ロイコレクチンおよびその使用
本発明は、ポリペプチド(レクチンと記載される),それをコードする核酸配列および該ポリペプチドに対する抗体ならびに様々な医学的応用、特に、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚の治療または予防のためのそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド(すなわちレクチン),それをコードする核酸配列および該ポリペプチドに対する抗体ならびに様々な医学的応用におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞性免疫防御系は、病原菌や寄生虫による攻撃から生き延びるための中核となるものである。この系はまた、ウイルス感染後および自己免疫疾患における発癌での、異常細胞の管理にも大いに関連している。
【0003】
細胞間認識はこのような機能の中核ではあるが、これら現象の起源について本質的な理解が乏しい。始原の生殖性生物相が長い年月をかけて多様化した後、生殖細胞の種特異的な認識(「受精」)を確実にするために、遺伝子は進化せざるを得なかった。もしそうでなければ、生殖の種の生存は脅かされていただろう。いくつかの細胞認識分子が進化した。カンブリア紀の時代に生物相が陸生生息空間まで広がったとき、この乾燥した生息空間は、種が混同する可能性が低い保護された環境に生殖受精が制限されるため、ますます好まれた。従って、種特異的な配偶子を認識する遺伝子は冗長となり、これによって、進化において新規な機能を獲得するのが自由となる傾向にあった。
【0004】
一つの明らかな新規機能は、生物自身(自己)の細胞を外来(非自己)細胞と区別する能力であろう。この機構は細胞性免疫系の起源に対する一つの理論的解釈を与える(そのように考えなければ説明が不充分な現象である)ことが提案されている。先天性免疫によるこのような区別(メドジトフおよびジェーンウェー,1997年,Cell,91巻(3号),295〜298頁)は、寄生虫や病原菌によって多細胞生物が食われるのを防ぐために多細胞生物にとって必須のものである。「自己」と「非自己」とを区別する系が正常に機能しないと、いくつかの自己免疫疾患の根幹を成す場合がある。
【0005】
自己免疫と称される、誤った免疫反応は、宿主の抗原と反応する自己抗体またはTリンパ球が存在することによって示すことができる。それは通常害はなく、おそらく脊椎動物である生命体に遍在する現象ではあるが、自己免疫は、自己免疫疾患として知られる、ヒトの広範囲な病気の原因になり得る。ヒトの病気の原因としての自己免疫というこの概念は比較的新しく、1950年代および1960年代までの医学の考えの主流には受け入れられなかった。自己免疫疾患は、良性自己免疫から病原性自己免疫まで進行する疾患であると定義される。この進行は遺伝的影響と環境要因との両方によって決定される。
【0006】
自己免疫疾患は健康にとって重大な脅威である。自己免疫によって引き起こされる病気は80以上もある。これらは女性に特有の脅威であり;患者の約75%が女性である。自己免疫疾患は、65歳までのすべての年齢層において女性の主な死因の10位内に入っている。
【0007】
自己免疫疾患は身体の多くの種々の部位に影響を及ぼし、該部位としては、皮膚(例えば、円形脱毛症,水疱性類疱瘡,後天性表皮水疱症,落葉状天疱瘡,尋常性天疱瘡,乾癬および座瘡),腎臓(例えば、免疫グロブリンA腎症),血液(例えば、再生不良性貧血,自己免疫性溶血性貧血,特発性血小板減少性紫斑病および悪性貧血),関節(例えば、強直性脊椎関節炎),筋肉(例えば、多発性筋炎・皮膚筋炎),耳(例えば、自己免疫性難聴およびメニエール症候群),目(例えば、モーレン潰瘍[Mooren’s ulcer],ライター症候群およびフォークト・小柳・原田病),心臓(例えば、自己免疫性心筋炎,チャーグ・ストラウス症候群,巨細胞性動脈炎,川崎病,結節性多発動脈炎、高安動脈炎およびヴェーゲナー肉芽腫症),内分泌系(例えば、アジソン病,自己免疫性副甲状腺機能低下症,自己免疫性下垂体炎,自己免疫性卵巣炎,自己免疫性精巣炎,グレーブス病,橋本甲状腺炎,多腺性自己免疫症候群1型(PAS-1),多腺性自己免疫症候群2型(PAS-2),多腺性自己免疫症候群3型(PAS-3)および1型糖尿病),胃腸系(例えば、自己免疫性肝炎,セリアック病,炎症性大腸炎および原発性胆汁性肝硬変),神経系(例えば、慢性炎症性脱髄性多発神経障害,ギランバレー症候群,多発性硬化症および重症筋無力症)が挙げられ、または自己免疫疾患は身体全身的(例えば、抗リン脂質症候群,自己免疫性リンパ球増多症,自己免疫性多腺性内分泌障害,ベーチェット病[Bechet’s disease],グッドパスチャー症候群,リウマチ性関節炎,サルコイドーシス,強皮症,シェーグレン症候群および全身性エリテマトーデス)に影響を及ぼす場合がある。
【0008】
自己免疫疾患は身体のどのような部分でも発病する可能性があることから、症状は多岐に渡り、診断および治療が難しい場合が多い。適切な診断および治療がなされなければ、生死にかかわり得る自己免疫疾患もある。リウマチ性関節炎のような慢性自己免疫疾患によって患者(の手足)は不自由になり、患者の家族にも重い負担が掛かる。ブドウ膜炎のあるタイプは失明を引き起こすことがある。強皮症などのような病気は、生涯にわたって熟練を要する治療が求められる。グレーブス病や慢性甲状腺炎を含め他の自己免疫疾患は正確に診断されたらそれでも治療に成功することができるが、兆候が捕らえにくいため見落とされる場合も多い。
【0009】
炎症は、身体の白血球および化学物質が、感染および細菌やウイルスなどの異物から身体を守る正常な過程である。しかしながら、病気の中には、撃退すべき異物がない場合であっても身体の免疫系が不適切な炎症反応を引き起こすものもある。炎症は、このように、自己免疫疾患においてよく起こるものであるが、すべての炎症性疾患が自己免疫反応ではない。炎症性疾患は、微生物(ウイルスやカビ),細菌毒素,特定の医薬品(抗体や抗炎症性ステロイド),化学物質(胆汁塩や有毒な家庭用薬品)などのような、身体を直接攻撃する様々な作用因子によっても引き起こされることがある。炎症に関連する病気として、関節炎(関節における炎症として記載される一般用語である),心臓の炎症(心筋炎),肺に空気を輸送する小管の炎症(喘息発作を引き起こすことがある),腎臓の炎症(腎炎)および大腸の炎症(大腸炎)が挙げられる。
【0010】
胃腸の炎症性疾患は特に興味深い(例えば、胃の炎症性疾患(胃潰瘍,十二指腸潰瘍および胃炎などのような),および腸の炎症性疾患(クローン病,炎症性腸疾患,熱帯性スプルーおよび非熱帯性スプルー,感染性腸炎,大腸炎,潰瘍性大腸炎,偽膜性大腸炎,憩室炎,ならびにアレルギー性の炎症性疾患および放射性物質による炎症性疾患が挙げられる)など)。
【0011】
胃腸の炎症性疾患は炎症によって特徴付けられ、特に浮腫や特徴的な炎症細胞(すなわち、白血球,組織球およびマクロファージ)の存在、および、あるケースにおいては表面上皮の壊死および潰瘍の存在によって特徴付けられる。これらの炎症性疾患は、胃腸管に存在しその表面を攻撃し炎症性疾患反応を惹起することが知られている様々な作用因子によって引き起こされることが知られている。このような作用因子としては、微生物(ウイルスやカビ),細菌毒素,特定の医薬品(抗体や抗炎症性ステロイド),および化学物質(胆汁塩や有毒な家庭用薬品)が挙げられる。実際、胃酸それ自体は胃の内膜を攻撃し、炎症状態を惹起することができる。
【0012】
炎症の治療に現在使用されている医薬としては、非ステロイド抗炎症性薬(NSAID−アスピリン,イブプロフェンまたはナプロキセンなど),コルチコステロイド(プレドニゾンなど),抗マラリア医薬(ヒドロキシクロロキンなど)ならびにメトトレキセート,スルファサラジン,レフルノミド,抗TNF医薬,シクロホスファミドおよびミコフェノール酸塩などの他の医薬が挙げられる。胃腸病、特に胃疾患のうち、炎症を引き起こす胃酸の分泌を阻害することによって(例えば、酸の影響を中和するか(例えば制酸剤の投与)、または、胃酸の分泌の阻害に有効な薬剤を投与することによって)治療することができるものもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】メドジトフおよびジェーンウェー,1997年,Cell,91巻(3号),295〜298頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
傷害性皮膚は感染に対して脆弱であり、見苦しいことがある、および/または、痛みや不快感を引き起こすことがある。傷のタイプのうち、例えば慢性潰瘍など、正常な生理的条件下での治癒に抵抗を示すものもある。傷害性皮膚を修復する、特に傷を修復する薬による解決策はいずれも極めて望ましい。
【0015】
自己免疫疾患および炎症性疾患ならびに病気または皮膚損傷を、副作用を最小限にして治療するのに好適な治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
真核生物の進化に関与する可能性がある過程を長年研究し、本発明者らは、配偶子および接合体のみならず、初期胚(レクトサイト[lectocyte]と称する特異的な細胞)および血球の個体発生の間、ついには白血球においても、新規なタンパク質(本明細書ではロイコレクチンと称する)を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の実施例は例示することのみを目的としており、その中で参照する図は以下の通りである:
【図1】図1(A)は、部分的に精製したサケのゾナーゼ[zonase]をゲル濾過し、ロイコレクチンを産生したことを示す。スーパーデックス16/60カラム(GEヘルスケア社)をFPLC系に接続し、緩衝液の流速を1mL/分とし120mL用いた。カラムからのタンパク質の溶出を280nmのUV(右側のy軸)によって観測し、1mL画分として回収した。ゾナーゼ活性をOD406でクロモザイムXの切断により測定した。野生型ゾナーゼの分子量は約50kDaのピークを有して広範囲にわたる。レクチンのMW=30kDa。
【0018】
(B)は、免疫ブロッティングによるサケの(ロイコ)レクチンの同定を示す。選択した画分のタンパク質免疫ブロット分析は、エピトープをベースとした抗(ロイコ)レクチン(図3を参照)抗体を用いて上記ゲル濾過から得られた。画分の番号を免疫ブロットの上に示す。分子量マーカー(kDa)を左に示す。レクチンの推定分子量は、他の方法(図3を参照)によって得られたものと一致する。
【図2】図2は、大西洋サケ胚のレクチン産生細胞(レクトサイト)の同定を示し、パネルA,BおよびCは、ホルマリンで固定されパラフィンに埋没された大西洋サケ胚本体の横断切片を表す。ロイコレクチンの存在は、免疫ペルオキシダーゼ染色法(A)または間接的蛍光抗体法(BおよびC)を用いるウサギポリクローナル抗LL抗体によって判定した。抗レクチン抗体に反応する細胞はバックグランドと比較してそれぞれ暗い(A)または明るい(BおよびC)として見なすことができる。特有な細胞学的特徴を有する多数の免疫反応性単細胞は、前後胚軸に沿って空間的な制限がない上皮で見られる。AおよびBにおける矢印は比較的大きな細胞(レクトサイト)を指し、周囲の上皮細胞と容易に識別することができる。それらの核が基底にある一方で、細胞が囲卵腔にキノコのように突出するように、細胞質が白血球レクチンで満たされている。パネル2Cは、それらの粒状内容物を示す。
【図3】図3は、ヒト,サケ,ニワトリ,タラおよびUniGene Family Ssa.23163(サケESTコレクション)を構成する2個のコンティグからの2個の翻訳物のロイコレクチンのアライメントを示す。2個のコンティグのうち、コンティグ1は、ロイコレクチンの一次構造に最も似ているものである。しかしながら、2個のコンティグの違いは大きくなく、わずか約80%である。
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4B】図4(A)は、ヒトのロイコレクチンと類似の配列のSMARTドメインを示す。WU−BLAST2を用いるBLASTP検索からの最も高いスコアを有する配列を示している。これらの配列は、より類似するものからより類似しないものの順にリストアップされている。a−ヒトのロイコレクチン,b−サケ胚のロイコレクチン,c−サケ白血球のロイコレクチン(断片),d−ニワトリのロイコレクチン(断片),e−タラのロイコレクチン(断片),f−一般のコイ魚卵のレクチン(Ac#−P68512),g−トゥンガラガエルのラナスプミン-6[ranaspumin-6](Ac#:B5DCK6),h−ゼブラフィッシュのZgc:173443タンパク質(Ac#:A8E4Z1)。サケ白血球,ニワトリ白血球およびタラ白血球のロイコレクチンの配列は部分的なものだけであり、完全長の配列ではないことに注意されたい。これらの配列の完全長版は、おそらく、ヒト白血球(a)およびサケ胚(b)のロイコレクチンで見出される全体の構造に似ているだろう。さらに、ロイコレクチンのパターンは、5個の連続的なTECPRドメインを有し、トゥンガラガエル配列までは保持されているが、4個のTECPRドメインだけしか見出されないゼブラフィッシュ配列には保持されていない。
【0019】
(B)は、5個のTECPRドメインを有するロイコレクチンの図解を示す。TECPRドメインは、2個のβシートを作り出す4個のβ鎖からなる可能性が最も高い。3個のジスルフィド結合があり:示されているように、1つはTECPR#4の内部に、他の2つは接続するループにある。一般に、糖認識部位は、このようなレクチンのTECPRドメイン間の領域で見出される。最も密接にロイコレクチンに関与するレクチンは、主にN−アセチルグルコサミンに対して公知の糖特異性を有する。ロイコレクチンに対する推定される糖認識特異性はまだ確立されていない。
【図5】図5は、白血球における卵黄周囲のレクチンの存在を示す。pH範囲が4〜7にわたるIPGストリップを一次元に用い、一方12.5%のポリアクリルアミドゲルを二次元電気泳動の間、利用した。
【0020】
A:サケ白血球において、抗レクチンポリクローナル抗体に陽性反応を示すスポットは2個しかなかった。これらの分子量は約26kDaであり、pIは約6.5であった。ロイコレクチンは他の種の白血球調製物においても同定することができる。
【0021】
B:サケの調製物において、我々は多くの免疫反応スポット(1〜8の番号をつけた)を見出し、約30kDaの分子量を有し、pIのpH範囲が4.9〜6.5であった。
【図6A】
【図6B】図6は、骨髄細胞系列、特にゼブラフィッシュの単球−マクロファージ系列におけるロイコレクチンの共発現を示す。(A)レクチンおよびL−プラスチンの遺伝子発現プロフィール。ゼブラフィッシュは、我々がサケで発見したのと同じレクチンを発現することがわかった。フルオレセインで標識したレクチンのmRNAプローブを、L−プラスチンmRNAプローブ用のDIG標識プローブ(単球−マクロファージ系列の特異的なマーカーである)とともに用いた。二重標識インシテュハイブリダイゼーションによって、ゼブラフィッシュの胚形成の間、同じ細胞内でレクチンおよびL−プラスチンのmRNAが共発現することがわかる。受精後(pf)の時間で示す胚の齢を左下角に示す。より明るいシグナルはL−プラスチン遺伝子の発現を示し;より暗いシグナルはレクチンの発現を示す。
【0022】
パネルA(側面図)は、同じ細胞におけるレクチンおよびL−プラスチンのmRNAの共発現を示し、これは卵黄の前面および側面における分散した軸および沿軸の集団[dispersed axial and paraxial population]を形成する。より高い倍率(A2)によって、これら細胞の典型的な白血球の形態が明らかになる。A1のデータは、前側板中胚葉(矢印)における細胞の左右相称の帯でこれらの2つの遺伝子の発現を示す。パネルBによって、21時間での発見が同じであることが明らかにされる。
【0023】
パネルC(24hpf)は、後中間細胞集団(上方2つの矢印),前面の静脈領域(下方矢印),胚体および胚の頭に沿って分散した相当数の細胞におけるL−プラスチンおよびレクチンの遺伝子の共発現を示す。24hpf(C2)までに、大多数の細胞はこれら2個の遺伝子を共発現するが(矢印を参照)、どちらか一方の遺伝子だけを発現するように見える細胞も多い。C3の矢印は、L−プラスチンmRNAのみを発現している細胞を示す。
【0024】
(B)レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAの細胞の共局在化。ゼブラフィッシュ胚(22hpf)を、レクチンタンパク質(より暗いシグナル)およびL−プラスチンmRNA(より明るいシグナル)のインシテュハイブリダイゼーションアッセイとともに複合免疫組織化学によって分析した。インシテュハイブリダイゼーションは、ウサギ抗レクチンポリクローナル抗体を用いる免疫組織化学と組み合わせて、L−プラスチン遺伝子に特異的なDIG標識cRNAを使用した。
【0025】
パネルA:胚の正面像。矢印は、レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAが共通に発現していることによって示される一群の細胞を指している。A1:同じ細胞におけるL−プラスチン遺伝子およびレクチンタンパク質の共発現を示す集団のより高い倍率(黒い矢印)。いくつかの細胞はサイズが小さく、分節核を有するもう1つの細胞の次に成熟したリンパ球と似ている丸い形状を有し、成熟した好中球の典型的な形態学的特徴を示すことに言及しておく。パネルB,C,D,Eは、レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAを共発現するゼブラフィッシュ胚全体にわたって分散した細胞集団を示す(矢印)。
【図7】図7は、ロイコレクチンのファミリーを示す。ヒト,サケ,ニワトリおよびタラの入手可能なロイコレクチンタンパク質を集めた(weblogoアライメント)。ある位置のAA残基の完全な一致を大きな文字で表すとともに、一致の程度がより低い場合、より小さいサイズで示す。文字が複数ある場合は変異を示す。
【図8】図8は、カラムクロマトグラフィによる組換えロイコレクチン精製後、クマシー染色した画分を示す。レーンは、1−上清,2−素通り画分,3−洗浄,4−F1,5−F2,6−F3とF4とF5との混合,7−F6および8−STDである。
【図9A】
【図9B−1】
【図9B−2】図9は、サケのロイコレクチンの遺伝子配列を同定および検証するための実験(A)を示す。
【0026】
パネルAの、nr6フィルタで同定した2個の陽性二重スポットは、それぞれプレート番号257および176に正確に対応するパネル#5および#2,L-7クローンおよびF-7クローンのウェル座標を示す。
【0027】
パネルBの、nr3フィルタで同定した1個の陽性二重スポットは、プレート番号144に正確に対応するパネル#6(プレート位置決めシートに基づく),A−12クローンのウェル座標を示す。
【0028】
(B)は、ロイコレクチン遺伝子(2323bp)の推定ゲノム配列を示す。5個のエキソンの位置が示され、その結果、イントロンの位置も示される。この遺伝子の転写開始位置(BDGP Neural Network Promoter Predictionに基づき予測したプロモータは「P」,予測した転写開始は「ST」,TATAボックスは「T」)およびこの遺伝子産物中のポリアデニル化を特定する配列の位置(「PA」)を示す。
【図10A】
【図10B】
【図10C−1】
【図10C−2】図10(A)は、BLASTPヒットの位置(表を参照)が矢印で示されるヒト染色体を表す地図を示す。(B)は、地図を対象とする凡例:BLASTPヒット(バー)の位置およびクエリ配列(ヒトのロイコレクチン)の全対象の視覚化を示す。一見したところ、発見された配列がロイコレクチン配列の全部に及んでいるが、このデータはこれがロイコレクチン遺伝子であることを明確には示していない。(C)は、クエリ配列としてのヒトのロイコレクチンを用いたヒトゲノムにおけるBLASTPヒットおよびそれらの位置を示す表を示す。
【図11】図11は、ヒト上皮におけるサケのロイコレクチンの効果を示す。対照培養=A;ロイコレクチンに曝された培養=B。矢印は、ロイコレクチンに曝露後に基底層のみに現れる大型細胞を指す。
【図12】図12は、白血球におけるロイコレクチンタンパク質の発現を示す。パネルAは、サケ白血球から精製したタンパク質(〜2μg)の12%の二次元PAGEを示す。パネルBは、Lymphoprep(商標)のヒト白血球から精製したタンパク質(0.8μg)の15%の二次元PAGEを示す。膜をサケLLに対するポリクローナル一次抗体で処理した後、ヤギ抗ウサギ抗体で処理し、ECL改良検出系によって視覚化した。
【図13】図13は、ノーザンブロットで同定したサケのロイコレクチン転写物を示す。パネルAは、ホルムアルデヒド存在下1.2%のアガロースで分画した大西洋サケ胚の全RNA(370dd)およびLLに特異的なアンチセンスDIG標識リボプローブ(720bp)を用いて探索したことを示す。パネルBは、(磁気ポリTビーズによって精製した)mRNAのノーザンブロット分析を示す。ハイブリダイゼーションは、LLを部分的にコードする配列から生成したDIG標識リボプローブを使用した。パネルCは、センスDIG標識リボプローブを用いてニトロセルロース膜(B)を探索したことを示す。灰色の矢印は転写物の存在を示し;黒い矢印は転写物がないことを指す。DIG−RNAマーカーI(0.3〜6.9kb)(ロシュ社)を用いた。
【図14】図14は、関連するβ−プロペラタンパク質とLLとのClustal Wアライメントを示す。
【図15】図15は、LLの三次元モデルを示す。左パネルは、タキプレウス・トリデンタタス[Tachypleus tridentatus]のタキレクチン[Tachylectin]1の構造(ビーゼルら,1999年,EMBO J.,18巻,2313〜2322頁)に基づくロイコレクチンの5枚羽プロペラ三次元モデルを三次元表示した図を2個示す。このモデルは、PyMolv0.99ソフトウェアを用いて作成した。エピトープペプチドの残基を、タンパク質本体において細い黒い線で描く。
【0029】
また、ビーゼルら(1999年)によって予測された5個の炭化水素結合部位の位置を、薄いが中空ではない褐色のヘキソース構造として示す。右パネルは、コンセンサスのプロペラドメインと比較した、LL(上)およびFEL(下)の予測されるプロペラドメインを示す。
【図16】図16は、ゼブラフィッシュの完全長ロイコレクチン(LL)cDNA配列の増幅を示す。パネルAは、いくつかのプライマー対を用いて得られ、RT−PCRによってクローン化した単位複製配列を示す。逆転写に用いたmRNAは24hpfの胚から抽出された。DNAマーカー:100bpラダー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)。パネルBは、5'RACE PCRが2つの異なった産物、それぞれ〜500bpおよび〜400bp(遺伝子特異的リバースプライマーおよびGeneRacerフォワードネスト化プライマーを用いてPCR増幅の第二ラウンドの後に生成した)の増幅をもたらしたことを示す。mRNAは、示される発生段階から回収した。パネルCは、ゼブラフィッシュLL完全長cDNA配列が765ntのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む1240ntであることを示す。このORFは、正確な縮尺で描かれ、黒いボックスとして示される5個のエキソンを含む。5'UTR領域を実線で示す。5'UTRヌクレオチド配列を示す。+1の位置の翻訳開始部位ATGおよび+94の位置の可能性のある二番目のATGを強調した。パネルDは、様々な発生段階でトランケートされたLLの発現を示す。パネルEは、サケ配列およびゼブラフィッシュ配列が3'UTR内でさえ高度に保存されていることを示す。
【図17】図17は、サケのロイコレクチンのエキソンとドメインと配列の変異の概要を提供する。可変AA残基,システイン残基(C)およびTECPRドメインの位置(SMARTデータベースから)に関して、種々のロイコレクチンの配列データを示す。ロイコレクチン配列は、ボックスとして印した7個の位置しか異なっていない。このような可変残基の5個はTECPRドメインの中にある一方、2個はC末端の近くで発見された。ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のいずれかにも互換性がない変異は、ロイコレクチン-3として下に示し、2個の位置しかここで定義していない(#2および#245)。他の位置は印されていないが、これらの位置の大部分が他のロイコレクチンとほとんど同一であることがこのデータからわかる。
【0030】
魚卵レクチン(FEL)の場合のように、LLにおける3個のジスルフィド架橋は、最初と最後のシステインを結合すると予測される一方、二番目と最後から二番目のシステインは第二の架橋を形成し、エキソン3の2個の(真中の)システインは最後のジスルフィド架橋をそれぞれ形成する。これらのシステインは灰色で印され、下線が引かれている。ジスルフィド架橋に関与しないプロペプチド中の1個のシステインは、エキソン1にある。最初の3個のドメイン間で相互接続するループがないこと、および最後の2個のTECPRドメインを相互接続する2個のループにおいて変異がないことに注意されたい。3個のTECPRドメインを単一のエキソン(2および3)がコードする一方、2個のドメインは2個のエキソンにわたる。エキソンおよびドメインの末端にはっきりした相関があることは、注目に値する。5個のドメインのうち4個において、Trp残基がこのドメインの三番目のAAを占める一方、一番目に予測されたTECPRドメインではWが最初の残基である。最後に、星印は、ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のいずれかまたは両方で変異AAが見出された残基を示す。
【図18】図18は、ウェスタンブロットで検出された、ニジマス(Oncorhyncus mykiss)胚の孵化体液[hatching fluid]におけるLLタンパク質を示す。MW標準を左に示す(バイオラッド社 161-0373)。ニジマスの孵化体液タンパク質(レーン1)およびアフィニティクロマトグラフィによって調製されたサケのロイコレクチンタンパク質(レーン2)を、抗ロイコレクチン抗体を用いて探索した。〜26kDaのタンパク質が両方のケースで見出され、LLのMwと一致する。
【図19】図19A(左パネル)は、タラ孵化体液で見出されたタンパク質の中の、タラのロイコレクチンを示す。タラ孵化体液を15%のSDS PAGEによって分析し、その組成のタンパク質を銀染色によって視覚化した。レーン1:タンパク質マーカー(バイオラッド社のDual color 161-0374)。レーン2:孵化体液タンパク質。右パネルは、15%のSDS PAGE分析によって分離し、ニトロセルロース膜上にブロットし、適切に希釈したアフィニティ精製ウサギポリクローナル抗ロイコレクチンIgG抗体によって探索したタラ孵化体液を示す。レーン1:タンパク質マーカー(バイオラッド社のDual color 161-0374)。レーン2:孵化体液のアリコート。ロイコレクチンの位置を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギ二次抗体を用い、ECL検出系によって強化して、正確に示した。約26kDaの主要な免疫反応性のタンパク質を検出した。Bは、対応するSDS PAGEおよびオイコプレウラ・ディオイカ[Oikopleura dioica;ワカレオタマボヤ]の孵化体液タンパク質の膜を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、そのタンパク質は魚から精製し同定した(実施例を参照)。このタンパク質は255のアミノ酸を有する。これは、レクチンのプロペプチド型であって、19アミノ酸のN末端ペプチドを含み、このペプチドによって、これが後の分泌(すなわち囲卵腔への分泌)の際リソソームを標的としていることが示唆されている。
【0032】
レクチンのアミノ酸配列によって、エピトープに特異的な抗体の開発が可能となり、このことによって、このタンパク質の多く(2〜8)の見かけのイソ型(図5)が同定できた。少なくとも2個のmRNAがサケから単離され(実施例11)、ポリペプチドレベルでたった7個の変化をもたらしただけの小さな配列の差異を含む(図17)。このタンパク質のトランケート型がサケ白血球(配列番号2を参照)およびゼブラフィッシュからも同定され、分泌型(上述した。sLLと称する)および、N末端から最初の32アミノ酸がないトランケート型(実施例9を参照。tLLと称する)が同定された。
【0033】
このタンパク質はいずれの公知たんぱく質ともほとんど類似性がなく、任意の公知タンパク質との全般的な類似性は50%未満である。タキロレクチン[tachylolectin]と、小さいドメインにおいてある類似性が観察された。
【0034】
関連するタンパク質が様々な動物において同定され、その動物としては、ゼブラフィッシュ,タラ,ニジマス,オイコプレウラ・ディオイカが挙げられ、ニワトリおよびヒトも挙げられる。これらのcDNAが同定され(実施例を参照)、極めて高度に保存されているのがわかった。実験された種においてコードされたタンパク質の相違は4%未満である。これは、これらのタンパク質にとって必須機能であることを暗示している。
【0035】
今日まで、いずれの生物においても、類似の配列を有する遺伝子は報告されていない。個々のエキソンまたはイントロンに対するプローブを用いて、他に報告された2個のタンパク質の一部に対するエキソン1個の類似性はごくわずかであることが確証され、2個のタンパク質のいずれも本明細書に記載の分子実体とはまったく異なるものである。
【0036】
重要なことは、この新規遺伝子はヒトゲノムの公開された配列からは発見できないという事実にもかかわらず、この遺伝子はヒト白血球で特異的に発現しているということである。この遺伝子の極めて短い断片のみを検出することは可能であるが、ヒト染色体の複数にわたって分散している(実施例を参照)。この難問の解明は、今のところはすぐ手の届くところにはない。
【0037】
最後に、この分子の実体が細胞によって分泌され、このタンパク質のプロ−ペプチド型と一致することを突き止めた。この遺伝子産物の野生型と組換え型との両方を単離した。
【0038】
驚くべきことに、これらのタンパク質は、自己免疫疾患および炎症性疾患(特に皮膚の)ならびに他の皮膚疾患に対して顕著な効果を有することを見出した。理論に拘泥するつもりはないが、ロイコレクチンは、ヒトの身体の正常かつ固有の治癒過程を発動する特異的な受容体に結合すると思われる。観察された効果から、我々は、ロイコレクチンが細胞性免疫の正常な過程に関与することを提唱する。ロイコレクチンは多くの病態で存在しないように見えるため、その医薬的な導入によって、様々な抗原への曝露(外来細胞(微生物,寄生虫)の存在および「自己」の変性細胞の存在)に直面した際に、免疫系の他の防御反応の正常な機能が引き起こされ、これはロイコレクチンを自己免疫疾患の病因と結びつけることができる、すなわち、このような疾患は充分なロイコレクチンが存在しないことによって引き起こされるかもしれない。
【0039】
ヒト白血球は、極度に保存されたロイコレクチンタンパク質を保持し発現する。今まで、これらタンパク質は、血液細胞において知られていないタンパク質であった。ロイコレクチンはタンパク質のタキロレクチンファミリーの新しい一員であると思われる。
【0040】
本発明の第一の態様は、配列番号1〜8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは、該配列と少なくとも50%同一である配列、または、これら配列のいずれかのうちの一部を含むポリペプチドを提供することにある。
【0041】
本明細書で言及する「ポリペプチド」とは、好ましくは、50,100,150,200もしくは250残基を超え、および/または、500,400,300,200もしくは100残基未満、あるいは、それらから選択される範囲を有する分子である。本明細書で言及する「一部[portion]」とは、それが由来する配列の、少なくとも30,40,50,60,70,80,90,100,150,200またはそれ以上のアミノ酸を含むことが好ましい。該一部は、この配列の中央部分またはN末端部分またはC末端部分から得られる。好ましくは、該一部は、該ポリペプチドのN末端、例えば該ポリペプチドの最初の50,100または150残基から得られる。好ましい態様として、該ポリペプチドをトランケートしたものが挙げられ、例えば、天然に存在するバリアントにない単一のペプチドか部分を取り除いたものである。好ましくは、N末端でトランケートしたもの、および、トランケートして1〜50残基長、例えば1〜10,20,30もしくは40、または、5〜40残基長(例えば10〜35残基長)のものである。
【0042】
好ましくは、該配列は、該配列と比較される配列と少なくとも55,60,65,70,75,80,85,90,95,96,97,98または99%同一である。
【0043】
配列同一性は、例えば、様々なパムファクタ[pamfactor](ギャップ・クリエーション・ペナルティを12.0に、かつギャップ・エクステンション・ペナルティを4.0に設定)および2アミノ酸のウィンドウを有するFASTA pep−cmpを用いるSWISS−PROTタンパク質配列データバンクを使用することによって決定してもよい。好ましくは、該比較は、該配列の完全長にわたって実行されるが、比較のウィンドウがより小さい、例えば200,100または50未満の隣接するアミノ酸にわたって実行してもよい。
【0044】
好ましくは、ポリペプチドに関するこのような配列同一性は、列挙する配列番号に記載されたポリペプチドと機能的に等価である。このような機能的に等価なポリペプチドは、後述する誘導体の形態を採ってもよい。同様に、配列番号に記載の配列を有するポリペプチドは、下記のポリペプチドの配列に影響を及ぼさずに修飾されてもよい。
【0045】
さらに、本明細書で言及する「(いくつかの)一部[portions]」は機能的に等価であってもよい。好ましくは、これら部分は、本明細書で言及する同一性(比較可能な領域に対して)条件を満足する。
【0046】
本発明で言及する「機能的に等価」を達成することとは、ポリペプチドが、医療的機能を実行する際、親分子(すなわち、アミノ酸置換などによって、それが由来する分子)に対していくらか効果が低い場合もあるが、好ましくは同程度またはそれ以上の効果を有する。したがって、機能的に等価なことは、本明細書で言及する病気を治療する(すなわち、患者の1以上の症状(例えば、後述する皮膚の炎症や外観)を軽減する)のに有効なポリペプチドに関連する。これは定性的または定量的な方法で、ポリペプチド誘導体が由来するポリペプチドに対するポリペプチド誘導体の効果を比較することによって(例えば、実施例で言及するインビボ分析を実行することによって)試験してもよい。定量的な結果がもたされ得る場合、この誘導体は親ポリペプチドの少なくとも30,50,70または90%有効である。あるいは、例えば、樹枝状細胞への結合の分析やインビトロの細胞培養における効果の分析によって、インビトロの試験を実施してもよい。
【0047】
天然に存在するタンパク質に関するか、または由来する、機能的に等価なタンパク質は、単一のまたは複数のアミノ酸置換,付加および/または欠失(これらが上記配列同一性の要件を満たすという条件で)により野生型のアミノ酸配列を修飾することによって、しかし該分子の機能を破壊しないことによって、得られる。好ましくは、野生型の配列は20未満の置換,付加または欠失を有し、例えば、このような修飾が10,5,4,3,2未満または1である。このようなタンパク質は、1以上の塩基の適切な置換,付加および/または欠失によって生成される「機能的に等価な核酸分子」によってコードされている。
【0048】
好ましい機能的に等価なものは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の融合タンパク質あるいはポリペプチドが生成する「付加」バリアントであり、親ポリペプチドに融合した付加タンパク質またはポリペプチドを含む。
【0049】
とりわけ好ましい機能的に等価なバリアントは、天然の生物学的なバリアント(例えば、対立遺伝子多型や、種の中または異なる属(例えば植物,動物または細菌)における地理的変異)および公知技術を用いて調製された誘導体である。例えば、機能的に等価なタンパク質をコードする核酸分子は、化学合成によって、あるいは、欠失やランダム変異導入法を含む部位特異的突然変異誘発法もしくは核酸分子の酵素的切断および/またはライゲーションという公知技術を用いた組換え型で生成してもよい。
【0050】
本発明はまた、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も提供する。
【0051】
本発明の好ましい態様は、このように、配列番号9〜15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、該配列と少なくとも50%同一である配列、もしくは、室温での6×SSC/50%ホルムアミドというストリンジェントではない結合条件下で該配列とハイブリダイゼーションし、例えば65℃での2×SSC等の高いストリンジェントな洗浄条件下で得られる配列(ここでSSC=0.15MのNaCl,0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.2)、または、上記配列のいずれかと相補的な配列、あるいは、それらのうちの一部を含む核酸分子を提供する。好ましくは、該核酸分子は上記ポリペプチドをコードする。
【0052】
本明細書で言及する「核酸分子」は、好ましくは、150,300,450,600もしくは750塩基を超え、および/または、1500,1200,900,600もしくは300塩基未満、あるいは、それらから選択される範囲を有する分子である。上記の「(いくつかの)一部」は、好ましくは、それが由来する配列の、少なくとも90,120,150,180,210,240,270,300,450または600ヌクレオチド塩基を含む。好ましくは、該(いくつかの)一部は、上述したN末端,中央またはC末端のペプチドをコードする。ポリペプチドに関して上述したように、好ましい態様において、列挙したポリペプチドのN末端から残基を取り除くことによって得られたトランケートが意図される。コードするヌクレオチド配列において、本明細書に記載の配列に関して、該トランケートは好ましくは、1〜150塩基長、例えば1〜30,60,90もしくは120塩基長、または13〜120塩基長、例えば28〜105塩基長から得られたものである。
【0053】
好ましくは、該配列は、それが比較される配列と少なくとも55,60,65,70,75,80,85,90,95,96,97,98または99%同一である。
【0054】
配列同一性は、例えば、初期設定値および様々なパムファクタを有するGCGパッケージを用いたFASTA検索によって決定してもよく、6ヌクレオチドのウィンドウを有し、ギャップ・クリエーション・ペナルティを12.0に、かつ、ギャップ・エクステンション・ペナルティを4.0に設定する。
【0055】
好ましくは、このように関連した配列同一性または核酸分子をハイブリダイゼーションする配列同一性は、列挙した配列番号に記載の核酸分子と機能的に等価である。このように機能的に等価な核酸分子は、下記の誘導体の形態を採ることができ、そして、上記試験に照らして機能的に等価なものであると考えられるポリペプチドをそれらがコードする場合、機能的に等価であると考えられる。好ましい機能的に等価なものは、好ましい上記ポリペプチドをコードするもの、例えば、本明細書で言及する特異的な分子とは異なった属または種において見出されたポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0056】
さらに、本明細書で記載する「(いくつかの)一部」は機能的に等価であってもよい。好ましくは、これらの部分は、本明細書で言及する同一性(比較可能な領域に対して)条件またはハイブリダイゼーション条件を満たす。
【0057】
本発明によれば核酸分子は一本鎖DNAもしくは二本鎖DNA,cDNAまたはRNA、好ましくはDNAであり、縮退も含み、上記配列と実質的に同一およびハイブリダイゼーションしてもよい。しかしながら、理想的には、該分子はDNAまたはcDNAである。
【0058】
上記ポリペプチドとしては、該ポリペプチドの配列に影響を及ぼさずに修飾したものが挙げられ、例えば、脱グルコシル化やグルコシル化を含む化学修飾によって得られたものである。このようなポリペプチドは、機能性に影響を及ぼさずに、上記ポリペプチドの合成後/単離後修飾(例えば、特定の残基における若干のグリコシル化やメチル化など)をすることによって調製することができる。
【0059】
本発明のポリペプチドはまた、該ポリペプチドの機能的特徴は保持されるが異なった構造(例えば非ペプチド構造)を背景として存在する誘導体であると考えることができるペプチドミメティクスの形態も採ることができる。このようなペプチドミメティクスは成功裏に開発され、他の特定の医学的応用に使用されている。
【0060】
