説明

ロック装置

【課題】ハンドルの操作フィーリングを滑らかにするロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置において、ハンドルは、ハンドル回動軸31を介して回動可能に固定部材30に連結され、第1部材28を有する。ダンパ40は、固定部材30に回動可能に連結されるロータ42と、ロータ42に固定される第2部材43と、を有する。第1部材28および第2部材43のいずれか一方にスリット25が設けられ、他方にスリット25に遊嵌される突設部が設けられ、第1部材28に第2部材43が連動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルおよびダンパを備えるロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のグローブボックスのリッドには、リッドをロックするためのロック装置が取り付けられる。ユーザはロック装置のハンドルを操作することでグローブボックスを開くことができる。ユーザがハンドルから手を離すとハンドルが元の位置に戻るが、その際にハンドルから打音が生じることは好ましくない。
【0003】
たとえば特許文献1には、ハンドルの打音を抑えるため、アウトサイドハンドルと回転軸とを連結するアームにラックを設け、このラックに抵抗ダンパーを噛み合わせて回転させ、抵抗ダンパーに生じたトルクをアウトサイドハンドルに伝達する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−148467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術ではアウトサイドハンドルと抵抗ダンパーとのトルク伝達をアームのラックと抵抗ダンパーに設けた歯車とを噛み合わせることで行っている。このアウトサイドハンドルをユーザが掴んで操作すると、ユーザにラックと歯車の噛み合いの振動が伝達されてしまう。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハンドルの操作フィーリングを滑らかに保ちながら、ハンドルの打音を抑えるロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のロック装置は、固定部材と、ハンドル回動軸を介して回動可能に固定部材に連結され、第1部材を有するハンドルと、固定部材に回動可能に連結されるロータと、ロータに固定される第2部材と、を有するダンパと、を備える。この第1部材および第2部材のいずれか一方にスリットが設けられ、他方にスリットに遊嵌される突設部が設けられ、第1部材に第2部材が連動する。この態様によると、ハンドルを操作した際にスリットを有するリンク機構を介してダンパを回動させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンドルの操作フィーリングを滑らかに保ちながら、ハンドルの打音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るロック装置の正面側の斜視図である。
【図2】実施形態に係るハンドル本体部の斜視図である。
【図3】実施形態に係る固定部材の一部およびハンドルの斜視図である。
【図4】実施形態に係るロータおよび第2部材の斜視図である。
【図5】(a)および(b)は実施形態に係るハンドル、固定部材およびダンパの説明図である。
【図6】実施形態に係るハンドル、固定部材およびダンパの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るロック装置10の正面側の斜視図である。このロック装置10は、たとえば車両のグローブボックスのリッドに取り付けられ、リッドをロックする機能を有する。ロック装置10は樹脂材料で形成されてよい。ロック装置10は、ハンドル20、固定部材30、ダンパ40およびロック機構50を備える。
【0011】
ハンドル20は、トップカバー22およびハンドル本体部24を有する。ハンドル本体部24の外面にはトップカバー22が取り付けられ、トップカバー22は外部に露出する。ハンドル本体部24の側面にはダンパ40が設けられる。また、ハンドル20の内部に鍵部26が埋め込まれている。
【0012】
固定部材30は、棒形状に形成され、縦開きのリッドに水平に取り付けられる。固定部材30の一方の端部にハンドル20がハンドル軸を外側にして取り付けられ、他方の端部にロック機構50が取り付けられる。ハンドル20とロック機構50とは不図示の連結部材で連結されている。固定部材30には、ハンドル20の裏側にユーザの指が挿入可能な凹部32が形成される。凹部32の縦幅Wはユーザの指2本が挿入可能な所定幅に設定されてよく、ハンドル20の縦幅も同様に所定幅に設定されてよい。
【0013】
ユーザがハンドル20を矢印14に示す方向に引っ張ると、ハンドル20の回動操作が連結部材を介してロック機構50に伝達される。これにより、ロック機構50のロックが解除されリッドが自重により開く。このときユーザがハンドル20から手を離すと、ハンドル20が不図示の弾性体の付勢力により元の位置に戻るが、勢いよく戻った場合には打音が鳴る。この打音を抑えるためハンドル20の回転トルクに対して抵抗トルクを付与するダンパ40がロック装置10に設けられる。縦開きのリッドと回転軸が直交するハンドル20の操作角は、縦開きのリッドと回転軸が平行なハンドルの操作角より小さく、約半分となるように設定される。ロック装置10の各部材の構成について具体的に説明する。
