レーダ装置
【課題】目標の検出性能と測距性能を高めることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出処理部13と、目標候補検出処理部13により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出処理部14とを設け、目標相対距離算出処理部15が、目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出処理部14により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出する。
【解決手段】距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出処理部13と、目標候補検出処理部13により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出処理部14とを設け、目標相対距離算出処理部15が、目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出処理部14により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、距離アンビギュィティ(ambiguity:あいまいさ)を解消して、目標の距離を正確に測定するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス繰り返し周期であるPRI(Pulse Repetition Interval)内に距離アンビギュィティがあるレーダ装置(例えば、非特許文献1を参照)では、図18に示すように、1CPI(Coherent Processing Interval:コヒーレントに処理可能な時間)の中で、一定周波数の送信信号を用いて、ドップラ周波数(速度)を算出するパルスドップラ処理と、距離情報と速度情報を含むビート周波数を得るために、複数のPRIに渡って周波数変調が施された送信信号を用いて測距を行うFM(Frequency Modulation)レンジングとが行われる。
【0003】
FMレンジングは、事前にパルスドップラ処理によって算出された速度情報を用いて、距離情報と速度情報を含むビート周波数から距離情報を抽出することで、目標との相対距離を算出するものである。
このレーダ装置では、距離アンビギュィティを解消することにより、測距性能の改善が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Guy Morris,“AIRBORNE PULSED DOPPLER RADAR second edition”,Artech House,pp.95-98,1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーダ装置は以上のように構成されているので、1CPIの中で、パルスドップラ処理とFMレンジングが行われる。このため、パルスドップラ処理及びFMレンジングの処理時間が短縮され、パルスドップラ処理及びFMレンジングのそれぞれの処理時間が1CPIである場合よりも、目標の検出性能が劣化してしまう課題があった。
また、図19に示すように、連続している複数のCPIで、複数の傾きの周波数変調を用いるFMレンジング方式が考えられるが、距離高分解能化を図る場合、距離アンビギュィティが発生する可能性があり、遠距離目標への対処が困難である課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標の検出性能と測距性能を高めることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーダ装置は、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、その送信信号を空中に放射する送信手段と、送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、その受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段とを設け、目標相対距離算出手段が、目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、その送信信号を空中に放射する送信手段と、送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、その受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段とを設け、目標相対距離算出手段が、目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出するように構成したので、目標の検出性能と測距性能を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
【図2】スキャンが異なる場合の送信信号の周波数と時間の関係を示す説明図である。
【図3】1CPIの周波数変調とパルス内符号変調が施された送信信号と受信信号の関係を示す説明図である。
【図4】FMレンジングによる距離、相関処理後の信号、PRI内の測距結果を示す説明図である。
【図5】4bitBarkerコードを示す説明図である。
【図6】信号処理器9における受信ビート信号の処理ブロック図である。
【図7】PRI内の距離−ビート周波数マップを示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の検出性能の向上を示す説明図である。
【図9】CFAR処理に係る注目セル、ガードセル、サンプルセルを示す説明図である。
【図10】CFAR処理の結果、CFAR閾値CFAR_th(kh,l)を越えるセルが集合している場合の処理内容を示す説明図である。
【図11】スキャン間の目標の移動距離を示す説明図である。
【図12】FMレンジングによる速度vfbとPRI内の距離による速度候補vrpri,rtn(rtnpri)とアンビギュィティがない目標相対速度vrpriの関係を示す説明図である。
【図13】FMレンジングによる距離と第2のFMレンジングによる距離と目標相対距離を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図である。
【図15】信号処理器9における受信ビート信号の処理ブロック図である。
【図16】目標候補組合せ処理部21による目標候補の組合せ処理を示す説明図である。
【図17】初期相対距離候補からアンビギュィティを解く方法を示す説明図である。
【図18】非特許文献1に開示されているレーダ装置の送信周波数を示す説明図である。
【図19】異なる周波数変調を用いた送信周波数を示す説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
図1において、送信装置1はパルス内変調信号発生器2、局部発振器3、パルス変調器4及び送信機5から構成されており、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号であるパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調された局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する装置である。ここで、tは時間を表す変数である。
【0011】
送信装置1のパルス内変調信号発生器2は4bitBarkerコードをパルス内変調信号φ(t)として生成し、そのパルス内変調信号φ(t)を送信機5に出力する信号発生器である。
ただし、パルス内変調信号φ(t)は4bitBarkerコードに限るものではなく、他のbitBarkerコードを用いてもよい。また、パルス内変調信号として、他の符号変調や周波数変調を用いてもよい。
【0012】
局部発振器3は送信信号周波数掃引時間TL、送信信号帯域幅BLで周波数変調された局部発振信号L0(t)を生成し、その局部発振信号L0(t)をパルス変調器4及び受信機8に出力する発振器である。
パルス変調器4は局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’0(t)を送信機5に出力する変調器である。
送信機5はパルス内変調信号発生器2から出力されたパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調器4から出力されたパルス変調後の局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する装置である。
【0013】
送受切替器6は送信機5から出力された送信RF信号を空中線7に出力することで、空中線7から送信RF信号Tx(t)を空中に放射させる一方、空中に存在している目標に反射して戻ってきている送信RF信号Tx(t)の反射RF信号を受信RF信号Rxtgt(n,t)として受信し、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信機8に出力する切替器である。
なお、送信装置1、送受切替器6及び空中線7から送信手段が構成されている。
【0014】
受信機8は局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)を用いて、送受切替器6から出力された受信RF信号Rxtgt(n,t)をダウンコンバートし、ダウンコンバート後の受信RF信号Rxtgt(n,t)を増幅して位相検波を行うことで、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信ビート信号S(n,m)に変換する装置である。
なお、送受切替器6、空中線7及び受信機8から受信手段が構成されている。
【0015】
信号処理器9は、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどの専用のハードウェアで構成されている複数の処理部(マップ作成部10(相関処理部11、周波数領域変換処理部12)、目標候補検出処理部13、目標相対速度算出処理部14、目標相対距離算出処理部15)から構成されている。
あるいは、信号処理器9は、例えば、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されていてもよい。
信号処理器9がコンピュータで構成されている場合、CPUがROMに記憶されるプログラム(マップ作成部10(相関処理部11、周波数領域変換処理部12)、目標候補検出処理部13、目標相対速度算出処理部14、目標相対距離算出処理部15の処理内容(図6の処理内容)を記述しているプログラム)を実行することで、目標相対速度や目標相対距離などを算出するようにすればよい。
【0016】