ペプチドミメティクス、特に非ペプチド性分子は、様々な方法によって生成してもよく、該方法としては、立体配座をベースとした薬物設計,スクリーニング,集束ライブラリ設計[focused library design]および古典的な医薬品化学が挙げられる。非天然アミノ酸のオリゴマや他の有機構成要素を用いてもよいのみならず、該ペプチドの三次元配座の同じ特性を模倣する分子静電表面を提供する構造要素および配座を含む炭水化物,複素環式化合物もしくは大環状化合物または任意の有機分子もまた、当該分野で公知の方法によって用いてもよい。
【0061】
このように、ペプチドミメティクスは、ペプチド主鎖とはほとんど、またはまったく似ていなくてもよい。ペプチドミメティクスは、すべて合成の非ペプチド型(例えば、適切な置換基を有する炭水化物主鎖に基づく)を含んでもよく、例えば、1以上のアミノ酸を誘導体化するか、または、1以上のアミノ酸を代わりとなる非ペプチド化合物に置換することによって、それがベースとなるペプチドの1以上の要素を保持してもよい。ペプチド様鋳型として、擬ペプチドおよび環状ペプチドが挙げられる。ペプチドの機能にとって冗長であると考えられた構造要素は、足場機能のみを保持するために最小化してもよく、必要に応じて取り除いてもよい。
【0062】
ペプチドミメティクスが1以上のペプチド要素、すなわち1を超えるアミノ酸を保持する場合、このようなアミノ酸を、非標準的なものまたはその構造類似体と置換してもよい。配列に保持されるアミノ酸も、本発明のポリペプチドの機能特性が保持される限り、誘導体化しても、修飾(例えば、標識化,グリコシル化またはメチル化)してもよい。ペプチドミメティクスは、特定のポリペプチド配列「から導き出せる」こととして言及される。これによって、それがその機能にとって重要であるペプチドの構造特徴を保持するように、ペプチドミメティクスは定義されたポリペプチド配列を参照して設計されることを意味する。これは、ポリペプチドの特定の側鎖であっても、構造物の潜在的な水素結合であってもよい。このような特徴は非ペプチド化合物もしくは1以上のアミノ酸残基によって提供されてもよく、ポリペプチドの該アミノ酸残基を連結する結合は、安定性やプロテアーゼ抵抗性などのようなポリペプチドの特定の機能を向上するために修飾されてもよい。その一方で、その機能に重要なポリペプチドの構造特徴は保持する。
【0063】
用いてもよい、非標準的なアミノ酸またはアミノ酸の構造類似体の例は、Dアミノ酸,アミド等量式(例えば、N−メチルアミド,レトロ−インバースアミド,チオアミド,チオエステル,ホスホナート,ケトメチレン,ヒドロキシメチレン,フルオロビニル,(E)−ビニル,メチレンアミノ,メチレンチオまたはアルカンなど),L−Nメチルアミノ酸,D−αメチルアミノ酸,D−N−メチルアミノ酸である。非従来的なアミノ酸の例を表1にリストアップする。
【0064】
【表1−1】
【0065】
【表1−2】
【0066】
【表1−3】
【0067】
用いてもよい非標準的なアミノ酸として、配座固定された類似体が挙げられ、例えば、Tic(Fを置換するため),Aib(Aを置換するため)またはピペコリン酸(Proを置換するため)などである。
【0068】
上述したポリペプチドおよび核酸分子として、例えば親油性,細胞輸送の補助,溶解性および/または安定性を向上させるために、例えば標的のための基または官能基を付加することによって、例えば薬学的応用(後述する)においてそれらの使用を容易にするように修飾した誘導体も挙げられる。このように、オリゴ糖,脂肪酸,脂肪族アルコール,アミノ酸,ペプチドまたはポリペプチドは、上述したポリペプチドまたは核酸分子に接合してもよい。核酸分子は、後述するように、ウイルスのキャリア内に存在させてもよい。
【0069】
このポリペプチドは、投与された時点で付加成分が切断されることによって(例えば、エステラーゼの働きによって除去されてもよい、エステル化で付加された置換基が切断されることによって)除去され得るような、「プロドラッグ」または「プロペプチド」の形態の誘導体を包含する。このようなプロドラッグとして、例えば、タンパク質分解によって切断され、興味のあるポリペプチドを産生する、天然に存在するタンパク質の野生型前駆体が挙げられる。このような前駆体は、前駆体の形態では活性がないが、タンパク分解性切断により活性化されてもよい。従って、本発明の核酸分子は同様に、このようなプロドラッグまたは前駆体をコードする分子を包含する。上記の修飾されたポリペプチドまたは核酸分子は、それらが同じか類似の医療効果を有するかどうか判定することによって、非修飾の分子と関連がある機能的な活性を保持することを確認するために試験してもよい。
【0070】
上記の核酸分子は、発現制御配列に動作可能なように連結していてもよく、すなわち、このような組換えDNA分子を含む、組換えDNAのクローニング媒体またはベクターであってもよい。これによって、遺伝子産物としての本発明のポリペプチドの細胞内発現が可能となり、該ポリペプチドは興味のある細胞に導入された遺伝子によって発現される。遺伝子は、興味のある細胞において活性なプロモータから発現され、ゲノムに取り込まれるか、または、独立複製もしくは一過性のトランスフェクション/発現のために、線状DNAまたは環状DNAベクターのいずれの形態において挿入されてもよい。好適な形質転換技術またはトランスフェクション技術は、文献によく記載されている。あるいは、裸のDNA分子が、本願明細書に記載された使用のための細胞に直接導入してもよい。
【0071】
適切な発現ベクターとしては、例えば、後述する本発明の方法の実施に必要な核酸分子とともに適合するリーディングフレームに連結した翻訳制御要素(例えば、開始コドンおよび終止コドン,リボゾーム結合部位)および転写制御要素(例えば、プロモータ−オペレータドメイン,終結終止配列[termination stop sequence])などのような適切な制御配列が挙げられる。適切なベクターとしては、プラスミドおよびウイルス(バクテリオファージおよび真核生物ウイルスを含む)が挙げられる。好適なウイルスベクターとしては、バキュロウイルス、またアデノウイルス,アデノ随伴ウイルス,ヘルペスおよびワクシニア/ポックスウイルスも挙げられる。他の多くのウイルスベクターは、当該分野において記載がある。好適なベクターとしては、細菌および哺乳動物の発現ベクターであるpGEX−KG,pEF−neoおよびpEF−HAが挙げられる。核酸分子は、発現の際に融合タンパク質を産生するため、付加的なポリペプチド(例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)をコードするDNAと都合よく融合してもよい。
【0072】
このように、さらなる態様から見ると、本発明は、上記の核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。
【0073】
本発明の他の態様としては、核酸であるベクターに、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入することを含む、本発明に従って組換え核酸分子を調製する方法が挙げられる。
【0074】
後述する方法において、細胞に本発明の核酸分子をトランスフェクションすることによって、ポリペプチドを細胞に投与してもよい。上記のように、本発明は、このように、本明細書に記載された本発明のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子および本明細書で記載の方法におけるその使用にまで拡張する。好ましくは、該核酸分子は、ベクター、例えば発現ベクターに含まれる。
【0075】
本発明の核酸分子(好ましくはベクターに含まれる)は、適切な任意の手段によって細胞に導入してもよい。好適な形質転換技術またはトランスフェクション技術は文献によく記載されている。様々な技術は公知であり、このようなベクターを発現用の原核細胞または真核細胞に導入するために用いてもよい。この目的に好適な宿主細胞としては、昆虫細胞株,真核細胞株またはBL21/DE3菌株などのE.コリが挙げられる。本発明はまた、核酸分子、特に上記のベクターを含む、形質転換またはトランスフェクションされた原核生物または真核生物の宿主細胞までにも拡張される。
【0076】
本発明のさらなる態様は、上記のように定義された本発明のポリペプチドを調製する方法を提供するものであり、該方法は、該ポリペプチドが発現する条件下で、上記のように定義された核酸分子を含む宿主細胞を培養すること、およびこのように産生された該分子を回収することを含む。発現されたポリペプチドは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0077】
本発明はまた、上記の核酸分子にコードされたポリペプチドまで拡張される。これは、上記の宿主細胞の発現によって産生されたものであってもよい。
【0078】
本発明のポリペプチドを含むが、本発明のポリペプチドを直接導入することによって、または、コードする核酸材料を発現することによって、野生型細胞に対して修飾されている細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。好ましくは、該ポリペプチドまたは該核酸分子は、該細胞に内在しない、すなわち、該細胞は外因性のポリペプチドまたは核酸材料を含むために修飾される。
【0079】
本発明はまた、上記のように定義されたポリペプチドに対して特異的に配向する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)およびその抗原結合断片(例えば、F(ab)2,FabおよびFv断片、すなわち、該抗体の「可変」領域の断片であって、抗原結合部位を含む)にも拡張される。
【0080】
このような抗体は、下記の方法、特に記載の治療法に用いられてもよい。
【0081】
本明細書に記載の抗体は、本発明のポリペプチドの存在または量を同定するためにインビトロで用いてもよく、異常レベルの該ポリペプチド(すなわち、正常レベルに対して差異のある状態であり、例えば、該ポリペプチドが上昇または低下したレベル)に関連する、本明細書に記載の疾患または皮膚損傷を同定するための診断に用いてもよい。
【0082】
このように、本発明のさらなる態様は、検体中の本発明のポリペプチドもしくはその一部の存在または量を測定する方法を提供するものであり、本明細書に記載の抗体を該検体と接触させ、抗体の結合の程度が該ポリペプチドまたはその一部の存在および量を示す。
【0083】
評価される検体は、都合の良い任意の検体、例えば、血液もしくは組織検体または非生体検体でもあってもよい。好ましくは、検体は、本明細書に記載の動物、好ましくはヒトに由来する。
【0084】
本発明はさらに、動物における本明細書に記載の疾患または皮膚損傷を診断する方法を提供するものであって、該動物由来の検体中の本明細書に記載のポリペプチドの存在または量を判定する段階を少なくとも含み、該存在または該量は該疾患または該皮膚損傷の兆候を示す。ポリペプチドは、例えば、上記の抗体を用いることによって検出されてもよい。検体および動物は、好ましくは本明細書に記載のものである。該ポリペプチドの量は、好ましくは、正常レベルと比較して低下している。診断法は、疾患または皮膚損傷を有する調査中の対象と比較して正常な対象の標準的なテーブルとの比較により達成してもよい。
【0085】
下記の本発明の組成物または使用に用いられるポリペプチドまたは核酸分子は、天然に存在する供給源から入手または由来してもよく、全部または一部を合成して生成してもよい。
【0086】
都合が良いことに、ポリペプチドおよび核酸分子は、実施例に記載のプロトコルに従って単離される。このような方法およびこのような方法の産物は本発明のさらなる態様を形成する。
【0087】
このように、本発明のさらなる態様は、本明細書に記載のポリペプチドを(例えば、サケの)孵化体液から単離する方法を提供するものであって、少なくとも下記段階を含む:
a) 最小限の水量(例えば、卵の量と等しいかより少ない)に卵を懸濁すること;
b) 該卵に同期かつ早急の孵化を誘発すること(好ましくは、95%を超える胚が2時間未満に孵化を完了するように);
c) 孵化体液を得るため孵化された卵を濾過すること;
d) 卵の殻の断片を解離させるため該孵化体液に固体尿素を任意に添加すること、および、該体液を低速で遠心分離すること;
e) 例えば、スーパーデックス16/60カラムやバイオテックス100ウルトラフィルタを用いて、一次の排除クロマトグラフィ段階を実施すること;
f) 例えば、スーパーデックス16/60カラムを用いて二次の排除クロマトグラフィ段階を任意に実施すること;ならびに
g) 例えば、ベンズアミジン−セファロースカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼなどのような、混入したタンパク質を任意に除去すること。
【0088】
本発明はさらに、上記の方法によって調製されたポリペプチドまで拡張される。
【0089】
本発明のポリペプチドが白血球から得られる場合、それは非修飾型で得られる。サケ孵化体液から得られたポリペプチドは修飾(グリコシル化および/またはリン酸化によって)されるが、両方の形態は、本明細書に記載の方法において等しく有効である。
【0090】
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸分子には、好ましくは、単離手順や合成調製において用いられた材料または原物質に由来するいかなるコンタミ成分も実質的にない。特に好ましくは、この化合物は、w/w(乾燥重量)として評価した際、50または60%を超える程度、例えば>70,80または90%の純度、好ましくは95または99%を超える程度の純度に精製される。このような純度レベルは、興味のある特定の分子に対応するものであるが、その分解産物を含む。必要に応じて、より低い純度、例えば、興味のある分子の1,2,5または10%を超えて、例えば20または30%を超えて含むものに対して、強化調製[enriched preparation]を用いてもよい。本発明のポリペプチドは、例えば、クロマトグラフィ(例えば、HPLC,サイズ排除,イオン交換,アフィニティ,疎水的相互作用,逆相)やキャピラリー電気泳動法によって精製してもよい。
【0091】
本発明のポリペプチドは、例えば、合成的に生成されたより小さいペプチドとのライゲーションによって、またはより都合良く、上記ペプチドをコードする核酸分子の組換え発現によって、合成的に生成してもよい。
【0092】
本発明の核酸分子は、例えば適切なcDNAライブラリから本明細書に記載の核酸配列を増幅することによって、合成的に生成してもよい。
【0093】
細胞の免疫機能に作用するため、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子または抗体をインビトロで(例えば、細胞培養や器官培養で)用いてもよい。
【0094】
あるいは、特に、ポリペプチド,核酸分子または抗体が、これらが由来する身体にこれらを再導入することを意図する場合、動物性の部分または産物(例えば、器官や採集した血液,細胞または組織)に対して、ポリペプチド,核酸分子または抗体をエックスビボで用いてもよい。
【0095】
しかしながら、ポリペプチド,核酸分子および抗体は、好ましくは、以下に詳述するようにインビボで用いる。
【0096】
本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子および抗体は、下記の様々な疾患や病気の治療に応用される。本発明は、このように、上記のポリペプチド,核酸分子もしくは抗体ならびに1以上の薬学的に許容し得る賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物まで拡張する。
【0097】
「薬学的に許容し得る」または「生理的に許容し得る」とは、受け手に対して生理的に許容し得るのと同様に、その成分が組成物中の他の成分と親和性がなければならないことを意味する。
【0098】
投与するための活性成分は、医薬組成物に用いるために適切に修飾されていてもよい。例えば、本発明に従って用いられる化合物は、上記の誘導体を用いることによって分解に対して安定させてもよい。
【0099】
この活性成分もまた、例えば、塩または非電解質,アセテート,SDS,EDTA,クエン酸塩または酢酸塩緩衝液,マンニトール,グリシン,HSAまたはポリソルベートなどの適切な添加剤を用いて組成物中で安定されてもよい。
【0100】
本発明の核酸分子,ポリペプチドまたは抗体は、唯一の活性成分として該組成物中に存在していてもよいし、例えば、その治療効果を増大させるため、または、消費者により組成物に対する興味をそそるようにするために、他の成分、特に他の活性成分と組み合わせてもよい。
【0101】
本発明のポリペプチドを含む組成物は、ゾナーゼや関連する酵素も含んでもいてもよい。本明細書で言及するようにゾナーゼは酵素を含む調製物であって、該調製物はSDS−PAGE分析において、約28kDaの分子量を有する1つのタンパク質バンドを示し、下記の段階を含む方法によって入手できる:
a) 最小限の水量(例えば、卵の量と等しいかより少ない)に卵を懸濁すること;
b) 該卵に同期かつ早急の孵化を誘発すること(好ましくは、95%を超える胚が2時間未満に孵化を完了するように);
c) 孵化体液を得るため孵化された卵を濾過すること;
d) 卵の殻の断片を解離させるため該孵化体液に固体尿素を任意に添加すること、および、該体液を低速で遠心分離すること;
e) 遠心分離した上清をゲル濾過することによってゾナーゼをさらに精製すること;
f) ベンズアミジン修飾セファロース6B(登録商標)カラムを用いたアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼをさらに精製することであって、濃縮した塩で洗浄した後、クロマトグラフィのマトリックスまたは高分子構造物に結合したゾナーゼを抽出するため、濃縮した塩溶液中のジオキサンを用いて溶出することによって、該アフィニティクロマトグラフィを実施する;
該ゾナーゼは下記の特性を有する:
a) クロモザイムXを切断する;
b) ベンズアミジンによって阻害される;
c) アルギニンを有するペプチド結合を切断する;
d) 8Mの尿素,モル濃度の塩,蒸留水および有機溶媒(好ましくはジオキサンまたはプロパノール)の存在下でも活性を有したままである;および
e) 室温の溶液中50日間酵素活性を保持する。
【0102】
ゾナーゼは、実施例で記載したように調製し組成物に添加してもよく、または天然の供給源から本発明のポリペプチドを調製後「不純物」として示されるものであってもよい。本発明のポリペプチドおよびゾナーゼの両方を含む組成物において、該ポリペプチドは、それら総重量の1〜100%の範囲で存在してもよく、ゾナーゼは0〜99%を構成してもよい。好ましくは、ポリペプチドは総重量の50〜100%、例えば>80,90,95,96,97,98または99%の範囲で存在し、ゾナーゼは総重量の0〜50%、例えば<20,10,5,4,3,2または1%で存在する。
【0103】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の組成物を治療に用いる。
【0104】
上記のように、本発明のポリペプチド,核酸分子および抗体は、例えば日光,寒気,放射線照射(例えば、がん治療に用いられる際等のX線)によっての、または、創傷の結果としての傷害性皮膚の治療においてと同様に、特に皮膚の様々な自己免疫疾患および炎症性疾患の治療において治療特性を示す。
【0105】
本明細書において言及するように、「疾患」は、正常な有機体に対し、ある症状を示すか無症状の有機体において、内在する病理学的障害に言及し、例えば、感染や後天的または先天的な遺伝子の欠陥に起因してもよい。
【0106】
実施例で説明するように、様々な炎症性疾患,自己免疫疾患および他の皮膚の疾患を治療するためのロイコレクチンの有用性が示されている。他の疾患を治療するのにも同程度の有効性があることを期待してもよい。例えば、慢性胃腸炎症は、有害物質に対して樹状細胞が過剰に反応することから(または、おそらく場合によっては)反応しないことまでによって説明することができる。従って、ロイコレクチンの導入(例えば経口的に)によって、炎症を起こした皮膚がロイコレクチンの導入に好ましく反応するのとまったく同じ方法で、慢性GIT炎症が治療されるものと期待するだろう。
【0107】
自己免疫疾患は、正常細胞の表面抗原の変異型が、特別な体細胞で発現することに起因することがある。理論に拘泥するつもりはないが、ロイコレクチンは、標的細胞を発病から保護するのに役立つかもしれない。
【0108】
本明細書で言及するように、「炎症性疾患」は、疾患が進行する間のある時点で炎症が観察される疾患であり、唯一の症状であっても、いくつかの症状のうちの1つであってもよい。炎症性疾患は、急性であっても慢性であってもよく、上記または下記の通りであってもよい。炎症性疾患としては、心血管炎症(例えば、アテローム性動脈硬化症,脳卒中),胃腸炎症(胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの潰瘍を含む),肝炎症性疾患,肺炎症(例えば、喘息,人工呼吸器により誘発された肺損傷),腎臓の炎症,眼性炎症(例えば、ブドウ膜炎),膵性炎症,尿生殖器炎症,神経炎症性疾患(例えば、多発性硬化症,アルツハイマー病),アレルギー(例えば、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎,皮膚アレルギーおよび疾患(例えば、掻痒/蕁麻疹,血管性浮腫,過敏性皮膚炎,接触皮膚炎,乾癬),食物アレルギー,薬剤アレルギー,昆虫アレルギー,肥満細胞症),骨格の炎症(例えば、関節炎,変形関節炎,リウマチ性関節炎,脊椎関節症),感染(例えば、細菌性感染またはウイルス性感染);口の炎症性疾患(すなわち、歯周炎[perodontis],歯肉炎または口内炎[somatitis]);粘膜の痛み;ならびに移植(例えば、同種異系移植拒絶もしくは異種移植拒絶または母体胎児間寛容)が挙げられる。
【0109】
本発明による治療のための好ましい炎症性疾患は、湿疹,座瘡,酒さ,乾癬および接触皮膚炎などの炎症性皮膚疾患,胃腸炎症ならびに潰瘍や痛みなどの粘膜の疾患である。
【0110】
本明細書で言及される「自己免疫疾患」は、良性の自己免疫が病原性の自己免疫に進行したものの1つであり、上記または下記の通りであってもよい。自己免疫疾患としては、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは、自己免疫成分を有するウイルス病である),円形脱毛,強直性脊椎炎,抗リン脂質症候群,自己免疫アジソン病,自己免疫溶血性貧血,自己免疫肝炎,自己免疫内耳疾患(AIED),自己免疫リンパ組織増殖性症候群(ALPS),自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP),ベーチェット病,心筋症,腹腔スプルー−疱疹状皮膚炎[dermatitis hepetiformis];慢性的な疲労免疫性機能不全症候群(CFIDS),慢性的な炎症性脱髄性多発性神経炎(CIPD),瘢痕性類天疱瘡,寒冷凝集素疾患,頂上症候群,クローン病,デゴス病,皮膚筋炎−若年性,円板状ループス,本態性混合型クリオグロブリン血症,線維筋痛症−線維筋炎,グレーブス病,ギランバレー症候群,橋本甲状腺炎,特発性の肺線維症,特発性の血小板減少紫斑病(ITP),IgA腎症,インシュリン依存型糖尿病,若年性慢性関節炎(スチル病),若年性慢性関節リウマチ,メニエール病,混合性結合組織病,多発性硬化症,重症筋無力症,悪性貧血[pernicious anemia],結節性多発動脈炎,多発性軟骨炎,多腺性症候群,リウマチ性多発性筋痛,多発性筋炎および皮膚筋炎[dermatomyositis],原発性無ガンマグロブリン血症,原発性胆管萎縮症,乾癬,乾癬性関節炎,レイノー現象,ライター症候群,リウマチ熱,リウマチ性関節炎,多臓器肉芽腫性疾患,強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、別名全身性硬化症(SS)),シェーグレン症候群,全身強直性症候群,全身性エリテマトーデス,高安動脈炎,巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎,潰瘍性大腸炎,ブドウ膜炎,白斑ならびにヴェーゲナー肉芽腫が挙げられる。
【0111】
本明細書で言及する「傷害性皮膚」としては、熱,放射線照射(X線やUVなど様々な波長の光によって),寒さ,摩擦,引掻きまたは創傷(例えば、事故や手術に起因する)などの外的影響によって損傷した皮膚が挙げられる。あるいは、傷害性皮膚は、感染、または、病気または内在する遺伝子の異常に起因してもよい。損傷は、ひび,赤み,痒み,炎症,角質皮膚,剥片などとして示されてもよい。
【0112】
本発明は、このように、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防する方法を提供するものであって、上記のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を該動物に投与する。
【0113】
別の言い方をすると、本発明は、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防するための医薬の調製における、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物の使用を提供する。
【0114】
さらに別の言い方をすると、本発明は、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防するための、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を提供する。
【0115】
本発明の好ましい態様は、皮膚の自己免疫疾患もしくは皮膚の炎症性疾患または相が異性皮膚を治療または予防するための、このような方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を提供するものであって、該ポリペプチド,該核酸分子,該抗体または該組成物が、好ましくは該皮膚に局所的に投与される。
【0116】
好ましくは、該疾患が、湿疹,座瘡,乾癬,胃腸炎(好ましくはクローン病,潰瘍性大腸炎および他の慢性炎症),歯肉炎,口腔および食道の炎症であり、また該傷害性皮膚が、炎症を起こしたか,もしくは,赤く腫れたか,寒さでひび割れたか,日焼けしたか,放射線を浴びたか,熱により損傷したか,または,外傷の結果である。
【0117】
本明細書で使用する「治療する」こととは、治療を受けていないその個体の身体の種々の部位における症状もしく作用または治療を受けていない対応する個体における症状もしくは作用に対して、該疾患もしくは該損傷(例えば、傷害性皮膚の存在または範囲(例えば、外傷,炎症,赤み,痒み,痛みなどの相対的サイズ))の1以上の症状もしくは作用の軽減,緩和または排除(好ましくは正常レベルへ)に言及する。
【0118】
「予防する」こととは、その症状またはその作用が開始する範囲またはタイミングの絶対的な予防または軽減もしくは緩和(例えば遅延)に言及する。これは、例えば、遺伝子治療方法(例えば抗RNA配列または非センス配列の使用)によって達成されてもよい。
【0119】
本発明による治療法または予防法は、該疾患または該傷害性皮膚の治療または予防に効果的な1以上の活性成分の投与と好都合に組み合わせてもよい。このように、本発明の医薬組成物は、このような活性成分を追加して1以上含んでもよい。
【0120】
本発明のさらなる態様によると、我々は、ヒトまたは動物の治療における、同時の,別個のまたは連続の使用のための複合調製として、本明細書で定義された1以上のポリペプチド,1以上の核酸分子または1以上の抗体、および追加される1以上の活性成分を含む製品を提供する。
【0121】
容易に入手できる成分を用いる当該分野で周知の技術によれば、本発明の組成物は、1以上の生理学的に許容し得る単体,賦形剤および/または希釈剤を、従来法で処方してもよい。
【0122】
このように、例えば、錠剤,ピル,粉末,トローチ剤,小袋,カシェー[cachet],エリキシル剤,懸濁液(注入流体または注入液として),乳剤,溶液,シロップ,エアロゾル(固体として、または液状媒質中に),軟膏,柔らかいゼラチンカプセルおよび硬いゼラチンカプセル,座薬,無菌の注射可能な溶液,無菌包装粉末などの、従来の生薬の[galenic]調製物を製造するため、1以上の従来の担体,希釈剤および/または賦形剤とともに(任意で、複合調製として他の活性物質とともに)この活性成分を含んでいてもよい。生分解性重合体(例えば、ポリエステル,ポリ酸無水塩,ポリ乳酸またはポリグリコール酸)もまた、固形のインプラントに用いてもよい。この組成物は、凍結乾燥,過冷却またはPermazymeを用いて安定化してもよい。
【0123】
好適な賦形剤,担体または希釈液は、乳糖,D形ブドウ糖,蔗糖,ソルビトール,マンニトール,澱粉,アラビアゴム,リン酸カルシウム,炭酸カルシウム,カルシウム・ラクトース,トウモロコシ澱粉,アルギン酸塩[aglinate],トラガカンタ,ゼラチン,珪酸カルシウム,微結晶性セルロース,ポリビニルピロリドン,セルロース,水シロップ,水,水/エタノール,水/グリコール,水/ポリエチレン,グリコール,プロピレングリコール,メチルセルロース,メチルヒドロキシベンゾエート,プロピルヒドロキシベンゾエート,タルク,ステアリン酸マグネシウム,鉱油もしくは脂肪性物質(例えば固い脂肪)またはこれらの好適な混合物である。徐放性製剤を得るための化学物質、例えば、カルボキシポリメチレン,カルボキシメチルセルロース,酢酸フタル酸セルロース,またはポリ酢酸ビニルも用いてもよい。
【0124】
この組成物としては、平滑剤,湿潤剤,乳化剤,粘度増加剤,造粒剤,崩壊剤,結合剤,浸透圧性活性薬剤,懸濁剤,保存剤,甘味料,香料,吸着促進剤(例えば、表面浸透剤または鼻への投与のため、例えば、胆汁塩,レシチン,界面活性剤,脂肪酸,キレート剤),褐変剤,有機溶媒,抗酸化剤,安定剤,皮膚軟化剤,シリコーン,α−ヒドロキシ酸,鎮痛薬,消泡剤,保湿剤,ビタミン,芳香,イオン性増粘剤もしくは非イオン性増粘剤,界面活性剤,充填剤,イオン性増粘剤もしくは非イオン性増粘剤,金属イオン封鎖剤,重合体,噴射剤,アルカリ化剤もしくは酸性化剤,乳白剤,着色剤および脂肪族化合物などを追加して挙げられる。
【0125】
本発明の組成物は、当該分野で周知の技術を使用することによって、身体への投与後、活性成分の迅速な放出,持続した放出,または,遅発性の放出を提供するように処方されてもよい。
【0126】
この組成物は、送達させるのに適切な任意の剤形であっても、特定の細胞または組織を標的とするのに適切な任意の剤形であってもよく、例えばエマルジョンとして、または、リポソーム内,ニオソーム[niosome]内,ミクロスフェア内,ナノ粒子内などであり、それらに活性成分が吸収,吸着,組み込みまたは結合されていてもよい。これによって、製品を不溶型に効果的に変換することができる。これらの粒状形態は、安定性(例えば分解)および送達の問題をともに解決してもよい。
【0127】
これらの粒子は、循環時間を向上させるための適切な表面分子(例えば、血清成分,界面活性剤,ポロキサミン[polyoxamine]908,PEGなど)、または特定の細胞が有する受容体に対するリガンドのような部位特異的な標的のための部分を持っていてもよい。薬物送達および標的のための適切な技術は当該分野において周知であり、国際公開第99/62315号公報に記載されている。
【0128】
溶液,懸濁液,ゲルおよび乳剤の使用が好ましく、例えば、活性成分は、水,気体,水性液体,油,ゲル,乳剤,水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤,分散液またはそれらの混合物の中にあってもよい。
【0129】
組成物は、局所的(例えば、皮膚に),経口的または非経口的に投与(例えば、注射によって)されてもよい。先に言及されるように、ロイコレクチンは異なる種の間でごくわずかな変異しか示さない。実際、それは健康なヒト個体群において変異がないことがわかり、それ故、ヒト個体群において変異がないタンパク質インシュリンと同様の方法で、液性抗体反応を引き起こさずに、例えば対象に注射で投与することによって、ロイコレクチンを使用することが許容されるだろう。従って、ロイコレクチンの注射による全身治療法は、本明細書に記載の疾患、特に自己免疫疾患を治療するのに用いてもよい。
【0130】
しかしながら、局所組成物および局所投与が好ましく、ゲル,クリーム,軟膏,スプレー,ローション,膏薬,スティック[stick],石鹸,粉末,フィルム,エアロゾル,ドロップ,泡,溶液,乳剤,懸濁液,分散液(例えば非イオン性ベシクル分散液[non-ionic vesicle dispersion]),牛乳および当該分野において従来の任意の他の剤型が挙げられる。
【0131】
軟膏,ゲルおよびクリームは、例えば、好適な増粘剤および/またはゲル化剤の添加とともに、水性基剤または油性基剤で処方されてもよい。ローションは、水性基剤または油性基剤で処方されてもよく、一般に、1以上の乳化剤,分散剤,懸濁化剤,増粘剤または着色剤を含むことになる。粉末は、任意の好適な粉末基剤を用いて形成してもよい。ドロップおよび溶液は、1以上の分散剤,可溶化剤または懸濁化剤も含む水性基剤または非水性基剤とともに処方してもよい。エアロゾルスプレーは、好適な噴射剤を用いて、加圧パックから好都合に送達される。
【0132】
あるいは、組成物は、経口投与または腸管外投与に適する形態で提供してもよい。このように、他の剤型としては、活性成分を含み、任意で、例えば、トウモロコシ澱粉,乳糖,蔗糖,微結晶性セルロース,ステアリン酸マグネシウム,ポリビニルピロリドン,クエン酸,酒石酸,水,水/エタノール,水/グリセロール,水/ソルビトール,水/ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,ステアリルアルコール,カルボキシメチルセルロース,脂肪性物質(例えば固い脂肪)またはこれらの好適な混合物のような、1以上の不活性な従来の担体および/または希釈剤をともに含む、素錠またはコート錠[coated tablet],カプセル,懸濁液および溶液が挙げられる。
【0133】
本発明の組成物における活性成分の濃度は、用いる化合物(すなわち、ポリペプチド,核酸分子または抗体)の性質,投与様式,治療の経過,患者の年齢および体重,医学的適応,治療されるべき身体または体表面積に依存し、選択の余地に従って変化または調整してもよい。しかしながら、一般的に、本明細書に記載の化合物の濃度範囲は、0.0001, 0.0005, 0.001,または0.01〜25%、例えば0.0005〜15%、例えば0.01〜10%、0.1〜5%等のように、例えば1〜5%(投与、特に局所投与のための最終調製物のw/w)である。該濃度は、化合物自体の量を参考にして決定され、したがって、組成物の純度を考慮して適切に許容されるべきである。有効な単一用量は、単一用量を用いて治療される動物に応じて、0.1〜100mg/日、好ましくは2〜10mg/日の範囲にある。
【0134】
該投与は、医薬分野において公知の、任意に好適な方法により、例えば、経口,腸管外(例えば、筋肉内,皮下,腹腔内または静脈),経皮,口腔,直腸もしくは局所投与または吸入による投与などが挙げられる。好適な投与形態は経口的または最も好ましくは局所的に投与されることになる。明らかなように、活性成分が消化可能なものである場合、経口投与はその限界を有する。このような問題を解決するために、成分は上記のように安定させてもよい。
【0135】
本発明を実施するための活性成分が、例えば核酸分子(ベクター内にあってもよい)またはポリペプチドなどの様々な形態を採ることから、組成物の形態および送達のルートが異なることになることは言うまでもない。しかしながら、特に、例えば経口的な送達または局所投与のために、好ましくは、溶液,クリームまたは懸濁液が使用されるだろう。
【0136】
本発明のポリペプチドまたは核酸分子のいずれも、上記の医学的適応のために用いられてもよい。より最近の遺伝子治療方法において、核酸分子は上記のトランスフェクション/形質転換に好適なベクター(例えば、医学的応用のための当該分野において公知の遺伝子治療方法に用いるアデノウイルスなどのようなウイルスベクター)で提供されるのが好ましい。
【0137】
この組成物を適用または投与してもよい動物としては、哺乳類,爬虫類,鳥類,昆虫および魚(例えばサケやタラ)が挙げられる。好ましくは、組成物を適用または投与してもよい動物は、哺乳類,特に霊長類,家畜家禽[domestic animal],獣蓄[livestock]および実験動物である。このように好ましい動物としては、マウス,ラット,ウサギ,モルモット,ネコ,イヌ,サル,ブタ,ウシ,ヤギ,ヒツジおよびウマが挙げられる。特に好ましくは、この組成物を人に適用または投与する。
【実施例】
【0138】
実施例1:ロイコレクチンの同定および特性評価
タンパク質の単離
サケの孵化体液成分を分析する過程で、胚における新規タンパク質を同定した。
【0139】
本発明のポリペプチドを単離するための出発原料として使用してもよい部分的に精製されたゾナーゼを調製する方法は、参照することにより本明細書に援用する国際公開第99/29836号公報に記載されている(特に実施例1にその方法が記載されているが、尿素段階がないのは任意)。
【0140】
ゾナーゼおよびロイコレクチンの両方をサケ孵化体液から精製した。孵化体液のタンパク質濃度を上げるために、サケ卵を孵化前に最小限の量の水に移した。高度に同期した孵化は、高い(室)温度によるか、または、脱酸素により誘発することができ(オッペン−バルンツンら1990年,Aquaculture,86巻,417〜430頁)、粗ゾナーゼおよび関連する粗タンパク質の高度に濃縮された調製物を少容量で産生する。
【0141】
ゾナーゼの最初の精製として、寒冷紗による孵化したサケ卵の濾過を要した。この濾過液はゾナーゼが著しく分解することなく何年もの間冷凍することができ、解凍後さらにタンパク質精製に使用することができる。この事実によって、ロイコレクチンを含むサケのゾナーゼおよび関連するタンパク質を精製するための出発原料の産生が大いに単純化される。
【0142】
次の任意の段階として、サケ卵の殻の断片を分離するために、タンパク質濾過液を4M尿素に調整することを要し、低速遠心沈降(15,000g;2×15分間)によって外来の破片とともにこれらを除去することができた。この原料は、上記とは異なる方法で調製された粗原料に特徴的な、カラムを詰まらせる兆候を示さなかった。この粗タンパク質調製物は、従来のクロマトグラフィ技術による精製に好適であり、ゾナーゼは実施例7で記載のようにさらに精製してもよい。
【0143】
孵化体液のロイコレクチンは、ゾナーゼとともに単離してもよい。その野生型のゾナーゼは実質的にロイコレクチンより大きいから、ロイコレクチンを、部分的に精製されたゾナーゼ調製物(上記の通り)から排除クロマトグラフィによって単離してもよい。最初の分離として、図1の凡例に記載の条件を有するスーパーデックス16/60カラムが充分であり、その後ベンズアミジン−セファロースカラムのアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼを除去してもよい。
【0144】
大規模調製において、その野生型のゾナーゼは、ロイコレクチンと異なり100kDaをサイズ排除する限外濾過を著しくは透過しないから、限外濾過の使用も好適である。
【0145】
使用する緩衝液は、5mMのNaClを含み、中性付近またはわずかにアルカリ性のpH(pH7.5〜8.5)のミリモルのTris(例えば10mM)である。
【0146】
他のタンパク質の大部分を沈殿させるこの手順の間でもロイコレクチンは溶解したままであることから、有機溶媒(例えば、80%のアセトン)への抽出を用いることによって、血液銀行にある期限切れの製品からヒト白血球を大規模に抽出することも想定される。クロマトグラフィ法および濾過法による最終精製は上記のとおりである。
【0147】
この単離されたタンパク質もまた、配偶子および受精卵で、さらに、初期胚(造血系の個体発生の間)でも、最終的に白血球で、発現することが見出された。
【0148】
これまで未確認であったタンパク質がゾナーゼとともに共精製されることがわかった。この新規なタンパク質は、未変性条件下クロマトグラフィによる推定で、ちょうど30kDaを少し切る程度であった。(図1)
タンパク質の発現
単離されたタンパク質を、ポリクローナル抗体を生成するために用いた。免疫ペルオキシダーゼ染色方法または間接蛍光抗体法を用いるウサギポリクローナル抗LL抗体によって、このタンパク質が存在するか細胞を分析した。この結果を図2に示す。
【0149】
この抗体を用いることで、我々は、新規なタンパク質が絨毛膜溶解素(孵化酵素)を産生する細胞とは異なるタイプの細胞からもたらされることを発見した。これら個々の細胞(レクトサイトと称する)の形態は図に示されており、絨毛膜溶解素を発現する(個々の)孵化している腺細胞とは明らかに異なっている。
【0150】
配列の解析
この新規なタンパク質を、そのトリプシンペプチドの決定などのような標準的な特性評価に供し、続いて、部分的に直接エドマン塩基配列決定法に供した。ペプチドの謎によって、リバースプライマーを単純にポリA尾部にマッチさせるまで、cDNAを産生するために魚胚のmRNAを検出する縮退プライマーの試行錯誤による構築は最初のうちは成功しなかった。この方法において、そして複数の新規プライマーセットが同定されたのでそれを用いることで、我々は約1200NTの少なくとも2個のcDNAを見つけることができた。これらは、ほんのわずかな変異AA残基を有するが、極めて類似の配列であると判明した。両方とも、N末端配列の一部が失われていた。
