説明

レーダ装置

【課題】振幅及び位相情報を持つ連続するレンジビンの信号を加算し、目標の検出性能を改善できるレーダ装置を得る。
【解決手段】受信信号の周波数変換とI、Q位相検波を行い、I、Q成分の複素ビデオ信号を生成し、距離分解能で高距離分解能化を図った高距離分解能信号を出力する受信部4と、高距離分解能信号に対して、連続するレンジビンの信号に重み付けする為の荷重値を算出する荷重計算部6と、荷重値を用いて連続するレンジビンの信号に重み付けをする重み付け部7と、連続するレンジビンの信号を加算するレンジビン間積分部8と、目標寸法データと距離分解能の比からレンジビン数を設定し、レンジビン数だけ連続するレンジビンを距離方向へ移動するように各6、7及び8を制御する計算制御部5と、レンジビン間積分部8から出力される信号の検波を行う検波部9と、検波部9から出力される信号を用いて目標を検出する目標検出部10とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標寸法よりも小さい距離分解能で目標を検出するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波の送受信により目標の距離及び速度を測定する装置としてレーダ装置が知られている。この種のレーダ装置は、高周波の正弦波信号に変調が施された送信信号を空間へ放射し、目標により反射した送信信号を受信し、送信信号の送受信に要する時間から目標との相対距離を測定する。また、レーダ装置は、受信した信号のドップラー周波数を検出し、目標との相対速度を測定する。
【0003】
レーダ装置に用いられる信号として、正弦波信号を等間隔に区切りパルス信号とするパルス変調方式の信号、パルス信号のパルス内にFMチャープや符号等の変調を施してパルス圧縮した信号等があり、これらの中でパルス変調方式がしばしば用いられている。パルス変調方式による目標との相対距離の測定において、2つの異なる目標を分離して検出することができる最小距離は距離分解能と呼ばれ、式(1)で表される。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、ΔRは距離分解能、cは光速、TPWはパルス信号のパルス幅である。レーダ装置では、受信した信号をアナログ/ディジタル変換し時間を量子化することにより、距離方向の量子化が行われており、通常、距離方向の量子化単位、すなわちレンジビンは距離分解能と一致する。
【0006】
通常、パルス幅TPWは数マイクロ秒に設定される。TPW=1μsの場合、レンジビン寸法は、式(1)より約150mである。目標が艦船や航空機等であると想定すると、一般にレンジビン寸法のほうが目標寸法よりも大きい。このため、目標の存在するレンジビンが判明したとしても、目標との相対距離は約150m刻みで測定されるため、高精度の測距は困難である。
【0007】
そこで、パルス幅の短いパルスを用いる、あるいはパルス圧縮等の処理を用いることにより、目標寸法よりも小さい距離分解能を得て、目標との相対距離を高精度で測定し、かつ、目標の部分ごとの反射信号を用いて目標検出性能を改善するための対策が考えられている。
【0008】
目標の部分ごとの反射信号を受信し、レンジビンごとに複数個のパルスを用いてノンコヒーレント積分を実行後、連続するレンジビンに分散した目標の部分ごとの反射信号をレンジ方向に加算し、反射信号の強度を大きくすることにより、目標検出性能を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特許第3755297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のレーダ装置においては、上述したように連続するレンジビンの信号の加算は、ノンコヒーレント積分実行後の振幅情報のみを持つ信号に対して行われるため、振幅及び位相情報を用いてコヒーレントに連続するレンジビンの信号を加算することについては言及されておらず、目標の検出性能に改善の余地があった。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、振幅及び位相情報を持つ連続するレンジビンの信号を加算し、目標の検出性能を改善することができるレーダ装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るレーダ装置は、目標寸法よりも小さい距離分解能で目標を検出するレーダ装置であって、あらかじめ定めた変調方式で変調した送信信号を生成する送信部と、前記送信信号を空間へ放射するとともに、目標により反射し到来してくる前記送信信号を受信信号として受信するアンテナ部と、前記受信信号の周波数変換及びI、Q位相検波を行って、I成分、Q成分の複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ/ディジタル変換し、前記送信信号の変調方式に応じて決まる距離分解能で高距離分解能化を図ったレンジビンごとの信号を高距離分解能信号として出力する受信部と、前記高距離分解能信号に対して、レンジビン数だけ連続するレンジビンの信号に重み付けするための荷重値を算出する荷重計算部と、前記荷重値を用いて連続するレンジビンの信号に重み付けをする重み付け部と、前記重み付け部から出力され、目標の部分ごとに反射した受信信号が含まれる連続するレンジビンの信号を同相にした後、連続するレンジビンの信号を加算するレンジビン間積分部と、あらかじめ求めた目標寸法データと距離分解能との比からレンジビン数を設定し、レンジビン数だけ連続するレンジビンを距離方向へ移動するように前記荷重計算部、前記重み付け部及び前記レンジビン間積分部を制御する計算制御部と、前記レンジビン間積分部から出力される信号の検波を行う検波部と、前記検波部から出力される信号を用いて目標を検出する目標検出部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るレーダ装置は、振幅及び位相情報を持つ連続するレンジビンの信号を加算し、目標の検出性能を改善することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るレーダ装置について図1から図8までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。なお、この実施の形態1では、パルス変調方式を用いるレーダ装置について説明する。また、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0015】
図1において、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置は、送信部1と、サーキュレータ2と、アンテナ部3と、受信部4と、計算制御部5と、荷重計算部6と、重み付け部7と、レンジビン間積分部8と、検波部9と、目標検出部10とが設けられている。
【0016】
つぎに、この実施の形態1に係るレーダ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0017】
送信部1は、高周波の正弦波信号を目標寸法より小さい距離分解能に応じて決まるあらかじめ設定された狭パルス幅及びパルス繰返し周期でパルス変調した送信パルス信号を生成し、送信信号として出力する。
【0018】
サーキュレータ2は、送信部1からの送信信号を後述するアンテナ部3へ出力する。また、サーキュレータ2は、アンテナ部3からの受信信号を受信部4へ出力する。
【0019】
アンテナ部3は、サーキュレータ2からの送信信号を空間へ放射するとともに、目標により反射したパルス状の送信信号を受信信号として受信する。また、アンテナ部3は、受信信号をサーキュレータ2へ出力する。
【0020】
受信部4は、受信信号を高周波から低周波へ周波数変換した後、I、Q位相検波を行ってI成分、Q成分の複素ビデオ信号を生成し、複素ビデオ信号をアナログ/ディジタル変換して送信パルス信号のパルス幅と同じ時間間隔のレンジビンに分割した高距離分解能信号を出力する。図2は、送信部1から出力された1個の送信パルス信号と、1個の送信パルス信号に対して得られた高距離分解能信号を模式的に示しており、縦軸は高距離分解能信号の強度を示している。レンジビン寸法が目標寸法よりも小さいため、連続するレンジビンに目標の部分ごとの反射強度に応じた高距離分解能信号が得られる。
【0021】
計算制御部5は、後述する荷重計算部6、重み付け部7及びレンジビン間積分部8を制御するとともに、連続するレンジビンの信号を加算(レンジビン間積分と呼ぶ)する対象のレンジビンの個数を、レンジビン数として設定する。計算制御部5は、連続するレンジビンの寸法と目標寸法が一致するよう、あらかじめ求めた目標寸法データから得られる目標寸法Lと、距離分解能ΔRを用いて式(2)によりレンジビン数を求める。
【0022】
【数2】

