レーダ装置
【課題】相関処理をするときに生じるノイズの影響を低減できるレーダ装置を低コストで提供する。
【解決手段】符号化された信号を送信し、当該信号が対象物で反射した反射信号を受信し、信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶し、符号と同一の比較符号と、反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関がピークを生じるタイミングに基づいて対象物を測定する。
【解決手段】符号化された信号を送信し、当該信号が対象物で反射した反射信号を受信し、信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶し、符号と同一の比較符号と、反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関がピークを生じるタイミングに基づいて対象物を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体(以下、単に移動体と称する)には、周囲の対象物(例えば、人、車両、及び路上設置物など)との相対距離などを測定するためにレーダ装置が搭載されている。そして、移動体に搭載されるレーダ装置の中には、測定結果の精度を高めるために相関処理をするレーダ装置がある。
【0003】
相関処理をするレーダ装置は、符号信号を送信信号として送信し、当該送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する。そして、符号信号と同じ符号の参照信号と反射信号との相関値を計算する相関処理をし、送信信号を送信してから所定のしきい値を超える相関値を検出するまでの時間に基づいて対象物との相対距離を測定する。これにより、相関処理をするレーダ装置は、反射信号に重畳するノイズから受ける影響を低減して、相対距離の測定結果の精度を高めることができる。
【0004】
そして、このようなレーダ装置に適用可能な技術の一例として、特許文献1に記載の処理装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。従来技術では、相関処理をするときのノイズレベルを低減するために、2つの処理チャンネルA、及びBを備えている。そして、従来技術では、2つの処理チャンネルA、及びBのそれぞれにおける相関処理の結果を比較することによって、ノイズレベルを低減している。したがって、相関処理をするレーダ装置に上記従来技術を適用すれば、測定結果の精度をさらに高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−102347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、次に述べるような課題を有する。すなわち、上記従来技術では、相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減するために、2つの処理チャンネルを必要とする。したがって、上記従来技術を適用した相関処理をするレーダ装置のコストが高くなる。
【0007】
それ故に、本発明は、相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減できるレーダ装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に示すような特徴を有する。
第1の発明は、符号化された信号を符号信号として送信する送信手段と、符号信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信手段と、送信手段から送信される符号信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶手段と、符号と同一の比較符号と、反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関に基づいて対象物を測定する測定手段とを備える。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、送信手段は、N個の連続する符号で符号化した符号信号を送信し、測定手段は、N個の連続する符号で符号化した符号信号が対象物で反射した反射信号から復号した符号の内、N−1個目の反射信号から復号した符号と1つの比較符号とに基づいて対象物を測定する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、送信手段は、3個の連続する符号で符号化した符号信号を送信し、測定手段は、3個の連続する符号で符号化した符号信号が対象物で反射した反射信号から復号した符号の内、2個目の反射信号から復号した符号と1つの比較符号とに基づいて対象物を測定する。
【0011】
第4の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する比較符号との相関に基づいて対象物を測定する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、測定手段は、反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する比較符号の中で2つ目の比較符号との相関に基づいて対象物を測定する。
【発明の効果】
【0013】
相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減できるレーダ装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】基準信号を符号化するときの符号の一例を示す図
【図3】連続して生成された符号信号の一例を示す図
【図4】比較符号の一例を示す図
【図5A】相関値を計算するときの反射符号と比較符号との一例を示す図
【図5B】相関値を計算するときの反射符号と比較符号との一例を示す図
【図6A】最も大きな相関値となる反射符号と比較符号との関係を示す図
【図6B】ランダムな相関値となる反射符号と比較符号との関係を示す図
【図6C】ゼロに近い定数の相関値となる反射符号と比較符号との関係の一例を示す図
【図7A】複数の対象物に向かって送信される符号信号の一例を示す図
【図7B】複数の対象物で反射した反射信号の一例を示す図
【図7C】ある時間差で受信した反射信号から復号した反射符号の一例を示す図
【図8】ある時間差で受信した連続する反射信号から復号した連続する反射符号の一例を示す図
【図9A】送信される符号信号と受信される反射信号との時間関係の一例を示す図
【図9B】送信される符号信号と受信される反射信号との時間関係の一例を示す図
【図10】第1の実施形態に係る信号処理部の処理を示すフローチャート
【図11】連続する比較符号と反射符号との一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係るレーダ装置1は、基準信号生成部101と、符号信号生成部102と、第1の増幅部103と、送信アンテナ104と、受信アンテナ105と、第2の増幅部106と、混合部107と、LPF(Low Path Filter:ローパスフィルタ)108と、整合フィルタ109と、信号処理部110とを備える。
【0016】
基準信号生成部101は、典型的には、制御電圧に応じた周波数の正弦波信号を生成するVCO(Voltage Control Oscillator:電圧制御発振器)である。基準信号生成部101は、予め定められた周波数の正弦波信号を生成する。
【0017】
符号信号生成部102は、基準信号生成部101によって生成される基準信号を取得する。符号信号生成部102は、基準信号を取得しながら、図2に一例として示すように、第1のチップL1〜第nのチップLnからなる符号長nの符号を基準信号に掛け合わせて符号化することによって符号信号Sを生成する。ここで、本実施形態に係る符号は、図2に一例として示すように、時間の経過にしたがって、0、又は1の値をとる2値のPN(Pseudo Noise)符号であるものとする。また、符号信号生成部102が基準信号を符号化するときの符号のパターンは予め定められているものとする。
【0018】
本実施形態に係る符号信号生成部102は、図3に示すように3つの符号信号Sを連続させて生成する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、符号信号Sを3つ連続させて生成するとき、2つ目の符号信号Sの生成を開始したときの開始タイミング(以下、第1の開始タイミングと称する)を信号処理部110に通知する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、符号信号Sを3つ連続させて生成するとき、3つ目の符号信号Sの生成を開始したときの開始タイミング(以下、第2の開始タイミングと称する)を整合フィルタ109に通知する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、3つ目の符号信号Sの生成を完了したときの完了タイミングを整合フィルタ109、及び信号処理部110にそれぞれ通知する。尚、符号信号生成部102によって生成される符号信号Sは、当該符号信号Sを空間に放射するのに適するように、周波数を変換するなどの変調処理をした信号である。
【0019】
第1の増幅部103は、符号信号生成部102によって生成された符号信号Sを予め定められた増幅率で増幅する。
【0020】
送信アンテナ104は、第1の増幅部103によって増幅された符号信号Sを空間へ放射して送信する。
【0021】
受信アンテナ105は、送信アンテナ104によって送信された符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rを受信する。
【0022】
第2の増幅部106は、受信アンテナ105によって受信された反射信号Rを予め定められた増幅率で増幅する。
【0023】
混合部107は、基準信号生成部101によって生成される基準信号と、第2の増幅部106によって増幅された反射信号Rとを混合する。混合部107は、基準信号と反射信号Rとを混合することにより、第2の増幅部106によって増幅された反射信号Rの周波数をベースバンド周波数(基準信号の周波数)に変換する。
【0024】
LPF108は、混合部107によって周波数が変換された反射信号Rの中で予め定められた周波数以下の周波帯域の信号成分のみを濾波して通過させる。