マップ作成部10は受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間では周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する処理を実施する。なお、マップ作成部10はマップ作成手段を構成している。
マップ作成部10の相関処理部11はPRI内でのパルス圧縮処理として、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)と参照信号Ex(mτ)との相関処理を実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する処理を実施する。
周波数領域変換処理部12は相関処理部11から出力されたパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)をPRI方向にH点で高速フーリエ逆変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)することで、PRI内の距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する処理を実施する。
【0017】
目標候補検出処理部13はマップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)に対して、CFAR処理を実施することで目標候補を検出する処理を実施する。なお、目標候補検出処理部13は目標候補検出手段を構成している。
目標相対速度算出処理部14は目標候補検出処理部13により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離rpri(k)とビート周波数fb(k)を用いて、目標相対速度vrpriを算出する処理を実施する。なお、目標相対速度算出処理部14は目標相対速度算出手段を構成している。
【0018】
目標相対距離算出処理部15は目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標相対速度算出処理部14により算出された目標相対速度vrpriから目標相対距離R0,rpri,kを算出する処理を実施する。なお、目標相対距離算出処理部15は目標相対距離算出手段を構成している。
表示器16はマップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)をディスプレイに表示するとともに、目標候補検出処理部13により目標候補が検出された場合、目標情報として、目標相対速度vrpriと目標相対距離R0,rpri,kをディスプレイに表示する。
【0019】
次に動作について説明する。
1CPIでは、図2に示すように、FMレンジングと、PRI内をサンプリングして、PRI内距離を高分解能に求めるためにパルス内符号変調を行うものとする。
また、目標との相対速度を求めるために、異なる時刻のビート周波数とPRI内の距離を用いるものとする。
図2の例では、捜索レーダを想定して、異なる時刻(経過時間)をスキャン時間Tscan(レーダのビームが360度回転する時間)としている。
【0020】
図3は1CPIの周波数変調とパルス内符号変調が施された送信信号と受信信号の関係を示す説明図である。
以下、図3を参照しながら、受信ビート信号を生成するまでの処理内容を説明する。
図3において、f0は送信開始周波数、Tpriはパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)、TLは送信信号の周波数掃引時間、BLは送信信号の帯域幅、T0はビート信号の観測時間、B0はT0の時間間隔での送信信号帯域幅、Tpは送信パルス幅、φ0は送信信号と局部発振信号の初期位相、cは光速を示している。
なお、送信信号周波数掃引時間TL内の周波数変調はアップチャープ変調としている。
【0021】
送信装置1は、予め設定されているパラメータにしたがって動作するが、そのパラメータは、下記に示すように、PRI内に存在している距離アンビギュィティを解消するとともに、FMレンジング後の距離分解能よりPRI内の距離分解能が高くなるように設定されている。
即ち、送信装置1では、下記の式(1)〜(3)を満足するように、FMレンジングによる距離の距離分解能ΔR’FMとサンプリング間隔ΔRFM、相関処理後の距離分解能ΔR’PC、1PRIの折り返し距離Rpriを算出するパラメータ(ビート信号の観測時間T0、T0の時間間隔での送信信号帯域幅B0、パルス繰り返し周期Tpri、サンプリング周波数Fsamp)が設定される(図4を参照)。
【0022】
なお、FMレンジングによる距離の距離分解能ΔR’FMは下記の式(4)で算出され、1PRIの折り返し距離Rpriは下記の式(5)で算出される。
また、FMレンジングによる距離のサンプリング間隔ΔRFMは下記の式(6)で算出され、相関処理後の距離分解能ΔR’PCは下記の式(7)で算出される。
ただし、HはFMレンジングの高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)での点数を表している。
【0023】
【0024】
送信装置1は、上記のように設定されたパラメータにしたがって動作する。
即ち、送信装置1の局部発振器3は、送信信号周波数掃引時間TL、送信信号帯域幅BLで周波数変調された局部発振信号L0(t)を生成し、その局部発振信号L0(t)をパルス変調器4及び受信機8に出力する。
パルス変調器4は、局部発振器3から局部発振信号L0(t)を受けると、その局部発振信号L0(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’0(t)を送信機5に出力する。
【0025】
送信装置1のパルス内変調信号発生器2は、図5に示すような4bitBarkerコードをパルス内変調信号φ(t)として生成し、そのパルス内変調信号φ(t)を送信機5に出力する。
送信機5は、パルス内変調信号発生器2からパルス内変調信号φ(t)を受けると、そのパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調器4から出力されたパルス変調後の局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する。
【0026】
送受切替器6は、送信機5から送信RF信号Tx(t)を受けると、その送信RF信号Tx(t)を空中線7に出力することで、空中線7から送信RF信号Tx(t)を空中に放射させる。
空中線7から空中に放射された送信RF信号Tx(t)は、空中に目標が存在している場合、その目標に反射されて戻ってくる。
送受切替器6は、目標に反射されて戻ってきた送信RF信号Tx(t)の反射RF信号が空中線7に入射されると、空中線7に入射された反射RF信号を受信RF信号Rxtgt(n,t)として受信し、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信機8に出力する。
【0027】
受信機8は、送受切替器6から受信RF信号Rxtgt(n,t)を受けると、局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)を用いて、その受信RF信号Rxtgt(n,t)をダウンコンバートする。
また、受信機8は、ダウンコンバート後の受信RF信号Rxtgt(n,t)を増幅して位相検波を行うことで、下記の式(8)で表される受信ビート信号S(n,m)を算出する。
ただし、ASは受信ビート信号の振幅、nはパルス番号、Nはパルス数、mは1PRI内のサンプリング番号、Mを1PRI内のサンプリング点数、Δtは1PRI内のサンプリング時間を表している。
【0028】
信号処理器9のマップ作成部10は、受信機8から受信ビート信号S(n,m)を受けると、その受信ビート信号S(n,m)に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間では周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する。
即ち、マップ作成部10の相関処理部11は、PRI内でのパルス圧縮処理として、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)と参照信号Ex(mτ)との相関処理を実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する。
【0029】
以下、相関処理部11における相関処理を具体的に説明する。ここでは、周波数領域での相関処理について説明する。
送信RF信号のパルス内変調成分と同じA/D変換後の参照信号Ex(mτ)は、下記の式(9)で表される。
【0030】
まず、相関処理部11は、下記の式(11)及び式(12)に示すように、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)をFFTするとともに、参照信号Ex(mτ)をFFTする。
そして、相関処理部11は、下記の式(13)に示すように、受信ビート信号S(n,m)のFFT結果であるFV(n,kr)と、参照信号Ex(mτ)のFFT結果であるFEx(kr)とを乗算する。
【0031】
ただし、*は複素共役、lはPRI内サンプリング番号、L’は相関処理のFFT点数を表している。
なお、L’>Mであれば、S(n,m)に0を代入し、L’>MτであればEx(mτ)に0を代入する。
【0032】
相関処理部11は、相関処理後の信号を受信ビート信号のサンプリング間隔よりも高精度にサンプリングする場合には、下記の式(14)により0を設定する。
式(14)において、Lは相関処理の高速フーリエ逆変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)の点数であり、下記の式(15)で表される。
qは0以上の整数であり、q=0の場合には、受信ビート信号のサンプリング間隔と同じサンプリング間隔になる。
【0033】
最後に、相関処理部11は、FV(n,kr)とFEx(kr)の乗算結果FV・Ex(n,kr)に対して、下記の式(16)に示すように、IFFTを実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する。
なお、パルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)のサンプリング番号lに対応するPRI内相対距離RPC(l)は、下記の式(17)で表される。
【0034】
マップ作成部10の周波数領域変換処理部12は、相関処理部11からパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を受けると、下記の式(18)に示すように、パルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)をPRI方向にH点でIFFTすることで、PRI内の距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する。