【0023】
ただし、Pintはレンジビン数、F[x]はxの小数点第一位を四捨五入し整数に丸める操作を示す。
【0024】
計算制御部5は、レンジビン数Pintの連続するレンジビンを距離方向へ移動し、レンジビン間積分が距離方向にわたって行われるように制御する。以降、計算制御部5による制御が行われているものとして説明を行う。
【0025】
荷重計算部6は、受信部4から出力される高距離分解能信号に重み付けするための荷重値を算出する。この荷重計算部6は、最大比合成を用いて荷重値を算出する。一例として、図3を用いて、レンジビンの総数がPの高距離分解能信号に対し、レンジビン間積分するレンジビン数Pintを5として荷重値の算出方法を説明する。
【0026】
図3において、距離方向の1次元配列に、高距離分解能信号が格納されている。図3の1次元配列のデータからなる行列Xを式(3)で定義する。
【0027】
【数3】

【0028】
ただし、添字Tは行列の転置を示す。行列Xは行数P、列数1の行列、xはi番目のレンジビンの高距離分解能信号を示す。
【0029】
荷重計算部6は、レンジビン1からレンジビン5までに格納された合計5個の高距離分解能信号を抽出し、5個の荷重値を算出する。図4は、荷重計算部6が荷重値を算出する手順を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ステップ601では、5個の高距離分解能信号を用いて式(4)に示す5行1列の行列Xを生成する。
【0031】
【数4】

【0032】
ただし、行列Xの添字1はレンジビンの抽出を開始したレンジビンの番号を示す。
【0033】
次に、ステップ602では、行列Xの相関行列Rxxを式(5)により求める。
【0034】
【数5】

【0035】
ただし、Hは共役転置を示す。Rxxは5行5列の正方行列となる。
【0036】
そして、ステップ603では、相関行列Rxxの固有値分析を行うことにより、最大固有値に対応する固有ベクトルを求めることで荷重ベクトル(荷重値を要素とするベクトル)を得る。荷重ベクトルwmaxは式(6)で表される要素数5のベクトルである。
【0037】
【数6】

【0038】
荷重計算部6は、5個の荷重値w(k=1,2,…,5)を出力する。
【0039】
重み付け部7は、荷重計算部6からの荷重値を用いて受信部4からの高距離分解能信号に重み付けして出力する。図5は、重み付け部7の動作を示す図である。
【0040】
まず、ステップ701において、重み付け部7は、荷重計算部6からの荷重値の複素共役(以降、共役荷重値と呼ぶ)を求める。
【0041】
次に、ステップ702において、重み付け部7は、荷重計算部6が抽出したのと同じ高距離分解能信号(図3の例ではレンジビン1からレンジビン5までの信号)を抽出する。
【0042】
そして、ステップ703において、重み付け部7は、抽出したレンジビンごとの高距離分解能信号に共役荷重値を乗算する。図3の例では式(7)の乗算結果を得る。
【0043】
【数7】

【0044】
ただし、行列Zは乗算結果、*は複素共役であり、行列Zの要素は次の式(8)で表される。
【0045】
【数8】

【0046】
ただし、z1,iは行列Zの第i行の要素を示す。行列Z、zの添字1、及びiminは、レンジビンの抽出を開始したレンジビン番号を示す。
【0047】
共役荷重値の乗算操作により、レンジビン番号1から5までに存在する目標による反射信号の位相は互いに同位相となる。一方、レンジビン番号1から5までに雑音信号のみが存在する場合、雑音信号の位相は、ランダム性を保ち、互いに同位相とならない。
【0048】
重み付け部7は、乗算結果Zを出力する。
【0049】
レンジビン間積分部8は、重み付け部7からの出力をレンジビン間積分し出力する。図6を用いて、レンジビン間積分部8の動作を説明する。レンジビン間積分部8は、重み付け部7からの乗算結果Zの要素z1,i(i=1,2,3,4,5)を加算することによりレンジビン間積分を実行する。このレンジビン間積分は、次の式(9)により行う。
【0050】
【数9】