【0151】
N−RACEの手順を用いて、上記配列が、そのプロセスされたタンパク質中に19AAのプロペプチドを有し、かつ他とは異なるN−末端のトリプトファン残基を有する、255アミノ酸のタンパク質に属することを我々はその後検証した。この後者の結果から、直接分析によってN末端配列を得ることが極めて困難であることが説明されるだろう。しかしながら、最終的に、これによって実質的なN末端残基が確認された。
【0152】
ESTデータベースを検索するためにタンパク質のN末端配列を用いて、我々は、新規タンパク質を明らかに表しているタンパク質配列を同定した(図3)。
【0153】
新規タンパク質との類似点を有するタンパク質をデータベースで検索することによって、いくらか類似する候補を唯一同定した(レレン,未発表)。これはコイから単離した魚卵レクチン(ガリアーノら,2003年,Biochem.J.,376巻,433〜440頁)であり、配列を手動でアライメントした結果、全般的な類似性はせいぜい48%であった。
【0154】
生物情報学の分析から、新規タンパク質がテクトニン[tectonin]に関連したレクチンであることが示唆された(レレン,未発表)。類似するTECPRドメイン構造を有するすべてのタンパク質のリストを編集したら、我々の新規レクチンは、新型のレクチンを表しているように見える(図4AおよびB)。この新規レクチンの仮想AA配列は、下等無脊椎動物のタキノレクチンとなんらかの類似性を示す5個のTECPRドメインを含んでいた(シゲナガら,1993年,J.Biochem(東京),114巻,307〜316頁)。
【0155】
新規レクチンのプロペプチド型は、リソソームをその標的とし、後の潜在的分泌(すなわち囲卵腔への分泌)のためのものであることを示唆する、19AAのペプチドを含む。
【0156】
新規レクチンの仮想AA配列によってエピトープ特異的抗体が開発でき、このことによって、我々は、分析された組織に応じて、このタンパク質の外観上のアイソフォーム(図5)の多く(2〜8)を次々に同定することができた。
【0157】
1つの可能性は、孵化腺細胞で発見されたレクチン(図6B)が絨毛膜溶解素とともに囲卵腔に分泌されること、そして、これらの見かけのサイズを増しかつこれらの見かけのpIを低下させる翻訳後修飾をこれらが有することである。
【0158】
サケが四倍体の魚であること、そして、我々のデータがサケのロイコレクチンの1を超える数の遺伝子を示すことから、部分的に精製されたゾナーゼ調製物における8個のロイコレクチン部分のアレイは、合計4×2すなわち8個の異なるロイコレクチンについて、2個のわずかに異なるロイコレクチンタンパク質の3回増加した修飾から生じたかもしれない。変異の原因を実験的に検証する必要がある。
【0159】
レクチンの推定MWは約25〜30kDaである。対応するサケのレクチンの推定pIは約pH=6.5である。測定されたpI(リステ,未発表)は、サケ卵黄周囲レクチンでpH6.5〜4.9であり、サケ白血球性レクチンでpH6.4〜6.6であった(レクチンはウェスタンブロット法により同定した)。
【0160】
胚発生の間の発現
魚胚の発生の間に新規タンパク質が発現するのを探すためのヌクレオチドのプローブを用いて、我々は魚胚の上皮細胞の特定の型に存在するタンパク質を発見した。加えて、我々は、受精卵と同様、配偶子の両方においてタンパク質が発現するのを発見した。さらにまた、このタンパク質は、生命体の大部分の細胞にはないことを示したが、骨髄造血に関与する可能性があることが示唆されるいくつかの胚細胞で発現していた(図5および6)。このような発現パターンは他には存在しない。このように、我々は、このタンパク質について「ロイコレクチン」(LLと略される)という名称を選択した。
【0161】
異なる種での発現
魚からニワトリ、ヒトまでその血液を調査することによって、ロイコレクチンがこの脊椎動物系列の全体にわたって白血球に存在することがわかった。その存在は、我々のポリクローナル抗体を用いて、無脊椎動物すべてにおいても検出することができた。(ヒト)白血球でロイコレクチンを発見したことは、直ちに、ロイコレクチンの考えられる機能を示唆した。ロイコレクチンは免疫機能を担う細胞に存在する。
【0162】
進化におけるロイコレクチンの極端な配列不変性が最も驚くべきことだった(図7)。標準的なプライマー対技術を用いて、我々は、脊椎動物系列の全体にわたってcDNAを検出することができた。分析することで、魚からニワトリ、ヒトまで極度に保存された配列が明らかにされ、この配列はこのような遺伝子に必須の機能を示すだろう。魚とヒトとの間の配列の変異は約4%(10個の変異AA)または類似性が96%であり、この観測された変異の半数は保存的AAの置換であった。比較することによって、いくらか類似する公知タンパク質の1つが一般的なコイの魚卵レクチン(FEL)であることがわかった(48%未満の類似性)。
【0163】
変異LL構造の概要(図7)によって、新規LLファミリーのタンパク質が定義される。我々は、魚からヒトまでのAAの約2%が非保守的な変化であることを理解する。LL遺伝子が配列不変性を維持するために極度の進化的淘汰を受けるタンパク質をコードすることは明らかである。同様に、これは、遺伝子産物のほとんどのランダム変異を種の進化の間、起こることおよび定着することから防ぐ、重要であるがまだ知られていない機能を指す。
【0164】
組換えロイコレクチンの調製
サケのロイコレクチンのcDNAを胚からクローン化した。NcoI制限部位(フォワード)およびACC65I(リバース)を含むようにPCRプライマーを設計した。ベクターpETM-60をNcoI/ACC65Iにより消化し、消化されたPCR産物を終夜ライゲーションすることで連結した。プラスミドの増幅およびシークエンシングの後、配列を照合したロイコレクチン挿入物を含むpETM-60発現ベクターを、BL21(DE3)pLysコンピテント細胞に形質転換し、細菌グリセロールストックを調製するため、コロニーを5mLのLB(=L培地)に植菌するために用いた。
【0165】
細菌培養およびタンパク質精製:
新規な細菌ベクターpETM60−ロイコレクチンによって、TEVプロテアーゼ認識配列を通してNusAのC末端に融合したHisタグの組換えタンパク質の発現が可能となった。これを金属アフィニティにより効率的に精製し、融合パートナーを除去後、可溶型で回収した。
【0166】
材料および方法:
PCRの上流および下流のプライマー:
NWA15dPET(#23):NcoI
5'-GCA.CCA.TGG.CCA.TGG.GCT.GGG.ACT.GTC.AGG.AGG.TAG.TA
CH.A15dPET(#13):ACC65I
5'-CCG.AAG.CTT.GGT.ACC.ATG.TGT.GCA.CAC.CAT.GGT.GAC
PCRミックス:
dNTP 4μL
プライマー#23/#13 0.5μL(10μM)
cDNA 2μL
DNAポリメラーゼ緩衝液 10μL
DNAポリメラーゼ 0.5μL
dH2O 50μLになるまで。
【0167】
PCR反応:
98℃ 10秒間
55℃ 15秒間
72℃ 1分間
30サイクル
70℃ 10分間
PCR産物およびpETM-60プラスミドのいずれもNcoIおよびACC65Iの制限酵素により消化し;ライゲーション用に1%アガロースゲルから精製した。
【0168】
T4DNAリガーゼによるベクターと挿入DNAとのライゲーション:
T4リガーゼを、以下のミックスを用いて二重鎖DNA分子の5'リン酸塩と3'-水酸基とを接合するために用いた:
200ngのベクターDNA
500ngの挿入DNA
10×リガーゼ緩衝液
1μLのT4リガーゼ
容積を10μLにした。
【0169】
インキュベーションは終夜室温で行い、リガーゼの熱不活化は、チューブを65℃の水浴中10分間置くことによって達成した。
【0170】
ライゲーションミックスをDH5αコンピテント細胞に電気穿孔し、コロニーを5mLのLBに植菌するために用いた。
【0171】
分析用に10個のクローンをランダムに選択した。pETM60−ロイコレクチンをNcoI/ACC65Iで消化することにより分析した。
【0172】
プライマー#13および#23を用いてpETM60−ロイコレクチンをシークエンシングすることによって挿入ロイコレクチンの配列を照合した。
【0173】
ロイコレクチンのインビトロ翻訳
BL21(DE3)pLysSは、誘導前にT7ポリメラーゼのバックグランドレベルを低減させるT7リゾチームをコードするプラスミド(クロラムフェニコール耐性を有するpLysS)を含む。BL21(DE3)pLysSは、毒性タンパク質のタンパク質発現のより厳しい制限を提供し、タンパク質を高レベルに発現する株であり、かつ誘導が容易な株である。組換えタンパク質の発現および精製に用いられる融合タグはNusAであり、495aa(54.8kDa)サイズを有し、N末端に位置して、過剰発現したタンパク質の溶解性を向上するために用いる。
【0174】
NusA−ロイコレクチンを金属アフィニティによって効率的に精製し、融合パートナーを除去後、可溶型で回収した。
【0175】
NusA−ロイコレクチンの発現および精製のための材料:
カナマイシン平板培地
2YTG培地
0.4mMのIPTG(最終濃度0.4μM)
HisTrap HP(5mL)カラム
26℃で3時間誘導した。
【0176】
精製のプロトコル:
精製前のNusA−ロイコレクチン上清の固有酵素活性:0.0060/分25mLの緩衝液B(1×PBS,30mMのイミダゾール,0.4MのNaCl)によりカラムを平衡化。
【0177】
検体のアプライ:
28mLの上清を濾過、脱気し、その25mLをカラムにアプライした。このカラムを75mLの緩衝液Bで洗浄した。25mLの緩衝液C(1×PBS,0.5Mのイミダゾール,0.4MのNaCl)により一段階で溶出した。検体を1mL単位で回収した。
【0178】
結果:
粗組換えタンパク質から、98%を超えるプロテアーゼ活性が、素通り画分および洗浄画分にあることがわかった。プロテアーゼ活性のわずか1.6%を、組換えロイコレクチンを有するものを含むカラム画分(F6およびF7)から回収し、SDS−PAGE分析により同定した(図8を参照)。これらの画分は0.3%(カラムにアプライしたプロテアーゼ活性のバックグランドレベル)を含んだ。
【0179】
結論:
組換えロイコレクチンはセリンプロテアーゼ活性がなく、よって本物のレクチンである。
【0180】
従って、天然の供給源(孵化体液)からいくつかのロイコレクチン調製物で発見されたセリンプロテアーゼ活性の痕跡は、ゾナーゼの痕跡を表すはずである。
【0181】
ロイコレクチンおよびゾナーゼは、孵化体液中に共存し、かつたいていのクロマトグラフィ手順でともに精製される傾向にあるが、100kDa排除サイズであるバイオマックスフィルタを用いた限外濾過によって最終的に分離しうる。
【0182】
組換えタンパク質の分析
上記のように産生され、SDS−PAGEにより精製された組換えサケLLを、MS/MS技術で分析した。意味のあるいかなるヒットを見出すことなく、条鰭亜綱[Actinopterygii]についてNCBIタンパク質およびESTデータベースの両方のMascotで、LLのペプチド質量指紋スペクトルを分析した(リステ,未発表)。このようなLLの二次元ゲル分析から溶出した胚LL部分および白血球LL部分から得られたLLスペクトルとそれらのスペクトルとをよく比較し、さらにpH勾配法によって観測されたLLのイソ型の存在を確認した。
【0183】
ゲノム配列
我々は、670NTのプローブを用いてBacライブラリを探索することによって、この実体の遺伝子のゲノム配列をサケにおいて確証した(完全なプロトコルは、実施例10でも詳述する)。従って、部分的タンパク質のAA配列に由来する情報に基づいて設計された縮退プライマーを用いることで、ロイコレクチンの完全長cDNA配列を入手することができた。370dd(day degrees:日数)胚(すなわち、胚は孵化に近いが、まだ孵化しない)のcDNAのPCR増幅によって630bpの単位複製産物が生成し、これをゲルで精製しシークエンシングした。
【0184】
BACライブラリ(18×カバー度;平均挿入サイズ188kb)をスクリーニングするために、レクチン遺伝子に特異的なプローブ(サケゲノム計画(SGP)コンソーシアムによって利用可能となった)を用いた。PCR法によりジゴキシゲニン-11-dUTP(ロシュ社)を取り込ませることによってプローブ(サイズ630bp)を調製した。Bacライブラリのスクリーニングによって、A-12/144,L16/143,P6/76,B-5/70,O-20/85,L-7/257,F-7/176と特徴付けられた7個の陽性クローンを同定した。陽性反応をパネルAおよびBに例示する。
【0185】
選択したクローンの特異的な反応を、BACライブラリのスクリーニングに用いたDNA標識プローブと同じプライマーを用いるPCR増幅によって確認した。ベクター配列内部の挿入物のサイズをパルスフィールド電気泳動により推定した。クローンをショットガン法によって商業的(MWG−バイオテック社,ドイツ)にシークエンシングした。
【0186】
この研究によって、(四倍体)サケのゲノムにおけるロイコレクチンに密接に関連するいくつかの遺伝子が確立された(図9AおよびB)。断片化した配列の相違によって、少なくとも2個の類似遺伝子の存在が示唆されるように見えるだろう。ロイコレクチンは、転写開始部位からポリアデニル化部位まで約2300bp(かなり標準的なサイズ)の遺伝子において、構造的に、5個のエキソンおよび4個のイントロンを有する通常の遺伝子のように見える。
【0187】
それにもかかわらず、現在までいかなる生命体においても類似の配列を有する遺伝子について報告されなかったことを、我々のデータから判断することができた。個々のエキソンまたはイントロンに対するプローブを用いて、我々は、他に報告されたタンパク質2個のの一部に対するエキソン1個の類似性はごくわずかであることを確証できたが、これらタンパク質2個のいずれも我々が発見した分子実体とはまったく異なるものである。
【0188】
データベース検索から、LLタンパク質,LLのmRNA転写物,またはヒト染色体におけるロイコレクチンのゲノム遺伝子のいずれにも一致する遺伝子を発見できなかったことが示される。明らかに、ロイコレクチン遺伝子は、どこにもまだ発見されてなく、その配列はまだ寄託されてなく、また、LL遺伝子配列はまだヒトで検出されていない。下記の表2にリストした個々の小さい構造要素をデータベース中に位置付けるために、我々は、さらなる検索においてこのような要素を用いた。
【0189】
【表2】
【0190】
この結果から、若干の公知タンパク質がロイコレクチンの一部とある程度の類似性を示すことがわかる−関連する染色体の番号を提供する。染色体に位置しない配列を「どこかに?」として記載する。
【0191】
主要なヒットがヒトのトランスゲリン[transgelin]であり、それは平滑筋タンパク質22-α(SM22-α)(WS3-10)である。トランスゲリンはアクチン結合タンパク質であり、分化した平滑筋の最も初期のマーカーのうちの1つである。このタンパク質の機能はまだ決定されていなかった。http://harvester.embl.de/harvester/P378/P37802.htm
しかしながら、トランスゲリンとロイコレクチンとのタンパク質配列のアライメントから、最小限の共通配列しか示されなかった。それ以外では、T細胞受容体および未知のタンパク質に関して、LL構造の一部で若干低い類似性が見出された。重要なことは、この新規遺伝子がヒトゲノムの公開された配列から見つけることが(まだ)できないという事実にもかかわらず、この遺伝子はヒト白血球で特異的に発現されていたことである。(若干の発現は、ヒト血小板の精製された調製物にも見られる。)この遺伝子の極めて短い断片のみならヒトゲノムから検出されるかもしれないが、これら断片は、多数のヒト染色体にわたって広範囲に広がっている(図10を参照)。
【0192】
染色体上の分布の観測パターンに困惑させられている。ヒトLL遺伝子自体がこれまでにシークエンシングされていないか、または特定の染色体に位置付けられていないとしたら、このような短い配列はLL遺伝子に関連がないかもしれない。この難問の解決法はまだ手元にない。
【0193】
考察
魚およびニワトリのLLとほとんど同一である新規LLレクチンが、ヒト白血球において同定された。サケのLL遺伝子は標準的な構造であるが、ヒトでまだ見つかっていない。
【0194】
実施例2:ロイコレクチンの医学的応用
材料および方法
実施例1に記載のように調製されたサケのロイコレクチンタンパク質(LLと呼ばれる)を用いて以下の研究を実施した。用いたLL濃度は約1〜10マイクログラム/mLであった。ゾナーゼ−プロテアーゼは、水およびヤシ油乳剤(それには30%を超えるヤシ油が存在する)中1:100の比率でLLとともに存在した。ロイコレクチンはゾナーゼ存在下で安定である。
【0195】
結果
A.寒さでひび割れた皮膚
多くの人々は、皮膚、特に手の皮膚において季節的な割れを経験する。
【0196】
寒い季節が始まる間ロイコレクチンを皮膚に塗布すると、寒さによるひび割れを劇的に先送りにし、また多くの場合、防止した。この現象には数十例の記録がある。寒さによってできたひび割れに対するLLの効果についての所見はより少ないが、寒さによってできた傷がいくらか閉じたことは明らかにされた。
【0197】
B.日焼けにより損傷した皮膚
裸の皮膚に対する過剰な太陽光の露出によって日焼けが引き起こされることがあり、露出した皮膚の熱感,赤み,痒みおよび最終的に剥離という結果になることがある。
【0198】
ロイコレクチンの塗布によって、数分以内に赤みが引き、痒みが止まり、最終的な皮膚の剥離が起こらないという結果となった。これらの驚くべき所見は多くの個体で繰り返し観察された。
【0199】
C.熱損傷の皮膚
皮膚に対する熱による直接的な損傷の後、サケのロイコレクチンの塗布によって、このような損傷による当然の結果を大いに予防するように見え、新たに損傷を受けた後何度か塗布すると損傷を止めるように見え、完全な回復へ促進させるように見える。
【0200】
D.座瘡
座瘡の亜臨床的なケースにおいて、多くの子どもにとって、痒みおよび赤みがすぐに消えたことにより効き目が現れた。小規模な試験的研究のヤシ油乳剤LLを塗布したケースの約半数において、座瘡それ自体が向上するように見えた。
【0201】
E.局所乾癬
乾癬皮膚の大きな斑点に対し、サケのロイコレクチンを塗布したら最初にほとんどすぐに赤みが引き、次に痒みの感覚が大幅に軽減されたという効き目が現れた。角質皮膚の過剰な会合は、最初の数週間にわたって後退したが、LL塗布の停止に応じて再発生した。
【0202】
F.開いた皮膚の傷
ヒトのボランティアで観察を行った。我々は、股関節部損傷の手術後、圧縮踵損傷[compression heel wound]から生じた、慢性的な皮膚の開放創および滲出した皮膚の傷のケースを研究した。それらは数ヶ月から一年もの間医療関係者により世話をされたが失敗した。見られた痛みは、直径で1/2〜2cmであった。
【0203】
下肢(脚)上の慢性的な開放創へのフィルタ滅菌されたLL調製物の塗布に応じて、我々は、2〜3日後に液体が損傷から滲出するのが止み、続いて創傷部が急速に縮小し、2〜3週間後、傷が消え正常な皮膚に置換されたのを観察した。
【0204】
患者の性質が、最初に四肢の遠端に現れる傷を有するというものであるとすると、我々は、上記方法で消える最初の傷が近位の傷であることを観察した。これは、我々がより最近できた傷であると解釈する。最後に消える傷は踵の近くの遠位の傷であり、それは最も長くできていた傷である。最終的にすべての傷は消えた。
【0205】
G.インビトロの研究
下から上皮組織に栄養分を利用可能にする微小孔を有するプラスチック製増殖基質に播種後16日目の、分化したヒト皮膚上皮培養物をSkinEthics(ニース,フランス)から入手した。このような培養物は、培養期間中37℃で分化した後、通常の皮膚の形態を呈する。上方の角質層が空気に触れ、基底層が増殖基質に触れるようにこれらの培養物をインビトロでさらに2日間維持した。並行して培養物を30℃の湿潤雰囲気に移動し、サケのロイコレクチン10μg/mL存在下または非存在下、Ca,Mg含有リン酸塩緩衝生理食塩水の培地中6時間存在させた。標準的な方法に従って、培養物をホルマリンで固定、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した。細胞増殖の徴候とともに、大型の基底細胞の迅速な誘導が表皮で観測された(図11)。我々は、このような結果が皮膚でのロイコレクチンの治癒効果と因果関係を有していると解釈し、この際、細胞増殖と細胞分化との組合が、傷が閉じ、皮膚上皮の統合性を再確立するために十分なものとなっている。
【0206】
考察:
我々は、LL遺伝子産物の発現をケラチノサイトの細胞培養物から発見しなかった。また、樹状細胞は、血液白血球に関連した上皮皮膚における唯一の細胞である。血行不良による若干の機械的傷害または生物学的傷害の後、上皮皮膚に対する白血球の通常の接近が妨げられ、それは圧縮損傷がしばしば正常の皮膚に起こるところである。ロイコレクチンの投与はこの欠陥を乗り越え、皮膚における治癒の正常な機構を起動させる。
【0207】
実施例3:白血球におけるロイコレクチンタンパク質の発現
サケ血液をベルゲン大学インダストリ研究室[Industrilab.]から入手した。魚の全血をヘパリン化チューブに回収し(リステ,未発表)、ミラーら(1988年,Nucleic Acids Research,16巻(3号),1215頁)に従って処理した。ヒト血液検体をノルウェーのハウケランド大学病院の血液銀行から入手した。
【0208】
ヒト全血を5mLのクエン酸塩緩衝チューブに回収し、ミラーら(1988年,上記)に従い白血球を調製するために処理した。この調製物を、改良したLymphoprep(商標)(Axis−Shield PoC社,ノルウェー)によってさらに精製した。ヒト白血球画分を調製するために、Lymphoprep(商標)をそのプロトコルに従って用いた。ミフタリおよびウォルサー(未発表)が説明するように、この画分を免疫ブロット分析に用いた。〜1μgのタンパク質を用いた、二次元PAGEによる分析は、マックギリブレイおよびリックウッド(1974年,European Journal of Biochemistry,41巻,181〜190頁)により記載の手順に従った。LLタンパク質およびそのイソ型を特異的に検出するため、免疫ブロットを用いる二次元PAGEによって、これら2つの種のLLタンパク質を視覚化した。サケLLに対するポリクローナル一次抗体による処理の後、ヤギ抗ウサギ抗体により処理し、ECL強化検出系によりLLタンパク質を視覚化できた。0.5〜5μgのタンパク質をアプライした複数のゲルにて免疫反応の特異性を試験し、類似の結果が得られた。
【0209】
サケ白血球はMWが〜26kDaの2つのLLイソ型を示し、サケPVFで発見された8つのLL等電型のうち、より塩基性の型と類似するpIを有する。二次元PAGEの二次元におけるMW標準から外挿により正確なMWを推定することは困難である。ヒト白血球は分子量〜30kDaの1個の主要なLL抗原を含み、それは他の所見から約27kDaであることがわかる。酸性pIは、PVFで発見されたサケLLイソ型の平均pIと一致する(リステ,上記)(図12を参照)。
【0210】
実施例4:ノーザンブロットで同定されたサケのロイコレクチン転写物
ボラクス[Bolaks]AS(フサ,ノルウェー)で養殖されたサケ種親からサケ卵を入手した。これは1975年以降表現型選択により複数の世代で維持され、現在サケの備蓄の一部はノルウェーのサーモブリード[Salmo Breed]A/Sによって繁殖されている。
【0211】
全RNAおよびポリアデニル化RNAの単離
製造業者の使用説明書に従ってトリゾール試薬(ライフテクノロジーズ社)を用いて、孵化前段階の後期(約370dd)にサケ胚から全RNAを単離した。完全性および純度の観点から全RNAの質および量を、臭化エチジウムで染色したホルムアルデヒドアガロースゲルで評価した。全RNAを分光測光法で定量化した。RNA(mRNA)のポリアデニル化画分を、ダイナビーズmRNA精製キット(インビトロジェン社)を用いて全RNA5〜10μgから単離した。
【0212】
プローブの構築
アンチセンスのジゴキシゲニン(DIG)標識cRNAプローブを、SP1消化プラスミドDNAを鋳型としT3RNAポリメラーゼにより転写することによって作製した。センスのDIG標識cRNAプローブを、製造業者のプロトコルに従いDIG RNA Labelling Kit(SP6/T7)(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、XhoI消化プラスミドDNAを鋳型としT7RNAポリメラーゼ(センス)により転写することによって作製した。得られたジゴキシゲニン(DIG)標識LLアンチセンスcRNAプローブおよびセンスcRNAプローブは〜650bpにわたった。
【0213】
ノーザンブロッティング分析
0.5μgの純粋なmRNAおよび1μgの全RNAのアリコートを電気泳動し、正に荷電したニトロセルロース膜(アマシャム社)にブロッティングした。膜をDIG Easy Hyb緩衝液(ロシュ社)中55℃で2時間プレハイブリダイゼーションした後、1μg/mLのリボプローブを用いて55℃で16時間ハイブリダイゼーションした。2×SSC中0.1%SDSを用いて室温で15分間の低ストリンジェントでそれぞれ2回洗浄し、0.1×SSC中0.1%SDSを用いて65℃で20分間の高ストリンジェントでそれぞれ2回洗浄した。この膜を、マレイン酸緩衝液(pH7.5)および1%ブロッキング試薬(ロシュ社)を含むブロッキング溶液中でインキュベートした後、1:10,000希釈した抗DIG−アルカリホスファターゼ(AP)結合抗体(ロシュ社)をさらに含むブロッキング溶液中室温で1時間インキュベートした。150mMのNaClおよび0.5%のTween 20を含む100mMのマレイン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄後、この膜を検出緩衝液(0.1MのTrisHCl,0.1MのNaCl,室温でpH9.5)中2分間平衡化した。基質としてCSPD(ロシュ社)を用いる化学発光分析によりハイブリッドプローブの標的を視覚化し、このブロットをX線フィルム(コダック社)に5〜30分間露光した。DIG標識RNA分子量マーカー(ロシュ社)を用いた。
【0214】
アンチセンスのDIG標識LL特異的リボプローブを、成熟LL転写物のサイズを推定するために用いた。全RNAのノーザンブロット分析(図13A)によって、主要な転写物がサイズ〜1250bpを有することが明らかにされ、またより弱いバンドの転写物(〜3200bp)が観察された。主要なバンドは、成熟した(イントロンがない)転写物および翻訳可能なLL転写物に対応する。同じリボプローブを用いる精製mRNAのノーザンブロット分析により、〜1250bpの単一バンドが明らかとなった(増幅されたcDNAが完全長をコードする配列に近いことを示す(図13B))。全RNA検体およびmRNA検体のブロットをセンスのLL特異的リボプローブとともにインキュベートした場合、ハイブリダイゼーションのシグナルがないことが観察され、用いたリボプローブが充分に特異的であることを示している(図13C)。少ない転写物(〜3200bp)は、サケの完全長LL転写物より大きい。ハイブリダイゼーションの特異的な条件を考えると、この実体は、LL配列情報を含む実体をおそらく反映している。センスプローブではなくアンチセンスプローブのみからの陽性シグナルは、この結果の特異性を強調する。完全長の転写物のサイズは上記LLエキソンのすべてに適合する。
【0215】
実施例5:関連するβプロペラタンパク質とLLとのアライメント
公的な配列バンクに置かれる情報と比較して、サケLL配列について生物情報学的分析を実施した。
【0216】
Clustal W分析(図14)から、サケのロイコレクチンの推定アミノ酸配列が、データバンクのいかなる報告されたタンパク質とも有意な配列類似性を共有しないことがわかった。しかしながら、BLASTは(FELを含む)より遠縁のタンパク質との類似性までも示したが、シプリナス・カルピオ[Cyprinus carpio]の魚卵由来レクチン(遺伝子バンクのアクセス番号P68512)との全般的な類似性はたった48%しかない(E値2.00E-50)。加えて、ゼブラフィッシュの仮想タンパク質(HPZ;アクセス番号LOC678590)は、全般的な類似性が45%(E値2.00E-48)を示した。配列比較からも、ロイコレクチンが、カブトガニのTPL-1(以前にはレクチンL6)(アクセス番号P82151),フィゼラム・ポリセファラム[Physarum polycephalum]のテクトニンI(アクセス番号O61063)およびテクトニンII(O61064)と38%,28%および26%同一性を有することがわかった。(スイスプロットでは、これら数字はそれぞれ49,-,35,32および29%の同一性であり、FELのE値は1e-51、L6のE値は1e-40であった。)我々のデータから、無脊椎動物より脊椎動物の方が、LL類似性が高いことが示唆される。LLと30%同一であるヒトのテクトニンβプロペラリピート含有タンパク質(KIAAO329_ヒト)は含まれない。
【0217】
FELの4個の生化学的に確認されたジスルフィド結合(ガリアーノら,2003年,Biochem.J.,376巻,433〜440頁)のうち、3個がロイコレクチンにおいて保存されているように見えることが複数のアライメントから明らかになった。第一の架橋は、両タンパク質のN末端側終端とC末端側終端とを接続する。この架橋は、LLの3および234(またはFELの238)の位置のシステインを接続する。第二の架橋および第三の架橋は、LLのCys102とCys155(FELの#157)とを接続し、ならびに、LLおよびFELの両方でCys132とCys137とを接続する。コイFELで発見された第四のジスルフィド結合は、Cys208(212)とCys226(230)とを含み、ロイコレクチンでは発見されていない。
【0218】
実施例6:LL(ロイコレクチン)の三次元モデル
ロイコレクチンタンパク質は、L6またはタキレクチン1(Tachypleus tridentaus),カブトガニ血球の細菌性リポ多糖−結合レクチンおよび他の無脊椎動物のタキレクチン関連タンパク質と、TECPRドメイン構造の観点から、高度の類似性を共有する。それにもかかわらず、ドメイン数に関する差異が、タンパク質のC末端側のβ−プロペラドメインのわずかなシフトとともに、観察された。類似性検索およびSMART検索の情報を要約すると、我々は、ロイコレクチン全体の三次元構造が5枚羽のβ−プロペラタンパク質構造を示すと推測する。これに基づき、我々は、ロイコレクチンタンパク質がどのように見ることができるかについてワーキングモデルを提供するために三次元モデル(ビーゼルら,1999年,EMBO J.,18巻,2313〜2322頁)を起動する。あるタンパク質の残基番号がその他の残基に等しく設定されていることから、これはただの概算である。SMARTデータベースの検索から、実質的に翻訳されたロイコレクチンタンパク質の卓越した構造特徴が示され、それは5個のタンデムリピートからなり、それぞれが32〜61%の内部配列同一性を有する35〜36AAを含む(図15の右パネル)。推定ロイコレクチンタンパク質の内部繰り返しストレッチ[strech]は、それら自身の中の類似性を示し、大部分は13AAの長さであった。2個の短いコンセンサス配列(XWXXLPGXLKXXXVGPXおよびGVNKNDXXYXLVG)は、各繰り返しにおいて高度に保存されている。ロイコレクチンのN末端領域における20残基のストレッチ(これはFELでは発見されていない)は別として、両方のタンパク質は、TECPRドメイン数とTECPRドメイン全体のドメイン構造とが高度な類似性を示す一方で、配列同一性はたった48%しか共有していない。
【0219】
実施例7:サケ孵化体液からのゾナーゼの精製
実施例1のサケ孵化体液をさらに精製し、純粋なゾナーゼ調製物を生成してもよい。50%より良い収率を有したから、濾過液中のより大きな分子成分からゾナーゼを分離するのにゲル濾過(12倍に精製)は1ラウンドで充分であった。利用したマトリックスは変えてもよいが、通常セファクリルSR-200(登録商標)を我々は選んだ。緩衝液は、pH8.0もしくはpH8.5(0.05M)のTris−HClまたはTris−酢酸塩(0.025M,同じpH)であった。ゲル濾過の手順後に得られたゾナーゼは、孵化体液中のゾナーゼの大部分を占めた。
【0220】
市販のベンズアミジン セファロース6B(登録商標)カラムを用いるアフィニティクロマトグラフィによって、ゾナーゼを均一なタンパク質産物まで精製した。(25mLまたは125mL容積のカラムを)用いた具体的な条件として、0.05MのTris−HCl緩衝液(pH8または8.5)を再び用い、カラムに非特異的に結合した物質を除去するためにNaClが1Mとなるよう調整した。ゾナーゼはカラムにしっかりと結合したままであったので、このタンパク質はこの段階では除去されなかった。カラムからゾナーゼを溶出するのに、同じTris−HCl緩衝液の1MのNaCl中、10〜33%のジオキサン勾配を用いて達成した。アフィニティ精製後、ゾナーゼ調製物はSDS−PAGE分析上1つのタンパク質バンドを示し、それは約28kDaの分子量を有していた。このゾナーゼ産物はシークエンシング級の純度を有してはいないが、高度に精製されていた。
【0221】
ゲル濾過精製さらにアフィニティ精製されたゾナーゼを、1つの最終的なクロマトグラフィの手順によってシークエンシング級の純度にまでさらに精製した。この手順は、Tris−酢酸塩(10mM,pH9.0)の緩衝液とともに、PBE94(登録商標)カラムを用い、連続溶出をこの緩衝液で塩勾配(最高1MのNaClの塩)を用いた。この段階自体によって、ゾナーゼの触媒活性がさらに7.6倍まで増え、精製全体を通して714倍に増えた。出発原料からの収率は28%であった。この精製段階によって、ゾナーゼのタンパク質同一性は、28kDaの部分として、損なわれることはなかった。
【0222】
実施例8:LL抗体の産生および精製
ポリクローナルウサギ抗ウサギ抗サケLL抗血清を以下の通りに調製した:ハーローおよびレイン(1988年,Laboratory Manual,コールドスプリングハーバー,NY)に記載されているように、シークエンシング級に精製された実施例1のロイコレクチンタンパク質を、4kgのチンチラウサギにポリクローナル抗体を惹起させるために用いた。80,40および25mgのシークエンシング級のロイコレクチン3つを、複数の皮下部位に注射した。一番目をフロインド完全アジュバントで乳化し、最後2つを3週間後および6週間後に不完全アジュバンドで乳化した。最後の追加免疫後8日間に血液を回収し、3,000rpmで15分間の遠心分離(Sorvall SS-34ローター)後血清を調製した。
【0223】
抗血清のアリコートを−80℃で保存した。一次抗体を、HiTrap 1mLのプロテインGカラム(アマシャム・ファルマシアバイオテック社)を用いて流速1mL/分でアフィニティ精製した。全抗血清を、1mLのプロテインGカラムにアプライする前に、45μmフィルタユニットで濾過した。カラムの平衡化を、5〜10カラム容積の結合緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム,pH7.0)を用いて実施し、その後、280nmのUV吸光度によりタンパク質が検出されなくなるまで同じ緩衝液で数回洗浄した。IgG画分を、5mLの溶出緩衝液(0.1MのグリシンHCl,pH2.7)で溶出し、25μLの中和緩衝液(1MのTrisHCl,pH9.0)を含む10本のチューブに分けた。濃度を分光測光法で測定した。12%のSDS−PAGE、それに続く銀染色による精製IgG画分のアリコートの分析によって純度を推定した。ヤギ抗ウサギIgGおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いるウェスタンブロット分析によって感度を測定した。
【0224】
加えて、ポリクローナル抗体を、ゼブラフィッシュのアセトン粉末中でインキュベーションすることによって予め吸着させた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ブタ抗ウサギF(ab')2をダコ社(F-0054)から入手した。Alexa Fluor 647標識ヤギ抗ウサギIgG(インビトロジェン社,カタログ番号A-21244)をMolecular Probe社(ユージーン,US)から入手し、ビオチン化ポリクローナルブタ抗ウサギ免疫グロブリン(カタログ番号E0353)をダコ社から入手した。一次抗体および二次抗体の最適濃度を事前の希釈実験によって決定した。このポリクローナル抗体を実施例1に記載のタンパク質発現分析で用いた。
【0225】
実施例9:ゼブラフィッシュLLの同定および特徴付け
製造業者の使用説明書に従いトリゾール手順(ライフテクノロジーズ社)を用いて、4,6,12,24,48hpfおよび5dphのゼブラフィッシュ胚から全RNAを単離した。全RNAの完全性および純度を、臭化エチジウムで染色したホルムアルデヒドアガロースゲルで評価した。18SrRNAに対する28SrRNAの比が2〜2.4:1である検体(かつDNA混入が検出されない)のみを用いた。RNAを分光測光法で定量化した。ポリアデニル化mRNAを、ダイナルキット(インビトロジェン社)を用いて5〜10μgのRNAから単離した。
【0226】
200U/μLのTermoScript(インビトロジェン社)を用いて逆転写を実施した。mRNA(0.5μg)を72℃まで5分間加熱し、冷却し、ペレット化して、2.0mMのcDNA合成緩衝液(インビトロジェン社)中100ng/μLのオリゴdT,10μMのDDTおよび0.8U/μLのRNAse阻害剤を含む20μLの反応混合液に添加した。50℃で1時間インキュベーションした。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出によって産物を精製し、マイクロスピンS-200HRカラムに通し、エタノール沈殿した。遺伝子特異的なLLプライマーをサケLL配列から設計した(表3)。このPCRミックス(20μL)は、2μLのcDNA鋳型,0.4μMのプライマー(LLF1,LLF2,LLR1,LLR2およびLLR3),1×PCR緩衝液,0.5UのTaq DNAポリメラーゼ(タカラ社)および0.2mMのdNTPを含んだ。PCR増幅は、94℃で45秒間/58℃で45秒間/72℃で90秒間を32サイクルおよび最後に72℃で7分間の伸長を行った。反応混合物を、1×TBE緩衝液(pH8.3)中0.5μg/mLの臭化エチジウムを有する1.8%のアガロース−TBEゲルでDNAマーカー100bpラダー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)を用いて分析した。
【0227】
【表3】
【0228】
標準的なプロトコルによって、このPCR断片をpGEM T−Easyベクター系1(プロメガ社,マジソン,WI)にライゲーションした。
【0229】
40μLのE.コリ DH5αおよび1μLのpGEM T−EasyベクターにライゲーションされたPCR断片を電気穿孔に用いた。37℃で1時間細菌を培養する前にSOC培地(1mL)を添加した。この組換え細菌(200μL)を標準LB/アンピシリン,X−gal,IPTG寒天平板培地に塗布し、青/白スクリーニングのために終夜37℃でインキュベートした。白いクローンを10個選び、100μg/mLのアンピシリンを有するLB培地中5mLの培養で終夜増殖させた。プラスミド精製は、プラスミドミニ精製キット(キアゲン社,キャッツワース,CA)を用いた。プラスミドを増幅し、標準的なプロトコルを用いてシークエンシングした(DNAシーケンス ラボ,ベルゲン)。
【0230】
GeneRacerコアキット(インビトロジェン社,カタログ#45-0168)を用いて使用説明書に従いLLの5'-および3'-RACE PCRを実施した。スーパースクリプトIII(インビトロジェン社)を用いる室温での最初のcDNA鎖を合成するために全RNAの2μgを用いた。5'-および3'-RACE PCR増幅の最初のラウンドを、5'-または3'-GeneRacerプライマーおよびリバースまたはフォワードの遺伝子特異的プライマーLLR2およびLLF3をアプライして実施した(表3)。ネスト化5'-および3'-RACE PCR増幅は、ネスト化5'-または3'-RACE PCR GeneRacerプライマーおよびネスト化リバースまたはフォワードの遺伝子特異的プライマーLLR4およびLLF4を用いた。5'-および3'-RACE PCRにおいて、最初の段階は94℃で30秒間および72℃で1分間の5サイクル;次に94℃で30秒間および70℃で1分間の5サイクル;第三段階は94℃で30秒間および68℃で45秒間および72℃で1分間の30サイクル;最後の伸長段階は72℃で7分間である。ネスト化5'-または3'-RACE PCRは3段階あり:最初の段階は94℃で30秒間,72℃で2分間の5サイクル;次の段階は94℃で30秒間,70℃で2分間の5サイクル;3つ目の段階は94℃で30秒間,65℃で30秒間および68℃で1分間の25サイクル;最後の伸長段階は72℃で10分間である。ネスト化PCRの鋳型は、蒸留水で1:25で希釈されたRACE PCRの第一ラウンドのPCR産物を用いた。