ただし、H>Nであれば、RV・Ex(n,l)に0埋めを行う。khはIFFT後のサンプリング番号を表している。
【0035】
ここで、図7はPRI内の距離−ビート周波数マップを示す説明図であり、マップ作成部10から図7に示すような距離−ビート周波数マップが目標候補検出処理部13に出力される。
【0036】
従来のレーダ装置のように、1CPIの中で、パルスドップラ処理とFMレンジングを行う場合(図18を参照)と比べて、図2に示すように、1CPIの全てにおいてFMレンジングとパルス内符号変調を行う場合、図8に示すように、相関処理、PRI間FFT後の目標信号の電力が向上して、検出性能が向上する。
また、PRI間FFTの前に、例えば、PRI方向にハミング窓を乗算するようにすれば、クラッタのビート周波数方向のサイドローブを抑圧することができるため、クラッタサイドローブに埋もれずに、検出性能を高めることが可能になる。
【0037】
PRI方向にハミング窓を乗算する代わりに、レーダとメインビームクラッタの関係に基づいて、PRI方向にメインビームクラッタを抑圧するフィルタ(例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ)処理を実施するようにしてもよい。
パルス内変調信号として周波数変調を用いた場合は、相関処理の際にも、参照信号にハミング窓を乗算することで、PRI内の距離方向のサイドローブを抑圧することができるため、クラッタサイドローブに埋もれずに、検出性能を高めることが可能になる。
【0038】
目標候補検出処理部13は、マップ作成部10から距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を受けると、下記の式(19)に示すように、その距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)に対して、CFAR処理を実施することで目標候補を検出する。
図9はCFAR処理に係る注目セル、ガードセル、サンプルセルを示す説明図であり、注目セルが目標候補として検出される。
【0039】
式(19)において、RFMRPC,CFAR(kh,l)はCFAR処理による目標候補の検出結果を表しており、目標候補は0が設定される。
CFAR閾値CFAR_th(kh,l)は、下記の式(20)により算出され、CFAR_corはCFAR係数、Samp_cell(kh,l)はサンプルセル、ave(Z(p))は配列Z(p)の平均値を表している。
ただし、図10に示すように、CFAR閾値CFAR_th(kh,l)を越えるセルが集合している場合、集合の中で、振幅の最大値を示すセルを目標候補として検出する。
【0040】
目標相対速度算出処理部14は、目標候補検出処理部13が目標候補を検出すると、異なる時刻の目標候補のPRI内の距離rpri(k)とビート周波数fb(k)を用いて、目標相対速度vrpriを算出する。
以下、目標相対速度算出処理部14による目標相対速度の算出処理を具体的に説明する。
【0041】
まず、目標候補のビート周波数は、スキャン間の目標候補の相対速度vが一定であるとすると、下記の式(21)と式(22)で表される。
式(21)はkスキャンの目標候補のビート周波数fb(k)を表しており、式(22)はk+1スキャンの目標候補のビート周波数fb(k+1)を表している。なお、R0はkスキャンの目標相対距離である。
【0042】
kスキャンの目標候補のビート周波数fb(k)と、k+1スキャンの目標候補のビート周波数fb(k+1)とを用いることで、下記の式(23),(24)に示すように、FMレンジングによる速度vfbと、FMレンジングによる距離R0,fbを算出することができる。
【0043】
式(23)と式(24)より、分子のビート周波数の観測値の差において、誤差が同じであるとすると、分母に1より小さい項(ビート周波数の距離係数2B0/cT0)がある場合、式(24)による距離算出誤差が大きくなる。
式(24)が示すFMレンジングによる距離R0,fbを精度良く算出するためには、ビート周波数の距離係数を大きくして、距離高分解能化すればよいが、距離アンビギュィティが生じる可能性があるため限界がある。
また、式(24)を展開し、各スキャンのビート周波数を用いた場合の目標相対距離の算出式は式(25)と式(26)で表される。式(25)はkスキャンのビート周波数を用いた場合であり、式(26)はk+1スキャンのビート周波数を用いた場合である。
【0044】
式(25)と式(26)より、高精度に目標相対距離を算出するためには、高精度に速度を算出する必要がある。
ビート周波数の差の観測誤差を周波数分解能ΔfFMとした場合の速度誤差vfb,errは下記の式(27)で表される。
ビート周波数の周波数分解能ΔfFMは下記の式(28)で表される。
【0045】
ここで、図11はスキャン間の目標の移動距離を示す説明図である。
以下、図11を参照しながら、目標相対速度算出処理部14の動作を説明する。
異なるスキャンの目標候補の情報として、ビート周波数とPRI内の距離が目標相対速度算出処理部14に入力される。
図11では、kスキャンの目標候補、k+1スキャンの目標候補の情報が入力された場合を示している。
PRI内はサンプリングされており、FMレンジングによる速度と比べて、高分解能、高精度に速度を算出することが可能であるが、速度アンビギュィティが発生する。
図11(a)はスキャン間の目標移動の折り返しが0回の場合を示し、図11(b)はスキャン間の目標移動の折り返しが1回の場合を示している。スキャン間の目標移動距離からアンビギュィティがある速度を算出することができる。
【0046】
目標相対速度算出処理部14は、目標候補検出処理部13から出力された異なるPRI内の距離−ビート周波数マップの目標候補に対して、下記の式(29)を用いて、スキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)を算出する。
【0047】
目標相対速度算出処理部14は、移動距離候補rmove(rtnpri)を算出すると、下記の式(31)に示すように、その移動距離候補rmove(rtnpri)を用いて、アンビギュィティがある目標相対速度候補(以降、「PRI内距離による速度候補」と称する)vrpri,rtn(rtnpri)を算出する。
また、目標相対速度算出処理部14は、下記の式(32)に示すように、PRI内折返し速度vrpri,ambを算出する。
【0048】
目標相対速度算出処理部14は、図12に示すように、低分解能であるがアンビギュィティがないFMレンジングによる速度vfbを用いて、下記の式(33)にしたがって、高分解能であるがアンビギュィティがあるPRI内距離による速度候補vrpri,rtn(rtnpri)のアンビギュィティを解くための速度折返し数Nv,rtnを算出する。
【0049】
目標相対速度算出処理部14は、速度折返し数Nv,rtnを算出すると、下記の式(34)に示すように、その速度折返し数Nv,rtnを用いて、目標相対速度vrpriを算出する。
【0050】
また、PRI内距離差の観測誤差をPRI内距離の距離分解能ΔR’pcとした場合の速度誤差vrpri,errは、下記の式(35)で表される。
【0051】
目標相対速度算出処理部14は、PRI内距離を用いて、高分解能に目標相対速度vrpriを算出するために、式(1)〜式(3)に加えて、下記の式(36)の条件を満たすパラメータに基づいて動作する。
ただし、|vmin|は想定する目標相対速度の絶対値の最小値である。
【0052】
目標相対距離算出処理部15は、目標相対速度算出処理部14が目標相対速度vrpriを算出すると、目標候補検出処理部13により検出された目標候補に対して、その目標相対速度vrpriを用いて、下記の式(37)に示すように、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを算出する。
【0053】
次に、目標相対距離算出処理部15は、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを用いて、下記の式(38)に示すように、距離折返し数NR,rtnを算出する。
【0054】
最後に、目標相対距離算出処理部15は、目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)と距離折返し数NR,rtnを用いて、下記の式(39)に示すように、目標相対距離R0,rpri,kを算出する。
【0055】
表示器16は、マップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)をディスプレイに表示する。
また、表示器16は、目標候補検出処理部13により目標候補が検出された場合、目標情報として、目標相対速度vrpriと目標相対距離R0,rpri,kをディスプレイに表示する。
【0056】
この実施の形態1では、図13に示すように、ビート周波数のみから算出されるFMレンジングによる速度Vfbと比べて、ビート周波数とPRI内距離から算出される高精度な目標相対速度vrpriを用いて、距離折返し数を誤らない第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを算出するため、目標相対距離の算出性能が向上したレーダを得ることが可能になる。
【0057】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、1CPIの全てにおいてFMレンジングを行うための周波数変調とパルス内パルス圧縮を行うためのパルス内変調を施した送信RF信号を送受信し、受信ビート信号に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間ではFMレンジングを実施することで、PRI内の距離−ビート周波数マップを作成している。その結果、目標の検出性能の向上が可能になり、また、1CPIに複数の処理を行うことが必要なく(パルスドップラ処理が不要)、処理負荷の低減や装置規模を縮小することが可能になる。
【0058】
また、この実施の形態1によれば、PRI内の距離−ビート周波数マップに対して、CFAR処理によって目標候補を算出し、目標候補の異なるスキャンのビート周波数から算出した相対速度を用いて、目標の異なるスキャンのPRI内の距離差から算出したアンビギュィティがある相対速度の速度アンビギュィティを解いて目標相対速度を算出している。この結果、ビート周波数による速度より、PRI内の距離差から高速度分解能、高精度なアンビギュィティがない目標相対速度を算出することが可能になり、この目標相対速度を用いて、距離折返し数を誤らずに高距離分解能、高精度な目標相対距離を算出するレーダを得ることが可能になる。
【0059】
実施の形態2.