【0051】
ただし、yはレンジビン間積分結果を示す。yの添字1はレンジビンの抽出を開始したレンジビン番号が1であることを示す。
【0052】
レンジビン番号1から5までに目標による反射信号が存在する場合、目標による反射信号は同位相で積分される。一方、目標による反射信号が存在せず雑音信号のみが存在する場合、雑音信号は異なる位相で積分されるため、加算後の振幅は増大しない。
【0053】
以上説明したように、荷重計算部6、重み付け部7及びレンジビン間積分部8の動作により、レンジビン間積分が実行される。以上の説明は、レンジビン1からレンジビン5までを抽出しレンジビン間積分を実行する動作であった。レンジビン間積分結果yが算出されると、計算制御部5はレンジビン間積分の実行範囲を変更し、新たなレンジビンの高距離分解能信号を抽出しレンジビン間積分を実行するように制御する。
【0054】
すなわち、計算制御部5は、レンジビン2からレンジビン6までに格納された合計5個の高距離分解能信号を抽出し、レンジビン2からレンジビン6までのレンジビン間積分結果yを算出するように制御する。図7に示すように、次々とレンジビン間積分の実行範囲を変更し、レンジビンP−4からレンジビンPまでのレンジビンを用いて、レンジビン間積分結果y(P−4)を算出した後、計算制御部5はレンジビン間積分を行う制御を停止する。この動作により、レンジビン間積分が距離方向にわたり実行されたことになる。
【0055】
検波部9は、レンジビン間積分部8からのレンジビン間積分結果を検波する。レンジビン間積分部8からの出力は複素数のため、複素数を絶対値の2乗値|y(ただし、i=1,2,…,P−4)に換算後、検波後信号として出力する。
【0056】
目標検出部10は、検波部9から出力される信号から、目標を検出する。
【0057】
図8は、目標検出部10が目標を検出する様子を説明する図である。目標検出部10は、検波部9から出力されたレンジビンごとの検波後信号の中からピーク値を検出する。ピーク値があらかじめ設定したスレッショルド値ATH以上ならば目標とみなし検出する。一方、検波部9から出力された検波後信号がスレッショルド値ATH未満ならば雑音とみなす。図8には、実施の形態1及び従来技術の雑音電力も示しており、実施の形態1の雑音電力が従来技術の雑音電力よりも低減するため、従来よりも低電力の目標反射信号を検出することが可能となる。
【0058】
なお、本実施の形態1では、送信部1において、狭パルス幅及びパルス繰返し周期でパルス変調した送信信号を生成し、生成した送信信号の送受信を行い、受信部4において高距離分解能信号を生成する例を示したが、目標寸法よりも小さい距離分解能の信号を生成することの可能な、公知のFMチャープや符号等の変調によるパルス圧縮を用いて送信信号を生成し、生成した送信信号の送受信を行い、受信部4において高距離分解能信号を生成してもよく、狭パルス幅のパルス変調を用いる場合と同様に、図2に示す高距離分解能信号を得ることが可能である。
【0059】
以上のように、この実施の形態1によれば、高距離分解能化を図った信号に対して、連続するレンジビンの信号の位相補正後、レンジビン間積分を実行するように構成したので、目標からの反射信号に対しては、同位相で加算、すなわちコヒーレント積分が実行され、目標による反射信号の検出性能を改善させることが可能となる。
【0060】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るレーダ装置について図9から図17までを参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0061】
図9において、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置は、局部発振信号生成部11と、送信部1Aと、サーキュレータ2と、アンテナ部3と、受信部4Aと、合成帯域処理部12と、計算制御部5と、荷重計算部6と、重み付け部7と、レンジビン間積分部8と、検波部9と、レンジビン平均部13と、目標検出部10とが設けられている。
【0062】
つぎに、この実施の形態2に係るレーダ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0063】
上記の実施の形態1では、レンジビンごとの受信信号の数は1個であった。この実施の形態2では、有限個の送信パルス信号を繰り返し送信し、レンジビンごとに複数個の受信信号を取得し、レンジビン間積分を実行後、同一レンジビンの複数個の信号の平均を算出することに特徴を有しており、この場合の例について、例えばD.R.Wehner著、“High−Resolution Radar(1955)”、Artech House、記載の、合成帯域処理を適用した構成を用いて説明する。
【0064】
ただし、計算制御部5、荷重計算部6、重み付け部7、レンジビン間積分部8、検波部9及び目標検出部10については、上記の実施の形態1に係るレーダ装置で説明した機能と同様の機能をもつため、機能の説明を省略する。
【0065】
図9において、局部発振信号生成部11は、パルス信号を周波数変換するための局部発振信号を発生し、送信部1A及び受信部4Aに出力する。図10は有限個のパルス数をP個とした場合の局部発信信号の周波数を示す図である。図10に示すように、局部発信信号の周波数は、送信部1Aで発生する低周波パルス信号のパルス繰り返し時間TPRIごとに、周波数fからfP−1まで周波数ステップΔfずつ変化する。局部発振信号W(t)は、式(10)により表される。
【0066】
【数10】