【0231】
RACE PCRのプライマーを表3にリストアップする。PCR精製キット(プロメガ社,マジソン,WI,US)を用いて単一のPCR産物を精製し、JM109高効率コンピテントE.コリ(インビトロジェン社)に形質転換するため、PCR II Topoベクター(インビトロジェン社)にライゲーションした。組換え細菌を、ルシア[Lucia] ベルターニ寒天平板培地上で青/白スクリーニングにより同定した。プロメガ精製キットを用いてこの挿入物を含むプラスミドを精製し、M13プライマーによってシークエンシングした。BlastxおよびBlastpの検索プログラムを用いて、LLのmRNA配列を分析した。
【0232】
3つのプライマーセット(表3を参照)を組み合わせて増幅したことによって、サケLLから予測されるサイズの単位複製配列(図16A)が得られた。ゼブラフィッシュmRNAがないブランクの水は陰性だった。最大の産物(720bp)をシークエンシングし、LLがゼブラフィッシュに存在することを証明した。種々のサイズのPCR産物(図16A)が増幅されたのは、種々の位置でのサケのエキソンに隣接する特異的なオリゴヌクレオチドを用意したからであり、ゼブラフィッシュLLとサケLLとの間に高い相同性があることがさらに立証された。増幅反応の陽性対照として、我々はβ−アクチンを用いた。
【0233】
5'-RACE PCRによって、ゼブラフィッシュLLの5'-非翻訳領域(5'-UTR)の配列が明らかとなった。我々は、受精後4時間(4hpf)から孵化後5日間(5dph)までのmRNA(図16B)を用いた。RACE PCR増幅の第一ラウンドで極めて微かな産物が得られた。反応の特異性を上げるために、高アニーリング温度(65℃)を用いる第二ラウンドのRACE PCRに、すべてのステージで増幅された産物(第一のRACE PCR反応物を1:20希釈したもの)を用いた。すべてのステージ(図16B)から(4hpfからでさえも)、同じ2つの産物(520bpおよび420bp)が生成した。これら発生のステージの20を超えるクローンからLL配列情報が得られた。すべてのクローンは、サケLLで検出された29nt上流の領域(図16C)を含んだ。3'-末端も複数の分析によってシークエンシングされ、サケのロイコレクチンで見つかった構造と極めて類似の(ほぼ同一の)構造が明らかとなった。完全長cDNA配列に基づく推定ゼブラフィッシュLLタンパク質を、NCBI遺伝子バンクに寄託した(アクセス番号FJ643620)。コードする配列は、765ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを有する1,213ntからなる。翻訳開始コドンを+1のnt位置(または30〜32nt;図16C)と仮定すると、ゼブラフィッシュLLの推定アミノ酸配列は、255AAのタンパク質を示唆する。LLのcDNAも、ntで+94に開始コドンを有すると考えられる(図16C)。ゼブラフィッシュLLクローン20個のうち4個において、転写物は+1部位から上流29ntを含むが、その先の93ntがなかった(nt配列は−1まで、続いて+94まで正確に読んでいる:図16C)。従って、このデータから、2つの異なるLLタンパク質が翻訳されているかもしれないことが示唆される(図16C)。
【0234】
ゼブラフィッシュとサケとのLLタンパク質間で強い相同性があることは明らかだった。ゼブラフィッシュLLは2個のサケLLと比較してハイブリッド構造である。確立されたLL分類基準7個のうち、4個の基準はLL-1のカテゴリにゼブラフィッシュLLを分類した一方で、2個の基準はLL-2のカテゴリにそれを分類した(図16E)。7個目の基準はゼブラフィッシュLLに特有である(図16E,囲み領域)。さらにまた、1つのCysがエキソン3になく、「nmnTPYClts」配列でArgに置換され、それはゼブラフィッシュで「nmnDTPRlts」と読まれる。結論として、ゼブラフィッシュLLは、5個のシステインを有し、一方サケは6個のシステインを有し、すべてジスルフィド架橋にあると予測される。
【0235】
様々なエキソンに関して、エキソン1は同一である一方で、ゼブラフィッシュのエキソン2はサケで見つかっていない3個の特有なAAを有する(#57および#58の位置でSer−Glnの代わりにGly−Arg、ならびに#78の位置でIleの代わりにVal)。エキソン3は変異した残基を4個(または2個?)有する。3個の分類部位は別として、エキソン4および5に差異はない。従って、分類部位を無視してゼブラフィッシュLL(全255AA)には5個(または7個)の特有なAAがある。ゼブラフィッシュLLはサケLLとの比較において高度に保存されており、数%の地点でしか違わない。
【0236】
ゼブラフィッシュLL(図16D,E)は、サケLLと密接に類似している。ゼブラフィッシュLLは、サケLLに見られる6個のCysのうち1個を欠いており、よって、たった2個のジスルフィド架橋しか含んでいないかもしれない:1個がN末端およびC末端を接続しており、さらにエキソン4の内部架橋である。サケLLと大型ゼブラフィッシュLL(図16E)とを比較して、サケに見られるありふれた構造のバリエーションはゼブラフィッシュLL構造によって補強される。1つの根本的な差異が観察される(#131残基)が、サケLLのバリエーションが発生する所では、ほとんどで保存された置換が見られる。PVFのLLは免疫防御機能を有しているかもしれない。LL構造のバリエーションが制限されることによって、このような機能が関与するかもしれない。トランケートされたロイコレクチン(tLL)は分泌ペプチドを欠いており、これはtLL(図16D)が分泌されないことを示唆し、tLLは4枚羽β−プロペラタンパク質であるかもしれない。理論的には、種々のLLタンパク質は、種々の細胞性機能を果たしてもよい。tLLの機能は、レクトサイト以外の細胞で機能してもよい。
【0237】
実施例10:サケのLL遺伝子の単離および特徴付け
BACライブラリのスクリーニング
ロイコレクチン遺伝子のゲノム構造を得るために、我々は、サケゲノム計画(オスロ,ノルウェー)によって利用可能となった公的なサケゲノムBACライブラリ(18×カバー度,挿入物の平均サイズは約188kb)をスクリーニングした。オスの大西洋サケ(Salmo Salar)のノルウェー水産養殖株から構築された、高度に重複した細菌の人工染色体(BAC)ライブラリを、LL陽性クローンについてスクリーニングした。このライブラリは総数305,557個のクローンからなる。ライブラリの挿入物の平均サイズは188kbpであり、18倍のゲノムカバー度を表す。CHORI-214 高密度フィルタSeg.1(フィルタセット-007193)は、それぞれに複写でスポットされた18,432クローンからなり、ハイブリダイゼーションスクリーニングのために産生されている。
【0238】
このライブラリをスクリーニングするために、620bpのLL特異的cDNAプローブを、フォワードプライマーであるLL/F 5'-TACGGACACAGGTCGAATCCCCTACTACC-3'およびリバースプライマーであるLL/R 5'-ACAGAGAAGAGGCTAATGTGTGCAC-3'を用いて、PCR法によりジゴキシゲニン-11-dUTP(ロシュ社)を組み込むことによって調製した。DIG標識cDNAプローブを95℃で10分間インキュベート、直ちに5分間氷中に置いた後、ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC,50%のホルムアミド,0.02%のSDS,2%のブロッキング剤(ロシュ社),DEPC処理水)に添加した。
【0239】
ハイブリダイゼーションチューブ中55℃でハイブリダイゼーションを終夜実施した。ハイブリダイゼーション後の洗浄段階を、0.1%SDSを有する2×SSC中室温で15分間という低ストリンジェントでそれぞれ2回および0.1%SDSを有する0.1×SSC中65℃で20分間という高ストリンジェントでそれぞれ2回実施した。マレイン酸緩衝液(pH7.5)および1%ブロッキング剤(ロシュ社)を含むブロッキング溶液中で濾過物をインキュベートし、続いて、1:10,000希釈された抗Dig−アルカリホスファターゼ(AP)結合抗体(ロシュ社)を有するブロッキング溶液中室温で1時間インキュベートした。150mMのNaClおよび0.5%のTween 20を含む0.1Mのマレイン酸緩衝液(pH7.5)による洗浄後、膜を検出緩衝液(0.1MのTrisHCl,0.1MのNaCl,室温でpH9.5)中2分間平衡化した。陽性の二重スポットを、基質としてCSPD(ロシュ社)を用いる化学発光分析によって視覚化した。陽性のシグナルは、濾過物をX線フィルム(コダック社)に露光することによって同定した。露光時間を3〜15分間で変化させた。2個の選択された陽性クローンL-7/257およびA-12/144を調製した寒天平板培地に蒔き、37℃で終夜インキュベートした。3個のクローンを選択し、20μg/mLのクロラムフェニコールを有するLB培地中37℃で5mLの振盪培養法で終夜増殖させた。超高純度DNA精製キット(キアゲン社)を用いて、プラスミドDNA精製をその翌日に実施した。BAC DNAをNotIで消化し、パルスフィールド電気泳動(PFGE)で分析した(オソエガワら,1998年,Genomics,52巻,1〜8頁)。低レンジPFGマーカー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)およびλ−Hind III断片(タカラ社)をDNAサイズマーカーとして用いた。
【0240】
陽性クローンのPCR検証
鋳型としての精製BAC DNAと遺伝子特異的プライマーとを用いてPCR反応を実施した。PCR反応物を95℃で3分間インキュベートし、続いて、95℃で30秒間,54℃で30秒間のアニーリング,および72℃で30秒間の伸長を35サイクル、最後に72℃で10分間インキュベーションした。熱サイクルの後、PCR反応物のそれぞれ2μLを1.5%アガロースゲルで分析した。
【0241】
ロイコレクチンBACクローンのショットガンシークエンシング
2個のクローンを、MRW(ベルリン,ドイツ)がシークエンシングした。重複が2.4倍であると推定し、ベクター挿入物をシークエンシングした。シークエンシングしたものから、ベクターおよび宿主成分を取り除いた。約180個のシークエンシングしたものから、それぞれ総数で33個および22個のコンティグを、生物情報学を用いて2個のBACクローンから確立した。コンティグを、mRNA配列とアミノ酸配列との両方によって調べた。プログラム検索と手動の調査とによる分析によって、エキソンおよびイントロンを同定した。LL遺伝子すべてを重複するコンティグから同定した。
【0242】
ゲノム構造
上記のスクリーニングの結果から、BACライブラリ命名法に従いA-12/144,L-16/143,P-6/76,B-5/70,O-20/85,L-7/257およびF-7/176と呼ばれる7個の特異的なクローンを同定した。ゲノムBACクローンの平均挿入物サイズは、選択されたBACクローンすべてから精製されたDNAから推定され、続いてそれをNotI制限酵素で消化した。ベクターを含むDNA消化産物をパルスフィールドゲル電気泳動によって分離し、臭化エチジウム染色により視覚化した。すべてのBACクローンから2個のバンドのみが得られ、ベクター(pTARBAC2.1)サイズが〜13kbp(13,397bp;オソエガワら,1998年,上記)であったことを示した。これは、すべてのクローンの挿入物サイズが〜25kbpであったことを示唆する。7個の選択されたBACクローンのうち6個の配列を、LL遺伝子に特異的なプライマーとともに、鋳型としてBACクローンから精製されたDNAを用いて増幅することで、もう一度検証した。PCR増幅によって、これらクローンのすべてから〜600bpの産物が得られた。これらの同一性を、直接シークエンシングすることでさらに確認した。
【0243】
2個のBACクローンのショットガンシークエンシング
配列アセンブリプログラムBioEditおよびDna Baserをすべての配列データに用いた。単離された25kbpのBACクローンの両方とも、mRNA配列とタンパク質配列との両方に対してスクリーニングしたとき、完全なロイコレクチンmRNA配列(ベクター配列成分の排除後)を含むことが分析から明らかにされた。BACクローンのうち1個のデータから合計80個のシークエンシングしたものが得られ、33個のコンティグとして集められた。これらのうち少なくとも6個のコンティグはLL配列を含み、それによってすべてのLL遺伝子が再構築できた。LL配列に加えて、他の成分が、これらのコンティグの中から高い確度をもって頻繁に同定され、逆転写酵素,イオン性ペプチダーゼおよび転置因子を含んでいた。
【0244】
LLゲノム遺伝子構造の特徴
最初の分析で、たった1個のクローン(L7/247)からLL遺伝子すべてを同定することができたが、他のクローン(A12/144)からもゲノム構造のほとんどが明らかとなった(図16)。その遺伝子が4個のイントロンによって分断された5個のエキソンからなり、TATAボックスから開始して〜2.3kbpにわたる、ロイコレクチンのゲノム機構を、ゲノムクローンL7/247のデータが示唆している。ゲノムLL配列によって、mRNAの81ntの5'UTR(非翻訳要素)が示され、ATG開始コドンから−81の位置(TATAAAA)で始まるTATAボックスが明らかとなった。終止コドンTAGは、ゲノム配列のATGから約1850ntに位置する。6ntの長さのポリアデニル化シグナルAATAAAは、ATGから2,250の位置周辺から始まる。3'UTRは、終止コドンTAGの後から始まる約400ntの長さの配列である。5'UTRは81ntからなり、LL遺伝子サイズは、エキソンの2倍多くの配列を占めているイントロンを有し、従来の定義により少なくとも〜2.3kbpであると推定される。ロイコレクチン遺伝子のエキソン−イントロンの境界を検証するために、確立したゲノムのイントロン配列からPCRプライマーを設計し、サケ胚DNAから各エキソンを増幅するために用いた。これら5個のエキソン配列は単位複製配列の直接的な配列分析によって誘導され、すべてが確立したゲノム配列に一致した。
【0245】
コードするエキソンのサイズは極めて明白なように見え、55bp(エキソン1)と234bp(エキソン2)との間で異なった。とりわけ、2個のイントロンは比較的小さかったので、データの手動読み込みから正確な長さを導き出すことができた。対照的に、イントロン3は約250ntである一方で、イントロン4は約700bpにわたる。イントロン4の正確な長さは、利用可能なデータから定義することができなかった。複合されたエキソン配列のデータから、予測される翻訳産物、すなわち255AAタンパク質が確認される。
【0246】
さらにまた、このデータから、ロイコレクチン2個の記載されたバリアントのうち1個について、5個のエキソンおよび4個のイントロンを有するゲノムLL遺伝子構造が裏付けられる。精製LLの直接エドマン分解によって、分泌LLタンパク質のN末端AA残基がトリプトファンであることが確認された。このTrp残基は、255AA前駆体タンパク質のN末端メチオニンから#20の位置を占め、アミノ酸#18(His)および#19(Ala)が先立つ。プロセッシングのプロテアーゼの切断部位はAlaとTrpとの間であると予測され、分泌LLタンパク質が生成される。直接エドマン分解によって、この分泌LLの配列は、WDCQE VVNIK NLMQI DAGLG Q−Vとして確立され、また、複数の仮想タンパク質配列によって検証された。エキソンすべてがインフレームであるわけではないが、すべてのリーディングフレームを分断することなく、あるエキソンを飛ばすことは潜在的に許容される。ゲノム配列分析によって、エキソン/イントロンの境界の配列が示された。例外はイントロン4であり、おそらく標準的ではないntがそのイントロン配列に隣接している。イントロン1,2および3において、共通のGT//AGの特徴が多くの脊椎動物のイントロンの開始および末端に隣接していることを我々は発見した(シャピロおよびセネパシー,1987年,Nucleic Acids Research,15巻,7155〜7174頁)。
【0247】
エキソン1(19AA)は長さ55ntであり、
【0248】
【化1】
【0249】
の配列を有し、分泌ロイコレクチンのN末端トリプトファンに先立つAla#19残基の最初がGのコドンで止まる。太いイタリック体の大文字Rは、おそらくロイコレクチン-3遺伝子に結合したこの位置のバリアントAAを示す(図17を参照)。ゲノム遺伝子配列は、イントロン1を開始するために、ヌクレオチドGTに続く。イントロン1はヌクレオチドAGで終わり、エキソンIIが続き、それは、ロイコレクチンのN末端である#20のTrpのTGGコドンに先立つ#19のAlaコドンの最後の2個の塩基(−CA)を含む。イントロン1は長さ89ntである。
【0250】
エキソン2(234nt)は77AA(234−2nt/3=77AA+1nt)を含む。ここで、ゲノム配列はヌクレオチドGT(イントロン2の)に続く前に、(ala)−WDCQEVVNIK−NLMQI DAGLG−QVVAT DTSQI−PYYLV G*DKWI−RL* PGS LKHIT−VGPAG IWGVN−KDYAI YKYVA−GNWVQ AA(G)(=77AA+1nt)に翻訳される。星印は、他のAAがLLタンパク質またはLLcDNAの複数配列のいずれかから見つかった残基を意味する(図17を参照)。G*はロイコレクチン-1において変化するように見える一方で、L*はロイコレクチン-2において変化するように見える。イントロン2は長さ186ntであり、ヌクレオチドAGで終わる。
【0251】
エキソン3(72AA)がGC(=Gly,#78残基)を有する2個のヌクレオチドの後から始まり、さらに216nt(合計218nt)または72AAが続く。エキソン3のアミノ酸配列は以下のように読みとられる:
【0252】
【化2】
【0253】
ここで残基#150はSである。太字かつ下線の3個の大文字は、ロイコレクチン-1とロイコレクチン-2とを区別するのに役立つバリアントAAを示す。先と同様に、星印を有する文字は、このような位置の微小変異を有する残基(ロイコレクチン-2のN*;P*はロイコレクチン-1とロイコレクチン-2との両方で微変動を示す)を意味する(図17を参照)。イントロン3は、ヌクレオチドGTから始まり、さらに〜250ntが続く。
【0254】
エキソン4(39AA)はAA残基#151=
【0255】
【化3】
【0256】
から始まり、ここで、Tは残基#189である。先と同様、太字で下線の残基は、ロイコレクチン-1をロイコレクチン-2から区別するのに役立ち、一方、星印はこの位置の微変動を意味する(位置E*でいずれのロイコレクチンでも見られ、位置A*ではロイコレクチン-2のみで見られる)。イントロン4は、おそらく、イントロンの定義にかかる標準的なnt配列で開始および終止しないかもしれない。イントロン4にかかるデータは、このようにいくらか予備的であり、それ故イントロン4の長さは概算(〜700nt)である。
【0257】
エキソン5(47AA)はR(=残基#190)のコドンから始まり、終止コドンTAGに先立つC末端ヒスチジン(残基#236)および3'UTRまで続く。この配列は以下のように読みとられる:
【0258】
【化4】
【0259】
ここで、星印は、ロイコレクチン-1のこの位置での微変動を示す。太字の文字は、ロイコレクチン-1とロイコレクチン-2との差異を示す。太字かつイタリック体の文字は、ロイコレクチン-3の存在の可能性を示す。これらのデータを図17にまとめる。
【0260】
実施例11:ロイコレクチンmRNA配列に対するロイコレクチン-1ゲノム配列の比較
サケcDNAの1ダースを超える分離したクローンおよびシークエンシング実験においてアライメントされた配列から、適応した異なるアミノ酸残基の明確な交代が7つの位置のみであることが明らかとなった。配列全体の変異が少数であること、およびこのような変異の制限がありふれたものであることは、注目に値する。
【0261】
L-7/247のゲノム配列は、ロイコレクチン-1として分類されるロイコレクチンのクローンと一致する。ロイコレクチン-2と称される、他にシークエンシングされたcDNAは、示された7つの位置で異なる。これらの位置に加えて、AAのさらなる変異がいくつか示されている。これは、2つの分類されたcDNAにおける付加的な微小な不均一性を示唆する可能性があるが、データは、LLcDNAにおける第三のカテゴリの存在を示唆する可能性がある。例えば位置#226において、ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のcDNAのいずれにも決して観察されないチロシン残基を我々がいくつかのクローンで発見したからである(図17)。
【0262】
観測した変異の概要を図17に示す。ロイコレクチンの2つのタイプは、成熟ロイコレクチンの推定AA配列の7つの位置(#88,91,101,147,158,229,230)でのそれぞれ(N,V,F,F,N,G,G)に対する(E,I,Y,Y,K,A,V)によって特徴付けられる。これら7つの位置は明白にこれら2個のロイコレクチンを分類し、それはさらに、図17の星印で示されるありふれた位置で微小変異を呈してもよい。図17のデータが示するように、いくつかのmRNA配列は、ロイコレクチン-1および2に見られず、従って、ロイコレクチン-3の可能性を示唆する、LLシグナルペプチドの位置#2における特有なGlyを指す。加えて、我々は、ロイコレクチン-1および2ではSerだけが見られる、成熟ロイコレクチンの位置#226でTyrを観察した。我々は、L7/247のゲノム配列が、サケLLcDNAを複数シークエンシングすることによって発見されたロイコレクチン-1配列に一致すると結論した。LLのBACクローンのさらなるシークエンシングによって、上記残基の基準によって定義されるような、他の主要なロイコレクチン-2のカテゴリが明らかにされるはずであり、疑わしいロイコレクチン-3の存在もおそらく明らかにされるはずである。
【0263】
実施例12:他の種におけるロイコレクチンタンパク質の検出
ニジマス(Oncorhyncus mykiss),タラおよびオイコプレウラ・ディオイカの孵化体液を、ロイコレクチンタンパク質の存在について調査した。孵化体液のタンパク質を、15%のSDS−PAGEで分析されたアフィニティクロマトグラフィによって調製した。このゲルを、様々なタンパク質の存在を示すために銀染色するか、またはブロットしてサケのロイコレクチン抗体を用いて探索した。いずれの場合においても、〜26kDaの単一タンパク質を検出し、ロイコレクチンの分子量に一致した(図18(ニジマス),19A(タラ)および19B(オイコプレウラ・ディオイカ)を参照)。
【0264】
配列:
1:(サケ胚のロイコレクチンポリペプチド):
MRTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSAVTMVCTH
2:(サケ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
SIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLPKQLDAGGEQFIVGANMDDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNNGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMCMLMGHVTYDLGRLWVVSKSAVTMVCTH
3:(コイ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
LVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRD
4:(ニワトリ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
IPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVV
5:(ヒト白血球のロイコレクチンポリペプチド):
MRATAAVLLVLCLLTISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTGRIPYYLVGDKWIRLPGSLKHVTVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYRLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSGGTMVCTH
6:(ゼブラフィッシュのロイコレクチンポリペプチド):
MGTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGNQFIVGANMNDTPYRLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVTKSGGTMVCTH
7:(サケのロイコレクチン-2 ポリペプチド):
MRTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGNQFVVGANMDDTPFCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGHFGCWAVNKNDDIFLMSLNQDCQNNGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSGGTMVCTH
8:(サケのロイコレクチン-3 ポリペプチド):
MGTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVYKSAVTMVCTH
9:(ヒト血液のロイコレクチンcDNA配列):
ATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAGGTCGAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATGTCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACCGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCTGTCTAAAGTTCACTTGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATTATCTTATTGCCATTTAAAAAAATATCAATGAAGATGTTATATTTTCTTGACCACTCCTTGATTAACACTTCAATAGATCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCATGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAGAGGTCATCAATAGGATTGGATGGAATCCTTGTCATTGTTTATTATCTCATTATATAAACATTTCCTGCAAAAATAAAGCATTCATTTTGAAACTATTGTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN
10:(成熟サケのゲノムDNAライブラリの、サケのロイコレクチン遺伝子配列):
TGTGCAGGGCTATAAAAGCGCAAAGTCTTCCAATGGGACAATTGAAGTCTGGTGTACAACCAAACGTATACTGTAGATCTACATAGACATCATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGGTAAGTTACCATCATCTGAAACATGCTTGATCAACTTGGAGTTGAAGTTTTTCTTGGTATACTCTACTCATATGTCTTTGTCTCCATAGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGTAAGTGGAGAGCATTACTCAATATTTATCCAGAGGACACCTGCTTATTAGCTTTCCTGATACCATCAGGCTGTTGAAAAAAACGATTGATGTTTTAAATTGTAACTTGTAGGTAATTTGGCAGTACTCCTTGTTTGCTTGTCTGTCTGTCTTTGTGGTCTTGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTGTAAGATCTGGGAAAGAGTGGGAGAGCTGGAGTAGAGTAGTAGAGGATGGAGAGTGTCAGTTATTTTAAAACTGTTTCATATTATAACTGTTGAAATTGTCCTAAAACCCTGATTGTATCATTTTGTTTCCAGCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCCAGGTAAGGTTGCTACTGAACTATGTGTATGGTCCACCACCCCCCCCCCCCCAACAGTATTAACTTGAAAATGACTTGTAATAATAACTTAGAATAATAATGGTATACCCTTTAATTATAACTCTGATCCTTACAGTACATGCTATGTGAATCTCCTTACACAAAAACTAAATATTGTAGGTACATAAATAAAATCAGTTAAATATAATCAGATCTAAACTTATAGGACTTATTAAGAAATGTGTAGACAGTGTATGATAAAATATGTAAAAGTTGGATGTCCTGTAAAGCTACAGTTTGGGATAAAAAACAACAACTTCCCAGACACCCCACCACTTGTTCTGGTAAACAGCTGAGGAATGTAGTTAGAGAAATGTAACCACTCTCACATTCATACATGGAGCTACGGATGCAAAGACACAACAATTTTTTTATTAAAAAAAAAAAAATGTTTATATTTTCTTTTAAAGCTAAACATTGTTTGTTTACAATAACATTGTTTACAAACAATTGAGTAAAAGCTTACATTTTGGCTTCTAATGTGGTTGAATAAAGCTCAAGATGCAGAAGTTATATTCTTCAAAAATCTATGGCTATATTTAATTATTAAAGTCCAAAAATGGATGTACTTAAAAAAAATGGATAAGCTTTAAAACATGAACCCCAACCCTTTCTTCAACACAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCTGTCTAAAGTTCACTTGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATTATCTTATTGCCATTTAAAAAAATATCAATGAAGATGTTATATTTTCTTGACCACTCCTTGATTAACACTTCAATAGATCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCACGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAGAGGTCATCAATAGGATTTGACGGAATCCTTGTCATTGTTTATTATCTCATTATATAATCATTTCCTGCAAAAATAAA
11:(200〜450日齢のサケ胚のロイコレクチンcDNA配列−エキソンのみ):
ATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCA CACAT
12:(サケ白血球のロイコレクチン遺伝子配列):
ACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCGTTCCGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTAACCAGTTTGTTGTGGGGGCTAACATGGACGATACTCCATTTTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACACTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATTTTCTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAACGGGTGGAGTCACATTGATGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGT
13:(タラのロイコレクチン遺伝子配列):
CAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGAC
14:(ニワトリのロイコレクチン遺伝子配列):
CAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACGCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCT
15:(ゼブラフィッシュのロイコレクチン部分ゲノム配列):
NNAAAANNTAAAATANNGTAGGTACANNNNAAATCAGTTAAATATAATCAGATNTAAANTTNTAGGACTATTAAGAAATGTGTAGACAGCGTACGATAAAATATGTAAAAGTTGGATGTCCTGTAAAGCTACAGTTTGGGATAAAAAACAACAACTTNCCAGACACCCCACCACTTGTTNTGGTAAACAGNTGAGGAATGTAGTTAGAGAAATGTAACCANTCTCACATTCATACATGGAGTTACGGATGCAAAGACACAACAATTTTTTGTTTACATTNTTTTTAACATGTTTTTTAAAGCAATACACATTGTTTGTTTACAATAACATTGTTTACAAACAATTGAGTAAAAGCTTACATTTTGGCTTCTGTGTGGTTGAAATAAAGCTCAAGAGGCAGAAGTTATATTCTTCAAAAATCAATGGCTATATTTAATTATTAAAGTTCCAAAAAGGATGTACTTAATAAAATGGATAAGCTTTAAAACATGAACCCCAACCCTTTCTTCAACACAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGTGTATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGCCGTCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCCGTCCAAAGTTCCCTGGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATGATCTTATTGACATTTAAAAAAAATATCATTGAAGATTTTATATTTTCTTGACAACTCCTAGATTAACACTTCAATAGACCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCACGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAAAGGTCATCAATAAATCACTAGTGCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATGGGAGAGCTCCCAACGCGTNGGATGCATAAG
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド(すなわちレクチン),それをコードする核酸配列および該ポリペプチドに対する抗体ならびに様々な医学的応用におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞性免疫防御系は、病原菌や寄生虫による攻撃から生き延びるための中核となるものである。この系はまた、ウイルス感染後および自己免疫疾患における発癌での、異常細胞の管理にも大いに関連している。
【0003】
細胞間認識はこのような機能の中核ではあるが、これら現象の起源について本質的な理解が乏しい。始原の生殖性生物相が長い年月をかけて多様化した後、生殖細胞の種特異的な認識(「受精」)を確実にするために、遺伝子は進化せざるを得なかった。もしそうでなければ、生殖の種の生存は脅かされていただろう。いくつかの細胞認識分子が進化した。カンブリア紀の時代に生物相が陸生生息空間まで広がったとき、この乾燥した生息空間は、種が混同する可能性が低い保護された環境に生殖受精が制限されるため、ますます好まれた。従って、種特異的な配偶子を認識する遺伝子は冗長となり、これによって、進化において新規な機能を獲得するのが自由となる傾向にあった。
【0004】
一つの明らかな新規機能は、生物自身(自己)の細胞を外来(非自己)細胞と区別する能力であろう。この機構は細胞性免疫系の起源に対する一つの理論的解釈を与える(そのように考えなければ説明が不充分な現象である)ことが提案されている。先天性免疫によるこのような区別(メドジトフおよびジェーンウェー,1997年,Cell,91巻(3号),295〜298頁)は、寄生虫や病原菌によって多細胞生物が食われるのを防ぐために多細胞生物にとって必須のものである。「自己」と「非自己」とを区別する系が正常に機能しないと、いくつかの自己免疫疾患の根幹を成す場合がある。
【0005】
自己免疫と称される、誤った免疫反応は、宿主の抗原と反応する自己抗体またはTリンパ球が存在することによって示すことができる。それは通常害はなく、おそらく脊椎動物である生命体に遍在する現象ではあるが、自己免疫は、自己免疫疾患として知られる、ヒトの広範囲な病気の原因になり得る。ヒトの病気の原因としての自己免疫というこの概念は比較的新しく、1950年代および1960年代までの医学の考えの主流には受け入れられなかった。自己免疫疾患は、良性自己免疫から病原性自己免疫まで進行する疾患であると定義される。この進行は遺伝的影響と環境要因との両方によって決定される。
【0006】
自己免疫疾患は健康にとって重大な脅威である。自己免疫によって引き起こされる病気は80以上もある。これらは女性に特有の脅威であり;患者の約75%が女性である。自己免疫疾患は、65歳までのすべての年齢層において女性の主な死因の10位内に入っている。
【0007】
自己免疫疾患は身体の多くの種々の部位に影響を及ぼし、該部位としては、皮膚(例えば、円形脱毛症,水疱性類疱瘡,後天性表皮水疱症,落葉状天疱瘡,尋常性天疱瘡,乾癬および座瘡),腎臓(例えば、免疫グロブリンA腎症),血液(例えば、再生不良性貧血,自己免疫性溶血性貧血,特発性血小板減少性紫斑病および悪性貧血),関節(例えば、強直性脊椎関節炎),筋肉(例えば、多発性筋炎・皮膚筋炎),耳(例えば、自己免疫性難聴およびメニエール症候群),目(例えば、モーレン潰瘍[Mooren’s ulcer],ライター症候群およびフォークト・小柳・原田病),心臓(例えば、自己免疫性心筋炎,チャーグ・ストラウス症候群,巨細胞性動脈炎,川崎病,結節性多発動脈炎、高安動脈炎およびヴェーゲナー肉芽腫症),内分泌系(例えば、アジソン病,自己免疫性副甲状腺機能低下症,自己免疫性下垂体炎,自己免疫性卵巣炎,自己免疫性精巣炎,グレーブス病,橋本甲状腺炎,多腺性自己免疫症候群1型(PAS-1),多腺性自己免疫症候群2型(PAS-2),多腺性自己免疫症候群3型(PAS-3)および1型糖尿病),胃腸系(例えば、自己免疫性肝炎,セリアック病,炎症性大腸炎および原発性胆汁性肝硬変),神経系(例えば、慢性炎症性脱髄性多発神経障害,ギランバレー症候群,多発性硬化症および重症筋無力症)が挙げられ、または自己免疫疾患は身体全身的(例えば、抗リン脂質症候群,自己免疫性リンパ球増多症,自己免疫性多腺性内分泌障害,ベーチェット病[Bechet’s disease],グッドパスチャー症候群,リウマチ性関節炎,サルコイドーシス,強皮症,シェーグレン症候群および全身性エリテマトーデス)に影響を及ぼす場合がある。
【0008】
自己免疫疾患は身体のどのような部分でも発病する可能性があることから、症状は多岐に渡り、診断および治療が難しい場合が多い。適切な診断および治療がなされなければ、生死にかかわり得る自己免疫疾患もある。リウマチ性関節炎のような慢性自己免疫疾患によって患者(の手足)は不自由になり、患者の家族にも重い負担が掛かる。ブドウ膜炎のあるタイプは失明を引き起こすことがある。強皮症などのような病気は、生涯にわたって熟練を要する治療が求められる。グレーブス病や慢性甲状腺炎を含め他の自己免疫疾患は正確に診断されたらそれでも治療に成功することができるが、兆候が捕らえにくいため見落とされる場合も多い。
【0009】
炎症は、身体の白血球および化学物質が、感染および細菌やウイルスなどの異物から身体を守る正常な過程である。しかしながら、病気の中には、撃退すべき異物がない場合であっても身体の免疫系が不適切な炎症反応を引き起こすものもある。炎症は、このように、自己免疫疾患においてよく起こるものであるが、すべての炎症性疾患が自己免疫反応ではない。炎症性疾患は、微生物(ウイルスやカビ),細菌毒素,特定の医薬品(抗体や抗炎症性ステロイド),化学物質(胆汁塩や有毒な家庭用薬品)などのような、身体を直接攻撃する様々な作用因子によっても引き起こされることがある。炎症に関連する病気として、関節炎(関節における炎症として記載される一般用語である),心臓の炎症(心筋炎),肺に空気を輸送する小管の炎症(喘息発作を引き起こすことがある),腎臓の炎症(腎炎)および大腸の炎症(大腸炎)が挙げられる。
