説明

レーダ装置

【課題】複数のパルスを送受信して、検出された信号の偏波特性の時間変化を観測し、その変化量に基づいてマルチパス波と直接波を判定する。
【解決手段】互いに直交する偏波特性を有する二つのアンテナ10、11と、二つのアンテナのうち、送信においてはいずれか一方を駆動させ、受信においては双方を駆動させて、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器9と、複数のパルスの送受信によって得られた受信信号を一時的に蓄積するメモリ13と、メモリから読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出部14と、検出された目標信号の偏波度を算出する偏波度算出部15と、算出された偏波度の値を用いて検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する偏波度利用マルチパス判定部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチパス波と直接波の判別を目的とするレーダ装置に関するものであり、特に偏波情報を用いたマルチパス波と直接波の判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを用いて地表面付近に存在する目標物を観測する場合、地表面で発生するマルチパス波の影響で、レーダの目標検出性能や目標追尾性能が劣化する。したがって、目標からの直接波とマルチパス波を判別する方法が必要となる。
【0003】
ここで、本明細書における直接波とマルチパス波の定義を説明する。レーダ装置から送信された電波が目標で散乱されて受信されるまでの経路を考えた場合、レーダと目標を結んだ直線の経路を往復する直接波の経路に対し、レーダ装置から送信された電波が目標で散乱した後に地表面で再度反射する、あるいは逆に地表面で反射した後に目標で散乱する波の経路を1回反射マルチパス波の経路とし、レーダ装置から送信された電波が地表面で反射した後に目標で散乱し、その後再度地表面で反射する波の経路を2回反射マルチパス波の経路とする。また、以下では、1回反射マルチパス波と2回反射マルチパス波をまとめてマルチパス波と呼ぶことがある。
【0004】
マルチパス波を直接波と判別する方法には、受信波の垂直偏波と水平偏波の強度を比較し、その大小関係によってマルチパス波の存在を判定する方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−28714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受信波の垂直偏波と水平偏波の強度を比較し、その大小関係によってマルチパス波の存在を判定する従来の方法では、目標の偏波特性そのものの影響で、垂直偏波の強度と水平偏波の強度に差が出る場合は、マルチパス波と直接波を正しく判定できない問題があった。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、複数のパルスを送受信して、検出された信号の偏波特性の時間変化を観測し、その変化量に基づいてマルチパス波と直接波を判定することができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るレーダ装置は、互いに直交する偏波特性を有する二つのアンテナと、前記二つのアンテナのうち、送信においてはいずれか一方を駆動させ、受信においては双方を駆動させて、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器と、複数のパルスの送受信によって得られた受信信号を一時的に蓄積するメモリと、前記メモリから読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出手段と、前記目標検出手段によって検出された目標信号の偏波度を算出する偏波度算出手段と、前記偏波度算出手段によって算出された偏波度の値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する偏波度利用マルチパス判定手段とを備えたものである。
【0009】
または、前記偏波度算出手段の代わりに、前記目標検出手段によって検出された目標信号のエントロピーを算出するエントロピー算出手段を備えると共に、前記偏波度利用マルチパス判定手段の代わりに、前記エントロピー算出手段によって算出されたエントロピーの値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定するエントロピー利用マルチパス判定手段を備える。
【0010】
または、前記偏波度算出手段の代わりに、前記目標検出手段によって検出された目標信号の偏波チャネル間相関を算出する偏波チャネル間相関算出手段を備えると共に、前記偏波度利用マルチパス判定手段の代わりに、前記偏波チャネル間相関算出手段によって算出された偏波チャネル間相関の値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する相関利用マルチパス判定手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数のパルスを送受信して、検出された信号の偏波特性の時間変化を観測し、その変化量に基づいてマルチパス波と直接波を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置は、パルス信号を生成して送受切替器8及び偏波切替器9を介して第1または第2の偏波送受信アンテナ10または11から空間に放射させる送信機7と、互いに直交する偏波特性を有する第1及び第2偏波送受信アンテナ10及び11と、第1及び第2偏波送受信アンテナ10及び11のうち、送信においてはいずれか一方、受信においては双方を駆動させ、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器9と、各アンテナ10及び11で受信された散乱波の各受信信号をそれぞれ偏波切替器9及び送受切替器8を介して受信する受信機12と、複数のパルスの送受信によって得られた信号を一時的に蓄積するメモリ13と、メモリ13から読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出部14と、目標検出部14により検出された信号の偏波度を算出する偏波度算出部15と、偏波度算出部15により算出された偏波度の値を用いて目標検出部14により検出された信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する偏波度利用マルチパス判定部16とを備える。
【0013】
図1において、送信機7がパルス信号を生成すると、送受切替器8が当該パルス信号を偏波切替器9に送る。偏波切替器9は、第1偏波送受信アンテナ10を駆動することにより、そのパルス信号を第1偏波送受信アンテナ10から空間に放射させる。空間に放射されたパルス信号は観測対象によって散乱される。
【0014】
偏波切替器9は、第1偏波送受信アンテナ10と第2偏波送受信アンテナ11の双方を駆動し、観測対象によって散乱された散乱波を各アンテナでそれぞれ受信すると、散乱波の各受信信号を、それぞれ送受切替器9を介して受信機12に送る。ここで、第1偏波送受信アンテナ10と第2偏波送受信アンテナ11の偏波特性は互いに直交する関係を有する。第1偏波送受信アンテナ10および第2偏波送受信アンテナ11における偏波特性が直交する組み合わせとしては、例えば、垂直偏波と水平偏波の組み合わせや、右旋円偏波と左旋円偏波の組み合わせなどが考えられる。
【0015】
受信機12は、第1偏波送受信アンテナ10と第2偏波送受信アンテナ11が受信した散乱波の受信信号のそれぞれに対して、位相検波処理とA/D変換処理およびレンジ圧縮処理を実施し、それぞれの受信信号の振幅と位相を示すディジタル受信信号X1mn、X2mnを出力する。受信機12から出力された受信信号X1mn、X2mnはメモリ13に送られ、一時保存される。なお、Xpmnは、第p偏波チャネル(p=1,2,3,4,詳細は後述する)m番目(m=0,1,・・・,M−1)のパルスの受信信号のn番目(n=0,1,・・・,N−1)のレンジセルにおける値である。ここで、Mはパルス数であり、Nはレンジセル数である。パルスをM個送受信するタイミングについては後述する。
【0016】
同様に、送信機7で生成したパルスは、送受切替器8を介して偏波切替器9に送られ、これを第2偏波送受信アンテナ11から観測対象に照射される。第1偏波送受信アンテナ10と第2偏波送受信アンテナ11において受信された散乱波の受信信号に対しても、受信機12で同様の処理を繰り返すことにより、受信信号X3mn、X4mnを得る。受信機12から出力された受信信号X3mn、X4mnはメモリ13に送られ、一時保存される。
【0017】
なお、ここで、第1偏波チャネルの受信信号は、第1偏波送受信アンテナ10で送信して第1偏波送受信アンテナ10で受信した受信信号とし、第2偏波チャネルの受信信号は、第1偏波送受信アンテナ10で送信して第2偏波送受信アンテナ11で受信した受信信号とし、また、第3偏波チャネルの受信信号は、第2偏波送受信アンテナ11で送信して第2偏波送受信アンテナ11で受信した受信信号とし、第4偏波チャネルの受信信号は、第2偏波送受信アンテナ11で送信して第1偏波送受信アンテナ10で受信した受信信号として定義する。
【0018】
図2は、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作を説明するためのもので、第1偏波送受信アンテナ10と第2偏波送受信アンテナ11の各時刻の動作モードについて示している。図中のインターバルは、受信信号X1mn、X2mn、X3mn、X4mnの一組を得るのに要する処理のひとまとめである。インターバルの時間をT[秒]とする。このインターバルをM回繰り返すことによって、各偏波チャネルの信号をMパルス分取得する。
【0019】
レーダ装置が、送受アンテナの位置が等しいモノスタティック構成の場合には、受信信号X2mnとX4mnが等しいことは、文献“Radar polarimetry for geoscience applications”(Ulaby他著、Artech House Inc., 1990)などに示されており、周知である。そこで、以下の説明においては、受信信号X4mnは用いず、3つの偏波チャネルの受信信号X1mn、X2mn、X3mnのみを用いる。なお、偏波チャネルの数が3つ以外の場合についての拡張は容易である。以上によって取得された偏波チャネル3チャネルのMパルス、Nレンジセル分の信号はメモリ13に一時保存される。
【0020】
目標検出部14は、メモリ13から読み出した受信信号Xpmn(p=1,2,3;m=0,・・・,M−1;n=0,・・・,N−1)に対して、目標検出処理を適用して目標信号を検出する。目標検出処理は、例えば文献“レーダ信号処理”(電子情報通信学会編・コロナ社)に記載のCFAR処理などを用いて実施する。なお、目標検出部14における目標検出方式はどのような方式を用いても構わない。目標検出部14は、目標信号が検出されたレンジセルntにおける受信信号を出力する。以下では、目標検出部14から出力される信号をSpm(p=1,2,3;m=0,・・・,M−1)と表記する。ただし、Spmは受信信号Xpmnと次式(1)の関係を満たす。
【0021】
【数1】