【0067】
ただし、Re[ ]は[ ]内の実部を求める操作、Lは局部発振信号の振幅、fは送信最小周波数、nはパルスのインデックス番号、tは時刻、φは各送信周波数の初期位相、TPRIはパルス繰り返し時間、Tはパルス幅を示す。
【0068】
送信部1Aは、有限個の低周波送信パルス信号を発生し、局部発振信号を用いて低周波送信パルス信号のパルスごとに周波数変換し送信信号として出力する。図11は有限個のパルス数をPとし、周波数fからfP−1まで周波数ステップΔfずつパルスごとの周波数を変換する例を示す図である。ここで、繰り返し送信するP個の送信パルス信号S(t)は式(11)により表される。
【0069】
【数11】

【0070】
ただし、Aは送信信号の振幅を示す。なお、局部発振信号の周波数がfP−1になると、再びfから繰り返すことにより、送信部1Aは、周波数fからfP−1までのP個のパルス信号を繰り返し送信する。ここで、P個のパルス信号の繰り返し送信数をCPI(Coherent Pulse Interval)数と呼ぶ。
【0071】
アンテナ部3は、送信部1Aから出力された送信信号を電波として空間へ放射するとともに、目標により反射し到来してくる電波を受信信号として受信し、受信部4Aへ出力する。
【0072】
受信部4Aは、受信信号に含まれるパルスごとに、局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ/ディジタル変換を行い、複素ディジタルビデオ信号を生成し出力する。
【0073】
目標との相対速度が0m/sである場合を例とし、受信部4Aに入力された受信信号に含まれる受信パルス信号から複素ディジタルビデオ信号を生成する流れを説明する。
【0074】
受信信号に含まれる受信パルス信号U(t)は、式(11)に対応して式(12)により表される。
【0075】
【数12】

【0076】
ただし、A’は受信信号の振幅、Rは目標との相対距離、cは光速を示す。式(12)で表されるP個の受信パルス信号は、繰り返して受信される。図12は、一例として送信部1Aから出力されたP個の送信パルス信号と、受信部4Aに入力されるP個の受信パルス信号を示している。
【0077】
式(12)の受信パルス信号U(t)を式(10)の局部発振信号W(t)で周波数変換、及びI、Q位相検波を行い、式(13)により表される複素ビデオ信号V(t)が得られる。
【0078】
【数13】

【0079】
ただし、A”は複素ビデオ信号の振幅を示す。式(13)のV(t)を送信パルス幅と同じサンプリング間隔でアナログ/ディジタル変換し、パルス繰り返し時間TPRIごとに信号を抽出し複素ディジタルビデオ信号を生成する。受信パルス信号の同一レンジビンのn番目のパルスに対する複素ディジタルビデオ信号V(n)は、式(13)のn番目の複素ビデオ信号に対応して式(14)により表される。
【0080】
【数14】

【0081】
式(14)は、複素ディジタルビデオ信号がP個の離散値であることを示す。なお、送信部1AでCPI数がKの場合、P個の複素ディジタルビデオ信号がK組得られる。
【0082】
合成帯域処理部12は、受信部4Aより出力される複素ディジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を施し高距離分解能化を図り、高距離分解能信号を出力する。一例として、図13を用いて、P個の受信パルス信号から生成されるP個の複素ディジタルビデオ信号を用いて高距離分解能信号を生成する流れを模式的に説明する。
【0083】
図13において、受信部4Aで同一レンジビン(図13ではレンジビン番号3)のP個の受信パルス信号から生成される同一レンジビンのP点の複素ディジタルビデオ信号に対して、逆フーリエ変換を実行する。この結果、受信パルス信号が存在するレンジビンをP点に細分した高距離分解能信号が得られる。
【0084】
なお、送信部1AでCPI数がKの場合、P個の受信パルス信号ごとに得られるP点の複素ディジタルビデオ信号を逆フーリエ変換することにより、K組の高距離分解能信号が得られる。
【0085】
次に、荷重計算部6は、合成帯域処理部12から出力される高距離分解能信号に重み付けするための荷重値を算出して出力する。一例として、図14を用いて、CPI数を3、高距離分解能化を図った後のレンジビンの数をP、レンジビン間積分するレンジビン数Pintを5とした場合を例にして、荷重値を算出する方法を説明する。
【0086】
図14において、CPI数が縦方向、距離方向が横方向である2次元配列に高距離分解能信号が格納されている。図14の2次元配列のデータからなる行列Xrは、式(15)で表される。
【0087】
【数15】

【0088】
ただし、行列Xrは行数P、列数3の行列、xijはi番目のレンジビン、j番目のCPIの高距離分解能信号を示す。
【0089】
荷重計算部6は、荷重値の算出手順を示す図4のステップ601により、レンジビン1からレンジビン5に格納された合計15個の高距離分解能信号を抽出し、式(16)に示す5行3列の行列Xを生成する。
【0090】
【数16】

【0091】
ただし、行列Xの添字1はレンジビンの抽出を開始したレンジビン番号を示す。
【0092】
ステップ602では、行列Xの相関行列Rxxを式(17)により求める。
【0093】
【数17】

【0094】
xxは、5行5列の正方行列となる。
【0095】
ステップ603では、相関行列Rxxの最大固有値に対応する固有ベクトルを求めることで最大比合成の荷重ベクトル(荷重値を要素とするベクトル)を得る。荷重ベクトルwmaxは要素数5のベクトルであり、式(18)で表される。
【0096】
【数18】

