説明

ロック装置の固定構造

【課題】 複雑な構造にすることなくロック装置を強固に且つ確実にインナパネル側に固定する。
【解決手段】 突起部23と第2突起部24により四角孔11の縁部を2箇所で挟持することで、インナパネル4にロック装置9の本体21を固定し、同時に、リテーナ爪部15と本体爪部26を2箇所で係合させてロック装置9の本体21をリテーナ13に嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリッドをロックするロック装置を車体側に固定するためのロック装置の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車(車両)の燃料給油口は、車体のリヤフェンダ部に形成された給油開口部に設けられている。給油開口部は、一端縁を回動中心として開閉するリッドにより開閉され、リッドを開くことで燃料給油口が外部に臨み、リッドを閉じることで燃料給油口が外部から遮断されるようになっている。
【0003】
また、電気自動車やハイブリッド自動車等、動力源となるバッテリを備えた電動車両には、バッテリを充電するための充電装置が備えられ、電動車両では、外部の電源から充電口を介してバッテリ装置に充電を行っている。充電口も燃料給油口と同様に、車体に形成された開口部に設けられ、リッドの開閉により充電口の外部に対する開放・遮断を行っている。
【0004】
リッドが閉じられた状態はロック装置によりロックされ、ケーブルの操作やスイッチ類の操作により、ロックの解除の意思が示された際にリッドを開くことが可能にされている。ロック装置を車体側に固定する場合、従来から、取り付け孔を挟んでリテーナと装置本体とを結合し、リテーナに装置本体を結合することにより、例えば、リテーナを取り付け孔に固定する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来から提案されている固定構造は、リテーナと装置本体とを結合することでリテーナを車体側に固定している。このため、リテーナと装置本体を結合する機構と、リテーナを車体側に固定する構造が必要になり、固定構造が複雑になり、固定のための作業性が良くなかった。また、リッドに係合する際に装置本体に入力する荷重が直接リテーナに伝わるため、リテーナを大きくして剛性を確保する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3175495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、簡単な構造で作業性良く、しかも、大型化することなくロック装置を車体側に固定することができるロック装置の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のロック装置の固定構造は、車両のエネルギー供給部位となり前記車両外部に臨む凹部を開閉するリッドの閉状態をロックするロック装置を車体に固定する固定構造において、前記凹部のパネルに形成され一部に切欠き孔が設けられた取付孔と、前記取付孔に対応して前記凹部の前記車両外部側に配され円形孔が設けられたリテーナと、前記凹部の前記車両内部側から前記取付孔を介して前記リテーナの前記円形孔に挿入されるロック装置とを備え、前記リテーナには、前記取付孔の前記切欠き孔を通過して前記凹部の前記車両内部側に突出するリテーナ爪部と、前記円形孔の周囲に形成された溝部とが設けられ、前記溝部は、前記リテーナ爪部が前記凹部の前記車両内部側に突出した状態の際、前記パネルに対向するように形成されており、前記ロック装置には、前記リテーナの前記溝部に挿入される突起部と、前記突起部が挿入された状態で前記溝部に沿って前記突起部を移動させることで、前記凹部の前記車両内部側で前記リテーナ爪部に嵌合する本体爪部とが設けられ、前記リテーナ爪部と前記本体爪部が嵌合することにより、前記突起部が前記リテーナの前記溝部の内部で前記取付孔の前記凹部の前記車両外部側の縁面に係止し、前記ロック装置が前記凹部に固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、切欠き孔にリテーナ爪部を通してリテーナを凹部の外部側から取付孔に挿入する。ロック装置を回動させることで、突起部がリテーナの溝部を摺動し、リテーナ爪部と本体爪部が嵌合すると共に、突起部が溝部の内側で取付孔の凹部の外部側の縁面に係止する。ロック装置が突起部を介してパネルの四角孔の外部側の縁面に係合すると共に、ロック装置がリテーナ爪部及び本体爪部を介してパネルの取付孔の内部側でリテーナに嵌合し、ロック装置が凹部に固定される。
【0010】
