尾のためにトラッキングビームの本数を多く割り当てる。この傾向を鑑みて、追尾目標の速度やRCSに加え、S/N比の値を重要度の算出に利用する。
【0026】
重要度算出器8が決定した追尾目標の重要度は、重要度算出結果15として追尾方式制御部7に出力される。追尾方式制御部7では、重要度算出器8からの重要度算出結果15とこれの決定に用いられた航跡データ14とをデータ16にまとめてビーム制御部9に出力する。ビーム制御部9では、追尾方式制御部7から入力した重要度算出結果を重要度算出結果17としてビーム分配数算出器10に出力する。
【0027】
ビーム分配数算出器10は、重要度算出結果17に規定される各追尾目標の重要度に応じて、フェンスサーチとトラッキングに割り当てるビーム本数を決定する(ステップST5)。トラッキングビームの割り当て本数は、追尾する目標数に依る。つまり、レーダ装置で扱える最大ビーム本数(レーダ所有能力)の半分は、フェンスサーチビームに使用しなければならないので、残り半分のビーム数が追尾目標のトラッキングに割り振られる。例えば、最大ビーム本数が10本である場合、その半分の能力を最低フェンスサーチに割かねばならず、5本はフェンスサーチビームに使用される。これにより、残りの5本がトラッキングビームに使用される。このとき、以下のような割り振りのパターンが考えられる。
1.目標数が1つの場合
トラッキングビーム5本の全部が1つの目標に割り振られ、残りの5本がフェンスサーチビームとして割り振られる。
2.目標数が2つの場合
2つの目標のそれぞれに2本のトラッキングビームが割り振られ、残りの6本がフェンスサーチビームとして割り振られる。
3.目標数が3つの場合
3つの目標のそれぞれに1本のトラッキングビームが割り振られ、残りの7本がフェンスサーチビームとして割り振られる。
4.目標数が4つの場合
4つの目標のそれぞれに1本のトラッキングビームが割り振られ、残りの6本がフェンスサーチビームとして割り振られる。
5.目標数が5つの場合
5つの目標のそれぞれに1本のトラッキングビームが割り振られ、残りの5本がフェンスサーチビームとして割り振られる。
但し、トラッキングビームの割り当て本数を超える目標が現れた場合、新規の追尾目標の重要度が高ければ、追尾中の最大目標数である5つの目標のうち、重要度の順位付けが高いものを継続して追尾し、低いものを入れ替えする。
【0028】
ビーム分配数算出器10は、フェンスサーチとトラッキングに割り当てるビーム本数を決定すると、そのビーム分配数算出結果18をビーム制御部9に出力する。ビーム制御部9では、ビーム分配数算出結果18に応じて、各追尾目標に対するトラッキングビームやフェンスサーチビームのビーム指向方向を制御する、図2に示すようなビーム制御情報19を生成し励振装置4に出力する。励振装置4は、ビーム制御情報19に基づいて空間に放射する電波の元となる位相制御信号20を送受信モジュール3に供給する。
【0029】
送受信モジュール3は、位相制御信号20に従って空間に放射又は空間から受信する電波を増幅すると共に、電波の位相を制御して任意方向に指向性を有するフェンスサーチビーム及びトラッキングビームを形成して素子アンテナ2を介して送受信する。これにより、実航跡処理が実行される(ステップST6)。
【0030】
以上のように、この実施の形態1によれば、探知された目標の航跡が追尾すべきTBMなどの移動体の航跡に合致する度合いに応じて、追尾に割り当てるビーム数を決定するための重要度を求める重要度算出器8と、重要度に応じて探知と追尾にそれぞれ割り当てるビーム数を算出するビーム分配数算出器10と、ビーム分配数算出器10が算出した分配数に従って探知及び追尾のビーム割り当てを制御するビーム制御部9とを備えるので、目標の重要度に応じたビーム分配により探知と追尾を同時に行うことで両者の性能を向上させることができる。
【0031】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図1に示した上記実施の形態1による構成と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。これら同一符号を付した構成要素については重複する説明を省略する。本実施の形態2において新規に追加された構成は、目標の速度情報を元に類別処理を行う類別処理装置23である。この類別処理装置23は、重要度算出器8が重要度を算出するにあたり、特に重要度(危険度)の高い目標を弁別する情報を重要度算出器8に与える。
【0032】
次に動作について説明する。
先ず、送受信モジュール3が、励振装置4からの位相制御信号20に従って電波の位相を制御し、素子アンテナ2を介して任意方向に指向性を有する電波をフェンスビームやトラッキングビームとして空間に放射し、目標で反射した電波を受信して増幅する。受信装置5は、送受信モジュール3からの受信信号11をディジタルの受信ビデオ信号に変換して目標検出装置6に出力する。目標検出装置6では、受信装置5から出力される受信ビデオ信号から目標情報を抽出し、目標の位置を算出した算出結果である探知プロットをプロットデータ13として追尾方式制御部7に出力する。ここまでは、上記実施の形態1と同様である。
【0033】
このあと、追尾方式制御部7は、目標検出装置6から出力されるプロットデータ13を類別処理用プロットデータとし、プロットデータ13から求めた目標の速度及び位置などを含む航跡データとをまとめたデータ21を類別処理装置23に出力する。類別処理装置23では、データ21中の航跡データから追尾目標の速度情報を抽出し、予め設定した所定範囲の速度差が追尾目標に生じたか否かを判定する。
【0034】
特定の飛行物体(移動体)には、その飛行中に特徴的な速度変化を起こすものがある。本実施の形態では、このような飛行物体をいち早く弁別することを目的とする。このため、このような飛行物体の速度変化による速度差を誤差なども含めて所定範囲を決定しておき、類別処理装置23に設定する。この特定の飛行物体としては、例えばTBMがある。TBMは、飛行中に弾頭とブースターが切り離されて特徴的な速度変化が生じる。つまり、弾頭はそのまま大きい速度を維持し、ブースターは失速して速度が小さくなる。この速度差は、TBMの種類によって搭載燃料も異なり、TBMの種類毎に特定することができる。
【0035】
そこで、類別処理装置23は、航跡データから追尾目標の速度情報を抽出し、1つの追尾目標から速度の大きい目標と速度の小さい目標とが発生した場合、これらの速度を比較してTBMに関する所定範囲の速度差にあれば、これら目標はTBMの弾頭とブースターであると判定する。このように、類別処理装置23では、速度差のみから追尾目標が特定の飛行物体であることを弁別する。これにより、特定の飛行物体をいち早く弁別することができる。なお、この場合、類別処理装置23は、速度の大きい弾頭に該当する目標について高い重要度を与える旨の弁別結果22を生成し、追尾方式制御部7に出力する。
【0036】
追尾方式制御部7では、類別処理装置23からの弁別結果22を含む航跡データ14を重要度算出器8に出力する。重要度算出器8では、弁別結果22も考慮して追尾目標の重要度を算出する。この後の処理は、上記実施の形態1と同様である。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、追尾目標に生じた速度差から当該追尾目標が特定の飛行物体(移動体)であることを弁別する類別処理装置23を備えたので、特定の飛行物体をいち早く弁別することができる。例えば、早期にTBM目標の弾頭を特定し、ビーム配分の重要度を高く設定しておくことで、重要度の高い目標を的確に追尾でき、且つ更なる効率化を見込むことができる。
【0038】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3によるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図4に示した上記実施の形態2による構成と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。これら同一符号を付した構成要素については重複する説明を省略する。本実施の形態3において新規に追加された構成は、目標のRCS(レーダ反射断面積)情報を元に類別処理を行うRCS分析器24である。このRCS分析器24は、重要度算出器8が重要度を算出するにあたり、類別処理装置23と共に、特に重要度(危険度)の高い目標を弁別する情報を重要度算出器8に与える。
【0039】
次に動作について説明する。
先ず、送受信モジュール3が、励振装置4からの位相制御信号20に従って電波の位相を制御し、素子アンテナ2を介して任意方向に指向性を有する電波をフェンスビームやトラッキングビームとして空間に放射し、目標で反射した電波を受信して増幅する。受信装置5は、送受信モジュール3からの受信信号11をディジタルの受信ビデオ信号に変換して目標検出装置6に出力する。目標検出装置6では、受信装置5から出力される受信ビデオ信号から目標情報を抽出し、目標の位置を算出した算出結果である探知プロットをプロットデータ13として追尾方式制御部7に出力する。ここまでは、上記実施の形態1と同様である。
【0040】