【0097】
荷重計算部6は、得られた5個の荷重値w(k=1,2,…,5)を出力する。
【0098】
次に、重み付け部7は、荷重計算部6から出力される荷重値を用いて、合成帯域処理部12から出力される高距離分解能信号に重み付けして出力する。重み付けの動作手順を示す図5(a)のステップ701により、重み付け部7は荷重計算部6からの荷重値の複素共役(以降、共役荷重値と呼ぶ)を求める。
【0099】
次に、ステップ702において、重み付け部7は、荷重計算部6が抽出したのと同じ高距離分解能信号(図14の例ではレンジビン1からレンジビン5の信号)を抽出する。
【0100】
そして、ステップ703において、ステップ702で抽出した高距離分解能信号に共役荷重値を乗算する。図14の例では式(19)の乗算結果が得られる。
【0101】
【数19】

【0102】
ただし、行列Zは乗算結果、*は複素共役であり、行列Zの要素は式(20)で表される。
【0103】
【数20】

【0104】
ただし、z1,ijは行列Zの(i,j)成分を示す。なお、行列Z及びzの添字1はレンジビンの抽出を開始したレンジビン番号が1であることを示す。重み付け部7は、重み付け後の信号z1,ijを出力する。
【0105】
次に、レンジビン間積分部8は、重み付け部7から出力される、重み付け後の信号をレンジビン間積分し出力する。図15は、一例として図14で抽出した高距離分解能信号にレンジビン間積分を行う様子を模式的に示す図であり、図15に示すように、レンジビン間積分部8は、重み付け部7からの重み付け後の信号z1,ij(i=1,2,3,4,5,j=1,2,3)に対して、同一のCPI番号の5個のレンジビンの信号を加算する。加算は式(21)から(23)により行う。
【0106】
【数21】

【0107】
ただし、y1,j(j=1,2,3)はCPI番号がjのレンジビン間積分結果を示す。yの添字1はレンジビンの抽出を開始したレンジビン番号が1であることを示す。
【0108】
レンジビン間積分結果y1,j(j=1,2,3)が算出されると、計算制御部5はレンジビン間積分の実行範囲を変更し、新たなレンジビンの高距離分解能信号を抽出しレンジビン間積分を実行するように制御する。
【0109】
すなわち、計算制御部5は、レンジビン2からレンジビン6に格納された合計15個の高距離分解能信号を抽出し、レンジビン2からレンジビン6までのレンジビン間積分結果y2,j(j=1,2,3)を算出するように制御する。図16に示すように、次々とレンジビン間積分の実行範囲を変更し、レンジビンP−4からレンジビンPまでのレンジビンを用いて、レンジビン間積分結果y(P−4),j(j=1,2,3)を算出した後、計算制御部5はレンジビン間積分を行う制御を停止する。この動作により、レンジビン間積分が距離方向にわたり実行されたことになる。
【0110】
次に、検波部9は、レンジビン間積分部8から出力されるレンジビン間積分結果を検波する。レンジビン間積分部8から出力される信号は複素数のため、複素数の絶対値の2乗値|ym,j(m=1,2,…,P−4,j=1,2,3)に換算する。ただし、mはレンジビンの番号を示す。
【0111】
次に、レンジビン平均部13は、検波部9から出力された検波後の信号に対して、レンジビンごとにCPI方向で平均化する。図17は一例として、検波部9から出力された検波後の信号に対して、平均化を行う動作を模式的に示す図であり、本実施の形態2ではCPI数が3なので、CPI方向の平均化は式(24)により行う。
【0112】
【数22】