パネルに形成された取付孔は、楕円形の長孔、三角孔、台形孔、多角形孔、だるま型孔等の非真円形状の孔とされ、取付孔の中心からの距離が長い部位の位置からロック装置の突起部が取付孔に通されてリテーナの溝部に挿入される。
【0011】
従って、簡単な構造で作業性良く、しかも、大型化することなくロック装置を車体側に固定することが可能になる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明のロック装置の固定構造は、請求項1に記載のロック装置の固定構造において、前記ロック装置には、前記突起部に対応して、前記取付孔の前記凹部の内部側の縁面に係止する第2突起部が設けられ、前記突起部と前記第2突起部により前記取付孔の縁部が挟持されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、突起部と第2突起部により取付孔の縁部が挟持され、ロック装置の凹部のパネルへの固定がより確実になる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明のロック装置の固定構造は、請求項2に記載のロック装置の固定構造において、前記取付孔は四角形の対向する辺に前記切欠き孔をそれぞれ設けた形状とし、前記リテーナの前記リテーナ爪部はそれぞれの前記切欠き孔に対応して設けられると共に、前記ロック装置の前記本体爪部はそれぞれの前記リテーナ爪部に対応して設けられ、前記ロック装置の前記突起部及び前記第2突起部は、前記四角形の対角線のそれぞれの角部に対応して設けられると共に、前記リテーナの前記溝部はそれぞれの前記突起部に対応して設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、四角形の対向する辺に対応して設けられた2箇所の突起部と第2突起部により四角形の取付孔(四角孔)の縁部が挟持され、2箇所のリテーナ爪部及び本体爪部が係合し、4箇所でロック装置が固定されるので、凹部のパネルへの固定が強固に且つ確実になる。
【0016】
また、請求項4に係る本発明のロック装置の固定構造は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロック装置の固定構造において、前記ロック装置は、軸方向に移動し先端が前記リッドに嵌合することにより前記リッドの開閉を阻止するロック軸と、前記ロック軸の軸方向の移動に連動して回動するカム部材と、前記カム部材の当接状態に基づいて前記リッドの開閉信号を出力する検出スイッチとを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る本発明では、車体側固定されるにロック装置として、エネルギー供給口用のリッドをロックするための機構を用いてリッドの開閉状態を検出することができるロック装置を適用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のロック装置の固定構造は、簡単な構造で作業性良く、しかも、大型化することなくロック装置を車体側に固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係るロック装置を備えたエネルギー供給口を説明するための車両全体及びエネルギー供給口を表す外観図である。
【図2】エネルギー供給口の内側からの外観図である。
【図3】エネルギー供給口の外側からの外観図である。
【図4】四角孔の正面図である。
【図5】リテーナの外観図である。
【図6】ロック装置を挿入した状態のエネルギー供給口の内側からの外観図である。
【図7】図6中のVII-VII線矢視図である。
【図8】ロック装置を固定した状態のエネルギー供給口の内側からの外観図である。
【図9】図8中のIX-IX線矢視図である。
【図10】図9中のX-X線矢視図である。
【図11】ロック装置の内部構造を表す分解斜視図である。
【図12】ロック軸の駆動機構を表す外観図である。
【図13】検出スイッチの作動機構を表す外観図である。
【図14】検出スイッチの作動機構を表す側面図である。
【図15】図14中のXV-XV線矢視図である。
【図16】ロック装置の動作状況説明図である。
【図17】ロック装置の動作状況説明図である。
【図18】ロック装置の動作状況説明図である。
【図19】ロック装置の動作状況説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図10に基づいて本発明の一実施例に係るロック装置を車両のエネルギー供給口に固定する構造を説明する。本実施例のロック装置の固定構造は、エネルギー供給口を形成するパネル(インナパネル)に四角孔を設け、エネルギー供給口の車体外側(外部側)からリテーナを挿入すると共に、エネルギー供給口の車体内側(内部側)からロック装置を挿入し、ロック装置をインナパネルに係止させると共に、ロック装置とリテーナを係合させ、ロック装置を車両のエネルギー供給口に固定する構造となっている。