【0025】
整合フィルタ109は、反射信号Rが符号信号Sとして送信されたときの符号を当該反射信号Rから逐次復号する。整合フィルタ109は、反射信号Rから符号を逐次復号しながら、予め記憶している比較符号と比較して、相関値を逐次計算する。尚、符号信号生成部102が、上述したように変調処理をした符号信号Sを生成するので、整合フィルタ109は、当該変調処理に対応する復調処理をした後、復調処理をした反射信号Rから符号を復号する。
【0026】
整合フィルタ109に予め記憶されている比較符号は、図4に一例として示すように、第1のチップM1〜第nのチップMnからなる符号長nの符号である。つまり、比較符号の符号長は、符号信号Sを生成するときに基準信号に掛け合わせた符号の符号長と同一である。また、比較符号のパターンは、受信アンテナ105で受信する信号の中で、符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rを受信したときにのみ相関値が予め定めたしきい値を超えるように、符号信号Sを生成するときに掛け合わせる符号のパターンと同一のパターンとする。
【0027】
そして、整合フィルタ109は、相関値を計算するとき、反射信号Rを逐次復号しながら、復号した符号(以下、反射符号と称する)を時間の経過にしたがって1チップずつ逐次シフトさせながら比較符号との相関値を逐次計算する。図5A、及び図5Bは、チップをシフトさせるときの反射符号と比較符号との具体的な一例を示す図である。図5Aは、ある時間における反射符号と比較符号とのチップのずれを示す図であり、図5Bは、図5Aに示す反射符号を1チップだけシフトさせた反射符号と比較符号とを示す図である。図5A、及び図5Bから明らかなように、整合フィルタ109は、時間の経過にしたがって逐次復号した反射符号を、時間の経過にしたがって1チップずつ逐次シフトさせながら、比較符号と比較して、相関値を逐次計算する。
【0028】
上述したように、符号信号Sは、3つ連続して生成され、空間に放射される。このため、受信アンテナ105で受信する反射信号Rは、3つ連続して受信される。したがって、符号信号Sを1つだけ生成する場合には、図5A、及び図5Bに示すように、反射符号が連続することはないが、本実施形態では、反射符号が3つ連続する。
【0029】
本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を計算する。
【0030】
ここで、整合フィルタ109が、反射符号の内、2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を計算する理由について説明するために、まず、比較符号と反射符号とのチップのずれと相関値との関係について図6A乃至図6Cをそれぞれ参照しながら説明する。
【0031】
図6Aは、反射符号(1つの反射信号Rから復号した反射符号)と比較符号とのチップがずれることなく一致している場合の一例を示す図である。図6Aに一例として示すように、反射符号、及び比較符号のそれぞれの第1のチップ〜第nのチップがずれることなく一致しているときに計算される相関値は最も大きい値となる。
【0032】
図6Bは、反射符号(1つの反射信号Rから復号した反射符号)と比較符号とのチップがずれている場合の一例を示す図である。図6Bに一例として示すように、反射符号と比較符号とのチップがずれている場合には、反射符号の他に、当該反射符号で符号化されていた反射信号Rを受信した後に受信されるノイズなどが比較符号との相関値の計算に加味される。このため、反射符号と比較符号とのチップがずれている場合に計算される相関値は、反射符号と比較符号との実際の相関には関係のないランダムな相関値となる。
【0033】
図6Cは、比較符号の第1のチップ〜第nのチップが、連続する反射符号のそれぞれの第1のチップ〜第nのチップと一致しない場合の一例を示す図である。図6Cに一例として示すように、連続する反射符号のそれぞれと比較符号とのチップが一致せず、互いの符号が上述したようにPN符号である場合には、計算される相関値はゼロに近い定数となる。
【0034】
次に、符号信号Sが、相対距離の互いに異なる複数の対象物で反射したときに、計算される相関値について図7A乃至図7Cを参照しながら説明する。尚、図7A乃至図7Cには、説明の便宜のため、3つの連続する符号信号Sを送信する場合ではなく、1つの符号信号Sを送信する場合についてそれぞれ示している。
【0035】
符号信号Sは、送信アンテナ104の放射領域内に複数の対象物が存在する場合には、図7Aに一例として示すように、相対距離の互いに異なる複数の対象物に向けて送信アンテナ104から送信されることになる。相対距離の互いに異なる複数の対象物に向けて送信された符号信号Sは、図7Bに一例として示すように、互いに異なる相対距離で反射し、相対距離の差に応じた時間差で受信アンテナ105によって反射信号Rとして受信される。
【0036】
ある時間差で2つの反射信号Rを受信した場合、図7Cに一例として示すように、当該時間差と等しい時間差でこれらの反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号を比較符号とそれぞれ比較する。図7Cには、2つの反射信号Rをある時間差で受信したときに比較符号と比較する反射符号の一例として、5チップだけずれる時間差でそれぞれ受信した反射信号Rから復号した反射符号を示している。そして、図7Cには、先に受信した反射信号Rから復号した反射符号(以下、先の反射符号と称する)と比較符号とが、第1のチップ〜第nのチップまで全て一致しており、後に受信した反射信号Rから復号した反射符号(以下、後の反射符号と称する)は、第1のチップ〜第n−5チップまでが比較符号と比較されている場合を示している。
【0037】
図7Cに一例として示すように、第1のチップ〜第nのチップまでが全て一致している場合には、先の反射符号と比較符号との相関値は、図6Aを参照しながら説明したように、最も大きくなる。一方、図7Cに示す場合において、後の反射符号と比較符号との相関値は、図6Bを参照しながら説明したように、実際には、後の反射符号の他にノイズなども加味されるため、ランダムな相関値となる。
【0038】
そして、後の反射符号と比較符号とのランダムな相関値が、先の反射符号と比較符号との相関値に加算されるため、先の反射符号と比較符号との相関値がランダムな相関値の影響を受ける。したがって、後述するように整合フィルタ109によって計算された相関値がしきい値を超えたときに信号処理部110へ通知するタイミングが不正確となり、信号処理部110が後述するように計算する相対距離も不正確となってしまう。これは、図7Cに示すときよりも時間が経過して、後の反射符号が第1のチップ〜第nのチップまで比較符号と一致したときも同様である(チップのずれた先の反射符号と比較符号とのランダムな相関値が、チップの一致した後の反射符号と比較符号との相関値に影響を与える)。
【0039】
そこで、本実施形態に係るレーダ装置1では、符号信号Sを上述したように3つ連続させて送信し、本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つの連続する反射符号の内、2つ目の反射符号と比較符号との相関値を計算する。
【0040】
図8は、3つ連続する符号信号Sが、相対距離の互いに異なる対象物で反射したそれぞれ3つの連続する反射信号Rから復号した反射符号の一例を示す図である。尚、図8では、互いに異なる対象物で反射したそれぞれ3つの連続する反射信号Rの内、先に受信した3つの連続する反射信号Rから復号した3つの連続する反射符号を先の反射符号として示し、後に受信した3つの連続する反射信号Rから復号した3つの連続する反射符号を後の反射符号として示している。
【0041】
図8には、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致している場合を示している。そして、図8に示す後の反射符号は、先の反射符号から5チップだけずれている。図8に一例として示すように、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号の第1のチップ〜第nのチップまでが全て比較符号と一致している場合には、当該2つ目の反射符号と比較符号との相関値は、図6Aを参照しながら説明したように、最も大きくなる。一方、図8に示す場合において、後の反射符号の中で、比較符号との相関値が計算されるのは、1つ目、及び2つ目の反射符号である。しかしながら、図8に示す場合において、後の反射符号にそれぞれ含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号は、比較符号とチップがずれている。このため、図8に示す場合において、後の反射符号に含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号と比較符号との相関値は、図6Cを参照しながら説明したように、ゼロに近い定数となる。
【0042】
したがって、図8に示す場合において、整合フィルタ109によって計算される相関値は、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号との最も大きな相関値と、後の反射符号に含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号とのゼロに近い定数の相関値とを加算した値となる。このため、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなって、しきい値を超えるタイミングは、先の反射符号を受信した時間に応じた正確なタイミングとなる。これは、図8に示すときよりも時間が経過して、後の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致したときも同様である(先の反射符号に含まれるそれぞれチップのずれた2つ目、及び3つ目の反射符号と比較符号とのゼロに近い定数の相関値が、後の反射符号に含まれるチップの一致した2つ目の反射符号と比較符号との最も大きな相関値に加算される)。
【0043】
以上が、本実施形態に係る整合フィルタ109が、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した符号と比較符号との相関値を計算する理由の説明である。
【0044】