【0014】
図2は、実施形態に係るハンドル本体部24の斜視図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。図示される操作部23の面23aを表面、その反対側の図示されていない操作部23の面を裏面と呼ぶ。
【0015】
ハンドル本体部24は、ユーザがトップカバー22を介して操作する平板形状の操作部23と、鍵部26を収納する円筒形状の収納部21と、リンク機構の一部を構成する第1部材28と、を備え、一体に成形される。
【0016】
操作部23は、略長方形状に形成され、その一辺に沿って回動軸孔29が形成される。ロックを解除する際、操作部23は矢印14に示す方向に引っ張られる。また、操作部23には回動軸孔29を貫く連結溝27が設けられる。操作部23の中央には操作部23の裏面側に突出する収納部21が設けられる。
【0017】
第1部材28は、操作部23の裏面側において収納部21の側面に固定される。なお、第1部材28は操作部23に直接固定されてもよい。第1部材28は、収納部21から延出した延出部60と、収納部21の下面より下方に突出する第1突出部62および第2突出部64とを有する。第2突出部64の側面は、ハンドル20が回動したときに固定部材30に接触しないよう円弧形状に形成される。
【0018】
第1突出部62および第2突出部64の間には、U字形状に切り欠かれ、端部が開口するスリット25が形成される。スリット25は操作部23に垂直方向に延伸している。なお、このスリット25は開口してない閉じたスリット25であってもよい。図2に示すように、操作部23が矢印方向に回転すると、第1部材28も連動する。
【0019】
図3は、実施形態に係る固定部材30の一部およびハンドル20の斜視図である。本図は、固定部材30にハンドル20を組み付けた状態を示す。固定部材30は、一端に設けられる収容部38と、軸孔が形成された軸連結部36と、ハンドル回動軸31と、を有する。
【0020】
固定部材30の収容部38は、略四角筒形状に形成され、内部空間にハンドル20の収納部21、第1部材28およびストッパ12の一部が収容される。2つの軸連結部36は、収容部38から表面に向かって上方に突設され、操作部23の連結溝27に挿入される。軸連結部36に形成された軸孔と回動軸孔29とにハンドル回動軸31が挿入されて、ハンドル20と固定部材30とがハンドル回動軸31を介して連結される。なお、収容部38にはハンドル20の回動を規制するストッパ12が設けられる。ストッパ12のハンドル20と接触する部分は、収容部38の内側に突出するように設けられる。ストッパ12にハンドル20の収納部21が当接することで、ハンドル20の回動を規制する。このストッパ12を衝撃吸収材で形成することで、ハンドル20が当接したときの打音を和らげることができる。
【0021】
収容部38の側面には、ハウジング34が固定部材30と一体に設けられる。ハウジング34は、円筒形状に形成され、その中心にダンパ回動軸35が設けられる。さらにハウジング34の内部には、ダンパ回動軸35の周囲にハウジング嵌合部37が設けられる。ハウジング嵌合部37は、周状の壁に形成され、不図示のロータと嵌合する。
【0022】
リンク可動用孔33は、収容部38の側面に略円弧形状に形成され、ハウジング34に隣接した位置に設けられる。ハウジング34の外周の一部は、リンク可動用孔33の円弧の一部を形成する。リンク可動用孔33により収容部38内に配置されたスリット25が外部に開放される。
【0023】
図4は、実施形態に係るロータ42および第2部材43の斜視図である。本図では、ロータ42におけるハウジング34との連結側を示す。ロータ42はハウジング34に回動可能に連結される。
【0024】
ロータ42は、円筒形状に形成され、内部の中心に回動軸孔47が設けられる。さらにロータ42の内部には回動軸孔47の周囲にロータ嵌合部45が設けられる。ロータ嵌合部45は周状の壁に形成され、ハウジング嵌合部37と嵌合される。なお、ダンパ回動軸がロータ42に設けられ、回動軸孔がハウジング34に設けられてもよい。
【0025】
ロータ42の外周には第2部材43が固定される。第2部材43は、ロータ42の外周から径方向に延伸するアーム46と、アーム46に設けられ回動軸方向に突設された突設部44とを有する。
【0026】
図5(a)は、実施形態に係るハンドル20、固定部材30およびダンパ40の斜視図である。図5(a)では、図3に示す固定部材30およびハンドル20に、ダンパ40を組み付けた状態を示す。図5(b)は、実施形態に係る第2部材43に設けられた突設部44および第1部材28の断面図である。
【0027】
ロータ42は、ハウジング34に連結され、ロータ42とハウジング34の間には粘性流体が充填される。粘性流体とは、たとえばグリースである。ロータ42とハウジング34との相対回転により抵抗力となるトルクが発生する。また、ロータ42を収容部38の外部に設けることで、ダンパ40の組み付けが容易となり、ハンドル20の設計の自由度を増すことができる。