【0021】
本実施例のエネルギー供給口は、ガソリンやアルコール燃料のタンクに連通する給油口を例に挙げて説明してある。エネルギー供給口としては、電気自動車の充電口や燃料電池自動車の燃料(水素燃料)の供給口を適用することが可能である。
【0022】
図1には本発明の第1実施例に係るロック装置を備えたエネルギー供給口を説明するための車両全体及びエネルギー供給口を表す外観、図2にはエネルギー供給口の内側からの外観、図3にはエネルギー供給口の外側からの外観、図4には四角孔を説明するインナパネルの正面視、図5にはリテーナの外観、図6にはロック装置を挿入した状態のエネルギー供給口の内側からの外観、図7には図6中のVII-VII線矢視、図8にはロック装置を固定した状態のエネルギー供給口の内側からの外観、図9には図8中のIX-IX線矢視、図10には図9中のX-X線矢視を示してある。
【0023】
図1に基づいて車両全体及びエネルギー供給口を説明する。
【0024】
図に示すように、車両1のリヤサイドアウタパネル(アウタパネル)2には開口部3が形成され、開口部3の内側のインナパネルには燃料パイプの給油口6が取り付けられる凹部7が形成されている。アウタパネル2の開口部3にはリッド8が開閉自在に備えられ、リッド8を開くことにより給油口6が外部に臨むようになっている。
【0025】
凹部7のインナパネル4の車両1の内部側にはロック装置9が固定され、ロック装置9のロック軸10が開口部3のインナパネルの車両1の外部側に臨むようにされている。詳細は後述するが、リッド8が閉じられた際にロック軸10の先端がリッド8に嵌合することにより、リッド8の閉状態がロックされる。
【0026】
車両1が電気自動車の場合、燃料パイプの給油口6の部位に充電用の差込口が取り付けられる。
【0027】
図2から図5に基づいてロック装置9の固定構造を説明する。
【0028】
図2から図4に示すように、凹部7(図1参照)のインナパネル4には取付孔として四角形の四角孔11が形成され、四角孔11の対向する辺(図4中の上辺及び下辺)には切欠き孔12がそれぞれ設けられている。四角孔11には、車両1(図1参照)の外部側から、即ち、給油口6(図1参照)が配される側からリテーナ13が挿入される。
【0029】
尚、上述した実施例では、取付孔として四角形の四角孔11を例に挙げて説明してあるが、取付孔としては、楕円形の長孔、三角孔、台形孔、多角形孔、だるま型孔等の非真円形状の孔を適用することが可能である。取付孔としては、取付孔の中心からの距離が長い部位の位置からロック装置9の後述する突起部が取付孔に通される形状であればよい。
【0030】
図2、図3、図5に示すように、リテーナ13の中心部位には、ロック装置9のロック軸10の先端部位が通過する円形孔14が形成されている。また、リテーナ13の円形孔14の周部の2箇所(図中上下方向)には、四角孔11の切欠き孔12を通過して凹部7(図1参照)の内部側に配されるリテーナ爪部15が設けられている。つまり、リテーナ爪部15はそれぞれの切欠き孔12に対応して設けられている。
【0031】
また、図5に示すように、リテーナ13の円形孔14の周囲のインナパネル4との対向面には、溝部16が形成されている。溝部16は、四角孔11の対角角部から切欠き孔12が設けられていない辺の四角孔11の外側に亘って形成されている。リテーナ13の溝部16は、円形孔14の周囲の対向する2箇所に形成されている。
【0032】
尚、図5中の符号で17は、リテーナ13の円形孔14の周囲に設けられインナパネル4の外側面に密着するシールリングである。
【0033】
図2、図3、図4に示すように、ロック装置9のロック軸10が出没動する部位は、インナパネル4の内部側からリテーナ13に挿入される。即ち、ロック装置9の本体21のインナパネル4に対向するロック軸10の外周部側には、インナパネル4の四角孔11の対角角部22(主に図4参照)の部位からリテーナ13の溝部16に挿入される突起部23がそれぞれ溝部16(図5参照)に対応して設けられている。
【0034】
リテーナ13の溝部16に突起部23を挿入した状態で、ロック装置9の本体21を回動させることにより、突起部23が溝部16に案内されて移動し、四角孔11の切欠き孔12が設けられていない辺のインナパネル4の外部側に突起部23が配される状態にされる(図4に点線で示してある)。