図14はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
目標候補組合せ処理部21は目標候補検出処理部13により複数の目標候補が検出された場合、スキャン間のビート周波数を用いて、複数の目標候補をグループ分けし、同じグループに属する目標候補を同一の目標候補としてまとめる処理を実施する。即ち、スキャン間のビート周波数の差の絶対値が小さい組合せ同士を同じ目標候補としてまとめる処理を実施する。なお、目標候補組合せ処理部21は目標候補組合せ手段を構成している。
【0060】
目標初期相対速度算出処理部22は目標候補組合せ処理部21によりまとめられた異なるスキャンの目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標相対加速度を用いて、目標初期相対速度v0を算出する処理を実施する。なお、目標初期相対速度算出処理部22は目標相対速度算出手段を構成している。
目標相対距離算出処理部23は目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標初期相対速度算出処理部22により算出された目標初期相対速度v0から目標相対距離R0,rpri,kを算出する処理を実施する。なお、目標相対距離算出処理部23は目標相対距離算出手段を構成している。
【0061】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1と比べて、目標相対速度算出処理部14及び目標相対距離算出処理部15の代わりに、目標初期相対速度算出処理部22及び目標相対距離算出処理部23を実装し、目標初期相対速度算出処理部22の前段に目標候補組合せ処理部21を追加している点で相違している。
以下、目標候補組合せ処理部21、目標初期相対速度算出処理部22及び目標相対距離算出処理部23の処理内容を説明する(図15を参照)。
この実施の形態2では、複数の目標が存在する場合を想定する。また、スキャン間で目標相対速度が変化する場合を想定する。
【0062】
目標候補組合せ処理部21は、目標候補検出処理部13により複数の目標候補が検出された場合、図16に示すように、スキャン間のビート周波数の差の絶対値が小さい組合せ同士を同じ目標候補としてまとめ、その組合せと目標候補のビート周波数及びPRI内の距離を目標初期相対速度算出処理部22に出力する。
【0063】
上記実施の形態1では、目標相対速度算出処理部14が、スキャン間で目標相対速度が変化する場合、等速目標を想定しているため、式(23)を用いているFMレンジングによる速度や、式(34)を用いている目標相対速度の算出精度が劣化する可能性がある。
目標初期相対速度算出処理部22は、目標候補組合せ処理部21から出力された異なるスキャンの目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)を用いるとともに、目標相対加速度を考慮して、目標初期相対速度v0を算出する。
この実施の形態2では、複数の目標を想定しているため、目標候補組合せ処理部21を用いるが、単一の目標の場合は、目標候補検出処理部13を用いてもよい。
以下、目標初期相対速度算出処理部22による目標初期相対速度v0の算出処理を具体的に説明する。
【0064】
初期相対距離(kスキャンの目標相対距離)R0、目標初期相対速度v0、相対加速度aの目標のスキャン番号kとk+1のビート周波数は、下記の式(40)、式(41)で表される。
また、スキャン番号kとk+1間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)は、下記の式(42)で表される。
【0065】
また、式(40)〜式(42)の連立方程式は、下記の式(43)に示すように、行列として表される。
ただし、式(42)に表されるスキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)により、一意に初期相対距離(kスキャンの目標相対距離)R0、目標初期相対速度v0、相対加速度aの解を求めることはできないため、初期相対距離候補R0,LSM(rtnpri)、初期相対速度候補v0,LSM(rtnpri)、相対加速度候補aLSM(rtnpri)で表される。
【0066】
式(43)の各行列を下記の式(44)のように定義する。
ここで、Y(rtnpri)はビート周波数とスキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補、Wは初期相対距離と初期相対速度と相対加速度に関する係数、A(rtnpri)は初期相対距離候補と初期相対速度候補と相対加速度候補である。
したがって、式(43)は、下記の式(44)によって、下記の式(45)のように表される。
【0067】
【0068】
目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(46)に示すように、初期相対距離候補、初期相対速度候補及び相対加速度候補であるA(rtnpri)を算出する。
ただし、W−1は初期相対距離、初期相対速度及び相対加速度に関する係数Wの逆行列である。
【0069】
初期相対距離候補、初期相対速度候補及び相対加速度候補であるA(rtnpri)は、スキャン間の距離折返し数rtnpriにより変化し、式(42)のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)は1PRIの折返し距離Rpriの整数倍に変化する。
目標初期相対速度算出処理部22は、初期相対距離候補R0,LSM(rtnpri)の連立方程式による折返し距離R0,LSM,ambを下記の式(47)によって算出する(図17を参照)。
【0070】
目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(49)を満たすスキャン間の距離折返し数rtnpri(=NLSM,rtn)を算出する。
最後に、目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(50)に示すように、目標初期相対速度v0を算出し、その目標初期相対速度v0を目標相対距離算出処理部23に出力する。
【0071】
目標相対距離算出処理部23は、目標初期相対速度算出処理部22から目標初期相対速度v0を受けると、目標相対速度vrpriの代わりに、その目標初期相対速度v0を用いて、目標相対距離R0,rpri,kを算出する(式(37)〜式(39))。
目標相対距離算出処理部23において、目標相対速度vrpriの代わりに、目標初期相対速度v0を用いる以外の処理は、目標相対距離算出処理部15と同じであるため詳細な説明は省略する。
加速度目標の場合は、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kの測距誤差が大きくなり、距離折返し数を誤る可能性が大きくなるが、加速度も考慮して算出された目標初期相対距離v0を用いることで、距離折返し数を誤らず、高分解能、高性能な測距が可能になる。
【0072】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、複数の目標が存在する場合でも、目標候補のスキャン間のビート周波数差から組合せを行うため、複数の目標に対処可能なレーダを得ることが可能になる。
また、スキャン間のビート周波数とPRI内距離を用いて、相対加速度を含めて、初期相対速度を算出するため、加速度目標の場合においても、高分解能、高性能なレーダを得ることが可能になる。
【0073】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 送信装置(送信手段)、2 パルス内変調信号発生器、3 局部発振器、4 パルス変調器、5 送信機、6 送受切替器(送信手段、受信手段)、7 空中線(送信手段、受信手段)、8 受信機(受信手段)、9 信号処理器、10 マップ作成部(マップ作成手段)、11 相関処理部、12 周波数領域変換処理部、13 目標候補検出処理部(目標候補検出手段)、14 目標相対速度算出処理部(目標相対速度算出手段)、15 目標相対距離算出処理部(目標相対距離算出手段)、16 表示器、21 目標候補組合せ処理部(目標候補組合せ手段)、22 目標初期相対速度算出処理部(目標相対速度算出手段)、23 目標相対距離算出処理部(目標相対距離算出手段)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、距離アンビギュィティ(ambiguity:あいまいさ)を解消して、目標の距離を正確に測定するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス繰り返し周期であるPRI(Pulse Repetition Interval)内に距離アンビギュィティがあるレーダ装置(例えば、非特許文献1を参照)では、図18に示すように、1CPI(Coherent Processing Interval:コヒーレントに処理可能な時間)の中で、一定周波数の送信信号を用いて、ドップラ周波数(速度)を算出するパルスドップラ処理と、距離情報と速度情報を含むビート周波数を得るために、複数のPRIに渡って周波数変調が施された送信信号を用いて測距を行うFM(Frequency Modulation)レンジングとが行われる。
【0003】
FMレンジングは、事前にパルスドップラ処理によって算出された速度情報を用いて、距離情報と速度情報を含むビート周波数から距離情報を抽出することで、目標との相対距離を算出するものである。
このレーダ装置では、距離アンビギュィティを解消することにより、測距性能の改善が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Guy Morris,“AIRBORNE PULSED DOPPLER RADAR second edition”,Artech House,pp.95-98,1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーダ装置は以上のように構成されているので、1CPIの中で、パルスドップラ処理とFMレンジングが行われる。このため、パルスドップラ処理及びFMレンジングの処理時間が短縮され、パルスドップラ処理及びFMレンジングのそれぞれの処理時間が1CPIである場合よりも、目標の検出性能が劣化してしまう課題があった。
また、図19に示すように、連続している複数のCPIで、複数の傾きの周波数変調を用いるFMレンジング方式が考えられるが、距離高分解能化を図る場合、距離アンビギュィティが発生する可能性があり、遠距離目標への対処が困難である課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標の検出性能と測距性能を高めることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーダ装置は、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、その送信信号を空中に放射する送信手段と、送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、その受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段とを設け、目標相対距離算出手段が、目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、その送信信号を空中に放射する送信手段と、送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、その受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段とを設け、目標相対距離算出手段が、目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出するように構成したので、目標の検出性能と測距性能を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