本実施形態では、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を整合フィルタ109で計算するために、上述したように、3つ目の符号信号Sの生成を開始するときの第2の開始タイミング、及び3つ目の符号信号Sの生成を完了したときの完了タイミングを符号信号生成部102から通知する。また、本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を整合フィルタ109で計算するために、前述の第2の開始タイミングの通知を受けたときに相関値の計算を開始し、前述の完了タイミングの通知を受けたときに相関値の計算を停止する。
【0045】
ここで、符号信号Sの空間における伝搬速度は十分に速く、3つ目の符号信号Sの生成が開始されたとき(送信アンテナ104からの送信が開始されたときと略同じタイミング)には、1つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した全ての1つ目の反射信号Rが受信アンテナ105で受信され、受信されるのと略同時にこれらの反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との比較が先頭のチップから既に開始されているものとする。図9Aは、一例として、測定範囲内に2つの対象物が存在する場合に、3つ目の符号信号Sの送信アンテナ104からの送信が開始され、2つの対象物でそれぞれ反射した1つ目の反射信号Rがそれぞれ受信アンテナ105で受信されているときを示す図である。
【0046】
また、符号信号Sの空間における伝搬速度は十分に速く、3つ目の符号信号Sの生成が完了したとき(送信アンテナ104からの送信が完了したときと略同じタイミング)には、2つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した全ての2つ目の反射信号Rの受信アンテナ105による受信が完了し、これらの全ての2つ目の反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号の第1のチップ〜第nのチップを比較符号の第1のチップ〜第nのチップと全て一致させたときの相関値の計算が完了しているものとする。図9Bは、一例として、測定範囲内に2つの対象物が存在する場合に、3つ目の符号信号Sの送信アンテナ104からの送信が完了し、2つの対象物でそれぞれ反射した2つ目の反射信号Rの受信が完了しているときを示す図である。
【0047】
したがって、本実施形態に係る整合フィルタ109は、上述したように、前述の第2の開始タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたときに相関値の計算を開始し、前述の完了タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたときに相関値の計算を停止することにより、測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した3つ連続する反射信号Rの内、全ての2つ目の反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号の第1のチップ〜第nのチップを比較符号の第1のチップ〜第nのチップと全て一致させたときの相関値を計算することができる。
【0048】
そして、整合フィルタ109は、逐次計算している相関値が予め定められたしきい値を超えたときのタイミングを信号処理部110に通知する。ここで、整合フィルタ109に予め定められたしきい値とは、反射符号と比較符号との第1のチップ〜第nのチップが全て一致したときに計算される最も大きな相関値と、他の場合に計算される相関値とを区別できる程度の大きさのしきい値として定めるものとする。
【0049】
信号処理部110は、符号信号生成部102から通知されるタイミングと、整合フィルタ109から通知されるタイミングとに基づいて、対象物との相対距離を計算する。より詳細には、信号処理部110は、前述の第1の開始タイミングの通知を受けたとき、時間の計時をゼロから開始する。つまり、信号処理部110は、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが生成され、略同時に送信アンテナ104から送信される時刻からの経過時間を計時する。
【0050】
次に、整合フィルタ109は、前述の第1の開始タイミングから時間が経過して、前述の第2の開始タイミングの通知を受けたとき、上述したように相関値の計算を開始し、予め定められたしきい値を超える相関値を検出する度に、検出したタイミングを信号処理部110に通知する。そして、前述の第2の開始タイミングから時間が経過して、前述の完了タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたとき、上述したように整合フィルタ109は相関値の計算を完了すると同時に、信号処理部110は時間の計時を完了する。したがって、信号処理部110は、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが生成され、送信アンテナ104から送信される時刻から、整合フィルタ109によってしきい値を超える相関値が検出されるまでの時刻、すなわち、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する1以上の対象物で反射した反射信号Rをそれぞれ受信して復号した反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなるまでの時刻を対象物毎に対応させて計時することができる。
【0051】
符号信号Sが、空間を伝搬する速度は既知であるため、信号処理部110は、この既知の速度と計時したそれぞれの時刻とに基づいて、測定範囲内に存在する対象物毎の相対距離を計算して測定することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、3つ連続させた符号信号Sの生成を予め定められた時間間隔で繰り返し、この繰り返しに応じて上述した相対距離の計算も繰り返す。これにより、本実施形態に係るレーダ装置1は、相対距離の測定を予め定められた時間間隔で継続することができる。
【0053】
以上が、本実施形態に係るレーダ装置1の説明である。次に、図10に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る信号処理部110の処理の流れを説明する。
【0054】
ステップS101において、信号処理部110は、符号信号生成部102から第1の開始タイミングの通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS101において、第1の開始タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS102へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS101において、第1の開始タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS101の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS102において、信号処理部110は、時間の計時をゼロから開始する。ステップS102の処理を完了すると、信号処理部110は、ステップS103へ処理を進める。
【0056】
ステップS103において、信号処理部110は、整合フィルタ109からタイミング(相関値がしきい値を超えたときのタイミング)の通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS103において、整合フィルタ109からタイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS104へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS103において、整合フィルタ109からタイミングの通知を受けていないと判断したとき、ステップS105へ処理を進める。
【0057】
ステップS104において、信号処理部110は、計時している時間と符号信号Sが空間を伝搬するときの既知の速度とに基づいて、相対距離を計算する。具体的には、信号処理部110は、計時している時間をtとし、符号信号Sが空間を伝搬するときの既知の速度をVとし、求める相対距離をDとすると、D=V×tの数式で示される計算をして相対距離Dを求める。信号処理部110は、ステップS104の処理を完了すると、ステップS105へ処理を進める。
【0058】
ステップS105において、信号処理部110は、符号信号生成部102から完了タイミングの通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS105において、完了タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS106へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS105において、完了タイミングの通知を受けていないと判断したとき、ステップS103へ処理を戻す。
【0059】
ステップS106において、信号処理部110は、時間の計時を完了する。信号処理部110は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS101から処理を繰り返す。
【0060】
信号処理部110が、ステップS106の処理を完了した後、ステップS101から処理を繰り返すことにより、上述したように予め定められた時間間隔で符号信号Sの生成を繰り返す符号信号生成部102に応じて、予め定められた時間間隔で相対距離の計算を繰り返して継続することができる。尚、信号処理部110は、図10のフローチャートに示す処理を予め定められた時間間隔で繰り返すために、当該処理を完了するまでの時間が、当該時間間隔となるように、ステップS106からステップS101へ処理を戻すタイミングを遅延させる処理をさらにしてもよい。
【0061】