【0035】
それぞれの突起部23に対応して突起部23の本体21側におけるロック軸10の外周部には、四角孔11の内部側の縁面に係止する第2突起部24が設けられている。ロック軸10の径方向における第2突起部24の寸法は、インナパネル4の四角孔11の対角線の長さよりも大きく設定されている。
【0036】
そして、詳細は図6から図10に基づいて後述するが、四角孔11の対角角部22の部位からリテーナ13の溝部16に突起部23を挿入することで、第2突起部24が四角孔11の内部側の縁面に当接し、その後、本体21を回動させることにより、突起部23と第2突起部24の間に四角孔11の縁部が嵌り込んだ状態にされ、突起部23と第2突起部24により四角孔11の縁部が挟持される。
【0037】
一方、ロック装置9の本体21には本体爪部26が設けられ、本体爪部26は突起部23及び第2突起部24に対して90度位相を変えて一対のリテーナ爪部15に対応して設けられている。本体爪部26は、突起部23がリテーナ13の溝部16に挿入されて本体21を回動させることにより、リテーナ爪部15に嵌合するようになっている。
【0038】
本体21を回動させることにより、リテーナ爪部15と本体爪部26が嵌合し、突起部24がリテーナ13の溝部16の内部で四角孔11の外部側の縁面に係止すると共に、第2突起部24が四角孔11の内部側の縁面に当接し、突起部23と第2突起部24により四角孔11の縁部が挟持される。これにより、ロック装置9が突起部23を介してインナパネル4の四角孔11の外部側に係合すると共に、ロック装置9がインナパネル4の四角孔11の内部側でリテーナ13に嵌合し、ロック装置9が凹部7に固定される。
【0039】
図6から図10に基づいてロック装置9の固定手順を説明する。
【0040】
図6、図7に示すように、インナパネル4の外部側から、四角孔11の切欠き孔12にリテーナ爪部15を通過させてリテーナ13を挿入する。リテーナ爪部15は凹部7(図1参照)の内部側に配された状態にされる。インナパネル4の内部側から四角孔11にロック装置9を挿入する。即ち、インナパネル4の四角孔11の対角角部22(主に図4参照)の部位に突起部23が挿入され、リテーナ13の溝部16に突起部23が挿入される。
【0041】
この状態で、第2突起部24が四角孔11の内部側の縁面に当接し、突起部23と第2突起部24の間は四角孔11の対角角部22の位置となっている(図7参照)。図6に矢印で示したように、本体21を図中反時計回り方向に回動させる。
【0042】
図8から図10に示すように、本体21を回動させることで、リテーナ爪部15と本体爪部26が嵌合する(図9参照)。そして、突起部23がリテーナ13の溝部16を摺動して内部で四角孔11の外部側の縁面に係止すると共に、第2突起部24が四角孔11の内部側の縁面に当接し、突起部23と第2突起部24により四角孔11の縁部が挟持される(図10参照)。
【0043】
これにより、突起部23と第2突起部24の四角孔11の縁部への挟持(突起部23のインナパネル4への係合)によって、ロック装置9をインナパネル4の四角孔11の外部側に係合させることができる。同時に、リテーナ爪部15と本体爪部26の係合によって、ロック装置9をインナパネル4の四角孔11の内部側でリテーナ13に嵌合させることができる。
【0044】
このため、ロック装置9が突起部23を介してインナパネル4の四角孔11の外部側に係合すると共に、ロック装置9がインナパネル4の四角孔11の内部側でリテーナ13に嵌合し、ロック装置9を凹部7のインナパネル4に固定することができる。
【0045】
上述した本発明の一実施例のロック装置9の固定構造は、突起部23と第2突起部24により四角孔11の縁部を2箇所で挟持し、インナパネル4にロック装置9の本体21を固定している。同時に、リテーナ爪部15と本体爪部26を2箇所で係合させ、ロック装置9の本体21をリテーナ13に嵌合させている。このため、ロック装置9の本体21を回動させることで、4箇所でロック装置9をインナパネル4側に固定することができ、複雑な構造にすることなく強固に且つ確実な固定を行うことが可能になる。
【0046】
そして、突起部23と第2突起部24により、本体21がインナパネル4に固定された状態になっているので、本体21側からの荷重をインナパネル4で受け持つことができ、本体21側からの荷重がリテーナ13に集中することがなく、リテーナ13を大型化することなく確実な固定を維持することができる。
【0047】
つまり、図10に示すように、ロック装置9のロック軸10には、リッド8(図1参照)に対するロック・アンロック時に矢印方向に力が働き、ロック装置9の本体21はインナパネル4に沿った方向の荷重を受ける。本体21が受ける荷重は、突起部23及び第2突起部24からインナパネル4に伝わり、リテーナ13に集中することがない。