【0022】
偏波度算出部15は、目標検出部14から出力される信号Spmを用いて偏波度を算出する。偏波度の算出手順について説明する。まず、受信信号から下式(2)、(3)に示すような行列Mを算出する。Mのような行列は観測対象の散乱の平均的な偏波特性を表すものであり、ミュウラー行列と呼ばれている。
【0023】
【数2】

【0024】
次に、任意の入射偏波状態をストークスベクトルgで表現し、gが入射した場合の散乱偏波の状態を表すストークスベクトルgを次式(4)によって算出する。
【0025】
【数3】

【0026】
上記によって算出されたストークスベクトルgから次式(5)によって偏波度D(g)を算出する。なお、D(g)という表記は、偏波度が入射偏波状態gの関数となっていることに由来する。
【0027】
【数4】

【0028】
Mパルス分の目標信号の偏波特性に変化がなければ、ここで算出される偏波度D(g)は、最大値1をとる。偏波特性がパルス毎に変化する場合は、偏波度D(g)は0以上1未満の値をとり、変化の度合いが大きいほど、偏波度D(g)の値は小さくなる。偏波度算出部15は以上によって算出された偏波度D(g)を出力する。
【0029】
ここで、入射偏波状態gは任意の状態を選択してよいが、複数の状態を設定しても良い。その場合は、各入射偏波状態に対して、偏波度が計算される。したがって、例えば、入射偏波状態として、gi1,gi2,・・・,giHのH通りの状態を設定した場合、偏波度算出部15は、各入射偏波状態に対応する偏波度D(gi1)、D(gi2),・・・,D(giH)を出力する。
【0030】
なお、ミュウラー行列、ストークスベクトル、偏波度などの定義に関する詳細は、文献“Radar polarimetry for geoscience applications”(Ulaby他著、Artech House Inc., 1990)などに詳しい。
【0031】
偏波度算出部15から出力された偏波度D(gih),(h=1,2,・・・,H)は偏波度利用マルチパス判定部16に送られる。偏波度利用マルチパス判定部16は、入力された偏波度D(gih)の値を予め設定した閾値と比較する。以下では、偏波度算出部15において設定した入射偏波状態の数が1個(H=1)の場合と、複数個(H>1)の場合に分けて説明する。
【0032】
H=1の場合、入力される偏波度はD(gi1)の値一つである。これを予め設定した閾値T(gi1)と比較することによって以下のように判定を行う。
D(gi1)<T(gi1)⇒ マルチパス波
D(gi1)≧T(gi1)⇒ 直接波
【0033】
H>1の場合、入力される偏波度の値は複数あるため、以下のように、入力された偏波度の平均値を閾値Tと比較する。
【0034】
【数5】