以上が、本実施形態に係る信号処理部110の処理の流れの説明である。本実施形態に係るレーダ装置1によれば、符号信号Sを3つ連続させて生成するため、図6Bを参照して説明したランダムな相関値がノイズとして計算されることなく、相対距離を計算するための相関値が受ける当該ノイズの影響を低減できる。また、本実施形態に係るレーダ装置1は、符号信号Sを連続して生成し、予め定められたタイミングで相関値を計算する。このための構成は、図1を参照して説明したようにより簡易な構成であるため、ノイズの影響を低減するためのレーダ装置1を低コストで提供できる。
【0062】
尚、上述した第1の実施形態では、符号信号生成部102が3つ連続させた符号信号Sを生成するものとしたが、連続させる数は2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0063】
また、上述した第1の実施形態では、3つ連続する反射符号の中で2つ目の反射符号と比較符号との相関値を計算するものとした。しかしながら、上述したように、符号信号生成部102が4以上の符号信号Sを連続させて生成する場合には、2つ目の反射符号ではなく3つ目以降の反射符号と比較符号との相関値を計算するしなければならない。つまり、本発明では、予め定められた3以上のN個だけ符号信号Sを生成し、N−1個目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号とを比較した相関値を計算して、しきい値を超える相関値が生じたタイミングに基づいて相対距離を計算すればよい。そして、Nが4以上である場合には、第1の実施形態で説明したように符号信号生成部102が通知するものとして説明したそれぞれのタイミング(第1の開始タイミング、第2の開始タイミング、及び完了タイミング)も適宜調節する必要がある。
【0064】
尚、上述した第1の実施形態では、符号信号Sを3つ連続させて生成し、1つの比較符号との相関値を計算するものとした。しかしながら、他の一実施形態では、連続させずに1つの符号信号Sを生成して送信し、当該符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rから復号した反射符号を、3つ連続させた比較符号と比較しても、第1の実施形態に係るレーダ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
図11は、1つずつ予め定められた時間間隔で符号信号生成部102によって生成される符号信号Sが、測定範囲内に存在し、互いに相対距離の異なる2つの対象物で反射した2つの反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号を、3つの連続する比較符号と比較する場合の一例を示す図である。
【0066】
図11は、図7Cと同様に、2つの反射信号Rをある時間差で受信したときに比較符号と比較する反射符号の一例として、5チップだけずれる時間差でそれぞれ受信した反射信号Rから復号した反射符号を示している。そして、図11には、3つ連続する比較符号の中で2つ目の比較符号と先の反射符号とが、第1のチップ〜第nのチップまで全て一致しており、後の反射符号は、その第1のチップ〜第n−5チップまでが、3つ連続する比較符号の中で2つ目の比較符号と比較されている場合を示している。
【0067】
図11に一例として示すように、第1のチップ〜第nのチップまでが全て一致している場合には、先の反射符号と2つ目の比較符号との相関値は、図6Aに示す反射符号と比較符号との関係と同様になるため、最も大きくなる。一方、図11に示す場合において、後の反射符号と2つ目の比較符号との相関値は、図6Cに示す反射符号と比較符号との関係と同様になるため、ゼロに近い定数となる。したがって、図11に示す場合において、整合フィルタ109によって計算される相関値は、図8を参照した説明と同様に、先の反射符号との最も大きな値と、後の反射符号とのゼロに近い定数の相関値とを加算した値となる。このため、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなって、しきい値を超えるタイミングは、先の反射符号を受信した時間に応じた正確なタイミングとなる。これは、図11Aに示すときよりも時間が経過して、後の反射符号と2つ目の比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致したときも同様である(先の反射符号と、それぞれチップのずれた2つ目、及び3つ目の比較符号とのゼロに近い定数の相関値が、後の反射符号と全てのチップが一致した2つ目の比較符号との最も大きな相関値に加算される)。
【0068】
また、図11を参照しながら説明したように、連続させずに1つずつ符号信号Sを生成して対象物との相対距離を計算して測定する場合には、2つ目の比較符号と反射符号とを比較して生じたピークのタイミングに基づいて相対距離を計算しなければならない。
【0069】
整合フィルタ109が、2つ目の比較符号と反射符号とを比較するタイミングを認識するための具体的な手法としては、符号信号生成部102が1つの反射信号Rを生成してから、さらに、1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過したタイミング(第1の実施形態で説明した第2の開始タイミングと等しいタイミング)を整合フィルタ109に通知する手法が一例として挙げられる。この場合、符号信号生成部102は、1つの反射信号Rを生成してから、次の1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過し、さらに、1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過したタイミング(第1の実施形態で説明した完了タイミングと等しいタイミング)も整合フィルタ109に通知する。そして、整合フィルタ109は、符号信号生成部102から第2の開始タイミングに相当するタイミングの通知を受けたときに相関値の計算、及びピークが生じるタイミングの通知を開始し、符号信号生成部102から完了タイミングに相当するタイミングの通知を受けたときに相関値の計算、及びピークが生じるタイミングの通知を完了する。
【0070】
そして、信号処理部110は、第2の開始タイミングに相当するタイミングから完了タイミングに相当するタイミングまでの期間で相対距離の計算をする。
【0071】
これにより、1つずつ符号信号Sを生成して、3つ連続させた比較符号と比較する場合でも、第1の実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、図11を参照しながら説明したように、1つずつ符号信号Sを生成して対象物との相対距離を計算して測定する場合に、連続させる比較符号の数は2つであってもよいし、4以上であってもよい。
【0073】
また、上記の説明では、符号の種類がPN符号であるものとして説明した。しかしながら、本発明で用いることのできる符号の種類はM系列符号、及びGold符号など適切な他の種類であってもよい。また、Gold符号などは、図6Cに一例として示した場合にゼロに近い定数の相関値が計算される符号ではないが、図6Bに一例として示した場合に計算されるランダムな相関値よりも小さな値となる。したがって、Gold符号のように、図6Cに一例として示した場合に計算される相関値が、図6Bに一例として示した場合に計算されるランダムな相関値よりも小さくなる符号であれば、どのような種類の符号を用いてもよい。
【0074】
また、上述の説明における対象物とは、例えば、本発明に係るレーダ装置1を自動車などの移動体に搭載する場合には、周囲に存在する他車両、歩行者、及び路上設置物として考えることができる。
【0075】
また、第1の実施形態では、N個の符号信号を連続させて生成する場合において、N−1個目の反射信号から復号した反射符号と比較符号とを比較するために、符号信号生成部102から通知されるタイミング(第1の開始タイミング、第2の開始タイミング、及び完了タイミング)に基づいて整合フィルタ109、及び信号処理部110が処理を進めるものとした。しかしながら、他の一実施形態では、N個の符号信号を連続させて生成する場合において、N−1個目の反射信号から復号した反射符号と比較符号とを比較するために、整合フィルタ109、或いは信号処理部110が、復号された反射符号の数を認識することなどによって、N−1個目の反射符号と比較符号とを比較して相関値を計算する期間を独自に認識し、独自に認識した期間で相関値がしきい値を超えるタイミングに基づいて相対距離を計算するなど、他の手法で相対距離を計算すべき期間を認識して、計算するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、対象物との相対距離を精度よく測定でき、例えば、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 レーダ装置
101 基準信号生成部
102 符号信号生成部
103 第1の増幅部
104 送信アンテナ
105 受信アンテナ
106 第2の増幅部
107 混合部
108 LPF
109 整合フィルタ
110 信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体(以下、単に移動体と称する)には、周囲の対象物(例えば、人、車両、及び路上設置物など)との相対距離などを測定するためにレーダ装置が搭載されている。そして、移動体に搭載されるレーダ装置の中には、測定結果の精度を高めるために相関処理をするレーダ装置がある。
【0003】
相関処理をするレーダ装置は、符号信号を送信信号として送信し、当該送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する。そして、符号信号と同じ符号の参照信号と反射信号との相関値を計算する相関処理をし、送信信号を送信してから所定のしきい値を超える相関値を検出するまでの時間に基づいて対象物との相対距離を測定する。これにより、相関処理をするレーダ装置は、反射信号に重畳するノイズから受ける影響を低減して、相対距離の測定結果の精度を高めることができる。
【0004】