【0010】
胃腸の炎症性疾患は特に興味深い(例えば、胃の炎症性疾患(胃潰瘍,十二指腸潰瘍および胃炎などのような),および腸の炎症性疾患(クローン病,炎症性腸疾患,熱帯性スプルーおよび非熱帯性スプルー,感染性腸炎,大腸炎,潰瘍性大腸炎,偽膜性大腸炎,憩室炎,ならびにアレルギー性の炎症性疾患および放射性物質による炎症性疾患が挙げられる)など)。
【0011】
胃腸の炎症性疾患は炎症によって特徴付けられ、特に浮腫や特徴的な炎症細胞(すなわち、白血球,組織球およびマクロファージ)の存在、および、あるケースにおいては表面上皮の壊死および潰瘍の存在によって特徴付けられる。これらの炎症性疾患は、胃腸管に存在しその表面を攻撃し炎症性疾患反応を惹起することが知られている様々な作用因子によって引き起こされることが知られている。このような作用因子としては、微生物(ウイルスやカビ),細菌毒素,特定の医薬品(抗体や抗炎症性ステロイド),および化学物質(胆汁塩や有毒な家庭用薬品)が挙げられる。実際、胃酸それ自体は胃の内膜を攻撃し、炎症状態を惹起することができる。
【0012】
炎症の治療に現在使用されている医薬としては、非ステロイド抗炎症性薬(NSAID−アスピリン,イブプロフェンまたはナプロキセンなど),コルチコステロイド(プレドニゾンなど),抗マラリア医薬(ヒドロキシクロロキンなど)ならびにメトトレキセート,スルファサラジン,レフルノミド,抗TNF医薬,シクロホスファミドおよびミコフェノール酸塩などの他の医薬が挙げられる。胃腸病、特に胃疾患のうち、炎症を引き起こす胃酸の分泌を阻害することによって(例えば、酸の影響を中和するか(例えば制酸剤の投与)、または、胃酸の分泌の阻害に有効な薬剤を投与することによって)治療することができるものもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】メドジトフおよびジェーンウェー,1997年,Cell,91巻(3号),295〜298頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
傷害性皮膚は感染に対して脆弱であり、見苦しいことがある、および/または、痛みや不快感を引き起こすことがある。傷のタイプのうち、例えば慢性潰瘍など、正常な生理的条件下での治癒に抵抗を示すものもある。傷害性皮膚を修復する、特に傷を修復する薬による解決策はいずれも極めて望ましい。
【0015】
自己免疫疾患および炎症性疾患ならびに病気または皮膚損傷を、副作用を最小限にして治療するのに好適な治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
真核生物の進化に関与する可能性がある過程を長年研究し、本発明者らは、配偶子および接合体のみならず、初期胚(レクトサイト[lectocyte]と称する特異的な細胞)および血球の個体発生の間、ついには白血球においても、新規なタンパク質(本明細書ではロイコレクチンと称する)を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の実施例は例示することのみを目的としており、その中で参照する図は以下の通りである:
【図1】図1(A)は、部分的に精製したサケのゾナーゼ[zonase]をゲル濾過し、ロイコレクチンを産生したことを示す。スーパーデックス16/60カラム(GEヘルスケア社)をFPLC系に接続し、緩衝液の流速を1mL/分とし120mL用いた。カラムからのタンパク質の溶出を280nmのUV(右側のy軸)によって観測し、1mL画分として回収した。ゾナーゼ活性をOD406でクロモザイムXの切断により測定した。野生型ゾナーゼの分子量は約50kDaのピークを有して広範囲にわたる。レクチンのMW=30kDa。
【0018】
(B)は、免疫ブロッティングによるサケの(ロイコ)レクチンの同定を示す。選択した画分のタンパク質免疫ブロット分析は、エピトープをベースとした抗(ロイコ)レクチン(図3を参照)抗体を用いて上記ゲル濾過から得られた。画分の番号を免疫ブロットの上に示す。分子量マーカー(kDa)を左に示す。レクチンの推定分子量は、他の方法(図3を参照)によって得られたものと一致する。
【図2】図2は、大西洋サケ胚のレクチン産生細胞(レクトサイト)の同定を示し、パネルA,BおよびCは、ホルマリンで固定されパラフィンに埋没された大西洋サケ胚本体の横断切片を表す。ロイコレクチンの存在は、免疫ペルオキシダーゼ染色法(A)または間接的蛍光抗体法(BおよびC)を用いるウサギポリクローナル抗LL抗体によって判定した。抗レクチン抗体に反応する細胞はバックグランドと比較してそれぞれ暗い(A)または明るい(BおよびC)として見なすことができる。特有な細胞学的特徴を有する多数の免疫反応性単細胞は、前後胚軸に沿って空間的な制限がない上皮で見られる。AおよびBにおける矢印は比較的大きな細胞(レクトサイト)を指し、周囲の上皮細胞と容易に識別することができる。それらの核が基底にある一方で、細胞が囲卵腔にキノコのように突出するように、細胞質が白血球レクチンで満たされている。パネル2Cは、それらの粒状内容物を示す。
【図3】図3は、ヒト,サケ,ニワトリ,タラおよびUniGene Family Ssa.23163(サケESTコレクション)を構成する2個のコンティグからの2個の翻訳物のロイコレクチンのアライメントを示す。2個のコンティグのうち、コンティグ1は、ロイコレクチンの一次構造に最も似ているものである。しかしながら、2個のコンティグの違いは大きくなく、わずか約80%である。
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4B】図4(A)は、ヒトのロイコレクチンと類似の配列のSMARTドメインを示す。WU−BLAST2を用いるBLASTP検索からの最も高いスコアを有する配列を示している。これらの配列は、より類似するものからより類似しないものの順にリストアップされている。a−ヒトのロイコレクチン,b−サケ胚のロイコレクチン,c−サケ白血球のロイコレクチン(断片),d−ニワトリのロイコレクチン(断片),e−タラのロイコレクチン(断片),f−一般のコイ魚卵のレクチン(Ac#−P68512),g−トゥンガラガエルのラナスプミン-6[ranaspumin-6](Ac#:B5DCK6),h−ゼブラフィッシュのZgc:173443タンパク質(Ac#:A8E4Z1)。サケ白血球,ニワトリ白血球およびタラ白血球のロイコレクチンの配列は部分的なものだけであり、完全長の配列ではないことに注意されたい。これらの配列の完全長版は、おそらく、ヒト白血球(a)およびサケ胚(b)のロイコレクチンで見出される全体の構造に似ているだろう。さらに、ロイコレクチンのパターンは、5個の連続的なTECPRドメインを有し、トゥンガラガエル配列までは保持されているが、4個のTECPRドメインだけしか見出されないゼブラフィッシュ配列には保持されていない。
【0019】
(B)は、5個のTECPRドメインを有するロイコレクチンの図解を示す。TECPRドメインは、2個のβシートを作り出す4個のβ鎖からなる可能性が最も高い。3個のジスルフィド結合があり:示されているように、1つはTECPR#4の内部に、他の2つは接続するループにある。一般に、糖認識部位は、このようなレクチンのTECPRドメイン間の領域で見出される。最も密接にロイコレクチンに関与するレクチンは、主にN−アセチルグルコサミンに対して公知の糖特異性を有する。ロイコレクチンに対する推定される糖認識特異性はまだ確立されていない。
【図5】図5は、白血球における卵黄周囲のレクチンの存在を示す。pH範囲が4〜7にわたるIPGストリップを一次元に用い、一方12.5%のポリアクリルアミドゲルを二次元電気泳動の間、利用した。
【0020】
A:サケ白血球において、抗レクチンポリクローナル抗体に陽性反応を示すスポットは2個しかなかった。これらの分子量は約26kDaであり、pIは約6.5であった。ロイコレクチンは他の種の白血球調製物においても同定することができる。
【0021】
B:サケの調製物において、我々は多くの免疫反応スポット(1〜8の番号をつけた)を見出し、約30kDaの分子量を有し、pIのpH範囲が4.9〜6.5であった。
【図6A】
【図6B】図6は、骨髄細胞系列、特にゼブラフィッシュの単球−マクロファージ系列におけるロイコレクチンの共発現を示す。(A)レクチンおよびL−プラスチンの遺伝子発現プロフィール。ゼブラフィッシュは、我々がサケで発見したのと同じレクチンを発現することがわかった。フルオレセインで標識したレクチンのmRNAプローブを、L−プラスチンmRNAプローブ用のDIG標識プローブ(単球−マクロファージ系列の特異的なマーカーである)とともに用いた。二重標識インシテュハイブリダイゼーションによって、ゼブラフィッシュの胚形成の間、同じ細胞内でレクチンおよびL−プラスチンのmRNAが共発現することがわかる。受精後(pf)の時間で示す胚の齢を左下角に示す。より明るいシグナルはL−プラスチン遺伝子の発現を示し;より暗いシグナルはレクチンの発現を示す。
【0022】
パネルA(側面図)は、同じ細胞におけるレクチンおよびL−プラスチンのmRNAの共発現を示し、これは卵黄の前面および側面における分散した軸および沿軸の集団[dispersed axial and paraxial population]を形成する。より高い倍率(A2)によって、これら細胞の典型的な白血球の形態が明らかになる。A1のデータは、前側板中胚葉(矢印)における細胞の左右相称の帯でこれらの2つの遺伝子の発現を示す。パネルBによって、21時間での発見が同じであることが明らかにされる。
【0023】
パネルC(24hpf)は、後中間細胞集団(上方2つの矢印),前面の静脈領域(下方矢印),胚体および胚の頭に沿って分散した相当数の細胞におけるL−プラスチンおよびレクチンの遺伝子の共発現を示す。24hpf(C2)までに、大多数の細胞はこれら2個の遺伝子を共発現するが(矢印を参照)、どちらか一方の遺伝子だけを発現するように見える細胞も多い。C3の矢印は、L−プラスチンmRNAのみを発現している細胞を示す。
【0024】
(B)レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAの細胞の共局在化。ゼブラフィッシュ胚(22hpf)を、レクチンタンパク質(より暗いシグナル)およびL−プラスチンmRNA(より明るいシグナル)のインシテュハイブリダイゼーションアッセイとともに複合免疫組織化学によって分析した。インシテュハイブリダイゼーションは、ウサギ抗レクチンポリクローナル抗体を用いる免疫組織化学と組み合わせて、L−プラスチン遺伝子に特異的なDIG標識cRNAを使用した。
【0025】
パネルA:胚の正面像。矢印は、レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAが共通に発現していることによって示される一群の細胞を指している。A1:同じ細胞におけるL−プラスチン遺伝子およびレクチンタンパク質の共発現を示す集団のより高い倍率(黒い矢印)。いくつかの細胞はサイズが小さく、分節核を有するもう1つの細胞の次に成熟したリンパ球と似ている丸い形状を有し、成熟した好中球の典型的な形態学的特徴を示すことに言及しておく。パネルB,C,D,Eは、レクチンタンパク質およびL−プラスチンmRNAを共発現するゼブラフィッシュ胚全体にわたって分散した細胞集団を示す(矢印)。
【図7】図7は、ロイコレクチンのファミリーを示す。ヒト,サケ,ニワトリおよびタラの入手可能なロイコレクチンタンパク質を集めた(weblogoアライメント)。ある位置のAA残基の完全な一致を大きな文字で表すとともに、一致の程度がより低い場合、より小さいサイズで示す。文字が複数ある場合は変異を示す。
【図8】図8は、カラムクロマトグラフィによる組換えロイコレクチン精製後、クマシー染色した画分を示す。レーンは、1−上清,2−素通り画分,3−洗浄,4−F1,5−F2,6−F3とF4とF5との混合,7−F6および8−STDである。
【図9A】
【図9B−1】
【図9B−2】図9は、サケのロイコレクチンの遺伝子配列を同定および検証するための実験(A)を示す。
【0026】
パネルAの、nr6フィルタで同定した2個の陽性二重スポットは、それぞれプレート番号257および176に正確に対応するパネル#5および#2,L-7クローンおよびF-7クローンのウェル座標を示す。
【0027】
パネルBの、nr3フィルタで同定した1個の陽性二重スポットは、プレート番号144に正確に対応するパネル#6(プレート位置決めシートに基づく),A−12クローンのウェル座標を示す。
【0028】
(B)は、ロイコレクチン遺伝子(2323bp)の推定ゲノム配列を示す。5個のエキソンの位置が示され、その結果、イントロンの位置も示される。この遺伝子の転写開始位置(BDGP Neural Network Promoter Predictionに基づき予測したプロモータは「P」,予測した転写開始は「ST」,TATAボックスは「T」)およびこの遺伝子産物中のポリアデニル化を特定する配列の位置(「PA」)を示す。
【図10A】
【図10B】
【図10C−1】
【図10C−2】図10(A)は、BLASTPヒットの位置(表を参照)が矢印で示されるヒト染色体を表す地図を示す。(B)は、地図を対象とする凡例:BLASTPヒット(バー)の位置およびクエリ配列(ヒトのロイコレクチン)の全対象の視覚化を示す。一見したところ、発見された配列がロイコレクチン配列の全部に及んでいるが、このデータはこれがロイコレクチン遺伝子であることを明確には示していない。(C)は、クエリ配列としてのヒトのロイコレクチンを用いたヒトゲノムにおけるBLASTPヒットおよびそれらの位置を示す表を示す。
【図11】図11は、ヒト上皮におけるサケのロイコレクチンの効果を示す。対照培養=A;ロイコレクチンに曝された培養=B。矢印は、ロイコレクチンに曝露後に基底層のみに現れる大型細胞を指す。
【図12】図12は、白血球におけるロイコレクチンタンパク質の発現を示す。パネルAは、サケ白血球から精製したタンパク質(〜2μg)の12%の二次元PAGEを示す。パネルBは、Lymphoprep(商標)のヒト白血球から精製したタンパク質(0.8μg)の15%の二次元PAGEを示す。膜をサケLLに対するポリクローナル一次抗体で処理した後、ヤギ抗ウサギ抗体で処理し、ECL改良検出系によって視覚化した。
【図13】図13は、ノーザンブロットで同定したサケのロイコレクチン転写物を示す。パネルAは、ホルムアルデヒド存在下1.2%のアガロースで分画した大西洋サケ胚の全RNA(370dd)およびLLに特異的なアンチセンスDIG標識リボプローブ(720bp)を用いて探索したことを示す。パネルBは、(磁気ポリTビーズによって精製した)mRNAのノーザンブロット分析を示す。ハイブリダイゼーションは、LLを部分的にコードする配列から生成したDIG標識リボプローブを使用した。パネルCは、センスDIG標識リボプローブを用いてニトロセルロース膜(B)を探索したことを示す。灰色の矢印は転写物の存在を示し;黒い矢印は転写物がないことを指す。DIG−RNAマーカーI(0.3〜6.9kb)(ロシュ社)を用いた。
【図14】図14は、関連するβ−プロペラタンパク質とLLとのClustal Wアライメントを示す。
【図15】図15は、LLの三次元モデルを示す。左パネルは、タキプレウス・トリデンタタス[Tachypleus tridentatus]のタキレクチン[Tachylectin]1の構造(ビーゼルら,1999年,EMBO J.,18巻,2313〜2322頁)に基づくロイコレクチンの5枚羽プロペラ三次元モデルを三次元表示した図を2個示す。このモデルは、PyMolv0.99ソフトウェアを用いて作成した。エピトープペプチドの残基を、タンパク質本体において細い黒い線で描く。
【0029】
また、ビーゼルら(1999年)によって予測された5個の炭化水素結合部位の位置を、薄いが中空ではない褐色のヘキソース構造として示す。右パネルは、コンセンサスのプロペラドメインと比較した、LL(上)およびFEL(下)の予測されるプロペラドメインを示す。
【図16】図16は、ゼブラフィッシュの完全長ロイコレクチン(LL)cDNA配列の増幅を示す。パネルAは、いくつかのプライマー対を用いて得られ、RT−PCRによってクローン化した単位複製配列を示す。逆転写に用いたmRNAは24hpfの胚から抽出された。DNAマーカー:100bpラダー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)。パネルBは、5'RACE PCRが2つの異なった産物、それぞれ〜500bpおよび〜400bp(遺伝子特異的リバースプライマーおよびGeneRacerフォワードネスト化プライマーを用いてPCR増幅の第二ラウンドの後に生成した)の増幅をもたらしたことを示す。mRNAは、示される発生段階から回収した。パネルCは、ゼブラフィッシュLL完全長cDNA配列が765ntのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む1240ntであることを示す。このORFは、正確な縮尺で描かれ、黒いボックスとして示される5個のエキソンを含む。5'UTR領域を実線で示す。5'UTRヌクレオチド配列を示す。+1の位置の翻訳開始部位ATGおよび+94の位置の可能性のある二番目のATGを強調した。パネルDは、様々な発生段階でトランケートされたLLの発現を示す。パネルEは、サケ配列およびゼブラフィッシュ配列が3'UTR内でさえ高度に保存されていることを示す。
【図17】図17は、サケのロイコレクチンのエキソンとドメインと配列の変異の概要を提供する。可変AA残基,システイン残基(C)およびTECPRドメインの位置(SMARTデータベースから)に関して、種々のロイコレクチンの配列データを示す。ロイコレクチン配列は、ボックスとして印した7個の位置しか異なっていない。このような可変残基の5個はTECPRドメインの中にある一方、2個はC末端の近くで発見された。ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のいずれかにも互換性がない変異は、ロイコレクチン-3として下に示し、2個の位置しかここで定義していない(#2および#245)。他の位置は印されていないが、これらの位置の大部分が他のロイコレクチンとほとんど同一であることがこのデータからわかる。
【0030】
魚卵レクチン(FEL)の場合のように、LLにおける3個のジスルフィド架橋は、最初と最後のシステインを結合すると予測される一方、二番目と最後から二番目のシステインは第二の架橋を形成し、エキソン3の2個の(真中の)システインは最後のジスルフィド架橋をそれぞれ形成する。これらのシステインは灰色で印され、下線が引かれている。ジスルフィド架橋に関与しないプロペプチド中の1個のシステインは、エキソン1にある。最初の3個のドメイン間で相互接続するループがないこと、および最後の2個のTECPRドメインを相互接続する2個のループにおいて変異がないことに注意されたい。3個のTECPRドメインを単一のエキソン(2および3)がコードする一方、2個のドメインは2個のエキソンにわたる。エキソンおよびドメインの末端にはっきりした相関があることは、注目に値する。5個のドメインのうち4個において、Trp残基がこのドメインの三番目のAAを占める一方、一番目に予測されたTECPRドメインではWが最初の残基である。最後に、星印は、ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のいずれかまたは両方で変異AAが見出された残基を示す。
【図18】図18は、ウェスタンブロットで検出された、ニジマス(Oncorhyncus mykiss)胚の孵化体液[hatching fluid]におけるLLタンパク質を示す。MW標準を左に示す(バイオラッド社 161-0373)。ニジマスの孵化体液タンパク質(レーン1)およびアフィニティクロマトグラフィによって調製されたサケのロイコレクチンタンパク質(レーン2)を、抗ロイコレクチン抗体を用いて探索した。〜26kDaのタンパク質が両方のケースで見出され、LLのMwと一致する。
【図19】図19A(左パネル)は、タラ孵化体液で見出されたタンパク質の中の、タラのロイコレクチンを示す。タラ孵化体液を15%のSDS PAGEによって分析し、その組成のタンパク質を銀染色によって視覚化した。レーン1:タンパク質マーカー(バイオラッド社のDual color 161-0374)。レーン2:孵化体液タンパク質。右パネルは、15%のSDS PAGE分析によって分離し、ニトロセルロース膜上にブロットし、適切に希釈したアフィニティ精製ウサギポリクローナル抗ロイコレクチンIgG抗体によって探索したタラ孵化体液を示す。レーン1:タンパク質マーカー(バイオラッド社のDual color 161-0374)。レーン2:孵化体液のアリコート。ロイコレクチンの位置を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギ二次抗体を用い、ECL検出系によって強化して、正確に示した。約26kDaの主要な免疫反応性のタンパク質を検出した。Bは、対応するSDS PAGEおよびオイコプレウラ・ディオイカ[Oikopleura dioica;ワカレオタマボヤ]の孵化体液タンパク質の膜を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、そのタンパク質は魚から精製し同定した(実施例を参照)。このタンパク質は255のアミノ酸を有する。これは、レクチンのプロペプチド型であって、19アミノ酸のN末端ペプチドを含み、このペプチドによって、これが後の分泌(すなわち囲卵腔への分泌)の際リソソームを標的としていることが示唆されている。
【0032】
レクチンのアミノ酸配列によって、エピトープに特異的な抗体の開発が可能となり、このことによって、このタンパク質の多く(2〜8)の見かけのイソ型(図5)が同定できた。少なくとも2個のmRNAがサケから単離され(実施例11)、ポリペプチドレベルでたった7個の変化をもたらしただけの小さな配列の差異を含む(図17)。このタンパク質のトランケート型がサケ白血球(配列番号2を参照)およびゼブラフィッシュからも同定され、分泌型(上述した。sLLと称する)および、N末端から最初の32アミノ酸がないトランケート型(実施例9を参照。tLLと称する)が同定された。
【0033】
このタンパク質はいずれの公知たんぱく質ともほとんど類似性がなく、任意の公知タンパク質との全般的な類似性は50%未満である。タキロレクチン[tachylolectin]と、小さいドメインにおいてある類似性が観察された。
【0034】
関連するタンパク質が様々な動物において同定され、その動物としては、ゼブラフィッシュ,タラ,ニジマス,オイコプレウラ・ディオイカが挙げられ、ニワトリおよびヒトも挙げられる。これらのcDNAが同定され(実施例を参照)、極めて高度に保存されているのがわかった。実験された種においてコードされたタンパク質の相違は4%未満である。これは、これらのタンパク質にとって必須機能であることを暗示している。
【0035】
今日まで、いずれの生物においても、類似の配列を有する遺伝子は報告されていない。個々のエキソンまたはイントロンに対するプローブを用いて、他に報告された2個のタンパク質の一部に対するエキソン1個の類似性はごくわずかであることが確証され、2個のタンパク質のいずれも本明細書に記載の分子実体とはまったく異なるものである。
【0036】
重要なことは、この新規遺伝子はヒトゲノムの公開された配列からは発見できないという事実にもかかわらず、この遺伝子はヒト白血球で特異的に発現しているということである。この遺伝子の極めて短い断片のみを検出することは可能であるが、ヒト染色体の複数にわたって分散している(実施例を参照)。この難問の解明は、今のところはすぐ手の届くところにはない。
【0037】
最後に、この分子の実体が細胞によって分泌され、このタンパク質のプロ−ペプチド型と一致することを突き止めた。この遺伝子産物の野生型と組換え型との両方を単離した。
【0038】
驚くべきことに、これらのタンパク質は、自己免疫疾患および炎症性疾患(特に皮膚の)ならびに他の皮膚疾患に対して顕著な効果を有することを見出した。理論に拘泥するつもりはないが、ロイコレクチンは、ヒトの身体の正常かつ固有の治癒過程を発動する特異的な受容体に結合すると思われる。観察された効果から、我々は、ロイコレクチンが細胞性免疫の正常な過程に関与することを提唱する。ロイコレクチンは多くの病態で存在しないように見えるため、その医薬的な導入によって、様々な抗原への曝露(外来細胞(微生物,寄生虫)の存在および「自己」の変性細胞の存在)に直面した際に、免疫系の他の防御反応の正常な機能が引き起こされ、これはロイコレクチンを自己免疫疾患の病因と結びつけることができる、すなわち、このような疾患は充分なロイコレクチンが存在しないことによって引き起こされるかもしれない。
【0039】
ヒト白血球は、極度に保存されたロイコレクチンタンパク質を保持し発現する。今まで、これらタンパク質は、血液細胞において知られていないタンパク質であった。ロイコレクチンはタンパク質のタキロレクチンファミリーの新しい一員であると思われる。
【0040】
本発明の第一の態様は、配列番号1〜8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは、該配列と少なくとも50%同一である配列、または、これら配列のいずれかのうちの一部を含むポリペプチドを提供することにある。
【0041】
本明細書で言及する「ポリペプチド」とは、好ましくは、50,100,150,200もしくは250残基を超え、および/または、500,400,300,200もしくは100残基未満、あるいは、それらから選択される範囲を有する分子である。本明細書で言及する「一部[portion]」とは、それが由来する配列の、少なくとも30,40,50,60,70,80,90,100,150,200またはそれ以上のアミノ酸を含むことが好ましい。該一部は、この配列の中央部分またはN末端部分またはC末端部分から得られる。好ましくは、該一部は、該ポリペプチドのN末端、例えば該ポリペプチドの最初の50,100または150残基から得られる。好ましい態様として、該ポリペプチドをトランケートしたものが挙げられ、例えば、天然に存在するバリアントにない単一のペプチドか部分を取り除いたものである。好ましくは、N末端でトランケートしたもの、および、トランケートして1〜50残基長、例えば1〜10,20,30もしくは40、または、5〜40残基長(例えば10〜35残基長)のものである。
【0042】
好ましくは、該配列は、該配列と比較される配列と少なくとも55,60,65,70,75,80,85,90,95,96,97,98または99%同一である。
【0043】
配列同一性は、例えば、様々なパムファクタ[pamfactor](ギャップ・クリエーション・ペナルティを12.0に、かつギャップ・エクステンション・ペナルティを4.0に設定)および2アミノ酸のウィンドウを有するFASTA pep−cmpを用いるSWISS−PROTタンパク質配列データバンクを使用することによって決定してもよい。好ましくは、該比較は、該配列の完全長にわたって実行されるが、比較のウィンドウがより小さい、例えば200,100または50未満の隣接するアミノ酸にわたって実行してもよい。
【0044】
好ましくは、ポリペプチドに関するこのような配列同一性は、列挙する配列番号に記載されたポリペプチドと機能的に等価である。このような機能的に等価なポリペプチドは、後述する誘導体の形態を採ってもよい。同様に、配列番号に記載の配列を有するポリペプチドは、下記のポリペプチドの配列に影響を及ぼさずに修飾されてもよい。
【0045】
さらに、本明細書で言及する「(いくつかの)一部[portions]」は機能的に等価であってもよい。好ましくは、これら部分は、本明細書で言及する同一性(比較可能な領域に対して)条件を満足する。
【0046】
本発明で言及する「機能的に等価」を達成することとは、ポリペプチドが、医療的機能を実行する際、親分子(すなわち、アミノ酸置換などによって、それが由来する分子)に対していくらか効果が低い場合もあるが、好ましくは同程度またはそれ以上の効果を有する。したがって、機能的に等価なことは、本明細書で言及する病気を治療する(すなわち、患者の1以上の症状(例えば、後述する皮膚の炎症や外観)を軽減する)のに有効なポリペプチドに関連する。これは定性的または定量的な方法で、ポリペプチド誘導体が由来するポリペプチドに対するポリペプチド誘導体の効果を比較することによって(例えば、実施例で言及するインビボ分析を実行することによって)試験してもよい。定量的な結果がもたされ得る場合、この誘導体は親ポリペプチドの少なくとも30,50,70または90%有効である。あるいは、例えば、樹枝状細胞への結合の分析やインビトロの細胞培養における効果の分析によって、インビトロの試験を実施してもよい。
【0047】
天然に存在するタンパク質に関するか、または由来する、機能的に等価なタンパク質は、単一のまたは複数のアミノ酸置換,付加および/または欠失(これらが上記配列同一性の要件を満たすという条件で)により野生型のアミノ酸配列を修飾することによって、しかし該分子の機能を破壊しないことによって、得られる。好ましくは、野生型の配列は20未満の置換,付加または欠失を有し、例えば、このような修飾が10,5,4,3,2未満または1である。このようなタンパク質は、1以上の塩基の適切な置換,付加および/または欠失によって生成される「機能的に等価な核酸分子」によってコードされている。
【0048】
好ましい機能的に等価なものは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の融合タンパク質あるいはポリペプチドが生成する「付加」バリアントであり、親ポリペプチドに融合した付加タンパク質またはポリペプチドを含む。
【0049】
とりわけ好ましい機能的に等価なバリアントは、天然の生物学的なバリアント(例えば、対立遺伝子多型や、種の中または異なる属(例えば植物,動物または細菌)における地理的変異)および公知技術を用いて調製された誘導体である。例えば、機能的に等価なタンパク質をコードする核酸分子は、化学合成によって、あるいは、欠失やランダム変異導入法を含む部位特異的突然変異誘発法もしくは核酸分子の酵素的切断および/またはライゲーションという公知技術を用いた組換え型で生成してもよい。
【0050】
本発明はまた、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も提供する。
【0051】
本発明の好ましい態様は、このように、配列番号9〜15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、該配列と少なくとも50%同一である配列、もしくは、室温での6×SSC/50%ホルムアミドというストリンジェントではない結合条件下で該配列とハイブリダイゼーションし、例えば65℃での2×SSC等の高いストリンジェントな洗浄条件下で得られる配列(ここでSSC=0.15MのNaCl,0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.2)、または、上記配列のいずれかと相補的な配列、あるいは、それらのうちの一部を含む核酸分子を提供する。好ましくは、該核酸分子は上記ポリペプチドをコードする。
【0052】
本明細書で言及する「核酸分子」は、好ましくは、150,300,450,600もしくは750塩基を超え、および/または、1500,1200,900,600もしくは300塩基未満、あるいは、それらから選択される範囲を有する分子である。上記の「(いくつかの)一部」は、好ましくは、それが由来する配列の、少なくとも90,120,150,180,210,240,270,300,450または600ヌクレオチド塩基を含む。好ましくは、該(いくつかの)一部は、上述したN末端,中央またはC末端のペプチドをコードする。ポリペプチドに関して上述したように、好ましい態様において、列挙したポリペプチドのN末端から残基を取り除くことによって得られたトランケートが意図される。コードするヌクレオチド配列において、本明細書に記載の配列に関して、該トランケートは好ましくは、1〜150塩基長、例えば1〜30,60,90もしくは120塩基長、または13〜120塩基長、例えば28〜105塩基長から得られたものである。
【0053】
好ましくは、該配列は、それが比較される配列と少なくとも55,60,65,70,75,80,85,90,95,96,97,98または99%同一である。
【0054】
配列同一性は、例えば、初期設定値および様々なパムファクタを有するGCGパッケージを用いたFASTA検索によって決定してもよく、6ヌクレオチドのウィンドウを有し、ギャップ・クリエーション・ペナルティを12.0に、かつ、ギャップ・エクステンション・ペナルティを4.0に設定する。
【0055】
好ましくは、このように関連した配列同一性または核酸分子をハイブリダイゼーションする配列同一性は、列挙した配列番号に記載の核酸分子と機能的に等価である。このように機能的に等価な核酸分子は、下記の誘導体の形態を採ることができ、そして、上記試験に照らして機能的に等価なものであると考えられるポリペプチドをそれらがコードする場合、機能的に等価であると考えられる。好ましい機能的に等価なものは、好ましい上記ポリペプチドをコードするもの、例えば、本明細書で言及する特異的な分子とは異なった属または種において見出されたポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0056】
さらに、本明細書で記載する「(いくつかの)一部」は機能的に等価であってもよい。好ましくは、これらの部分は、本明細書で言及する同一性(比較可能な領域に対して)条件またはハイブリダイゼーション条件を満たす。
【0057】
本発明によれば核酸分子は一本鎖DNAもしくは二本鎖DNA,cDNAまたはRNA、好ましくはDNAであり、縮退も含み、上記配列と実質的に同一およびハイブリダイゼーションしてもよい。しかしながら、理想的には、該分子はDNAまたはcDNAである。
【0058】
上記ポリペプチドとしては、該ポリペプチドの配列に影響を及ぼさずに修飾したものが挙げられ、例えば、脱グルコシル化やグルコシル化を含む化学修飾によって得られたものである。このようなポリペプチドは、機能性に影響を及ぼさずに、上記ポリペプチドの合成後/単離後修飾(例えば、特定の残基における若干のグリコシル化やメチル化など)をすることによって調製することができる。
【0059】
本発明のポリペプチドはまた、該ポリペプチドの機能的特徴は保持されるが異なった構造(例えば非ペプチド構造)を背景として存在する誘導体であると考えることができるペプチドミメティクスの形態も採ることができる。このようなペプチドミメティクスは成功裏に開発され、他の特定の医学的応用に使用されている。
【0060】
ペプチドミメティクス、特に非ペプチド性分子は、様々な方法によって生成してもよく、該方法としては、立体配座をベースとした薬物設計,スクリーニング,集束ライブラリ設計[focused library design]および古典的な医薬品化学が挙げられる。非天然アミノ酸のオリゴマや他の有機構成要素を用いてもよいのみならず、該ペプチドの三次元配座の同じ特性を模倣する分子静電表面を提供する構造要素および配座を含む炭水化物,複素環式化合物もしくは大環状化合物または任意の有機分子もまた、当該分野で公知の方法によって用いてもよい。
【0061】
このように、ペプチドミメティクスは、ペプチド主鎖とはほとんど、またはまったく似ていなくてもよい。ペプチドミメティクスは、すべて合成の非ペプチド型(例えば、適切な置換基を有する炭水化物主鎖に基づく)を含んでもよく、例えば、1以上のアミノ酸を誘導体化するか、または、1以上のアミノ酸を代わりとなる非ペプチド化合物に置換することによって、それがベースとなるペプチドの1以上の要素を保持してもよい。ペプチド様鋳型として、擬ペプチドおよび環状ペプチドが挙げられる。ペプチドの機能にとって冗長であると考えられた構造要素は、足場機能のみを保持するために最小化してもよく、必要に応じて取り除いてもよい。
【0062】
ペプチドミメティクスが1以上のペプチド要素、すなわち1を超えるアミノ酸を保持する場合、このようなアミノ酸を、非標準的なものまたはその構造類似体と置換してもよい。配列に保持されるアミノ酸も、本発明のポリペプチドの機能特性が保持される限り、誘導体化しても、修飾(例えば、標識化,グリコシル化またはメチル化)してもよい。ペプチドミメティクスは、特定のポリペプチド配列「から導き出せる」こととして言及される。これによって、それがその機能にとって重要であるペプチドの構造特徴を保持するように、ペプチドミメティクスは定義されたポリペプチド配列を参照して設計されることを意味する。これは、ポリペプチドの特定の側鎖であっても、構造物の潜在的な水素結合であってもよい。このような特徴は非ペプチド化合物もしくは1以上のアミノ酸残基によって提供されてもよく、ポリペプチドの該アミノ酸残基を連結する結合は、安定性やプロテアーゼ抵抗性などのようなポリペプチドの特定の機能を向上するために修飾されてもよい。その一方で、その機能に重要なポリペプチドの構造特徴は保持する。
【0063】
用いてもよい、非標準的なアミノ酸またはアミノ酸の構造類似体の例は、Dアミノ酸,アミド等量式(例えば、N−メチルアミド,レトロ−インバースアミド,チオアミド,チオエステル,ホスホナート,ケトメチレン,ヒドロキシメチレン,フルオロビニル,(E)−ビニル,メチレンアミノ,メチレンチオまたはアルカンなど),L−Nメチルアミノ酸,D−αメチルアミノ酸,D−N−メチルアミノ酸である。非従来的なアミノ酸の例を表1にリストアップする。
【0064】
【表1−1】
【0065】
【表1−2】
【0066】
【表1−3】
【0067】
用いてもよい非標準的なアミノ酸として、配座固定された類似体が挙げられ、例えば、Tic(Fを置換するため),Aib(Aを置換するため)またはピペコリン酸(Proを置換するため)などである。
【0068】
上述したポリペプチドおよび核酸分子として、例えば親油性,細胞輸送の補助,溶解性および/または安定性を向上させるために、例えば標的のための基または官能基を付加することによって、例えば薬学的応用(後述する)においてそれらの使用を容易にするように修飾した誘導体も挙げられる。このように、オリゴ糖,脂肪酸,脂肪族アルコール,アミノ酸,ペプチドまたはポリペプチドは、上述したポリペプチドまたは核酸分子に接合してもよい。核酸分子は、後述するように、ウイルスのキャリア内に存在させてもよい。
【0069】
このポリペプチドは、投与された時点で付加成分が切断されることによって(例えば、エステラーゼの働きによって除去されてもよい、エステル化で付加された置換基が切断されることによって)除去され得るような、「プロドラッグ」または「プロペプチド」の形態の誘導体を包含する。このようなプロドラッグとして、例えば、タンパク質分解によって切断され、興味のあるポリペプチドを産生する、天然に存在するタンパク質の野生型前駆体が挙げられる。このような前駆体は、前駆体の形態では活性がないが、タンパク分解性切断により活性化されてもよい。従って、本発明の核酸分子は同様に、このようなプロドラッグまたは前駆体をコードする分子を包含する。上記の修飾されたポリペプチドまたは核酸分子は、それらが同じか類似の医療効果を有するかどうか判定することによって、非修飾の分子と関連がある機能的な活性を保持することを確認するために試験してもよい。
【0070】
上記の核酸分子は、発現制御配列に動作可能なように連結していてもよく、すなわち、このような組換えDNA分子を含む、組換えDNAのクローニング媒体またはベクターであってもよい。これによって、遺伝子産物としての本発明のポリペプチドの細胞内発現が可能となり、該ポリペプチドは興味のある細胞に導入された遺伝子によって発現される。遺伝子は、興味のある細胞において活性なプロモータから発現され、ゲノムに取り込まれるか、または、独立複製もしくは一過性のトランスフェクション/発現のために、線状DNAまたは環状DNAベクターのいずれの形態において挿入されてもよい。好適な形質転換技術またはトランスフェクション技術は、文献によく記載されている。あるいは、裸のDNA分子が、本願明細書に記載された使用のための細胞に直接導入してもよい。
【0071】
適切な発現ベクターとしては、例えば、後述する本発明の方法の実施に必要な核酸分子とともに適合するリーディングフレームに連結した翻訳制御要素(例えば、開始コドンおよび終止コドン,リボゾーム結合部位)および転写制御要素(例えば、プロモータ−オペレータドメイン,終結終止配列[termination stop sequence])などのような適切な制御配列が挙げられる。適切なベクターとしては、プラスミドおよびウイルス(バクテリオファージおよび真核生物ウイルスを含む)が挙げられる。好適なウイルスベクターとしては、バキュロウイルス、またアデノウイルス,アデノ随伴ウイルス,ヘルペスおよびワクシニア/ポックスウイルスも挙げられる。他の多くのウイルスベクターは、当該分野において記載がある。好適なベクターとしては、細菌および哺乳動物の発現ベクターであるpGEX−KG,pEF−neoおよびpEF−HAが挙げられる。核酸分子は、発現の際に融合タンパク質を産生するため、付加的なポリペプチド(例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)をコードするDNAと都合よく融合してもよい。
【0072】