このあと、追尾方式制御部7は、目標検出装置6から出力されるプロットデータ13を類別処理用プロットデータとし、プロットデータ13から求めた目標の速度及び位置などを含む航跡データとをまとめたデータ21を類別処理装置23に出力する。類別処理装置23は、上記実施の形態2と同様な弁別処理を実行する前にデータ21をRCS分析器24にも出力する。RCS分析器24では、データ21中の航跡データから追尾目標のRCS(レーダ反射断面積)情報を抽出し、予め設定した所定範囲のRCS値であるか否かを判定する。
【0041】
特定の飛行物体(移動体)には、飛行中にその形態が変化して特徴的なRCS値変化が生じるものがある。本実施の形態では、このような飛行物体をいち早く弁別することを目的とする。このため、このような飛行物体のRCS値を誤差なども含めて所定範囲を決定しておき、RCS分析器24に設定する。この特定の飛行物体としては、例えばTBMがある。TBMは、飛行中に弾頭とブースターが切り離されるという特徴的な形態変化が生じる。このとき、弾頭はRCS値が小さくなり、燃料を搭載していたブースターは大きなRCS値を維持している。このRCS値は、TBMの種類によって異なり、TBMの種類毎に特定することができる。
【0042】
そこで、RCS分析器24は、航跡データから追尾目標の位置情報及びRCS値を抽出し、1つの追尾目標からRCS値の大きい目標と小さい目標とが発生した場合、これらのRCS値を比較して、進行方向の前方に位置する目標が所定範囲のRCS値であれば、これら目標はTBMの弾頭とブースターであると判定する。このように、RCS分析器24では、RCS値から追尾目標が特定の飛行物体であることを弁別する。これにより、特定の飛行物体をいち早く弁別することができる。なお、この場合、RCS分析器24は、RCS値の小さい弾頭に該当する目標について高い重要度を与える旨の弁別結果22を生成し、追尾方式制御部7に出力する。
【0043】
追尾方式制御部7では、RCS分析器24及び類別処理装置23からの弁別結果22を含む航跡データ14を重要度算出器8に出力する。重要度算出器8では、類別処理装置23からの弁別結果22に加えてRCS分析器24からの弁別結果22も考慮して追尾目標の重要度を算出する。これは、RCS値が目標と観測位置との位置関係(観測確度)により変化するため、即時にRCSの大小を判断することが困難であることによる。つまり、RCS分析器24による弁別結果は、類別処理装置23による弁別結果を補完する形で利用する。この後の処理は、上記実施の形態1と同様である。
【0044】
以上のように、この実施の形態3によれば、追尾目標のRCSから当該追尾目標が特定の飛行物体(移動体)であることを弁別するRCS分析器24を備えたので、特定の飛行物体をいち早く弁別することができる。例えば、早期にTBM目標の弾頭を特定し、ビーム配分の重要度を高く設定しておくことで、重要度の高い目標を的確に追尾でき、且つ更なる効率化を見込むことができる。
【0045】
なお、上記実施の形態3では、類別処理装置23とRCS分析器24とを併用する構成を示したが、RCS分析器24のみを搭載する構成であってもよい。この場合、上述したようにRCS値は、目標と観測位置との位置関係によって大小関係を特定しにくい。しかしながら、一定時間RCS値の観測を続けることで統計的に大小関係を判断することは可能である。そこで、RCS分析器24のみを搭載する構成の場合は、例えば上記のような処理にてRCS値を求めて弁別処理を実施する。
【0046】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4によるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図1に示した上記実施の形態1による構成と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。これら同一符号を付した構成要素については重複する説明を省略する。本実施の形態4において新規に追加された構成は、座標算出器25及び座標情報データベース26である。座標算出器25は、目標の仰角及び方位ベクトル情報から特定の飛行物体(移動体)の到着地点を予測する。例えば、TBMの着弾点を予測する。また、座標情報データベース26は、特定の地点に関する位置情報を重要度(危険度)に関連付けて格納したデータベースである。例えば、国の重要拠点の位置情報等が考えられる。
【0047】
次に動作について説明する。