【0035】
あるいは、一度、入射偏波状態ごとに判定を行った後、多数決などによって最終的な判定を行う。この場合は、入射偏波状態の数は奇数にするのが望ましい。
【0036】
[D(gih)<T(gih)を満たす入射偏波状態の数]
> [D(gih)≧T(gih)を満たす入射偏波状態の数] ⇒ マルチパス波
[D(gih)<T(gih)を満たす入射偏波状態の数]
≦ [D(gih)≧T(gih)を満たす入射偏波状態の数] ⇒ 直接波
【0037】
以上から明らかなように、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置によれば、パルスを複数送受信して、その間の偏波特性の変化量をもとに直接波とマルチパス波の判定を行うので、偏波情報を用いて直接波とマルチパス波を判別する際に、目標の偏波特性の影響を低減できる効果を奏する。
【0038】
すなわち、マルチパス波は目標と取り巻く周囲の環境との間で複数回反射しているため、偏波特性の時間変化量が、直接波のそれに対して大きいことが期待される。したがって、時間変化量が比較的大きい信号をマルチパス波によるものと判定することにより、目標の偏波特性そのものの影響を低減することが出来る。
【0039】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図3において、図1に示す構成と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。図3において、図1に示す構成と異なる点は、偏波度算出部15の代わりに、目標検出部14により検出された信号のエントロピーを算出するエントロピー算出部17が設けられ、偏波度利用マルチパス判定部16の代わりに、エントロピー算出部17により算出されたエントロピーの値を用いて目標検出部14により検出された信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定するエントロピー利用マルチパス判定部18が設けられている点である。
【0040】
エントロピー算出部17は、目標検出部14から出力される信号Spmを用いてエントロピー量を算出する。エントロピー量は0以上1以下の実数値をとる量であり、検出された信号の偏波特性のばらつきを図る指標である。エントロピー算出部17におけるエントロピーの算出手順を説明する。まず、受信信号から下記のような共分散行列Cを算出する。
【0041】
【数6】

【0042】
次に、共分散行列Cの固有値分解を行い、3つの固有値λ,λ,λを算出する。これらの固有値の値を用いてエントロピーHを次式によって算出する。
【0043】
【数7】

【0044】
エントロピー算出部17は、以上によって算出されたエントロピーHを出力する。エントロピーの値が1に近いほど、検出された信号の偏波特性の時間変化が大きいことを示す。また、エントロピーが0の場合は、偏波特性の時間変化は無いことを意味する。出力されたエントロピーHは、エントロピー利用マルチパス判定部18に送られる。エントロピー利用マルチパス判定部18は、入力されたエントロピーHを予め設定した閾値Tと比較して、以下のように判定を行う。
【0045】
H>T⇒ マルチパス波
H≦T⇒ 直接波
【0046】
以上から明らかなように、この発明の実施の形態2のレーダ装置によれば、パルスを複数送受信して、その間の偏波特性の変化量をもとに直接波とマルチパス波の判定を行うので、偏波情報を用いて直接波とマルチパス波を判別する際に、目標の偏波特性の影響を低減できる効果を奏する。
【0047】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図4において、図1に示す構成と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。図4において、図1に示す構成と異なる点は、偏波度算出部15の代わりに、目標検出部14により検出された信号の偏波チャネル間相関を算出する偏波チャネル間相関算出部19が設けられ、偏波度利用マルチパス判定部16の代わりに、偏波チャネル間相関算出部10により算出された偏波チャネル間相関の値を用いて目標検出部14により検出された信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する相関利用マルチパス判定部20が設けられている点である。
【0048】
偏波チャネル間相関算出部19は、目標検出部14から出力される信号Spmを用いて偏波チャネル間の相関を算出する。偏波チャネル間相関は0以上1以下の実数値をとる量であり、検出された信号の偏波特性のばらつきを図る指標である。偏波チャネル間相関算出部19において、偏波チャネル間相関Zpqは次式によって算出される。
【0049】
【数8】