【0048】
このため、リッド8(図1参照)のロック・アンロック時に受ける荷重がインナパネル4に分散され、ロック装置9の凹部7(図1参照)への固定を確実な状態で維持することができる。
【0049】
従って、上述した本発明の一実施例のロック装置9の固定構造は、簡単な構造で作業性良く、しかも、リテーナ13を大型化することなくロック装置9を車体側に固定することが可能になる。
【0050】
図11から図19に基づいてロック装置9の構成を具体的に説明する。
【0051】
図11にはロック装置9の内部構造を表す分解説明、図12にはロック軸10の駆動機構を表す外観、図13には検出スイッチの作動機構を表す外観、図14には検出スイッチの作動機構を表す側面視、図15には図14中のXV-XV線矢視を示してある。また、図16から図19にはロック装置9の動作状況を示してあり、(a)は給油口の全体断面、(b)はリッド端部の詳細である。
【0052】
図11から図14に基づいてロック装置9を説明する。
【0053】
図11に示すように、本体21はケーシング31と蓋ケーシング32とで構成されている。本体21のインナパネル4との対向面には、ロック軸10の端部が支持される支持部材33が設けられ、支持部材33に突起部23及び第2突起部24が設けられている。図中の符号で34はケーシングシールである。
【0054】
図11、図13に示すように、本体21の内部には、軸方向に移動し先端がリッド8(後述するフック部51)に嵌合することによりリッド8の開閉を阻止するロック軸10が設けられている。ロック軸10には、ラックギヤ35が取り付けられ、また、ロック軸10を軸方向に付勢してリッド8に嵌合させる付勢手段としての圧縮ばね36が設けられている。
【0055】
図11、図12に示すように、本体21の内部にはピニオンギヤ37が設けられ、ピニオンギヤ37はラックギヤ35に噛み合っている。また、ピニオンギヤ37には大径のロータギヤ38が同軸状に一体に設けられて、ロータギヤ38には駆動モータ41の出力ギヤ42が噛み合い、駆動モータ41の駆動により出力ギヤ42、ロータギヤ38を介してピニオンギヤ37が駆動される。
【0056】
駆動モータ41によるピニオンギヤ37の駆動は、詳細は後述するが、ロック軸10が圧縮ばね36により付勢されて先端がリッド8に嵌合している状態から、リッド8への嵌合が解除される状態に圧縮ばね36の付勢力に抗して移動される時に実施される。それ以外の場合は、駆動モータ41とピニオンギヤ37は動力伝達がフリーの状態にされている。
【0057】
図11、図13、図14に示すように、ロータギヤ38の盤面にはカム44が固定され、ロータギヤ38の回転に伴ってカム44が回動する。本体21の内部には検出スイッチ45が取り付けられ、ロータギヤ38が回転することによりカム44が検出スイッチ45に接触してロック軸10の移動状況(リッド8の開閉状況)が検出される。
【0058】
即ち、検出スイッチ45はリッド8の開閉信号を出力するようになっている。例えば、カム44により検出スイッチ45が押されている間は、開閉信号がオフとされてリッド8が開かれていない状態(閉じられてロックされている状態及び閉じられる途中の状態)とされ、カム44により検出スイッチ45が押されていない間は、開閉信号がオンとされてリッド8が開かれている状態とされる。
【0059】
ケーシング31の内側におけるロータギヤ38の上部に対応する部位には、ストッパ部材としてストッパ46が取り付けられている。ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力によりにより前進した際に(ピニオンギヤ37が第一方向に回転した際に)、前進端でのロータギヤ38の回転位置でのカム44の一端面44aがストッパ46に当接してロータギヤ38の回転(ロック軸10の前進移動)が規制される。また、ロック軸10を圧縮ばね36の付勢力によりに抗して後退させた際に(ピニオンギヤ37が第一方向とは逆の第二方向に回転した際に)、後退限界位置(限界移動位置)でのロータギヤ38の回転位置でのカム44の他端面44bがストッパ46に当接してロータギヤ38の回転(ロック軸10の後退移動)が規制される。
【0060】
図14、図15に基づいてリッド8の開閉状況とロック軸10の状況(検出スイッチ45の作動状況)を説明する。
【0061】
