説明

ロキソプロフェン含有外用剤

【課題】
本発明は、ロキソプロフェンを配合した外用剤のpHを酸及び/又は酸性物質により低下させた際に、析出あるいは沈殿の生成を防止することを課題とする。
【解決手段】
特定の界面活性剤、詳しくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合することにより、析出あるいは沈殿の生成を防止可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン及び/又はその医学的に許容できる塩を含有する外用剤の分野に関する。さらに詳しくは、本分野で、酸性条件で生じる析出あるいは沈殿の生成を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェン(正式名:2−[p−(2−オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸)のナトリウム塩、すなわちロキソプロフェンナトリウムはフェニルプロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤の一つである。関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎、急性上気道炎の解熱・鎮痛に対して効果を示し、汎用されている(非特許文献1)。ロキソプロフェンナトリウムは、生体内で作用の強い活性代謝物に変換されたのち作用を発揮するいわゆるプロドラッグであり、この薬物は消化管傷害が比較的少ないという特性を有するものの、消化管潰瘍の既往歴のある患者または長期投与する時には慎重に投与することが必要である。このため、係る副作用を軽減することを目的として、炎症部位での局所薬物濃度を高め全身性の副作用を回避する目的で経皮投与型の外用剤が考えられる(特許文献1)。
【0003】
ロキソプロフェンナトリウムはpKa4.20の水に極めて溶けやすい薬物であるが(非特許文献2)、精製水に溶解させるとほとんどがイオン型として存在するため、pH−分配仮説によると皮膚透過性が良好でないことが予測される。
【0004】
本発明者らは、精製水等に溶解したイオン型のロキソプロフェンを、溶液のpHを低下させることによりイオンに解離していない分子型とし、皮膚透過性を向上させることを考えた。しかし、分子型ロキソプロフェンの割合が増える酸性条件では、析出もしくは沈殿を生じるため、製造上問題があり、また、商品性を損なうという問題があった。
皮膚透過性を確認する方法としては、フランツ型拡散セルを用いた摘出皮膚透過性試験等が挙げられる。また、皮膚透過性を予測する方法としては、シリコンゴム膜を用いたin vitro放出試験(田中重男ほか、基礎と臨床、22(7) 、1775-1779(1988))等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−199883号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第15改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C−4790−4795頁
【非特許文献2】ロキソニン錠インタビューフォーム(2008年2月第4版,製造販売元:第一三共株式会社)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ロキソプロフェンを配合した外用剤のpHを酸及び/又は酸性物質により低下させた際に、析出あるいは沈殿の生成を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の界面活性剤を配合することにより、酸性条件においても析出あるいは沈殿の生成を防止可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)a)ロキソプロフェン及び/又はその医学的に許容できる塩、b)HLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、c)酸及び/又は酸性物質を配合したことを特徴とする可溶化及び/又は乳化した外用剤、
(2)b)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の外用剤、
(3)分子型ロキソプロフェン、及びHLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、分子型ロキソプロフェンを可溶化及び/又は乳化したことを特徴とする外用剤、
(4)分子型ロキソプロフェンを、HLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油で可溶化及び/又は乳化する方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、酸性条件においても析出あるいは沈殿の生成を防止した外用剤の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いられるロキソプロフェン及び/又はその医学的に許容できる塩としては、特にロキソプロフェンナトリウムが好ましい。本発明の外用剤におけるロキソプロフェンナトリウムの配合濃度は適用する疾病の症状に応じて適宜増減することができるが、ロキソプロフェンナトリウム無水物として、外用剤全体の0.5〜10.0w/v%であることが好ましく、1.0〜5.0w/v%であることが更に好ましい。ただし、その剤形によって適宜変えることができる。
【0012】
本発明におけるHLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。HLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合濃度は、外用剤全体の0.2w/v%〜6.0w/v%であることが好ましく、溶解性の面から外用剤全体の1.0w/v%〜6.0w/v%であることが更に好ましい。
【0013】
HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance値の略称であり、界面活性剤の親水性−親油性バランスを数値化したものを指す。
【0014】
また、本発明における外用剤のpHは、酸及び/又は酸性物質及び/又は塩基により調整し、3.5〜6.2であることが好ましく、3.5〜5.8であることが更に好ましい。
【0015】
本発明における酸としては、特に制限されないが、通常外用剤に配合される適当な酸を使用することができる。そのような酸の例としては、例えば、塩酸、クエン酸、乳酸、リン酸、酒石酸、グルコン酸等を挙げることができる。
【0016】
本発明における酸性物質とは、通常外用剤に配合される外用剤のpHを低下させる物質のことであり、例えば、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、グリチルレチン酸、L−アスコルビン酸、カルボキシビニルポリマー、イソステアリン酸、オレイン酸等を挙げることができる。
【0017】