そして、このようなレーダ装置に適用可能な技術の一例として、特許文献1に記載の処理装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。従来技術では、相関処理をするときのノイズレベルを低減するために、2つの処理チャンネルA、及びBを備えている。そして、従来技術では、2つの処理チャンネルA、及びBのそれぞれにおける相関処理の結果を比較することによって、ノイズレベルを低減している。したがって、相関処理をするレーダ装置に上記従来技術を適用すれば、測定結果の精度をさらに高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−102347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、次に述べるような課題を有する。すなわち、上記従来技術では、相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減するために、2つの処理チャンネルを必要とする。したがって、上記従来技術を適用した相関処理をするレーダ装置のコストが高くなる。
【0007】
それ故に、本発明は、相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減できるレーダ装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に示すような特徴を有する。
第1の発明は、符号化された信号を符号信号として送信する送信手段と、符号信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信手段と、送信手段から送信される符号信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶手段と、符号と同一の比較符号と、反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関に基づいて対象物を測定する測定手段とを備える。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、送信手段は、N個の連続する符号で符号化した符号信号を送信し、測定手段は、N個の連続する符号で符号化した符号信号が対象物で反射した反射信号から復号した符号の内、N−1個目の反射信号から復号した符号と1つの比較符号とに基づいて対象物を測定する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、送信手段は、3個の連続する符号で符号化した符号信号を送信し、測定手段は、3個の連続する符号で符号化した符号信号が対象物で反射した反射信号から復号した符号の内、2個目の反射信号から復号した符号と1つの比較符号とに基づいて対象物を測定する。
【0011】
第4の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する比較符号との相関に基づいて対象物を測定する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、測定手段は、反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する比較符号の中で2つ目の比較符号との相関に基づいて対象物を測定する。
【発明の効果】
【0013】
相関処理をするときに生じるノイズレベルを低減できるレーダ装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】基準信号を符号化するときの符号の一例を示す図
【図3】連続して生成された符号信号の一例を示す図
【図4】比較符号の一例を示す図
【図5A】相関値を計算するときの反射符号と比較符号との一例を示す図
【図5B】相関値を計算するときの反射符号と比較符号との一例を示す図
【図6A】最も大きな相関値となる反射符号と比較符号との関係を示す図
【図6B】ランダムな相関値となる反射符号と比較符号との関係を示す図
【図6C】ゼロに近い定数の相関値となる反射符号と比較符号との関係の一例を示す図
【図7A】複数の対象物に向かって送信される符号信号の一例を示す図
【図7B】複数の対象物で反射した反射信号の一例を示す図
【図7C】ある時間差で受信した反射信号から復号した反射符号の一例を示す図
【図8】ある時間差で受信した連続する反射信号から復号した連続する反射符号の一例を示す図
【図9A】送信される符号信号と受信される反射信号との時間関係の一例を示す図
【図9B】送信される符号信号と受信される反射信号との時間関係の一例を示す図
【図10】第1の実施形態に係る信号処理部の処理を示すフローチャート
【図11】連続する比較符号と反射符号との一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係るレーダ装置1は、基準信号生成部101と、符号信号生成部102と、第1の増幅部103と、送信アンテナ104と、受信アンテナ105と、第2の増幅部106と、混合部107と、LPF(Low Path Filter:ローパスフィルタ)108と、整合フィルタ109と、信号処理部110とを備える。
【0016】
基準信号生成部101は、典型的には、制御電圧に応じた周波数の正弦波信号を生成するVCO(Voltage Control Oscillator:電圧制御発振器)である。基準信号生成部101は、予め定められた周波数の正弦波信号を生成する。
【0017】
符号信号生成部102は、基準信号生成部101によって生成される基準信号を取得する。符号信号生成部102は、基準信号を取得しながら、図2に一例として示すように、第1のチップL1〜第nのチップLnからなる符号長nの符号を基準信号に掛け合わせて符号化することによって符号信号Sを生成する。ここで、本実施形態に係る符号は、図2に一例として示すように、時間の経過にしたがって、0、又は1の値をとる2値のPN(Pseudo Noise)符号であるものとする。また、符号信号生成部102が基準信号を符号化するときの符号のパターンは予め定められているものとする。
【0018】
本実施形態に係る符号信号生成部102は、図3に示すように3つの符号信号Sを連続させて生成する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、符号信号Sを3つ連続させて生成するとき、2つ目の符号信号Sの生成を開始したときの開始タイミング(以下、第1の開始タイミングと称する)を信号処理部110に通知する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、符号信号Sを3つ連続させて生成するとき、3つ目の符号信号Sの生成を開始したときの開始タイミング(以下、第2の開始タイミングと称する)を整合フィルタ109に通知する。また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、3つ目の符号信号Sの生成を完了したときの完了タイミングを整合フィルタ109、及び信号処理部110にそれぞれ通知する。尚、符号信号生成部102によって生成される符号信号Sは、当該符号信号Sを空間に放射するのに適するように、周波数を変換するなどの変調処理をした信号である。
【0019】
第1の増幅部103は、符号信号生成部102によって生成された符号信号Sを予め定められた増幅率で増幅する。
【0020】
送信アンテナ104は、第1の増幅部103によって増幅された符号信号Sを空間へ放射して送信する。
【0021】
受信アンテナ105は、送信アンテナ104によって送信された符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rを受信する。
【0022】
第2の増幅部106は、受信アンテナ105によって受信された反射信号Rを予め定められた増幅率で増幅する。
【0023】
混合部107は、基準信号生成部101によって生成される基準信号と、第2の増幅部106によって増幅された反射信号Rとを混合する。混合部107は、基準信号と反射信号Rとを混合することにより、第2の増幅部106によって増幅された反射信号Rの周波数をベースバンド周波数(基準信号の周波数)に変換する。
【0024】
LPF108は、混合部107によって周波数が変換された反射信号Rの中で予め定められた周波数以下の周波帯域の信号成分のみを濾波して通過させる。
【0025】
整合フィルタ109は、反射信号Rが符号信号Sとして送信されたときの符号を当該反射信号Rから逐次復号する。整合フィルタ109は、反射信号Rから符号を逐次復号しながら、予め記憶している比較符号と比較して、相関値を逐次計算する。尚、符号信号生成部102が、上述したように変調処理をした符号信号Sを生成するので、整合フィルタ109は、当該変調処理に対応する復調処理をした後、復調処理をした反射信号Rから符号を復号する。
【0026】
整合フィルタ109に予め記憶されている比較符号は、図4に一例として示すように、第1のチップM1〜第nのチップMnからなる符号長nの符号である。つまり、比較符号の符号長は、符号信号Sを生成するときに基準信号に掛け合わせた符号の符号長と同一である。また、比較符号のパターンは、受信アンテナ105で受信する信号の中で、符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rを受信したときにのみ相関値が予め定めたしきい値を超えるように、符号信号Sを生成するときに掛け合わせる符号のパターンと同一のパターンとする。
【0027】
そして、整合フィルタ109は、相関値を計算するとき、反射信号Rを逐次復号しながら、復号した符号(以下、反射符号と称する)を時間の経過にしたがって1チップずつ逐次シフトさせながら比較符号との相関値を逐次計算する。図5A、及び図5Bは、チップをシフトさせるときの反射符号と比較符号との具体的な一例を示す図である。図5Aは、ある時間における反射符号と比較符号とのチップのずれを示す図であり、図5Bは、図5Aに示す反射符号を1チップだけシフトさせた反射符号と比較符号とを示す図である。図5A、及び図5Bから明らかなように、整合フィルタ109は、時間の経過にしたがって逐次復号した反射符号を、時間の経過にしたがって1チップずつ逐次シフトさせながら、比較符号と比較して、相関値を逐次計算する。
【0028】
上述したように、符号信号Sは、3つ連続して生成され、空間に放射される。このため、受信アンテナ105で受信する反射信号Rは、3つ連続して受信される。したがって、符号信号Sを1つだけ生成する場合には、図5A、及び図5Bに示すように、反射符号が連続することはないが、本実施形態では、反射符号が3つ連続する。
【0029】
本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を計算する。
【0030】