リッド8には、開閉に伴ってロック軸10を移動させると共に、ロック軸10の先端部が係止するフック部51が設けられている。即ち、フック部51には、リッド8を閉じ側に操作することにより圧縮ばね36の付勢力に抗してロック軸10を後退させる部位である傾斜面部52が設けられ、傾斜面部52に連続して係止段部53が形成されている。
【0062】
ロック軸10が圧縮ばね36に付勢されて最先端部位(軸方向の端部位置:第一位置)に位置した状態で、リッド8を閉方向に操作すると、フック部51の傾斜面部52にロック軸10の先端が当接し、ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力に抗して後退移動する。その後、傾斜面部52と係止段部53の接続部54の位置でロック軸10が最後退位置に後退する。更に、リッド8を閉方向に操作すると、係止段部53の位置でロック軸10が圧縮ばね36の付勢力により前進して軸方向の端部位置の手前(第二位置)で係止段部53に係合する。
【0063】
リッド8が開いた状態では、図15に一点鎖線で示すように、ロック軸10が圧縮ばね36に付勢されて最先端部位に位置する。この状態では、図14に示すように、カム44の一端面44aがストッパ46に当接した状態にロータギヤ38が回転し、検出スイッチ45がカム44に押されていない状態にされる。この時、検出スイッチ45の開閉信号がオンにされ、リッド8が開かれていることが検知され、リッド8が開いている状態である信号が出力される。
【0064】
リッド8を閉じることにより、フック部51の傾斜面部52によりロック軸10が圧縮ばね36に付勢力に抗して押されて後退し、ロータギヤ38が回転してカム44により検出スイッチ45が押される。更にリッド8を閉じることで、カム44により検出スイッチ45が押された状態が継続し、接続部54の位置でロック軸10が最後退位置に後退する(図15に点線で示す)。
【0065】
そして、カム44により検出スイッチ45が押されたままの状態で、係止段部53の位置でロック軸10が圧縮ばね36の付勢力により前進して軸方向の端部の手前で係止段部53に係合する(図15に実線で示す)。ロック軸10が係止段部53に係合することで、リッド8がロックされる。
【0066】
カム44に検出スイッチ45が押されている間は開閉信号がオフとされ、リッド8が開かれていない状態(閉側の状態)が検知される。即ち、ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力に抗して移動している状態のロータギヤ38(ピニオンギヤ37)の回転位相、及び、ロック軸10がリッド8に嵌合している状態のロータギヤ38(ピニオンギヤ37)の回転位相では、カム44が検出スイッチ45に接触し、リッド8が閉じ側の状態である信号が出力される。
【0067】
上述したロック装置9は、リッド8をロックするためのロック軸10の軸方向の移動をカム44の回動に変換し、カム44による検出スイッチ45の動作信号によりリッド8の開閉状態を検出しているので、リッド8をロックするための機構を用いてリッド8の開閉状態を検出することが可能になる。
【0068】
このため、リッド8の組み立ての公差等により開閉機構の開閉状態にバラつきが存在していても、検出スイッチ45の動作範囲にバラツキの影響が及ぶことを抑制することができ、リッド8の開閉状態を組み立ての公差に拘わらず確実に検出できる。
【0069】
また、圧縮ばね36の付勢力によりロック軸10が移動している際に、カム44と検出スイッチ45を非接触にしてリッド8の開信号をオンにするようにしているので、圧縮ばね36の付勢力に抗してロック軸10が移動する範囲でカム44と検出スイッチ45を接触させてリッド8の開信号をオフにすることで、リッド8の組み立ての公差や検出スイッチ45の動作範囲のバラツキが多少存在しても、リッド8の開信号を正確にオン状態に設定することができる。
【0070】
つまり、カム44と検出スイッチ45が接触する範囲を広くするようにカム44の形状を設定することで、組立公差や動作範囲のバラツキを広い接触範囲で吸収することができ、リッド8が開いている状態の信号を正確に検出することができる。
【0071】
また、カム44の一端面44aが当接するストッパ46を備えたことにより、ロータギヤ38の回転が規制され、ロック軸10の前進側の移動端を規制することができる。そして、ストッパ46にカム44の他端面44bが当接することにより、ロータギヤ38の逆方向の回転が規制され、一つのストッパ46でロック軸10の後退側の移動端を規制することができる。このため、緊急時等にロック軸10を後退側に移動させた場合でも、ロック軸10の抜け外れを防止することができる。
【0072】
図16から図19に基づいてリッド8の開閉状態とロック装置9の動作状況を説明する。