【0113】
ここで、|(−)y|はCPI方向で平均化した後のレンジビン間積分結果を示す。なお、(−)yは、yの上に−があることを表す。
【0114】
そして、目標検出部10は、レンジビン平均部13から出力される信号から、目標を検出する。
【0115】
以上のように、この実施の形態2によれば、有限個の送信パルス信号を繰り返し送信し、レンジビンごとに複数個の受信信号を取得するように構成したので、相関行列の計算に用いる受信信号の数が増加するので相関行列から求める荷重値の精度がより改善するとともに、同一レンジビンの受信信号の数が増加するため、目標検出性能を更に改善させることが可能である。
【0116】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るレーダ装置について図18から図21までを参照しながら説明する。図18は、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0117】
図18において、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置は、局部発振信号生成部11と、送信部1Aと、サーキュレータ2と、アンテナ部3と、受信部4Aと、合成帯域処理部12と、相対距離推定部14と、計算制御部5と、荷重計算部6と、重み付け部7と、レンジビン間積分部8と、検波部9と、レンジビン平均部13と、目標検出部10とが設けられている。
【0118】
図19は、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の相対距離推定部の構成を示すブロック図である。
【0119】
図19において、相対距離推定部14は、相関行列計算部14aと、固有値データ記憶部14bと、距離区間設定部14cとが設けられている。
【0120】
つぎに、この実施の形態3に係るレーダ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0121】
上記の実施の形態1及び2では、レンジビン間積分は、目標からの反射信号の有無と無関係に、距離方向にわたって実行していた。この実施の形態3では、相対距離推定部14で目標の存在する相対距離を推定し、推定した目標の存在する距離範囲に基づきレンジビン間積分の実行範囲を限定することに特徴を有しており、この場合の例について説明する。
【0122】
相対距離推定部14は、合成帯域処理部12から出力される高距離分解能信号を用いて、目標の存在する区間および雑音の区間を推定する。図19を用いて、相対距離推定部14の動作を説明する。
【0123】
相関行列計算部14aは、合成帯域処理部12から出力される高距離分解能信号の連続するレンジビンの信号を用いて相関行列及び相関行列の最大固有値を求める。
【0124】
図20は、相関行列計算部14aの動作を模式的に説明する図である。図20に示すように、相関行列計算部14aは、レンジビン1からレンジビン5までの15個の高距離分解能信号を抽出し、行列Xを生成し、荷重計算部6と同様の方法により、行列Xの相関行列、及び相関行列の最大固有値を求め、固有値データ記憶部14bに出力する。
【0125】
次に、相関行列計算部14aは、レンジビン2からレンジビン6までの15個の高距離分解能信号を抽出し、行列Xを生成し、行列Xの相関行列、及び相関行列の最大固有値を求め、固有値データ記憶部14bに出力する。レンジビン方向に次々と最大固有値を算出し、レンジビンP−4からレンジビンPの15個の高距離分解能信号を抽出し、行列XP−4を生成し、行列XP−4の相関行列、及び相関行列の最大固有値を算出する。
【0126】
図21(a)は、一例として、固有値データ記憶部14bに入力されたレンジビンごとの最大固有値の大きさを示す図であり、最大固有値の大きさは、距離(レンジビン)方向に対して凸形の特性となる。
【0127】
最大固有値の値は、目標からの反射信号強度に比例することが知られている。このため、距離区間設定部14cは、最大固有値の大きいレンジビンに目標からの反射信号が存在するとみなし、スレッショルド判定により目標が存在する距離区間を推定する。すなわち、最大固有値があらかじめ設定したスレッショルドBTH以上の連続するレンジビンの区間を求め、図21(b)に示すように、区間の下端をS1、上端をS2とする。
【0128】
距離区間設定部14cは、目標が存在する区間の上端及び下端を計算制御部5に出力する。計算制御部5は、相対距離推定部14から出力される目標が存在する区間に限定しレンジビン間積分を行うように制御する。
【0129】
以上のように、この実施の形態3によれば、目標の相対距離を事前に推定し、レンジビン間積分を行う区間を限定するように構成したので、レンジビン間積分の実行、特に、重み付け部7及びレンジビン間積分部8での計算量の低減が可能となる。
【0130】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るレーダ装置について図22から図25までを参照しながら説明する。図22は、この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0131】
図22において、この発明の実施の形態4に係るレーダ装置は、局部発振信号生成部11と、送信部1Aと、サーキュレータ2と、アンテナ部3と、受信部4Aと、合成帯域処理部12と、目標寸法推定部15と、計算制御部5と、荷重計算部6と、重み付け部7と、レンジビン間積分部8と、検波部9と、レンジビン平均部13と、目標検出部10とが設けられている。
【0132】
図23(a)は、この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の目標寸法推定部の構成を示すブロック図である。
【0133】
図23(a)において、目標寸法推定部15は、推定用計算制御部15aと、スイッチ15bと、推定用荷重計算部15cと、推定用重み付け部15dと、推定用レンジビン間積分部15eと、推定用積分データ記憶部15fと、繰り返し判定部15gと、推定用レンジビン平均部15hと、目標寸法設定部15iとが設けられている。
【0134】
つぎに、この実施の形態4に係るレーダ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0135】
上記の実施の形態1及び2では、計算制御部5において、レンジビン間積分するレンジビン数の設定に用いる目標寸法データは既知としていた。この実施の形態4では、目標寸法データが不明の場合、目標寸法推定部15で目標寸法を推定し、レンジビン間積分するレンジビン数を設定することに特徴を有しており、この場合の例について説明する。
【0136】
目標寸法推定部15は、合成帯域処理部12から出力された高距離分解能信号を用いて、目標寸法を推定する。図24は、目標寸法推定部15の動作を説明するための図である。図23及び図24を併用し、目標寸法推定部15の動作について説明する。
【0137】
推定用計算制御部15aは、スイッチ15b、推定用荷重計算部15c、推定用重み付け部15d、推定用レンジビン間積分部15eを制御する。以降、推定用計算制御部15aによる制御が行われているものとして説明を行う。
【0138】
スイッチ15bは、推定用荷重計算部15cに入力するデータを切換える。スイッチ15bは、図23(a)に示すように、はじめ端子A側に接続する。すると、合成帯域処理部12からの高距離分解能信号が推定用荷重計算部15cに入力される。
【0139】
推定用荷重計算部15cは、合成帯域処理部12から出力される高距離分解能信号に対して、連続する2個のレンジビンに重み付けするための推定用荷重値を算出する。図24(a)に示すように、レンジビン1からレンジビン2に格納された合計6個の高距離分解能信号を用いて、式(25)に示す行列Xe1を生成する。
【0140】
【数23】

【0141】
推定用荷重計算部15cは、荷重計算部6と同様の動作を行い、式(25)で表される行列Xe1の相関行列を式(26)に示すように求める。
【0142】
【数24】

【0143】
そして、相関行列Rxxの最大固有値に対応する固有ベクトルを求めることで荷重ベクトル(荷重値を要素とするベクトル)を得る。固有ベクトルwemaxは、式(27)で表される要素数2のベクトルである。
【0144】
【数25】

【0145】
推定用荷重計算部15cは、荷重値wei(i=1,2)を推定用重み付け部15dに出力する。
【0146】
推定用重み付け部15dは、推定用荷重計算部15cからの推定用荷重値で高距離分解能信号を重み付けして出力する。図24(b)に示すように、推定用荷重計算部15cで求めた推定用荷重値の複素共役(以降、共役推定荷重値と呼ぶ)を、推定用荷重計算部15cが抽出した高距離分解能信号に乗算し、式(28)の行列Ze1を得る。
【0147】
【数26】

【0148】
ただし、行列Ze1は乗算結果を表し、行列Ze1の要素は式(29)で表される。
【0149】
【数27】

【0150】
ただし、ze1,ijは行列Ze1の(i,j)成分を示す。推定用重み付け部15dは行列Ze1を推定用レンジビン間積分部15eに出力する。
【0151】
推定用レンジビン間積分部15eは、推定用重み付け部15dから出力された行列Ze1をレンジビン間積分する。図24(c)に示すように、行列Ze1の要素ze1,ij(i=1,2,j=1,2,3)を式(30)から式(32)までにより加算することでレンジビン間積分を実行する。
【0152】
【数28】