ここで、整合フィルタ109が、反射符号の内、2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を計算する理由について説明するために、まず、比較符号と反射符号とのチップのずれと相関値との関係について図6A乃至図6Cをそれぞれ参照しながら説明する。
【0031】
図6Aは、反射符号(1つの反射信号Rから復号した反射符号)と比較符号とのチップがずれることなく一致している場合の一例を示す図である。図6Aに一例として示すように、反射符号、及び比較符号のそれぞれの第1のチップ〜第nのチップがずれることなく一致しているときに計算される相関値は最も大きい値となる。
【0032】
図6Bは、反射符号(1つの反射信号Rから復号した反射符号)と比較符号とのチップがずれている場合の一例を示す図である。図6Bに一例として示すように、反射符号と比較符号とのチップがずれている場合には、反射符号の他に、当該反射符号で符号化されていた反射信号Rを受信した後に受信されるノイズなどが比較符号との相関値の計算に加味される。このため、反射符号と比較符号とのチップがずれている場合に計算される相関値は、反射符号と比較符号との実際の相関には関係のないランダムな相関値となる。
【0033】
図6Cは、比較符号の第1のチップ〜第nのチップが、連続する反射符号のそれぞれの第1のチップ〜第nのチップと一致しない場合の一例を示す図である。図6Cに一例として示すように、連続する反射符号のそれぞれと比較符号とのチップが一致せず、互いの符号が上述したようにPN符号である場合には、計算される相関値はゼロに近い定数となる。
【0034】
次に、符号信号Sが、相対距離の互いに異なる複数の対象物で反射したときに、計算される相関値について図7A乃至図7Cを参照しながら説明する。尚、図7A乃至図7Cには、説明の便宜のため、3つの連続する符号信号Sを送信する場合ではなく、1つの符号信号Sを送信する場合についてそれぞれ示している。
【0035】
符号信号Sは、送信アンテナ104の放射領域内に複数の対象物が存在する場合には、図7Aに一例として示すように、相対距離の互いに異なる複数の対象物に向けて送信アンテナ104から送信されることになる。相対距離の互いに異なる複数の対象物に向けて送信された符号信号Sは、図7Bに一例として示すように、互いに異なる相対距離で反射し、相対距離の差に応じた時間差で受信アンテナ105によって反射信号Rとして受信される。
【0036】
ある時間差で2つの反射信号Rを受信した場合、図7Cに一例として示すように、当該時間差と等しい時間差でこれらの反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号を比較符号とそれぞれ比較する。図7Cには、2つの反射信号Rをある時間差で受信したときに比較符号と比較する反射符号の一例として、5チップだけずれる時間差でそれぞれ受信した反射信号Rから復号した反射符号を示している。そして、図7Cには、先に受信した反射信号Rから復号した反射符号(以下、先の反射符号と称する)と比較符号とが、第1のチップ〜第nのチップまで全て一致しており、後に受信した反射信号Rから復号した反射符号(以下、後の反射符号と称する)は、第1のチップ〜第n−5チップまでが比較符号と比較されている場合を示している。
【0037】
図7Cに一例として示すように、第1のチップ〜第nのチップまでが全て一致している場合には、先の反射符号と比較符号との相関値は、図6Aを参照しながら説明したように、最も大きくなる。一方、図7Cに示す場合において、後の反射符号と比較符号との相関値は、図6Bを参照しながら説明したように、実際には、後の反射符号の他にノイズなども加味されるため、ランダムな相関値となる。
【0038】
そして、後の反射符号と比較符号とのランダムな相関値が、先の反射符号と比較符号との相関値に加算されるため、先の反射符号と比較符号との相関値がランダムな相関値の影響を受ける。したがって、後述するように整合フィルタ109によって計算された相関値がしきい値を超えたときに信号処理部110へ通知するタイミングが不正確となり、信号処理部110が後述するように計算する相対距離も不正確となってしまう。これは、図7Cに示すときよりも時間が経過して、後の反射符号が第1のチップ〜第nのチップまで比較符号と一致したときも同様である(チップのずれた先の反射符号と比較符号とのランダムな相関値が、チップの一致した後の反射符号と比較符号との相関値に影響を与える)。
【0039】
そこで、本実施形態に係るレーダ装置1では、符号信号Sを上述したように3つ連続させて送信し、本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つの連続する反射符号の内、2つ目の反射符号と比較符号との相関値を計算する。
【0040】
図8は、3つ連続する符号信号Sが、相対距離の互いに異なる対象物で反射したそれぞれ3つの連続する反射信号Rから復号した反射符号の一例を示す図である。尚、図8では、互いに異なる対象物で反射したそれぞれ3つの連続する反射信号Rの内、先に受信した3つの連続する反射信号Rから復号した3つの連続する反射符号を先の反射符号として示し、後に受信した3つの連続する反射信号Rから復号した3つの連続する反射符号を後の反射符号として示している。
【0041】
図8には、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致している場合を示している。そして、図8に示す後の反射符号は、先の反射符号から5チップだけずれている。図8に一例として示すように、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号の第1のチップ〜第nのチップまでが全て比較符号と一致している場合には、当該2つ目の反射符号と比較符号との相関値は、図6Aを参照しながら説明したように、最も大きくなる。一方、図8に示す場合において、後の反射符号の中で、比較符号との相関値が計算されるのは、1つ目、及び2つ目の反射符号である。しかしながら、図8に示す場合において、後の反射符号にそれぞれ含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号は、比較符号とチップがずれている。このため、図8に示す場合において、後の反射符号に含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号と比較符号との相関値は、図6Cを参照しながら説明したように、ゼロに近い定数となる。
【0042】
したがって、図8に示す場合において、整合フィルタ109によって計算される相関値は、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号との最も大きな相関値と、後の反射符号に含まれる1つ目、及び2つ目の反射符号とのゼロに近い定数の相関値とを加算した値となる。このため、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなって、しきい値を超えるタイミングは、先の反射符号を受信した時間に応じた正確なタイミングとなる。これは、図8に示すときよりも時間が経過して、後の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致したときも同様である(先の反射符号に含まれるそれぞれチップのずれた2つ目、及び3つ目の反射符号と比較符号とのゼロに近い定数の相関値が、後の反射符号に含まれるチップの一致した2つ目の反射符号と比較符号との最も大きな相関値に加算される)。
【0043】
以上が、本実施形態に係る整合フィルタ109が、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した符号と比較符号との相関値を計算する理由の説明である。
【0044】
本実施形態では、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を整合フィルタ109で計算するために、上述したように、3つ目の符号信号Sの生成を開始するときの第2の開始タイミング、及び3つ目の符号信号Sの生成を完了したときの完了タイミングを符号信号生成部102から通知する。また、本実施形態に係る整合フィルタ109は、3つ連続して受信される反射信号Rの中で2つ目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との相関値を整合フィルタ109で計算するために、前述の第2の開始タイミングの通知を受けたときに相関値の計算を開始し、前述の完了タイミングの通知を受けたときに相関値の計算を停止する。
【0045】
ここで、符号信号Sの空間における伝搬速度は十分に速く、3つ目の符号信号Sの生成が開始されたとき(送信アンテナ104からの送信が開始されたときと略同じタイミング)には、1つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した全ての1つ目の反射信号Rが受信アンテナ105で受信され、受信されるのと略同時にこれらの反射信号Rから復号した反射符号と比較符号との比較が先頭のチップから既に開始されているものとする。図9Aは、一例として、測定範囲内に2つの対象物が存在する場合に、3つ目の符号信号Sの送信アンテナ104からの送信が開始され、2つの対象物でそれぞれ反射した1つ目の反射信号Rがそれぞれ受信アンテナ105で受信されているときを示す図である。
【0046】
また、符号信号Sの空間における伝搬速度は十分に速く、3つ目の符号信号Sの生成が完了したとき(送信アンテナ104からの送信が完了したときと略同じタイミング)には、2つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した全ての2つ目の反射信号Rの受信アンテナ105による受信が完了し、これらの全ての2つ目の反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号の第1のチップ〜第nのチップを比較符号の第1のチップ〜第nのチップと全て一致させたときの相関値の計算が完了しているものとする。図9Bは、一例として、測定範囲内に2つの対象物が存在する場合に、3つ目の符号信号Sの送信アンテナ104からの送信が完了し、2つの対象物でそれぞれ反射した2つ目の反射信号Rの受信が完了しているときを示す図である。
【0047】