pH調節の際には、これらの酸及び/又は酸性物質及び/又は塩基を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明における可溶化とは、溶媒に溶解しない物質がミセル中に取り込まれることにより、透明かつ均一に溶解することを指し、本発明における乳化とは、溶媒に溶解しない物質を、界面活性剤により溶媒に小滴として分散させ、エマルションを生成することを指す。また、本発明の可溶化及び/又は乳化した外用剤とは、可溶化及び/又は乳化により、析出あるいは沈殿の生じていない外用剤を指す。
【0019】
本発明の外用剤の剤形は、特に限定されるものではないが、例えば、ローション剤、液剤、乳液、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤、チック剤等が挙げられ、これらは公知の方法で製造することができる。製造に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、他の非ステロイド性消炎鎮痛剤、局所刺激剤、清涼化剤、血行促進剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、生薬等の外用剤に用いる他の有効成分、pH調節剤、抗酸化剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、経皮吸収促進剤等の添加物を適宜添加してもよい。
【0020】
以下に、実施例、試験例を示し、本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものでは無い。
【実施例】
【0021】
実施例1
ロキソプロフェンナトリウム 1g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 4g
エタノール 10g
精製水 85g
クエン酸 適量
ロキソプロフェンナトリウム1gを精製水85gとエタノール10gの混合物に溶解した。これにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を4g溶解し、クエン酸適量を加え、pHを4.8に調節し、ローション剤を得た。
【0022】
実施例2
ロキソプロフェンナトリウム 3g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 4g
エタノール 10g
精製水 83g
希塩酸 適量
ロキソプロフェンナトリウム3gを精製水83gとエタノール10gの混合物に溶解した。これにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を4g溶解し、希塩酸適量を加え、pHを5.4に調節し、ローション剤を得た。
【0023】
実施例3
ロキソプロフェンナトリウム 2g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 2g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 4g
アジピン酸ジイソプロピル 2g
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 10g
セタノール 3g
ステアリルアルコール 3g
酢酸トコフェロール 1g
プロピレングリコール 5g
精製水 68g
リン酸 適量
ロキソプロフェンナトリウム2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 4gを精製水68gとプロピレングリコール5gの混合物に溶解した。これにリン酸適量を加え、pHを5.3に調節し、水相とした。別に、アジピン酸ジイソプロピル2g、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル10g、セタノール3g、ステアリルアルコール3g、酢酸トコフェロール1gを約80℃に加温し、撹拌して油相とした。約80℃に加温した水相に油相を加え、攪拌しながら室温まで冷却し、これにリン酸適量を加え、pHを5.0に調節して乳液を得た。
【0024】
実施例4
ロキソプロフェンナトリウム 1g
l−メントール 3g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40 2g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 4g
ヒドロキシプロピルセルロース 2g
1,3−ブチレングリコール 10g
エタノール 50g
精製水 28g
クエン酸 適量
ロキソプロフェンナトリウム1g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40 2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 4gを精製水28gに溶解した。別に、l−メントール3gを1,3−ブチレングリコール10gとエタノール50gの混合物に溶解したものをこれに加え混合した。これに、ヒドロキシプロピルセルロース2gを加え、攪拌した。これにクエン酸適量を加え、pHを5.0に調節してゲル剤を得た。
【0025】
(酸性条件におけるロキソプロフェンの溶解性)
Henderson−Hasselbalchの式より、溶液中の分子型のロキソプロフェンの割合を求めると、pH6.2より高いpHでは分子型のロキソプロフェンはほとんど存在しない。そこで、希塩酸を適量加えてpHを6.2以下に調節し、分子型ロキソプロフェンの割合が増える酸性条件で、ロキソプロフェンの溶解性を確認した。溶解性の確認は、25℃±5℃の室温で、ガラス容器にロキソプロフェンナトリウム水溶液を入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、希塩酸を加え、数分撹拌した後、外観を目視で観察した。また、外観観察後にpHを測定した。試験液1〜10の外観及びpHの結果を表1に示す。外観の欄の○は、澄明な状態、×は、析出あるいは沈殿が認められた状態を示す。
【0026】
(試験液1)
精製水にロキソプロフェンナトリウム1g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。
【0027】
(試験液2)
精製水にロキソプロフェンナトリウム1g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを5.4に調節した。
【0028】
(試験液3)
精製水にロキソプロフェンナトリウム1g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを5.0に調節した。
【0029】
(試験液4)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。
【0030】
(試験液5)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを5.7に調節した。
【0031】
(試験液6)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを5.5に調節した。
【0032】
(試験液7)
精製水にロキソプロフェンナトリウム5g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。
【0033】
(試験液8)