【図2】スキャンが異なる場合の送信信号の周波数と時間の関係を示す説明図である。
【図3】1CPIの周波数変調とパルス内符号変調が施された送信信号と受信信号の関係を示す説明図である。
【図4】FMレンジングによる距離、相関処理後の信号、PRI内の測距結果を示す説明図である。
【図5】4bitBarkerコードを示す説明図である。
【図6】信号処理器9における受信ビート信号の処理ブロック図である。
【図7】PRI内の距離−ビート周波数マップを示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の検出性能の向上を示す説明図である。
【図9】CFAR処理に係る注目セル、ガードセル、サンプルセルを示す説明図である。
【図10】CFAR処理の結果、CFAR閾値CFAR_th(kh,l)を越えるセルが集合している場合の処理内容を示す説明図である。
【図11】スキャン間の目標の移動距離を示す説明図である。
【図12】FMレンジングによる速度vfbとPRI内の距離による速度候補vrpri,rtn(rtnpri)とアンビギュィティがない目標相対速度vrpriの関係を示す説明図である。
【図13】FMレンジングによる距離と第2のFMレンジングによる距離と目標相対距離を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図である。
【図15】信号処理器9における受信ビート信号の処理ブロック図である。
【図16】目標候補組合せ処理部21による目標候補の組合せ処理を示す説明図である。
【図17】初期相対距離候補からアンビギュィティを解く方法を示す説明図である。
【図18】非特許文献1に開示されているレーダ装置の送信周波数を示す説明図である。
【図19】異なる周波数変調を用いた送信周波数を示す説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
図1において、送信装置1はパルス内変調信号発生器2、局部発振器3、パルス変調器4及び送信機5から構成されており、複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号であるパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調された局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する装置である。ここで、tは時間を表す変数である。
【0011】
送信装置1のパルス内変調信号発生器2は4bitBarkerコードをパルス内変調信号φ(t)として生成し、そのパルス内変調信号φ(t)を送信機5に出力する信号発生器である。
ただし、パルス内変調信号φ(t)は4bitBarkerコードに限るものではなく、他のbitBarkerコードを用いてもよい。また、パルス内変調信号として、他の符号変調や周波数変調を用いてもよい。
【0012】
局部発振器3は送信信号周波数掃引時間TL、送信信号帯域幅BLで周波数変調された局部発振信号L0(t)を生成し、その局部発振信号L0(t)をパルス変調器4及び受信機8に出力する発振器である。
パルス変調器4は局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’0(t)を送信機5に出力する変調器である。
送信機5はパルス内変調信号発生器2から出力されたパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調器4から出力されたパルス変調後の局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する装置である。
【0013】
送受切替器6は送信機5から出力された送信RF信号を空中線7に出力することで、空中線7から送信RF信号Tx(t)を空中に放射させる一方、空中に存在している目標に反射して戻ってきている送信RF信号Tx(t)の反射RF信号を受信RF信号Rxtgt(n,t)として受信し、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信機8に出力する切替器である。
なお、送信装置1、送受切替器6及び空中線7から送信手段が構成されている。
【0014】
受信機8は局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)を用いて、送受切替器6から出力された受信RF信号Rxtgt(n,t)をダウンコンバートし、ダウンコンバート後の受信RF信号Rxtgt(n,t)を増幅して位相検波を行うことで、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信ビート信号S(n,m)に変換する装置である。
なお、送受切替器6、空中線7及び受信機8から受信手段が構成されている。
【0015】
信号処理器9は、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどの専用のハードウェアで構成されている複数の処理部(マップ作成部10(相関処理部11、周波数領域変換処理部12)、目標候補検出処理部13、目標相対速度算出処理部14、目標相対距離算出処理部15)から構成されている。
あるいは、信号処理器9は、例えば、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されていてもよい。
信号処理器9がコンピュータで構成されている場合、CPUがROMに記憶されるプログラム(マップ作成部10(相関処理部11、周波数領域変換処理部12)、目標候補検出処理部13、目標相対速度算出処理部14、目標相対距離算出処理部15の処理内容(図6の処理内容)を記述しているプログラム)を実行することで、目標相対速度や目標相対距離などを算出するようにすればよい。
【0016】
マップ作成部10は受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間では周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する処理を実施する。なお、マップ作成部10はマップ作成手段を構成している。
マップ作成部10の相関処理部11はPRI内でのパルス圧縮処理として、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)と参照信号Ex(mτ)との相関処理を実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する処理を実施する。
周波数領域変換処理部12は相関処理部11から出力されたパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)をPRI方向にH点で高速フーリエ逆変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)することで、PRI内の距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する処理を実施する。
【0017】
目標候補検出処理部13はマップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)に対して、CFAR処理を実施することで目標候補を検出する処理を実施する。なお、目標候補検出処理部13は目標候補検出手段を構成している。
目標相対速度算出処理部14は目標候補検出処理部13により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離rpri(k)とビート周波数fb(k)を用いて、目標相対速度vrpriを算出する処理を実施する。なお、目標相対速度算出処理部14は目標相対速度算出手段を構成している。
【0018】
目標相対距離算出処理部15は目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標相対速度算出処理部14により算出された目標相対速度vrpriから目標相対距離R0,rpri,kを算出する処理を実施する。なお、目標相対距離算出処理部15は目標相対距離算出手段を構成している。
表示器16はマップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)をディスプレイに表示するとともに、目標候補検出処理部13により目標候補が検出された場合、目標情報として、目標相対速度vrpriと目標相対距離R0,rpri,kをディスプレイに表示する。
【0019】
次に動作について説明する。
1CPIでは、図2に示すように、FMレンジングと、PRI内をサンプリングして、PRI内距離を高分解能に求めるためにパルス内符号変調を行うものとする。
また、目標との相対速度を求めるために、異なる時刻のビート周波数とPRI内の距離を用いるものとする。
図2の例では、捜索レーダを想定して、異なる時刻(経過時間)をスキャン時間Tscan(レーダのビームが360度回転する時間)としている。
【0020】
図3は1CPIの周波数変調とパルス内符号変調が施された送信信号と受信信号の関係を示す説明図である。
以下、図3を参照しながら、受信ビート信号を生成するまでの処理内容を説明する。
図3において、f0は送信開始周波数、Tpriはパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)、TLは送信信号の周波数掃引時間、BLは送信信号の帯域幅、T0はビート信号の観測時間、B0はT0の時間間隔での送信信号帯域幅、Tpは送信パルス幅、φ0は送信信号と局部発振信号の初期位相、cは光速を示している。
なお、送信信号周波数掃引時間TL内の周波数変調はアップチャープ変調としている。
【0021】
送信装置1は、予め設定されているパラメータにしたがって動作するが、そのパラメータは、下記に示すように、PRI内に存在している距離アンビギュィティを解消するとともに、FMレンジング後の距離分解能よりPRI内の距離分解能が高くなるように設定されている。
即ち、送信装置1では、下記の式(1)〜(3)を満足するように、FMレンジングによる距離の距離分解能ΔR’FMとサンプリング間隔ΔRFM、相関処理後の距離分解能ΔR’PC、1PRIの折り返し距離Rpriを算出するパラメータ(ビート信号の観測時間T0、T0の時間間隔での送信信号帯域幅B0、パルス繰り返し周期Tpri、サンプリング周波数Fsamp)が設定される(図4を参照)。
【0022】
なお、FMレンジングによる距離の距離分解能ΔR’FMは下記の式(4)で算出され、1PRIの折り返し距離Rpriは下記の式(5)で算出される。
また、FMレンジングによる距離のサンプリング間隔ΔRFMは下記の式(6)で算出され、相関処理後の距離分解能ΔR’PCは下記の式(7)で算出される。