したがって、本実施形態に係る整合フィルタ109は、上述したように、前述の第2の開始タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたときに相関値の計算を開始し、前述の完了タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたときに相関値の計算を停止することにより、測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した3つ連続する反射信号Rの内、全ての2つ目の反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号の第1のチップ〜第nのチップを比較符号の第1のチップ〜第nのチップと全て一致させたときの相関値を計算することができる。
【0048】
そして、整合フィルタ109は、逐次計算している相関値が予め定められたしきい値を超えたときのタイミングを信号処理部110に通知する。ここで、整合フィルタ109に予め定められたしきい値とは、反射符号と比較符号との第1のチップ〜第nのチップが全て一致したときに計算される最も大きな相関値と、他の場合に計算される相関値とを区別できる程度の大きさのしきい値として定めるものとする。
【0049】
信号処理部110は、符号信号生成部102から通知されるタイミングと、整合フィルタ109から通知されるタイミングとに基づいて、対象物との相対距離を計算する。より詳細には、信号処理部110は、前述の第1の開始タイミングの通知を受けたとき、時間の計時をゼロから開始する。つまり、信号処理部110は、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが生成され、略同時に送信アンテナ104から送信される時刻からの経過時間を計時する。
【0050】
次に、整合フィルタ109は、前述の第1の開始タイミングから時間が経過して、前述の第2の開始タイミングの通知を受けたとき、上述したように相関値の計算を開始し、予め定められたしきい値を超える相関値を検出する度に、検出したタイミングを信号処理部110に通知する。そして、前述の第2の開始タイミングから時間が経過して、前述の完了タイミングの通知を符号信号生成部102から受けたとき、上述したように整合フィルタ109は相関値の計算を完了すると同時に、信号処理部110は時間の計時を完了する。したがって、信号処理部110は、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが生成され、送信アンテナ104から送信される時刻から、整合フィルタ109によってしきい値を超える相関値が検出されるまでの時刻、すなわち、符号信号生成部102によって3つ連続させて生成される符号信号Sの中で2つ目の符号信号Sが測定範囲内に存在する1以上の対象物で反射した反射信号Rをそれぞれ受信して復号した反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなるまでの時刻を対象物毎に対応させて計時することができる。
【0051】
符号信号Sが、空間を伝搬する速度は既知であるため、信号処理部110は、この既知の速度と計時したそれぞれの時刻とに基づいて、測定範囲内に存在する対象物毎の相対距離を計算して測定することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る符号信号生成部102は、3つ連続させた符号信号Sの生成を予め定められた時間間隔で繰り返し、この繰り返しに応じて上述した相対距離の計算も繰り返す。これにより、本実施形態に係るレーダ装置1は、相対距離の測定を予め定められた時間間隔で継続することができる。
【0053】
以上が、本実施形態に係るレーダ装置1の説明である。次に、図10に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る信号処理部110の処理の流れを説明する。
【0054】
ステップS101において、信号処理部110は、符号信号生成部102から第1の開始タイミングの通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS101において、第1の開始タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS102へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS101において、第1の開始タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS101の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS102において、信号処理部110は、時間の計時をゼロから開始する。ステップS102の処理を完了すると、信号処理部110は、ステップS103へ処理を進める。
【0056】
ステップS103において、信号処理部110は、整合フィルタ109からタイミング(相関値がしきい値を超えたときのタイミング)の通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS103において、整合フィルタ109からタイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS104へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS103において、整合フィルタ109からタイミングの通知を受けていないと判断したとき、ステップS105へ処理を進める。
【0057】
ステップS104において、信号処理部110は、計時している時間と符号信号Sが空間を伝搬するときの既知の速度とに基づいて、相対距離を計算する。具体的には、信号処理部110は、計時している時間をtとし、符号信号Sが空間を伝搬するときの既知の速度をVとし、求める相対距離をDとすると、D=V×tの数式で示される計算をして相対距離Dを求める。信号処理部110は、ステップS104の処理を完了すると、ステップS105へ処理を進める。
【0058】
ステップS105において、信号処理部110は、符号信号生成部102から完了タイミングの通知を受けたか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS105において、完了タイミングの通知を受けたと判断したとき、ステップS106へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS105において、完了タイミングの通知を受けていないと判断したとき、ステップS103へ処理を戻す。
【0059】
ステップS106において、信号処理部110は、時間の計時を完了する。信号処理部110は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS101から処理を繰り返す。
【0060】
信号処理部110が、ステップS106の処理を完了した後、ステップS101から処理を繰り返すことにより、上述したように予め定められた時間間隔で符号信号Sの生成を繰り返す符号信号生成部102に応じて、予め定められた時間間隔で相対距離の計算を繰り返して継続することができる。尚、信号処理部110は、図10のフローチャートに示す処理を予め定められた時間間隔で繰り返すために、当該処理を完了するまでの時間が、当該時間間隔となるように、ステップS106からステップS101へ処理を戻すタイミングを遅延させる処理をさらにしてもよい。
【0061】
以上が、本実施形態に係る信号処理部110の処理の流れの説明である。本実施形態に係るレーダ装置1によれば、符号信号Sを3つ連続させて生成するため、図6Bを参照して説明したランダムな相関値がノイズとして計算されることなく、相対距離を計算するための相関値が受ける当該ノイズの影響を低減できる。また、本実施形態に係るレーダ装置1は、符号信号Sを連続して生成し、予め定められたタイミングで相関値を計算する。このための構成は、図1を参照して説明したようにより簡易な構成であるため、ノイズの影響を低減するためのレーダ装置1を低コストで提供できる。
【0062】
尚、上述した第1の実施形態では、符号信号生成部102が3つ連続させた符号信号Sを生成するものとしたが、連続させる数は2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0063】
また、上述した第1の実施形態では、3つ連続する反射符号の中で2つ目の反射符号と比較符号との相関値を計算するものとした。しかしながら、上述したように、符号信号生成部102が4以上の符号信号Sを連続させて生成する場合には、2つ目の反射符号ではなく3つ目以降の反射符号と比較符号との相関値を計算するしなければならない。つまり、本発明では、予め定められた3以上のN個だけ符号信号Sを生成し、N−1個目の反射信号Rから復号した反射符号と比較符号とを比較した相関値を計算して、しきい値を超える相関値が生じたタイミングに基づいて相対距離を計算すればよい。そして、Nが4以上である場合には、第1の実施形態で説明したように符号信号生成部102が通知するものとして説明したそれぞれのタイミング(第1の開始タイミング、第2の開始タイミング、及び完了タイミング)も適宜調節する必要がある。
【0064】
尚、上述した第1の実施形態では、符号信号Sを3つ連続させて生成し、1つの比較符号との相関値を計算するものとした。しかしながら、他の一実施形態では、連続させずに1つの符号信号Sを生成して送信し、当該符号信号Sが対象物で反射した反射信号Rから復号した反射符号を、3つ連続させた比較符号と比較しても、第1の実施形態に係るレーダ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
図11は、1つずつ予め定められた時間間隔で符号信号生成部102によって生成される符号信号Sが、測定範囲内に存在し、互いに相対距離の異なる2つの対象物で反射した2つの反射信号Rからそれぞれ復号した反射符号を、3つの連続する比較符号と比較する場合の一例を示す図である。
【0066】
図11は、図7Cと同様に、2つの反射信号Rをある時間差で受信したときに比較符号と比較する反射符号の一例として、5チップだけずれる時間差でそれぞれ受信した反射信号Rから復号した反射符号を示している。そして、図11には、3つ連続する比較符号の中で2つ目の比較符号と先の反射符号とが、第1のチップ〜第nのチップまで全て一致しており、後の反射符号は、その第1のチップ〜第n−5チップまでが、3つ連続する比較符号の中で2つ目の比較符号と比較されている場合を示している。