【0153】
ただし、ye1,j(j=1,2,3)は推定用レンジビン間積分結果を示す。推定用レンジビン間積分部15eは、ye1,j(j=1,2,3)を推定用積分データ記憶部15fに出力する。
【0154】
推定用レンジビン間積分結果が推定用積分データ記憶部15fに出力された後、推定用計算制御部15aは、レンジビン間積分の実行範囲を変更し、新たなレンジビンの高距離分解能後信号を抽出し、レンジビン間積分を実行するように制御する。
【0155】
すなわち、推定用計算制御部15aは、図24(d)に示すように、レンジビン2からレンジビン3に格納された6個の高距離分解能信号を抽出し、レンジビン2からレンジビン3までのレンジビン間積分結果ye2,j(j=1,2,3)を算出するように制御する。続いて、推定用計算制御部15aは、図24(e)に示すように、レンジビンP−1からレンジビンPを用いて、レンジビン間積分結果ye(P−1),j(j=1,2,3)を算出するまで、レンジビン間積分の実行範囲を1レンジビンずつ変更し、レンジビン間積分を行うように制御し、レンジビン間積分を行う制御を停止する。
【0156】
なお、距離(レンジビン)方向の点数をPに保つため、レンジビン番号Pの高距離分解能信号を推定用積分データ記憶部15fに格納した後、スイッチ15bのスイッチを、図23(c)に示すように、端子B側に切換える。
【0157】
推定用レンジビン間積分部15eは、推定用積分データ記憶部15fに格納していた、レンジビン間積分結果及びレンジビン番号Pの信号を、繰り返し判定部15gに出力する。
【0158】
繰り返し判定部15gは、推定用レンジビン間積分部15eからの出力を、推定用荷重計算部15cへ出力する。すなわち、本実施の形態4において、目標寸法推定部15は、レンジビン間積分の実行結果に、再度レンジビン間積分を行うという動作を繰り返し実行するものとする。
【0159】
レンジビン間積分の繰り返しの回数が、あらかじめ設定した回数に達すると、レンジビン間積分結果を推定用レンジビン平均部15hへ出力する。
【0160】
推定用レンジビン平均部15hは、繰り返し判定部15gからのレンジビン間積分結果を絶対値の2乗値に換算後、CPI方向に平均化処理を行う。CPI方向の平均化は、本実施の形態4のCPI数が3なので、式(33)により行う。
【0161】
【数29】