【0073】
図16はリッド8が開いている状態、図17はリッド8の閉動作が開始された状態、図18はリッド8の閉動作の途中の状態、図19はリッド8がロックされた状態であり、(a)には給油口の全体構造を現す断面、(b)には(a)中のリッド端部の詳細を示してある。
【0074】
図16から図19の(a)に示すように、インナパネル4の凹部7の側縁にはブラケット61が固定され、ブラケット61には上下方向に延びる回動軸62が回動自在に設けられている。回動軸62にはヒンジアーム63が回動自在に支持され、ヒンジアーム63にリッド8が取り付けられている。回動軸62の反対側におけるリッド8の端部にはフック部51が取り付けられている。
【0075】
ブラケット61とヒンジアーム63とにわたりばね64が設けられ、ヒンジアーム63(リッド8)はばね64により開き側に付勢された状態にされている。インナパネル4の凹部7に四角孔11が設けられ、四角孔11の外側にリテーナ13が設けられ、四角孔11の内側からロック装置9が固定されている。ロック装置9のロック軸10の先端部位が四角孔11から凹部7に臨み、リッド8が閉じられた際にフック部51の係止段部53にロック軸10の先端が係止する。
【0076】
図16(a)(b)に示すように、リッド8が開いている状態では、ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力により前進端(第一位置)に移動した状態になっている。この状態では、前述したように、カム44と検出スイッチ45が非接触の状態にされ、リッド8の開信号がオンにされる。即ち、リッド8が開いている状態であることが検出される。
【0077】
リッド8の開信号がオンになっている情報に基づき、例えば、スライドドアの開閉を不許可にする、エンジンやモータの作動を不許可にする、インジケータの点灯や凹部7の内部の照明装置の点灯を制御する、等の制御が実施される。
【0078】
図17(a)(b)に示すように、ばね64の付勢力に抗してリッド8を閉じ側に回動させると、フック部51の傾斜面部52に沿ってロック軸10が圧縮ばね36の付勢力に抗して後退移動する。更に、図18(a)(b)に示すように、リッド8を閉じ側に回動させると、フック部51の接続部54の位置でロック軸10が圧縮ばね36の付勢力に抗して最後退位置まで後退移動する。
【0079】
ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力に抗して後退移動することにより、ロータギヤ38の回転によりカム44が回動し、カム44が検出スイッチ45に接触してリッド8の開信号がオフにされる。即ち、リッド8が閉じられる状態であることが検出される。
【0080】
図19(a)(b)に示すように、リッド8を閉じた状態にすると、フック部51の接続部54から係止段部53にロック軸10が移動し、係止段部53の位置でロック軸10が圧縮ばね36の付勢力により前進して軸方向の端部位置(第一位置)の手前(第二位置)で係止段部53に係合する。ロック軸10が係止段部53に係合することで、リッド8がロックされる。この状態では、前述したように、カム44と検出スイッチ45の接触状態が維持され、リッド8の開信号がオフにされている。即ち、リッド8が閉じられている状態(ロックされている状態)であることが検出される。
【0081】
給油等によりリッド8を開く場合、駆動モータ41を駆動させ、出力ギヤ42、ロータギヤ38、ピニオンギヤ37及びラックギヤ35を介してロック軸10を圧縮ばね36の付勢力に抗して後退移動させる。係止段部53への係合が解除される位置までロック軸10が後退移動すると、ばね64の付勢力によりヒンジアーム63(リッド8)が開き側に付勢される。これにより、リッド8が開かれ、ロック軸10が圧縮ばね36の付勢力により前進端に移動してカム44と検出スイッチ45が非接触状態になり、リッド8の開信号がオンにされる。
【0082】
従って、給油口6のリッド8をロックするための機構を用いてリッド8の開閉状態を検出することが可能になり、リッド8の組み立ての公差等により開閉機構の開閉状態にバラつきが存在していても、検出スイッチ45の動作範囲にバラツキの影響が及ぶことを抑制することができ、リッド8の開閉状態を組み立ての公差に拘わらず確実に検出することが可能になる。
【0083】
上述した実施例は燃料の給油口6のリッド8を例に挙げて説明したが、充電口を備えた供給口を適用した場合、充電口の位置は車両の任意の場所になるため、リッドが設けられる位置は、リヤサイドに限らず、フロントサイドやリヤエンド、フロントエンド等、充電口の位置に応じて様々な位置になる。
【0084】