【0067】
図11に一例として示すように、第1のチップ〜第nのチップまでが全て一致している場合には、先の反射符号と2つ目の比較符号との相関値は、図6Aに示す反射符号と比較符号との関係と同様になるため、最も大きくなる。一方、図11に示す場合において、後の反射符号と2つ目の比較符号との相関値は、図6Cに示す反射符号と比較符号との関係と同様になるため、ゼロに近い定数となる。したがって、図11に示す場合において、整合フィルタ109によって計算される相関値は、図8を参照した説明と同様に、先の反射符号との最も大きな値と、後の反射符号とのゼロに近い定数の相関値とを加算した値となる。このため、先の反射符号に含まれる2つ目の反射符号と比較符号との相関値が最も大きくなって、しきい値を超えるタイミングは、先の反射符号を受信した時間に応じた正確なタイミングとなる。これは、図11Aに示すときよりも時間が経過して、後の反射符号と2つ目の比較符号とが第1のチップ〜第nのチップまで全て一致したときも同様である(先の反射符号と、それぞれチップのずれた2つ目、及び3つ目の比較符号とのゼロに近い定数の相関値が、後の反射符号と全てのチップが一致した2つ目の比較符号との最も大きな相関値に加算される)。
【0068】
また、図11を参照しながら説明したように、連続させずに1つずつ符号信号Sを生成して対象物との相対距離を計算して測定する場合には、2つ目の比較符号と反射符号とを比較して生じたピークのタイミングに基づいて相対距離を計算しなければならない。
【0069】
整合フィルタ109が、2つ目の比較符号と反射符号とを比較するタイミングを認識するための具体的な手法としては、符号信号生成部102が1つの反射信号Rを生成してから、さらに、1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過したタイミング(第1の実施形態で説明した第2の開始タイミングと等しいタイミング)を整合フィルタ109に通知する手法が一例として挙げられる。この場合、符号信号生成部102は、1つの反射信号Rを生成してから、次の1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過し、さらに、1つの反射信号Rを生成するのに必要な期間が経過したタイミング(第1の実施形態で説明した完了タイミングと等しいタイミング)も整合フィルタ109に通知する。そして、整合フィルタ109は、符号信号生成部102から第2の開始タイミングに相当するタイミングの通知を受けたときに相関値の計算、及びピークが生じるタイミングの通知を開始し、符号信号生成部102から完了タイミングに相当するタイミングの通知を受けたときに相関値の計算、及びピークが生じるタイミングの通知を完了する。
【0070】
そして、信号処理部110は、第2の開始タイミングに相当するタイミングから完了タイミングに相当するタイミングまでの期間で相対距離の計算をする。
【0071】
これにより、1つずつ符号信号Sを生成して、3つ連続させた比較符号と比較する場合でも、第1の実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、図11を参照しながら説明したように、1つずつ符号信号Sを生成して対象物との相対距離を計算して測定する場合に、連続させる比較符号の数は2つであってもよいし、4以上であってもよい。
【0073】
また、上記の説明では、符号の種類がPN符号であるものとして説明した。しかしながら、本発明で用いることのできる符号の種類はM系列符号、及びGold符号など適切な他の種類であってもよい。また、Gold符号などは、図6Cに一例として示した場合にゼロに近い定数の相関値が計算される符号ではないが、図6Bに一例として示した場合に計算されるランダムな相関値よりも小さな値となる。したがって、Gold符号のように、図6Cに一例として示した場合に計算される相関値が、図6Bに一例として示した場合に計算されるランダムな相関値よりも小さくなる符号であれば、どのような種類の符号を用いてもよい。
【0074】
また、上述の説明における対象物とは、例えば、本発明に係るレーダ装置1を自動車などの移動体に搭載する場合には、周囲に存在する他車両、歩行者、及び路上設置物として考えることができる。
【0075】
また、第1の実施形態では、N個の符号信号を連続させて生成する場合において、N−1個目の反射信号から復号した反射符号と比較符号とを比較するために、符号信号生成部102から通知されるタイミング(第1の開始タイミング、第2の開始タイミング、及び完了タイミング)に基づいて整合フィルタ109、及び信号処理部110が処理を進めるものとした。しかしながら、他の一実施形態では、N個の符号信号を連続させて生成する場合において、N−1個目の反射信号から復号した反射符号と比較符号とを比較するために、整合フィルタ109、或いは信号処理部110が、復号された反射符号の数を認識することなどによって、N−1個目の反射符号と比較符号とを比較して相関値を計算する期間を独自に認識し、独自に認識した期間で相関値がしきい値を超えるタイミングに基づいて相対距離を計算するなど、他の手法で相対距離を計算すべき期間を認識して、計算するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、対象物との相対距離を精度よく測定でき、例えば、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 レーダ装置
101 基準信号生成部
102 符号信号生成部
103 第1の増幅部
104 送信アンテナ
105 受信アンテナ
106 第2の増幅部
107 混合部
108 LPF
109 整合フィルタ
110 信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化された信号を符号信号として送信する送信手段と、
前記符号信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信手段と、
前記送信手段から送信される前記符号信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶手段と、
前記符号と同一の比較符号と、前記反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関に基づいて前記対象物を測定する測定手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記送信手段は、N個の連続する前記符号で符号化した符号信号を送信し、
前記測定手段は、N個の連続する前記符号で符号化した前記符号信号が対象物で反射した前記反射信号から復号した符号の内、N−1個目の前記反射信号から復号した符号と1つの前記比較符号とに基づいて前記対象物を測定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記送信手段は、3個の連続する前記符号で符号化した符号信号を送信し、
前記測定手段は、3個の連続する前記符号で符号化した前記符号信号が対象物で反射した前記反射信号から復号した符号の内、2個目の前記反射信号から復号した符号と1つの前記比較符号とに基づいて前記対象物を測定する、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記測定手段は、前記反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する前記比較符号との相関に基づいて前記対象物を測定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する前記比較符号の中で2つ目の前記比較符号との相関に基づいて前記対象物を測定する、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項1】
符号化された信号を符号信号として送信する送信手段と、
前記符号信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信手段と、
前記送信手段から送信される前記符号信号を符号化するときの符号と同一の符号を比較符号として記憶する記憶手段と、
前記符号と同一の比較符号と、前記反射信号から復号した符号とのいずれか一方の連続する複数の符号と、いずれか他方の符号との相関に基づいて前記対象物を測定する測定手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記送信手段は、N個の連続する前記符号で符号化した符号信号を送信し、
前記測定手段は、N個の連続する前記符号で符号化した前記符号信号が対象物で反射した前記反射信号から復号した符号の内、N−1個目の前記反射信号から復号した符号と1つの前記比較符号とに基づいて前記対象物を測定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記送信手段は、3個の連続する前記符号で符号化した符号信号を送信し、
前記測定手段は、3個の連続する前記符号で符号化した前記符号信号が対象物で反射した前記反射信号から復号した符号の内、2個目の前記反射信号から復号した符号と1つの前記比較符号とに基づいて前記対象物を測定する、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記測定手段は、前記反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する前記比較符号との相関に基づいて前記対象物を測定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記反射信号から復号した1つの符号と3以上の連続する前記比較符号の中で2つ目の前記比較符号との相関に基づいて前記対象物を測定する、請求項4に記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−112448(P2011−112448A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267585(P2009−267585)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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