ただし、HはFMレンジングの高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)での点数を表している。
【0023】
【0024】
送信装置1は、上記のように設定されたパラメータにしたがって動作する。
即ち、送信装置1の局部発振器3は、送信信号周波数掃引時間TL、送信信号帯域幅BLで周波数変調された局部発振信号L0(t)を生成し、その局部発振信号L0(t)をパルス変調器4及び受信機8に出力する。
パルス変調器4は、局部発振器3から局部発振信号L0(t)を受けると、その局部発振信号L0(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’0(t)を送信機5に出力する。
【0025】
送信装置1のパルス内変調信号発生器2は、図5に示すような4bitBarkerコードをパルス内変調信号φ(t)として生成し、そのパルス内変調信号φ(t)を送信機5に出力する。
送信機5は、パルス内変調信号発生器2からパルス内変調信号φ(t)を受けると、そのパルス内変調信号φ(t)を用いて、パルス変調器4から出力されたパルス変調後の局部発振信号L’0(t)をPRIでパルス内変調することで送信RF信号Tx(t)を生成し、その送信RF信号Tx(t)を送受切替器6に出力する。
【0026】
送受切替器6は、送信機5から送信RF信号Tx(t)を受けると、その送信RF信号Tx(t)を空中線7に出力することで、空中線7から送信RF信号Tx(t)を空中に放射させる。
空中線7から空中に放射された送信RF信号Tx(t)は、空中に目標が存在している場合、その目標に反射されて戻ってくる。
送受切替器6は、目標に反射されて戻ってきた送信RF信号Tx(t)の反射RF信号が空中線7に入射されると、空中線7に入射された反射RF信号を受信RF信号Rxtgt(n,t)として受信し、その受信RF信号Rxtgt(n,t)を受信機8に出力する。
【0027】
受信機8は、送受切替器6から受信RF信号Rxtgt(n,t)を受けると、局部発振器3から出力された局部発振信号L0(t)を用いて、その受信RF信号Rxtgt(n,t)をダウンコンバートする。
また、受信機8は、ダウンコンバート後の受信RF信号Rxtgt(n,t)を増幅して位相検波を行うことで、下記の式(8)で表される受信ビート信号S(n,m)を算出する。
ただし、ASは受信ビート信号の振幅、nはパルス番号、Nはパルス数、mは1PRI内のサンプリング番号、Mを1PRI内のサンプリング点数、Δtは1PRI内のサンプリング時間を表している。
【0028】
信号処理器9のマップ作成部10は、受信機8から受信ビート信号S(n,m)を受けると、その受信ビート信号S(n,m)に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間では周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する。
即ち、マップ作成部10の相関処理部11は、PRI内でのパルス圧縮処理として、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)と参照信号Ex(mτ)との相関処理を実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する。
【0029】
以下、相関処理部11における相関処理を具体的に説明する。ここでは、周波数領域での相関処理について説明する。
送信RF信号のパルス内変調成分と同じA/D変換後の参照信号Ex(mτ)は、下記の式(9)で表される。
【0030】
まず、相関処理部11は、下記の式(11)及び式(12)に示すように、受信機8から出力された受信ビート信号S(n,m)をFFTするとともに、参照信号Ex(mτ)をFFTする。
そして、相関処理部11は、下記の式(13)に示すように、受信ビート信号S(n,m)のFFT結果であるFV(n,kr)と、参照信号Ex(mτ)のFFT結果であるFEx(kr)とを乗算する。
【0031】
ただし、*は複素共役、lはPRI内サンプリング番号、L’は相関処理のFFT点数を表している。
なお、L’>Mであれば、S(n,m)に0を代入し、L’>MτであればEx(mτ)に0を代入する。
【0032】
相関処理部11は、相関処理後の信号を受信ビート信号のサンプリング間隔よりも高精度にサンプリングする場合には、下記の式(14)により0を設定する。
式(14)において、Lは相関処理の高速フーリエ逆変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)の点数であり、下記の式(15)で表される。
qは0以上の整数であり、q=0の場合には、受信ビート信号のサンプリング間隔と同じサンプリング間隔になる。
【0033】
最後に、相関処理部11は、FV(n,kr)とFEx(kr)の乗算結果FV・Ex(n,kr)に対して、下記の式(16)に示すように、IFFTを実施し、その相関処理結果であるパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を周波数領域変換処理部12に出力する。
なお、パルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)のサンプリング番号lに対応するPRI内相対距離RPC(l)は、下記の式(17)で表される。
【0034】
マップ作成部10の周波数領域変換処理部12は、相関処理部11からパルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)を受けると、下記の式(18)に示すように、パルス圧縮後の信号RV・Ex(n,l)をPRI方向にH点でIFFTすることで、PRI内の距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を作成する。
ただし、H>Nであれば、RV・Ex(n,l)に0埋めを行う。khはIFFT後のサンプリング番号を表している。
【0035】
ここで、図7はPRI内の距離−ビート周波数マップを示す説明図であり、マップ作成部10から図7に示すような距離−ビート周波数マップが目標候補検出処理部13に出力される。
【0036】
従来のレーダ装置のように、1CPIの中で、パルスドップラ処理とFMレンジングを行う場合(図18を参照)と比べて、図2に示すように、1CPIの全てにおいてFMレンジングとパルス内符号変調を行う場合、図8に示すように、相関処理、PRI間FFT後の目標信号の電力が向上して、検出性能が向上する。
また、PRI間FFTの前に、例えば、PRI方向にハミング窓を乗算するようにすれば、クラッタのビート周波数方向のサイドローブを抑圧することができるため、クラッタサイドローブに埋もれずに、検出性能を高めることが可能になる。
【0037】
PRI方向にハミング窓を乗算する代わりに、レーダとメインビームクラッタの関係に基づいて、PRI方向にメインビームクラッタを抑圧するフィルタ(例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ)処理を実施するようにしてもよい。
パルス内変調信号として周波数変調を用いた場合は、相関処理の際にも、参照信号にハミング窓を乗算することで、PRI内の距離方向のサイドローブを抑圧することができるため、クラッタサイドローブに埋もれずに、検出性能を高めることが可能になる。
【0038】
目標候補検出処理部13は、マップ作成部10から距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)を受けると、下記の式(19)に示すように、その距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)に対して、CFAR処理を実施することで目標候補を検出する。
図9はCFAR処理に係る注目セル、ガードセル、サンプルセルを示す説明図であり、注目セルが目標候補として検出される。
【0039】
式(19)において、RFMRPC,CFAR(kh,l)はCFAR処理による目標候補の検出結果を表しており、目標候補は0が設定される。
CFAR閾値CFAR_th(kh,l)は、下記の式(20)により算出され、CFAR_corはCFAR係数、Samp_cell(kh,l)はサンプルセル、ave(Z(p))は配列Z(p)の平均値を表している。
ただし、図10に示すように、CFAR閾値CFAR_th(kh,l)を越えるセルが集合している場合、集合の中で、振幅の最大値を示すセルを目標候補として検出する。
【0040】
目標相対速度算出処理部14は、目標候補検出処理部13が目標候補を検出すると、異なる時刻の目標候補のPRI内の距離rpri(k)とビート周波数fb(k)を用いて、目標相対速度vrpriを算出する。
以下、目標相対速度算出処理部14による目標相対速度の算出処理を具体的に説明する。
【0041】
まず、目標候補のビート周波数は、スキャン間の目標候補の相対速度vが一定であるとすると、下記の式(21)と式(22)で表される。
式(21)はkスキャンの目標候補のビート周波数fb(k)を表しており、式(22)はk+1スキャンの目標候補のビート周波数fb(k+1)を表している。なお、R0はkスキャンの目標相対距離である。
【0042】
kスキャンの目標候補のビート周波数fb(k)と、k+1スキャンの目標候補のビート周波数fb(k+1)とを用いることで、下記の式(23),(24)に示すように、FMレンジングによる速度vfbと、FMレンジングによる距離R0,fbを算出することができる。
【0043】
式(23)と式(24)より、分子のビート周波数の観測値の差において、誤差が同じであるとすると、分母に1より小さい項(ビート周波数の距離係数2B0/cT0)がある場合、式(24)による距離算出誤差が大きくなる。
式(24)が示すFMレンジングによる距離R0,fbを精度良く算出するためには、ビート周波数の距離係数を大きくして、距離高分解能化すればよいが、距離アンビギュィティが生じる可能性があるため限界がある。
また、式(24)を展開し、各スキャンのビート周波数を用いた場合の目標相対距離の算出式は式(25)と式(26)で表される。式(25)はkスキャンのビート周波数を用いた場合であり、式(26)はk+1スキャンのビート周波数を用いた場合である。
【0044】
式(25)と式(26)より、高精度に目標相対距離を算出するためには、高精度に速度を算出する必要がある。
ビート周波数の差の観測誤差を周波数分解能ΔfFMとした場合の速度誤差vfb,errは下記の式(27)で表される。
ビート周波数の周波数分解能ΔfFMは下記の式(28)で表される。
【0045】
ここで、図11はスキャン間の目標の移動距離を示す説明図である。
以下、図11を参照しながら、目標相対速度算出処理部14の動作を説明する。
異なるスキャンの目標候補の情報として、ビート周波数とPRI内の距離が目標相対速度算出処理部14に入力される。
図11では、kスキャンの目標候補、k+1スキャンの目標候補の情報が入力された場合を示している。
PRI内はサンプリングされており、FMレンジングによる速度と比べて、高分解能、高精度に速度を算出することが可能であるが、速度アンビギュィティが発生する。
図11(a)はスキャン間の目標移動の折り返しが0回の場合を示し、図11(b)はスキャン間の目標移動の折り返しが1回の場合を示している。スキャン間の目標移動距離からアンビギュィティがある速度を算出することができる。
【0046】