このように、さらなる態様から見ると、本発明は、上記の核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。
【0073】
本発明の他の態様としては、核酸であるベクターに、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入することを含む、本発明に従って組換え核酸分子を調製する方法が挙げられる。
【0074】
後述する方法において、細胞に本発明の核酸分子をトランスフェクションすることによって、ポリペプチドを細胞に投与してもよい。上記のように、本発明は、このように、本明細書に記載された本発明のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子および本明細書で記載の方法におけるその使用にまで拡張する。好ましくは、該核酸分子は、ベクター、例えば発現ベクターに含まれる。
【0075】
本発明の核酸分子(好ましくはベクターに含まれる)は、適切な任意の手段によって細胞に導入してもよい。好適な形質転換技術またはトランスフェクション技術は文献によく記載されている。様々な技術は公知であり、このようなベクターを発現用の原核細胞または真核細胞に導入するために用いてもよい。この目的に好適な宿主細胞としては、昆虫細胞株,真核細胞株またはBL21/DE3菌株などのE.コリが挙げられる。本発明はまた、核酸分子、特に上記のベクターを含む、形質転換またはトランスフェクションされた原核生物または真核生物の宿主細胞までにも拡張される。
【0076】
本発明のさらなる態様は、上記のように定義された本発明のポリペプチドを調製する方法を提供するものであり、該方法は、該ポリペプチドが発現する条件下で、上記のように定義された核酸分子を含む宿主細胞を培養すること、およびこのように産生された該分子を回収することを含む。発現されたポリペプチドは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0077】
本発明はまた、上記の核酸分子にコードされたポリペプチドまで拡張される。これは、上記の宿主細胞の発現によって産生されたものであってもよい。
【0078】
本発明のポリペプチドを含むが、本発明のポリペプチドを直接導入することによって、または、コードする核酸材料を発現することによって、野生型細胞に対して修飾されている細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。好ましくは、該ポリペプチドまたは該核酸分子は、該細胞に内在しない、すなわち、該細胞は外因性のポリペプチドまたは核酸材料を含むために修飾される。
【0079】
本発明はまた、上記のように定義されたポリペプチドに対して特異的に配向する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)およびその抗原結合断片(例えば、F(ab)2,FabおよびFv断片、すなわち、該抗体の「可変」領域の断片であって、抗原結合部位を含む)にも拡張される。
【0080】
このような抗体は、下記の方法、特に記載の治療法に用いられてもよい。
【0081】
本明細書に記載の抗体は、本発明のポリペプチドの存在または量を同定するためにインビトロで用いてもよく、異常レベルの該ポリペプチド(すなわち、正常レベルに対して差異のある状態であり、例えば、該ポリペプチドが上昇または低下したレベル)に関連する、本明細書に記載の疾患または皮膚損傷を同定するための診断に用いてもよい。
【0082】
このように、本発明のさらなる態様は、検体中の本発明のポリペプチドもしくはその一部の存在または量を測定する方法を提供するものであり、本明細書に記載の抗体を該検体と接触させ、抗体の結合の程度が該ポリペプチドまたはその一部の存在および量を示す。
【0083】
評価される検体は、都合の良い任意の検体、例えば、血液もしくは組織検体または非生体検体でもあってもよい。好ましくは、検体は、本明細書に記載の動物、好ましくはヒトに由来する。
【0084】
本発明はさらに、動物における本明細書に記載の疾患または皮膚損傷を診断する方法を提供するものであって、該動物由来の検体中の本明細書に記載のポリペプチドの存在または量を判定する段階を少なくとも含み、該存在または該量は該疾患または該皮膚損傷の兆候を示す。ポリペプチドは、例えば、上記の抗体を用いることによって検出されてもよい。検体および動物は、好ましくは本明細書に記載のものである。該ポリペプチドの量は、好ましくは、正常レベルと比較して低下している。診断法は、疾患または皮膚損傷を有する調査中の対象と比較して正常な対象の標準的なテーブルとの比較により達成してもよい。
【0085】
下記の本発明の組成物または使用に用いられるポリペプチドまたは核酸分子は、天然に存在する供給源から入手または由来してもよく、全部または一部を合成して生成してもよい。
【0086】
都合が良いことに、ポリペプチドおよび核酸分子は、実施例に記載のプロトコルに従って単離される。このような方法およびこのような方法の産物は本発明のさらなる態様を形成する。
【0087】
このように、本発明のさらなる態様は、本明細書に記載のポリペプチドを(例えば、サケの)孵化体液から単離する方法を提供するものであって、少なくとも下記段階を含む:
a) 最小限の水量(例えば、卵の量と等しいかより少ない)に卵を懸濁すること;
b) 該卵に同期かつ早急の孵化を誘発すること(好ましくは、95%を超える胚が2時間未満に孵化を完了するように);
c) 孵化体液を得るため孵化された卵を濾過すること;
d) 卵の殻の断片を解離させるため該孵化体液に固体尿素を任意に添加すること、および、該体液を低速で遠心分離すること;
e) 例えば、スーパーデックス16/60カラムやバイオテックス100ウルトラフィルタを用いて、一次の排除クロマトグラフィ段階を実施すること;
f) 例えば、スーパーデックス16/60カラムを用いて二次の排除クロマトグラフィ段階を任意に実施すること;ならびに
g) 例えば、ベンズアミジン−セファロースカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼなどのような、混入したタンパク質を任意に除去すること。
【0088】
本発明はさらに、上記の方法によって調製されたポリペプチドまで拡張される。
【0089】
本発明のポリペプチドが白血球から得られる場合、それは非修飾型で得られる。サケ孵化体液から得られたポリペプチドは修飾(グリコシル化および/またはリン酸化によって)されるが、両方の形態は、本明細書に記載の方法において等しく有効である。
【0090】
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸分子には、好ましくは、単離手順や合成調製において用いられた材料または原物質に由来するいかなるコンタミ成分も実質的にない。特に好ましくは、この化合物は、w/w(乾燥重量)として評価した際、50または60%を超える程度、例えば>70,80または90%の純度、好ましくは95または99%を超える程度の純度に精製される。このような純度レベルは、興味のある特定の分子に対応するものであるが、その分解産物を含む。必要に応じて、より低い純度、例えば、興味のある分子の1,2,5または10%を超えて、例えば20または30%を超えて含むものに対して、強化調製[enriched preparation]を用いてもよい。本発明のポリペプチドは、例えば、クロマトグラフィ(例えば、HPLC,サイズ排除,イオン交換,アフィニティ,疎水的相互作用,逆相)やキャピラリー電気泳動法によって精製してもよい。
【0091】
本発明のポリペプチドは、例えば、合成的に生成されたより小さいペプチドとのライゲーションによって、またはより都合良く、上記ペプチドをコードする核酸分子の組換え発現によって、合成的に生成してもよい。
【0092】
本発明の核酸分子は、例えば適切なcDNAライブラリから本明細書に記載の核酸配列を増幅することによって、合成的に生成してもよい。
【0093】
細胞の免疫機能に作用するため、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子または抗体をインビトロで(例えば、細胞培養や器官培養で)用いてもよい。
【0094】
あるいは、特に、ポリペプチド,核酸分子または抗体が、これらが由来する身体にこれらを再導入することを意図する場合、動物性の部分または産物(例えば、器官や採集した血液,細胞または組織)に対して、ポリペプチド,核酸分子または抗体をエックスビボで用いてもよい。
【0095】
しかしながら、ポリペプチド,核酸分子および抗体は、好ましくは、以下に詳述するようにインビボで用いる。
【0096】
本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子および抗体は、下記の様々な疾患や病気の治療に応用される。本発明は、このように、上記のポリペプチド,核酸分子もしくは抗体ならびに1以上の薬学的に許容し得る賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物まで拡張する。
【0097】
「薬学的に許容し得る」または「生理的に許容し得る」とは、受け手に対して生理的に許容し得るのと同様に、その成分が組成物中の他の成分と親和性がなければならないことを意味する。
【0098】
投与するための活性成分は、医薬組成物に用いるために適切に修飾されていてもよい。例えば、本発明に従って用いられる化合物は、上記の誘導体を用いることによって分解に対して安定させてもよい。
【0099】
この活性成分もまた、例えば、塩または非電解質,アセテート,SDS,EDTA,クエン酸塩または酢酸塩緩衝液,マンニトール,グリシン,HSAまたはポリソルベートなどの適切な添加剤を用いて組成物中で安定されてもよい。
【0100】
本発明の核酸分子,ポリペプチドまたは抗体は、唯一の活性成分として該組成物中に存在していてもよいし、例えば、その治療効果を増大させるため、または、消費者により組成物に対する興味をそそるようにするために、他の成分、特に他の活性成分と組み合わせてもよい。
【0101】
本発明のポリペプチドを含む組成物は、ゾナーゼや関連する酵素も含んでもいてもよい。本明細書で言及するようにゾナーゼは酵素を含む調製物であって、該調製物はSDS−PAGE分析において、約28kDaの分子量を有する1つのタンパク質バンドを示し、下記の段階を含む方法によって入手できる:
a) 最小限の水量(例えば、卵の量と等しいかより少ない)に卵を懸濁すること;
b) 該卵に同期かつ早急の孵化を誘発すること(好ましくは、95%を超える胚が2時間未満に孵化を完了するように);
c) 孵化体液を得るため孵化された卵を濾過すること;
d) 卵の殻の断片を解離させるため該孵化体液に固体尿素を任意に添加すること、および、該体液を低速で遠心分離すること;
e) 遠心分離した上清をゲル濾過することによってゾナーゼをさらに精製すること;
f) ベンズアミジン修飾セファロース6B(登録商標)カラムを用いたアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼをさらに精製することであって、濃縮した塩で洗浄した後、クロマトグラフィのマトリックスまたは高分子構造物に結合したゾナーゼを抽出するため、濃縮した塩溶液中のジオキサンを用いて溶出することによって、該アフィニティクロマトグラフィを実施する;
該ゾナーゼは下記の特性を有する:
a) クロモザイムXを切断する;
b) ベンズアミジンによって阻害される;
c) アルギニンを有するペプチド結合を切断する;
d) 8Mの尿素,モル濃度の塩,蒸留水および有機溶媒(好ましくはジオキサンまたはプロパノール)の存在下でも活性を有したままである;および
e) 室温の溶液中50日間酵素活性を保持する。
【0102】
ゾナーゼは、実施例で記載したように調製し組成物に添加してもよく、または天然の供給源から本発明のポリペプチドを調製後「不純物」として示されるものであってもよい。本発明のポリペプチドおよびゾナーゼの両方を含む組成物において、該ポリペプチドは、それら総重量の1〜100%の範囲で存在してもよく、ゾナーゼは0〜99%を構成してもよい。好ましくは、ポリペプチドは総重量の50〜100%、例えば>80,90,95,96,97,98または99%の範囲で存在し、ゾナーゼは総重量の0〜50%、例えば<20,10,5,4,3,2または1%で存在する。
【0103】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の組成物を治療に用いる。
【0104】
上記のように、本発明のポリペプチド,核酸分子および抗体は、例えば日光,寒気,放射線照射(例えば、がん治療に用いられる際等のX線)によっての、または、創傷の結果としての傷害性皮膚の治療においてと同様に、特に皮膚の様々な自己免疫疾患および炎症性疾患の治療において治療特性を示す。
【0105】
本明細書において言及するように、「疾患」は、正常な有機体に対し、ある症状を示すか無症状の有機体において、内在する病理学的障害に言及し、例えば、感染や後天的または先天的な遺伝子の欠陥に起因してもよい。
【0106】
実施例で説明するように、様々な炎症性疾患,自己免疫疾患および他の皮膚の疾患を治療するためのロイコレクチンの有用性が示されている。他の疾患を治療するのにも同程度の有効性があることを期待してもよい。例えば、慢性胃腸炎症は、有害物質に対して樹状細胞が過剰に反応することから(または、おそらく場合によっては)反応しないことまでによって説明することができる。従って、ロイコレクチンの導入(例えば経口的に)によって、炎症を起こした皮膚がロイコレクチンの導入に好ましく反応するのとまったく同じ方法で、慢性GIT炎症が治療されるものと期待するだろう。
【0107】
自己免疫疾患は、正常細胞の表面抗原の変異型が、特別な体細胞で発現することに起因することがある。理論に拘泥するつもりはないが、ロイコレクチンは、標的細胞を発病から保護するのに役立つかもしれない。
【0108】
本明細書で言及するように、「炎症性疾患」は、疾患が進行する間のある時点で炎症が観察される疾患であり、唯一の症状であっても、いくつかの症状のうちの1つであってもよい。炎症性疾患は、急性であっても慢性であってもよく、上記または下記の通りであってもよい。炎症性疾患としては、心血管炎症(例えば、アテローム性動脈硬化症,脳卒中),胃腸炎症(胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの潰瘍を含む),肝炎症性疾患,肺炎症(例えば、喘息,人工呼吸器により誘発された肺損傷),腎臓の炎症,眼性炎症(例えば、ブドウ膜炎),膵性炎症,尿生殖器炎症,神経炎症性疾患(例えば、多発性硬化症,アルツハイマー病),アレルギー(例えば、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎,皮膚アレルギーおよび疾患(例えば、掻痒/蕁麻疹,血管性浮腫,過敏性皮膚炎,接触皮膚炎,乾癬),食物アレルギー,薬剤アレルギー,昆虫アレルギー,肥満細胞症),骨格の炎症(例えば、関節炎,変形関節炎,リウマチ性関節炎,脊椎関節症),感染(例えば、細菌性感染またはウイルス性感染);口の炎症性疾患(すなわち、歯周炎[perodontis],歯肉炎または口内炎[somatitis]);粘膜の痛み;ならびに移植(例えば、同種異系移植拒絶もしくは異種移植拒絶または母体胎児間寛容)が挙げられる。
【0109】
本発明による治療のための好ましい炎症性疾患は、湿疹,座瘡,酒さ,乾癬および接触皮膚炎などの炎症性皮膚疾患,胃腸炎症ならびに潰瘍や痛みなどの粘膜の疾患である。
【0110】
本明細書で言及される「自己免疫疾患」は、良性の自己免疫が病原性の自己免疫に進行したものの1つであり、上記または下記の通りであってもよい。自己免疫疾患としては、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは、自己免疫成分を有するウイルス病である),円形脱毛,強直性脊椎炎,抗リン脂質症候群,自己免疫アジソン病,自己免疫溶血性貧血,自己免疫肝炎,自己免疫内耳疾患(AIED),自己免疫リンパ組織増殖性症候群(ALPS),自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP),ベーチェット病,心筋症,腹腔スプルー−疱疹状皮膚炎[dermatitis hepetiformis];慢性的な疲労免疫性機能不全症候群(CFIDS),慢性的な炎症性脱髄性多発性神経炎(CIPD),瘢痕性類天疱瘡,寒冷凝集素疾患,頂上症候群,クローン病,デゴス病,皮膚筋炎−若年性,円板状ループス,本態性混合型クリオグロブリン血症,線維筋痛症−線維筋炎,グレーブス病,ギランバレー症候群,橋本甲状腺炎,特発性の肺線維症,特発性の血小板減少紫斑病(ITP),IgA腎症,インシュリン依存型糖尿病,若年性慢性関節炎(スチル病),若年性慢性関節リウマチ,メニエール病,混合性結合組織病,多発性硬化症,重症筋無力症,悪性貧血[pernicious anemia],結節性多発動脈炎,多発性軟骨炎,多腺性症候群,リウマチ性多発性筋痛,多発性筋炎および皮膚筋炎[dermatomyositis],原発性無ガンマグロブリン血症,原発性胆管萎縮症,乾癬,乾癬性関節炎,レイノー現象,ライター症候群,リウマチ熱,リウマチ性関節炎,多臓器肉芽腫性疾患,強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、別名全身性硬化症(SS)),シェーグレン症候群,全身強直性症候群,全身性エリテマトーデス,高安動脈炎,巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎,潰瘍性大腸炎,ブドウ膜炎,白斑ならびにヴェーゲナー肉芽腫が挙げられる。
【0111】
本明細書で言及する「傷害性皮膚」としては、熱,放射線照射(X線やUVなど様々な波長の光によって),寒さ,摩擦,引掻きまたは創傷(例えば、事故や手術に起因する)などの外的影響によって損傷した皮膚が挙げられる。あるいは、傷害性皮膚は、感染、または、病気または内在する遺伝子の異常に起因してもよい。損傷は、ひび,赤み,痒み,炎症,角質皮膚,剥片などとして示されてもよい。
【0112】
本発明は、このように、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防する方法を提供するものであって、上記のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を該動物に投与する。
【0113】
別の言い方をすると、本発明は、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防するための医薬の調製における、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物の使用を提供する。
【0114】
さらに別の言い方をすると、本発明は、動物における自己免疫疾患,炎症性疾患または傷害性皮膚を治療または予防するための、本明細書に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を提供する。
【0115】
本発明の好ましい態様は、皮膚の自己免疫疾患もしくは皮膚の炎症性疾患または相が異性皮膚を治療または予防するための、このような方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体または医薬組成物を提供するものであって、該ポリペプチド,該核酸分子,該抗体または該組成物が、好ましくは該皮膚に局所的に投与される。
【0116】
好ましくは、該疾患が、湿疹,座瘡,乾癬,胃腸炎(好ましくはクローン病,潰瘍性大腸炎および他の慢性炎症),歯肉炎,口腔および食道の炎症であり、また該傷害性皮膚が、炎症を起こしたか,もしくは,赤く腫れたか,寒さでひび割れたか,日焼けしたか,放射線を浴びたか,熱により損傷したか,または,外傷の結果である。
【0117】
本明細書で使用する「治療する」こととは、治療を受けていないその個体の身体の種々の部位における症状もしく作用または治療を受けていない対応する個体における症状もしくは作用に対して、該疾患もしくは該損傷(例えば、傷害性皮膚の存在または範囲(例えば、外傷,炎症,赤み,痒み,痛みなどの相対的サイズ))の1以上の症状もしくは作用の軽減,緩和または排除(好ましくは正常レベルへ)に言及する。
【0118】
「予防する」こととは、その症状またはその作用が開始する範囲またはタイミングの絶対的な予防または軽減もしくは緩和(例えば遅延)に言及する。これは、例えば、遺伝子治療方法(例えば抗RNA配列または非センス配列の使用)によって達成されてもよい。
【0119】
本発明による治療法または予防法は、該疾患または該傷害性皮膚の治療または予防に効果的な1以上の活性成分の投与と好都合に組み合わせてもよい。このように、本発明の医薬組成物は、このような活性成分を追加して1以上含んでもよい。
【0120】
本発明のさらなる態様によると、我々は、ヒトまたは動物の治療における、同時の,別個のまたは連続の使用のための複合調製として、本明細書で定義された1以上のポリペプチド,1以上の核酸分子または1以上の抗体、および追加される1以上の活性成分を含む製品を提供する。
【0121】
容易に入手できる成分を用いる当該分野で周知の技術によれば、本発明の組成物は、1以上の生理学的に許容し得る単体,賦形剤および/または希釈剤を、従来法で処方してもよい。
【0122】
このように、例えば、錠剤,ピル,粉末,トローチ剤,小袋,カシェー[cachet],エリキシル剤,懸濁液(注入流体または注入液として),乳剤,溶液,シロップ,エアロゾル(固体として、または液状媒質中に),軟膏,柔らかいゼラチンカプセルおよび硬いゼラチンカプセル,座薬,無菌の注射可能な溶液,無菌包装粉末などの、従来の生薬の[galenic]調製物を製造するため、1以上の従来の担体,希釈剤および/または賦形剤とともに(任意で、複合調製として他の活性物質とともに)この活性成分を含んでいてもよい。生分解性重合体(例えば、ポリエステル,ポリ酸無水塩,ポリ乳酸またはポリグリコール酸)もまた、固形のインプラントに用いてもよい。この組成物は、凍結乾燥,過冷却またはPermazymeを用いて安定化してもよい。
【0123】
好適な賦形剤,担体または希釈液は、乳糖,D形ブドウ糖,蔗糖,ソルビトール,マンニトール,澱粉,アラビアゴム,リン酸カルシウム,炭酸カルシウム,カルシウム・ラクトース,トウモロコシ澱粉,アルギン酸塩[aglinate],トラガカンタ,ゼラチン,珪酸カルシウム,微結晶性セルロース,ポリビニルピロリドン,セルロース,水シロップ,水,水/エタノール,水/グリコール,水/ポリエチレン,グリコール,プロピレングリコール,メチルセルロース,メチルヒドロキシベンゾエート,プロピルヒドロキシベンゾエート,タルク,ステアリン酸マグネシウム,鉱油もしくは脂肪性物質(例えば固い脂肪)またはこれらの好適な混合物である。徐放性製剤を得るための化学物質、例えば、カルボキシポリメチレン,カルボキシメチルセルロース,酢酸フタル酸セルロース,またはポリ酢酸ビニルも用いてもよい。
【0124】
この組成物としては、平滑剤,湿潤剤,乳化剤,粘度増加剤,造粒剤,崩壊剤,結合剤,浸透圧性活性薬剤,懸濁剤,保存剤,甘味料,香料,吸着促進剤(例えば、表面浸透剤または鼻への投与のため、例えば、胆汁塩,レシチン,界面活性剤,脂肪酸,キレート剤),褐変剤,有機溶媒,抗酸化剤,安定剤,皮膚軟化剤,シリコーン,α−ヒドロキシ酸,鎮痛薬,消泡剤,保湿剤,ビタミン,芳香,イオン性増粘剤もしくは非イオン性増粘剤,界面活性剤,充填剤,イオン性増粘剤もしくは非イオン性増粘剤,金属イオン封鎖剤,重合体,噴射剤,アルカリ化剤もしくは酸性化剤,乳白剤,着色剤および脂肪族化合物などを追加して挙げられる。
【0125】
本発明の組成物は、当該分野で周知の技術を使用することによって、身体への投与後、活性成分の迅速な放出,持続した放出,または,遅発性の放出を提供するように処方されてもよい。
【0126】
この組成物は、送達させるのに適切な任意の剤形であっても、特定の細胞または組織を標的とするのに適切な任意の剤形であってもよく、例えばエマルジョンとして、または、リポソーム内,ニオソーム[niosome]内,ミクロスフェア内,ナノ粒子内などであり、それらに活性成分が吸収,吸着,組み込みまたは結合されていてもよい。これによって、製品を不溶型に効果的に変換することができる。これらの粒状形態は、安定性(例えば分解)および送達の問題をともに解決してもよい。
【0127】
これらの粒子は、循環時間を向上させるための適切な表面分子(例えば、血清成分,界面活性剤,ポロキサミン[polyoxamine]908,PEGなど)、または特定の細胞が有する受容体に対するリガンドのような部位特異的な標的のための部分を持っていてもよい。薬物送達および標的のための適切な技術は当該分野において周知であり、国際公開第99/62315号公報に記載されている。
【0128】
溶液,懸濁液,ゲルおよび乳剤の使用が好ましく、例えば、活性成分は、水,気体,水性液体,油,ゲル,乳剤,水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤,分散液またはそれらの混合物の中にあってもよい。
【0129】
組成物は、局所的(例えば、皮膚に),経口的または非経口的に投与(例えば、注射によって)されてもよい。先に言及されるように、ロイコレクチンは異なる種の間でごくわずかな変異しか示さない。実際、それは健康なヒト個体群において変異がないことがわかり、それ故、ヒト個体群において変異がないタンパク質インシュリンと同様の方法で、液性抗体反応を引き起こさずに、例えば対象に注射で投与することによって、ロイコレクチンを使用することが許容されるだろう。従って、ロイコレクチンの注射による全身治療法は、本明細書に記載の疾患、特に自己免疫疾患を治療するのに用いてもよい。
【0130】
しかしながら、局所組成物および局所投与が好ましく、ゲル,クリーム,軟膏,スプレー,ローション,膏薬,スティック[stick],石鹸,粉末,フィルム,エアロゾル,ドロップ,泡,溶液,乳剤,懸濁液,分散液(例えば非イオン性ベシクル分散液[non-ionic vesicle dispersion]),牛乳および当該分野において従来の任意の他の剤型が挙げられる。
【0131】
軟膏,ゲルおよびクリームは、例えば、好適な増粘剤および/またはゲル化剤の添加とともに、水性基剤または油性基剤で処方されてもよい。ローションは、水性基剤または油性基剤で処方されてもよく、一般に、1以上の乳化剤,分散剤,懸濁化剤,増粘剤または着色剤を含むことになる。粉末は、任意の好適な粉末基剤を用いて形成してもよい。ドロップおよび溶液は、1以上の分散剤,可溶化剤または懸濁化剤も含む水性基剤または非水性基剤とともに処方してもよい。エアロゾルスプレーは、好適な噴射剤を用いて、加圧パックから好都合に送達される。
【0132】
あるいは、組成物は、経口投与または腸管外投与に適する形態で提供してもよい。このように、他の剤型としては、活性成分を含み、任意で、例えば、トウモロコシ澱粉,乳糖,蔗糖,微結晶性セルロース,ステアリン酸マグネシウム,ポリビニルピロリドン,クエン酸,酒石酸,水,水/エタノール,水/グリセロール,水/ソルビトール,水/ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,ステアリルアルコール,カルボキシメチルセルロース,脂肪性物質(例えば固い脂肪)またはこれらの好適な混合物のような、1以上の不活性な従来の担体および/または希釈剤をともに含む、素錠またはコート錠[coated tablet],カプセル,懸濁液および溶液が挙げられる。
【0133】
本発明の組成物における活性成分の濃度は、用いる化合物(すなわち、ポリペプチド,核酸分子または抗体)の性質,投与様式,治療の経過,患者の年齢および体重,医学的適応,治療されるべき身体または体表面積に依存し、選択の余地に従って変化または調整してもよい。しかしながら、一般的に、本明細書に記載の化合物の濃度範囲は、0.0001, 0.0005, 0.001,または0.01〜25%、例えば0.0005〜15%、例えば0.01〜10%、0.1〜5%等のように、例えば1〜5%(投与、特に局所投与のための最終調製物のw/w)である。該濃度は、化合物自体の量を参考にして決定され、したがって、組成物の純度を考慮して適切に許容されるべきである。有効な単一用量は、単一用量を用いて治療される動物に応じて、0.1〜100mg/日、好ましくは2〜10mg/日の範囲にある。
【0134】
該投与は、医薬分野において公知の、任意に好適な方法により、例えば、経口,腸管外(例えば、筋肉内,皮下,腹腔内または静脈),経皮,口腔,直腸もしくは局所投与または吸入による投与などが挙げられる。好適な投与形態は経口的または最も好ましくは局所的に投与されることになる。明らかなように、活性成分が消化可能なものである場合、経口投与はその限界を有する。このような問題を解決するために、成分は上記のように安定させてもよい。
【0135】
本発明を実施するための活性成分が、例えば核酸分子(ベクター内にあってもよい)またはポリペプチドなどの様々な形態を採ることから、組成物の形態および送達のルートが異なることになることは言うまでもない。しかしながら、特に、例えば経口的な送達または局所投与のために、好ましくは、溶液,クリームまたは懸濁液が使用されるだろう。
【0136】
本発明のポリペプチドまたは核酸分子のいずれも、上記の医学的適応のために用いられてもよい。より最近の遺伝子治療方法において、核酸分子は上記のトランスフェクション/形質転換に好適なベクター(例えば、医学的応用のための当該分野において公知の遺伝子治療方法に用いるアデノウイルスなどのようなウイルスベクター)で提供されるのが好ましい。
【0137】
この組成物を適用または投与してもよい動物としては、哺乳類,爬虫類,鳥類,昆虫および魚(例えばサケやタラ)が挙げられる。好ましくは、組成物を適用または投与してもよい動物は、哺乳類,特に霊長類,家畜家禽[domestic animal],獣蓄[livestock]および実験動物である。このように好ましい動物としては、マウス,ラット,ウサギ,モルモット,ネコ,イヌ,サル,ブタ,ウシ,ヤギ,ヒツジおよびウマが挙げられる。特に好ましくは、この組成物を人に適用または投与する。
【実施例】
【0138】
実施例1:ロイコレクチンの同定および特性評価
タンパク質の単離
サケの孵化体液成分を分析する過程で、胚における新規タンパク質を同定した。
【0139】
本発明のポリペプチドを単離するための出発原料として使用してもよい部分的に精製されたゾナーゼを調製する方法は、参照することにより本明細書に援用する国際公開第99/29836号公報に記載されている(特に実施例1にその方法が記載されているが、尿素段階がないのは任意)。
【0140】
ゾナーゼおよびロイコレクチンの両方をサケ孵化体液から精製した。孵化体液のタンパク質濃度を上げるために、サケ卵を孵化前に最小限の量の水に移した。高度に同期した孵化は、高い(室)温度によるか、または、脱酸素により誘発することができ(オッペン−バルンツンら1990年,Aquaculture,86巻,417〜430頁)、粗ゾナーゼおよび関連する粗タンパク質の高度に濃縮された調製物を少容量で産生する。
【0141】
ゾナーゼの最初の精製として、寒冷紗による孵化したサケ卵の濾過を要した。この濾過液はゾナーゼが著しく分解することなく何年もの間冷凍することができ、解凍後さらにタンパク質精製に使用することができる。この事実によって、ロイコレクチンを含むサケのゾナーゼおよび関連するタンパク質を精製するための出発原料の産生が大いに単純化される。
【0142】
次の任意の段階として、サケ卵の殻の断片を分離するために、タンパク質濾過液を4M尿素に調整することを要し、低速遠心沈降(15,000g;2×15分間)によって外来の破片とともにこれらを除去することができた。この原料は、上記とは異なる方法で調製された粗原料に特徴的な、カラムを詰まらせる兆候を示さなかった。この粗タンパク質調製物は、従来のクロマトグラフィ技術による精製に好適であり、ゾナーゼは実施例7で記載のようにさらに精製してもよい。
【0143】
孵化体液のロイコレクチンは、ゾナーゼとともに単離してもよい。その野生型のゾナーゼは実質的にロイコレクチンより大きいから、ロイコレクチンを、部分的に精製されたゾナーゼ調製物(上記の通り)から排除クロマトグラフィによって単離してもよい。最初の分離として、図1の凡例に記載の条件を有するスーパーデックス16/60カラムが充分であり、その後ベンズアミジン−セファロースカラムのアフィニティクロマトグラフィによってゾナーゼを除去してもよい。
【0144】
大規模調製において、その野生型のゾナーゼは、ロイコレクチンと異なり100kDaをサイズ排除する限外濾過を著しくは透過しないから、限外濾過の使用も好適である。
【0145】
使用する緩衝液は、5mMのNaClを含み、中性付近またはわずかにアルカリ性のpH(pH7.5〜8.5)のミリモルのTris(例えば10mM)である。
【0146】
他のタンパク質の大部分を沈殿させるこの手順の間でもロイコレクチンは溶解したままであることから、有機溶媒(例えば、80%のアセトン)への抽出を用いることによって、血液銀行にある期限切れの製品からヒト白血球を大規模に抽出することも想定される。クロマトグラフィ法および濾過法による最終精製は上記のとおりである。
【0147】
この単離されたタンパク質もまた、配偶子および受精卵で、さらに、初期胚(造血系の個体発生の間)でも、最終的に白血球で、発現することが見出された。
【0148】
これまで未確認であったタンパク質がゾナーゼとともに共精製されることがわかった。この新規なタンパク質は、未変性条件下クロマトグラフィによる推定で、ちょうど30kDaを少し切る程度であった。(図1)
タンパク質の発現
単離されたタンパク質を、ポリクローナル抗体を生成するために用いた。免疫ペルオキシダーゼ染色方法または間接蛍光抗体法を用いるウサギポリクローナル抗LL抗体によって、このタンパク質が存在するか細胞を分析した。この結果を図2に示す。
【0149】
この抗体を用いることで、我々は、新規なタンパク質が絨毛膜溶解素(孵化酵素)を産生する細胞とは異なるタイプの細胞からもたらされることを発見した。これら個々の細胞(レクトサイトと称する)の形態は図に示されており、絨毛膜溶解素を発現する(個々の)孵化している腺細胞とは明らかに異なっている。
【0150】
配列の解析
この新規なタンパク質を、そのトリプシンペプチドの決定などのような標準的な特性評価に供し、続いて、部分的に直接エドマン塩基配列決定法に供した。ペプチドの謎によって、リバースプライマーを単純にポリA尾部にマッチさせるまで、cDNAを産生するために魚胚のmRNAを検出する縮退プライマーの試行錯誤による構築は最初のうちは成功しなかった。この方法において、そして複数の新規プライマーセットが同定されたのでそれを用いることで、我々は約1200NTの少なくとも2個のcDNAを見つけることができた。これらは、ほんのわずかな変異AA残基を有するが、極めて類似の配列であると判明した。両方とも、N末端配列の一部が失われていた。
【0151】
N−RACEの手順を用いて、上記配列が、そのプロセスされたタンパク質中に19AAのプロペプチドを有し、かつ他とは異なるN−末端のトリプトファン残基を有する、255アミノ酸のタンパク質に属することを我々はその後検証した。この後者の結果から、直接分析によってN末端配列を得ることが極めて困難であることが説明されるだろう。しかしながら、最終的に、これによって実質的なN末端残基が確認された。
【0152】
ESTデータベースを検索するためにタンパク質のN末端配列を用いて、我々は、新規タンパク質を明らかに表しているタンパク質配列を同定した(図3)。
【0153】
新規タンパク質との類似点を有するタンパク質をデータベースで検索することによって、いくらか類似する候補を唯一同定した(レレン,未発表)。これはコイから単離した魚卵レクチン(ガリアーノら,2003年,Biochem.J.,376巻,433〜440頁)であり、配列を手動でアライメントした結果、全般的な類似性はせいぜい48%であった。
【0154】
生物情報学の分析から、新規タンパク質がテクトニン[tectonin]に関連したレクチンであることが示唆された(レレン,未発表)。類似するTECPRドメイン構造を有するすべてのタンパク質のリストを編集したら、我々の新規レクチンは、新型のレクチンを表しているように見える(図4AおよびB)。この新規レクチンの仮想AA配列は、下等無脊椎動物のタキノレクチンとなんらかの類似性を示す5個のTECPRドメインを含んでいた(シゲナガら,1993年,J.Biochem(東京),114巻,307〜316頁)。
【0155】
新規レクチンのプロペプチド型は、リソソームをその標的とし、後の潜在的分泌(すなわち囲卵腔への分泌)のためのものであることを示唆する、19AAのペプチドを含む。
【0156】
新規レクチンの仮想AA配列によってエピトープ特異的抗体が開発でき、このことによって、我々は、分析された組織に応じて、このタンパク質の外観上のアイソフォーム(図5)の多く(2〜8)を次々に同定することができた。
【0157】
1つの可能性は、孵化腺細胞で発見されたレクチン(図6B)が絨毛膜溶解素とともに囲卵腔に分泌されること、そして、これらの見かけのサイズを増しかつこれらの見かけのpIを低下させる翻訳後修飾をこれらが有することである。
【0158】
サケが四倍体の魚であること、そして、我々のデータがサケのロイコレクチンの1を超える数の遺伝子を示すことから、部分的に精製されたゾナーゼ調製物における8個のロイコレクチン部分のアレイは、合計4×2すなわち8個の異なるロイコレクチンについて、2個のわずかに異なるロイコレクチンタンパク質の3回増加した修飾から生じたかもしれない。変異の原因を実験的に検証する必要がある。
【0159】
レクチンの推定MWは約25〜30kDaである。対応するサケのレクチンの推定pIは約pH=6.5である。測定されたpI(リステ,未発表)は、サケ卵黄周囲レクチンでpH6.5〜4.9であり、サケ白血球性レクチンでpH6.4〜6.6であった(レクチンはウェスタンブロット法により同定した)。
【0160】
胚発生の間の発現
魚胚の発生の間に新規タンパク質が発現するのを探すためのヌクレオチドのプローブを用いて、我々は魚胚の上皮細胞の特定の型に存在するタンパク質を発見した。加えて、我々は、受精卵と同様、配偶子の両方においてタンパク質が発現するのを発見した。さらにまた、このタンパク質は、生命体の大部分の細胞にはないことを示したが、骨髄造血に関与する可能性があることが示唆されるいくつかの胚細胞で発現していた(図5および6)。このような発現パターンは他には存在しない。このように、我々は、このタンパク質について「ロイコレクチン」(LLと略される)という名称を選択した。
【0161】
異なる種での発現
魚からニワトリ、ヒトまでその血液を調査することによって、ロイコレクチンがこの脊椎動物系列の全体にわたって白血球に存在することがわかった。その存在は、我々のポリクローナル抗体を用いて、無脊椎動物すべてにおいても検出することができた。(ヒト)白血球でロイコレクチンを発見したことは、直ちに、ロイコレクチンの考えられる機能を示唆した。ロイコレクチンは免疫機能を担う細胞に存在する。
【0162】
進化におけるロイコレクチンの極端な配列不変性が最も驚くべきことだった(図7)。標準的なプライマー対技術を用いて、我々は、脊椎動物系列の全体にわたってcDNAを検出することができた。分析することで、魚からニワトリ、ヒトまで極度に保存された配列が明らかにされ、この配列はこのような遺伝子に必須の機能を示すだろう。魚とヒトとの間の配列の変異は約4%(10個の変異AA)または類似性が96%であり、この観測された変異の半数は保存的AAの置換であった。比較することによって、いくらか類似する公知タンパク質の1つが一般的なコイの魚卵レクチン(FEL)であることがわかった(48%未満の類似性)。
【0163】
変異LL構造の概要(図7)によって、新規LLファミリーのタンパク質が定義される。我々は、魚からヒトまでのAAの約2%が非保守的な変化であることを理解する。LL遺伝子が配列不変性を維持するために極度の進化的淘汰を受けるタンパク質をコードすることは明らかである。同様に、これは、遺伝子産物のほとんどのランダム変異を種の進化の間、起こることおよび定着することから防ぐ、重要であるがまだ知られていない機能を指す。
【0164】
組換えロイコレクチンの調製
サケのロイコレクチンのcDNAを胚からクローン化した。NcoI制限部位(フォワード)およびACC65I(リバース)を含むようにPCRプライマーを設計した。ベクターpETM-60をNcoI/ACC65Iにより消化し、消化されたPCR産物を終夜ライゲーションすることで連結した。プラスミドの増幅およびシークエンシングの後、配列を照合したロイコレクチン挿入物を含むpETM-60発現ベクターを、BL21(DE3)pLysコンピテント細胞に形質転換し、細菌グリセロールストックを調製するため、コロニーを5mLのLB(=L培地)に植菌するために用いた。
【0165】
細菌培養およびタンパク質精製:
新規な細菌ベクターpETM60−ロイコレクチンによって、TEVプロテアーゼ認識配列を通してNusAのC末端に融合したHisタグの組換えタンパク質の発現が可能となった。これを金属アフィニティにより効率的に精製し、融合パートナーを除去後、可溶型で回収した。
【0166】
材料および方法:
PCRの上流および下流のプライマー:
NWA15dPET(#23):NcoI
5'-GCA.CCA.TGG.CCA.TGG.GCT.GGG.ACT.GTC.AGG.AGG.TAG.TA
CH.A15dPET(#13):ACC65I
5'-CCG.AAG.CTT.GGT.ACC.ATG.TGT.GCA.CAC.CAT.GGT.GAC
PCRミックス:
dNTP 4μL
プライマー#23/#13 0.5μL(10μM)
cDNA 2μL
DNAポリメラーゼ緩衝液 10μL
DNAポリメラーゼ 0.5μL
dH2O 50μLになるまで。
【0167】
PCR反応:
98℃ 10秒間
55℃ 15秒間
72℃ 1分間
30サイクル
70℃ 10分間
PCR産物およびpETM-60プラスミドのいずれもNcoIおよびACC65Iの制限酵素により消化し;ライゲーション用に1%アガロースゲルから精製した。
【0168】
T4DNAリガーゼによるベクターと挿入DNAとのライゲーション:
T4リガーゼを、以下のミックスを用いて二重鎖DNA分子の5'リン酸塩と3'-水酸基とを接合するために用いた:
200ngのベクターDNA
500ngの挿入DNA
10×リガーゼ緩衝液
1μLのT4リガーゼ
容積を10μLにした。
【0169】
インキュベーションは終夜室温で行い、リガーゼの熱不活化は、チューブを65℃の水浴中10分間置くことによって達成した。
【0170】
ライゲーションミックスをDH5αコンピテント細胞に電気穿孔し、コロニーを5mLのLBに植菌するために用いた。
【0171】
分析用に10個のクローンをランダムに選択した。pETM60−ロイコレクチンをNcoI/ACC65Iで消化することにより分析した。
【0172】
プライマー#13および#23を用いてpETM60−ロイコレクチンをシークエンシングすることによって挿入ロイコレクチンの配列を照合した。
【0173】
ロイコレクチンのインビトロ翻訳
BL21(DE3)pLysSは、誘導前にT7ポリメラーゼのバックグランドレベルを低減させるT7リゾチームをコードするプラスミド(クロラムフェニコール耐性を有するpLysS)を含む。BL21(DE3)pLysSは、毒性タンパク質のタンパク質発現のより厳しい制限を提供し、タンパク質を高レベルに発現する株であり、かつ誘導が容易な株である。組換えタンパク質の発現および精製に用いられる融合タグはNusAであり、495aa(54.8kDa)サイズを有し、N末端に位置して、過剰発現したタンパク質の溶解性を向上するために用いる。
【0174】
NusA−ロイコレクチンを金属アフィニティによって効率的に精製し、融合パートナーを除去後、可溶型で回収した。
【0175】
NusA−ロイコレクチンの発現および精製のための材料:
カナマイシン平板培地
2YTG培地
0.4mMのIPTG(最終濃度0.4μM)
HisTrap HP(5mL)カラム
26℃で3時間誘導した。
【0176】
精製のプロトコル:
精製前のNusA−ロイコレクチン上清の固有酵素活性:0.0060/分25mLの緩衝液B(1×PBS,30mMのイミダゾール,0.4MのNaCl)によりカラムを平衡化。
【0177】
検体のアプライ:
28mLの上清を濾過、脱気し、その25mLをカラムにアプライした。このカラムを75mLの緩衝液Bで洗浄した。25mLの緩衝液C(1×PBS,0.5Mのイミダゾール,0.4MのNaCl)により一段階で溶出した。検体を1mL単位で回収した。
【0178】
結果:
粗組換えタンパク質から、98%を超えるプロテアーゼ活性が、素通り画分および洗浄画分にあることがわかった。プロテアーゼ活性のわずか1.6%を、組換えロイコレクチンを有するものを含むカラム画分(F6およびF7)から回収し、SDS−PAGE分析により同定した(図8を参照)。これらの画分は0.3%(カラムにアプライしたプロテアーゼ活性のバックグランドレベル)を含んだ。
【0179】
結論:
組換えロイコレクチンはセリンプロテアーゼ活性がなく、よって本物のレクチンである。
【0180】
従って、天然の供給源(孵化体液)からいくつかのロイコレクチン調製物で発見されたセリンプロテアーゼ活性の痕跡は、ゾナーゼの痕跡を表すはずである。
【0181】
ロイコレクチンおよびゾナーゼは、孵化体液中に共存し、かつたいていのクロマトグラフィ手順でともに精製される傾向にあるが、100kDa排除サイズであるバイオマックスフィルタを用いた限外濾過によって最終的に分離しうる。
【0182】
組換えタンパク質の分析
上記のように産生され、SDS−PAGEにより精製された組換えサケLLを、MS/MS技術で分析した。意味のあるいかなるヒットを見出すことなく、条鰭亜綱[Actinopterygii]についてNCBIタンパク質およびESTデータベースの両方のMascotで、LLのペプチド質量指紋スペクトルを分析した(リステ,未発表)。このようなLLの二次元ゲル分析から溶出した胚LL部分および白血球LL部分から得られたLLスペクトルとそれらのスペクトルとをよく比較し、さらにpH勾配法によって観測されたLLのイソ型の存在を確認した。
【0183】
ゲノム配列
我々は、670NTのプローブを用いてBacライブラリを探索することによって、この実体の遺伝子のゲノム配列をサケにおいて確証した(完全なプロトコルは、実施例10でも詳述する)。従って、部分的タンパク質のAA配列に由来する情報に基づいて設計された縮退プライマーを用いることで、ロイコレクチンの完全長cDNA配列を入手することができた。370dd(day degrees:日数)胚(すなわち、胚は孵化に近いが、まだ孵化しない)のcDNAのPCR増幅によって630bpの単位複製産物が生成し、これをゲルで精製しシークエンシングした。
【0184】
BACライブラリ(18×カバー度;平均挿入サイズ188kb)をスクリーニングするために、レクチン遺伝子に特異的なプローブ(サケゲノム計画(SGP)コンソーシアムによって利用可能となった)を用いた。PCR法によりジゴキシゲニン-11-dUTP(ロシュ社)を取り込ませることによってプローブ(サイズ630bp)を調製した。Bacライブラリのスクリーニングによって、A-12/144,L16/143,P6/76,B-5/70,O-20/85,L-7/257,F-7/176と特徴付けられた7個の陽性クローンを同定した。陽性反応をパネルAおよびBに例示する。
【0185】
選択したクローンの特異的な反応を、BACライブラリのスクリーニングに用いたDNA標識プローブと同じプライマーを用いるPCR増幅によって確認した。ベクター配列内部の挿入物のサイズをパルスフィールド電気泳動により推定した。クローンをショットガン法によって商業的(MWG−バイオテック社,ドイツ)にシークエンシングした。
【0186】
この研究によって、(四倍体)サケのゲノムにおけるロイコレクチンに密接に関連するいくつかの遺伝子が確立された(図9AおよびB)。断片化した配列の相違によって、少なくとも2個の類似遺伝子の存在が示唆されるように見えるだろう。ロイコレクチンは、転写開始部位からポリアデニル化部位まで約2300bp(かなり標準的なサイズ)の遺伝子において、構造的に、5個のエキソンおよび4個のイントロンを有する通常の遺伝子のように見える。
【0187】
それにもかかわらず、現在までいかなる生命体においても類似の配列を有する遺伝子について報告されなかったことを、我々のデータから判断することができた。個々のエキソンまたはイントロンに対するプローブを用いて、我々は、他に報告されたタンパク質2個のの一部に対するエキソン1個の類似性はごくわずかであることを確証できたが、これらタンパク質2個のいずれも我々が発見した分子実体とはまったく異なるものである。
【0188】
データベース検索から、LLタンパク質,LLのmRNA転写物,またはヒト染色体におけるロイコレクチンのゲノム遺伝子のいずれにも一致する遺伝子を発見できなかったことが示される。明らかに、ロイコレクチン遺伝子は、どこにもまだ発見されてなく、その配列はまだ寄託されてなく、また、LL遺伝子配列はまだヒトで検出されていない。下記の表2にリストした個々の小さい構造要素をデータベース中に位置付けるために、我々は、さらなる検索においてこのような要素を用いた。
【0189】
【表2】
【0190】
この結果から、若干の公知タンパク質がロイコレクチンの一部とある程度の類似性を示すことがわかる−関連する染色体の番号を提供する。染色体に位置しない配列を「どこかに?」として記載する。
【0191】
主要なヒットがヒトのトランスゲリン[transgelin]であり、それは平滑筋タンパク質22-α(SM22-α)(WS3-10)である。トランスゲリンはアクチン結合タンパク質であり、分化した平滑筋の最も初期のマーカーのうちの1つである。このタンパク質の機能はまだ決定されていなかった。http://harvester.embl.de/harvester/P378/P37802.htm
しかしながら、トランスゲリンとロイコレクチンとのタンパク質配列のアライメントから、最小限の共通配列しか示されなかった。それ以外では、T細胞受容体および未知のタンパク質に関して、LL構造の一部で若干低い類似性が見出された。重要なことは、この新規遺伝子がヒトゲノムの公開された配列から見つけることが(まだ)できないという事実にもかかわらず、この遺伝子はヒト白血球で特異的に発現されていたことである。(若干の発現は、ヒト血小板の精製された調製物にも見られる。)この遺伝子の極めて短い断片のみならヒトゲノムから検出されるかもしれないが、これら断片は、多数のヒト染色体にわたって広範囲に広がっている(図10を参照)。
【0192】
染色体上の分布の観測パターンに困惑させられている。ヒトLL遺伝子自体がこれまでにシークエンシングされていないか、または特定の染色体に位置付けられていないとしたら、このような短い配列はLL遺伝子に関連がないかもしれない。この難問の解決法はまだ手元にない。
【0193】
考察
魚およびニワトリのLLとほとんど同一である新規LLレクチンが、ヒト白血球において同定された。サケのLL遺伝子は標準的な構造であるが、ヒトでまだ見つかっていない。
【0194】
実施例2:ロイコレクチンの医学的応用
材料および方法
実施例1に記載のように調製されたサケのロイコレクチンタンパク質(LLと呼ばれる)を用いて以下の研究を実施した。用いたLL濃度は約1〜10マイクログラム/mLであった。ゾナーゼ−プロテアーゼは、水およびヤシ油乳剤(それには30%を超えるヤシ油が存在する)中1:100の比率でLLとともに存在した。ロイコレクチンはゾナーゼ存在下で安定である。
【0195】
結果
A.寒さでひび割れた皮膚
多くの人々は、皮膚、特に手の皮膚において季節的な割れを経験する。
【0196】
寒い季節が始まる間ロイコレクチンを皮膚に塗布すると、寒さによるひび割れを劇的に先送りにし、また多くの場合、防止した。この現象には数十例の記録がある。寒さによってできたひび割れに対するLLの効果についての所見はより少ないが、寒さによってできた傷がいくらか閉じたことは明らかにされた。
【0197】
B.日焼けにより損傷した皮膚
裸の皮膚に対する過剰な太陽光の露出によって日焼けが引き起こされることがあり、露出した皮膚の熱感,赤み,痒みおよび最終的に剥離という結果になることがある。
【0198】
ロイコレクチンの塗布によって、数分以内に赤みが引き、痒みが止まり、最終的な皮膚の剥離が起こらないという結果となった。これらの驚くべき所見は多くの個体で繰り返し観察された。
【0199】
C.熱損傷の皮膚
皮膚に対する熱による直接的な損傷の後、サケのロイコレクチンの塗布によって、このような損傷による当然の結果を大いに予防するように見え、新たに損傷を受けた後何度か塗布すると損傷を止めるように見え、完全な回復へ促進させるように見える。
【0200】
D.座瘡
座瘡の亜臨床的なケースにおいて、多くの子どもにとって、痒みおよび赤みがすぐに消えたことにより効き目が現れた。小規模な試験的研究のヤシ油乳剤LLを塗布したケースの約半数において、座瘡それ自体が向上するように見えた。
【0201】
E.局所乾癬
乾癬皮膚の大きな斑点に対し、サケのロイコレクチンを塗布したら最初にほとんどすぐに赤みが引き、次に痒みの感覚が大幅に軽減されたという効き目が現れた。角質皮膚の過剰な会合は、最初の数週間にわたって後退したが、LL塗布の停止に応じて再発生した。
【0202】
F.開いた皮膚の傷
ヒトのボランティアで観察を行った。我々は、股関節部損傷の手術後、圧縮踵損傷[compression heel wound]から生じた、慢性的な皮膚の開放創および滲出した皮膚の傷のケースを研究した。それらは数ヶ月から一年もの間医療関係者により世話をされたが失敗した。見られた痛みは、直径で1/2〜2cmであった。
【0203】
下肢(脚)上の慢性的な開放創へのフィルタ滅菌されたLL調製物の塗布に応じて、我々は、2〜3日後に液体が損傷から滲出するのが止み、続いて創傷部が急速に縮小し、2〜3週間後、傷が消え正常な皮膚に置換されたのを観察した。
【0204】
患者の性質が、最初に四肢の遠端に現れる傷を有するというものであるとすると、我々は、上記方法で消える最初の傷が近位の傷であることを観察した。これは、我々がより最近できた傷であると解釈する。最後に消える傷は踵の近くの遠位の傷であり、それは最も長くできていた傷である。最終的にすべての傷は消えた。
【0205】
G.インビトロの研究
下から上皮組織に栄養分を利用可能にする微小孔を有するプラスチック製増殖基質に播種後16日目の、分化したヒト皮膚上皮培養物をSkinEthics(ニース,フランス)から入手した。このような培養物は、培養期間中37℃で分化した後、通常の皮膚の形態を呈する。上方の角質層が空気に触れ、基底層が増殖基質に触れるようにこれらの培養物をインビトロでさらに2日間維持した。並行して培養物を30℃の湿潤雰囲気に移動し、サケのロイコレクチン10μg/mL存在下または非存在下、Ca,Mg含有リン酸塩緩衝生理食塩水の培地中6時間存在させた。標準的な方法に従って、培養物をホルマリンで固定、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した。細胞増殖の徴候とともに、大型の基底細胞の迅速な誘導が表皮で観測された(図11)。我々は、このような結果が皮膚でのロイコレクチンの治癒効果と因果関係を有していると解釈し、この際、細胞増殖と細胞分化との組合が、傷が閉じ、皮膚上皮の統合性を再確立するために十分なものとなっている。
【0206】
考察:
我々は、LL遺伝子産物の発現をケラチノサイトの細胞培養物から発見しなかった。また、樹状細胞は、血液白血球に関連した上皮皮膚における唯一の細胞である。血行不良による若干の機械的傷害または生物学的傷害の後、上皮皮膚に対する白血球の通常の接近が妨げられ、それは圧縮損傷がしばしば正常の皮膚に起こるところである。ロイコレクチンの投与はこの欠陥を乗り越え、皮膚における治癒の正常な機構を起動させる。
【0207】
実施例3:白血球におけるロイコレクチンタンパク質の発現
サケ血液をベルゲン大学インダストリ研究室[Industrilab.]から入手した。魚の全血をヘパリン化チューブに回収し(リステ,未発表)、ミラーら(1988年,Nucleic Acids Research,16巻(3号),1215頁)に従って処理した。ヒト血液検体をノルウェーのハウケランド大学病院の血液銀行から入手した。
【0208】
ヒト全血を5mLのクエン酸塩緩衝チューブに回収し、ミラーら(1988年,上記)に従い白血球を調製するために処理した。この調製物を、改良したLymphoprep(商標)(Axis−Shield PoC社,ノルウェー)によってさらに精製した。ヒト白血球画分を調製するために、Lymphoprep(商標)をそのプロトコルに従って用いた。ミフタリおよびウォルサー(未発表)が説明するように、この画分を免疫ブロット分析に用いた。〜1μgのタンパク質を用いた、二次元PAGEによる分析は、マックギリブレイおよびリックウッド(1974年,European Journal of Biochemistry,41巻,181〜190頁)により記載の手順に従った。LLタンパク質およびそのイソ型を特異的に検出するため、免疫ブロットを用いる二次元PAGEによって、これら2つの種のLLタンパク質を視覚化した。サケLLに対するポリクローナル一次抗体による処理の後、ヤギ抗ウサギ抗体により処理し、ECL強化検出系によりLLタンパク質を視覚化できた。0.5〜5μgのタンパク質をアプライした複数のゲルにて免疫反応の特異性を試験し、類似の結果が得られた。
【0209】
サケ白血球はMWが〜26kDaの2つのLLイソ型を示し、サケPVFで発見された8つのLL等電型のうち、より塩基性の型と類似するpIを有する。二次元PAGEの二次元におけるMW標準から外挿により正確なMWを推定することは困難である。ヒト白血球は分子量〜30kDaの1個の主要なLL抗原を含み、それは他の所見から約27kDaであることがわかる。酸性pIは、PVFで発見されたサケLLイソ型の平均pIと一致する(リステ,上記)(図12を参照)。
【0210】
実施例4:ノーザンブロットで同定されたサケのロイコレクチン転写物
ボラクス[Bolaks]AS(フサ,ノルウェー)で養殖されたサケ種親からサケ卵を入手した。これは1975年以降表現型選択により複数の世代で維持され、現在サケの備蓄の一部はノルウェーのサーモブリード[Salmo Breed]A/Sによって繁殖されている。
【0211】
全RNAおよびポリアデニル化RNAの単離
製造業者の使用説明書に従ってトリゾール試薬(ライフテクノロジーズ社)を用いて、孵化前段階の後期(約370dd)にサケ胚から全RNAを単離した。完全性および純度の観点から全RNAの質および量を、臭化エチジウムで染色したホルムアルデヒドアガロースゲルで評価した。全RNAを分光測光法で定量化した。RNA(mRNA)のポリアデニル化画分を、ダイナビーズmRNA精製キット(インビトロジェン社)を用いて全RNA5〜10μgから単離した。
【0212】
プローブの構築
アンチセンスのジゴキシゲニン(DIG)標識cRNAプローブを、SP1消化プラスミドDNAを鋳型としT3RNAポリメラーゼにより転写することによって作製した。センスのDIG標識cRNAプローブを、製造業者のプロトコルに従いDIG RNA Labelling Kit(SP6/T7)(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、XhoI消化プラスミドDNAを鋳型としT7RNAポリメラーゼ(センス)により転写することによって作製した。得られたジゴキシゲニン(DIG)標識LLアンチセンスcRNAプローブおよびセンスcRNAプローブは〜650bpにわたった。
【0213】
ノーザンブロッティング分析
0.5μgの純粋なmRNAおよび1μgの全RNAのアリコートを電気泳動し、正に荷電したニトロセルロース膜(アマシャム社)にブロッティングした。膜をDIG Easy Hyb緩衝液(ロシュ社)中55℃で2時間プレハイブリダイゼーションした後、1μg/mLのリボプローブを用いて55℃で16時間ハイブリダイゼーションした。2×SSC中0.1%SDSを用いて室温で15分間の低ストリンジェントでそれぞれ2回洗浄し、0.1×SSC中0.1%SDSを用いて65℃で20分間の高ストリンジェントでそれぞれ2回洗浄した。この膜を、マレイン酸緩衝液(pH7.5)および1%ブロッキング試薬(ロシュ社)を含むブロッキング溶液中でインキュベートした後、1:10,000希釈した抗DIG−アルカリホスファターゼ(AP)結合抗体(ロシュ社)をさらに含むブロッキング溶液中室温で1時間インキュベートした。150mMのNaClおよび0.5%のTween 20を含む100mMのマレイン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄後、この膜を検出緩衝液(0.1MのTrisHCl,0.1MのNaCl,室温でpH9.5)中2分間平衡化した。基質としてCSPD(ロシュ社)を用いる化学発光分析によりハイブリッドプローブの標的を視覚化し、このブロットをX線フィルム(コダック社)に5〜30分間露光した。DIG標識RNA分子量マーカー(ロシュ社)を用いた。
【0214】
アンチセンスのDIG標識LL特異的リボプローブを、成熟LL転写物のサイズを推定するために用いた。全RNAのノーザンブロット分析(図13A)によって、主要な転写物がサイズ〜1250bpを有することが明らかにされ、またより弱いバンドの転写物(〜3200bp)が観察された。主要なバンドは、成熟した(イントロンがない)転写物および翻訳可能なLL転写物に対応する。同じリボプローブを用いる精製mRNAのノーザンブロット分析により、〜1250bpの単一バンドが明らかとなった(増幅されたcDNAが完全長をコードする配列に近いことを示す(図13B))。全RNA検体およびmRNA検体のブロットをセンスのLL特異的リボプローブとともにインキュベートした場合、ハイブリダイゼーションのシグナルがないことが観察され、用いたリボプローブが充分に特異的であることを示している(図13C)。少ない転写物(〜3200bp)は、サケの完全長LL転写物より大きい。ハイブリダイゼーションの特異的な条件を考えると、この実体は、LL配列情報を含む実体をおそらく反映している。センスプローブではなくアンチセンスプローブのみからの陽性シグナルは、この結果の特異性を強調する。完全長の転写物のサイズは上記LLエキソンのすべてに適合する。
【0215】
実施例5:関連するβプロペラタンパク質とLLとのアライメント
公的な配列バンクに置かれる情報と比較して、サケLL配列について生物情報学的分析を実施した。
【0216】
Clustal W分析(図14)から、サケのロイコレクチンの推定アミノ酸配列が、データバンクのいかなる報告されたタンパク質とも有意な配列類似性を共有しないことがわかった。しかしながら、BLASTは(FELを含む)より遠縁のタンパク質との類似性までも示したが、シプリナス・カルピオ[Cyprinus carpio]の魚卵由来レクチン(遺伝子バンクのアクセス番号P68512)との全般的な類似性はたった48%しかない(E値2.00E-50)。加えて、ゼブラフィッシュの仮想タンパク質(HPZ;アクセス番号LOC678590)は、全般的な類似性が45%(E値2.00E-48)を示した。配列比較からも、ロイコレクチンが、カブトガニのTPL-1(以前にはレクチンL6)(アクセス番号P82151),フィゼラム・ポリセファラム[Physarum polycephalum]のテクトニンI(アクセス番号O61063)およびテクトニンII(O61064)と38%,28%および26%同一性を有することがわかった。(スイスプロットでは、これら数字はそれぞれ49,-,35,32および29%の同一性であり、FELのE値は1e-51、L6のE値は1e-40であった。)我々のデータから、無脊椎動物より脊椎動物の方が、LL類似性が高いことが示唆される。LLと30%同一であるヒトのテクトニンβプロペラリピート含有タンパク質(KIAAO329_ヒト)は含まれない。
【0217】
FELの4個の生化学的に確認されたジスルフィド結合(ガリアーノら,2003年,Biochem.J.,376巻,433〜440頁)のうち、3個がロイコレクチンにおいて保存されているように見えることが複数のアライメントから明らかになった。第一の架橋は、両タンパク質のN末端側終端とC末端側終端とを接続する。この架橋は、LLの3および234(またはFELの238)の位置のシステインを接続する。第二の架橋および第三の架橋は、LLのCys102とCys155(FELの#157)とを接続し、ならびに、LLおよびFELの両方でCys132とCys137とを接続する。コイFELで発見された第四のジスルフィド結合は、Cys208(212)とCys226(230)とを含み、ロイコレクチンでは発見されていない。
【0218】
実施例6:LL(ロイコレクチン)の三次元モデル
ロイコレクチンタンパク質は、L6またはタキレクチン1(Tachypleus tridentaus),カブトガニ血球の細菌性リポ多糖−結合レクチンおよび他の無脊椎動物のタキレクチン関連タンパク質と、TECPRドメイン構造の観点から、高度の類似性を共有する。それにもかかわらず、ドメイン数に関する差異が、タンパク質のC末端側のβ−プロペラドメインのわずかなシフトとともに、観察された。類似性検索およびSMART検索の情報を要約すると、我々は、ロイコレクチン全体の三次元構造が5枚羽のβ−プロペラタンパク質構造を示すと推測する。これに基づき、我々は、ロイコレクチンタンパク質がどのように見ることができるかについてワーキングモデルを提供するために三次元モデル(ビーゼルら,1999年,EMBO J.,18巻,2313〜2322頁)を起動する。あるタンパク質の残基番号がその他の残基に等しく設定されていることから、これはただの概算である。SMARTデータベースの検索から、実質的に翻訳されたロイコレクチンタンパク質の卓越した構造特徴が示され、それは5個のタンデムリピートからなり、それぞれが32〜61%の内部配列同一性を有する35〜36AAを含む(図15の右パネル)。推定ロイコレクチンタンパク質の内部繰り返しストレッチ[strech]は、それら自身の中の類似性を示し、大部分は13AAの長さであった。2個の短いコンセンサス配列(XWXXLPGXLKXXXVGPXおよびGVNKNDXXYXLVG)は、各繰り返しにおいて高度に保存されている。ロイコレクチンのN末端領域における20残基のストレッチ(これはFELでは発見されていない)は別として、両方のタンパク質は、TECPRドメイン数とTECPRドメイン全体のドメイン構造とが高度な類似性を示す一方で、配列同一性はたった48%しか共有していない。
【0219】
実施例7:サケ孵化体液からのゾナーゼの精製
実施例1のサケ孵化体液をさらに精製し、純粋なゾナーゼ調製物を生成してもよい。50%より良い収率を有したから、濾過液中のより大きな分子成分からゾナーゼを分離するのにゲル濾過(12倍に精製)は1ラウンドで充分であった。利用したマトリックスは変えてもよいが、通常セファクリルSR-200(登録商標)を我々は選んだ。緩衝液は、pH8.0もしくはpH8.5(0.05M)のTris−HClまたはTris−酢酸塩(0.025M,同じpH)であった。ゲル濾過の手順後に得られたゾナーゼは、孵化体液中のゾナーゼの大部分を占めた。
【0220】
市販のベンズアミジン セファロース6B(登録商標)カラムを用いるアフィニティクロマトグラフィによって、ゾナーゼを均一なタンパク質産物まで精製した。(25mLまたは125mL容積のカラムを)用いた具体的な条件として、0.05MのTris−HCl緩衝液(pH8または8.5)を再び用い、カラムに非特異的に結合した物質を除去するためにNaClが1Mとなるよう調整した。ゾナーゼはカラムにしっかりと結合したままであったので、このタンパク質はこの段階では除去されなかった。カラムからゾナーゼを溶出するのに、同じTris−HCl緩衝液の1MのNaCl中、10〜33%のジオキサン勾配を用いて達成した。アフィニティ精製後、ゾナーゼ調製物はSDS−PAGE分析上1つのタンパク質バンドを示し、それは約28kDaの分子量を有していた。このゾナーゼ産物はシークエンシング級の純度を有してはいないが、高度に精製されていた。
【0221】
ゲル濾過精製さらにアフィニティ精製されたゾナーゼを、1つの最終的なクロマトグラフィの手順によってシークエンシング級の純度にまでさらに精製した。この手順は、Tris−酢酸塩(10mM,pH9.0)の緩衝液とともに、PBE94(登録商標)カラムを用い、連続溶出をこの緩衝液で塩勾配(最高1MのNaClの塩)を用いた。この段階自体によって、ゾナーゼの触媒活性がさらに7.6倍まで増え、精製全体を通して714倍に増えた。出発原料からの収率は28%であった。この精製段階によって、ゾナーゼのタンパク質同一性は、28kDaの部分として、損なわれることはなかった。
【0222】
実施例8:LL抗体の産生および精製
ポリクローナルウサギ抗ウサギ抗サケLL抗血清を以下の通りに調製した:ハーローおよびレイン(1988年,Laboratory Manual,コールドスプリングハーバー,NY)に記載されているように、シークエンシング級に精製された実施例1のロイコレクチンタンパク質を、4kgのチンチラウサギにポリクローナル抗体を惹起させるために用いた。80,40および25mgのシークエンシング級のロイコレクチン3つを、複数の皮下部位に注射した。一番目をフロインド完全アジュバントで乳化し、最後2つを3週間後および6週間後に不完全アジュバンドで乳化した。最後の追加免疫後8日間に血液を回収し、3,000rpmで15分間の遠心分離(Sorvall SS-34ローター)後血清を調製した。
【0223】
抗血清のアリコートを−80℃で保存した。一次抗体を、HiTrap 1mLのプロテインGカラム(アマシャム・ファルマシアバイオテック社)を用いて流速1mL/分でアフィニティ精製した。全抗血清を、1mLのプロテインGカラムにアプライする前に、45μmフィルタユニットで濾過した。カラムの平衡化を、5〜10カラム容積の結合緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム,pH7.0)を用いて実施し、その後、280nmのUV吸光度によりタンパク質が検出されなくなるまで同じ緩衝液で数回洗浄した。IgG画分を、5mLの溶出緩衝液(0.1MのグリシンHCl,pH2.7)で溶出し、25μLの中和緩衝液(1MのTrisHCl,pH9.0)を含む10本のチューブに分けた。濃度を分光測光法で測定した。12%のSDS−PAGE、それに続く銀染色による精製IgG画分のアリコートの分析によって純度を推定した。ヤギ抗ウサギIgGおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いるウェスタンブロット分析によって感度を測定した。
【0224】
加えて、ポリクローナル抗体を、ゼブラフィッシュのアセトン粉末中でインキュベーションすることによって予め吸着させた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ブタ抗ウサギF(ab')2をダコ社(F-0054)から入手した。Alexa Fluor 647標識ヤギ抗ウサギIgG(インビトロジェン社,カタログ番号A-21244)をMolecular Probe社(ユージーン,US)から入手し、ビオチン化ポリクローナルブタ抗ウサギ免疫グロブリン(カタログ番号E0353)をダコ社から入手した。一次抗体および二次抗体の最適濃度を事前の希釈実験によって決定した。このポリクローナル抗体を実施例1に記載のタンパク質発現分析で用いた。
【0225】
実施例9:ゼブラフィッシュLLの同定および特徴付け
製造業者の使用説明書に従いトリゾール手順(ライフテクノロジーズ社)を用いて、4,6,12,24,48hpfおよび5dphのゼブラフィッシュ胚から全RNAを単離した。全RNAの完全性および純度を、臭化エチジウムで染色したホルムアルデヒドアガロースゲルで評価した。18SrRNAに対する28SrRNAの比が2〜2.4:1である検体(かつDNA混入が検出されない)のみを用いた。RNAを分光測光法で定量化した。ポリアデニル化mRNAを、ダイナルキット(インビトロジェン社)を用いて5〜10μgのRNAから単離した。
【0226】
200U/μLのTermoScript(インビトロジェン社)を用いて逆転写を実施した。mRNA(0.5μg)を72℃まで5分間加熱し、冷却し、ペレット化して、2.0mMのcDNA合成緩衝液(インビトロジェン社)中100ng/μLのオリゴdT,10μMのDDTおよび0.8U/μLのRNAse阻害剤を含む20μLの反応混合液に添加した。50℃で1時間インキュベーションした。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出によって産物を精製し、マイクロスピンS-200HRカラムに通し、エタノール沈殿した。遺伝子特異的なLLプライマーをサケLL配列から設計した(表3)。このPCRミックス(20μL)は、2μLのcDNA鋳型,0.4μMのプライマー(LLF1,LLF2,LLR1,LLR2およびLLR3),1×PCR緩衝液,0.5UのTaq DNAポリメラーゼ(タカラ社)および0.2mMのdNTPを含んだ。PCR増幅は、94℃で45秒間/58℃で45秒間/72℃で90秒間を32サイクルおよび最後に72℃で7分間の伸長を行った。反応混合物を、1×TBE緩衝液(pH8.3)中0.5μg/mLの臭化エチジウムを有する1.8%のアガロース−TBEゲルでDNAマーカー100bpラダー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)を用いて分析した。
【0227】
【表3】
【0228】
標準的なプロトコルによって、このPCR断片をpGEM T−Easyベクター系1(プロメガ社,マジソン,WI)にライゲーションした。
【0229】
40μLのE.コリ DH5αおよび1μLのpGEM T−EasyベクターにライゲーションされたPCR断片を電気穿孔に用いた。37℃で1時間細菌を培養する前にSOC培地(1mL)を添加した。この組換え細菌(200μL)を標準LB/アンピシリン,X−gal,IPTG寒天平板培地に塗布し、青/白スクリーニングのために終夜37℃でインキュベートした。白いクローンを10個選び、100μg/mLのアンピシリンを有するLB培地中5mLの培養で終夜増殖させた。プラスミド精製は、プラスミドミニ精製キット(キアゲン社,キャッツワース,CA)を用いた。プラスミドを増幅し、標準的なプロトコルを用いてシークエンシングした(DNAシーケンス ラボ,ベルゲン)。
【0230】
GeneRacerコアキット(インビトロジェン社,カタログ#45-0168)を用いて使用説明書に従いLLの5'-および3'-RACE PCRを実施した。スーパースクリプトIII(インビトロジェン社)を用いる室温での最初のcDNA鎖を合成するために全RNAの2μgを用いた。5'-および3'-RACE PCR増幅の最初のラウンドを、5'-または3'-GeneRacerプライマーおよびリバースまたはフォワードの遺伝子特異的プライマーLLR2およびLLF3をアプライして実施した(表3)。ネスト化5'-および3'-RACE PCR増幅は、ネスト化5'-または3'-RACE PCR GeneRacerプライマーおよびネスト化リバースまたはフォワードの遺伝子特異的プライマーLLR4およびLLF4を用いた。5'-および3'-RACE PCRにおいて、最初の段階は94℃で30秒間および72℃で1分間の5サイクル;次に94℃で30秒間および70℃で1分間の5サイクル;第三段階は94℃で30秒間および68℃で45秒間および72℃で1分間の30サイクル;最後の伸長段階は72℃で7分間である。ネスト化5'-または3'-RACE PCRは3段階あり:最初の段階は94℃で30秒間,72℃で2分間の5サイクル;次の段階は94℃で30秒間,70℃で2分間の5サイクル;3つ目の段階は94℃で30秒間,65℃で30秒間および68℃で1分間の25サイクル;最後の伸長段階は72℃で10分間である。ネスト化PCRの鋳型は、蒸留水で1:25で希釈されたRACE PCRの第一ラウンドのPCR産物を用いた。
【0231】
RACE PCRのプライマーを表3にリストアップする。PCR精製キット(プロメガ社,マジソン,WI,US)を用いて単一のPCR産物を精製し、JM109高効率コンピテントE.コリ(インビトロジェン社)に形質転換するため、PCR II Topoベクター(インビトロジェン社)にライゲーションした。組換え細菌を、ルシア[Lucia] ベルターニ寒天平板培地上で青/白スクリーニングにより同定した。プロメガ精製キットを用いてこの挿入物を含むプラスミドを精製し、M13プライマーによってシークエンシングした。BlastxおよびBlastpの検索プログラムを用いて、LLのmRNA配列を分析した。
【0232】
3つのプライマーセット(表3を参照)を組み合わせて増幅したことによって、サケLLから予測されるサイズの単位複製配列(図16A)が得られた。ゼブラフィッシュmRNAがないブランクの水は陰性だった。最大の産物(720bp)をシークエンシングし、LLがゼブラフィッシュに存在することを証明した。種々のサイズのPCR産物(図16A)が増幅されたのは、種々の位置でのサケのエキソンに隣接する特異的なオリゴヌクレオチドを用意したからであり、ゼブラフィッシュLLとサケLLとの間に高い相同性があることがさらに立証された。増幅反応の陽性対照として、我々はβ−アクチンを用いた。
【0233】
5'-RACE PCRによって、ゼブラフィッシュLLの5'-非翻訳領域(5'-UTR)の配列が明らかとなった。我々は、受精後4時間(4hpf)から孵化後5日間(5dph)までのmRNA(図16B)を用いた。RACE PCR増幅の第一ラウンドで極めて微かな産物が得られた。反応の特異性を上げるために、高アニーリング温度(65℃)を用いる第二ラウンドのRACE PCRに、すべてのステージで増幅された産物(第一のRACE PCR反応物を1:20希釈したもの)を用いた。すべてのステージ(図16B)から(4hpfからでさえも)、同じ2つの産物(520bpおよび420bp)が生成した。これら発生のステージの20を超えるクローンからLL配列情報が得られた。すべてのクローンは、サケLLで検出された29nt上流の領域(図16C)を含んだ。3'-末端も複数の分析によってシークエンシングされ、サケのロイコレクチンで見つかった構造と極めて類似の(ほぼ同一の)構造が明らかとなった。完全長cDNA配列に基づく推定ゼブラフィッシュLLタンパク質を、NCBI遺伝子バンクに寄託した(アクセス番号FJ643620)。コードする配列は、765ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを有する1,213ntからなる。翻訳開始コドンを+1のnt位置(または30〜32nt;図16C)と仮定すると、ゼブラフィッシュLLの推定アミノ酸配列は、255AAのタンパク質を示唆する。LLのcDNAも、ntで+94に開始コドンを有すると考えられる(図16C)。ゼブラフィッシュLLクローン20個のうち4個において、転写物は+1部位から上流29ntを含むが、その先の93ntがなかった(nt配列は−1まで、続いて+94まで正確に読んでいる:図16C)。従って、このデータから、2つの異なるLLタンパク質が翻訳されているかもしれないことが示唆される(図16C)。
【0234】
ゼブラフィッシュとサケとのLLタンパク質間で強い相同性があることは明らかだった。ゼブラフィッシュLLは2個のサケLLと比較してハイブリッド構造である。確立されたLL分類基準7個のうち、4個の基準はLL-1のカテゴリにゼブラフィッシュLLを分類した一方で、2個の基準はLL-2のカテゴリにそれを分類した(図16E)。7個目の基準はゼブラフィッシュLLに特有である(図16E,囲み領域)。さらにまた、1つのCysがエキソン3になく、「nmnTPYClts」配列でArgに置換され、それはゼブラフィッシュで「nmnDTPRlts」と読まれる。結論として、ゼブラフィッシュLLは、5個のシステインを有し、一方サケは6個のシステインを有し、すべてジスルフィド架橋にあると予測される。
【0235】
様々なエキソンに関して、エキソン1は同一である一方で、ゼブラフィッシュのエキソン2はサケで見つかっていない3個の特有なAAを有する(#57および#58の位置でSer−Glnの代わりにGly−Arg、ならびに#78の位置でIleの代わりにVal)。エキソン3は変異した残基を4個(または2個?)有する。3個の分類部位は別として、エキソン4および5に差異はない。従って、分類部位を無視してゼブラフィッシュLL(全255AA)には5個(または7個)の特有なAAがある。ゼブラフィッシュLLはサケLLとの比較において高度に保存されており、数%の地点でしか違わない。
【0236】
ゼブラフィッシュLL(図16D,E)は、サケLLと密接に類似している。ゼブラフィッシュLLは、サケLLに見られる6個のCysのうち1個を欠いており、よって、たった2個のジスルフィド架橋しか含んでいないかもしれない:1個がN末端およびC末端を接続しており、さらにエキソン4の内部架橋である。サケLLと大型ゼブラフィッシュLL(図16E)とを比較して、サケに見られるありふれた構造のバリエーションはゼブラフィッシュLL構造によって補強される。1つの根本的な差異が観察される(#131残基)が、サケLLのバリエーションが発生する所では、ほとんどで保存された置換が見られる。PVFのLLは免疫防御機能を有しているかもしれない。LL構造のバリエーションが制限されることによって、このような機能が関与するかもしれない。トランケートされたロイコレクチン(tLL)は分泌ペプチドを欠いており、これはtLL(図16D)が分泌されないことを示唆し、tLLは4枚羽β−プロペラタンパク質であるかもしれない。理論的には、種々のLLタンパク質は、種々の細胞性機能を果たしてもよい。tLLの機能は、レクトサイト以外の細胞で機能してもよい。
【0237】
実施例10:サケのLL遺伝子の単離および特徴付け
BACライブラリのスクリーニング
ロイコレクチン遺伝子のゲノム構造を得るために、我々は、サケゲノム計画(オスロ,ノルウェー)によって利用可能となった公的なサケゲノムBACライブラリ(18×カバー度,挿入物の平均サイズは約188kb)をスクリーニングした。オスの大西洋サケ(Salmo Salar)のノルウェー水産養殖株から構築された、高度に重複した細菌の人工染色体(BAC)ライブラリを、LL陽性クローンについてスクリーニングした。このライブラリは総数305,557個のクローンからなる。ライブラリの挿入物の平均サイズは188kbpであり、18倍のゲノムカバー度を表す。CHORI-214 高密度フィルタSeg.1(フィルタセット-007193)は、それぞれに複写でスポットされた18,432クローンからなり、ハイブリダイゼーションスクリーニングのために産生されている。