先ず、送受信モジュール3が、励振装置4からの位相制御信号20に従って電波の位相を制御し、素子アンテナ2を介して任意方向に指向性を有する電波をフェンスビームやトラッキングビームとして空間に放射し、目標で反射した電波を受信して増幅する。受信装置5は、送受信モジュール3からの受信信号11をディジタルの受信ビデオ信号に変換して目標検出装置6に出力する。目標検出装置6では、受信装置5から出力される受信ビデオ信号から目標情報を抽出し、目標の位置を算出した算出結果でる探知プロットをプロットデータ13として追尾方式制御部7に出力する。ここまでは、上記実施の形態1と同様である。
【0048】
このあと、追尾方式制御部7は、目標検出装置6から出力されるプロットデータ13を類別処理用プロットデータとし、プロットデータ13から求めた目標の速度及び位置などを含む航跡データとをまとめたデータ21を座標算出器25に出力する。座標算出器25には、レーダにより取得される自己の座標情報が保持されており、データ21中の航跡データから追尾目標の仰角及び方位ベクトル情報を抽出し、これらの情報を用いて追尾目標の予想到着地点の座標情報を算出する。
【0049】
座標算出器25は、算出した予想到着地点の座標情報27aを座標情報データベース26の位置情報と照合し、合致する地点に関連付けられた重要度とその位置情報とを照合結果27bとして読み出す。この情報は、追尾方式制御部7に弁別結果22として出力される。追尾方式制御部7では、座標算出器25からの弁別結果22を含む航跡データ14を重要度算出器8に出力する。重要度算出器8では、座標算出器25からの弁別結果22に含まれる特定の地点に到着が予想される追尾目標に対し、その特定地点に関連付けられた重要度を付与する。
【0050】
例えば、追尾目標がTBMであり、座標情報データベース26が、国の重要拠点の位置情報を重要度に関連付けて格納するものである場合を考える。この場合、照合の結果、重要拠点に着弾すると予想される追尾目標には、その拠点の位置情報に関連付けられた重要度を追尾目標の重要度として付与する。
【0051】
以上のように、この実施の形態4によれば、追尾目標の予想等着地点を算出する座標算出器25と、国の重要拠点などの特定地点の位置情報に重要度を関連付けて格納する座標情報データベース26とを備え、座標算出器25が求めた予想等着地点と座標情報データベース26との内容を照合して、照合結果として得られた地点の重要度を追尾目標に付与することで、追尾目標の予想等着地点から追尾の重要度を決定することができる。
【0052】
なお、上記実施の形態4では、座標算出器25及び座標情報データベース26を上記実施の形態1の構成に適用した例を示したが、上記実施の形態2及び上記実施の形態3の構成に加えた態様であっても構わない。
【0053】
実施の形態5.
図7は、この発明の実施の形態5によるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図1に示した上記実施の形態1による構成と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。これら同一符号を付した構成要素については重複する説明を省略する。本実施の形態5において新規に追加された構成は、フェンスサーチビームのビームマネージメントを操作するフェンスビーム制御器29である。
【0054】
フェンスビーム制御器29は、ビーム制御部9によりトラッキングビームに関する制御信号が生成されておらず、追尾目標が無いと判断される場合にはフェンスサーチ機能を特定の目標に注力させることが可能である。具体的には、フェンスビームのフェンス幅を制御するフェンスビーム制御信号30を生成してビーム制御部9に出力する。ビーム制御部9は、このフェンスビーム制御信号30に従ったフェンス幅とするビーム制御情報19を生成して励振装置4を制御する。これにより、所望のフェンスビームマネージメントを実現することができる。
【0055】
例えば、近接国との情勢の変化に伴い、監視する必要性が高いミサイル発射基地がある場合には、フェンスビームのフェンス幅を絞って覆域(探知距離)を大きくし、通常のフェンスビームよりも遠距離の基地を重点的に監視することもできる。
【0056】
以上のように、この実施の形態5によれば、フェンスサーチビームのビームマネージメントを操作するフェンスビーム制御器29を設けたので、所望のフェンスビームマネージメントを実現することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態5では、フェンスビーム制御器29を上記実施の形態1の構成に付加した例を示したが、上記実施の形態2から上記実施の形態4までのいずれかの構成若しくはこれらの構成を組み合わせた構成に適用しても良い。
【0058】
実施の形態6.