目標相対速度算出処理部14は、目標候補検出処理部13から出力された異なるPRI内の距離−ビート周波数マップの目標候補に対して、下記の式(29)を用いて、スキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)を算出する。
【0047】
目標相対速度算出処理部14は、移動距離候補rmove(rtnpri)を算出すると、下記の式(31)に示すように、その移動距離候補rmove(rtnpri)を用いて、アンビギュィティがある目標相対速度候補(以降、「PRI内距離による速度候補」と称する)vrpri,rtn(rtnpri)を算出する。
また、目標相対速度算出処理部14は、下記の式(32)に示すように、PRI内折返し速度vrpri,ambを算出する。
【0048】
目標相対速度算出処理部14は、図12に示すように、低分解能であるがアンビギュィティがないFMレンジングによる速度vfbを用いて、下記の式(33)にしたがって、高分解能であるがアンビギュィティがあるPRI内距離による速度候補vrpri,rtn(rtnpri)のアンビギュィティを解くための速度折返し数Nv,rtnを算出する。
【0049】
目標相対速度算出処理部14は、速度折返し数Nv,rtnを算出すると、下記の式(34)に示すように、その速度折返し数Nv,rtnを用いて、目標相対速度vrpriを算出する。
【0050】
また、PRI内距離差の観測誤差をPRI内距離の距離分解能ΔR’pcとした場合の速度誤差vrpri,errは、下記の式(35)で表される。
【0051】
目標相対速度算出処理部14は、PRI内距離を用いて、高分解能に目標相対速度vrpriを算出するために、式(1)〜式(3)に加えて、下記の式(36)の条件を満たすパラメータに基づいて動作する。
ただし、|vmin|は想定する目標相対速度の絶対値の最小値である。
【0052】
目標相対距離算出処理部15は、目標相対速度算出処理部14が目標相対速度vrpriを算出すると、目標候補検出処理部13により検出された目標候補に対して、その目標相対速度vrpriを用いて、下記の式(37)に示すように、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを算出する。
【0053】
次に、目標相対距離算出処理部15は、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを用いて、下記の式(38)に示すように、距離折返し数NR,rtnを算出する。
【0054】
最後に、目標相対距離算出処理部15は、目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)と距離折返し数NR,rtnを用いて、下記の式(39)に示すように、目標相対距離R0,rpri,kを算出する。
【0055】
表示器16は、マップ作成部10により作成された距離−ビート周波数マップRFMRPC(kh,l)をディスプレイに表示する。
また、表示器16は、目標候補検出処理部13により目標候補が検出された場合、目標情報として、目標相対速度vrpriと目標相対距離R0,rpri,kをディスプレイに表示する。
【0056】
この実施の形態1では、図13に示すように、ビート周波数のみから算出されるFMレンジングによる速度Vfbと比べて、ビート周波数とPRI内距離から算出される高精度な目標相対速度vrpriを用いて、距離折返し数を誤らない第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kを算出するため、目標相対距離の算出性能が向上したレーダを得ることが可能になる。
【0057】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、1CPIの全てにおいてFMレンジングを行うための周波数変調とパルス内パルス圧縮を行うためのパルス内変調を施した送信RF信号を送受信し、受信ビート信号に対して、PRI内ではパルス圧縮処理を実施し、PRI間ではFMレンジングを実施することで、PRI内の距離−ビート周波数マップを作成している。その結果、目標の検出性能の向上が可能になり、また、1CPIに複数の処理を行うことが必要なく(パルスドップラ処理が不要)、処理負荷の低減や装置規模を縮小することが可能になる。
【0058】
また、この実施の形態1によれば、PRI内の距離−ビート周波数マップに対して、CFAR処理によって目標候補を算出し、目標候補の異なるスキャンのビート周波数から算出した相対速度を用いて、目標の異なるスキャンのPRI内の距離差から算出したアンビギュィティがある相対速度の速度アンビギュィティを解いて目標相対速度を算出している。この結果、ビート周波数による速度より、PRI内の距離差から高速度分解能、高精度なアンビギュィティがない目標相対速度を算出することが可能になり、この目標相対速度を用いて、距離折返し数を誤らずに高距離分解能、高精度な目標相対距離を算出するレーダを得ることが可能になる。
【0059】
実施の形態2.
図14はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
目標候補組合せ処理部21は目標候補検出処理部13により複数の目標候補が検出された場合、スキャン間のビート周波数を用いて、複数の目標候補をグループ分けし、同じグループに属する目標候補を同一の目標候補としてまとめる処理を実施する。即ち、スキャン間のビート周波数の差の絶対値が小さい組合せ同士を同じ目標候補としてまとめる処理を実施する。なお、目標候補組合せ処理部21は目標候補組合せ手段を構成している。
【0060】
目標初期相対速度算出処理部22は目標候補組合せ処理部21によりまとめられた異なるスキャンの目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標相対加速度を用いて、目標初期相対速度v0を算出する処理を実施する。なお、目標初期相対速度算出処理部22は目標相対速度算出手段を構成している。
目標相対距離算出処理部23は目標候補検出処理部13により検出された目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)と目標初期相対速度算出処理部22により算出された目標初期相対速度v0から目標相対距離R0,rpri,kを算出する処理を実施する。なお、目標相対距離算出処理部23は目標相対距離算出手段を構成している。
【0061】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1と比べて、目標相対速度算出処理部14及び目標相対距離算出処理部15の代わりに、目標初期相対速度算出処理部22及び目標相対距離算出処理部23を実装し、目標初期相対速度算出処理部22の前段に目標候補組合せ処理部21を追加している点で相違している。
以下、目標候補組合せ処理部21、目標初期相対速度算出処理部22及び目標相対距離算出処理部23の処理内容を説明する(図15を参照)。
この実施の形態2では、複数の目標が存在する場合を想定する。また、スキャン間で目標相対速度が変化する場合を想定する。
【0062】
目標候補組合せ処理部21は、目標候補検出処理部13により複数の目標候補が検出された場合、図16に示すように、スキャン間のビート周波数の差の絶対値が小さい組合せ同士を同じ目標候補としてまとめ、その組合せと目標候補のビート周波数及びPRI内の距離を目標初期相対速度算出処理部22に出力する。
【0063】
上記実施の形態1では、目標相対速度算出処理部14が、スキャン間で目標相対速度が変化する場合、等速目標を想定しているため、式(23)を用いているFMレンジングによる速度や、式(34)を用いている目標相対速度の算出精度が劣化する可能性がある。
目標初期相対速度算出処理部22は、目標候補組合せ処理部21から出力された異なるスキャンの目標候補のPRI内の距離rpri(k)及びビート周波数fb(k)を用いるとともに、目標相対加速度を考慮して、目標初期相対速度v0を算出する。
この実施の形態2では、複数の目標を想定しているため、目標候補組合せ処理部21を用いるが、単一の目標の場合は、目標候補検出処理部13を用いてもよい。
以下、目標初期相対速度算出処理部22による目標初期相対速度v0の算出処理を具体的に説明する。
【0064】
初期相対距離(kスキャンの目標相対距離)R0、目標初期相対速度v0、相対加速度aの目標のスキャン番号kとk+1のビート周波数は、下記の式(40)、式(41)で表される。
また、スキャン番号kとk+1間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)は、下記の式(42)で表される。
【0065】
また、式(40)〜式(42)の連立方程式は、下記の式(43)に示すように、行列として表される。
ただし、式(42)に表されるスキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)により、一意に初期相対距離(kスキャンの目標相対距離)R0、目標初期相対速度v0、相対加速度aの解を求めることはできないため、初期相対距離候補R0,LSM(rtnpri)、初期相対速度候補v0,LSM(rtnpri)、相対加速度候補aLSM(rtnpri)で表される。
【0066】
式(43)の各行列を下記の式(44)のように定義する。
ここで、Y(rtnpri)はビート周波数とスキャン間のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補、Wは初期相対距離と初期相対速度と相対加速度に関する係数、A(rtnpri)は初期相対距離候補と初期相対速度候補と相対加速度候補である。
したがって、式(43)は、下記の式(44)によって、下記の式(45)のように表される。
【0067】
【0068】
目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(46)に示すように、初期相対距離候補、初期相対速度候補及び相対加速度候補であるA(rtnpri)を算出する。
ただし、W−1は初期相対距離、初期相対速度及び相対加速度に関する係数Wの逆行列である。
【0069】
初期相対距離候補、初期相対速度候補及び相対加速度候補であるA(rtnpri)は、スキャン間の距離折返し数rtnpriにより変化し、式(42)のPRI内距離のアンビギュィティがある移動距離候補rmove(rtnpri)は1PRIの折返し距離Rpriの整数倍に変化する。
目標初期相対速度算出処理部22は、初期相対距離候補R0,LSM(rtnpri)の連立方程式による折返し距離R0,LSM,ambを下記の式(47)によって算出する(図17を参照)。
【0070】
目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(49)を満たすスキャン間の距離折返し数rtnpri(=NLSM,rtn)を算出する。
最後に、目標初期相対速度算出処理部22は、下記の式(50)に示すように、目標初期相対速度v0を算出し、その目標初期相対速度v0を目標相対距離算出処理部23に出力する。
【0071】
目標相対距離算出処理部23は、目標初期相対速度算出処理部22から目標初期相対速度v0を受けると、目標相対速度vrpriの代わりに、その目標初期相対速度v0を用いて、目標相対距離R0,rpri,kを算出する(式(37)〜式(39))。
目標相対距離算出処理部23において、目標相対速度vrpriの代わりに、目標初期相対速度v0を用いる以外の処理は、目標相対距離算出処理部15と同じであるため詳細な説明は省略する。