【0028】
第2部材43の突設部44は、スリット25に遊嵌される。第1部材28および第2部材43によりリンク機構が構成され、第2部材43が第1部材28に連動するようになる。なお、第1部材28および第2部材43のいずれか一方にスリットが設けられ、他方に突設部が設けられてよい。第1部材28の動作に第2部材43が連動する際、突設部44はスリット25内を移動する。スリット25を用いたリンク機構を設けたことで、歯車を用いたリンク機構と比べて操作フィーリングを滑らかにすることができる。第1部材28にスリット25を設け、第2部材43に突設部44を設けることで、ハンドル20の組み付けが容易となり、製造コストを低減できる。また、リンク機構およびダンパ40を、ハンドル20と固定部材30と第2部材43の3点の部品で形成することができ、部品点数を最小限にできる。これにより、組み付け工程を減らし、製造コストを低減できる。
【0029】
図5(b)に示すように、突設部44の突端には、スリット25の幅より大きい拡径部48が設けられてよい。これにより、リンク機構にロータ42の抜け止め機能を持たすことができる。また、ロータ42の内部に抜け止め機構を設ける場合と比べてロータ42の取り付けが容易となる。また、ロータ42またはハウジング34に抜け止め機構を設ける必要がなくなり、ロータ42のハウジング34への組み付けも容易となる。あらかじめ突設部44の突端に拡径部48が設けられる場合、スリット25を開口させることで第2部材43を第1部材28に容易に組み付けることができる。
【0030】
図6は、実施形態に係るハンドル20、固定部材30およびダンパ40の側面図である。つまり図5の側面図である。図6の点線でハンドル20が最大に可動した状態を示す。また、スリット25および突設部44の位置を点線で図示する。
【0031】
ハンドル回動軸31とロータ回動軸49とが異なる軸上に配置され、離間している。これにより、ロータ42はハンドル20の回転角より大きな回転角を得ることができる。つまり、ダンパをハンドル回動軸31の回転軸に設けた場合と比べて、ハンドル20操作時の少しの回転に対してダンパ40が十分な粘性抵抗を発揮することができ、ハンドル20の打音を効果的に抑えることができる。
【0032】
次に、ロータ回動軸49は、ハンドル回動軸31に突設部44より常に近い位置に設けられる。つまりロータ回動軸49は、移動する突設部44がとりうるいずれの位置に対しても、よりハンドル回動軸31に近い位置に設けられる。すなわち、ロータ回動軸49は、ハンドル回動軸31を中心として突設部44より常に径方向内側に位置する。このようにダンパ40の位置を設定することで、ダンパ40を設ける固定部材30の収容部38の側面を小型化することができ、ロック装置10をグローブボックスのリッドに組み付ける際に組み付けが容易となる。
【0033】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0034】
10 ロック装置、 12 ストッパ、 20 ハンドル、 21 収納部、 22 トップカバー、 23 操作部、 24 ハンドル本体部、 25 スリット、 26 鍵部、 27 連結溝、 28 第1部材、 29 回動軸孔、 30 固定部材、 31 ハンドル回動軸、 32 凹部、 33 リンク可動用孔、 34 ハウジング、 35 ダンパ回動軸、 36 軸連結部、 37 ハウジング嵌合部、 38 収容部、 40 ダンパ、 42 ロータ、 43 第2部材、 44 突設部、 45 ロータ嵌合部、 46 アーム、 47 回動軸孔、 50 ロック機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
ハンドル回動軸を介して回動可能に前記固定部材に連結され、第1部材を有するハンドルと、
前記固定部材に回動可能に連結されるロータと、前記ロータに固定される第2部材と、を有するダンパと、を備え、
前記第1部材および前記第2部材のいずれか一方にスリットが設けられ、他方に前記スリットに遊嵌される突設部が設けられ、前記第1部材に前記第2部材が連動することを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ハンドル回動軸と前記ロータの回動軸とが異なる軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記突設部の突端には、前記スリットの幅より大きい拡径部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記第1部材に前記スリットが設けられ、前記第2部材に前記突設部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のロック装置。
【請求項5】
前記ロータの回動軸は、前記ハンドル回動軸に前記突設部より近い位置に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2020(P2012−2020A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139764(P2010−139764)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】