【0238】
このライブラリをスクリーニングするために、620bpのLL特異的cDNAプローブを、フォワードプライマーであるLL/F 5'-TACGGACACAGGTCGAATCCCCTACTACC-3'およびリバースプライマーであるLL/R 5'-ACAGAGAAGAGGCTAATGTGTGCAC-3'を用いて、PCR法によりジゴキシゲニン-11-dUTP(ロシュ社)を組み込むことによって調製した。DIG標識cDNAプローブを95℃で10分間インキュベート、直ちに5分間氷中に置いた後、ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC,50%のホルムアミド,0.02%のSDS,2%のブロッキング剤(ロシュ社),DEPC処理水)に添加した。
【0239】
ハイブリダイゼーションチューブ中55℃でハイブリダイゼーションを終夜実施した。ハイブリダイゼーション後の洗浄段階を、0.1%SDSを有する2×SSC中室温で15分間という低ストリンジェントでそれぞれ2回および0.1%SDSを有する0.1×SSC中65℃で20分間という高ストリンジェントでそれぞれ2回実施した。マレイン酸緩衝液(pH7.5)および1%ブロッキング剤(ロシュ社)を含むブロッキング溶液中で濾過物をインキュベートし、続いて、1:10,000希釈された抗Dig−アルカリホスファターゼ(AP)結合抗体(ロシュ社)を有するブロッキング溶液中室温で1時間インキュベートした。150mMのNaClおよび0.5%のTween 20を含む0.1Mのマレイン酸緩衝液(pH7.5)による洗浄後、膜を検出緩衝液(0.1MのTrisHCl,0.1MのNaCl,室温でpH9.5)中2分間平衡化した。陽性の二重スポットを、基質としてCSPD(ロシュ社)を用いる化学発光分析によって視覚化した。陽性のシグナルは、濾過物をX線フィルム(コダック社)に露光することによって同定した。露光時間を3〜15分間で変化させた。2個の選択された陽性クローンL-7/257およびA-12/144を調製した寒天平板培地に蒔き、37℃で終夜インキュベートした。3個のクローンを選択し、20μg/mLのクロラムフェニコールを有するLB培地中37℃で5mLの振盪培養法で終夜増殖させた。超高純度DNA精製キット(キアゲン社)を用いて、プラスミドDNA精製をその翌日に実施した。BAC DNAをNotIで消化し、パルスフィールド電気泳動(PFGE)で分析した(オソエガワら,1998年,Genomics,52巻,1〜8頁)。低レンジPFGマーカー(ニュー・イングランド・バイオラボ社)およびλ−Hind III断片(タカラ社)をDNAサイズマーカーとして用いた。
【0240】
陽性クローンのPCR検証
鋳型としての精製BAC DNAと遺伝子特異的プライマーとを用いてPCR反応を実施した。PCR反応物を95℃で3分間インキュベートし、続いて、95℃で30秒間,54℃で30秒間のアニーリング,および72℃で30秒間の伸長を35サイクル、最後に72℃で10分間インキュベーションした。熱サイクルの後、PCR反応物のそれぞれ2μLを1.5%アガロースゲルで分析した。
【0241】
ロイコレクチンBACクローンのショットガンシークエンシング
2個のクローンを、MRW(ベルリン,ドイツ)がシークエンシングした。重複が2.4倍であると推定し、ベクター挿入物をシークエンシングした。シークエンシングしたものから、ベクターおよび宿主成分を取り除いた。約180個のシークエンシングしたものから、それぞれ総数で33個および22個のコンティグを、生物情報学を用いて2個のBACクローンから確立した。コンティグを、mRNA配列とアミノ酸配列との両方によって調べた。プログラム検索と手動の調査とによる分析によって、エキソンおよびイントロンを同定した。LL遺伝子すべてを重複するコンティグから同定した。
【0242】
ゲノム構造
上記のスクリーニングの結果から、BACライブラリ命名法に従いA-12/144,L-16/143,P-6/76,B-5/70,O-20/85,L-7/257およびF-7/176と呼ばれる7個の特異的なクローンを同定した。ゲノムBACクローンの平均挿入物サイズは、選択されたBACクローンすべてから精製されたDNAから推定され、続いてそれをNotI制限酵素で消化した。ベクターを含むDNA消化産物をパルスフィールドゲル電気泳動によって分離し、臭化エチジウム染色により視覚化した。すべてのBACクローンから2個のバンドのみが得られ、ベクター(pTARBAC2.1)サイズが〜13kbp(13,397bp;オソエガワら,1998年,上記)であったことを示した。これは、すべてのクローンの挿入物サイズが〜25kbpであったことを示唆する。7個の選択されたBACクローンのうち6個の配列を、LL遺伝子に特異的なプライマーとともに、鋳型としてBACクローンから精製されたDNAを用いて増幅することで、もう一度検証した。PCR増幅によって、これらクローンのすべてから〜600bpの産物が得られた。これらの同一性を、直接シークエンシングすることでさらに確認した。
【0243】
2個のBACクローンのショットガンシークエンシング
配列アセンブリプログラムBioEditおよびDna Baserをすべての配列データに用いた。単離された25kbpのBACクローンの両方とも、mRNA配列とタンパク質配列との両方に対してスクリーニングしたとき、完全なロイコレクチンmRNA配列(ベクター配列成分の排除後)を含むことが分析から明らかにされた。BACクローンのうち1個のデータから合計80個のシークエンシングしたものが得られ、33個のコンティグとして集められた。これらのうち少なくとも6個のコンティグはLL配列を含み、それによってすべてのLL遺伝子が再構築できた。LL配列に加えて、他の成分が、これらのコンティグの中から高い確度をもって頻繁に同定され、逆転写酵素,イオン性ペプチダーゼおよび転置因子を含んでいた。
【0244】
LLゲノム遺伝子構造の特徴
最初の分析で、たった1個のクローン(L7/247)からLL遺伝子すべてを同定することができたが、他のクローン(A12/144)からもゲノム構造のほとんどが明らかとなった(図16)。その遺伝子が4個のイントロンによって分断された5個のエキソンからなり、TATAボックスから開始して〜2.3kbpにわたる、ロイコレクチンのゲノム機構を、ゲノムクローンL7/247のデータが示唆している。ゲノムLL配列によって、mRNAの81ntの5'UTR(非翻訳要素)が示され、ATG開始コドンから−81の位置(TATAAAA)で始まるTATAボックスが明らかとなった。終止コドンTAGは、ゲノム配列のATGから約1850ntに位置する。6ntの長さのポリアデニル化シグナルAATAAAは、ATGから2,250の位置周辺から始まる。3'UTRは、終止コドンTAGの後から始まる約400ntの長さの配列である。5'UTRは81ntからなり、LL遺伝子サイズは、エキソンの2倍多くの配列を占めているイントロンを有し、従来の定義により少なくとも〜2.3kbpであると推定される。ロイコレクチン遺伝子のエキソン−イントロンの境界を検証するために、確立したゲノムのイントロン配列からPCRプライマーを設計し、サケ胚DNAから各エキソンを増幅するために用いた。これら5個のエキソン配列は単位複製配列の直接的な配列分析によって誘導され、すべてが確立したゲノム配列に一致した。
【0245】
コードするエキソンのサイズは極めて明白なように見え、55bp(エキソン1)と234bp(エキソン2)との間で異なった。とりわけ、2個のイントロンは比較的小さかったので、データの手動読み込みから正確な長さを導き出すことができた。対照的に、イントロン3は約250ntである一方で、イントロン4は約700bpにわたる。イントロン4の正確な長さは、利用可能なデータから定義することができなかった。複合されたエキソン配列のデータから、予測される翻訳産物、すなわち255AAタンパク質が確認される。
【0246】
さらにまた、このデータから、ロイコレクチン2個の記載されたバリアントのうち1個について、5個のエキソンおよび4個のイントロンを有するゲノムLL遺伝子構造が裏付けられる。精製LLの直接エドマン分解によって、分泌LLタンパク質のN末端AA残基がトリプトファンであることが確認された。このTrp残基は、255AA前駆体タンパク質のN末端メチオニンから#20の位置を占め、アミノ酸#18(His)および#19(Ala)が先立つ。プロセッシングのプロテアーゼの切断部位はAlaとTrpとの間であると予測され、分泌LLタンパク質が生成される。直接エドマン分解によって、この分泌LLの配列は、WDCQE VVNIK NLMQI DAGLG Q−Vとして確立され、また、複数の仮想タンパク質配列によって検証された。エキソンすべてがインフレームであるわけではないが、すべてのリーディングフレームを分断することなく、あるエキソンを飛ばすことは潜在的に許容される。ゲノム配列分析によって、エキソン/イントロンの境界の配列が示された。例外はイントロン4であり、おそらく標準的ではないntがそのイントロン配列に隣接している。イントロン1,2および3において、共通のGT//AGの特徴が多くの脊椎動物のイントロンの開始および末端に隣接していることを我々は発見した(シャピロおよびセネパシー,1987年,Nucleic Acids Research,15巻,7155〜7174頁)。
【0247】
エキソン1(19AA)は長さ55ntであり、
【0248】
【化1】
【0249】
の配列を有し、分泌ロイコレクチンのN末端トリプトファンに先立つAla#19残基の最初がGのコドンで止まる。太いイタリック体の大文字Rは、おそらくロイコレクチン-3遺伝子に結合したこの位置のバリアントAAを示す(図17を参照)。ゲノム遺伝子配列は、イントロン1を開始するために、ヌクレオチドGTに続く。イントロン1はヌクレオチドAGで終わり、エキソンIIが続き、それは、ロイコレクチンのN末端である#20のTrpのTGGコドンに先立つ#19のAlaコドンの最後の2個の塩基(−CA)を含む。イントロン1は長さ89ntである。
【0250】
エキソン2(234nt)は77AA(234−2nt/3=77AA+1nt)を含む。ここで、ゲノム配列はヌクレオチドGT(イントロン2の)に続く前に、(ala)−WDCQEVVNIK−NLMQI DAGLG−QVVAT DTSQI−PYYLV G*DKWI−RL* PGS LKHIT−VGPAG IWGVN−KDYAI YKYVA−GNWVQ AA(G)(=77AA+1nt)に翻訳される。星印は、他のAAがLLタンパク質またはLLcDNAの複数配列のいずれかから見つかった残基を意味する(図17を参照)。G*はロイコレクチン-1において変化するように見える一方で、L*はロイコレクチン-2において変化するように見える。イントロン2は長さ186ntであり、ヌクレオチドAGで終わる。
【0251】
エキソン3(72AA)がGC(=Gly,#78残基)を有する2個のヌクレオチドの後から始まり、さらに216nt(合計218nt)または72AAが続く。エキソン3のアミノ酸配列は以下のように読みとられる:
【0252】
【化2】
【0253】
ここで残基#150はSである。太字かつ下線の3個の大文字は、ロイコレクチン-1とロイコレクチン-2とを区別するのに役立つバリアントAAを示す。先と同様に、星印を有する文字は、このような位置の微小変異を有する残基(ロイコレクチン-2のN*;P*はロイコレクチン-1とロイコレクチン-2との両方で微変動を示す)を意味する(図17を参照)。イントロン3は、ヌクレオチドGTから始まり、さらに〜250ntが続く。
【0254】
エキソン4(39AA)はAA残基#151=
【0255】
【化3】
【0256】
から始まり、ここで、Tは残基#189である。先と同様、太字で下線の残基は、ロイコレクチン-1をロイコレクチン-2から区別するのに役立ち、一方、星印はこの位置の微変動を意味する(位置E*でいずれのロイコレクチンでも見られ、位置A*ではロイコレクチン-2のみで見られる)。イントロン4は、おそらく、イントロンの定義にかかる標準的なnt配列で開始および終止しないかもしれない。イントロン4にかかるデータは、このようにいくらか予備的であり、それ故イントロン4の長さは概算(〜700nt)である。
【0257】
エキソン5(47AA)はR(=残基#190)のコドンから始まり、終止コドンTAGに先立つC末端ヒスチジン(残基#236)および3'UTRまで続く。この配列は以下のように読みとられる:
【0258】
【化4】
【0259】
ここで、星印は、ロイコレクチン-1のこの位置での微変動を示す。太字の文字は、ロイコレクチン-1とロイコレクチン-2との差異を示す。太字かつイタリック体の文字は、ロイコレクチン-3の存在の可能性を示す。これらのデータを図17にまとめる。
【0260】
実施例11:ロイコレクチンmRNA配列に対するロイコレクチン-1ゲノム配列の比較
サケcDNAの1ダースを超える分離したクローンおよびシークエンシング実験においてアライメントされた配列から、適応した異なるアミノ酸残基の明確な交代が7つの位置のみであることが明らかとなった。配列全体の変異が少数であること、およびこのような変異の制限がありふれたものであることは、注目に値する。
【0261】
L-7/247のゲノム配列は、ロイコレクチン-1として分類されるロイコレクチンのクローンと一致する。ロイコレクチン-2と称される、他にシークエンシングされたcDNAは、示された7つの位置で異なる。これらの位置に加えて、AAのさらなる変異がいくつか示されている。これは、2つの分類されたcDNAにおける付加的な微小な不均一性を示唆する可能性があるが、データは、LLcDNAにおける第三のカテゴリの存在を示唆する可能性がある。例えば位置#226において、ロイコレクチン-1またはロイコレクチン-2のcDNAのいずれにも決して観察されないチロシン残基を我々がいくつかのクローンで発見したからである(図17)。
【0262】
観測した変異の概要を図17に示す。ロイコレクチンの2つのタイプは、成熟ロイコレクチンの推定AA配列の7つの位置(#88,91,101,147,158,229,230)でのそれぞれ(N,V,F,F,N,G,G)に対する(E,I,Y,Y,K,A,V)によって特徴付けられる。これら7つの位置は明白にこれら2個のロイコレクチンを分類し、それはさらに、図17の星印で示されるありふれた位置で微小変異を呈してもよい。図17のデータが示するように、いくつかのmRNA配列は、ロイコレクチン-1および2に見られず、従って、ロイコレクチン-3の可能性を示唆する、LLシグナルペプチドの位置#2における特有なGlyを指す。加えて、我々は、ロイコレクチン-1および2ではSerだけが見られる、成熟ロイコレクチンの位置#226でTyrを観察した。我々は、L7/247のゲノム配列が、サケLLcDNAを複数シークエンシングすることによって発見されたロイコレクチン-1配列に一致すると結論した。LLのBACクローンのさらなるシークエンシングによって、上記残基の基準によって定義されるような、他の主要なロイコレクチン-2のカテゴリが明らかにされるはずであり、疑わしいロイコレクチン-3の存在もおそらく明らかにされるはずである。
【0263】
実施例12:他の種におけるロイコレクチンタンパク質の検出
ニジマス(Oncorhyncus mykiss),タラおよびオイコプレウラ・ディオイカの孵化体液を、ロイコレクチンタンパク質の存在について調査した。孵化体液のタンパク質を、15%のSDS−PAGEで分析されたアフィニティクロマトグラフィによって調製した。このゲルを、様々なタンパク質の存在を示すために銀染色するか、またはブロットしてサケのロイコレクチン抗体を用いて探索した。いずれの場合においても、〜26kDaの単一タンパク質を検出し、ロイコレクチンの分子量に一致した(図18(ニジマス),19A(タラ)および19B(オイコプレウラ・ディオイカ)を参照)。
【0264】
配列:
1:(サケ胚のロイコレクチンポリペプチド):
MRTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSAVTMVCTH
2:(サケ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
SIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLPKQLDAGGEQFIVGANMDDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNNGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMCMLMGHVTYDLGRLWVVSKSAVTMVCTH
3:(コイ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
LVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRD
4:(ニワトリ白血球のロイコレクチンポリペプチド):
IPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVV
5:(ヒト白血球のロイコレクチンポリペプチド):
MRATAAVLLVLCLLTISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTGRIPYYLVGDKWIRLPGSLKHVTVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYRLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSGGTMVCTH
6:(ゼブラフィッシュのロイコレクチンポリペプチド):
MGTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGNQFIVGANMNDTPYRLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVTKSGGTMVCTH
7:(サケのロイコレクチン-2 ポリペプチド):
MRTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGNQFVVGANMDDTPFCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGHFGCWAVNKNDDIFLMSLNQDCQNNGWSHIDGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVSKSGGTMVCTH
8:(サケのロイコレクチン-3 ポリペプチド):
MGTTAAFLLVLCLLAISHAWDCQEVVNIKNLMQIDAGLGQVVATDTSQIPYYLVGDKWIRLPGSLKHITVGPAGIWGVNKDYAIYKYVAGNWVQAAGLLKQLDAGGEQFIVGANMNDTPYCLTSSATVGYKGPGSPLPWTGLPGAVKYYSCGPFGCWAVNKNDDIYLMSLNQDCQNKGWSHIEGKLSMIEVATDGSVFGVNSAGSVYTRDGITASKPEGTGWSNIPMGMLMGHVTYDLGRLWVVYKSAVTMVCTH
9:(ヒト血液のロイコレクチンcDNA配列):
ATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAGGTCGAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATGTCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACCGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCTGTCTAAAGTTCACTTGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATTATCTTATTGCCATTTAAAAAAATATCAATGAAGATGTTATATTTTCTTGACCACTCCTTGATTAACACTTCAATAGATCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCATGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAGAGGTCATCAATAGGATTGGATGGAATCCTTGTCATTGTTTATTATCTCATTATATAAACATTTCCTGCAAAAATAAAGCATTCATTTTGAAACTATTGTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN
10:(成熟サケのゲノムDNAライブラリの、サケのロイコレクチン遺伝子配列):
TGTGCAGGGCTATAAAAGCGCAAAGTCTTCCAATGGGACAATTGAAGTCTGGTGTACAACCAAACGTATACTGTAGATCTACATAGACATCATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGGTAAGTTACCATCATCTGAAACATGCTTGATCAACTTGGAGTTGAAGTTTTTCTTGGTATACTCTACTCATATGTCTTTGTCTCCATAGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGTAAGTGGAGAGCATTACTCAATATTTATCCAGAGGACACCTGCTTATTAGCTTTCCTGATACCATCAGGCTGTTGAAAAAAACGATTGATGTTTTAAATTGTAACTTGTAGGTAATTTGGCAGTACTCCTTGTTTGCTTGTCTGTCTGTCTTTGTGGTCTTGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTGTAAGATCTGGGAAAGAGTGGGAGAGCTGGAGTAGAGTAGTAGAGGATGGAGAGTGTCAGTTATTTTAAAACTGTTTCATATTATAACTGTTGAAATTGTCCTAAAACCCTGATTGTATCATTTTGTTTCCAGCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCCAGGTAAGGTTGCTACTGAACTATGTGTATGGTCCACCACCCCCCCCCCCCCAACAGTATTAACTTGAAAATGACTTGTAATAATAACTTAGAATAATAATGGTATACCCTTTAATTATAACTCTGATCCTTACAGTACATGCTATGTGAATCTCCTTACACAAAAACTAAATATTGTAGGTACATAAATAAAATCAGTTAAATATAATCAGATCTAAACTTATAGGACTTATTAAGAAATGTGTAGACAGTGTATGATAAAATATGTAAAAGTTGGATGTCCTGTAAAGCTACAGTTTGGGATAAAAAACAACAACTTCCCAGACACCCCACCACTTGTTCTGGTAAACAGCTGAGGAATGTAGTTAGAGAAATGTAACCACTCTCACATTCATACATGGAGCTACGGATGCAAAGACACAACAATTTTTTTATTAAAAAAAAAAAAATGTTTATATTTTCTTTTAAAGCTAAACATTGTTTGTTTACAATAACATTGTTTACAAACAATTGAGTAAAAGCTTACATTTTGGCTTCTAATGTGGTTGAATAAAGCTCAAGATGCAGAAGTTATATTCTTCAAAAATCTATGGCTATATTTAATTATTAAAGTCCAAAAATGGATGTACTTAAAAAAAATGGATAAGCTTTAAAACATGAACCCCAACCCTTTCTTCAACACAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCTGTCTAAAGTTCACTTGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATTATCTTATTGCCATTTAAAAAAATATCAATGAAGATGTTATATTTTCTTGACCACTCCTTGATTAACACTTCAATAGATCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCACGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAGAGGTCATCAATAGGATTTGACGGAATCCTTGTCATTGTTTATTATCTCATTATATAATCATTTCCTGCAAAAATAAA
11:(200〜450日齢のサケ胚のロイコレクチンcDNA配列−エキソンのみ):
ATGAGAGCCACTGCAGCCGTCCTATTGGTCCTCTGTCTCCTGACCATCAGTCATGCATGGGACTGTCAGGAGGTAGTAAACATCAAGAATCTGATGCAGATCGATGCAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCA CACAT
12:(サケ白血球のロイコレクチン遺伝子配列):
ACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCGTTCCGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTAACCAGTTTGTTGTGGGGGCTAACATGGACGATACTCCATTTTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACACTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATTTTCTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAACGGGTGGAGTCACATTGATGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGGCGGCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGT
13:(タラのロイコレクチン遺伝子配列):
CAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACCCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGAC
14:(ニワトリのロイコレクチン遺伝子配列):
CAGGACTGGGGCAAGTGGTTGCTACGGACACAAGTCAAATCCCCTACTACCTGGTAGGTGATAAATGGATCCGTCTGCCTGGTTCCCTGAAGCATATCACTGTAGGACCAGCAGGGATCTGGGGTGTCAACAAGGACTATGCAATCTACAAGTATGTGGCCGGTAACTGGGTTCAAGCTGCAGGCCTTCTGAAACAGTTGGATGCTGGAGGTGAACAGTTTATTGTGGGGGCTAACATGAACGATACTCCATACTGTCTGACAAGTAGTGCCACAGTTGGCTACAAGGGTCCAGGCTCACCCCTTCCATGGACAGGATTGCCAGGAGCTGTGAAGTACTACAGCTGCGGACGCTTTGGGTGCTGGGCAGTCAACAAGAATGATGATATCTACTTAATGAGTCTGAATCAAGACTGCCAAAACAAGGGGTGGAGTCACATTGAAGGCAAGCTTTCCATGATTGAGGTGGCAACTGATGGTAGTGTCTTTGGGGTCAACTCTGCGGGTAGTGTTTATACCAGAGACGGCATCACAGCCGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGGGCATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCT
15:(ゼブラフィッシュのロイコレクチン部分ゲノム配列):
NNAAAANNTAAAATANNGTAGGTACANNNNAAATCAGTTAAATATAATCAGATNTAAANTTNTAGGACTATTAAGAAATGTGTAGACAGCGTACGATAAAATATGTAAAAGTTGGATGTCCTGTAAAGCTACAGTTTGGGATAAAAAACAACAACTTNCCAGACACCCCACCACTTGTTNTGGTAAACAGNTGAGGAATGTAGTTAGAGAAATGTAACCANTCTCACATTCATACATGGAGTTACGGATGCAAAGACACAACAATTTTTTGTTTACATTNTTTTTAACATGTTTTTTAAAGCAATACACATTGTTTGTTTACAATAACATTGTTTACAAACAATTGAGTAAAAGCTTACATTTTGGCTTCTGTGTGGTTGAAATAAAGCTCAAGAGGCAGAAGTTATATTCTTCAAAAATCAATGGCTATATTTAATTATTAAAGTTCCAAAAAGGATGTACTTAATAAAATGGATAAGCTTTAAAACATGAACCCCAACCCTTTCTTCAACACAGAGACGGCATCACAGCCAGTAAACCAGAGGGCACCGGATGGAGCAATATCCCAATGTGTATGCTCATGGGCCACGTGACCTACGACCTGGGCCGTCTTTGGGTCGTCTCCAAGTCTGCCGTCACCATGGTGTGCACACATTAGCCTCTTCTCTGTAGCTGAAGGCCGTTCGGGATCCGTCCAAAGTTCCCTGGCGAACTCATTGATCTCTCTTTCTGGAAAAGCCTTTAGTTCATAAAAATCCTTCATTTTAAAACCTATTGCTCTACCTATTATTTTCAGTTCTTCAATGATCTTATTGACATTTAAAAAAAATATCATTGAAGATTTTATATTTTCTTGACAACTCCTAGATTAACACTTCAATAGACCTTTGCCATGGAGGCTATTTAAGTGTAGTGTAAACTAGGGCACGGTCATGTTGCTCACAATCCACATGGGTTTTGCTGTGCTTCAAAGGTCATCAATAAATCACTAGTGCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATGGGAGAGCTCCCAACGCGTNGGATGCATAAG
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列,もしくは,
該配列と少なくとも50%同一である配列,または,
これら配列のいずれかのうちの一部
を含むポリペプチド。
【請求項2】
配列番号9〜15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列,
該配列と少なくとも50%同一である配列,もしくは,
室温での6×SSC/50%ホルムアミドというストリンジェントではない結合条件下で該配列とハイブリダイゼーションし、例えば65℃での2×SSC等の高いストリンジェントな洗浄条件下で得られる配列(ここでSSC=0.15MのNaCl,0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.2),または,
上記配列のいずれかと相補的な配列,あるいは,
それらのうちの一部
を含む核酸分子。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項4】
請求項2に記載の核酸分子を核酸であるベクターに挿入することを含む、請求項3に記載の組換え核酸分子を調製する方法。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドを調製する方法であって、
該ポリペプチドが発現する条件下で、請求項2に記載の核酸分子を含む宿主細胞を培養すること,および,
このように産生された該分子を回収すること
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって得られるポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチドまたは請求項2に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチド,請求項2に記載の核酸分子,または,請求項8に記載の抗体,
ならびに,
1以上の薬学的に許容し得る賦形剤および/または希釈剤
を含む医薬組成物。
【請求項10】
治療に使用するための、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,傷害性皮膚を治療または予防する方法であって、
1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物を該動物に投与する方法。
【請求項12】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,損傷した皮膚を治療または予防するための医薬の調製における、1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物の使用。
【請求項13】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,傷害性皮膚を治療または予防するための、1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物であって、
治療または予防される上記疾患が、皮膚の自己免疫疾患もしくは皮膚の炎症性疾患または傷害性皮膚であり、
該ポリペプチド,該核酸分子,該抗体,または,該組成物が、好ましくは該皮膚に局所的に投与される、方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項15】
治療または予防される上記疾患が、痛み,潰瘍,湿疹,座瘡,乾癬,胃腸炎(好ましくはクローン病,潰瘍性大腸炎および他の慢性炎症),歯肉炎,口腔および食道の炎症,または,傷害性皮膚である、請求項14に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項16】
上記の損傷した皮膚が、炎症を起こしたか,もしくは,赤く腫れたか,寒さでひび割れたか,日焼けしたか,放射線を浴びたか,熱により損傷したか,または,外傷である、請求項15に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項17】
ヒトの治療または動物の治療における、同時の,別個の,または,連続の使用のための、
1以上の上記請求項に記載の、1以上のポリペプチド,1以上の核酸分子,または,1以上の抗体,
および,
複合調製の際に追加される1以上の活性成分
を含む製品。
【請求項18】
前記動物が、哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,医薬組成物,または,製品。
【請求項1】
配列番号1〜8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列,もしくは,
該配列と少なくとも50%同一である配列,または,
これら配列のいずれかのうちの一部
を含むポリペプチド。
【請求項2】
配列番号9〜15のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列,
該配列と少なくとも50%同一である配列,もしくは,
室温での6×SSC/50%ホルムアミドというストリンジェントではない結合条件下で該配列とハイブリダイゼーションし、例えば65℃での2×SSC等の高いストリンジェントな洗浄条件下で得られる配列(ここでSSC=0.15MのNaCl,0.015Mのクエン酸ナトリウム,pH7.2),または,
上記配列のいずれかと相補的な配列,あるいは,
それらのうちの一部
を含む核酸分子。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項4】
請求項2に記載の核酸分子を核酸であるベクターに挿入することを含む、請求項3に記載の組換え核酸分子を調製する方法。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドを調製する方法であって、
該ポリペプチドが発現する条件下で、請求項2に記載の核酸分子を含む宿主細胞を培養すること,および,
このように産生された該分子を回収すること
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって得られるポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチドまたは請求項2に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチド,請求項2に記載の核酸分子,または,請求項8に記載の抗体,
ならびに,
1以上の薬学的に許容し得る賦形剤および/または希釈剤
を含む医薬組成物。
【請求項10】
治療に使用するための、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,傷害性皮膚を治療または予防する方法であって、
1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物を該動物に投与する方法。
【請求項12】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,損傷した皮膚を治療または予防するための医薬の調製における、1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物の使用。
【請求項13】
動物における自己免疫疾患,炎症性疾患,または,傷害性皮膚を治療または予防するための、1以上の上記請求項に記載のポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物であって、
治療または予防される上記疾患が、皮膚の自己免疫疾患もしくは皮膚の炎症性疾患または傷害性皮膚であり、
該ポリペプチド,該核酸分子,該抗体,または,該組成物が、好ましくは該皮膚に局所的に投与される、方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項15】
治療または予防される上記疾患が、痛み,潰瘍,湿疹,座瘡,乾癬,胃腸炎(好ましくはクローン病,潰瘍性大腸炎および他の慢性炎症),歯肉炎,口腔および食道の炎症,または,傷害性皮膚である、請求項14に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項16】
上記の損傷した皮膚が、炎症を起こしたか,もしくは,赤く腫れたか,寒さでひび割れたか,日焼けしたか,放射線を浴びたか,熱により損傷したか,または,外傷である、請求項15に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,または,医薬組成物。
【請求項17】
ヒトの治療または動物の治療における、同時の,別個の,または,連続の使用のための、
1以上の上記請求項に記載の、1以上のポリペプチド,1以上の核酸分子,または,1以上の抗体,
および,
複合調製の際に追加される1以上の活性成分
を含む製品。
【請求項18】
前記動物が、哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法,使用,ポリペプチド,核酸分子,抗体,医薬組成物,または,製品。
【図9B−1】
【図9B−2】
【図10A】
【図10C−1】
【図10C−2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図9B−2】
【図10A】
【図10C−1】
【図10C−2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−506714(P2012−506714A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533811(P2011−533811)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002569
【国際公開番号】WO2010/049688
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511109397)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002569
【国際公開番号】WO2010/049688
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511109397)
【Fターム(参考)】
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