精製水にロキソプロフェンナトリウム5g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを6.4に調節した。
【0034】
(試験液9)
精製水にロキソプロフェンナトリウム5g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを6.0に調節した。
【0035】
(試験液10)
精製水にロキソプロフェンナトリウム5g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、希塩酸適量を加え、pHを5.8に調節した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、1%ロキソプロフェンナトリウムの場合はpH5.0以下、3%ロキソプロフェンナトリウムの場合はpH5.5以下、5%ロキソプロフェンナトリウムの場合はpH5.8以下に調節すると、析出あるいは沈殿が認められた。
【0038】
本試験を行った際に、生じた析出あるいは沈殿は分子型ロキソプロフェンと考えられる。本発明はまた、ロキソプロフェンナトリウムを配合した外用剤において、ロキソプロフェンナトリウムが分子型ロキソプロフェンとして析出あるいは沈殿を生じるpH領域において、分子型ロキソプロフェンの析出あるいは沈殿の生成を防止するものである。
【0039】
(界面活性剤の比較)
分子型のロキソプロフェンが存在するpH条件で、界面活性剤の効果を比較した。25℃±5℃の室温で、ガラス容器に試験液を入れ、希塩酸を適量添加し、約12時間マグネチックスターラーで撹拌後静置し、目視で外観を観察して比較した。また、外観観察後にpHを測定した。試験液11〜23の外観及びpHの結果を表2に示す。外観の欄の○は、析出あるいは沈殿が認められず、分子型のロキソプロフェンが可溶化及び/又は乳化していると考えられる状態、×は、析出あるいは沈殿が認められた状態を示す。
【0040】
(試験液11)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0041】
(試験液12)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.4に調節した。
【0042】
(試験液13)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0043】
(試験液14)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0044】
(試験液15)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリソルベート60を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.2に調節した。
【0045】
(試験液16)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリソルベート80を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0046】
(試験液17)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテルを0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0047】
(試験液18)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテルを0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0048】
(試験液19)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテルを0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0049】
(試験液20)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、モノラウリン酸ポリエチレングリコールを0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.3に調節した。
【0050】
(試験液21)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.4に調節した。
【0051】
(試験液22)
精製水にロキソプロフェンナトリウム3g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)を0.2g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.5に調節した。
【0052】
(試験液23)
精製水にロキソプロフェンナトリウム1g(無水物として)を溶解後、精製水で全量を100mLとした。そのうち10mLを量り取り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.1g加え攪拌し、試験液とした。これに、希塩酸適量を加え、pHを5.0に調節した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示すように、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20及び他の界面活性剤では析出あるいは沈殿が認められ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60特異的に、析出あるいは沈殿の生成を防止する効果があった。
【0055】
本発明により、皮膚透過性が良好な分子型のロキソプロフェンの割合が高いと考えられる酸性のpH領域において、析出あるいは沈殿の生成を防止した外用剤を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ロキソプロフェン及び/又はその医学的に許容できる塩、b)HLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、c)酸及び/又は酸性物質を配合したことを特徴とする可溶化及び/又は乳化した外用剤。
【請求項2】
b)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
分子型ロキソプロフェン、及びHLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、分子型ロキソプロフェンを可溶化及び/又は乳化したことを特徴とする外用剤。
【請求項4】
分子型ロキソプロフェンを、HLB値が12.5〜16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油で可溶化及び/又は乳化する方法。

【公開番号】特開2012−214444(P2012−214444A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−59521(P2012−59521)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】