【0050】
偏波チャネル間相関算出部19は、以上によって算出された偏波チャネル間相関Zpqを出力する。偏波チャネル間相関の値が0に近いほど、検出された信号の偏波特性の時間変化が大きいことを示す。また、偏波チャネル間相関Z12,Z13,Z23が全て1の場合は、偏波特性の時間変化は無いことを意味する。出力された偏波チャネル間相関Zpqは、相関利用マルチパス判定部20に送られる。相関利用マルチパス判定部20は、入力された偏波チャネル間相関Zpqを予め設定した閾値Tpqと比較して、例えば以下のように判定を行う。
【0051】
12<T12かつZ13<T13かつZ23<T23 ⇒ マルチパス波
12≧T12又はZ13≧T13又はZ23≧T23 ⇒ 直接波
【0052】
なお、交差偏波成分強度は一般に低いことを勘案して、Z23のみを判定に用いても良い。この場合は、以下のように判定を行う。
【0053】
13<T13 ⇒ マルチパス波
13≧T13 ⇒ 直接波
【0054】
以上から明らかなように、この発明の実施の形態3のレーダ装置によれば、パルスを複数送受信して、その間の偏波チャネル間の相関値をもとに直接波とマルチパス波の判定を行うので、偏波情報を用いて直接波とマルチパス波を判別する際に、目標の偏波特性の影響を低減できる効果を奏する。
【0055】
この発明は、上述したように、レーダ受信信号におけるマルチパス波と直接波の信号を判別することができ、特に、地表面付近に車両や航空機などの目標物が存在し、マルチパスが発生しやすい環境下で目標を検出、追尾するレーダ装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態2によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
7 送信機、8 送受切替器、9 偏波切替器、10 第1の偏波送受信アンテナ、11 第2の偏波送受信アンテナ、12 受信機、13 メモリ、14 目標検出部、15 偏波度算出部、16 偏波度利用マルチパス判定部、17 エントロピー算出部、18 エントロピー利用マルチパス判定部、19 偏波チャネル間相関算出部、20 相関利用マルチパス判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する偏波特性を有する二つのアンテナと、
前記二つのアンテナのうち、送信においてはいずれか一方を駆動させ、受信においては双方を駆動させて、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器と、
複数のパルスの送受信によって得られた受信信号を一時的に蓄積するメモリと、
前記メモリから読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出手段と、
前記目標検出手段によって検出された目標信号の偏波度を算出する偏波度算出手段と、
前記偏波度算出手段によって算出された偏波度の値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する偏波度利用マルチパス判定手段と
を備えたレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記偏波度算出手段は、複数の入射偏波状態を設定し、各入射偏波状態に対応する偏波度を算出する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーダ装置において、
前記波度利用マルチパス判定手段は、前記偏波度算出手段で算出された複数の入射偏波状態に対応する偏波度の平均値を予め定めた閾値と比較して小さい場合に、前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものであると判定する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のレーダ装置において、
前記偏波度利用マルチパス判定手段は、前記偏波度算出手段で算出された複数の入射偏波状態に対応する偏波度をそれぞれ予め定めた閾値と比較して閾値よりも小さい場合の数が閾値よりも大きい場合の数を上回る場合に、前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものであると判定する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
互いに直交する偏波特性を有する二つのアンテナと、
前記二つのアンテナのうち、送信においてはいずれか一方を駆動させ、受信においては双方を駆動させて、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器と、
複数のパルスの送受信によって得られた受信信号を一時的に蓄積するメモリと、
前記メモリから読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出手段と、
前記目標検出手段によって検出された目標信号のエントロピーを算出するエントロピー算出手段と、
前記エントロピー算出手段によって算出されたエントロピーの値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定するエントロピー利用マルチパス判定手段と
を備えたレーダ装置。
【請求項6】
互いに直交する偏波特性を有する二つのアンテナと、
前記二つのアンテナのうち、送信においてはいずれか一方を駆動させ、受信においては双方を駆動させて、観測対象の散乱ベクトルを収集する偏波切替器と、
複数のパルスの送受信によって得られた受信信号を一時的に蓄積するメモリと、
前記メモリから読み出した受信信号に対して目標検出処理を適用して目標信号を検出する目標検出手段と、
前記目標検出手段によって検出された目標信号の偏波チャネル間相関を算出する偏波チャネル間相関算出手段と、
前記偏波チャネル間相関算出手段によって算出された偏波チャネル間相関の値を用いて前記目標検出手段によって検出された目標信号がマルチパス波によるものか直接波によるものかを判定する相関利用マルチパス判定手段と
を備えたレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−96615(P2010−96615A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267250(P2008−267250)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】