加速度目標の場合は、第2のFMレンジングによる距離R0,fb,rpri,kの測距誤差が大きくなり、距離折返し数を誤る可能性が大きくなるが、加速度も考慮して算出された目標初期相対距離v0を用いることで、距離折返し数を誤らず、高分解能、高性能な測距が可能になる。
【0072】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、複数の目標が存在する場合でも、目標候補のスキャン間のビート周波数差から組合せを行うため、複数の目標に対処可能なレーダを得ることが可能になる。
また、スキャン間のビート周波数とPRI内距離を用いて、相対加速度を含めて、初期相対速度を算出するため、加速度目標の場合においても、高分解能、高性能なレーダを得ることが可能になる。
【0073】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 送信装置(送信手段)、2 パルス内変調信号発生器、3 局部発振器、4 パルス変調器、5 送信機、6 送受切替器(送信手段、受信手段)、7 空中線(送信手段、受信手段)、8 受信機(受信手段)、9 信号処理器、10 マップ作成部(マップ作成手段)、11 相関処理部、12 周波数領域変換処理部、13 目標候補検出処理部(目標候補検出手段)、14 目標相対速度算出処理部(目標相対速度算出手段)、15 目標相対距離算出処理部(目標相対距離算出手段)、16 表示器、21 目標候補組合せ処理部(目標候補組合せ手段)、22 目標初期相対速度算出処理部(目標相対速度算出手段)、23 目標相対距離算出処理部(目標相対距離算出手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、上記送信信号を空中に放射する送信手段と、上記送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、上記受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、上記受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、上記マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、上記目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段と、上記目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と上記目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出する目標相対距離算出手段とを備えたレーダ装置。
【請求項2】
送信手段は、PRI内に存在している距離アンビギュィティを解消するとともに、FMレンジング後の距離分解能よりPRI内の距離分解能を高くするパラメータが設定されており、上記パラメータに基づいて動作することで送信信号を生成することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
目標相対速度算出手段は、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数を用いて、FMレンジングによる速度によってPRI内の距離による速度候補の速度アンビギュィティを解消し、速度高分解能な目標相対速度を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
目標相対距離算出手段は、目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度を用いて、FMレンジングによる距離を算出し、FMレンジングによる距離とPRI内の距離を用いて、目標相対距離を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、クラッタを抑圧するフィルタ処理を実施することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、窓関数処理を実施することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項7】
目標候補検出手段により複数の目標候補が検出された場合、ビート周波数を用いて、上記複数の目標候補をグループ分けし、同じグループに属する目標候補を同一の目標候補として組合せる目標候補組合せ手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項8】
目標相対速度算出手段は、異なる時刻の目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対加速度を用いて、目標初期相対速度を算出し、上記目標初期相対速度を目標相対速度として目標相対距離算出手段に出力することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項9】
目標相対速度算出手段は、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数を用いて、目標初期相対速度及び目標相対加速度のアンビギュィティを解くことを特徴とする請求項8記載のレーダ装置。
【請求項10】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号のパルス数よりも大きい点数で、上記受信ビート信号を周波数領域に変換することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項11】
送信手段は、PRIでパルス内変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、パルス内変調との相関処理を実施することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項12】
マップ作成手段は、周波数領域で相関処理を実施した後、相関処理後の信号のサンプリング数よりも大きい点数で時間領域に変換する相関処理を実施することを特徴とする請求項11記載のレーダ装置。
【請求項1】
複数のPRIに渡って周波数変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、上記送信信号を空中に放射する送信手段と、上記送信手段により放射された後、空中に存在している目標に反射して戻ってきている上記送信信号を受信信号として受信し、上記受信信号を受信ビート信号に変換する受信手段と、上記受信手段により変換された受信ビート信号に対して、周波数変換処理を実施することで、PRI内の距離とビート周波数の関係を示す距離−ビート周波数マップを作成するマップ作成手段と、上記マップ作成手段により作成された距離−ビート周波数マップに対してCFAR処理を実施することで目標候補を検出する目標候補検出手段と、上記目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数から目標相対速度を算出する目標相対速度算出手段と、上記目標候補検出手段により検出された目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と上記目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度から目標相対距離を算出する目標相対距離算出手段とを備えたレーダ装置。
【請求項2】
送信手段は、PRI内に存在している距離アンビギュィティを解消するとともに、FMレンジング後の距離分解能よりPRI内の距離分解能を高くするパラメータが設定されており、上記パラメータに基づいて動作することで送信信号を生成することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
目標相対速度算出手段は、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数を用いて、FMレンジングによる速度によってPRI内の距離による速度候補の速度アンビギュィティを解消し、速度高分解能な目標相対速度を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
目標相対距離算出手段は、目標相対速度算出手段により算出された目標相対速度を用いて、FMレンジングによる距離を算出し、FMレンジングによる距離とPRI内の距離を用いて、目標相対距離を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、クラッタを抑圧するフィルタ処理を実施することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、窓関数処理を実施することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項7】
目標候補検出手段により複数の目標候補が検出された場合、ビート周波数を用いて、上記複数の目標候補をグループ分けし、同じグループに属する目標候補を同一の目標候補として組合せる目標候補組合せ手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項8】
目標相対速度算出手段は、異なる時刻の目標候補のPRI内の距離及びビート周波数と目標相対加速度を用いて、目標初期相対速度を算出し、上記目標初期相対速度を目標相対速度として目標相対距離算出手段に出力することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項9】
目標相対速度算出手段は、目標候補検出手段により検出された異なる時刻の目標候補のPRI内の距離とビート周波数を用いて、目標初期相対速度及び目標相対加速度のアンビギュィティを解くことを特徴とする請求項8記載のレーダ装置。
【請求項10】
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号のパルス数よりも大きい点数で、上記受信ビート信号を周波数領域に変換することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項11】
送信手段は、PRIでパルス内変調されたキャリア信号を用いて、パルス変調された局部発振信号をパルス内変調することで送信信号を生成し、
マップ作成手段は、受信手段により変換された受信ビート信号に対して、パルス内変調との相関処理を実施することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
【請求項12】
マップ作成手段は、周波数領域で相関処理を実施した後、相関処理後の信号のサンプリング数よりも大きい点数で時間領域に変換する相関処理を実施することを特徴とする請求項11記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−242288(P2012−242288A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113763(P2011−113763)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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