図8は、この発明の実施の形態6によるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図1に示した上記実施の形態5による構成と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。これら同一符号を付した構成要素については重複する説明を省略する。本実施の形態6において新規に追加された構成は、ビーム厚み制御器31及びサーチデータ制御部32である。ビーム厚み制御器31は、フェンスビームの厚みを操作する制御信号をフェンスビーム制御器29に与えてフェンスビームの厚みを制御する。サーチデータ制御部32は、特定の飛行物体(移動体)に関する速度や方向、S/N比に関する情報を重要度に関連付けて格納するデータベースを有し、フェンスサーチで得られた航跡データ14から探知目標の速度や方向、S/N比に関する情報を収集してデータベース内容と照合してトラッキングの必要性の有無を判定する。
【0059】
例えば、TBM等の探知目標は、複数のビームを連ねたフェンスビームを横切って飛来する。また、フェンスビーム内にTBM等の探知目標が位置する時間は、探知目標の速度及びフェンスビームの厚さに依存し、フェンスサーチの1スキャンの時間をより短くすることで探知目標がフェンスビーム内を通過するまでに複数回の観測が可能になる。
【0060】
そこで、ビーム制御部9によりトラッキングビームに関する制御信号が生成されておらず、追尾目標が無いと判断される場合、本実施の形態によるビーム厚み制御器31は、フェンスビーム制御器29にフェンスビーム層を厚くする旨の制御情報を与えて、フェンスビーム内に探知目標が位置する時間を長くさせ、フェンスサーチのスキャン回数を増加させる。これにより、サーチビーム内で目標情報をより多く取得することができ、ひいては重要目標の早期発見を実現することができる。
【0061】
また、サーチデータ制御部32では、フェンスサーチが実行されている間、追尾方式制御部7から航跡データ14を取得し、フェンスサーチ内で得られる探知目標の速度、方向、S/N情報を収集する。このとき、自己に設けられた特定の飛行物体に関する速度や方向、S/N比に関する情報を重要度に関連付けて格納するデータベースの内容と照合する。この照合結果により、サーチデータ制御部32は、TBM等の重要度の高い目標であると判定すると、データベースから読み出した重要度をその目標の重要度算出結果15として追尾方式制御部7に出力する。
【0062】
追尾方式制御部7では、サーチデータ制御部32からの重要度算出結果15を含む航跡データ14を重要度算出器8に出力する。重要度算出器8では、サーチデータ制御部32からの重要度算出結果15に従って探知目標の重要度を決定する。この後の動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0063】
反対に、上記データベースに格納されるような重要度の高い飛行物体のものでなく、照合結果がどの情報にも合致しないものである場合、サーチデータ制御部32は、トラッキングする重要度が低いものであると判定し、トラッキングビームを割り振らないように低い重要度を重要度算出結果15として追尾方式制御部7に出力する。これにより、当該探知目標に対してはトラッキングビームが割り振られない。
【0064】
以上のように、この実施の形態6によれば、フェンスビームの厚みを操作するビーム厚み制御器31を備えることで、サーチビーム内で目標情報をより多く取得することができ、ひいては重要目標の早期発見を実現することができる。また、探知した目標のトラッキングの必要性の有無を判定するサーチデータ制御部32を備えたことで、重要度の高い目標を的確に追尾でき、トラッキングと併用することによるフェンスサーチ機能の低下を抑制することができる。
【0065】
なお、上記実施の形態6では、ビーム厚み制御器31及びサーチデータ制御部32を上記実施の形態1の構成に付加した例を示したが、これらのうちいずれかを備える構成でも良く、上記実施の形態2から上記実施の形態5までのいずれかの構成若しくはこれらの構成を組み合わせた構成に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ビームマネージメントの一例を示す図である。
【図3】実施の形態1によるレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態4によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態5によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態6によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーダ信号処理装置、2 素子アンテナ、3 送受信モジュール、4 励振装置、5 受信装置、6 目標検出装置、7 追尾方式制御部、8 重要度算出器、9 ビーム制御部、10 ビーム分配数算出器、11 受信信号、12 受信ビデオ信号、13 プロットデータ、14 航跡データ、15,17 重要度算出結果、16 データ、18 ビーム分配数算出結果、19 ビーム制御情報、20 位相制御信号、21 データ、22 弁別結果、23 類別処理装置、24 RCS分析器、25 座標算出器、26 座標情報データベース、27a 予想到着地点の座標情報、27b 照合結果、29 フェンスビーム制御器、30 フェンスビーム制御信号、31 ビーム厚み制御器、32 サーチデータ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知された目標の航跡が追尾すべき移動体の航跡に合致する度合いに応じて、追尾に割り当てるビーム数を決定するための重要度を求める重要度算出部と、
前記重要度に応じて探知と追尾にそれぞれ割り当てるビーム数を算出するビーム分配数算出部と、
前記ビーム分配数算出部が算出した分配数に従って探知及び追尾のビーム割り当てを制御するビーム制御部と
を備えたレーダ装置。
【請求項2】
探知された目標に生じた速度差に基づいて追尾すべき移動体であるか否かを分類する類別処理部を備えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
探知された目標のRCS値に基づいて追尾すべき移動体であるか否かを分類するRCS分析部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
特定の地点の位置情報を重要度に関連付けて格納した座標情報データベースと、探知された目標の航跡に関する情報を用いて当該目標の予想到着地点の座標を算出し、この算出結果と前記座標情報データベースの内容と照合する座標算出部とを備え、
重要度算出部は、前記座標算出部による照合結果として前記座標情報データベースの位置情報に合致した地点に関連付けられた重要度をその目標に付与することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項5】
フェンスビームのフェンス幅を制御するフェンスビーム制御部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項6】
フェンスビーム層の厚みを制御するビーム厚み制御部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項7】
探知された目標の航跡に関する情報に基づいて追尾の必要性の有無を判定するサーチデータ制御部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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