【0162】
ここで、|(−)yem|はCPI方向で平均化した、レンジビン間積分結果を示す。なお、(−)yは、yの上に−があることを表す。
【0163】
目標寸法設定部15iは、推定用レンジビン平均部15hからの出力に対し、目標の存在するレンジビンを検出し、目標寸法を設定する。図25に示すように、推定用レンジビン平均部15hから出力されたレンジビン間積分結果のピーク値を検出し、検出したピーク値があらかじめ設定したスレッショルド値CTH以上ならば目標とし、スレッショルド値CTH以上の連続するレンジビンの範囲が目標寸法に一致するとみなす。目標寸法設定部15iは、目標寸法に一致するとみなしたレンジビン数Leを計算制御部5に出力する。
【0164】
計算制御部5は、レンジビン間積分するレンジビン数をLeに設定し、レンジビン間積分を実施するように制御する。
【0165】
以上のように、この実施の形態4によれば、目標寸法を推定し、レンジビン間積分するレンジビン数を設定するように構成したので、目標寸法データが不明の場合でも、レンジビン間積分するレンジビン数を推定し、設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の送信パルス信号及び高距離分解能信号を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の荷重計算部の動作を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の荷重計算部の荷重値算出動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の重み付け部の動作を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置のレンジビン間積分部の動作を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の計算制御部の動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の検波部及び目標検出部の動作を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の局部発振信号生成部の局部発振信号を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の送信パルス信号を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の送信及び受信パルス信号を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の合成帯域処理部の動作を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の荷重計算部の動作を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置のレンジビン間積分部の動作を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の計算制御部の動作を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置のレンジビン平均部の動作を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図19】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の相対距離推定部の構成を示すブロック図である。
【図20】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の相対距離推定部の相関行列計算部の動作を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の相対距離推定部の固有値データ記憶部のデータを示す図である。
【図22】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図23】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の目標寸法推定部の構成を示すブロック図である。
【図24】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の目標寸法推定部の動作を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の目標寸法推定部の目標寸法設定部の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0167】
1 送信部、1A 送信部、2 サーキュレータ、3 アンテナ部、4 受信部、4A 受信部、5 計算制御部、6 荷重計算部、7 重み付け部、8 レンジビン間積分部、9 検波部、10 目標検出部、11 局部発振信号生成部、12 合成帯域処理部、13 レンジビン平均部、14 相対距離推定部、14a 相関行列計算部、14b 固有値データ記憶部、14c 距離区間設定部、15 目標寸法推定部、15a 推定用計算制御部、15b スイッチ、15c 推定用荷重計算部、15d 推定用重み付き部、15e 推定用レンジビン間積分部、15f 推定用積分データ記憶部、15g 繰り返し判定部、15h 推定用レンジビン平均部、15i 目標寸法設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標寸法よりも小さい距離分解能で目標を検出するレーダ装置であって、
あらかじめ定めた変調方式で変調した送信信号を生成する送信部と、
前記送信信号を空間へ放射するとともに、目標により反射し到来してくる前記送信信号を受信信号として受信するアンテナ部と、
前記受信信号の周波数変換及びI、Q位相検波を行って、I成分、Q成分の複素ビデオ信号を生成し、生成した複素ビデオ信号をアナログ/ディジタル変換し、前記送信信号の変調方式に応じて決まる距離分解能で高距離分解能化を図ったレンジビンごとの信号を高距離分解能信号として出力する受信部と、
前記高距離分解能信号に対して、レンジビン数だけ連続するレンジビンの信号に重み付けするための荷重値を算出する荷重計算部と、
前記荷重値を用いて連続するレンジビンの信号に重み付けをする重み付け部と、
前記重み付け部から出力され、目標の部分ごとに反射した受信信号が含まれる連続するレンジビンの信号を同相にした後、連続するレンジビンの信号を加算するレンジビン間積分部と、
あらかじめ求めた目標寸法データと距離分解能との比からレンジビン数を設定し、レンジビン数だけ連続するレンジビンを距離方向へ移動するように前記荷重計算部、前記重み付け部及び前記レンジビン間積分部を制御する計算制御部と、
前記レンジビン間積分部から出力される信号の検波を行う検波部と、
前記検波部から出力される信号を用いて目標を検出する目標検出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記送信部は、高周波の正弦波信号を目標寸法より小さい距離分解能に応じて決まるあらかじめ設定された狭パルス幅及びパルス繰返し周期でパルス変調した送信パルス信号を生成し、送信信号として出力する
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記送信部は、目標寸法より小さい距離分解能に応じて決まるあらかじめ設定されたパルス信号のパルス内に所定の変調を施してパルス圧縮した信号を生成し、送信信号として出力する
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
目標寸法よりも小さい距離分解能で目標を検出するレーダ装置であって、
パルス信号を周波数変換するための局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、
有限個の低周波送信パルス信号を発生し、前記局部発振信号を用いて低周波送信パルス信号のパルスごとに周波数変換し送信信号として出力する送信部と、
前記送信信号を空間へ放射するとともに、目標により反射し到来してくる前記送信信号を受信信号として受信するアンテナ部と、
前記受信信号に含まれるパルスごとに、前記局部発振信号を用いて周波数変換、及びI、Q位相検波を行って複素ビデオ信号を生成した後、生成した複素ビデオ信号にアナログ/ディジタル変換を行い、複素ディジタルビデオ信号を生成し出力する受信部と、
前記受信部より出力される複素ディジタルビデオ信号を用いて合成帯域処理を施し高距離分解能化を図り、高距離分解能信号を出力する合成帯域処理部と、
前記高距離分解能信号に対して、レンジビン数だけ連続するレンジビンの信号に重み付けするための荷重値を算出する荷重計算部と、
前記荷重値を用いて連続するレンジビンの信号に重み付けをする重み付け部と、
前記重み付け部から出力され、目標の部分ごとに反射した受信信号が含まれる連続するレンジビンの信号を同相にした後、連続するレンジビンの信号を加算するレンジビン間積分部と、
あらかじめ求めた目標寸法データと距離分解能との比からレンジビン数を設定し、レンジビン数だけ連続するレンジビンを距離方向へ移動するように前記荷重計算部、前記重み付け部及び前記レンジビン間積分部を制御する計算制御部と、
前記レンジビン間積分部から出力される信号の検波を行う検波部と、
前記検波部から出力された検波後の信号に対して、レンジビンごとにCPI方向で平均化するレンジビン平均部と、
前記レンジビン平均部から出力される信号を用いて目標を検出する目標検出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
前記合成帯域処理部から出力される高距離分解能信号を用いて、目標の存在する距離範囲を推定する相対距離推定部をさらに備え、
前記計算制御部は、推定した目標の存在する距離範囲で前記荷重計算部、前記重み付け部及び前記レンジビン間積分部を制御する
ことを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記相対距離推定部は、
前記合成帯域処理部から出力される高距離分解能信号の連続するレンジビンの信号を用いて相関行列及び相関行列の最大固有値を求める相関行列計算部と、
前記相関行列及び相関行列の最大固有値を記憶する固有値データ記憶部と、
最大固有値があらかじめ設定した第1の閾値以上の連続するレンジビンの区間である距離範囲を設定する距離区間設定部とを有する
ことを特徴とする請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記合成帯域処理部から出力される高距離分解能信号を用いて、目標寸法を推定する目標寸法推定部をさらに備え、
前記計算制御部は、推定した目標寸法データと距離分解能との比からレンジビン数を設定し、レンジビン数だけ連続するレンジビンを距離方向へ移動するように前記荷重計算部、前記重み付け部及び前記レンジビン間積分部を制御する
ことを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記目標寸法推定部は、
前記合成帯域処理部から出力される高距離分解能信号に対して、連続するレンジビンの信号に重み付けするための推定用荷重値を算出する推定用荷重計算部と、
前記推定用荷重値を用いて高距離分解能信号に重み付けをする推定用重み付け部と、
前記推定用重み付け部から出力された行列をレンジビン間積分する推定用レンジビン間積分部と、
前記推定用レンジビン間積分部から出力されたレンジビン間積分結果をCPI方向で平均化する推定用レンジビン平均部と、
前記推定用レンジビン平均部から出力されたレンジビン間積分結果のピーク値を検出し、検出したピーク値があらかじめ設定した第2の閾値以上の連続するレンジビンの範囲を目標寸法として設定する目標寸法設定部とを有する
ことを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−60318(P2010−60318A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223664(P2008−223664)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】