また、ロック装置9の構成は、上述した実施例の構成に限定されず、例えば、検出スイッチ45が設けられていない構成や、運転席からの操作によりプッシュプルワイヤ等を介して手動でロックを解除する構成のロック装置を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、車両のエネルギー供給口用のリッドをロックするためのロック装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2 リヤサイドアウタパネル(アウタパネル)
3 開口部
4 インナパネル
6 給油口
7 凹部
8 リッド
9 ロック装置
10 ロック軸
11 四角孔
12 切欠き孔
13 リテーナ
14 円形孔
15 リテーナ爪部
16 溝部
17 シールリング
21 本体
22 対角角部
23 突起部
24 第2突起部
26 本体爪部
31 ケーシング
32 蓋ケーシング
33 支持部材
34 ケーシングシール
35 ラックギヤ
36 圧縮ばね
37 ピニオンギヤ
38 ロータギヤ
41 駆動モータ
42 出力ギヤ
44 カム
45 検出スイッチ
46 ストッパ
51 フック部
52 傾斜面部
53 係止段部
54 接続部
61 ブラケット
62 回動軸
63 ヒンジアーム
64 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエネルギー供給部位となり前記車両外部に臨む凹部を開閉するリッドの閉状態をロックするロック装置を車体に固定する固定構造において、
前記凹部のパネルに形成され一部に切欠き孔が設けられた取付孔と、
前記取付孔に対応して前記凹部の前記車両外部側に配され円形孔が設けられたリテーナと、
前記凹部の前記車両内部側から前記取付孔を介して前記リテーナの前記円形孔に挿入されるロック装置とを備え、
前記リテーナには、
前記取付孔の前記切欠き孔を通過して前記凹部の前記車両内部側に突出するリテーナ爪部と、
前記円形孔の周囲に形成された溝部とが設けられ、
前記溝部は、前記リテーナ爪部が前記凹部の前記車両内部側に突出した状態の際、前記パネルに対向するように形成されており、
前記ロック装置には、
前記リテーナの前記溝部に挿入される突起部と、
前記突起部が挿入された状態で前記溝部に沿って前記突起部を移動させることで、前記凹部の前記車両内部側で前記リテーナ爪部に嵌合する本体爪部とが設けられ、
前記リテーナ爪部と前記本体爪部が嵌合することにより、前記突起部が前記リテーナの前記溝部の内部で前記取付孔の前記凹部の前記車両外部側の縁面に係止し、前記ロック装置が前記凹部に固定される
ことを特徴とするロック装置の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のロック装置の固定構造において、
前記ロック装置には、
前記突起部に対応して、前記取付孔の前記凹部の内部側の縁面に係止する第2突起部が設けられ、前記突起部と前記第2突起部により前記取付孔の縁部が挟持される
ことを特徴とするロック装置の固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載のロック装置の固定構造において、
前記取付孔は四角形の対向する辺に前記切欠き孔をそれぞれ設けた形状とし、
前記リテーナの前記リテーナ爪部はそれぞれの前記切欠き孔に対応して設けられると共に、前記ロック装置の前記本体爪部はそれぞれの前記リテーナ爪部に対応して設けられ、
前記ロック装置の前記突起部及び前記第2突起部は、前記四角形の対角線のそれぞれの角部に対応して設けられると共に、前記リテーナの前記溝部はそれぞれの前記突起部に対応して設けられている
ことを特徴とするロック装置の固定構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロック装置の固定構造において、
前記ロック装置は、
軸方向に移動し先端が前記リッドに嵌合することにより前記リッドの開閉を阻止するロック軸と、
前記ロック軸の軸方向の移動に連動して回動するカム部材と、
前記カム部材の当接状態に基づいて前記リッドの開閉信号を出力する検出スイッチとを備えている
ことを特徴とするロック装置の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−30749(P2012−30749A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173899(P2010−173899)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】